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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

クラシック・ギター名曲のCD紹介 2


◎ <アルハンブラの思い出:ギター名曲集>  DENON 1080円

タレガ : アルハンブラの思い出、 アラビア風奇想曲、 涙(ラグリマ)
アルベニス : アストゥリアス、 セビーリャ
グラナドス : スペイン舞曲第5番
作者不詳 : 禁じられた遊び
カタルーニャ民謡 : 聖母の御子
ヴィラ=ロボス : ショルス第1番
ソル : 魔笛の主題による変奏曲 
バリオス : 大聖堂
ロドリーゴ :アランフェス協奏曲



このランキングに沿った曲目

 2003年の発売のものですが、現在でも在庫があるようです。曲目のほとんどが当ランキング20位までに登場したもので、まさにこのランキングのためのCDと言った感じです。ただし「カヴァティーナ」や「タンゴ・アン・スカイ」などの比較的新しい名曲は含まれておらず、古くから親しまれてきた名曲のみとなっています。 

 演奏者はセルゲイ・ラミレス、菊池真知子、ウラジミール・ミクルカ、福田進一、シャロン・イスビンということですが、ミクルカや菊池真知子さんなど、今ではなかなか聴けない人の演奏も入ってます。演奏曲目が最も多いセルゲイ・ラミレスについては情報がありません。アランフェス協奏曲はイスビンの演奏で、全3楽章収録です。

 このCDと類似のものが、他のレ―ヴェルなどから何種類か発売されていますが、詳しい情報がないので、紹介は控えておきます。






◎ ウィリアムス<アランブラの想い出 ~スペイン・ギター名曲集> sony 1944円

グラナドス : スペイン舞曲第5番、ゴヤの美女、 詩的ワルツ集
ファリャ : ドビュッシー賛歌
アルベニス : セビーリャ、アストゥリアス、タンゴ
トゥリーナ : ファンダンギーリョ
タレガ : アルハンブラの思い出
トゥリーナ : ファンダンギーリョ、ソレアレス、ラファガ
カタルーニャ民謡 : アメリアの遺言、聖母の御子、クリスマスの夜



引退宣言した巨匠の青年期の演奏

 最近引退を宣言したジョン・ウィリアムスが、CBSに1960年代に録音したものから比較的有名なものを抜粋したCDです。このCD自体1980年代に発売され、何度かリニューアルを繰り返して再発されたもので、多くのファンに聴かれたものです。

 曲によっては録音に硬さも感じられますが、若き日のウィリアムスの切れの良い演奏が堪能出来ます。「アランブラ」のトレモロはややゆっくり目で、美しい演奏です。





◎ 福田進一<ハイパー・アンコール>

ドメニコーニ : オリエント急行
タレガ : アランブラの想い出
マイヤーズ : カヴァティーナ
ディアンス : タンゴ・アン・スカイ
バリオス : フリア・フロリダ
ヨーク : サンバースト
アルベニス : アストゥリアス


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新しい名曲が聴きもの

 福田進一氏の録音は非常にたくさんあり、そのほとんどが現役盤となっていて、いざ買うとなると確かに迷うところでしょう。福田氏のCDの場合、録音年が古くなったものは1000円前後で再発されていて、ファンにはうれしいところです。その中から今回のランキングに沿ったものとしては、このCDが挙げられるでしょう。

 このCDは1998年に発売されたもので、、タイトルどおりクラシック・ギターの人気曲を集めています。構成としては「アランブラ」や「アストゥリアス」などの古くから有名な曲と「カヴァティーナ」、「タンゴ・アン・スカイ」などの新しい名曲とになっています。

 どちらかと言えば、新しい名曲が聴きものですが、他にドメニコーニの「オリエント急行」などあまり録音されない曲や、一人二重奏(ビートルズ、ピアソラ)、佐藤弘和氏の曲なども収録されています。

 福田氏のCDでは、他に「武満徹作品集」、「優しき玩具」、「19世紀デビュー」、「バッハ:シャコンヌ」などが1000程度で入手できます。
 





◎ 村治佳織<エスプレッシヴォ>
      <カヴァティーナ>
      <グリーン・スリーブス>
      <エステーラ>
      <アランフェス協奏曲> 
      <シンフォニア>
      <スペイン>   Victor 各2160円



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そろそろ活動再開?

