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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

大萩康司マスター・クラス

   2月3日(日)  ギター文化館




ギター文化館で行われた大萩康司さんのマスター・クラスを聴講しました。 受講者と受講曲は次の通りです。


清水和夫   ショーロ 「鐘の音」 (ペルナン・ブーコ) 

永松知雄   前奏曲第1番、 ショールス第1番 (ヴィラ=ロボス)

杉澤百樹   ロマンス(パガニーニ)、 練習曲Op.35-3 ラルゲット (ソル) 

森田 晴    ファンダンゴ、サパテアート (3つのスペイン風小品より ~ロドリーゴ)

鈴木幸男   練習曲第8番、 前奏曲第5番(ヴィラ=ロボス)




中田英寿ぽい?

 この前に大萩さんの演奏を聴いたのは、おそらく7,8年くらい前だったと思います。 あれから髭を伸ばし、ヘアー・スタイルも変え、外見上はだいぶ変わりました。

 以前は爽やか好青年の文字通り、”イケメン・ギタリスト” と言った感じだったのですが、最近ではより男性的で、ワイルドな感じになりました。なんとなく中田英寿を彷彿させる風貌となっています。

 おそらく女性ファンの間でも 「より魅力的になった」 という人と、「前の方が良かった」 という人と意見の分かれるところでしょう。

 確かに外見は変わりましたが、声の方はもちろん以前と同じで、相変わらずたいへんマイルドな音声と口調です。




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12年ほど前の大萩さんのCDの写真。 今は外見上ほぼ別人で、どちらかといえば中田英寿さんぽい。



響き、表情の変化についての話

 さて、そのマスター・クラスの内容としては、基礎的な演奏技術のより、表現上の話が多いようでした。 特に表情の変化、響きの変化ということについての話が主でした。

 レッスンしながら、断片的に弾く大萩さんのギターは、もともとたいへん美しい響きを持っていましたが、さらによりいっそう多彩さも加わったようです。 

 大萩さんのデビュー当時は、フランス的でたいへん上品で美しい響きが特徴でした。 その後ブローウェルなど中南米の音楽に取り組み、エッジの利いた切れのよい演奏が特徴となっていたのですが、この日の印象では、さらに力強さ、大胆さも加わったようです。



原色的な色彩感

 どうやら、ワイルドになったのは外見だけではなさそうですね、特にロドリーゴのレッスンではそれが感じられました。

 隣り合わせの国でもフランスとスペインでは大違いで、上品でどちらかといえば淡い色感を多用するフランス音楽とはことなり、ロドリーゴなどのスペイン音楽では鮮やかな原色どうしをぶつける色感です。

 ロドリーゴのレッスン中に断片的に聴こえてくる大萩さんのギターからは、そのような鮮やかなコントラストの聴いた響きが聴かれました。



男性もエステの時代

 レッスンの最後に館長に促されて弾いたヴィラ・ロボスの「前奏曲第1番」では、低音弦をグリサンドする際の ”例の” 弦を擦る ”キー” といった音がほとんど出ません。

 指を斜めにして動かすのだそうですが、私などには低音弦のグリサンドにはこの ”キーキー音” が付き物といった印象があるので、全くノイズのないグリサンドは、なにか ”ツルッ” としていて、逆に違和感さえあります。

 最近の若いギタリストは、皆こういったノイズを一切出さないのですが、最近の若い人は男性でもエステに行ってムダ毛を処理するそうですね。 今時 ”スネ毛ボーボー” は流行らないのでしょう。
 


さりげなく

 ヴィラ=ロボスの「前奏曲第5番」のレッスン中に、 「このあたりが社交界へのあこがれをイメージしているのかも知れません」 とこの曲が「社交界への賛辞」と副題がついていることにさりげなく触れました。 確かにこの曲はスロー・ワルツになっています。

 受講者の鈴木さんもそのことを瞬時に理解したようです。 大萩さんが常々作品についてよく研究されていることの表れでしょう。
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宮下祥子マスター・クラス


    2018年3月11日(日)
    中村ギター教室スタジオ




私の生徒さん5人が受講

 昨日、当教室スタジオで、宮下祥子さんのマスタークラス(公開レッスン)を行いました。 私の生徒さん5人にレッスンをしていただき、また10名弱の生徒さんに聴講させていただきました。



