中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

バッハ:平均律クラヴィア曲集 22




バッハ:平均律クラヴィア曲集第2巻




第2巻は第1巻のように1冊の曲集としてまとめられたものではない


 第1巻の方は全部の曲について書きこみをしたので、第2巻については全体的に話をするだけにしましょう。 第1巻は1722年に完成されていますが、この第2巻は、その22年後の1744年に完成されたとされています。

 第1巻はバッハ自身の序文などもあり、文字通り完成された曲集なのですが、この第2巻の場合は1曲1曲が、それぞれ1枚の紙の裏表に書かれていて、1冊の形になった曲集ではありません。 




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バッハが晩年過した聖トーマス教会。 平均律クラヴィア曲集第2巻はバッハが世を去る6年前に完成されたとされている。




作曲年代は第1巻よりもさらに拡がる

 第1巻にしても、それぞれの曲の作曲年代はばらばらでしたが、この第2巻はさらにその作曲年代が拡がっているようです。 つまりここの作品の作風には、よりいっそう拡がりがあると言うことになります。

 一部には第1巻の成立年代よりも古いものもあり、もちろん晩年の作品もある訳です。 第1巻完成の際に ”没ネタ” になってしまったものも、この第2巻に組み込まれた、などというケースもあるかも知れません。




第1巻よりも動機がユルイ?

 第1巻はかなり意欲的に完成されたものと言ってよいと思いますが、この第2巻は 「いつの間にかプレリュードとフーガが溜まっちゃったから、とりあえず24曲にして、「第2巻」 としておこうか」 みたいなやや ”ユルイ” 動機が感じられなくも・・・・・・   いやいやバッハに限って、そんなことは!

 以前書きましたように、バッハは第1巻を弟子に複数回(確か3回)に渡って連続演奏して聴かせた話が残されています。 そのことにより、第1巻は連続して演奏することも視野に入れて作曲したことが窺われます。 曲の並びなどを見ても、そのことが推測されます。

 その点、この第2巻については、あくまで個々の曲の集合体ということで、連続演奏はそれほど意識しなかったように思えます。 つまり、この第2巻は全体のまとまりと言ったことはあまり考慮せず、いろいろ違った時期に作曲された曲が、第1巻と同様に調の関係で並んでいるということになるのでしょう。 もちろんハ長調から始まって、ロ短調まで24の調でプレリュードとフーガが書かれていると言ったことは全く同じです。 




どちらが内容が優れている?

 大ざっぱに聴いてしまうと、第1巻も第2巻も同じように聴こえてしますが、よく聴けば当然違いがあります。 専門家の評価も、「第1巻の方が意欲的でまとまりがあるが、第2巻は、やや2番煎じ的」 といった意見から、 「第2巻の方がより高い音楽性を持っている」 というように正反対の意見まであります。 もちろんそれは聴く人の主観ですから、自分なりにどちらのほうがより優れているか、などと考えながら聴くのも楽しみの一つでしょう。 




短調のフーガが大曲となる傾向はない

 その件(どちらが優れているかということ)はさておき、 とりあえず両者の違いを見てゆきましょう。 第1巻の特徴としては、「短調のフーガ、特に4の倍数番のフーガは、声楽的なテーマを持ち、長くなる傾向がある」 と言ったことでしたね。 どうやらその傾向は第2巻では全く見られないようです。




第2巻のほうが新しさを感じる

 基本的に声楽的なフーガを持つものがこの第2巻では少ない傾向にありますが、声楽的なテーマをもつ曲も、第1巻のように短調ではなく、長調になっていることが多いようです。

 また前回の記事で書いたとおり、第1巻では短調の曲(プレリュードもフーガも)は必ず最後は長調の和音で終わっていました。 しかしこの第2巻ではいくつかの短調のでは短調のまま終わっています。 そうした点からも新しさが感じられます。