 病気のためしばらく休養していた村治佳織さんですが、そろそろ活動再開となるのでしょうか。人気ギタリストの村治さんですが、意外と有名な曲だけを集めたCDなどはなく、有名曲と本格的なギターの作品、またはポピュラー系の曲との組み合わせになっています。 

 と言った訳で、当ランキングにぴったりあったCDは挙げられないのですが、村治さんのCDも古いものは2000円程度になって発売されており、とりあえずそれらをリスト・アップしておきました。

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 <エスプレッシヴォ>はデビュー・アルバムで、内容は19世紀の作品。 <カヴァティーナ>は現代の作品で、「カヴァティーナ」、「サンバースト」の他、ブローウェルの「黒のデカメロン」などが収録されてています。 <グリーン・スリーブス>はルネサンス・リュートの作品。 

 <アランフェス>には他にテデスコの協奏曲とオーケストラ伴奏版の「タンゴ・アン・スカイ」が入っています。 <エステーロ>はいろいろなCDからの抜粋です。<スペイン>はロドリーゴの独奏曲が中心となっています。



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CD紹介 ~これからクラシック・ギターのCDを聴く人のための


 前回おはなししたとおり、これからギターを聴こう、あるいはまだあまりギター曲を聴いたことがないと言った人のためのクラシック・ギターの紹介をしてゆきます。


基本的に国内盤

 最近では海外盤も入手しやすくなって、価格などもかなり安いものも多くなっていますが、ギターのCDをあまり聴いていない人にとっては、曲名や解説はやはり日本語のほうがわかりやすいと思いますので、基本的に国内盤に限定して行ってゆきます。

 一応今現在入手可能なものを紹介してゆくつもりですが、入手不可能になっているものもあるかもしれません。その場合はご容赦下さい。その場合は取り寄せる店などによって異なるので、別の店などを検索してみるか、あるいは類似のものが輸入盤として入手できる場合もあります。

 また価格も一応記しておきますが、実際には取り寄せる店などによって若干異なると思いますので、おおよその目安と考えて下さい。




◎ <ベスト・ギター100>6枚組  3086円

CD1 バロック以前
CD2 スパニッシュ1
CD3 スパニッシュ2
CD4 ロドリーゴ
CD5 ラテン・アメリカ
CD6 近代




6枚で3000円と少々

 6枚組のCDにギター曲100曲で3000円と少々(もっと安く手に入る場合もある)、国内盤としてはかなりお買い得のセットです。ギタリストはアンドレス・セゴヴィア、 マヌエル・バルエコ、 オスカー・ギリア、 エリオット・フィスク、 クリストファー・パークニング、 荘村清志、 大萩康司、 村治佳織、 押尾コータロー、 さらにリューティストのベイルズなどとなっています。

 残念ながら私自身は現物を持っていませんが、古い曲から、一部ポピュラー系の曲も含めた新しい曲まで、有名な曲から通向けの曲まで、本当にいろいろな曲入っています。演奏の方も国内外の一流のギタリストによるもので、とりあえずこれ1枚持っていればクラシック・ギターがかなりわかるでしょう。

 曲目解説がついているかどうがはわかりませんが、少なくとも曲名は日本語で表記されています。発売年やレーヴェルもわかりませんが、おそらく現役盤で、入手可能と思われます(GGショップなど)。曲数が多すぎるのが唯一の欠点でしょうか。

 私自身では、ほとんどの曲が(同じ演奏で)すでに持っているものと重複するので、取り寄せる必要はなさそうなのですが、でも気が向いたら取り寄せるかも知れません。
 




◎ <セゴビアの芸術>2枚組 ユニバーサル・ミュージック 3086円

タレガ : アランブラの想い出、アラビア風奇想曲、マリエッタ
モレーノ・トロバ : 松のロマンセ、マドローニョス、滑稽なセレナード
ソル : 魔笛の主題による変奏曲
ファリャ : ドビュッシー賛歌
ポンセ : 主題と変奏と終曲、メキシコ民謡
トゥリーナ : セビリヤース
ロドリーゴ : はるかなるサラバンド
テデスコ : 悪魔の奇想曲、セゴヴィアの名によるトナディリャ
ヴィラ=ロボス : 前奏曲第1番、第3番
アルベニス : アストゥリアス、サンブラ・グラナディーナ
 他ダウランド、ヘンデル、バッハ、フレスコバルディ、スカルラッティ、パガニーニ、ショパン、メンデルスゾーンなどの作品



