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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

明けましておめでとうございます。


久々に3人で迎えるお正月

 また新しい年になりましたね。私の方では今年は久々に3人で迎えるお正月となりました。3人で過ごすお正月は何年ぶりせしょうか、創がパリに行く前ですから、もう10年くらいになるでしょう。30日の夜水戸駅に着いたのですが、改めて水戸の冬の寒さを思い出したようです。1月3日には東京でのオセロの大会で出るのだそうで、最近は帰郷と東京でのオセロの大会がセットになっているようです。




いつのまにか電話番号が

 今回の帰郷では、パソコンの買い替えに伴い、ホーム・ページのリニューアルをしてもらうことも大きな理由です。ホーム・ページと言えば、私が、よくわからないながらも、いろいろと手直ししているうちに、なんと教室の電話番号が消えてしまい、またメール・アドレスも、あることはあるのですが、ただ書いてあるだけで、そこをクリックしてもメールが出来る状態になっていませんでした。

 それでも教室の入学に関する問い合わせはそれなりにあり、そういった方々は、いろいろお手数をかけ、電話番号などを調べていただいて連絡していただいていたのでしょうね。本当に恐れいります。近いうちにもっと見やすく、連絡しやすいホーム・ページになると思います。



今年の予定

 さて例年通り、年頭に当たり、当教室、および私の今年の予定を書いておこうと思います。といってもはっきりと決まっているコンサートなどはまだ2件しかありません。

 

 ◎5月25日(日) 石岡市ギター文化館   谷島崇徳、中村俊三デュオ・コンサート(タイトルは仮)

  正式なタイトルや曲目などはまだはっきりとは決まっていませんが、谷島崇徳さんとギター文化館でコンサートをやることにしました。二重奏の曲目としては、アサドの「ファーウェル」、ヨークの「三千院」、ソルの「ロシアの想い出」などが候補となっています。

 他に独奏も行う予定ですが、私の場合、グラナドスの曲などやろうかなと思っています。思っているだけで練習などはまだ行っていませんが、「詩的ワルツ集」とか「スペイン舞曲第2番」などを考えています。



 ◎7月下旬 水戸芸術館  水戸市民音楽会

 今年も水戸芸術館での市民音楽会に出演します。まだ正式に日にちは決まっていません。



◎11月30日  ひたちなか市文化会館   第16回水戸ギターアンサンブル演奏会

 今年はバッハの管弦楽組曲第2番(全曲)とアルベニスの「アストゥリアス」、「カディス」などを演奏します。管弦楽組曲はギター合奏では「ロンド」以下の舞曲をよく演奏しますが、今回はあえて長大な序曲を含めた全曲演奏に挑戦です。



その他

 その他今年も県立図書館でコンサートを行いたいと思いますが、日にちなどはこれからです。昨年は「ギター・ワールドカップ」などとちょっとひねった企画となりましたが、今回はもう少し普通の企画でやろうと思います。

 5月の連休には今年もギター文化館でシニア・ギター・コンクールが行われ、審査員を務めます。また出来れば秋頃にリサイタルとして、多少まとまった内容のコンサートを行えればと思っています。

 それでは今年も私、および中村俊三ブログをよろしく願いいたします。
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うっかりと忘れて・・・・

 当記事は8月23日に書いたものなのですが、うっかりと下書きのまま、公開するのを忘れてしまいました。「アガらない薬」のシメに当たるものなのですが、1ヶ月遅れとなってしまい、つじつまもわかりにくくなってしまったでしょう。今頃になって何ですが、せっかく書いたものなので一応公開しました、申し訳ありません。 




今月号(=9月号、1ヶ月遅れ!)の記事 ~暗譜について

 本題に入る前に、9月号の現代ギター誌に「プロ・ギタリストの練習法」と記事がありました。福田進一、村治佳織、デビット・ラッセルなど9人のギタリストが練習法などについて語っているのですが、その中で暗譜の仕方について「細かく区切って覚える~セルシェル」、「最後の小節から覚える~福田、ラッセル」、「視覚的に覚える~ヴィドヴィッチ」など、当記事でも書いたようなことが書かれています。

