中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

<音楽基礎講座 on Blog>  速度標語  16


モデラート はその言葉どおり ”中くらい” と言うことだが、やや速め



 モデラートはその言葉どおり中くらいということですが、いくぶん速めに演奏されることが多いようです。 聴いた感じでは速いとも、遅いとも感じないくらいというのが一番よいようです。 この速度標語も、18世紀半ば頃(古典派以降)から使われていて、ハイドンなどもよく使っています。 



モーツァルト、ベートーヴェンは過激な作曲家

 しかし、ここでもモーツァルトやベートーヴェンはほとんど使わなかったようです。 両者とも ”中途半端” な速さの曲は、あまり好きではなかったようです。 一方、ラヴェルやドビュッシーなどのフランス系の作曲家は好んで、このモデラート(フランス語で ”モデレ” と表記したが)を使用していました。

 速さそのもは全く違うのですが、性格的にはラルゴと共通するところもあるのでしょう。 それにしてもモーツァルトとベートーヴェンは”個性的” というより ”過激な” 作曲家だったのですね。





アレグロ  クラシック音楽の標準形 音楽は楽しくなければならない

 アレグロはクラシック音楽にとっては最も普遍的な速度標語で、古典派時代からロマン派時代にかけては、交響曲や協奏曲、ソナタ、室内楽などの第1楽章はほぼアレグロに決まっていました。 また何の速度標語も書かれていない場合、基本的にアレグロと考えるのが常識でした。

 本来の意味は前に書いたとおり、「陽気な」 とか、「楽しい」 と言った意味になります。 つまりこの時代、音楽は楽しくなければならなかったのですね。 もちろん ”悲しいアレグロ” つまり短調のアレグロもあった訳ですが、やはりその数は少ないものでした。



短調の交響曲は少ない

 例えば、モーツアルトには40数曲(はっきりはしていない)ほど交響曲がありますが、そのうち短調のものは2曲しかありません。 もっとも、その2曲ともト短調で書かれた人気作品で、特に40番の方は、モーツァルトの作品を代表するものになっています。

 しかし割合からすると、モーツァルトは5%しか短調の交響曲を作曲しませんでした。 協奏曲や室内楽などもほぼ同じです。 「運命」など短調の作品をよく書いたように思われるベートーヴェンでさえ、9曲の交響曲のうち、短調の作品はその第5番「運命」と第9番の2曲しかありません。 協奏曲も7曲中、1曲のみとなっています。

 長調と短調のアレグロ楽章が同等に作曲されるようになるのは19世紀半ば以降で、ブラームスは長調、短調、ほぼ同数の交響曲と協奏曲を書いています。 ブルックナーとマラーの場合はそれぞれ9曲の交響曲のうち、短調が6曲と逆転しています。



世の中が平穏になってくると

 18世紀から19世紀にかけては、ヨーロッパもまだまだ戦争や病気、貧困などがまん延し、、けっして明るく、平和な時代とはいえなかったようです。 ならばせめて音楽の世界だけでも楽しくしたいということだったのでしょうか。 確かに19世紀もだんだん後半になって、暮らしもよくなり、医学も進歩してくると、だんだん短調の曲も多くなってきたようです。



速度標語が付けられるようになったのは、バロック時代からだが

 さて、アレグロはクラシック音楽では、最も普遍的な速度標語だということを言いました。 音楽は明るいだけでなく、軽快でなければならないということでしょう。 音楽に速度標語が添えられるようになったのはバロック時代、つまり17世紀以降となりますが、この時代から本格的に器楽音楽が始まったと言ってよいでしょう。

 速度標語を含めた音楽用語がイタリア語であることからしても、この時代はイタリアの音楽が主流だったと言えます。 アレグロといえば、この時代、コレルリやヴィヴァルディなどの協奏曲が思い起こされるわけですが、これらの協奏曲は主に4分音符~16分音符で出来ていることが多く、4分音符を1拍とすることが一般的になりました。



アレグロの場合も時代を経るごとに速くなって行く

 これらの協奏曲のアレグロ楽章(第1、第3楽章)は、今現在4分音符=80~120くらいで演奏されています。 当時もこのテンポで演奏されていたかどうかはわかりませんが、演奏者や聞き手のことを考えると、ほぼ同じくらいだと考えられます。 速いと言っても「快適」ということですから、遅すぎてもいけませんが、あまり速すぎると快適ではなくなってしまいます。

 これが古典派、ロマン派と時代の経過と共にだんだん速くなってくる傾向にあります。 つまり速い曲と遅い曲の差がだんだん大きくなって来たということになります。 こうしたことは演奏の際によく考慮しておく必要があるでしょう。



言葉が付け加えられるようになる

 古典派時代以降になってくると、アレグロという速度標語に「アレグロ・モデラート」 や 「アレグロ・ヴィヴァーチェ」、 「アレグロ・マエストーソ」 など補助的な言葉が添えられるようになります。 音楽がいろいろ多様化したことが主な理由と思いますが、 それに従い、アレグロと言う意味が「楽しい」ということよりも、単純に「速い」という意味に変わってきたのでしょう。



”コン・ブリオ” はベートーヴェンの専売特許?

