中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

<ジョン・ウィリアムス コロンビア録音全集>  9


John Williams - Barrios

IMG_0001_20160911122055d49.jpg
しっかりとフレタを持っている



収録曲

アウグスティン・バリオス

大聖堂
マドリガル・ガヴォット
メヌエット
マズルカ・アパショナータ
エチュード
プレリュード
森に夢見る
ワルツ第3番
クエカ(チリ舞曲)
サンバの歌
アコンキーハ
マシーシ
どうか、神のご加護を(最後のトレモロ)
郷愁のショーロ
クリスマスの歌

 1977年  発売





本格的なバリオス人気のきっかけとなったLP

 このLPの話は何度かしていますが、現在のバリオス人気に火を付けたものといえるでしょう。 録音日などは明記されていませんが、国内発売も1977年だったと思います。

 この頃からある程度バリオスはギター愛好家の間で人気が高まりつつありましたが(1950年代くらいまではほとんど弾く人がいなかった)、このLPとほぼ同時期に全音出版からヘスス・ベニーテス編のバリオス全集が出版されたこともあって、バリオス人気は本格的なものへとなってゆきます。

 また録音としても、この頃までにバリオスの作品はある程度録音されていましたが、バリオスの作品のみによるアルバムはこのウィリアムスのものが最初です。 このアルバムにより、これまで一般愛好家には知られていなかった曲なども聴くことが出来るようになりました。

 今日、あらゆるギターの作曲家の中で、バリオスは最も人気のある作曲家(兼ギタリスト)と言えますが、そのことにウィリアムスは非常に大きな貢献をしたと言えるでしょう。



人口的な加工を排した録音、フレタらしさも出ている

 このLPの音質はこれまでのものと違い、残響や高音域を押さえたものになっています。 生音に近い感じになっていると言ってもよいでしょう、ボリュームもかなり押さえ気味になっています。 さらにこの後に録音するポンセの作品集になると、それが徹底し、たいへん困ったことになるのですが、それはまた次にお話しましょう。

 確かにこの録音を聴いていると 「フレタかな」 と言った感じがします。 写真ではくフレタを持っているので間違いなくこのLPはフレタで録音しているものと思いますが  ・・・・・・本当はちがっているかも知れませんね。



ロマンティックなバリオスの音楽とは相性がよい

 ウィリアムスは後年ポピュラー系の音楽に志向してゆきますが、基本的にウィリアムスと言うギタリストはロマンティックなギタリストで、旋律を歌わせるのが得意な人だと思います。 そうしたウィリアムスに、これまた、極めてロマンティックであるバリオスを作品はたいへん相性のよいものです。ここに収録された曲はすべて名演奏といってよいでしょう。



当時は皆開放弦で弾いていた?

 若干余計なことを言えば、前述のベニーテスの譜面で、「クリスマスの歌」のハーモニックス記号が一部脱落しています。 ウィリアムスはこの譜面、またはこの譜面と出所を同じくする譜面を用いていたのでしょう、その本来ハーモニックで弾く部分、を開放弦(譜面上はそう記されている)で弾いていいて、たいへん意味不明となっています。

 今では笑ってしまいそうですが(失礼!)、当時はだれも気が付かず、みんなウィリアムスと同じく開放弦で弾いていました、「なんか変なメロディだな」 と思いながらも。







Manuel Ponce


IMG_0002_20160911131950053.jpg
ファッションも1970年頃に比べるとやや地味になったが、録音の音質のほうはもっと地味になった


収録曲

マヌエル・ポンセ  

「スペインのフォリア」による変奏曲とフーガ
プレリュード
バレー
3つのメキシコ民謡
ワルツ
3つの歌

 1978年 発売




1970年頃の録音の反動? でもちょっとやり過ぎ!

