アポヤンド奏法 4
親指のアポヤンド奏法

アルペジオの低音にも用いられる
前回、親指のアポヤンド奏法は非常に重要であることを書きましたが、今回はその例をいくつか挙げてゆきます。 まずはシンプルにアルペジオの場合です。弾き語りや、伴奏などによく用いられるものですね。

アルペジオの場合、低音をアポヤンド奏法で弾くことにより、自然な音量バランスと音質が得られる
自然な音量バランスと音質が得られる
このようなアルペジオでの親指は基本的にアポヤンド奏法を用います。アポヤンド奏法を用いないギタリストや、それを指導しない指導者もいますが、いろいろな点でアポヤンド奏法を持ちるほうがよいと思います。
まず第一番に音量、音質の問題があります。和音の低音は他の音よりも強く弾かなければなりません。それは西洋音楽においては、和音の低音(バス)は、和音全体の響きを支えなければならないからです。その場合もただ強いだけでなく、重厚な響きでなければなりません。
そうした音を出すためには、やはりアルアイレ奏法では難しく、アポヤンド奏法を用いることにより、適切な音量と重厚な音質が得られます。親指のアポヤンド奏法が難しいと言う人もいますが、アポヤンド奏法を用いることにより、特に高い技術がなくとも、正しい音量と音質が得られるという、たいへん便利な方法です。
他の弦の余計な響きを抑えることが出来る
次に、アルアイレ奏法で弾くと他の弦に触れたり、あるいはその前に弾いた低音が残ったりして、和音が濁りがちになります。アルアイレ奏法でも、そうした不必要な音を消音することは可能かもしれませんが、それには高い技術が必要となります。
アポヤンド奏法を用いれば、他の弦を鳴らしてしまうこともほぼありませんし、また上の弦(6弦を弾く場合の5弦)を、自然に消音することが出来ます(逆に言えば、上の弦を消してはいけない場合には、アポヤンド奏法は使えない)。
フォームも安定する
さらには、親指のアポヤンド奏法を用いてアルペジオを弾く場合、他の指、ima のほうも上下動がなくなり、安定します。 こrも逆に言えば、右手の上下動が激しい人は、親指のアポヤンド奏法が出来ないということもできます。その他、いろいろな面で親指のアポヤンド奏法が出来ないと、ギターの上達は難しいとも言えるでしょう。
サム・ピックを使う必要もなくなる
かつて、フォークソングなどの弾き語りでは親指に付けるピック、つまりサム・ピックを用いる人がいましたね。 私の知る限りでは、フォーク・ギター(今風に言えばアコースティック・ギター?)をやる人で、親指のアポヤンド奏法を用いる人は、あまりいないようですが、そうした弾き語りをやる人でも、通常の弾き方(アルアイレ奏法)では低音がよく出ないと言うことは自覚しているのでしょう。そこで親指の音を上げるためにサム・ピックを用いているものと思われます。
しかし、親指のアポヤンド奏法を用いれば、サム・ピックの必要は全くありません。またピックを使うと、音は大きくはなりますが、軽めの音となり、バスとしてはあまりにふさわしい音ではないようにも思います。
最初からやれば難しくないが
因みに、私の教室では最初から親指のアポヤンド奏法の練習をするので、それが出来ない人はあまりいません(少しはいますが)。しかしある程度年数をやった人にとっては、この親指のアポヤンド奏法はなかなか難しいようですね。 だが、やはりその必要性はたいへん高いので、自在に出来るようにするのは非常に大切と思います。
ヴィラ=ロボスの前奏曲第1番
もちろん独奏曲でも親指のアポヤンド奏法は非常に重要です。わかりやすい例として、ヴィラ=ロボスの「前奏曲第1番」を挙げておきましょう。 ヴィラ=ロボスにはこの「前奏曲第1番」のほか、「前奏曲第4番」、「練習曲第11番」、「ショティッシュ・ショーロ」など低音、あるいは低音弦が大活躍する曲が多いですね。