 セルシェルの「細かく区切る」ということは「ド忘れした時のため」と、私の話と近いニュアンスで言っています。福田、ラッセルの「最後の小節から覚える」は私の話とは若干意味合いが違いますが、これは音楽がどう出来ているかということを理解することに深い関係がありそうです。確かに一つの方法なのでしょう、和音の進行などは逆算的にできていますから。

 「視覚的に」と言う意味はその曲を指の動きだけでで覚えるのではなく(それはそれで覚えなければいけませんが)、純粋に音で覚えると言った意味だと思いますが、いずれにしてもその音楽を理解することと、記憶するということには深い繋がりがあります(その話も「東京ドームで音階を弾く」という例えで話をしました)。

 「紙に書く」と言うことを言ったのはスコット・テナントだけでしたが、確かにこのようなギタリストたちは紙に書くことをすべて頭の中だけでできるのでしょう。しかし一般の愛好者には「書く」のは有効な方法だと思います(頭の中だけで行うのはかえって難しい!)。

 また村治さんは暗譜に関して「苦労したことがないので、特にコツがない」と言っています。確かにそのとおりなのでしょう。でも私たちは村治佳織ではないので、いろいろな工夫や努力は必要でしょう。


 パヴェル・シュタイドルは練習は以下の4つの方法があるとしています。

1.ギターと楽譜で
2.ギターなしで楽譜だけ
3.楽譜なしでギターだけ
4.ギターも楽譜もなしで


 なるほどだと思いますが、「4」の「何もなしで」練習が出来るようになれば「一人前」かも知れません。タンゴの巨匠アストル・ピアソラもコンサート前のリハーサルは頭の中だけで行なうのだそうです(前に話したかな?)。


 練習時間の話もしていますが、だいたいまとめるとほとんどのギタリストは、今現在3~6時間といったところのようです。コンクールなどを目指していた頃はさらに多かったと言っています。また練習は常にギターを持って行なうわけではないということも、どのギタリストも言っています。また基礎トレーニングの話もありますが、いずれ当「上達法」でも取り上げたいと思っています。




最終回 ~左手については

 「譜忘れ対策」、「右手の安定性」と話してきたので、次は左手ということになりますが。私の経験では左手については右手と違い、練習でちゃんと出来ていれば、本番でもだいたい弾けるものです。トラブルがあるとすれば譜忘れに関係することが多く、暗譜さえしっかり出来ていれば大丈夫ということではないかと思います。

 若干トラブルがあるとすれば、特に譜面を見ながら演奏する場合のポジション移動などでしょう。この話も「視奏」のところでお話しましたが、フレット(実際はポジション・マーク)を見るタイミングなどを普段の練習のときから決めておくべきでしょう。またギターを持つ角度などが普段とちがったりするとポジションを見間違えることもあります。

 スラー奏法なども本番で力むと出なくなったりしますので、練習の際に最小限度の力で行なうようにするとよいでしょう。セーハの場合は逆に本番では無意識に力が入るので、本番のほうがかえってよく出ます(力を入れすぎないように注意)。



確かに困った存在だが

 以上で「アガリ対策」の話は終わりなのですが、最初にも言いましたとおり、普段何気なく出来ているものがいざ本番となると全然出来なくなってしまうというこの「アガリ」というのは、私たちギターを弾くものにとっては(プ、アマ、初心者、上級者を問わず)たいへん困った存在です。



でもやはり存在理由はある

 しかしこれも前にお話した「ミス」と同じくそれなりの存在理由、あるいは存在意義はあるはずです。「ステージでは上手く弾けないかもしれない」ということが私たちのいろいろな工夫や努力を引き出していると言った面もあるのも確かです。私たちが常にステージでも普段どおりに弾くことが約束されていたら、そうした努力や工夫は少ししか行なわれないでしょう。



シマウマがライオンに飛びかかる?