 先ほども触れたとおり、このLPは非常に音を押さえたもので、残響などは全くなく、高音域や低音域も押さえられ、さらに音量も非常に押さえられていました。 1970年前後のウィリアムスの録音は残響を付け(自然の残響ではなく、装置による)、また高音域も伸ばして、かなり派手な音質となっていましたが、このポンセの録音はそうしたことへの反動と思われます。

 しかしこのLPに関しては、ちょっと度が過ぎているようです。 特にLPの場合はアンプのボリュームを上げると針のノイズが大きくなり、まるでかつてのSP盤のようになってしまいます。 もちろん精度の高い装置を使えばちゃんと聴けるのかも知れませんが、当時私が使っていた装置ではかなりノイズが大きくなって、聴きにくいLPとなっていました。

 このCDでは多少ボリュームをあげてもノイズが出ませんから、そうした問題はありませんが、それでも高音域がカットされたような音なので、一瞬 「耳が変になったかな」 といった感じにはなり、やはり違和感はあります。



でも演奏は秀逸

 しかし演奏の方はたいへん素晴らしく、ポンセの大曲 「スペインのフォリア」 も、その美しさに聞きほれて、所要時間20数分というものを感じさせません。 他の小品も魅力的で、いまさらながら、ウィリアムスがこうした定番的なクラシック・ギターのレパートリーをあまり録音しなかったことが惜しまれます。

 ウィリアムスの師匠であるアンドレ・セゴヴィアはポンセの音楽を愛し、その作品の演奏や録音に力を注ぎました。 このウィリアムスのポンセ・アルバムもその師匠の影響があるのかも知れません。 あまりオーソドックスなギターノレパートリーを演奏しないウィリアムスにとっては、ポンセの作品のみのアルバムを世に出した意味は大きいでしょう。 



師、セゴヴィアとは異なる道を進んだが、共通項は確かに存在する

 ウィリアムスはデビュー当時は ”ギター界のプリンス” と呼ばれ、セゴヴィア門下の優等生として世に出ました。 しかしその後はセゴヴィアとは一線を画する方向へと進み、一部のファンからは失望されたこともありました。 確かにその後の活動はセゴヴィアの方向性とはだいぶ違うものの、このポンセのアルバムは師との共通項の一つなのでしょう。

 またセゴヴィアとは違って現代的なイメージのウィリアムスの演奏ですが、しかし基本はロマンティックで、メロディを歌わせることが得意というわけで、やはりしっかりと師匠の音楽を継承しているとも言えるでしょう。 セゴヴィアとの繋がりを感じさせる演奏、それがこのポンセの作品集のLPなのでしょう。
スポンサーサイト
<ジョン・ウィリアムス コロンビア録音全集>  8

John Williams Plays Bach The Complete Lute Music on Guitar


IMG_20160906233858f34.jpg


収録曲

バッハ : リュート組曲全4曲、 プレリーュドニ短調BWV999、 フーガBWV1000、 プレリュード、フーガ、アレグロBWV998

録音 1975年




アグアード ⇒ フレタ ⇒ スモールマン

 ウィリアムスが使用した楽器の話は、前にもしましたが、 大ざっぱに言って、デビュー(1950年代末)から1970年代前半くらいまではアグアード、1970年代半ば頃から1980年代始め頃まではフレタ、それ以降はグレッグ・スモールマンを使用したようです。 

 このLPのジャケットの写真からは、フレタかアグアードかは区別が付きませんが、前回紹介した「さくら」のLPジャケット写真では、明らかにフレタを弾いていますので、そうしたことからすればフレタ使用なのではないかと思います。



IMG_0003_20160831160311422.jpg
前回紹介した1973年録音の「さくら」のLPジャケットだが、ここに写っているのは明らかにイグナシオ・フレタ

  



プロは聴いただけで楽器がわかる?


 もっとも、 「プロだったら、聴けばフレタかアグアードかなんて、わかって当然!」 なんて言われそうですが、これが残念ながら聴いただけでは全く区別が付きません。 テレビ番組でも、プロ・ヴァイオリニストが、何億円もするストラディバリと安物のヴァイオリンとの区別が付かなかったようですから(そのヴァイオリニストは日頃トラデバリを弾いている)、楽器の音など、それほど簡単にはわかりません。



どれを弾いてもウィリアムスの音はウィリアムスの音

 生演奏でもわからないくらいですから、まして録音となればわかるはずもありません。 また、フレタもアグアードも杉材で、どちらもスペイン系の楽器と言うこともあって、よく似ているといえば似ているでしょう。 また、楽器は弾く人によってかなり変わり、楽器の違いよりも演奏者の違いのほうが、音としては変わるでしょう。 要するに、どの楽器を弾いてもウィリアムスの音はウィリアムスの音ということでしょう。