 このアレグロに添えられる言葉は、それぞれの作曲家によって好みが異なります。 ベートーヴェンの場合は、何といっても 「アレグロ・コン・ブリオ」 を好んで使用し、9曲の交響曲のうち 第1番、第2番、第3番『英雄』、第5番『運命』 の第1楽章と 第7番の第4楽章に、この 「アレグロ・コン・ブリオ」 が付けられています。

 「コン・ブリオ」の意味としては「生き生きと」とか「活気づいて」といった意味ですが、ベートーヴェンの場合、さらにもっと「力強く」 とか 「精神を集中して」 といったような意味も込められているように思います。

 あるいは、私たちが 「アレグロ・コン・ブリオ」 というと、いやでもベートヴェンの 「運命」 や「英雄」を思い出しますから、私たちにとっては ”コン・ブリオ=ベートヴェン的な曲” というイメージになってしまうのでしょう。



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いかにも ”コン・ブリオ” な感じの肖像画。 ベートヴェンの肖像画といえば、だいたいこの角度で、この角度がベートーヴェンのベスト・アングルなのかも。 。



”ワルツ第4番” にも付けられている

 ギターの方では、バリオスの 「ワルツ作品8-4」 にこの 「コン・ブリオ」 が付けられています。 「コン・ブリオ」 は、アレグロの中でも、かなり速い速度を言ってるので、テンポはなるべく速いほうが良いのですが、それに加えて、ダイナミックさ、つまり強弱の大きな変化も要求されているといってよいでしょう。



走り去る悲しみ

 モーツァルトはよく「モルトー・アレグロ」という速度標語を用います。 「モルトー」 は「出来る限り」といった意味ですが、速い曲が好きだった(と思われる)モーツァルトらしい速度標語ですね。

 有名な「交響曲第40番」などに付けられていて、この曲は短調でメロディの美しく、悲しい曲。 演奏者は当然ややゆっくり目に演奏したいと思うところですが、モーツァルトは、演奏が可能であれば、出来るだけ速く演奏するようにと言っている訳です。

 要するにモーツァルトはこの曲を感傷的に演奏することを好まなかったのでしょう。 誰かが言っていたような気がしますが、まさに ”走り去る悲しみ” といったところでしょうか。



ジュリアーニはアレグロ・マエストーソ

 ギターのほうでは、ジュリアーニが比較的 「アレグロ・マエストーソ」 を好んで使用していました。 「大序曲」や 「協奏曲第1番」などがこの「アレグロ・マエストーソ」となっています。 堂々として、華やかな音楽を好んだジュリアーニらしいですね。

 因みに「アレグロ・マエストーソ」 はそれほど速く演奏することを言っている訳ではなく、アレグロとしては中庸、単純に速度だけで言えば「アレグロ・モデラート」とだいたい同じと考えられます、もちろん曲の感じはだいぶ違います。


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ジュリアーニは ”マエストーソ” な音楽家を目指したのか。 ソルの肖像画とよく似ているが、ソルは反対向き。



プレスト  速いけど、ちょっと軽い
ヴィヴァーチェ  速いだけでなく、にぎやか



 アレグロよりも速い速度標語としては、Presto と Vivace があります。 プレストは速いけれども、ちょっと軽い感じもあります。 したがって、第1楽章などに付けられることはあまりなく、終楽章などに主に付けれらます。

 モーツァルトの 「第40番」の第1楽章 もなぜ 「プレスト」 ではなく 「モルトー・アレグロ」 なのかと言うこともそのあたりに理由があるようです。 やはり交響曲の第1楽章は「アレグロ」でなければならないのでしょう。 



アウトバーンを走るメルツェデス?

 ヴィヴァーチェは 「忙しく」 とか 「せわしく」 と言ったような意味ですが、「にぎやか」と言った意味もあり、静かな曲には、あまり付けられないようです。 代表な曲としてはベートーヴェンの 「交響曲第9番」 の第2楽章が挙げられます。 かなり速く演奏されますが、速いだけでなく、非常に力強く、まるで戦車かブルトーザーが高速で走っているようだ、などと前に書きました。

 モーツァルトの 「交響曲第41番『ジュピター』」 の第1楽章は「アレグロ・ヴィヴァーチェ」となっています。 こちらはベートヴェンの「第9」ほどではないとしても、やはり力強く、なおかつ高貴さも漂います。 こちらは ”4000CCのメルツェデス・ベンツ” といったところでしょうか。

 




まとめのまとめ

 これで、当ブログをちゃんと読んだ人は、速度標語について完璧に理解できたと思います。 特にそれrぞれの測度標語の性格、キャラクターと言ったものをしっかりと把握できたのではないかと思います。 こうしたことは実際に曲を演奏する際に絶対必要な知識です・・・・・・・・・

 例題の ”わけあり社員” のように家庭のちょっとした問題から、会社の重大問題まで Prsto に片付けてくれる人がいたら、本当に助かりますね。
 
 「あなたは Lento な人ですね」 などと軽々しく人に向かって言ってはなりません。 自分に対して 「私はちょっと Lento なもので」 とかいうのは、謙譲語としてよいでしょう、ショパンのワルツのように。

 Grave な明日香ちゃんのお母さんと、Adagio なシュンちゃんのおばあさんとは、どこか性格が似ていますね、なんとなく、ちょっと ”ねちっこい” ところが。 ただ明日香ちゃんのお母さんのほうがちょっと ”きつめ” かな。

 Allegro な日がずっと続けば言うことないのですが、 でもやはり Allegro な日は走り去ってしまうものですね、モーツァルトの曲のように。 翔くんと香澄ちゃんは、その後どうなったのでしょうか? 翔くんの思う方向に進んだのでしょうか?