 とは言っても、バロック時代後期では、短調の曲が短調で終わるのは、すでに一般的となっていて、バッハの作風の方が古く、第2巻では多少、時代に追いついたとも言えます。 もっとも、バッハもフーガ以外の曲では、特に舞曲的なものにおいては、短調の曲が短調で終わることが多くなっています。 フーガとは基本的に古風な様式なのでしょう。




意外性もある

 第2巻は1曲1曲が個性的で、「え、これバッハの曲? とか、バッハにもこんな曲があったんだ」 など意外性を感じる曲がかなりあります。  まるでスカルラッティのソナタのような曲とか、モーツァルトっぽい曲、中にはシューマンやドビュッシーを思わせるような曲もあります。

 確かに、この第2巻においては、全体のまとまり的なものは感じませんが、1曲1曲はなかなか面白い曲が並んでいます。 私自身でも、少なくとも最近では、この第2巻を聴く機会の方が多くなっています。 
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バッハ:平均律クラヴィア曲集 21


 第24番ロ短調






ハ長調で始まったので


 この平均律クラヴィア曲集は、ドを主音としたハ長調とハ短調でプレリュードとフーガを書き始め、そして主音を半音ずつ上げながらすべての調でプレリュードとフーガを書くと言ったものです。 ハ長調で始まった訳ですから、最後はこの ”ロ短調” となります。

 ハ長調から書き始めた理由は、私たちにも何となく理解出来ます、やはりハ長調が一番基になるのは確かでしょう.、インベンションなども同じようにハ長調から始めています。 




ロ短調はバッハが最もこだわった調

 ハ長調で始めたので、最後はロ短調で終わる訳ですが、このロ短調というのは、バッハが最もこだわりを持つ調ともいわれています。 バッハには 「ミサ曲ロ短調」 「管弦楽組曲第2番」 などロ短調で書いた名作が残されています。 おそらくバッハにとってハ長調で始まることと、ロ短調で終わることは、どちらも重要で、必然的だったのでしょう。





「4の倍数の法則」なんてあったけ


 この曲集の ”シメ” となる訳ですから、この24番ロ短調は力の入った作品となるのは自然な流れでしょうか、確かにこの24番はプレリュードもフーガも長いものになってます。

 そうそう、忘れていましたが、この曲集では4の倍数番のフーガが大曲になるという法則がありましたね、そのとおり24番のフーガも長くなっています。




いろいろな点で他の曲の違っている

 さらに、他のいろいろな点でこのロ短調は他のものと違っています。 まずプレリュードとフーガにそれぞれ 「アンダンテ」、 「ラルゴ」 と速度標語が付けられていると言うこと。

 もっとも、全部の曲に速度標語、あるはメトロノーム数が書いていある譜面もありますが、これは前に言いました通り、後の出版社などで付けられたもので、バッハ自身が付けたものではありません。

 しかしこの24番のプレリュードとフーガ、それぞれに書き入れてある速度標語は、まぎれもなくバッハ自身のものです。

 



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第24番ロ短調のプレリュード。  バッハの手により「Andante」と速度標語が書きこまれている。 曲は完全に3声となっていて、トリオ・ソナタか、協奏曲の緩叙楽章のようになっている。



プレリュードには「アンダンテ」と書かれ、前後半共にリピート記号が付いている

 プレリュードは前述のとおり、 「アンダンテ」 の速度標語が付けられ、前後半共にリピート記号が付けられています。 ゆっくり演奏し、かつ繰り返す訳ですから、確かに演奏時間は長くなりますね。 

 完全な3声で書かれてますが、バス声部は常に8分音符を刻み、トリオ・ソナタ、あるいは二重協奏曲の緩叙楽章の通奏低音のようになっています。




私が一番最初に聴いた曲。 弦楽合奏やオルガンでの演奏が似合う

 私がこの曲を知った、というよりバッハの平均律クラヴィア曲集の存在をしったのは、実はこの曲で、大学生の頃。この曲の弦楽合奏版がFM放送番組のテーマになっていて、何となく聴いていました。 確かに弦楽合奏がよく似合う曲です、もしかしたら、原曲はそうした曲だったのかも知れません。