アグアードだったとは思うが、ただ美しかったことだけが確か

 因みに、私は1971年に虎の門ホールで、ウィリアムスの ”生音” を聴き、その美しさに感動したわけですが、 その時使用した楽器は、聴いた話ではアグアードのようです。 ただ本当に確かめたわけではないので断言は出来ません。 その後ウィリアムスの生音は一般ファンにとっては ”幻” となる訳ですが(リサイタルでもアンプを使うため)、 ウィリアムスの生音は極めて美しかったのは紛れもない事実です。

 


スモールマン使用になってからは生音では演奏しなくなる

 1983年頃からは、CDのジャケット写真からするとグレッグ・スモールマン使用のようです。 スモールマンは他の二つの楽器に比べて異質な音がするので、CDでもある程度判別できます。 特にスモールマンを使用するようになってからはリサイタルなどでもアンプなしには演奏しなくなったようです。  ・・・・・・スモールマンと言う楽器は生でもアンプを通したような音がします(あくまで個人的な感想ですが)。


IMG_20160908142902943.jpg
ウィリアムスは1983年以降、ほとんどグレグ・スモールマンを使用している




バッハのLPに話を戻す。 ~流麗で完成度の高いバッハの演奏


 話が楽器の方に行ってしまいましたが、演奏の話に戻しましょう。 1975年と言えば、ウィリアムスの円熟期と言ってよく、このバッハのリュート作品全集のLPは完成度の非常に高いものです。 技術的な完成度は言うまでもありませんが、さらにたいへん流麗なバッハを聴かせます。



私自身たいへんよく聴いた演奏

 今現在ではギター、及びリュートによって、このバッハのリュート作品全集がかなりの種類出ていますが、この時点ではこうした全集はほとんど録音されていなくて、そういった意味でも貴重なLPでした。 私自身もギターで弾くバッハのリュート作品としては、これまで最もよく聴いたものかも知れません。 たいへん荘快感のあるバッハの演奏です。



最近の演奏スタイルとは違う


 最近ではこうしたバッハのリュート作品を演奏する場合はそのギタリストなどによって装飾を施したりするのが普通ですが、そうしたものはこの録音にはありません。 この時代にはそうした装飾を付ける演奏まだ主流とはなっていませんでした。 要するに演奏スタイルとしては ”1970年代的な演奏” と言えるでしょう。



フーガBWV1000などが復活したのはたいへん嬉しい

 この2枚組のLPは、後に4つの組曲のみを1枚のCDにした発売されていました。 つまり小プレリュード、フーガBWV1000、プレリュード、フーガ、アレグロが外されてしまったわけです。 今度この全集が出されたことにより、てそれらの曲が復活し、往年のファンとしてはたいへん嬉しいことです。
<ジョン・ウィリアムス コロンビア録音全集>  7


John Williams

Ingland Japan Brazil Venezuela argentina&Mexico

IMG_0003_20160831160311422.jpg

収録曲

日本古謡 ~横尾幸弘  :  さくら
ドッジソン  :  ファンタジー・デビジョンズ
M.ポンセ  :  南のソナチネ
ヴィラ=ロボス  :  ショールス第1番
A.ラウロ  :  ヴェネズエラ風ワルツ第3番
クレスポ  :  ノルティーニャ
V.E.ソホ  :  5つのヴェネズエラのメロディ
A.バリオス  :  パラグアイ風ワルツ

 録音 1973年6月





ジョンが 「さくら」 を弾く?

 このLPの日本での発売は1974~5年頃だったと思いますが、何といってもウィリアムスが日本民謡の 「さくら」 を弾いたということでたいへん話題になりました。 確かに私が子供の頃からギターで 「さくら」 を弾くのは、いわば定番になっていて、いろいろな 「さくら変奏曲」 の譜面が発売されていました。

 私も中学生の頃、その中の一つを弾いていました(クラシック・ギターのレパトリーなどよくわからなかったので)。 最後はトレモロの変奏になっていましたが (当時の「さくら変奏曲」はたいていそうなっていた)、誰の編曲だったか思い出せません。 というよりあまり編曲者など気にしなかったように思いますが、この横尾編でなかったのは確かです。

 確かにギターで 「さくら」 は定番だといっても、それはあくまで日本国内、しかもアマチュア・レヴェルでの話で、外国のギタリスト、しかもウィリアムスのような世界的な超一流ギタリストがこの曲を弾くなどということは、だれも想像しなかったのではないかと思います。 



銀行マン・カット?