20世紀の巨匠、アンドレス・セゴヴィアの脂の乗り切った演奏

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 同じ価格でこちらは2枚組ですが、アンドレス・セゴヴィアの1950~60年代のデッカ・レ―ヴェルに録音したものからの抜粋です。最近人気が出た曲はもちろん含まれていませんが、クラシック・ギターの定番的な曲が含まれ、何といってもセゴヴィア最も脂の乗り切った時期の録音と言えます。モノラル録音も含まれますが、鑑賞に全く差支えなく、セゴヴィアの音をしっかりと捉えています。

 ギター名曲を聴くと同時に、セゴヴィアの名演奏を味わうCDと言えますが、セゴヴィアの演奏を聴いたことがない、あるいはセゴヴィアのCDをあまり持っていない人にはぜひお薦めです。また同じ内容の輸入盤もあり、こちらは1000円ほど安くなっています。曲目解説など不要の人にはお薦め。





◎ <禁じられた遊び/ナルシソ・イエペス> キングレコード  1028円

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民謡 : 禁じられた遊び
ラモー : メヌエット
スカルラッティ : ソナタホ短調
サンス : スペイン組曲
ソル : メヌエット第5番、第6番、 魔笛の主題による変奏曲
ヴィラ=ロボス : 前奏曲第1番
ピポー : 舞曲第1番
アルベニス : 入り江のざわめき



イエペスの6弦時代の録音、かつてのベスト・セラー

 おそらく1960年前後に日本国内で録音されたものと思います。イエペスがまだ6弦ギターを使用していた頃のもので、LP時代には何度も再発を繰り返したもので、当時はギター・ファンならずとも各家庭に1枚はあったLPです(ちょっと言い過ぎかな?)。

 改めてCDで聴いてみると、この年代の録音としてはなかなか良いものです。「前奏曲第1番」など”異次元から聴こえてくるようだ”などと前に書いたことがあります。「禁じられた遊び」もご本家ということになりますが、やはりたいへん美しい演奏です。イエペスは次第に個性的なギタリストとなってゆきますが、この録音ではまだまだ初々しさが感じられ、好感度の高い演奏と言えます。

 LPの曲を曲順など変えずにそのままCDにしてあるので、CDとしては曲目は少な目で、ギターの名曲が網羅されているわけではありませんが、CDとしてのまとまりはあります。かつてのギター・ファンにも、これからギターを聴く人にもお薦めです。






◎ <イエペス アランブラの想い出/ギター名曲集> ユニバーサル・ミュージック 1851円


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作者不詳 : 禁じられた遊び
タレガ : アランブラの想い出、ゆりかご、パヴァーナ
ダウランド : デンマーク王のガリヤルド
ロルダン : 月の光
バッハ : ロンド風ガヴォット
グラナドス : スペイン舞曲第4番、第5番
アルベニス : マラゲーニャ、アストゥリアス、入り江のざわめき
ロドリーゴ : ヘレスの地で、 オリーブの木立を縫って、
スカルラッティ : ソナタイ長調
リョベット : 商人の娘
ファリャ : 粉屋の踊り
ソル : 魔笛の主題による変奏曲



1960年代後半から1980年頃の録音

 同じイエペスのCDですが、こちらは1960年代後半から1980年頃にかけてドイツ・グラモフォンに録音したものからの抜粋です。10弦ギター時代のものが主ですが、一部6弦使用のものも含まれています。

 上記のものよりも曲数も多く、文字通り名曲集となってます。またイエペス独特の音響世界と言った感じで、他のギタリストでは聴けない部分もたくさんあります。




昨年も載せたような気がしますが


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 昨年も載せた気がしますが、当家のツツジが満開となりました。昨年あまり枝を切らなかったので。今年はいつもよりたくさん咲いています。でもこれ以上大きくなる駐車の妨げになるので、また切らないといけません。



クラシック・ギター名曲ランキングのまとめ


 前回までクラシック・ギターの名曲を20曲ランキングしましたが、最後にまとめておきましょう。繰り返しになりますが、このランキングは曲の人気度や演奏される頻度を私個人的にランキングしたもので、曲の内容ではありません。またなんらかのデータを基にしたものではなく、個人的な感覚で決めたものです。