 Largo な性格のミタ・センパイは、後輩たちに、たかられようが、いじられようが、そんなことは気にしません。 後輩たちが楽しそうに食べて、飲んでいる姿を見れば、それで嬉しいわけです(自分ではお酒は飲めないが)。 また次の柔道大会の応援に駆けつけてくれるでしょう。



 
 

 
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<音楽基礎講座 on Blog>  速度標語  15

まとめ 2



アンダンテ ~ちょっと厄介なテンポ


 前回に引き続き、音楽基礎講座のまとめを行っています。 前回は最も遅いクラスの Largo Adagio Grave Lento について書きましたが、今回は Andante からです。  このアンダンテは 「中庸なテンポ」 のクラスと言えますが、 音楽辞典の記述も若干迷走しているとおり、ちょっとやっかいなものです。

 その音楽乃友社の音楽辞典では中庸なテンポではあるが、「速い速度に属するか、遅い速度に属するかは意見が一致しておらず」と言っている訳です。 



”歩く速さ” と言うけれど

 また、一般にアンダンテは 「歩く速さ」 と解釈され、学校での音楽の教科書等にもこのように書かれているのではないかと思います。 しかし実際に歩くといっても、ゆっくり歩く場合と、速く歩く場合では、速度が2倍以上は異なるでしょう。

 さらに、素朴な疑問といえるかも知れませんが、歩くと言った場合、1拍、つまり4分音符1個で片方の足なのか、それとも両足で1拍なのか、といった疑問もあります。

 このように一般に言われていたり、記述されていることを読んだりしただけでは、アンダンテがどのようなテンポかと言うことはわかりません。 そうなると、実際にアンダンテの曲はどう書かれ、どう演奏されているかを様々な曲で聴いてみるしかないでしょう。



モーツァルトは明らかにアンダンテを遅いテンポと考えている

 実際の講座ではモーツァルトのピアノ協奏曲第21番ハ長調K467の第2楽章を聴いてもらいました。 内田光子、ジェフリ・テイトの演奏では、 4分音符=56 くらいで、かなりゆっくりです。



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内田光子、ジェフリ・テイト のモーツァルトピアノ協奏曲集



 この演奏は特に遅いと言う訳でもなく、現在出されているCDとしては平均的なテンポと考えられます。 これくらいのテンポだと、ラルゴやアダージョなどともあまり変わらないでしょう。

 モーツァルトの場合、交響曲や協奏曲の第2楽章は、ほとんどアンダンテとなっています。 おそらく9割くらいはアンダンテとなっているでしょう。 残りはアンダンティーノ、ラルゲット、アレグレットとなっています。

 この時代の第2楽章は、基本的にゆっくりした楽章、つまり緩叙楽章となるので、少なくとも、モーツァルにとっては、アンダンテは「ゆっくり」 といったイメージなのではないかと思います。

 ただ、いろいろな状況からすると、モーツァルト自身はかなり速く演奏したようなので、今現在演奏されているよりは速めに演奏していたかも知れません。  また、「やや速く」 と言った意味のアレグレットも、場合によっては ”ゆっくりした曲” 扱いになるようです。



数字上ではもっと遅く演奏される場合もある

 その他、いろいろな作曲家の作品の演奏を聴いても、やはりアンダンテは中庸というより、”遅い曲” といった感じになっているようです。 私たちが演奏する際にも、そのように理解してもよいのではないかと思います。 講座のほうでは、バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番の「アンダンテ」も聴いてもらいました。

 この曲は拍子記号としては 「4分の3」 となっていますが、バスが8分音符の刻みになっていて、実際には4分音符ではなく、8分音符で拍子を取る感じになります (おそらく、ほとんどの演奏者はそうしていると思いますが)。  

 私もそうですが、他のヴァイオリニストも、8分音符=60~70 くらいで演奏しています。 そうでないと32分音符のところなどもの凄く速くなって演奏出来なくなったり、演奏出来たとしても相当せわしく、落ち着かないものになってしまいます。

 このテンポを4分音符1拍とすれば、30台となりますから、これはもうラルゴ、アダージョ・クラス、あるはそれ以下となるでしょう。 どう考えても中庸なテンポとは言えません。




アデリータとラグリマのテンポ

 ギターのほうでは、よくタレガの、アデリータ(Lento) と ラグリマ(Andante) のテンポが問題になります。 確かにタレガはこうした速度標語を厳密に考えて付けていたわけではなく、自分で演奏する時にもかなり感覚的にテンポを取っていたのではなかと考えられます。 

 しかしだからと言って、これらの速度標語を無視してしまってはタレガの音楽を正しく聴衆に伝えることは出来ないでしょう。 やはりレントとアンダンテの違いをよく考え、感じるべきだと思います。

 この2曲を著名なギタリストがどのようなテンポで演奏しているかと言うと、

<デビット・ラッセル>          アデリータ=78、  ラグリマ=76
<マリア・エステル・グスマン>     アデリータ=74   ラグリマ=70 
<ベルグストローム>          アデリータ=74   ラグリマ=74  




レントよりもアンダンテのほうが遅い?

 このようになっています。 本文中でも書いたたとおり、これではレントのアデリータとアンダンテのラグリマが、同じテンポ、あるいは逆転したテンポで演奏していると言えます。 これらのギタリストはタレガの付けた速度標語を無視しているのでしょうか? 

 そう言ったことも考えられなくはありませんが、講座の中でもやったとおり、アデリータとラグリマを全く同じテンポで弾くと、ラグリマの方が速いテンポに感じられます。 これはアデリータが4分音符中心で、ラグリマは完全に8分音符で刻んでいるので、そう感じるのだと思います。



ワルツ同様、1小節1拍?