CIMG0700.jpg
国内盤のLPジャケット。 発売当時は 「ジョンがさくらを弾いた」 ということで話題となった。 ジャケットからもわかるとおり、国内盤ではこの「さくら」全面に出してのリリースだった。 ちょっと気になるのはかなり古い写真を使用していて、発売時にはこんな ”銀行マンスタイル” ではなかった。 他に適当な写真がなかったのだろうか、あるいはこの写真の方が好感度が高いと考えたのだろうか。 ただ、裏面には海外盤でも使われた写真(最初の写真)が載っていた。




クリヤーに、シンプルに演奏している

 ウィリアムスの演奏は、たいへんクリヤーな音で、あまり表情などを付けずにシンプルに演奏しています。 そのことがかえってこの曲の持ち味を出しているようです。 そう言えば確かに、お琴などでは西洋音楽のよううに、フレーズごとにクレシェンドしたり、リタルダンドしたりなど、テンポや音量を変えて、いわゆる ”歌わせる” ということはあまりやらないようですね。 



最も海外で演奏されている邦人ギター作品かも

 因みに、この横尾編の 「さくら」 は新旧2つのバージョンがあって、ウィリアムスは基本的には最初のバージョン(比較的シンプルな方)を用い、新バージョンのほうから一つの変奏のみを演奏しています。 現在ではやや長めになっている新バージョンのほうもよく演奏されるようになりましたが、 多くの海外のギタリストはこの ”ウィリアムス・バージョン” で演奏しています。

 もちろん、この横尾編は、今現在多くの日本人ギタリストによって演奏されるだけでなく、Y.セルシェルやEフェルナンデスなど、多くの著名な海外ギタリストにも演奏されています。 もしかしたら今現在、最も多く海外で演奏されている邦人作品かもしれません。



前回のLPの関係で、スペインもの以外のプログラムとなった

 この「さくら」以外はイギリスのドッジソンと、ポンセ、ラウロ、ソホ、バリオスなど南米の作品となっています。 このLPの前のLPがスペインものだったので、要するにスペイン以外の音楽を集めたLPということなのでしょう。

 ウィリアムスは友人のドッジソンの曲をたいへん積極的に取り上げていますが、現在までは、あまり他のギタリストは彼の作品をあまり演奏しないようですね。 ポンセの 「南のソナチネ」 はセゴヴィア編で、たいへん爽快に演奏しています。 名演の一つではないかと思います。 ヴィラ=ロボスの 「ショールス第1番」 も、個人的に好きな演奏です。



ヴェネズエラ風ワルツ第3番とノルティーニャはウィリアムスの愛奏曲

 ラウロの「ヴェネズエラ風ワルツ」はウィリアムスの好きな曲なのでしょう、この録音以外にも何回か録音しています。 この曲もたいへん爽快な演奏で、譜面に書かれているよる多めに繰り返しを行っていますが、長すぎる感じはしません。

 アルゼンチンの作曲家、ジョージ・ゴメス・クレスポの作品で、セゴヴィア編曲の 「ノルティーニャ」 もこの録音以外にも何度か録音していて、ウィリアムスの愛奏曲の一つと言えます。 ソホの 「5つのベネズエラのメロディ」 は、なかなか親しみやすい曲で、最近では、いろいろなギタリストに演奏されています。



ジョンのパラグアイ舞曲はこのLPのみ

 アウグスティン・バリオスの 「パラグアイ舞曲第1番」 は華やかな曲で人気がありますが、指が拡がらないと弾けない曲です。 かなり左手の負担が大きい曲ですが(右手も結構難しい!)、最近のギタリストにとっては全く問題にならないのでしょうね。 手の小さい私には全く不向きな曲ですが、それでも無理やり弾いています。

 なおあ、ウィリアムスは1977年と1994年にバリオスの作品集を録音し、また他のCDなどのもバリオスの作品を録音していますが、この 「パラグアイ舞曲第1番」 はこの録音が唯一のものと思います。
今、予報通り台風が通過中


 今日は台風9号が関東地方に上陸ということで、生徒さんたちがくるのはなかなかたいへんな状況なので、仕事の方は休みにしました。 休を決めたのは一昨日の土曜日ですが、台風情報などというのは結構外れることが多く、結局のところ、雨も降らず、風も吹かず、いったい台風はどこに行ってしまったんだろう、などということもあります。

