この「新進演奏家シリーズ」もかなり長くなってしまいましたが、今回は最終回としてこれらの14枚のCDの中から私自身の好みと誤解によるベスト3を、もちろん当事者の了承を得ず勝手に決めてしまおうと思います。
「ベスト3」と言ってもそれは演奏の優劣などではなく、あくまでも私の趣向に合ったものと言う意味です。優劣といった意味では彼らはそれぞれ世界の最高ランクのコンクールで1位を(しかも複数)獲っているわけですから、14人とも当然同率1位ということになります。また私などには彼らの能力の優劣を見極められる力があるはずもありません。
またそのギタリストの特徴などをたった1枚のCDなどで掴みきれるものではなく、生の演奏聴いたり、また別のCDを聴いたり、また別の楽器を使ったりすると全く違った印象を持つのは当然です、全く正反対の印象ということもあり得るでしょう。
そう言ったわけで、私の偏向的ベスト3の発表! ・・・・と行きたいところですが、その前に惜しくもベスト3を逃したギタリストからの発表です(別に惜しくもないか)。
次点 マルティン・ディラ
このギタリストの音は本当に美しい。透明感があり、高貴さが漂います。1曲目、2曲目のロドリーゴとタンスマンの曲ではまさにそのとおり、単音が美しいだけでなく和音や重音も美しい。ポンセの「ソナタ・ロマンティカ」はこれまで聴いたどの演奏よりもすばらしく、曲の内容もしっかり伝わってきます。この曲の演奏の一つの指標になるのではと思います。
当初は3位以内に考えていたのですが、最終的に外れてしまったのは3位以内のギタリストの演奏に比べて、どこかで強い印象を残しきれないものがあったのでしょう(相当勝手なことを言っていますが)。曲目などが違えばまた別のランキングになったのではと思います。
次点 トーマ・ヴィロトー
この人の演奏はギター的というよりピアノ的な演奏を感じます。タンスマンの作品では曲の内容とも重なって、それが顕著に出ています。ヒナステラの「ソナタ」では音量の幅も大きく、またクリヤーに演奏され、頻繁に出てくる特殊奏法もたいへん効果的でとてもスリリングで面白く聴けました。一方、クライマックスでもコントロールを乱すこともありません。
特殊チューニングの「トリアエラ」もたいへん印象的、このCDも迷った末での「次点」ですが、出来れば別の楽器での演奏も聴いてみたいと思いました。
*音の美しいギタリスト
前にも書いたとおり、音色の美しいギタリストは多く、その中でもラファエル・ミニャーロ、 ジェローム・ドゥシャーム、 ニルセ・ゴンザレスなどが挙げられます。ミニャーロはこの14人中でも一、二を争う美しい音の持ち主。ドゥシャームは何度か書いたとおり穏やかでくつろげる音。ゴンザレスのタレガの小品は「これぞギター」といった印象です。
第3位 アドリアーノ・デル・サル
いよいよベスト3ですが、第3位は最も新しく発売されたこの「アドリアーノ・デル・サル」のCDです。聴きようによっては「何もそこまでしなくても」と思える演奏で、多くのギタリストが作曲家の意図や音楽の自然さを大事にしているところ、あくまでも自分の表現にこだわる演奏です。その気持ちの入れ方には一種の執念を感じます。
その気迫に押されてのベスト3入りとも言えますが、何度か書いたとおり、演奏次第では長くて冗漫にも聴こえるソルの「幻想曲作品7」を、最後まで集中と好奇心を欠くことなく聴きとおすことが出来、さらにこの曲のすばらしさを再発見することが出来たということが、私がこの順位にした最も大きな理由です。
表現にこだわるといっても、それは決して直感的なものではなく、その音楽を徹底して考え抜いた結果の表現といえるでしょう。「主題と変奏」が室内楽的に聴こえるのはその結果なのだと思います。またあえて言うまでもありませんが、タレガ、ロドリーゴ、モレーノ・トロバの演奏も秀逸です。
第2位 イリーナ・クリコヴァ
クリコヴァの演奏についてはこれまで書いたとおり、豊かで弾力性のある音で、旋律の歌わせかたには特にすばらしいものがあります。テンポやアーティキュレーション、音色、音量など音楽表現上のすべてのことがその音楽の要請に応じて極めて適切に行なっているのでしょう。
クリコヴァの演奏はヨーロッパの音楽の伝統を感じる、といったことも書きましたが、プロフィールによるとチェリストの母親により、幼少時から音楽を学んだとのこと。持って生まれた素質に加え、音楽的にはたいへん恵まれた環境にあったのでしょう。クリコヴァの演奏にはそれらのことがよく反映されています。
”新進ギタリスト”と言っても、クリコヴァはすでに十分に成熟したギタリストと言え、おそらくその演奏は多くのギター・ファンに支持され、また高く評価されてゆくものだと思います。21世紀のギター界をリードしてゆくギタリストになることは間違いないのでは。