 重大な場面に遭遇した時、心拍数があがったり、発汗したりというのは人間だけでなく、動物すべてに備わった生理現象です。動物が危機的状況に置かれたとき、普段以上の特別な力を発揮するための現象なのでしょう。普段はおとなしい草食動物も、わが子を守るために果敢にライオンなどに立ち向かってゆく映像などを目にすることがあります。そういった状況では普段以上の力が出ると共に、恐怖心さえも克服できるのでしょう。



別に危機的状況ではないが

 ギターを弾くことはその「危機的状況」とは本来無縁なはずなのですが、人間の脳のどこかで交錯してしまうのかも知れません。頭の中では似たような状況が生まれてしまうのでしょう。本来は特別な力を出すための機構が、逆に普段どおりのことをすることを妨げてしまっているわけです。



マイナスをプラスに変えられる人だけが

 もちろんそのような理屈を述べたところでステージで上手く弾けるというわけでもありませんが、この「アガる」ということを、それが持つ本来の存在理由である「特別な力を出す」ことに繋げているギタリストのことを、私たちは“ヴィルトーゾ”と呼んでいるのでしょう。


似ている曲でも「月光」ではアポヤンド奏法は使わない

 前回アルペジオに乗せて歌わせるタイプの「愛のロマンス」では、私の場合薬指と、親指はほとんどアポヤンド奏法で弾いているということを言いました。しかし似たタイプの曲「月光」ではアポヤンド奏法は使いません。その理由として、この曲ではメロディは薬指ではなく、主に中指で弾くということで、中指については私でもステージで不安定になることはあまりありません。また時折出てくる薬指もアル・アイレ奏法で弾いています。

 また音量的にも中指は大きな音の出せる指なので、バランス上も問題ありません。またソルの時代にはアポヤンド奏法は使われなかったということもあります。 ・・・・と言いつつも結構反則を犯していますが。


弦を押し付けるようにして

 また音楽の内容からして、「愛のロマンス」のようにメロディにウエイトが偏ってなく、ハーモニーが重要と言うことも出来ます。。因みにアル・アイレ奏法で大きく、膨らみのある音を出すには、指先を表面版方向に弦を押し付けるようにして爪に深くかけ、手のひらの中心部に弦を”握り込む”ようにして弾きます。



速いアルペジオの曲

 再びアポヤンド奏法の使用例になりますが、今度はかなり速いアルペジオの例です。曲はメルツの「吟遊詩人の調べ作品13」の中から「フィンガルの洞窟」のアルペジオ部分です。速いアルペジオにより、轟々という洞窟に響き渡る波の音を表しているのでしょう。


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 「Allegro」と指定された6連符のアルペジオですが、おそらく1拍をメトロノームで100~120/mくらいの速度を想定しているのではと思います。このスピードは16分音符に換算すれば150~180/mとなりますからかなりの速さです。前回同様に、私の場合は○印の付いた音、つまり親指と薬指はほぼアポヤンド奏法で弾いています。



”見た目”では判らない

 この速度ですとアポヤンド奏法の使用はかなり難しいのですが、私の場合は結果的にこのほうがようようです。アポヤンド奏法といってもフォーム的にはアル・アイレ奏法とほとんど変りません。特に親指は見た目ではどちらで弾いているか区別は付きません。自分でも指先の”感触”でわかるだけで、”目”では判別出来ません。要する弾いた後、に次の弦触れるか、触れないかだけです。



アル・アイレ奏法が上手くない理由?

 薬指のほうもあまり違いはありませんが、よく見るとアポヤンドのほうが動きが小さく、アル・アイレの方がやや(特にフォロー・スイングが)大き目のようです。もしかしたらそのことと、私がアル・アイレ奏法があまり上手くないのと関係があるかも知れません。 



アルペジオの響きの中から主旋律を浮き上がらせるために

 この曲は大雑把に言えば、ppで始まり、ffで終わると言った感じの曲で、その音量の違いがあるほど迫力ある曲になるといった感じの曲です。譜例の挙げたのはその出だしのppの部分で、確かにすべてアル・アイレ奏法でもよいのですが、すべてアル・アイレ奏法だとなかなか主旋律とアルペジオとの音量や音色の差が付けにくい感じがします。

 主旋律(1弦の)にアポヤンド奏法を用いることにより、逆にアルペジオ部分の音を抑えることも出来、そのアルペジオの響きの中から主旋律を浮き上がらせることが出来ると思います。また低音にもアポヤンド奏法を使うことにより響きに”おもし”を付けることが出来、響き上の安定感も出ます。



後半はさらに速くなるが、親指のみアポヤンド奏法

 譜面はありませんが、この曲は後半からは高音よりも低音の方が主となり、1弦の音も主旋律ではなく単なるアルペジオの音の一つとなる場合が多くなります。したがって、曲の後半からはアポヤンド奏法は親指のみとなります。