係留音の魅力

 この曲の魅力は、何といっても係留音、つまり声部の動きに時差があるために、時々2度などの音の衝突、つまる不協和音程が現れます。 それはすぐにずれを解消して協和音程となるわけですが、その ”ずれ” と ”解消” が程よい刺激となって快感を感じるのだと思います。 そうしたことはチェンバロよりも弦楽合奏やオルガンなどのほうがよく味わえます。






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最初の方にかかれたスラー記号はバッハ自身によるもの。 テーマは複雑そうに聴こえる、あるいは見えるが、和声音に倚音が付いたもの。




バッハの手でスラー記号が書かれている

 フーガには冒頭のみですが、テーマにバッハの手によってスラー記号が書かれています。 こうした事も他の曲にはなかったことです(付いている場合は、出版社や校訂者などが後から書きこんだもの)。 




フーガのテーマにしては禁則的な跳躍が多い

 しかし、それにしても変わった感じのテーマです。 対位法的な音楽でなくとも、一般にメロディを作る時に不協和音程となる7度や増音程での跳躍は禁じられいています。 でもこの譜面では増4度だの、減7度などやたらと出てきます。 ちょっと聴いた感じでもかなり不思議な感じがします。




和声音と非和声音の区別がわかるように

 バッハがスラー記号を付けた理由としては、もちろんその箇所を滑らかに弾かなければならないということと、スラー記号付けた、前の方の音は ”倚音” であって、非和声音であること。 そしてスラーの後の方の音が和声音となることを示しているのでしょう。




テーマの中ですでに転調が始まっている

 その和声音を頼りに和声進行、と言ってもここではわかりやすいようにコード・ネームで書きますが、  Bm - F# - B - C#(7) - F#m - C#(7)  となります。  このコード進行からすると、テーマの中で、すでにロ短調から嬰へ短調への転調が始まっているようです。




似ているけど別人?

 最初にテーマが出てきた後、5度下でそのテーマが出てくるのですが、このテーマはよく見ると(聴くと)最初のテーマとちょっと違っています。 よく似ているのですが、音程関係は微妙に変えられています。 和声的な関係でそうなったのでしょう。 ちょっと見た目には同じ人だが、よく見ると別人だった、なんて感じでしょうか。



基本的には単一の主題

 前述のとおり長いフーガで、いくつかの対旋律が出てきますが、それらはテーマから派生した感じがあり、基本的には単一の主題のフーガと思われます。




第1巻の短調の曲はすべて最後は長和音で終わっている

 最後は他の多くの短調のフーガ同様、長和音となって終わります。 短調の曲でもルネサンス時代や、バロック時代初期では必ず長和音、もしくはオクターブや5度などを重ねた和音で終わり、短和音では終わらないことは、以前にお話ししました。

 バッハの短調の曲はそのまま短和音で終わる場合と、長和音になる場合とがありますが、この平均律曲集第1巻においては、12の短調のプレリュードとフーガ、計24曲とも、すべて長和音に変えられて終わっています。





第2巻は第1巻よりも近代的

 第2巻のほうでは、特にプレリュードのほうで短和音のまま終わっている曲がいくつかあります。 そういった意味では、やはり第2巻の方が、さらにフーガよりもプレリュードのほうが近代的になっているとも言えるでしょう。 確かに聴いた感じからもそうした印象は受けます。




1曲1曲を聴き直すきっかけにでもなれば

 以上で、平均律クラヴィア曲集第1巻のプレリュードとフーガ、全48曲について書き終えました。 意味のあることかどうかはわかりませんが、このバッハの名曲の一つ一つを、改めて聴き直すきっかけにでもなればと思います。




第2巻は本当に手短に!