 2日前のテレビなどでは、間違いなく今日(22日月曜日)に関東地方に上陸すると断定しているので、素直に従うしかないかな、ということで休みにしました。 今回に関しては、確かに予報どおりで、今現在(16時頃)この辺(水戸周辺)を通っているところのようです。 よくも悪くも、”大当たり” といったところです。

 少なくとも私の家の当たりでは、大きな被害が出るほどの雨や風ではないようですが、ただ教室に来るのはちょっとたいへんなところです。 とりあえず予報に従っておいてよかったかなと思います。 さて、そんなわけで、急遽仕事がなくなったので、この記事を書いているという訳です。





ジョン・ウィリアムス コロンビア録音全集 6>



ジュリアーニ、ヴィヴァルディ、ギター協奏曲集



IMG_20160822162524df6.jpg



<収録曲>
ジュリアーニ : ギター協奏曲第1番
ヴィヴァルディ : リュート協奏曲ニ長調
同        : ギター協奏曲イ長調(トリオ・ソナタからの編曲)

 イギリス室内管弦楽団   録音 1968年10月





ジュリアーニは縮小版

 ジュリアーニの協奏曲については、当ブログでも何度か書きましたが、この曲にはいくつかのバージョンがあります。 もともとは2管編成のフル・オーケストラのために書かれていますが、ジュリアーニ自身の手により、弦楽器のみのものや、弦楽四重奏の形のものもあり、さらに後世の人の手によるものもあるようです。 

 この録音では、ジュリアン・ブリームが演奏しているものと同じく、弦楽合奏版で、さらに展開部などのオーケストラ部分を大幅にカットしたものです。 そうした処置は、おそらくジュリアーニ自身のもではないでしょう。 因みに、ウィリアムスは1998年には弦楽合奏版ですが、そうしたオーケストラ部の省略のない形で録音しています。




ギターの音は増幅されている

 この録音は、そうした、いわば ”縮小版” ではありますが、ギターもオーケストラもたいへんきびきびした演奏で、荘快感のある演奏です。 やや人工的に残響が付けられ、またギターの音量もかなり増幅され、オーケストラの音に紛れないような録音となっています。

 もちろんライブではあり得ないことで、最近では録音の場合でも特にギターの音量を増幅させないで、リアルな音量バランスになっているものが多くなりました。 確かにその方が本来の ”ギター協奏曲” の姿かも知れませんが、 聴き手からすると。頭の中でギターの音量を拡大して聴かないといけないので、結構疲れます。



CDとしては聴きやすい

 CDなどで聴くとするなら、現実的ではないかも知れませんが、この録音のようにギターの音量をオーケストラの音量に対抗出来るように修正しておいてくれた方が、聴きやすいといえば、聴きやすいでしょう。

 もっとも最近ではイクリプスなど、かなりリアルなギター用アンプが出来、それを使用すれば、例えライブであっても、ギターの音色を損なうことなしにオーケストラとのバランスがはかれるでしょう。 「ギター協奏曲は、生ではギターの音が聴こえない」 といったことは過去のことになるのかも知れません。



これもたいへん懐かしい演奏

 このLPもかつて、自分では買えず、友人からテープにダビングさせてもらって聴いていました。 その後CDの形では市場に出ず(おそらく)、これも久々に聴いた懐かしい演奏です。




あまり聴いていないものもあるので

 ここまでは、このボックスに収められているLP復刻をすべてコメントしてきたのですが、ウィリアムスはギターの独奏や協奏曲以外に他のアーチスト(ポピュラー系も含む)との共演による録音を多数残しています。 それらのものは、私自身ほとんど聴いていなかったり、またあまり興味が持てないものもあるので、ここからの紹介は、独奏曲などを中心とした、私個人的に興味あるLP、CDのみにします。






John Williams Plays Spanish Music


IMG_0001_20160822162652353.jpg



収録曲

アルベニス : アストゥーリアス、タンゴ、コルドバ
グラナドス : 詩的ワルツ集、 ゴヤの美女
ロドリーゴ : ファンダンゴ
モレーノ・トローバ : ノクトゥルーノ、マドローニョス
カタルーニャ民謡 : クリスマスの夜、聖母の御子
ファリャ : 漁夫の歌、粉屋の踊り、市長の踊り、


