タルレガ作品全集 4
タンゴは二重奏!
次に1909年~1920年、つまりタルレガの死後出版された63曲が載っています。この中では他のギタリストの作品が「タルレガ作」として出版されてしまったもの、いわゆる「偽作」が目を引きます。有名のところでは「タンゴ」、「グラン・ホタ」などで、「ヴェニスの謝肉祭」は、パガニーニの曲を基にしていますが、タルレガと弟子のガルシア(Severino Garcia Fortea)との共作と明記してあります。
タンゴはスペインのほぼタルレガと同時代のギタリスト、カルロス・ガルシア・トルサ(Carlos Garcia Tolsa)のギター二重奏曲の「1stパート」なのだそうです。この曲がもともと二重奏だったなど、本当に初めて知りました。この全集には譜例として冒頭5小節が載っていますが、3小節目と5小節目は変更されており、パート譜をそのまま写し取ったわけではないようです。でもそういうことなら、やはりオリジナルの二重奏版も聴いてみたい、あるいは弾いて見たいと思います。
グラン・ホタ=フリアン・アルカス作「ホタ・アラゴネーサ」
グラン・ホタはタルレガの一世代前のギタリスト、フリアン・アルカス(Julian Arcas 1832-1882)の「ホタ・アラゴネーサ」が基になっています。アルカスは当時たいへん評価の高かったギタリストで、タルレガは他にも何曲かアルカスの作品を改作しています、おそらくコンサートなどで演奏していたのでしょう。タルレガの「グラン・ホタ」はアルカスの作品を忠実に写し取ったものではなく、かなり変更が加えられているそうです。特に序奏部は同時代のスペインのギタリスト、ホセ・ヴィーニャスの作品の一部を使用しています。また有名な「椿姫幻想曲」もタルレガがアルカスの作品を改作したものの一つですが、この曲集には載っていません。他に「マラゲーニャ」や「カルタへネラ」なども一部をアルカスの作品から引用したものです。ワルツ「イサベラ」はシュトラウスのワルツからの編曲だそうです。
師弟愛が偽作を生んだ?
というようにこれまでタルレガの真作と思われていたものが、実は他のギタリストの作品の改作、あるいは他の作曲家の作品からの編曲だったというものがかなりあります。しかしこの全集でもわかるとおり、それらはすべてタルレガの死後出版されたものに限られ、もちろんタルレガ自身に他人の作品の盗用の意志など全くなかったのは明らかです。おそらくタルレガはコンサートの際、他のギタリストの作品もよく演奏していたのではないかと思いますが、その際、若干変更したり、付け加えたりした譜面を自ら書いていて、それらの譜面がタルレガの死後、遺族や弟子達に渡り、「タルレガ作」として出版されてしまったのでしょう。
ハイドンやモーツアルトの時代にはよくこうした「偽作」があったわけですが、20世紀ともなれば一般的にこうした偽作は少なくなっていました。でもタルレガの場合、生前に自らの作品をあまり出版しなかったことと、タルレガの下には弟子など、たくさんの支持者がいて、またおそらくタルレガの死後人気が高まったこととにより、少しでも多くタルレガの作品を出版しよういうことになり、素性のはっきりしない曲や、ちょっとした断片に至るまでタルレガに関係しそうなものはすべて出版されてしまったのでしょう。おそらくタルレガを崇拝する人たちの存在と、タルレガの評価と人気の高まりがこのような偽作を生んでしまったのだと思います。
ギターを弾く人への気遣いが感じ取れる譜面
前述のとおり、タルレガの出版物には、オリジナル作品よりも編曲作品の方が多く、さらには他のギタリストの作品の改作まで含まれます。なお且つオリジナル作品は小品がほとんどで、大曲と言えそうなのは「アラビア風奇想曲」くらいですが、それとて演奏時間約5分というわけで、これも一般的には小品の部類となるでしょう。やや規模の大きい作品の「グラン・ホタ」や「椿姫幻想曲」はアルカスの作品、「ヴェニスの謝肉祭」も純粋にタルレガの作品と言えず、純粋にタルレガのオリジナル作品はすべて小品となります。また前述のとおり編曲作品に比べると、オリジナル曲の方が技術的には多少易しくなっています。
タルレガのオリジナルの小品の譜面をみると、それを弾くギター愛好家への細かい気遣いが感じられます。こうした小品の存在は、私達にとってタルレガという過去のギタリストが身近に感じられるための大きな要因となっているのでしょう。またタルレガはすぐれたギタリストであったばかりでなく、多くの人を引き寄せる人間的な魅力も兼ね備えていた人なのでしょう、そのことにより多くの弟子と賛美者を生み出し、それがタルレガ「のみ」が近代ギターの創始者というように、一時期過大評価されていたことにもつながるのでしょう。
話がだんだん違う方向に行ってしまいましたが、この譜面、実際にに弾くにはなかたいへんな曲も多いのですが、ただ見たり読んだりするだけでも結構楽しめます。確かに現代ギター社のものなどとの基本的な違いはほとんどないのですが、でもやはり初版時の譜面、特にタルレガ自身の目を経たであろうと思われる譜面を見ると、ちょっと違った印象があります。また特に編曲ものでは、これまで知らなかったものも結構あり、タルレガはこんな曲まで編曲していた、あるいは興味があったのだなと改めて感じました。
タンゴは二重奏!