 さらに終わり近くではアルペジオが6連符ではなく、32分音符となり、アポヤンド奏法は難しくなりますが、それでも私の場合親指はアポヤンド奏法で弾いています。この曲のエンディングではぜひとも音量はほしいところです。親指をアポヤンド奏法にすることにより、前述のとおり響きが安定するだけでなく、右手自体も安定して(右手の上下動などが少なくなる)音抜けなども少なくなります。



 ****「親指はアポヤンド奏法で弾いたほうが安定する」 というのはかなり個人差があって、アポヤンド奏法を使うといっそう上下動が激しくなってしまう人も少なくありません。私の場合、親指の付け根の間接が内側に入り込んで、人差し指に対して90度くらいの角度にすることが出来ます。

 指の骨の形や付き方などにに関係があるのでしょうが、左手ではそれほど上手くできませんからある程度は訓練のたわものでしょう。また親指はこの付け根の間接だけで(他の部分を全く動かさずに)自由に動かすことが出来、その動きだけでアポヤンド、アルアイレの使い分けや、消音などを行なっています。また必要があれば先端の方の間接を動かすことも出来ます(和音を弾く時、低音の響きを重厚にしたい場合に使う=軽くしたい場合には使わない)



大聖堂の終楽章 

 次はおなじみ「大聖堂」の第3楽章です。この曲(この楽章)もほぼアルペジオで出来ています。難曲の一つと言われ、技巧的で華やかな曲というイメージがありますが、意外と”華やかに”弾くのは難しい曲で、一つ間違えればそれこそ”すべって”しまいます。この曲を華やかな曲、あるいは迫力ある曲に聴こえるように弾くには、かなりの技術が必要でしょう。


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 基本的にはほとんどアルアイレ奏法で弾く曲でしょうが、譜例のとおり、私の場合はアポヤンド奏法を適度に混ぜながら弾いています。それにより右手の安定、さらには曲全体の安定を図っています。私の技術では、アル・アイレ奏法で、すべての音を期待通りの音量や音質で弾くことはかなり難しいことです。



絶対に外せない音がある!

 譜例の後続の部分でも各所でアポヤンド奏法を使っていますが、時にエンディングは絶対に音を外したくないので(そう思ってもよく外れてしまいますが)、アルペジオの最初の音など、かなりアポヤンド奏法を使っています。もちろん私のこうした方法は誰にでも薦められるものではありません。当然それぞれの人に合った方法があるでしょう。



 
現在はアル・アイレ奏法が主流だが

 かつては重要な音、特に主旋律などはアポヤンド奏法を主に使って演奏していましたが、最近のギターギタリストはアル・アイレ奏法を中心に用い、アポヤンド奏法はかつてほど使われなくなりました。その主な理由としては、演奏法自体の合理性と言ったこともありますが、演奏に対する考え方も変ってきたこともあるでしょう。

 またアル・アイレ奏法はアポヤンド奏法に比べて美しく豊かな音を出すのが難しいのですが、最近のギタリストたちの技術が上がり、アル・アイレ奏法でもアポヤンド奏法同様の大きく、美しい音が出せるようになったこともあると思います。



使えるものは何でも使う

 しかしこのアル・アイレ奏法というのは文字通り指が“空中”にあるので、技術の高い一流ギタリストはともかく、一般の愛好者などにとっては、緊張したり、指が震え気味になった場合はなかなかコントロールしにくいのも確かです。時代の流れに逆行するようですが、アル・アイレ奏法だけでは上手く行かない時、アポヤンド奏法を活用するのも一つの方法ではないかと思います。



確実性は高い

 私自身もアル・アイレ奏法があまり得意でないので(ということは「ギターを弾くのが不得意」といっているようなものだが)、困った時にはアポヤンド奏法を使っています。本来ならアル・アイレ奏法で弾くべき箇所、あるいは練習時ではアル・アイレ奏法で問題ないところでも、本番で確実に弾くためにアポヤンド奏法を使っている例がかなりあります。

 以下に私の“アポヤンド使用例”を挙げます。もちろんこれはあくまで私にあった方法なので、当然人によってベストな方法はことなるでしょう。真似しない方が良いこともたくさんありますので、あくまで参考として読んで下さい。



