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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

第19回水戸ギター・アンサンブル演奏会

  2023年10月14日8土)  ひたちなか市文化会館小ホール




2.作者不詳 : グリーン・スリーブス (17世紀のリコーダーとグランド・バスのための作品)


有名な曲だがメロディは演奏や、譜面ごとに少し違っている

 2曲目はイギリス民謡として有名なグリーン・スリーブスです。民謡と言っても、実際には歌ではなく楽器による演奏の方がよく聴き、だいたい16世紀ころから伝わっていると言われています。おそらく多くの人はそのメロディを知っているのではないかと思います。とは言っても、良く聴くとそのメロディは演奏によって微妙に違いますね、#があったり、なかったりとか。



もともと低音しか決まっていなかった

 もともとははっきりとメロディが決まっているわけではなく、低音の進行、つまりコード進行が決まっているだけと言われています。つまり私たちが知っているグリーン・スリーブスのメロデイは、その低音の上に付けられた上声部の一つと言うことになるようです。 もともとはいろんなメロディのグリーンスリーブスがあったと言うことになりますね。



この編曲のもとはリコーダーと低音のためのもの

 今回演奏するもの、つまり私がアレンジしたものの原曲は、17世紀にリコーダーとグランド・バスのための作品と言うことになります。グランド・バスと言うのは英語の「通奏低音」のことのようです。通奏低音はドイツ語で「ゲネラル・バス」、イタリア語では「バッソ・コンティヌオ」ということでしょうか。下がその原曲の譜面です。




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今回のグリーン・スリーブスの編曲のもとになった譜面。 アルト・リコーダーとグランドバスのために書かれている。この作品はフルートなどでもよく演奏される




リコーダーの先生に伴奏を頼まれて

 私がなぜこの譜面を持っているかと言うと、30年くらい前でしょうか、学校関係の講習会に呼ばれた時、その時一緒になったリコーダーの先生に頼まれて、その伴奏部分を演奏したことがあるからです。 その時、この譜面が事前に送られてきて、譜面には低音しかありませんが、それに適当に音を加えてほしいとのことでした。練習は演奏の前に一回だけ行うとのことでした。

 それで私方でも各変奏(14個)の性格を考えて、変化をつけながら編曲して(もちろん練習もして)その講習会に臨んだのですが、事前の練習で、リコーダーの先生が吹き始めて、びっくり! 私達、ギターをやっている者からするととんでもなく速いテンポなのです。



そんなに速いんですか?

 「え? そんなに速いんですか?」って言うと、 「え? そうですか? この曲、普通これくらいのテンポですけど」 と軽く言われてしました。「もっとテンポ遅くしてもらえませんか」 とはいえず、結局、家で書いたり、練習したりした編曲はチャラにして、ただシンプルに和音とアルペジオだけの伴奏に終始しました。



ギターの常識は通用しない

 ともかく、ギター以外の人と一緒にやる時は、ギターの常識は通用しませんね。そうしたこともたいへん勉強になでしょうけど。もちろん今回の演奏はそのめちゃ速いテンポではなく、ギター関係的に、一般的なテンポです。




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今回演奏する私の編曲。 編成はアルト・ギター、プライム・ギター3パート、コントラバスギターとなっている。



和音や、声部を追加している

 原曲では低音とメロディしかないので、それではギター合奏にはなりませんから、それに和音や声部を付け加えてアレンジしました。テーマに当たるメロディは私たちが知っているグリーン・スリーブスのメロディと少し違いますが、雰囲気としては同じですね。多くの人はグリーンスリーブスとわかるのではないかと思います。 このメロディは冒頭だけでなく、何度か登場します(原曲にはないが)。




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第9変奏付近。だいぶ厚めに音、あるいは声部を付け加えている。よく見ると(聴くと)リズムもちょっと悪戯している。



リズムにも変化を加えている

 変奏によっては、音をだいぶ厚めに加えていますが、リズムに変化を加えて部分もあります。ルネサンス舞曲風の感じも出しているところもあるのですが、そんなところも楽しんでいただければと思います。







3.中村俊三 : ギター合奏のためのパッサカリアホ短調(2020)



なんと、私のオリジナル!