 録音 1969年 11月




最もよく聴いた個人的に思い入れのあるLP

 スペイン音楽によるこのLPにつては以前にも書きましたが、私自身ウィリアムスのLP,CDのうち、最もよく聴いたものなので、改めて紹介しておきましょう。 私が初めて買ったウィリアムスのLP、また同時期に東京虎の門ホールで生演奏 (本当の生演奏!) を聴いたこと、収録曲が当時の私の興味に完全にはまったことなどから、文字どおり ”溝か擦り切れる” 聴いたLPです。




演奏も華やかだが、音質はさらに華やか


 曲目も上記のとおり人気曲となっていますが、演奏ぶりも、また録音の音質もたいへん華麗なものとなっています。 ウィリアムスの録音中、あるいはクラシック・ギターの録音中、最も華麗な録音といってもよいかも知れません。 ウィリアムスはこの録音の反動か、何年かすると逆に高音域や残響を極端に絞った”地味な” 録音へとなってゆきます。




跳ね返り音、 ミス?

 1曲1曲については、ともかく聴いてほしいと思いますので、あまり触れませんが、何といっても特徴的なのはアストゥリアスなのではないあkと思います。 この録音ではラスゲアードのところで、右手を弦に触れて、”跳ね返り” のような音が聴こえます。 おそらくこれはあえてしたもではなく、たまたま偶然にそうなってしまったものと思えます。 ミスと言えばミスなのでしょう。




故意に出すのは意外と難しい


 テープ編集で取ろうと思えば取れたと思いますが、これがかえって面白いと考えたので、そのままLPにしてしまったのではないかと思います、ちょっとした遊び心でしょう。 因みにこの”跳ね返り音” は故意に出そうと思ってもなかなか出せません。 また、ウィリアムスは1980年にこの曲を再録していますが、その録音ではこの音は入っていません。



世界初録音

 アルベニスの「コルドバ」とか、グラナドスの「詩的ワルツ集」などは、現在ではギターの定番的なレパートリーとなっていますが、それぞれこのLPが ”世界初録音” となっています。 アルベニスの「タンゴ」も、ギターで弾くとたいへん美しい曲であることを示してくれたのも、このLPではないかと思います。 いずれにしてもウィリアムスのLP、CDの中で、最も魅力的なものと言ってよいでしょう。


 ・・・・・・ 台風、行ってしまったみたいですね。
お盆

 お盆休みももうすぐ終わりですが、今年は創(長男)が帰省し、家内の実家や私の実家の方に行きました。家内の実家の方では、昨年父親が亡くなり、その新盆ということです。親戚や近所の人などが変わるがわるにお線香をあげに来て居ました。


CIMG0676.jpg
茨城空港に創を迎えに行った



CIMG0670.jpg




お花畑になっていた

 私の方の”実家”と言っても、もう両親とも亡くなり、その家も昨年取り壊されました。 その家の後地には近くに住む姉の手によりお花が植えられていました。  確か、この辺が座敷で、ここが台所・・・・ ここにトイレがあったかな、そう、ここが玄関・・・・・・   どう感想を言ってよいかわからない、ただ、ただ、時間の流れは止められない・・・・    本題に戻ろう。


CIMG0689.jpg
私たちが住んでいた家は跡形もなく撤去され、その後地には姉の手により、きれいな花が咲いていた





<ジョン・ウィリアムス コロンビア録音全集 5>

Virtuoso Variations for Guitar


収録曲

バッハ : シャコンヌ
ダウランド : エリザベス女王のガイヤード、エセックス公のガイヤード
バッチェラー : アルマン
パガニーニ : 主題と変奏(カプリス第24番)
ジュリアーニ : ヘンデルの主題による変奏曲
ソル : モーツアルトの主題による変奏曲

録音 1965年11月



IMG_0006_20160813164607195.jpg



シャコンヌなど、変奏曲中心

 <Virtuoso Variations for Guitar>と題された7枚目のLPは、コロンビアでの録音の2年目の1965年に録音されましたが、発売は少し遅れて1969年となっています。 タイトルのとおり「、シャコンヌ」や「魔笛」などの変奏曲の他に、ダウランドなどのリュート曲が収録されています。

 このLPのメインは、何といってもバッハのシャコンヌであることは間違いありません。 ウィリアムスのシャコンヌについては、「シャコンヌ再考」の記事で書きましたが、その記事では、この演奏ではなく、1987年のデジタル録音についてでした。