 もう一つ考えられることとしては、 ショパンのワルツに「Lento」とされたものがありますが、これらの曲をほとんどのピアニストは 4分音符=130くらいで演奏しています。 この速さは普通に考えるとほとんどアレグロの領域ですが、ワルツの場合、4分音符=1拍 ではなく、1小節、つまり付点2分音符が1拍と感じられます。

 そうすると1拍=40 くらいとなり、確かにレントの範囲となります。 因みに速いワルツ、たとえば「子犬のワルツ」などは、一般に4分音符=300くらいで演奏されます。

 アデリータは「マズルカ」とされていて、マズルカはワルツよりは遅いですが、比較的速いテンポの踊りです。 ワルツと同様に1小節=1拍 と考えると、1拍=20台 ということで、かなりゆっくりなものになります。 




私自身はもっと遅く弾いている

 しかし、アデリータを1小節=1拍 で取るのはちょっと強引すぎると思います。 それではこの曲がかなり早く終わってしまい、聴く人にあまり印象を残さず終わってしまうことになります。 やはり、アデリータをじっくり聴いてもらうとすれば、4分音符=1拍 でよのではないかと思います。

 私自身ではアデリータを 4分音符=64、  ラグリマを68 くらいで演奏しています。 生徒さんにも同じくらいの速さ、またはそれよりも少し遅く弾くように指導しています。 プロのギタリストがアデリータやラグリマを速く弾いているからといって、一般愛好者の皆さんが同じようなテンポで弾くのは、あまりお薦め出来ません。



アンダンテの性格は?

 ところで、ラルゴとアダージョは全く性格が違うということでしたが、このアンダンテの性格とはどんなものなのでしょう。 一般にそうした”アンダンテの性格” などということはあまり語られることはないのですが、やはり性格があるのではないでしょうか、どんなひとにも性格があるように。

 一般に言われている、”歩く感じ” というのはちょっと微妙だと言いましたが、しかしやはりモーツァルトの曲を聴いていると、”そこに留まっている” 感じではありません。 確かに先に進んでゆく感じです。 もう少し具体的言いますと、伴奏を8分音符などで刻んでいる場合が多いようです。



遅いけれども、時間は先に進んでゆく。 私たちの人生のように・・・・

 確かに、それを”歩くような感じ” と言えなくもないのですが、歩くと言っても本当に右、左と足を出す感じではなく、何か、抽象的に時間が先に、先にと進んでゆく感じと言った方がよいかも知れません。  つまり遅いけれども、同じところに留まっているわけではない。 モーツァルトのアンダンテを聴くとそんな風に感じられます。

<音楽基礎講座 on Blog>    速度標語 14


速度標語のまとめ




冗談ぽくなってしまったが、

 修了試験の方はやや冗談ぽくなってしまいましたが、気を取り直して、最後にこれまで話したことをまとめておきましょう。 結論としては本文中に何度もいったと思いますが、Andante とか Allegro といった速度標語は絶対的なテンポを表す、ということよりも、その曲の性格を表すということです。 



メトロノームの数字ではない

 かつてのメトロロームにはそれぞれの速度標語に、メトロノームの数字を対応させたものがありましたが、そのように速度標語は、はっきりとした数字で表せるものではありません。 また Largo と Adagio で、どちらが遅いかなどといったことが音楽辞典に記されていますが、そう言ったことは全く意味がありません。  それでは、改めて速度標語について、遅い方からまとめてゆきます。



<最も遅いクラスの速度標語> 「Largo」  「Adagio」   「Grave」  「Lento」



その性格が違うだけであって、絶対的なテンポの違いではない

 この4つの速度標語は最も遅いクラスのものと言えます。 この相対的な順位などに付いて語っている辞典や書などもありますが、私が実際に演奏されている曲については、全く順位は付けられません。 また同じ速度標語の中でも曲によって、作曲家によって、その作品の時代によって、、また演奏者によってかなり異なります。
  
 しかしだからといって、これらの速度標語は何でも良いと言う訳ではありません。 これらの速度標語には全く違う個性があると言うことです。 特にこの4種類の速度標語はその違いがはっきりしているようです。

 ですから、作曲家が、自らの作品に「『ラルゴ』 としようか、 それとも 『アダージョ』 としようかなど、迷うことはありえないということです。 ラルゴを作曲する時の気持ちと、アダージョを書こうかと思う気持ちでは全く異なるということです。 

 音楽辞典や伊和辞典等の記載については、以前書きましたが、以下は私の個人的見解です。 一般的に言われていることと異なることもあると思いますが、皆さんもいろいろな音楽を聴いて、以下のことを検証してみることをお薦めします。






おおらかで、癒し系の Largo 
  

 おおらかで、癒し系の曲。 どちらかと言えば4部音符などの長い音符の使用が多く、16分音符や32分音符などの細かい音符は少ない傾向にあります。 曲調や、気分の変化などはあまり多くなく、落ち着いた感じが特徴です。 



バロック時代ではそんなに遅くなかった

 バロック時代から使われていましたが、バロック時代ではそれほど遅く演奏されなかったと考えられます。 しかし19世紀半ば以降の作品はそれよりもかなり遅く演奏された。

 それに従い、バロック時代の作品でも19世紀から20世紀半ば頃まではかなり遅く演奏されるのが普通でしたが、20世紀末からのオリジナル楽器系の演奏団体では、おそらくバロック時代に演奏されていたと思われるテンポ、つまり速めのテンポで演奏されることが多くなりました。

 あくまでもおおよその目安ですが、 4分音符を1拍として演奏される曲においては、 バロック時代(17世紀~18世紀前半)の Largo は60~70、 古典派時代(18世紀後半~19世紀初頭)では50~60、 ロマン派時代(19世紀半ば以降)では40~50 といったところでしょう。




繊細で、真面目、秘めた情熱の Adagio 

 Adagio には、繊細で、真面目な感じ。 内に秘めた情熱を感じます。 ラルゴに比べると、16分音符や32分音符などの細かい音符が多く、表情の変化に富む場合が多いようです。



絶対的なテンポとしてはLargo と同じと考えてよい

 バロック時代から20世紀に至るまでたいへんよく使われた速度標語で、 絶対的なテンポとしてはラルゴとほとんど同じと考えてよく、バロック、古典、ロマン派と時代を経るごとにだんだん遅くなるのも同じです。