 さて、この調子で第2巻の方もやっていたら、さすがにたいへんなので、第2巻の方は本当に簡潔にまとめるようにしましょう(第1巻の時もそんなこと言っていたかな?)。 なるべく早めに、本題であるCDについての話に進みましょう! 

 
バッハ:平均律クラヴィア曲集 20





<いこいの村涸沼> で茨城大学クラシック・ギター部の同期会



 先週の土曜日(10月28日)は、ひたちなかギター・フェスティヴァルでしたが、その翌日の29日(日)から30日(月)にかけて、<いこいの村涸沼> で茨城大学クラシック・ギター部の同期会(1969年入学)がありました。

 これで3度目となりますが、前回は2011年、震災のあった年で、つくば山で行いました。 その会場に向かう途中、道がよくわからず、とても危険な山道に入ってしまった話をしました。

 今回の会場の<いこいの村涸沼は>家内の実家の近くと言うことで、私にも若干土地勘があるのと、カーナビやら、グーグル・マップといったものを活用し、水戸駅南口で待ち合わせた3人の仲間を、特に道に迷うことなく連れてゆくことが出来ました。




今回はまさに ”合宿”

 最初の同期会は10数年前で、その時は集まってお酒を飲むだけだったのですが、前回の2回目は少しだけギター合奏を行い、今回の3回目は、事前に楽譜を配るなど、結構本格的に合奏練習をしました。

 その結果、誰が言うともなく、今回の集まりを ”同期会” ではなく ”合宿” と呼び、私のことも ”幹事” ではなく ”合宿委員長” と呼ぶようになってしまいました。



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ギターに本格的に降れるのはほとんど40数年ぶりという仲間も
 



セピア色の世界

 気持ちはそれぞれ20歳の大学生になりきっているのですが、しかし残念ながら、このように写真を見ると60代後半の現実に引き戻されてしまいます。 それぞれの名誉(?)のために、本当に20歳とちょっとだったころの写真も載せておきます(よく見えないけど)。



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それぞれが21~22才だった頃の写真。 まさにセピア色の想い出。 今回の合宿(?)中は、皆40数年間の歳月を遡り、このセピア色に世界に戻っている。 写真が不鮮明で、顔などはわからないと思うがが、服装などはまさに1970年代。




来年はコンサートも

 来年はさらに本格的に合奏練習を行い、演奏会も考えています。




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バッハ:平均律クラヴィア曲集第1巻 第23番ロ長調



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 第23番ロ長調プレリュード。 かなりシンプルで短い




シンプルなプレリュード

 プレリュードはかなりシンプルなもので、上のように7個の16分音符による音型で、ほぼ出来ている感じです。 対旋律的なものも、この音型から派生した感じで、他には上行する音階などしかありません。 

 曲が短いので、速く弾くとすぐ終わってしまいますから、中庸なテンポが似合うと思いますが、このロ長調の次に最後を締めくくる重厚なロ短調が控えているために、若干 ”箸休め”的な役割なのかも知れません。






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フーガの後半は4声が絡み合い、弾くのは難しそう。 でも聴いた感じはわりとわかりやすい。





フーガは4声だが、ゴチャゴチャした感じはない

 フーガも同様に重厚なものではありませんが、何といっても4声のフーガで、特に後半は3声、4声で動いているところが多いので、譜面を見た限りでは、弾くのは結構たいへんそうに見えます。(弾いたことがないのでわからないが)。 でも聴いた感じは、わりとわかりやすく、ゴチャゴチャした感じはあまりありません。 

 やはり、次のフーガがいろいろたいへんなので、プレリュード同様箸休め的なのでしょう、比較的気楽に聴ける曲です。


バッハ:平均律クラヴィア曲集 19


第21番変ロ長調




モーツァルトの名曲もある

 変ロ長調は♭二つで、クラシック音楽(ギター以外の)でよく使われ、名曲も多くあります。 モーツァルトの場合、変ロ長調は好んだと言われるト短調の平行調にあたるため、3大交響曲の一つの交響曲第39番や、最後のピアノ協奏曲、ピアノ・ソナタK333、K570などの名曲があります。