 もちろん選ぶ人や、選び方でだいぶ異なるでしょうが、まあ、大ざっぱに言ってだいたいこんなものでしょうか。当たらずとも遠からずといったところでしょう。少なくとも、これからクラシック・ギターのCDなどを聴こうかなと思っている人には若干参考になるでしょう。



第1位 禁じられた遊び (練習曲 ~アントニオ・ルビラ)
第2位 アランブラの想い出 (フランシスコ・タレガ)
第3位 カヴァティーナ (映画「ディア・ハンター」の主題曲 ~スタンリー・マイヤーズ)
第4位 アランフェス協奏曲 (ホアキン・ロドリーゴ)
第5位 モーツァルトの「魔笛」の主題による変奏曲 (フェルナンド・ソル)
第6位 アストゥリアス (イサーク・アルベニス)
第7位 大聖堂 (アウグスティン・バリオス)
第8位 アラビア風奇想曲 (フランシスコ・タレガ)
第9位 タンゴ・アン・スカイ (ローラン・ディアンス)
第10位 サンバースト (アンドリュー・ヨーク)
第11位 11月のある日 (レオ・ブローウェル)
第12位 前奏曲第1番 (エイトール・ヴィラ=ロボス)
第13位 スペイン舞曲第5番 (エンリケ・グラナドス)
第14位 カタルーニャ民謡集 (ミゲル・リョベット)
第15位 ハンガリー幻想曲 (ヨハン・メルツ)
第16位 大序曲 (マウロ・ジュリアーニ)
第17位 さくら変奏曲 (横尾幸弘)
第18位 スペイン風セレナータ (ホアキン・マラッツ)
第19位 ギターのための12の歌 (武満徹)
第20位 バッハの作品


 クラシック・ギターはピアノやオーケストラなどの他のクラシック音楽の分野に比べ、現在進行形的なところがあり、今後10年、20年すると人気曲というのもだいぶ変わってくるでしょう。まだ今現在は生まれていない曲も人気曲となる可能性もあります。また逆に「アランブラの想い出」など、人気の変わらない曲も多数あるでしょう。

 次回は初めて聞くクラシック・ギターのCDとしてお薦めのもを紹介します。
前回の記事で

 前回の記事で、今年の3月に発売された荘村清志さんのCDに武満徹の「12の歌」全曲が含まれるように書きましたが、実際に購入してみると、収録されているのは12曲ではなくビートルズの4曲のみでした。ちょっと早合点してしまいました。

 この2枚組のCDには、荘村さんのデビュー・アルバムである「テデスコ、ポンセ」と2枚目の「アランブラの想い出」他の2枚のLPの曲全曲と「12の歌」からビートルズの「ヒヤ・ゼア・アンド・エブリウェア」、「ミッシェル」、「ヘイ・ジュード」、「イエスタディ」の4曲が含まれています。


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荘村さんのデビュー45周年記念のCD。どちらかと言えば親しみやすい曲の録音の多い荘村さんだが、デビー・アルバムはテデスコとポンセという硬派なもの。この当時は日本人でこうした大曲を録音する人は少なかった。

 荘村さんの「12の歌」は世界初録音ということになりますから、ぜひとも全曲復刻してほしいものです。



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武満と言えば、この4月にはナクソスから福田進一氏の「ギター独奏作品集」が発売された。価格も1000円とちょっとなので、ぜひお薦め。




クラシック・ギター名曲ランキング

<第20位>  バッハ作品集 (J.S.バッハ)




「Q&A」はどこに?

 このランキングを始めた時にはもっと手短にやるつもりだったのですが、意外と手間どってしまいましたね(いつものこと?)。ところで行ってしまったのだろう?

 と言った訳で、いよいよ最後の20位の発表で、ようやくこのタイトルも無事着地となります。おっと、まだお薦めCDの紹介も約束していましたね、私の教室の生徒さんのためにも、これは忘れずやっておきましょう。



曲名にはなっていないが

 それにしてもこの20位の「バッハの作品」というのはランキングとしては極めて不適切ですね、あまりにも括りが大きすぎて全く「曲名」にはなっていません。「カタルーニャ民謡集」や武満徹の「12の歌」など若干問題のあるランキングもありましたが、一応一つの作品と言えなくもないところもありました。

 しかしバッハのどの曲をランキングに入れるかとなると、本当に困ってしまう。せめて「バッハのリュートのための作品」くらいにしようかとも思いましたが、それも中途半端。こうなったら下手に考えるより、堂々と開き直るしかない!