ラルゴ派とアダージョ派に分かれる

 この Largo と Adagio では作曲家によって使われ方に違いがあることも本文中で言いました。 言ってみれば ”ラルゴ派” と ”アダージョ派” に分かれるわけです。

 ラルゴを好んだ作曲家としては、まずヴィヴァルディ。 ヴィヴァルディの協奏曲の第2楽章の多く、あるいはほとんどがラルゴとなっています。 ヘンデル、ハイドン、ドボルザークと言った作曲家もラルゴの名曲を残しています。



モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスにはラルゴはない

 それに反して、モーツァルトには1曲もラルゴという速度標語のついた作品がありません。 多作家のモーツァルトですから、よく探せば1曲くらいはラルゴが見つかるかも知れませんが、少なくとも交響曲や協奏曲などの主要な作品にはラルゴは見当たりません(ラルゲットはあるが)。 




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モーツァルトには死ぬまで ”のんびりした” 曲は書けなかった



 おそらくモーツァルトにはのんびりした曲とか、表情の変化のない曲というのは書けなかったのでしょう。 同様にベートーヴェンや、ブラームスにも、ラルゴの作品はほとんどありません(全くのゼロではないかも知れませんが)。 やはり音楽には表情の変化や、秘めた情熱が絶対に必要と考えていたのでしょう。




ショパンはなぜアダージョを書かなかったのか?

 Adagio の方については、ゆっくりした曲の速度標語としては非常によく使われるもので、アダージョの作品を書かないという作曲家はほとんどいませんが、 唯一、ショパンのみ、アダージョの作品を書いていません。 ショパンはゆっくりした曲の場合、ほとんど Lento を用いていましたが、Largo の方はそれなりに使っています。 




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なぜショパンはアダージョを書かなかったか? 音楽史上、最大のミステリーといってもよいのでは




 ショパンの音楽には ”表情の変化” も ”秘めた情熱” も十分にあるはずなのですが、なぜショパンはアダージョで作品を書かなかったのでしょうか? 

 これは、あくまで私の推測ですが、ショパンにとってはアダージョという言葉の中に、非常に強いドイツ・ロマン派の香りを嗅ぎとったのではないかと思います。 当時ヨーロッパ全土に拡まるナショナリズムの影響もあったかも知れませんし、またアダージョのイメージにはなにか粘着質のようなものも感じていたのかも知れません。 



速度標語の使い方で作曲家の特徴、あるいは速度標語の意味合いがよくわかる

 こうした理由は明らかではありませんが、ただ、ショパンが Adagio の曲を書かなかったのは確かです。 そして、これが最も大事なことですが、 このことによってショパンの音楽と、 Adagio という速度標語の意味がよく理解できるのではと思います。 




Grave   バロック時代に、組曲の第1曲目としてよく用いられた


 グーラヴェという速度標語は、バロック時代の組曲の第1曲目によく用いられ、その後、交響曲などの序奏として用いられるようになりました。 グラーヴェの序奏を最初に置く意味合いとしては、その音楽をいっそう偉大なものにするため、いわば ”権威付け” のようなものと言えます。 また、その後に続くアレグロ楽章を引き立たせる役割もあったでしょう。 



ベートーヴェンがグラーヴェを悲劇的に仕立てた

 しかしベートヴェンのピアノ・ソナタの「悲愴」などでは、単なる ”序奏” でも ”前口上” でもなく、このグラーヴェが ”悲劇” そのものを非常に強烈に表しています。 何となく私たちに、「グラーヴェ=悲劇的」 といった印象があるのは、このベートヴェンの作品によってなのかも知れません。
 
 ロマン派以降では交響曲などに序奏自体が付く事が少なくなったせいか、グラーヴェとされた曲はあまりありません。 グラーヴェは主にバロック時代に使われた速度標語と考えてよいようです。 



グラーヴェとアダージョは近い関係

 また、グラーヴェとアダージョは比較的近い関係にあるということも言いました。 バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタの「グラーヴェ」がおそらく自らの手で編曲したと思われるチェンバロ版では、「アダージョ」 と書き換えられています。 強いて違いを言えば、グラーヴェの場合は音量的に大きく演奏されることが多いのに対して、アダージョの場合は音量的には控えめのことが多いようで、まさに”秘めた情熱” と言ったところでしょう。 
 




ショパンが好んだ Lento  自虐的な意味があるのかも

 レントは本来(イタリア語)の意味に、「のろま」 とか 「締まりがない」と言った意味があるので、古典派時代にはそれほど用いられていませんでした。 モーツアルトやハイドン、ベートーヴェンなどの作品にはレントはありません。 前述のとおり、ショパンは好んでこのレントを用いたわけですが、自虐的な意味も含まれていたのかも知れません。




無味無臭

 ギターの方ではそれほど多くないとしても、ソルなどが用いていますので、パリなどでは一般的だったのかも知れません。 音楽的な意味としてはただ単に ”遅い” と言うこと以外の意味はなく、いわば ”ニュートラル” なイメージがあります。 そいいった点もショパンが好んだ理由かも知れません。 ショパンは速度標語のイメージに縛られるのが嫌だったのでしょうね。

 おそらく、ショパンの影響で、それ以降のフランスの音楽家(ラヴェル、ドビュッシーなど)を始め、多くの作曲家がこの Lento という速度標語を用いて作曲しています。 したがって、Lento とされた曲は、ほぼ19世紀半ば以降の作品と考えてよいようです。

 
  
        

 
<音楽基礎講座 on Blog>  速度標語  13  


修了試験 答え合わせ 2



<問題4>  ある男子中学生の日記から


 今日は、チョー Allegro な日。 2時間目が終わった休み時間、香澄ちゃんがオレのところまで来て、「ねえ、翔クーン、今度の数学の試験の範囲と、問題が出そうなところ教えて? ・・・・それじゃ、明日、家に行ってもいい?」 なんてね。 

 オレは思わず 「来てよ、来てよ、もちろん来てよ! 何の用もないし、何時でもいいよ!」 と言いそうになったけど、 「明日? ちょっと待ってね。 えーと、ああ、ちょっと約束があったな。 うん、でもなんとかするよ。 時間? そうだね、じゃあ、後でまた連絡するよ」と余裕。

 オレはデキる。 マジ・ヤバ!  ゲキ・ヤバ!  香澄ちゃん、やっぱりオレに気がある、香澄ちゃん照れ屋だから、はっきり言わないけど、でもオレにはわかる。 数学だけは得意でよかった!!!!!!