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 宮下さんのアドヴァイスの内容はたいへん基本的なことから、音楽の表現法にいたるまで様々でしたが、それらのことを一通り受講者にお話するというより、一人、一人に合わせ、内容を絞ってお話していました。

 基礎的なこととしては、まず、右手の使い方、音の出し方で、特に和音をバランスよく出す方法など、また左手に関することでは、実際に弦を押さえることのない親指、およびポジション移動についてなどを話されていました。




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 和音に関する話も多く、各声部の聴き分けや、和声進行の変化を感じることの重要さなどを説明されていました。 また二重奏のレッスンでは、宮下さんのアドヴァイスにより、曲想がよりいっそう強く、ほりが深いものになったと思います。

 私の教室の生徒さんは、私以外の先生のレッスンを受けたことがあまりなく、それぞれ、宮下さんのレッスンはとても新鮮で、刺激になったのではと思います。 また聴講した方たちも、今後の上達に大いに参考になったのではと思います。

 受講曲は、 サラバンドとブレー(ド・ヴィゼー)、 ラ・メランコリア(ジリアーニ)、 二重奏曲ホ短調作品34-6(カルリ)、 練習曲ホ短調作品38-8(コスト)、 ロンド風ガヴォット(バッハ)



第9回シニア・ギター・コンクール


出場者48名!

 今年もゴールデン・ウイーク中の5月4日(日)に石岡市ギター文化館でシニア・ギター・コンクールが行われます。エントリー者数はだんだん増え、今回はシニア・エイジ(55才以上)36名、ミドル・エイジ(35歳以上55才未満)12名の計48名となっています。

 昨年(2013年)は40名(s26、m14)、 一昨年(2012年)は31名(s20、m11)、 2011年は震災があって17名(s12、m5)ということですから、毎年10人近くずつ増えているわけです。

 シニア・エイジのギター愛好者がいっそう増加しているのは確かなことですが、当コンクールの認知度が全国的に高まっているとも言えるでしょう。


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競争率6倍

 シニア・エイジの予選では36名の出場者が「ラグリマ」を弾き、予定ではその中から6名が選らばれ、本選出場となります。出場者にとってもたいへん狭き門となるのですが、審査のほうもたいへんですね。覚悟して臨まなければなりません。



楽譜に注意

 なお今回から予選の楽譜が出場者に配られていると思いますが、予選はこの譜面に基づいて演奏しなければなりません。「ラグリマ」のほうは一般に市販されてるものと変わりませんが、ソルの「エチュード」のほうは一般の譜面と、特に第2小節目が異なりますので、注意が必要でしょう。

 第2小節、2拍目の「ラ」が#ではなく、「ナチュラル」になっている訳ですが、これは初版に基づいたものです(第26小節も同じ)。



会場内の熱気を

 ますます白熱するシニア・コンクールを、皆さんもぜひ観戦して、会場内の熱気をぜひ体で感じて下さい。
      CDコンサート   選曲、話  中村俊三

21世紀のギタリストたち ~ナクソス:ローリエイト・シリーズより
      
      これを聴けば21世紀のクラシック・ギターがわかる!


6月5日(日) 14:00~17:00  中村ギター教室スタジオ
    聴講予約受付中



 前にお話したとおり、当ブログで紹介してきた「新進演奏家シリーズ」のCDによるコンサートを、6月5日(日)14:00~から私の教室で行ないます。あまり広いところではないので、定員は約10名といったところですが、興味のある人で聴きに来られる人はぜひ来てみてください。

 特に会費などはなく、時間はティー・タイムなどを含めば、約3時間くらいになると思います。もちろんCDの全部を聴く時間はないので、それぞれのギタリストの演奏のうち、印象的なものの1部分を聴くといった感じになります。

 聴講ご希望の方はメール、TEL、ブログ・コメント、または直接などの方法で連絡下さい。ただし今日現在で6名の方が予約しているので、あと5~6名といったところです。


 
 ・・・・CDコンサートをやるなどと言い出しながら、若干言いにくいことなのですが、私の持っている再生装置は、あえて皆さんに来ていただいて聴いてもらえるようなものではなく、心苦しい限りです。私の場合、ハードに回るべきお金がどうしてもCDの購入の方に回ってしまうのでしょう。