 3曲目は、なんと私の作品ですね、パッサカリアというのは主にバロック時代の曲種で、低音の主題による変奏曲で、シャコンヌなどとほぼ同じものです。パッサカリアとか、シャコンヌというと、なんとなく重厚なイメージですが、もともとはそういう訳ではなく、気楽で楽しいシャコンヌやパッサカリアもたくさんあります。



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私が作曲した「ギター合奏のためのパッサカリアホ短調」 8小節の低音の旋律をもとにした変奏曲。 冒頭の部分はバロック音楽ぽい




もともと重厚と言った感じではなかったが

 こうした曲が重厚なイメージになったのは、やはりバッハの影響ですね、バッハはあまりシャコンヌとかパッサカリアは作曲せず、有名なものとしては、それぞれ一曲ずつした作曲していないのですが、それが有名になってしまったために、こうした曲が重厚なイメージになってしまったのでしょう。

 とは言っても、この私のパッサカリアも 「ペザンテ」 ということで、その重厚なイメージを借りて作曲しています。 もちろんバロック風のところもありますが、次第に時代不詳的になって行きます。




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一段目は4声になって、バロックぽさの延長だが、次第に時代不詳的になって来る。



パッサカリアは通常転調しないが

 通常、パッサカリアはずっと同じ低音の流れが続くので、転調と言うことは基本的にないのですが(ヴァイスのパッサカリア、バッハのシャコンヌなども基本的に転調しない)、私の作品では途中で調が迷子になってしまいます。




水戸ギター・アンサンブル演奏会で、はじめてのギター合奏オリジナル作品

 ちょっとした悪戯で作った感じも否めませんが、ギター合奏というと、オリジナル(ギター合奏のために作曲された曲)は皆無で、ほぼすべて編曲作品となります。ちょっと大げさな表現とはなりますが、19回に及ぶ水戸ギター・アンサンブル演奏会において、初めてのギター合奏オリジナル作品の演奏と言うことになります。 もちろん世界初演!

 
 
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水戸ギター・アンサンブル演奏会


 10月14日(土) 14:00  ひたちなか市文化会館小ホール




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曲目紹介


 水戸ギター・アンサンブル演奏会も、もうすぐになってしまいました。演奏会が近くなると、あっち、こっちいろいろ気になるところや、問題点も多発してくるのは、毎度のことで、そう言うものだと思うしかないですね。 さて、演奏会も近くなったので、この辺で演奏曲目の紹介を行いましょう。

 当日のプログラムにも若干解説は載せますが、スペースも限られるので、あまり無駄話も出来ません。その点、ブログの方が裏話とかも書けますね。興味のある所だけでも読んでいただければと思います。




オットリーノ・レスピギー(1879~1936) : イタリアーナ(古代の舞曲とアリア第3組曲第1曲)



弦楽合奏曲からの編曲

 原曲は16世紀のイタリアのリュート曲で、それを20世紀のイタリアの音楽家、オットリーノ・レスピギーが弦楽合奏用に編曲したものです。ギター独奏でも演奏され、私の教室でも教材として用いています。 今回演奏する編曲は、レスピギーの作品からの編曲で、レスピギーの作品に沿ったものです。



幻想的だった弦のゆらゆら

 話がそれてしまいましたが、私がこの曲を始めて聴いたのは大学生の頃で、友達の部屋で聴いたFM放送だったと思います。電波状態が悪かったのか、原盤の問題か、弦の音がゆらゆらと揺れているような感じで、気持ち悪いといえば、確かにそだったのですが、逆にそれがとても幻想的で魅力的に感じ、早速そのLPを探して購入しました。 



第3曲は有名なシシリアーナ

 その後スコアのほうも入手して、大学時代に、この「第3組曲」の第3曲「シシリアーナ」を編曲して定期演奏会で演奏しました。これが本格的なギター合奏曲の編曲として、私自身では初めてのものとなります。