    答え    マジ・ヤバ(ゲキ・ヤバ)    




超難問!

 今回の基礎講座の受講者のほとんどが over60th と言うこともあって、この問題4は、超難問といえるでしょう。 しかしヒントは出しておきました。

 最近の中学生が、とても嬉しい、あるいは有頂天になっている様子を、どのような言葉で表現するかということですが、 私もよくわからなかったので、ネットで検索してみましたが、「アゲアゲ」、 「テンション・アゲアゲ」、 「ノリノリ」 などといった言葉を使うようです。 さらには私たちには未知の言葉もあるかも知れません。




同じ中学生でも女子と男子では違う

 同じ中、高生でも女子と男子では、言葉の使い方が異なると思いますが、女子の場合は様々な言葉を新しく作る傾向にあるようです。 文字通り、私たちには未知の言葉も使用するわけです。 その中の一部が一般成人にまで使われるようになると、流行語として新たに日本語として認められるなど、流行語の発信源でもあるようです。



少ない種類の言葉で会話を済ます

 男子の場合は、逆に一つの言葉に多様な意味を持たせ、少ない言葉で会話を済ませてしまう傾向があります。 「マジ」 とか 「ヤバイ」 などという言葉は典型的な言葉だと思います。 もちろんその両方を組み合わせて 「マジ・ヤバ」 なんてよく言いますすね。

 この 「マジ・ヤバ」 を通常の日本語に直したらどうなるでしょうか、難しいですね。 この言葉は、その状況で全く意味の異なる言葉で、確かに本当に 「すごく危険だ」、 「本当に、まずい状態だ」 と言ったマイナス的な意味に使うこともありますが、 「素晴らしい」 とか 「おいしい」、 「面白い」、 「きれい」 などプラスの事柄に使うことも多く、最近ではこういった意味の方によく使われるようです。



ヒントに気付いた人はいなかった

 つまり基本的には意味を持たない言葉なので、どんな状況にも使える訳です。 強いて言いえば、「『マジ・ヤバ』とは、様々な状況での感嘆を表す言葉」ということでしょうか。 簡単ですね、答えは。 しっかりヒントを出しておいたのですが、残念ながらそれに気づいた人はいませんでした。 もう少し楽譜同様、文章も読みましょう! 



間違った言葉使いのほうが中学生らしい

 他の答えとして、前述のとおり「アゲアゲ」 や 「ノリノリ」 の他に、最近の若い人は英語の本来の意味に関係なく「テンション」などという言葉をよく使います。 テンションとは本来 「緊張」 とか 「不安」 と言った意味で、 国家間が緊張した状態、つまり戦争が起きそうな事態も「テンション」 と言う訳で、 どこにも「楽しい」などという意味はありません。
 
 この「テンション」という言葉を「興奮した状態」、あるいは「気分が高揚した状態」と捉え、さらに「すごく楽しい状態」と連想して行ったのでしょうね。 確かに「今日はチョー・ハイ・テンションな日」は英語的には全く違う意味になるのですが、このような誤ったことばを使うことにより、より中学生らしい文に仕上がるのではと思います。 もちろん「ハイ・テンション」 は正解です。

 と言った訳で、20点満点の正解者、つまり中学生が使いそうな言葉を書いた人(ハイ・テンション) は一人しかいませんでしたが、「ハッピー」、 「ラッキー」、 「ゴキゲン」 といった言葉も、昭和の時代であれば、問題なく正解なので、2点減点の18点としました。





<問題5>  居酒屋で、名門大学柔道部の学生とそのOB

 「イヨー! ミタ・センパイ! ミタ・センパイ本当に ① Largo っすね、 ごっつぁんです!   おおーい、お代わり欲しいやつ!  ええーと、イチ、ニイ、サン・・・・  じゃあ生6つ! それからトリカラ! 鶏ナンコツも・・・・ あとフライド・ポテトに、出し巻き」

 「本当にミタ・センパイは ② Largo いいっす、1年次の評判も最高っすよ、「ミタ・センパイは人格が違う」って。 そこいったら、あのノムラ・センパイ。 ノムラ・センパイは現役時代の成績はハンパなかったっすけど、 何ちゅうても 『オイ、今日はワリだからな』 ですよ!  あれじゃ形無しっすよ、全国大会連覇も・・・」

 「おお、来た、来た、こっち、こっち。 それじゃ、もう一回! カンパーイ!」


    答え   ① 太っ腹        ② 気前



出題の仕方に問題

 ちょっと出題の仕方に問題がありましたね、 確かに混乱しやすい問題です。 Largo には「気前がいい」という言葉も入っているので、これが①か②のどちらかに入るのは確かで、ほとんどの人はどちらか、あるいは両方に「気前」 あるいは 「気前がいい」と書きました。