赤丸のところで、伴奏の3弦がないのは、親指を3弦で止めるためか。 運指等は私が付けたもの。
主旋律が一貫して低音弦にある
この曲の主要部(中間部以外)はずっと低音弦、つまり親指が主旋律担当です。もちろんこうした曲での親指はアポヤンド奏法を用いなければ曲の良さが出ません。音量的にも、また音質的にもそれが言えるでしょう。
親指で二つの音を一度にアポヤンド奏法で弾く
さらにこの曲ではその低音のメロディの下にもう一個低音が加えられているところがあります。これを pi などで弾いたら適切な音量や音質は出ません。また親指でも、アルアイレ奏法で弾くことは、それ自体が難しいですし、また音量も出ません。
譜面のほうではアルペジオ記号で書いていますが(私が書いたもの)、実際は6弦、5弦を続けてアポヤンド奏法で弾く感じになります。 親指だけで和音を弾いたリ(アルペジオ風に)することがありますが、その要領と言ってもいいでしょう。
5弦にウェイトをかける
この場合、6弦は伴奏で、5弦の音のほうが主旋律ですから、ウェイトは5弦の方にかけなければなりません。6弦には軽く当てて、5弦の方をしっかりと押え込む感じですね。
一旦5弦で止めてから4弦を弾く
また、2段目のところでは(赤➡)、6弦、4弦と弦が離れています。この場合でも両方親指で弾きますが、まず6弦をアポヤンド奏法で弾いて、一旦5弦に親指を止めます、その後さらに4弦をアポヤンド奏法で弾きます。もちろんあまり時間をかけてはいけませんので、連続した弦を弾く場合より難しくなりますが、ヴィラ=ロボスの曲を弾く場合には、この弾き方がどうしても必要です。
一旦5弦に親指を止めてから4弦を弾かないと、どうしても5弦が鳴ってしまうので、難しくてもこの弾き方が必要になる訳です。
6弦を早めのタイミングで弾くのがコツ
さらに、この場合どうしても4弦を弾くのが遅れるので、6弦の方は実際にのタイミングよりやや前に弾くのがポイントです。6弦ではなく、4弦にタイミングを合わせる訳ですね、これが出来るといろいろなところに応用が出来ます。
3弦に止める
また2段目の赤丸のところは5,4弦と2,1弦の4個の音を同時に弾くのですが、5,4弦を親指、2,1弦を中指と人差し指で弾きます。この場合の親指はアルアイレ奏法でもやむをえないところですが、主旋律は5弦ではなく、4弦の方なので、出来れば親指を3弦で止めたいところです。
かなりハードルの高い弾き方ですが、そうすることにより、4弦の主旋律がしっかりと鳴ってくれます。しかし実際にはプロ、アマを問わず、ここは5弦のほうが大きく出てしまう人が多いですね。
まだまだ続く
ヴィラ=ロボスの前奏曲第1番の親指の使い方、まだまだこれだけではありませんが、とりあえず今回はこれだけにして、次回またこの続きをやりましょう。
親指のアポヤンド奏法

アルペジオの低音にも用いられる
前回、親指のアポヤンド奏法は非常に重要であることを書きましたが、今回はその例をいくつか挙げてゆきます。 まずはシンプルにアルペジオの場合です。弾き語りや、伴奏などによく用いられるものですね。

アルペジオの場合、低音をアポヤンド奏法で弾くことにより、自然な音量バランスと音質が得られる
自然な音量バランスと音質が得られる
このようなアルペジオでの親指は基本的にアポヤンド奏法を用います。アポヤンド奏法を用いないギタリストや、それを指導しない指導者もいますが、いろいろな点でアポヤンド奏法を持ちるほうがよいと思います。
まず第一番に音量、音質の問題があります。和音の低音は他の音よりも強く弾かなければなりません。それは西洋音楽においては、和音の低音(バス)は、和音全体の響きを支えなければならないからです。その場合もただ強いだけでなく、重厚な響きでなければなりません。
そうした音を出すためには、やはりアルアイレ奏法では難しく、アポヤンド奏法を用いることにより、適切な音量と重厚な音質が得られます。親指のアポヤンド奏法が難しいと言う人もいますが、アポヤンド奏法を用いることにより、特に高い技術がなくとも、正しい音量と音質が得られるという、たいへん便利な方法です。
他の弦の余計な響きを抑えることが出来る
次に、アルアイレ奏法で弾くと他の弦に触れたり、あるいはその前に弾いた低音が残ったりして、和音が濁りがちになります。アルアイレ奏法でも、そうした不必要な音を消音することは可能かもしれませんが、それには高い技術が必要となります。
アポヤンド奏法を用いれば、他の弦を鳴らしてしまうこともほぼありませんし、また上の弦(6弦を弾く場合の5弦)を、自然に消音することが出来ます(逆に言えば、上の弦を消してはいけない場合には、アポヤンド奏法は使えない)。
フォームも安定する
さらには、親指のアポヤンド奏法を用いてアルペジオを弾く場合、他の指、ima のほうも上下動がなくなり、安定します。 こrも逆に言えば、右手の上下動が激しい人は、親指のアポヤンド奏法が出来ないということもできます。その他、いろいろな面で親指のアポヤンド奏法が出来ないと、ギターの上達は難しいとも言えるでしょう。
サム・ピックを使う必要もなくなる
かつて、フォークソングなどの弾き語りでは親指に付けるピック、つまりサム・ピックを用いる人がいましたね。 私の知る限りでは、フォーク・ギター(今風に言えばアコースティック・ギター?)をやる人で、親指のアポヤンド奏法を用いる人は、あまりいないようですが、そうした弾き語りをやる人でも、通常の弾き方(アルアイレ奏法)では低音がよく出ないと言うことは自覚しているのでしょう。そこで親指の音を上げるためにサム・ピックを用いているものと思われます。
しかし、親指のアポヤンド奏法を用いれば、サム・ピックの必要は全くありません。またピックを使うと、音は大きくはなりますが、軽めの音となり、バスとしてはあまりにふさわしい音ではないようにも思います。
最初からやれば難しくないが
因みに、私の教室では最初から親指のアポヤンド奏法の練習をするので、それが出来ない人はあまりいません(少しはいますが)。しかしある程度年数をやった人にとっては、この親指のアポヤンド奏法はなかなか難しいようですね。 だが、やはりその必要性はたいへん高いので、自在に出来るようにするのは非常に大切と思います。
ヴィラ=ロボスの前奏曲第1番
もちろん独奏曲でも親指のアポヤンド奏法は非常に重要です。わかりやすい例として、ヴィラ=ロボスの「前奏曲第1番」を挙げておきましょう。 ヴィラ=ロボスにはこの「前奏曲第1番」のほか、「前奏曲第4番」、「練習曲第11番」、「ショティッシュ・ショーロ」など低音、あるいは低音弦が大活躍する曲が多いですね。