第1位 フローリアン・ラルース
このシリーズのギタリストは、「上手い」とか「技術が高い」などということは当然ですが、こんな感性を持ったギタリストがいたと言うことにはたいへん驚きました。まさに”想定外”のギタリスト! 思い過ごしかも知れないと何度か聴きなおしてみても、その印象は変らず私の中では他を圧倒しての1位。
レゴンディの「序奏とカプリッチョ」は演奏次第ではなかなかよい曲なのではと思っていたのですが、これまで納得できる演奏には遭遇せず、やはり”イマイチの曲”かなと思っていたのですが、このラルースの演奏を聴いて、これこそ私の望んでいた演奏、いやそれをはるかに上回る演奏と感じました。まさに妖艶な魅力がほとばしる演奏。
ホセの「ソナタ」はこれまで特に興味のある曲ではなかったのですが、ラルースの演奏で、その真価を初めて理解出来たように思います。またダンジェロの曲は”この世のもとは思えない”演奏。
いずれこのギタリストの生演奏とか、別のCDを聴く機会もあると思いますが、それは楽しみではありますが、同時に聴くのが怖い気もします。生演奏を聴いてみたらまるで別人だった ・・・・そんなことにならなければ。
ギターの未来は明るい
結局のところベスト3には2009年以降録音したCDが入りました。ということは年を追うごとにすばらしいギタリストが登場しているということになります。正しくは年々私の好みにあった演奏家が育っているということでしょうか。最近ともすれば暗い話題が多いのですが、ことギターの未来に関しては、極めて明るい ! 21世紀はまさにギターの世紀では。
ギタリストだけでなくその作品も年々優れた作品が作られていて、ギターのレパートリーはますます充実してゆくでしょう。こういったことは同じクラシック音楽でもオーケストラやピアノなどにはあまり見られないことではと思います。重ねて言っておきましょう、 ギターの未来は明るい !!
CDコンサート
といった訳でこの「新進演奏家シリーズ」の記事も終わりになりますので、前に言っていた「CDコンサート」を私のギター・スタジオでささやかに行ないたいと思います。日にち的には、6月5日(日曜日)を考えていますが、詳細については後日また案内させていただきます。特に会費等は考えていませんが、10名前後くらいで、時間はティー・タイムなどを含めて3時間くらいと考えています。対象者としては、当ブログを読んでいる方、当教室の生徒さんその他ということになります。
「ベスト3」と言ってもそれは演奏の優劣などではなく、あくまでも私の趣向に合ったものと言う意味です。優劣といった意味では彼らはそれぞれ世界の最高ランクのコンクールで1位を(しかも複数)獲っているわけですから、14人とも当然同率1位ということになります。また私などには彼らの能力の優劣を見極められる力があるはずもありません。
またそのギタリストの特徴などをたった1枚のCDなどで掴みきれるものではなく、生の演奏聴いたり、また別のCDを聴いたり、また別の楽器を使ったりすると全く違った印象を持つのは当然です、全く正反対の印象ということもあり得るでしょう。
そう言ったわけで、私の偏向的ベスト3の発表! ・・・・と行きたいところですが、その前に惜しくもベスト3を逃したギタリストからの発表です(別に惜しくもないか)。
次点 マルティン・ディラ
このギタリストの音は本当に美しい。透明感があり、高貴さが漂います。1曲目、2曲目のロドリーゴとタンスマンの曲ではまさにそのとおり、単音が美しいだけでなく和音や重音も美しい。ポンセの「ソナタ・ロマンティカ」はこれまで聴いたどの演奏よりもすばらしく、曲の内容もしっかり伝わってきます。この曲の演奏の一つの指標になるのではと思います。
当初は3位以内に考えていたのですが、最終的に外れてしまったのは3位以内のギタリストの演奏に比べて、どこかで強い印象を残しきれないものがあったのでしょう(相当勝手なことを言っていますが)。曲目などが違えばまた別のランキングになったのではと思います。
次点 トーマ・ヴィロトー
この人の演奏はギター的というよりピアノ的な演奏を感じます。タンスマンの作品では曲の内容とも重なって、それが顕著に出ています。ヒナステラの「ソナタ」では音量の幅も大きく、またクリヤーに演奏され、頻繁に出てくる特殊奏法もたいへん効果的でとてもスリリングで面白く聴けました。一方、クライマックスでもコントロールを乱すこともありません。
特殊チューニングの「トリアエラ」もたいへん印象的、このCDも迷った末での「次点」ですが、出来れば別の楽器での演奏も聴いてみたいと思いました。
*音の美しいギタリスト