1987年の録音に比べ、より溌剌としたシャコンヌ

 その1987年の録音との比較で言えば、基本的なところはあまり変わらないのかも知れませんが、1987年のものは、1965年の録音に比べると落ち着いた、まとまりのある感じと言えますが、言い換えると、何かちょっと沈んだような感じがします。 特に冒頭の部分など、両者でだいぶ印象が違っているようです。

 1965年の録音は、他の同時代の録音と同様に、若さを全面に出した、たいへん溌剌とした演奏で、私個人的には、やはりこの1965年録音のほうがより楽しめます。



時代によって、録音の振れ幅が大きい

  もっとも、ウィリアムスの録音は、その年代によって録音の仕方がかなり変わり、1960年代から1970年代の始め頃にかけては、残響の多い、かなり華やかな録音になっているのですが、70年代半ば頃は全く正反対にほとんど残響を付けない、デッドとも言える録音になっています。 その振れ幅はかなり大きいもので、それ等はウィリアムスの考えを反映しているのでしょうか。



IMG_0001_2016081523300361d.jpg
ご存じとは思うが、ウィリアムスは1970年代半ば頃まで、アグアードを用いていた。1971年に虎の門ホールでこの楽器によるリサイタルを聴いたが(生音で!)、たいへん美しい音だった。



違うのは楽器と録音か

 また楽器もいろいろ変わり、1960年代から1970年代半ばくらいまではフェルナンデス・イ・アグアードを使用していますが、1987年の録音ではオーストラリアの制作家、グレッグ・スモールマンの楽器を使用しています。 もしかしたら、演奏そのものはそれほど変わりはなく、録音と楽器が違うだけなのかも知れません。



IMG_20160815233025d1d.jpg
1990年頃からはグレッグ・スモールマンを使用。 この楽器はアンプなしで演奏してもアンプを通したような音がする (あくまで個人的な感想)。 ウィリアムスは90年頃より、リサイタルでも、この楽器をさらに本当にアンプを通して演奏する! ミスもないので、よくも悪くもコンサート会場でCDを聴いているようだ (これも個人的な感想!)。



パガニーニのカプリースはまさにヴィルトーゾ的

 パガニーニの 「カプリース第24番」 は最近ではよくギターで弾かれるようになりましたが(私も弾いた!)、 それの口火を切った演奏と言えます。 確かによく見れば、この曲はギターに向いた曲といえます。 ウィリアムスの演奏はまさにヴィルトーゾそのものと言った感じです。



ジュリアーニの作品は、比較的演奏している

 ジュリアーニの 「ヘンデルの主題による変奏曲」 は第3変奏(16分音符による)を省略し、エンディングを少し変えて、よrち華やかに終わっています。 前述の協奏曲同様、たいへん溌剌とした演奏です。

 古典的な作品はあまり演奏しなかったウィリアムスですが、パガニーニと同じく、ジュリアーニの作品は、協奏曲始め、ギター二重奏、ヴァイオリンとの二重奏曲など、比較的演奏しています。 といっても独奏曲としては、この変奏曲の他は、前に紹介したアレグロ・スピリッツのみです。



ソルとタレガはそれぞれ1曲ずつしか録音しなかった(コロンビア・レーヴェルでは)

 ウィリアムスが古典的、あるいは一般的なクラシック・ギターのレパートリーをあまり録音しなかったことは何度も触れましたが、特にタレガとソルはそれぞれ1曲ずつしか録音していません(コロンビア・レーヴェルでは)。 タレガの1曲は「アランブラの想い出」で、ソルのほうは、この「モーツァルトの主題による変奏曲」です。



10代でセゴヴィア編ソルの20のエチュードを録音している

 ウィリアムスは10代でセゴヴィア編による 「ソルの20のエチュード」 を全曲録音していて、なかなかの名演なのですが、なぜかそれ以降は、この「魔笛」をの除いて、ソルの作品を録音しませんでした。 このLPはCD化されていないのでしょうか? 貴重な録音だと思うのですが。



かなり自由に演奏しているが

 演奏のほうはこの当時(1960年代)の習慣にしたがって序奏抜きで演奏しています。 原曲とはずいぶん違う弾き方をしているようで、演奏の仕方もソルの音楽に忠実と言った感じではありません。 やはりウィリアムスはソルの音楽には共感しえなかったのでしょうか。