 原曲ハ短調だったものを3度下げてイ短調にしたのですが、まあ、妥当な選択だったでしょうね。弦楽のスコアをほぼそのままギター合奏に当てはめた訳ですが、50年以上経た今回の「イタリアーナ」の編曲でも、ほぼ同じコンセプト、同じ手法を取っています。

 この曲については当ブログでも何度か書いていますが、作者もわからなければ、曲名もわからないと言う曲で、「シシリアーナ」も「コレンタ」も正しくはないようです。「エスパニョレッタ」が正しいというコメントをいただいたこともあります。きっと正式には「作曲者、曲名不明の作品」なんて感じになるんでしょうね。




レスピギーの作品では変ホ長調となっているが

 さて、「イタリアーナ」 のほうに話が戻りますが、原曲(レスピーギの)では♭3個の変ホ長調ということです(厳密には当時は長調という概念がなかったが)。これは当時のリュートのピッチから来るもので、譜面的にはハ長調と言うことになるでしょうか。

 とは言っても、このピッチの問題は複雑で、確かに譜面上はギターよりも短3度(3フレット分)高かったようですが、当時のピッチは半音程度低かったので、今現在のギターからすれば2フレット分高いということになるでしょうか。



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私のギター合奏へのアレンジ(アルト1、プライム3,CBギター1) ほぼ原曲(レスピーギの)にそったもの



50年以上前の編曲との整合性?

 今回演奏する編曲ではハ長調としていますが、これはシシリアーナをイ短調で演奏したのと整合性があります。まあ、何も50年前に演奏したものと整合性を考える必要はないのですが。



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ギター独奏版(私の教室の教材)



やはり弾きやすい調で弾くのが最もよい

 また、この曲をギター独奏で弾く場合は、変ホ長調ではなく、ニ長調とするのが一般的です。それは前記の通り、当時のピッチは今現在のものより半音程度低いと言うことから来ています。 また、本当にニ長調という訳ではなく、”ニ長調ぽい” ということで、実際にはニ長調とロ短調を行った来たりしていますが、どちらかと言えばロ短調のほうが強いですね。

 というより、ハ長調でも、まして変ホ長調ではギターでは弾きにくく、ニ長調で弾くのが最も弾きやすいというのが、この調で弾く最も大きな理由でしょう。やはり、何と言っても弾きやすい調で弾くのが一番いいのに間違いありません。
みんなで楽しむオーケストラ


 9月18日(月) ザ・ヒロサワ・シティ会館大ホール

  イバラキ・ニュー フィルハーモニック

  指揮 田口邦生

  ピアノ 仲道郁代





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<演奏曲目>

J.シュトラウスⅡ世 : 「こうもり」序曲
スッペ : 「軽騎兵」序曲
ロッシーニ : 「泥棒かささぎ」序曲

ベートーヴェン : ピアノ協奏曲第5番変ホ長調「皇帝」

 *前半にはオーケストラについての話しあり




いつの間にかにホールの名前が

 茨城県民文化センターに行くのは、本当に久々ですね。最近、自分関連のコンサートは、ひたちなか市文化会館、または石岡市のギター文化館で行い、聴きに行くことも水戸芸術館となっていて、ここに来るのは本当に久々です。そう言えば、ホールの名前も「ザ・ヒロサワ・シティ会館ホール」となっているですね。この名前に変わってから初めての機会だと思います。

 若い頃はこの水戸市では他にあまりホールがなかったので、よくここに来ましたね。そう言えば大学時代の定期演奏会もここでしたね。その当時は大学のギター部の定期演奏会とはいえ、千人超の人が来てくれました。私もこれまでずっとギターをやっていて、千人以上の観客の前で演奏したのは後にも先にも、この時だけでしたね。

 久々に来て、大きくはあまり変わっていないのでしょうけど、なんとなく椅子の間隔が拡がって、楽に座れるようになった気がします。それに女性用のトイレが増設となったのですね、女性の来場者にとっては、とても嬉しいことなのではないかと思います。




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わが県にも優れたオーケストラが

 この「イバラキ・ニューフィルハーモニック」というオーケストラは2年前に結成されたそうですが、たいへん素晴らしいオーケストラですね、茨城にもこうした実力のあるオーケストラが出来たのは、本当に喜ばしいことだと思います。