前にも書いたとおり、音色の美しいギタリストは多く、その中でもラファエル・ミニャーロ、 ジェローム・ドゥシャーム、 ニルセ・ゴンザレスなどが挙げられます。ミニャーロはこの14人中でも一、二を争う美しい音の持ち主。ドゥシャームは何度か書いたとおり穏やかでくつろげる音。ゴンザレスのタレガの小品は「これぞギター」といった印象です。
第3位 アドリアーノ・デル・サル
いよいよベスト3ですが、第3位は最も新しく発売されたこの「アドリアーノ・デル・サル」のCDです。聴きようによっては「何もそこまでしなくても」と思える演奏で、多くのギタリストが作曲家の意図や音楽の自然さを大事にしているところ、あくまでも自分の表現にこだわる演奏です。その気持ちの入れ方には一種の執念を感じます。
その気迫に押されてのベスト3入りとも言えますが、何度か書いたとおり、演奏次第では長くて冗漫にも聴こえるソルの「幻想曲作品7」を、最後まで集中と好奇心を欠くことなく聴きとおすことが出来、さらにこの曲のすばらしさを再発見することが出来たということが、私がこの順位にした最も大きな理由です。
表現にこだわるといっても、それは決して直感的なものではなく、その音楽を徹底して考え抜いた結果の表現といえるでしょう。「主題と変奏」が室内楽的に聴こえるのはその結果なのだと思います。またあえて言うまでもありませんが、タレガ、ロドリーゴ、モレーノ・トロバの演奏も秀逸です。
第2位 イリーナ・クリコヴァ
クリコヴァの演奏についてはこれまで書いたとおり、豊かで弾力性のある音で、旋律の歌わせかたには特にすばらしいものがあります。テンポやアーティキュレーション、音色、音量など音楽表現上のすべてのことがその音楽の要請に応じて極めて適切に行なっているのでしょう。
クリコヴァの演奏はヨーロッパの音楽の伝統を感じる、といったことも書きましたが、プロフィールによるとチェリストの母親により、幼少時から音楽を学んだとのこと。持って生まれた素質に加え、音楽的にはたいへん恵まれた環境にあったのでしょう。クリコヴァの演奏にはそれらのことがよく反映されています。
”新進ギタリスト”と言っても、クリコヴァはすでに十分に成熟したギタリストと言え、おそらくその演奏は多くのギター・ファンに支持され、また高く評価されてゆくものだと思います。21世紀のギター界をリードしてゆくギタリストになることは間違いないのでは。
第1位 フローリアン・ラルース
このシリーズのギタリストは、「上手い」とか「技術が高い」などということは当然ですが、こんな感性を持ったギタリストがいたと言うことにはたいへん驚きました。まさに”想定外”のギタリスト! 思い過ごしかも知れないと何度か聴きなおしてみても、その印象は変らず私の中では他を圧倒しての1位。
レゴンディの「序奏とカプリッチョ」は演奏次第ではなかなかよい曲なのではと思っていたのですが、これまで納得できる演奏には遭遇せず、やはり”イマイチの曲”かなと思っていたのですが、このラルースの演奏を聴いて、これこそ私の望んでいた演奏、いやそれをはるかに上回る演奏と感じました。まさに妖艶な魅力がほとばしる演奏。
ホセの「ソナタ」はこれまで特に興味のある曲ではなかったのですが、ラルースの演奏で、その真価を初めて理解出来たように思います。またダンジェロの曲は”この世のもとは思えない”演奏。
いずれこのギタリストの生演奏とか、別のCDを聴く機会もあると思いますが、それは楽しみではありますが、同時に聴くのが怖い気もします。生演奏を聴いてみたらまるで別人だった ・・・・そんなことにならなければ。
ギターの未来は明るい
結局のところベスト3には2009年以降録音したCDが入りました。ということは年を追うごとにすばらしいギタリストが登場しているということになります。正しくは年々私の好みにあった演奏家が育っているということでしょうか。最近ともすれば暗い話題が多いのですが、ことギターの未来に関しては、極めて明るい ! 21世紀はまさにギターの世紀では。
ギタリストだけでなくその作品も年々優れた作品が作られていて、ギターのレパートリーはますます充実してゆくでしょう。こういったことは同じクラシック音楽でもオーケストラやピアノなどにはあまり見られないことではと思います。重ねて言っておきましょう、 ギターの未来は明るい !!
CDコンサート
といった訳でこの「新進演奏家シリーズ」の記事も終わりになりますので、前に言っていた「CDコンサート」を私のギター・スタジオでささやかに行ないたいと思います。日にち的には、6月5日(日曜日)を考えていますが、詳細については後日また案内させていただきます。特に会費等は考えていませんが、10名前後くらいで、時間はティー・タイムなどを含めて3時間くらいと考えています。対象者としては、当ブログを読んでいる方、当教室の生徒さんその他ということになります。
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