赤丸のところで、伴奏の3弦がないのは、親指を3弦で止めるためか。 運指等は私が付けたもの。
主旋律が一貫して低音弦にある
この曲の主要部(中間部以外)はずっと低音弦、つまり親指が主旋律担当です。もちろんこうした曲での親指はアポヤンド奏法を用いなければ曲の良さが出ません。音量的にも、また音質的にもそれが言えるでしょう。
親指で二つの音を一度にアポヤンド奏法で弾く
さらにこの曲ではその低音のメロディの下にもう一個低音が加えられているところがあります。これを pi などで弾いたら適切な音量や音質は出ません。また親指でも、アルアイレ奏法で弾くことは、それ自体が難しいですし、また音量も出ません。
譜面のほうではアルペジオ記号で書いていますが(私が書いたもの)、実際は6弦、5弦を続けてアポヤンド奏法で弾く感じになります。 親指だけで和音を弾いたリ(アルペジオ風に)することがありますが、その要領と言ってもいいでしょう。
5弦にウェイトをかける
この場合、6弦は伴奏で、5弦の音のほうが主旋律ですから、ウェイトは5弦の方にかけなければなりません。6弦には軽く当てて、5弦の方をしっかりと押え込む感じですね。
一旦5弦で止めてから4弦を弾く
また、2段目のところでは(赤➡)、6弦、4弦と弦が離れています。この場合でも両方親指で弾きますが、まず6弦をアポヤンド奏法で弾いて、一旦5弦に親指を止めます、その後さらに4弦をアポヤンド奏法で弾きます。もちろんあまり時間をかけてはいけませんので、連続した弦を弾く場合より難しくなりますが、ヴィラ=ロボスの曲を弾く場合には、この弾き方がどうしても必要です。
一旦5弦に親指を止めてから4弦を弾かないと、どうしても5弦が鳴ってしまうので、難しくてもこの弾き方が必要になる訳です。
6弦を早めのタイミングで弾くのがコツ
さらに、この場合どうしても4弦を弾くのが遅れるので、6弦の方は実際にのタイミングよりやや前に弾くのがポイントです。6弦ではなく、4弦にタイミングを合わせる訳ですね、これが出来るといろいろなところに応用が出来ます。
3弦に止める
また2段目の赤丸のところは5,4弦と2,1弦の4個の音を同時に弾くのですが、5,4弦を親指、2,1弦を中指と人差し指で弾きます。この場合の親指はアルアイレ奏法でもやむをえないところですが、主旋律は5弦ではなく、4弦の方なので、出来れば親指を3弦で止めたいところです。
かなりハードルの高い弾き方ですが、そうすることにより、4弦の主旋律がしっかりと鳴ってくれます。しかし実際にはプロ、アマを問わず、ここは5弦のほうが大きく出てしまう人が多いですね。
まだまだ続く
ヴィラ=ロボスの前奏曲第1番の親指の使い方、まだまだこれだけではありませんが、とりあえず今回はこれだけにして、次回またこの続きをやりましょう。
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