 演奏内容につきましては、私ごときが語るものではありませんが、弦の響きがとても美しく、またフル・オーケストラだけにダイナミック・レンジがとても広く、その迫力には圧倒されます。



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美しい皇帝

 ピアノの仲道郁代さんはたいへん著名なピアニストで、ピアノ協奏曲の代表とも言える「皇帝」をじっくりと楽しめました。仲道さんの演奏は直線的と言うより、きめ細かく、柔軟な感じがしました。
アルアイレ奏法 6


私の演奏フォームの遍歴






 前回まで歴史上の大ギタリストやギター界のレジェンドたちの演奏フォーム(右手の)を見ていただきましたが、今回は私自身ののフォームの移り変わりを見ていただきましょう。まずは今現在のものからです。



今現在

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今現在の私の演奏フォーム




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だいぶ捻っていますね。右手が表面板に近いのも特徴





袖、出すぎ?

 ちょっと袖が出すぎているのが気になるところですが、かなり横向きですね、手首を内側に捻って、指は弦に平行に近いくらいです。ラッセルよりもさらに横向きといった感じですね。






1970

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大学2年生、茨城大学ギター部定期演奏会。手首を外側に曲げて、指は弦に直角に近い




当時の標準的なフォームか、渡辺範彦さんに似ている?

 不鮮明な写真で恐縮ですが、写真として残っている私の最も古いもので、1970年、私が大学2年生の時の定期演奏会の写真です。手首を曲げる方向が今と完全に逆ですね、渡辺範彦さんのフォームに近いですが(全体的にも?)、確かにこの当時はこれが標準的なフォームだったと思います。楽器は故富田修氏のものです。






1977年

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ラミレスの6弦、手首はややまっすぐに




手首はややまっすぐ、足はイエペス風?

 1977年、大学を卒業して2年目くらいの頃です。手首はややまっすぐになってきましたね。よく見ると、ギターの持ち方がちょっと違っています(足開き方)、イエペス風と言ったところでしょう。楽器はホセ・ラミレスⅢになりました。この楽器は1973~1981年の期間使いました。





1985年

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ラミレスの10弦




なんと10弦!

 なんと、10弦ギターを弾いていますね、1983~1986年の約3年間ほど10弦ギターを弾いていました。フォームのほうは上のものとあまり変わりません。





1992年

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右手がやや横向きに、ハウザーⅢに変わる、足の開き方もオーソドックスなものに。




被写体の経年変化のほうが気になる?

 なんか、演奏フォームよりも被写体の経年変化のほうが気になるかも知れませんね、でも、そこはちょっと置いておいて、フォームの方に集中してください。 右手のフォームが変わりましたね、現在ほどではありませんが、だんだん横向きになってきました。ただ、この写真はアポヤンド奏法で弾いているところだと思いますので、アポヤンドの場合はあまり横向きになりません。

 また、楽器がハウザーⅢに変わりましたね、足の開き方もオーソドックスなものに戻っています。ギターレストは使っていなくて、足台です。いろいろな意味で、私自身の弾き方や、音色などが変った時期です。




ラッセルの影響で

 1990年頃デビット・ラッセルのリサイタルとマスタークラスを聴き、その影響を受けてフォームなどが変わった時期です。若い頃はお世辞としても音がきれいとはあまり言われたことがなかったのですが、この頃からそういったお世辞も言っていただけるようになりました。



右手が不安定になって

 これ以後、だんだん指が弦に対して平行に近くなってゆき、現在のフォームとなってゆくのですが、だんだん横になった理由としては、音色の問題だけでなく、40代半ばの頃(この写真の3年後くらい)、右手が不安定になり、特にステージではアルペジオや和音が上手く弾けなくなるという現象が起きました。

 一度そうしたことが起きると、負の記憶というか、人前で演奏すると、常にその不安が起きてしまいます。なんとかその不安を取り除かなければならないのですが、そこで、どんなに指が震えても和音やアルペジオが弾ける方法はないかと、いろいろ考えました。