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久々の練習曲タイプのプレリュード




エチュード・タイプのプレリュード

 このプレリュードは譜面のとおり速いアルペジオとスケールで出来た曲で、久々に練習曲的なプレリュードとなっています。 オルガンのためのフーガなどの前に置かれた、指慣らし的なプレリュードともいえるでしょう。 ただ、和声的には比較的シンプルで、第2番ハ短調や、第5番ニ長調のプレリュードのように、不協和音はあまり目立ちません。




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このフーガは並進行、つまり複数の声部が、3度や、6度など、一定の音程を保ちながら同じ方向に進むことが多い。




フーガは並進行が多い

 フーガの方もどちらかと言えば穏やかな感じで、インベンションのような感じになっています。 意外にに感じるのは、バッハの曲、あるいはバッハのフーガにしては珍しく ”並進行” つまり2声以上の声部が同じ方向に上下することが多いことです。

 多声部の音楽で2」声以上の声部が動く時には、基本的に反行、つまり上下逆方向に動くことが多いのですが、この曲では3度、6度、10度などの並進行が多くなっています。  この21番はプレリュード、フーガともに内容的にはややシンプルで、トレーニング的な曲といってよいのかも知れません






第22番変ロ短調



たまに使うと新鮮


 変ロ短調は♭5個で、主調、つまり冒頭から変ロ短調で書かれた曲は少ないのですが、他の調で書かれた曲が転調しながら、この調になると言うことは時々あります。 もちろんギターでは非常に少ないのですが、それだけに新鮮な響きもします。



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素朴な感じで、郷愁を誘う感じがあるプレリュード




素朴で情緒的なプレリュード

 プレリュードは比較的穏やかで、素朴な感じもするのですが、何とも郷愁を誘うような、懐かしい感じのする曲です。 もちろん技術の練習のための曲ではなく、また頭で聴く音楽というより心で聴くタイプの音楽かも知れません。




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見た感じはルネサンス時代の声楽曲と言った感じのフーガ。 テーマは第8番嬰ニ短調のフーガに似ている



フーガは第8番に似ている

 フーガはあまり長いものではありませんが、声楽的で、ちょっと第8番嬰二短調のフーガに似ています。 似ていいるというより、テーマの2個目の音の 「ファ」 を1オクターブ上げると、第8番のテーマとほぼ同じになってしまいます。 5声で書かれていますが、譜面を見るとバロック音楽というより、ルネサンス音楽のようですね。 宗教音楽的な感じもします。
バッハ:平均律クラヴィア曲集 18



第20番イ短調



初級のアレンジではよくあるが

 イ短調もギターではたいへんよく使われる調ですね、日本の歌や演歌などを優しくソロにアレンジしたものではほとんどこのイ短調になってしまうくらいです。

 ではクラシック・ギターの名曲では? というと意外にすぐに浮かんできませんが、 「アランブラの想い出」 がイ短調ですね、ただイ短調になっているのは前半だけで、どちらかといえばイ長調の部分のほうが長いです。 他には何でしょうね、同じタレガの曲で 「マリエッタ」 と 「マリーア」 がイ短調ですね。

 ソルの作品だと 「私は羊歯になりたいによる変奏j曲」 なんて感じかな、もちろん少なくはないのですが、同じ短調ならニ短調かホ短調のほうが、ギター曲としては多そうですね。




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このプレリュードは本当にアルペジオ的。 バッハにしてはシンプルなほう。 でも低音は和音から外れている。