愛のロマンス ~○印は私がアポヤンド奏法で弾いている音


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かつてはメロディ=アポヤンドで指導していた

 上はお馴染みの「愛のロマンス(禁じられた遊び)」ですが。かつては主旋律(1弦、右薬指)はアポヤンド、他はアル・アイレ奏法で弾いているギタリスト、あるいはそのように指導しているギター教師がほとんどだったと思います。初心者の場合はなかなか難しいのですが、「メロディがきれいに出ないから」ということであえてそのように指導していた教師も多かったと思います。実は私もギター教師を始めた頃はそのように教えていました。



現在はほとんどのギタリストがアル・アイレ奏法

 しかし低音を入れながら1弦をアポヤンド奏法で弾くのはなかなか難しく、無理にやるとバランスが崩れるなどいろいろな弊害も生じてしまいます。また前述のとおり、アルアイレ奏法でも十分に美しく弾くことも出来ることもわかり、しだいにあまりこだわらないようになりました。おそらく今現在では大多数のギタリストはアル・アイレ奏法でこの曲を弾き、また指導する場合にもアル・アイレ奏法を基本としているでしょう。



でもやたら○印が多いが

 と言いつつも、譜例のように、音符にアポヤンド奏法を意味する○印がやたらたくさん付いています。もろに現代のギター奏法に逆行するようなアポヤンド奏法の使用例です。実は私自身でもアル・アイレ奏法で弾いたほうがきれいに弾けます。音色、和音のバランス、三連符のタイミングなどはやりアルアイレ奏法のほうがきれいに弾けます。またアルアイレ奏法は他の弦の響きを消さないので、響きも美しくなります。



緊張すると薬指のアル・アイレ奏法が上手く出来なくなってしまう

 ではなぜ私の場合このようにアポヤンド奏法を使うかというと、私の場合ステージで緊張した場合、特に薬指のアル・アイレ奏法が上手く出来なくなるからなのです。音抜けしたりするだけでなく、音量や音色も上手くコントロールできなくなってしまうわけです。

 特にこの曲など1弦のメロディにウエイトがかかっていて、なおかつ誰でも知っている曲ですから、この1弦のメロディだけは絶対にトラブルは起こせません。また自分の持つ最高の音でなければなりません。



薬指のアポヤンド奏法は安定感がある(私の場合だけ?)

 アポヤンド奏法は、その点非常に安定性が高く、特に薬指はアポヤンド奏法で弾きやすい指で、アル・アイレ奏法の場合に比べ、安定性がかなり違ってきます。また音量、音質のコトロールもしやすく、ステージで多少指がふらついている場合でも、ほぼ練習時と同じように弾くことが出来ます。


低音もアポヤンド

 しかし1弦のみをアポヤンド奏法で弾くと、特に低音とのバランスが崩れてしまいます。6弦の開放の「ミ」は和音とメロディを支え、またこの曲の「主音」でもあるのでたいへん重要な音です。この音がきちんと鳴り響かないと音楽になりません。

 私の場合は1弦のメロディとのバランス上、譜例のように低音もアポヤンド奏法で弾いています(もちろん2,3弦はアル・アイレ奏法です)。このように弾くことにより結果的に主旋律と低音部が大きく、中声部が小さくと言う風にバランスは上手く取れます。


他人にはあまり薦められないが

 ただしこの方法(上下同時アポヤンド)は決して易しくないので、無理にやるといろいろな問題を起こします。またアポヤンド、アル・アイレ混合で使うので、三連符のタイミングに”ずれ”が生じてしまいます。これが一般的にベストな方法でないのは確かです。アル・アイレ奏法で上手く弾けるならその方がずっとよいでしょう。私もアル・アイレ奏法がもう少し上手ければアル・アイレ奏法で弾いているでしょう。


アポヤンド=必要悪?