 それでもアンプとプレーヤーは高価なものではありませんが比較的最近のものですが、スピーカーのほうは、なんと40年近く前、1973年頃に買ったものです。「ダイヤトーン」などとその響きを懐かしく感じる人もいるでしょう。このスピーカーは一時期現役を離れ、しばらくは物置の中で眠っていたのですが、その後に買ったスピーカーがイマイチで、結局また現役復帰しました。もっともその現役復帰からもすでに20年くらい経ってしまいました。

 そういった若干残念な状況ではあるのですが、聴き様によっては1970年代の懐かしい響きを感じるかも知れません。またこれらのCDそのものの音質はかなり良いので、ある程度カヴァーしてくれるのではと思います。
石岡市ギター文化館で行なわれているシニア・ギター・コンクールは昨日の予選に引き続き、今日は本選会が開かれました。本選演奏曲と結果は以下のとおりです。


<シニア・エイジ(55才以上)>

第1位  種谷信一  モーツァルトの魔笛の主題による変奏曲(ソル)

第2位  鹿野誠一  ラルゴ(幻想曲第7番より)、タキラリ(南米組曲より~アジャーラ)

第3位  杉澤百樹  アストゥリアス(アルベニス)

第4位  見原邦子  ワルツ・ショーロ(ヴィラ・ロボス)

第5位  田中英夫  大聖堂(アウグスティン・バリオス)

第6位  中島和志夫 モーツァルトの魔笛の主題による変奏曲(ソル)



<ミドル・エイジ(35才以上)>

第1位  上原 淳  アリア(ロジー)、 舞踏礼賛(ブローウエル)

第2位  坂本 亮  ソナタK208(スカルラッティ)、 グラナダの花(アンヘル・バリオス)

第3位  小西邦明  ワルツOp.32-2(ソル)、 アランブラの思い出(タレガ)

第4位  中島 祝  アンダンティーノOp.31-5、 メヌエットOp.25(ソル)

第5位  守賀津雄  カンタータ第29番より第1曲シンフォニア、カンタータ第147番より第10曲コラール(バッハ)


 シニア・エイジでは第1回目から当コンクールに出場している種谷さんは落ち着いた演奏で第1位を獲得しました。2位の鹿野さんはたいへんよい演奏だったのですが、チューニングの乱れが惜しまれます。3位の杉澤さんはほぼノーミスに近かったのですが、和音などに入る前の中断が若干目立ってしまいました。

 ミドル・エイジでは昨年に引き続き「舞踏礼賛」を演奏した上原さんが、持ち前の重厚で美しい音とメリハリのきいた表現で1位となりました。2位の坂本さんもたいへんよい演奏で、上原さんとの差は僅差でしたが、音の細さなどで上原さんに1歩譲った形になりました。3位の小西さんの「アランブラの思い出」もなかなかきれいでした。

 守さんの「カンタータ第29番より第1曲シンフォニア」は聴いた限りではリュート組曲第4番(無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番)のプレリュードに聴こえ、なぜこのような曲名にしたのかはちょっと疑問でした。確かに同じ素材を用いてバッハがこのシンフォニアを作っているのですが、守さんの演奏ではそのシンフォニアから編曲したもののようには聴こえませんでした。




 受賞された方本当におめでとうございます。何分今回は大震災の直後ということで、出場者も例年の半数にも及ばないといった状況でしたが、こうした状況にあってもあえて出場した方々を称賛したいと思います。しかし一方ではこのような状況で、例年通りには行かない点はいろいろあり、特にシニア・エイジのほうでは1位を出すべきかどうかという議論が審査員の中でありました。

 出場者の方々はそれぞれもっとよい演奏する力は十分あると思いますので、自分に合った曲を、正しい方法で勉強してゆくことが必要なのだろう思います。どの審査員も、「技術的に難しい曲を弾いた人が、より実力が高い」 ・・・・などとは全く考えません。

 またよりミスを少なく弾いた人が、より上位になるというわけでもありません。やはり日頃いかに正しくギターを学んでいるかと言うことが最も重要なことであると、藤井審査委員長をはじめ、審査員の方々の共通した意見でした。もちろん私も全く同感です。



 来年はいっそう多くの方々が出場されることを期待します。来年の課題曲もすでに下のように決定しています。



シニア・エイジ   アンダンティーノOp.31-5(F.ソル)

ミドル・エイジ   アメリアの遺言(カタルーニャ民謡~リョベート編)

   楽譜はどちらも「ギター名曲170選A」 ドレミ出版
 


ぜひチャレンジしてみて下さい。