作曲者別では第1位かも

 バッハ自身ではギターのための曲など1曲も書いていませんが、現在行われているクラシック・ギターのリサイタルのプログラムをみると、その大半のプログラムにバッハの作品が登場しています。バッハの作品のないプログラムのほうが、かえって少数派かも知れません。

 またバッハの作品を弾かないギタリストというのも非常に少ないのではと思います。おそらく現在クラシック・ギターのコンサート、あるいはCDなどの取り上げられる作曲家としてはソル、やタレガなどのギタリストを抑えてナンバー1かも知れません。



演奏にお薦めの曲

 コンサートやCDで鑑賞する上では、バッハの作品はすべてお薦めというところですが、実際にギター演奏するとなると弾きやすい曲とそうでない曲があると思いますので、演奏する上でのお薦めの曲を挙げておきましょう。もちろんバッハの曲を演奏するには、それに足りるだけの基礎力が必要で、演奏だけでなく、基本的な和声法も学ぶ必要があるでしょう。 



 ★サラバンドとドーブル(無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第1番ロ短調)

 添え書きのとおり、この曲は独奏ヴァイオリンのための曲ですが、重音が多く、ヴァイオリンで演奏するのはかなり難しい曲だと思います。 しかしギターで演奏する場合には特に難しいところもなく、むしろ弾きやすい曲と言えます。ギター独奏で始めてバッハを弾く場合、最適の曲でしょう。

 編曲譜も多数出ていると思いますが、原曲のまま手を加えないでも演奏出来ます。しかし和音の配置などはヴァイオリンとギターではやはり異なるので、適切にギターに編曲された譜面を用いるほうが良いでしょう。また若干の音の追加や、トリルなどの装飾音などもあった方がよいでしょう。

 「ドゥーブル」はサラバンドの変奏部分で、原則的にはサラバンドと同じテンポで演奏すべきなのでしょうが、幾分速めのテンポを取った方が流動感が出ると思います。しかしあくまで「サラバンド」の範囲です。

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私のアレンジ。ほんの少し音を加えている。演奏の際には2回目(繰り返し)は装飾を加えている。

 


 ★プレリュード(チェロ組曲第1番)

 アルペジオ風のプレリュードで、一般的にもよく演奏される曲と言えます。原曲はト長調ですが、ギターでは普通ニ長調に移調され、比較的弾きやすい曲と言えます。

 


★アルマンドとブーレ(リュート組曲第1番 BWV996)

 「ブーレ」のほうは完全な2声で書かれた曲で、やはり比較的弾きやい曲と言えます。しかしふたつの旋律、特に低音部を聴き取るのはそれほど簡単ではなく(弾くよりも、聴くほうが難しい)、十分に注意する必要があります。低音部のみを弾いてみたり、二重奏で弾いてみるとよいでしょう。

 また1拍目と3拍目にアクセントが来るのですが、あまり強すぎてもよくないでしょう、強くというより、この1、3拍目の4分音符をやや長くするといったような感じで弾くとよいと思います。

 「アルマンド」もなかなかよい曲ですが、ブーレよりは少し難しくなります。16分音符をレガート、かつ流動的に弾く必要があり、二つの声部の弾き分けも必要です。左手の合理的で滑らかな動きが要求されます。




 ★ガヴォット(チェロ組曲第6番)

 このチェロ組曲は「5弦チェロ」つまり通常の最高音弦「ラ」の上に「ミ」の弦を追加した楽器のために作曲されています。第1弦が「ミ」ということはつまりギターと同じ1弦ということになります。そういった関係からこの曲はたいへんギターに合っています。

 セゴヴィアは原曲ニ長調を1音上げてホ長調に編曲していますが、原曲どおりニ長調で問題ないでしょう。ニ長調の方がかなり弾きやすく、いずれはこの組曲(チェロ組曲第6番)の他の曲も弾くことも考えると、ニ長調でアレンジされた譜面を使うほうがよいでしょう。

 この曲もチェロの譜面をほとんどそのままギターで弾くことが出来ます。もちろん若干音を加えてもよいですが、原曲のままでもほとんど不足は感じられません。私自身では全く音を付け加えないで弾いています  ・・・・・いや、2、3個くらいは足しているかな?