和音が掴みやすくなった

 まずは右手をより表面板に近くする、なるべく弦から離れないようにするようにしました。これだけでもある程度効果はあったのですが、さらに手首をより弦に平行にすることにより、和音が掴みやすくなりました。つまり3本の指をくっつけた状態で弦に当てれば、自然に1,2,3弦の位置にそれぞれの指が行くことになり、和音の際に弦を掴み損ねることが少なくなりました。



他の弦に触れてしまうことも少なくなった

 また、弦を斜め方向に弾くので、実質的に弦どうしの距離が広がり、他の弦を弾いてしまったり、他の弦をひっかけてしまったりすることが少なくなりました。


メンタル的な事が大きいが

 もっとも、こうしたことはメンタル的な事も大きいですから、どんなに指が震えても、自分は問題なく弾くことが出来ると思うと、指は震えなくなるものです。また逆に、指が震えて弾けなくなってしまうかも知れないと思えば、やはり震えてしまうことになります。つまりフォームを変えたことで、自己暗示をかけることも出来たのでしょう。

 と言った訳で、結論からすると、私の場合、今現在のフォームにすることにより、音色や音量、右手全体の安定性など、いろいろな事柄が解決しました。



アルアイレ奏法 5


 いろいろなギタリストの演奏フォーム 4




エアコン故障

 本当に暑いですね、暑さのせいか、一昨日、レッスン・スタジオのエアコンが故障してしまい、ネットでエアコンを注文しました。このところ2回ほど、エアコンでは評価の高いダイキンのものを使っていたのですが、どちらも6~8年くらいで故障してしまいました。どうもレッスン・スタジオは平屋で直射日光の熱を受けやすく、また室外機にも直射日光が当たりやすいところもあり、冷房効率も悪く、故障しやすいのかも知れません。

 別棟のリヴィングの方はもう十数年ほど同じエアコンを使っています。リヴィングは二階もあって、直射日光が当たらず、また改築して断熱効果も高くなっているので、エアコンに負担がかからないのかも知れませんね。

 今回はリビングで驚異的な粘りを発揮している富士通のものを注文したのですが、どうでしょうか、どれくらいもつのでしょうか? いずれにしても、今やエアコンなしだとレッスンも不可能になってしまいますね。



一週間後?

 この記事を書いている時に発送元から電話。発送は今日なのですが、設置の方は来月5日火曜日ということで、なんと一週間後! なんとかもう少し早くなりませんかとお願いしても、もちろん全く無駄な事。どうしましょうね、この先一週間も間違いなく30度を超えそうですしね。夜ならともかく、日中だと扇風機でレッスンするのは不可能ですね。とりあえずレッスンをリヴィングでやるしかないかな・・・・・



 さて、気をとりなおして、前回に続き、いろいろなギタリストの演奏フォームですが、今回は私より若い世代のギタリストと言うことになりますが、その前に忘れてはならない邦人レジェンドから。




渡辺範彦(1947~2004)

渡辺範彦

 渡辺範彦さんは、すでに故人となってしまいましたが、日本人では初めてパリ国際ギターコンクールで優勝した、我が国ギター界のレジェンド中のレジェンドですね。 当ブログでも何度か紹介しています。



このフォームからなぜあんな柔らかい音が

 この写真のフォームでは、手首をやや曲げて指を弦に直角にあて、しかも結構ブリッジ寄りとなっています。この当時の一般的なフォームとも言えますが、通常このフォームからはかなり硬質な音が出そうなのですが、実際の渡辺さんの音はふっくらとしていて、もちもち感のある音です。このフォームから、どうしてあんな柔らかい音が出ていたのか、ちょっと不思議な気もします。





荘村清志(1947~)

荘村
最近は楽器が”立って”いますね


 1960~70年代の我が国のギター界では、生まれも同じ年で、渡辺範彦さんと人気を二分していた荘村清志さんですが、荘村さんは今現在でも非常に積極的に演奏活動をなさっているのは皆さんもご存じと思います。ギター文化館でも毎年リサイタルを行っています。