 プレリュードはほぼアルペジオで出来ています。この曲のほうは、本当にアルペジオで、上声部だけを見ると、最初の小節は「シ」だけを除いて、すべて 「ラ、ド、ミ」 つまり主和音の音で出来ています。 2小節目も属和音で、非和声音は1個だけになっていて、前の曲に比べると、和声的なシンプルですね。 ただ、低音は1小節目と同じ 「ラ」 なので、響きはちょっと濁ります。 

 さらに次の3小節目は属9の和音で、いっそう不協和度が増します。 バッハの曲である以上、そんなにシンプルのはずはありませんね、特に短調の場合は。




最初の3個の音は18,19番のプレリュードと同じ

 冒頭の音を見ると 「ラ、シ、ド、ミ」 で、最初の3個の音は18,番、19番と同じですね、しかもそれぞれ16分音符ということで。 やはり関連があるのでしょうか。

 アルペジオ音型を基にした曲ですが、最初の16音符が弾みとなっていて、前の曲に比べると、躍動感のある曲になっています。 ただ、短調なのでそれなりに重さも感じます。




フーガのテーマはプレリュードと反対の動き

 フーガの方は同じ16分音符でも始まりでも、こちらは半音下がる形、つまりプレリュードとは反対の動きで始まります。 おそらく意識的なものではないかと思います。 ただし、アルペジオ的な進行ではなく音階的、つまり順次進行で、声楽的なテーマと言えます。




ん? 第20番?

 ん?  セイガク的?  第20番?  皆さん思い出しましたね。 「平均律曲集第1巻では、4の倍数でフーガが長くなる」 という法則を!  そして、その時フーガのテーマは声楽的になるということも!  




4の倍数の法則復活

 そう思って譜面を先のほうを見るとそのページの終りには終止記号がない、つまりこのフーガは次のページに続いている。 ページをめくってもまだ終止記号が出てこない、そして6ページ目にやっと終止記号が出てくる! はやりあの ”4の倍数の法則” は生きていたのか!




私の発見?


 というわけで、若干の例外はあるが、この ”4の倍数の法則” は限定的には成り立つようです。 ただ若干トーンを弱めて 「平均律クラヴィア曲集第1巻においては、 4の倍数のナンバーにおいて、フーガが長くなることが多い。 その時、フーガのテーマは声楽的なものになる」 ということとしておきましょう。

 因みに、この ”4の倍数の法則” 誰も唱えていないのでは? だとしたら、私が発見したことになるのかな?  ・・・・・誰もが ”普通に” わかっていることだったりして。




単一のテーマだが

 長いフーガの場合、テーマが3つある3重フーガになることもあるのですが、このフーガは単一の主題によるようです。 しかしシンプルに単一の主題では長くなりませんから、何か一工夫ありそうですね。 この冒頭のフーガのテーマを見た時、勘の良い人、あるはバッハのフーガをよく聴く人だったら、ピンときそうですね、たぶん、いや当然バッハはこうすると。




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冒頭のフーガのテーマは4段目のところで上下が反転されている。 バッハがよく用いる手法だ。




反転しやすそう

 そううです、このフーガのテーマは反転しやすい、というか始めから反転することを考えて書いたもののように思えます。  つまり 「ラ ⤵ ソ# ⤴ ラ」 と下がるところを 「ラ ⤴ シ ⤵ ラ」  と変化させています。 他に対旋律など、別の素材も出てきますが、、この最初のテーマの ”順” と ”逆” を巧みに用いています。




オルガン曲ぽい

 また曲の終りの方では長い音符がちらほらと出てきて、これはチェンバロやピアノでは演奏不可能で、最後の方は当然聴こえなくなってしまいます。 つまりオルガン曲的というわけですね。 そう言えば、この曲に似ているオルガン用のフーガがあったように思います。  しかし思い出してみると、4番、8番、12番など、他の4の倍数番のフーガもオルガン曲ぽかったですね。



 
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このフーガは6ページある。 上はその6ページ目。 オルガンのペダル音のようなものが出てくる。