次に1909年~1920年、つまりタルレガの死後出版された63曲が載っています。この中では他のギタリストの作品が「タルレガ作」として出版されてしまったもの、いわゆる「偽作」が目を引きます。有名のところでは「タンゴ」、「グラン・ホタ」などで、「ヴェニスの謝肉祭」は、パガニーニの曲を基にしていますが、タルレガと弟子のガルシア(Severino Garcia Fortea)との共作と明記してあります。
タンゴはスペインのほぼタルレガと同時代のギタリスト、カルロス・ガルシア・トルサ(Carlos Garcia Tolsa)のギター二重奏曲の「1stパート」なのだそうです。この曲がもともと二重奏だったなど、本当に初めて知りました。この全集には譜例として冒頭5小節が載っていますが、3小節目と5小節目は変更されており、パート譜をそのまま写し取ったわけではないようです。でもそういうことなら、やはりオリジナルの二重奏版も聴いてみたい、あるいは弾いて見たいと思います。
グラン・ホタ=フリアン・アルカス作「ホタ・アラゴネーサ」
グラン・ホタはタルレガの一世代前のギタリスト、フリアン・アルカス(Julian Arcas 1832-1882)の「ホタ・アラゴネーサ」が基になっています。アルカスは当時たいへん評価の高かったギタリストで、タルレガは他にも何曲かアルカスの作品を改作しています、おそらくコンサートなどで演奏していたのでしょう。タルレガの「グラン・ホタ」はアルカスの作品を忠実に写し取ったものではなく、かなり変更が加えられているそうです。特に序奏部は同時代のスペインのギタリスト、ホセ・ヴィーニャスの作品の一部を使用しています。また有名な「椿姫幻想曲」もタルレガがアルカスの作品を改作したものの一つですが、この曲集には載っていません。他に「マラゲーニャ」や「カルタへネラ」なども一部をアルカスの作品から引用したものです。ワルツ「イサベラ」はシュトラウスのワルツからの編曲だそうです。
師弟愛が偽作を生んだ?
というようにこれまでタルレガの真作と思われていたものが、実は他のギタリストの作品の改作、あるいは他の作曲家の作品からの編曲だったというものがかなりあります。しかしこの全集でもわかるとおり、それらはすべてタルレガの死後出版されたものに限られ、もちろんタルレガ自身に他人の作品の盗用の意志など全くなかったのは明らかです。おそらくタルレガはコンサートの際、他のギタリストの作品もよく演奏していたのではないかと思いますが、その際、若干変更したり、付け加えたりした譜面を自ら書いていて、それらの譜面がタルレガの死後、遺族や弟子達に渡り、「タルレガ作」として出版されてしまったのでしょう。
ハイドンやモーツアルトの時代にはよくこうした「偽作」があったわけですが、20世紀ともなれば一般的にこうした偽作は少なくなっていました。でもタルレガの場合、生前に自らの作品をあまり出版しなかったことと、タルレガの下には弟子など、たくさんの支持者がいて、またおそらくタルレガの死後人気が高まったこととにより、少しでも多くタルレガの作品を出版しよういうことになり、素性のはっきりしない曲や、ちょっとした断片に至るまでタルレガに関係しそうなものはすべて出版されてしまったのでしょう。おそらくタルレガを崇拝する人たちの存在と、タルレガの評価と人気の高まりがこのような偽作を生んでしまったのだと思います。
ギターを弾く人への気遣いが感じ取れる譜面
前述のとおり、タルレガの出版物には、オリジナル作品よりも編曲作品の方が多く、さらには他のギタリストの作品の改作まで含まれます。なお且つオリジナル作品は小品がほとんどで、大曲と言えそうなのは「アラビア風奇想曲」くらいですが、それとて演奏時間約5分というわけで、これも一般的には小品の部類となるでしょう。やや規模の大きい作品の「グラン・ホタ」や「椿姫幻想曲」はアルカスの作品、「ヴェニスの謝肉祭」も純粋にタルレガの作品と言えず、純粋にタルレガのオリジナル作品はすべて小品となります。また前述のとおり編曲作品に比べると、オリジナル曲の方が技術的には多少易しくなっています。
タルレガのオリジナルの小品の譜面をみると、それを弾くギター愛好家への細かい気遣いが感じられます。こうした小品の存在は、私達にとってタルレガという過去のギタリストが身近に感じられるための大きな要因となっているのでしょう。またタルレガはすぐれたギタリストであったばかりでなく、多くの人を引き寄せる人間的な魅力も兼ね備えていた人なのでしょう、そのことにより多くの弟子と賛美者を生み出し、それがタルレガ「のみ」が近代ギターの創始者というように、一時期過大評価されていたことにもつながるのでしょう。
話がだんだん違う方向に行ってしまいましたが、この譜面、実際にに弾くにはなかたいへんな曲も多いのですが、ただ見たり読んだりするだけでも結構楽しめます。確かに現代ギター社のものなどとの基本的な違いはほとんどないのですが、でもやはり初版時の譜面、特にタルレガ自身の目を経たであろうと思われる譜面を見ると、ちょっと違った印象があります。また特に編曲ものでは、これまで知らなかったものも結構あり、タルレガはこんな曲まで編曲していた、あるいは興味があったのだなと改めて感じました。
スポンサーサイト