 写真のフォームはたいへん自然なものですね、この写真は比較的最近のもので、楽器がかなり”立って”いますね。若い頃はちょっと違っていたようにも思います。この際、その若い頃のLPジャケットの写真も載せておきましょう。1972年録音のLPの写真で、撮影もおそらくその時期だと思います。



荘村70年代
1972年頃の主村清志さん



若い頃は楽器が”横向き”だった

 上の写真よりは横向きというか、平行に近いですね。確かにイエペスもあまり楽器を立てていません。楽器を立てると右手首の関節がまっすぐになりやすく、また体が起き上がって、全体の姿勢も良くなりやすいですが、欠点としては、ネックが目の近くになって、フレットや左指が見にくくなるのと、左手が上がるので、やや疲れやすくなります。

 逆に楽器を立てないで横向きにすると、左手が見やすく、また疲れにくくなりますが、ハイポジションは押さえにくくなり、右手首も曲がりやすくなります。また姿勢が前傾になり、腰が痛くなりやすいといった欠点もあります。タレガは典型的に”横向き”タイプですね。

 荘村さんはイエペスに師事したということですが、音質的にはイエペスに近いという訳ではないようです。 若い頃はすっきりさわやかと言った感じの音でしたが、今現在では音に重みが出てきたというか、より充実したものになっているようにも思います。







エドアルト・フェルナンデス(1952~)

フェルナンデス


 フェルナンデスはウルグアイ出身のギタリストですが、感覚的というより、知性的なギタリストとも言えるでしょう、もちろん極めて高い技術を持っています。カルバーロ奏法の影響を受けていると思われますが、爪はいくぶん斜めにも見えます。因みにカルレバーロは爪を斜めにしてはいけないと言っています。

 音色については聴く人によって意見が分かれるところですが、私が聴いた感じでは、生演奏でも、またCDでもややノイズっぽく聴こえてしまいますが、それは好みの違いということでしょうか。






セルジオ&オダイル・アサド(1952~)

アサド


 驚異のデュオと言われる双子のアサド兄弟です。文字通り異次元的にレヴェルの高いデュオで、リサイタルも聴きに行きましたが、なんと、特に合図もなしに演奏を始めてしまいます。まるでテレパシーで交信しているかのようです。

 写真の左が作曲もするセルジオで、右がオダイルです(多分そうだと思いますが)。右手のフォームはオダイルのほうしかわかりませんが、おそらくセルジオのほうもそれほど変わりないのではないかと思います。 直角に近いですが、やや斜めに爪を当てているでしょうか、もちろんどちらもたいへん美しい音です。





福田進一(1955~)

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 私の息子が10年間ほどレッスンを受けていたので、私としては福田先生とお呼びしていますが、福田先生のフォームもたいへん自然なものですね。弾弦の瞬間は力を集中させるが、それ以外の時では右手をなるべくリラックスさせるということなのでしょう。

 この写真ではかなり左よりの位置で弾いていますが、常にこの位置で弾いている訳ではくなく、通常は平均的な位置で弾いています。当然といえば当然なのですが、状況によって弾く位置を変えている訳ですね。






山下和仁(1961~)

山下


山下2


 山下和仁さんは1977年にパリ国際ギターコンクールに最年少(16才)で優勝し、注目を集めたギタリストです。超絶技巧の持ち主で、ムソルグスキーの「展覧会の絵」など、オーケストラ作品をギター演奏する事でも話題になりました。




フォームのことを語るのはあまり意味がない

 この2枚の写真は、通常のギターの弾き方からすると、ちょっと不自然なので、撮影のためにポーズを取っているのではないかと思う人もいると思いますが、おそらくこれは実際に演奏している時の写真だと思います。

 山下さんのリサイタルは何回か聴きましたが、本当にこんな感じ弾いていました。ギターが水平になったり、垂直になったり、椅子から立ち上がったりなど、山下さんのフォームは固定することはないようです。 また指の角度も状況によって様々なようでした。したがって、山下さんについては。フォームのことで云々するのはあまり意味のないことのようですね。