 言葉が適切ではないかも知れませんが、私にとってはアポヤンド奏法、特に薬指のアポヤンド奏法は”必要悪”のようなもの知れません。特にアルペジオで主旋律を薬指が担当する場合はほとんどアポヤンド奏法を用います。アルペジオの場合の親指もほとんどアポヤンド奏法を用いますが、人差し指や、中指は単旋律などでない限り、あまりアポヤンド奏法は使いません。

まとめれば  親指、薬指=アポヤンド  人差し指、中指=アル・アイレ  ということになるでしょうか。
 


 *譜例の方で、さすがに最後のところはアルアイレ奏法で弾きますが、時には1弦の「ミ」が鳴らなくなってしまうこともあります。でもそのの場合でも聴いている人が”勝手に”音を想像してくれると思うので、あまり気にしないようにしています。  
アガリに対処しやすい右手 ~フォームについてなど

 ステージでの演奏は、どうしても右手が不安定になりやすいもの。左手の方は練習できちんと出来ていれば、だいたいは本番でもなんとかなるのですが、右手の方は緊張すると指が震えたり、空振りしたりと、練習時とは全く違う感じになってしまたりすることがあります。

 暗譜についても前述のとおり、努力で克服出来ることも多いのですが、この「右手」に関しては、なかなか対処が難しいものです。その分より深刻な問題かも知れません。これからお話することも完璧な対処法とは言えないのですが、多少なりとも症状を緩和する方法として読んでいただければと思います。


 私自身の話は前にしましたが、若い頃はステージでも右手が練習時に比べて、特に変るということもありませんでした。しかし40代の中頃からでしょうか、体が変ったのか、精神的に何かが変ったのか、ステージデギターを弾くと右手が不安定になるようになりました。右手が震えるようになったというより、正確には「震えに弱くなった」と言えるのかも知れません。若い頃は多少震え気味でもあまり気にならず、速いアルペジオなどでも1曲目から練習時とほぼ同じように弾くことができました。

 しかし最近では、コンサートが始まってから15~20分くらいは、練習時とはだいぶ違った感じになってしまいます。一時期かなりひどい時もあったのですが、現在はフォームの若干の変更、プログラムの構成の工夫などで“それなりに”対処しています。



基本を守る

 右手については、はやり“基本”を守るということがいろいろな場面に対処する最も重要なことだと思いますが、それについては以前にもお話しました。その時の記事と重複しますがあらためて書いておきましょう。



斜め45度は和音、アルペジオで有利

 まず人差し指、中指、薬指の3本は弦に対して“斜め45度”くらいにします。これは現在ほとんどのギタリストが行なっていることで、これはいろいろな意味で合理性が高く、また豊かで美しい音が出せます。同時に安定したフォームと言え、緊張に強い弾き方とも言えます。特に和音やアルペジオの時にその効果は高くなります。

 欠点としてはいわゆる“逆指”が弾きにくいことや、i、mの交互のアポヤンド奏法の時、指の長さの違いがはっきりしやすいことがあげられますが、それを考慮してもプラスの面のほうがずっと大きいでしょう。



手首の間接は曲げない(手首を前に突き出さない)、右手はなるべく弦に近く

 次に“手首の間接を曲げない”ということも重要です。右手首の間接をのばして腕が指先にかけてほぼ直線になるようにし、右手全体が弦からあまり離れないようにします。つまり右手全体をなるべく弦に近いフォームをとるわけです。手首の間接を曲げて手首が前方に突き出すようなフォームをとると右手が不安定になります。



野球の一流選手は内角打ちが得意

 当然のことながら右手が弦に近いほうがコントロールがよくなり、弦をしっかりと掴んで、正確に強く弾くことが可能です。野球の“内角打ち”と同じく打点が体に近いほうが飛距離の打率もあがるはず、プロ野球の一流選手はたいてい内閣打ちが得意・・・・ 違うかな? 本当は野球のことは詳しくない。



右ひじはやや右めに

 右ひじの位置でも演奏の安定感は若干異なってくると思いますが、右ひじは、どちらかと言えばボディのやや“右め”のところに乗せた方がよいと思います。また若干自分のほうにひき付け気味にします。右側を引きつければ、逆に左側、つまりギターのヘッドの方が前に出てきますから、左手も見やすくなり(楽譜も!)、フォーム全体としてもよくなるでしょう。


左手よりも右手を意識したフォーム

 ギターのヘッドを低くすると、左手が押さえにくくなりますが、逆に上げすぎると右手が下り過ぎることになり、右手が不安定になります。ギターを持つフォームは普通「左指の押さえやすさ」を中心に考えられますが、右手の安定はより重要と思います。因みに私自身は足台よりも、ギター・レストを使ったほうが右手が安定するように感じます(右ひじが足台を使った場合に比べ、やや上がり気味になるため)。