 ★アンダンテ(無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番)

 この曲は原曲ハ長調で、協奏曲の第2楽章のように8分音符の低音の上に美しいメロディが流れる曲です。上記の曲などよりもギターで演奏される機会は少ないですが、弾きやすく、美しい曲で、特にお薦めです。

 この曲もヴァイオリンの譜面そのままでも演奏出来ますが、装飾音などを適宜に加えられればさらによいでしょう。バッハ自身がチェンバロのために編曲しているので、私の場合、そちらも参考にして編曲しました。

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あまり音は付け加えていないが、所々低音はオクターブ下げている。なお2回目はチェンバロ版を参考にしている




他に

 ★フーガ(無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番)
 ★ガヴォット(無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番)
 ★テンポ・デ・ボレア(無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第1番)
 ★ブーレ(無伴奏チェロ組曲第3番)


などがお薦めでしょう、それぞれ上記の曲よりは若干難しくなります。




クラシック・ギター名曲ランキング

<第19位>  ギターのための12の歌 ~12の歌・地球は歌っている (武満徹)

 ロンドンデリーの歌、 オーバー・ザ・レインボー、 サマー・タイム、 早春譜、 失われた恋、 星の世界、 シークレット・ラブ、 ヒア・ゼア・アンド・エブリウェア、 ミッシェル、 ヘイ・ジュード、 イエスタディ、 インターナショナル、




これもちょっと反則ぽいが

 この順位のセレクションも12曲まとめてだとか、本来クラシック・ギターの曲でないとか、やや反則気味ですが、少なくとも今現在ではしっかりとクラシック・ギタリストのレパートリーとして定着していて、リサイタルなどでもしばしば耳にしますので、このランキングの上位を得る権利はあるのではと思います。

 また今回のランキングは音楽的内容よりも知名度や演奏頻度を重視したものではありますが、この曲集はオリジナル作品ではないがギター曲として完成されているといった点は十分に認められているでしょう。


日本が世界に誇る20世紀の作曲家

 日本が世界に誇る20世紀の作曲家、武満徹(1930~1996)氏のギターのための作品としては、「フォリオス」、「すべては薄明の中に」など優れた作品がありますが、演奏される機会としては現在この「12の歌」が最も多くなっています。


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1977年の出版 1曲ずつピースの形で出ていた



荘村清志さんが出版と同時に録音

 この曲集は荘村清志さんのために書かれたもので、1977年に全音出版から楽譜と、東芝から荘村さん演奏のLPが発売されています。1977年の出版では12曲個別にピースとして出版されていましたが、1996年(武満氏の亡くなった年)に12曲まとめた曲集として再発されました。


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1977年の荘村清志さんのLP。 この「12の歌」の初録音。 今年の3月に、荘村さんの初期の他の2枚のLPと3枚組の形でCDとして発売された(現在入手可能)


 その他、全12曲の録音としては、やはり日本人のものが多く、福田進一(1996年)、鈴木大介(1996年)、大萩康司(2008年)さんなどが録音しています。個別の曲としてはジョン・ウィリアムス、村治佳織さんなど、内外の多くのギタリストが録音してます。
 

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1996年の出版 12曲まとめられている


親しみやすさと深い響き

 武満氏の編曲では、メロディはほぼ原曲通りになっていますが、和声、つまり響きは武満氏独特のものとなっていて、親しみやすさと同時に、音楽の深さも感じられる作品となっています。

 私自信では1980年頃「イエスタディ」、「ミッシェル」などを弾いてみたのですが、なかなか手に負えなかった記憶があります。武満氏も言っている通り、演奏は決して容易ではなく、メロディを気持ちを込めて歌わせながら、武満音楽独特の響きを出すためには、かなりの技術と感性が必要でしょう。しかし最近のギタリストはその両方を当然のごとくやっています。



柔軟な精神へのエチュード

「・・・・・ギタリストたちの固定した風景に、もう一つの窓から別の風景を開きたいと考えたのです。『12の歌』はそれぞれに高度な演奏技巧を必要としますが、それはまずなによりも柔軟な精神へのエチュードなのです。」と武満氏は1977年の出版の際に添え書きしています。

 ギターに精通した大作曲家の、この言葉は大きいと思います。今現在のギター界は武満氏の期待した方向に進んでいるのでしょうか。なお1996年版ではこれらの言葉は省かれています。