 確かに、①が「気前いい」で、 ②が「気前」でも、文としては成立してしまいます。 でも同じ言葉を入れたのでは、少なくとも、問題としては成立しないので、別の言葉が入ると思ってほしかったところ。  出題者としては、①の「太っ腹」を書いてほしかったので、その伏線として「気前いい」も問題にしたわけです。

 ①②の順番を変えるともう少しわかりやすかったかも知れません。 やや混乱したものの、正解者の多い問題でした。「太っ腹」なんて体育会系の人がよく使いますよね。




最高得点は98点

 さて、試験結果のほうですが、最高得点者は98点で、中学生言葉がやや昭和の香りがしたこと以外は、完璧に正解でした! たいへん素晴らしいと思います。 限られた時間内で、よく適切な言葉を選んだと思います。

 他に、参考記録として、自宅などでやっていただいた方で、100点、97点の方がいました。 100点の方は、前述のとおり中学生言葉も正解(唯一の)でした。 年齢が30代ということで、若干アドバンテージはあったかも知れません。



女性の方が圧倒的に成績がよかった

 この3名の方はすべて女性で、その他の女性の受講者も高得点でした。 平均点を出すと、圧倒的に女性のほうが成績がいいようです。 男性に比べて女性の方が言葉に対する反応力があるのだろうと思いますが、それと共に、文章を読んで、出題者の意図、つまり私の意図をしっかりと読んだのでしょう。



文章も、 楽譜も、 空気も、 やはり読めなければならない!

 バカげた試験ではありましたが、その結果は、終わってみると、やはりギターの上達と、無関係ではなかったようです。 特に音楽の理解力とはかなり相関関係があるように思います。 文章も楽譜も最初からある訳ではなく、誰かが書いたものです。 その書いた人の意図を読まない限り、読んだことにはならないでしょう。  

 文章も、 楽譜も、 空気も、 やはり読めなければならない!

 ・・・・・・・・本題の速度標語と関係なくなってしまいましたので、次回まとめを行います
 
<音楽基礎講座 on Blog>   速度標語  11



修了試験



資料などは見ても構いません

 それでは、音楽基礎講座「速度標語編」の修了試験を行います。 問題用紙2枚と答案用紙が1枚あります。 例題よく読んでから解答して下さい。 なお解答し終わった方から答案用紙を提出してください。

 先ほど言ったとおり、資料等は何を見ても結構ですが、隣の人の解答は見ないでください。  正解は一つではありません。 また必ずしも正解とは言えない解答でも、文章的にある程度成立するものであれば、中間点を差し上げます。 なお、点数配分は、5問ともそれぞれ20点で、満点は100点となります。  ①、② と二つの言葉が入る場合は、それぞれ10点ずつとなります。


 *特に前の記事を読んでいなくても、簡単に出来る問題なので、ちょっと立ち寄った人も、ぜひやってみて下さい




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  例題に従い、赤字で示した速度標語を、文章全体や、登場人物のキャラクター等から考え、適切な言葉に置き換えよ。 なお、①と②は別の言葉が入る。




<例題> 都内サウナで。 恰幅の良い大企業の会長と、マッチョでイケメンな訳アリ社員の会話。


「君、今日は済まなかったね、朝早くから呼び出して。 本当に助かったよ」

「いえ、いえ、とんでもない、会長の御用とあらば、① Presto い御用ですよ」

「朝早く、家内が『家中の電気が消えちゃった』って大騒ぎ。 こんな時間に停電もないだろうから、ブレーカーが落ちたんじゃないかって言ったら、『ブレーカーって何?』ときた。 どうやらエアコンが故障したことまではわかったんだけど、なにせ早朝。 修理屋
に電話してもつながらないし、そこで君に連絡したと言う訳だ」 

「エアコンの室外機にナメクジが入っただけでしたよ、季節柄よくあることで。 ちょっと前まで便利屋やっていたもので、何てことないです。 時間も時間なので本当にこれぞ ② Presto ってやつですよ」

「本当にありがとう。 そう言えば、君、探偵もやっていたんだよね」

「ええ、他人には言えない相当ヤバイ仕事もやっていました、東京湾に浮いていてもおかしくないくらいな。本来ならこんな会社で働ける身分じゃないんですが、本当に会長に拾ってもらったおかげです。足を向けては寝られません」

「そこでもう一つ大事なことを頼みたいんだ、今度はエアコンのナメクジほど②Prestoではないかも知れない。 どうも最近、社内の機密事項が外部に漏れているようだ。 社内にスパイがいるのは間違いない、今のうちに手を打たないと。 君、極秘に調べてくれないか、資金はいくらでも出す」


    答え ①   おやす(い)                  ②   朝飯前            


 テレビドラマか何かで見たような光景ですが、①は伊和辞典にあるように、容易、たやすいといった意味でよいでしょう。 ②はPrestoに「朝早く」といった意味もあるので、まさに「朝飯前」以外にないでしょう。






<問題1>  災害普及工事に関して、とある市町村の職員と住民との説明会で。  


「えー、 その事案に関しましては、国交省、および県の諸機関とも緊密に調整を図りつつ、早急に対処したと思っています。 したがいまして、近隣住民の皆様方にはもうしばらく・・・・・・」

「何 ① Lento なこと言ってんだっぺか。 そんなこと言って、また大雨降ったら誰が責任とるんだっぺ」

「そうだ、そうだ、第一、被害が出てからんじゃねえと、なーんもやんねえ、なんちゅうの、そういうの ② lento って言うんだっぺな」

   *以上はあくまでフィクションで、特定の地域、県での出来事では全くありません。 


 




<問題2>  一人娘の名門幼稚園受験を控えた夫婦の会話。

夫はその何とも言えない ① Grave しい空気を振り払おうと、「ああ! 今日は本当にいい天気だな! やっぱりゴルフいけばよかったかな」

妻は容赦しなかった。 「何言ってんの、あなた! あなたは事の ② Grave さがわかっていないのよ。 中学や高校に入ってからじゃもう、どうすることも出来ないのよ、小学校だって遅いわ! 今度の私立幼稚園の受験にあの子将来がかかっているの、わかる?  向かいの青木さんのところだって、二人とも○○幼稚園よ、だいぶ前から受験の準備していたらいいわ」 

「うん、まあ、そうかも知れないけど。 でも女の子だからいいじゃん、明日香は。 それに明日香とてもかわいいし・・・・ 大きくなったらモテモテだよ。 セレブなイケメンと結婚すれば、それでいいじゃん」

「もういい! 話にならないわ。  明日香のことは私が一人でやるから。 でも面接は、明日香本人じゃなくて、私たち親がされるのよ、それだけはちゃんとわかっておいて下さいね」


 *やや教育熱心過ぎる奥さんかも知れませんが、旦那さんの言うように、女の子だから将来はよい結婚相手を見つければよいと言った時代ではないでしょうね。 名門私立幼稚園に入園することが将来にとってよいことかどうかは、ともかくとしても。 このお父さん、明日香ちゃんが本当に結婚するとなったら、きっとたいへんかも・・・・







<問題3> 初孫を巡って、姑さんとお嫁さんとの会話。


「まあ、彰子さん、そんな抱き方じゃだめよ。 赤ちゃんを抱っこする時には Adagio に、 Adagio に、こんな風に抱っこしないと、まだ首が座っていないんだから」

「それにしてもシュンちゃん、 マークン(雅弘)にそっくりね、本当にマークンが生まれた時とそっくりだわ。 あの子、小さい頃、本当に可愛かったのよ」

「そう、小学校の時の授業参観の時ねえ、 『一番大好きな人はお母さんです』 なんて作文読んでね。 周りのお母さんたちも、 皆こっち見るし、 あの時は本当に顔から火が出るくらい恥ずかしかったわ、 今思い出してもね、 ホントにね」

「マークン、これからの季節、すごく風邪ひきやすいから、 彰子さん、シュンちゃんだけじゃなくて、マークンにも気を付けて下さいね・・・・・」


*結局、お嫁さんが口ばしを挟む余地はなかったようです。 授業参観の話も、お嫁さんはこれまで何回も聴かされているようです。 姑さんにとっては、シュンちゃんは彰子さんと雅弘さんの子ではなく、あくまでマークンの子みたいですね。 これも家族愛の一つの形と言ってもよいのかも知れませんが、度が過ぎなければ・・・・







<問題4>  ある男子中学生の日記から。


 今日は、チョー Allegro な日。 2時間目が終わった休み時間、香澄ちゃんがオレのところまで来て、 「ねえ、 翔クーン、 今度の数学の試験の範囲と、問題が出そうなところ教えて?  ・・・・それじゃ、明日、家に行ってもいい?」 なんてね。

 オレは思わず 「来てよ、来てよ、もちろん来てよ! 何の用もないし、何時でもいいよ!」 と言いそうになったけど、 「明日? ちょっと待ってね。 えーと、ああ、ちょっと約束があったな。 うん、でもなんとかするよ。 時間? そうだね、じゃあ、後でまた連絡するよ」 と余裕。 

 オレはデキる。  マジ・ヤバ!  ゲキ・ヤバ!!   香澄ちゃん、やっぱりオレに気がある。 香澄ちゃん照れ屋だから、はっきり言わないけど。  オレにはわかる。   数学だけは得意でよかった!!!!!!


 *香澄ちゃん、ただ風邪で欠席していたのと、数学が苦手で今度の試験で落第点取りたくなかっただけの可能性の方が高いと思うけど・・・・  







<問題5>  居酒屋で、名門大学柔道部の学生とそのOB


「イヨー! ミタ・センパイ! ミタ・センパイ本当に ① Largo っすね、 ごっつぁんです!   おおーい、お代わり欲しいやつ!  ええーと、イチ、ニイ、サン・・・・  じゃあ生6つ! それからトリカラ! 鶏ナンコツも・・・・ あとフライド・ポテトに、出し巻き」

「本当にミタ・センパイは ② Largo いいっす、1年次の評判も最高っすよ、『ミタ・センパイは人格が違う』 って」

「そこいったら、あのノムラ・センパイ、 ノムラ・センパイは現役時代の成績はハンパなかったっすけど、 何ちゅうても 『オイ、今日はワリだからな』 ですよ!  あれじゃ形無しっすよ、  全国大会連覇も・・・ 」

「おお、来た、来た、こっち、こっち。 それじゃ、もう一回! カンパーイ!」


 *ミタ・センパイの現役時代の成績はイマイチだったようですが、後輩からは慕われているようです、下心見え見えですが。 因みに“ノムラ・センパイ”は、あのオリンピック金メダリストとは全く関係ありません。





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何で皆さん真剣に問題やっているんですか?

 え、なんで皆さん真剣に問題やっているんですか?   ここは笑うところですよ!   シャレですよ、シャレ!   それにしても、バカでしょ、こんな問題、夜な夜な考えてるなんて。  でも結構、苦労したんですよ、問題文作るのに、妄想力フル回転したり、ネットで居酒屋メニュー調べたり。 

 
 でも、もちろん、ちゃんと答え合わせをして、点数もちゃんと付けます。  先ほど言った通り、皆さん当然100点満点と思いますが、ハードルはずっと下げて、60点以上は合格点としましょう。 ほとんどバリヤー・フリー状態ですね。




次回答え合わせ

 ブログ上では、答え合わせを次回 (数日後くらい) 行います。 ネットで受講の方は、答えをメール等で送っていただければ、無料で採点いたしますので、遠慮なくどうぞ。