私のギター修行 7<初めてのギター曲> 中学生になると、それまでの単旋律から卒業して、いよいよ伴奏などの付いた 「ギター独奏曲」 に取り組むようになります。
しかし相変わらず全く指導など受けず、また音楽の基礎知識もなく、相当ひどい「我流」状態でした。
本人は一応弾けていると思っているのですが、実際は相当怪しいものだったでしょう。 今回はそういった話です。
クリスマス・パーティーで 小学6年生の時、その当時通っていたそろばん塾でクリスマス・パーティがありました。
このそろばん塾、その先生はなんと現役の高校生! 私が習っていた時は栃木市内の商業高校の2年生で、塾の生徒も3、40人くらいはいました。
私からしても5歳くらいしか上ではなかったのですが、すっかり大人というか、まぎれもなく「先生」という感じでした。
昔の高校生は本当に大人だったのですね、今では考えられません。
聴いたことのある曲だが そのクリスマス・パーティで 「曲あてクイズ」 のようなことが行われ、正解するとクリスマス・プレゼントがもらえました。
当時知っている曲は少なく、私はほとんど答えられなかったのですが、1曲聴き覚えのある曲が出てきました。
聴いたことはあるのですがが、曲名はわかりません。別の子が「禁じられた遊び」と答え、プレゼントを貰いました。
おそらく家にレコードもあり、また時には長兄が弾いているのをで聴いていたはずなのですが、曲名はその時までわかりませんでした。
ささやかな自尊心に触れ この時始めて、この曲がギターでたいへん有名な曲であることを知ったわけです。
自分が、まがりなりにもギターを弾いているのにもかかわらず、このギターの名曲がわからなかったのが、ささやかな自尊心に触れたのか、それを機にこの曲に取り組みました。
今まで単音の曲しか弾いたことがなく、アルペジオどころか、それまで同時に二つ以上の音を弾いたことがありませんでした。
指の記号などはわかっているような、わかっていないような。 楽譜の読み方は学校で習っただけという状謡で、本当に暗号を解くような感じで楽譜を読んでゆきました。
ハイポジションなどはどうやってわかったのか、はっきり覚えていませんが、 「全音」 と 「半音」 の関係はわかっていたかも知れません。
そんな感じで、どうにか最初の方の伴奏が開放弦のところはなんとか出来たのですが、セーハが出てくるところからは音がよく出ません。
そこでセーハするところも全部開放弦にしてしまいました。 響きは変だがメロディだけは 「禁じられた遊び」 には聴こえるので、しばらくはそれで弾いていました。
兄の友達の前で もうすぐ中学生という頃だったと思います、2才上の次兄は家に遊びに来ていた自分の友達に、
「こいつ『禁じられた遊び』弾けるんだぜ」
と自慢そうに言って、私にその友達の前でその 「禁じられた遊び」 を弾くように言いました。
私の演奏を聴いたその兄の友人は、
「それ、なんか変じゃない」
と言い出しました。 私はばれてしまったようなので、
「うん、本当はちょっと違うけど」
と小さな声でカミングアウトしました。
「え! 何! お前、ちゃんと弾いていたんじゃなかったの、ごまかして弾てたの」
ばれてしまっては仕方がない その時始めて次兄は私のインチキに気づきました。
ばれてしまってはしかたがないと、やむなくその後楽譜どおりに練習することにしました。
最初はなかなか音が出てこなかったのですが、そのうちだんだんと音になるようになってきました。
前半が弾けるようになると、後半の方もそれなりに弾けるようになりました(ちゃんと音が出ていないところは数々あったでしょうが)。
ポケットの中で 「禁じられた遊び」をきっかけに、中学生になるとそれまでの単旋律を卒業して、伴奏の付いた曲を弾くようになりました。
といっても全く知らない曲は出来なかったので、家にあった楽譜の中から、「荒城の月」とか「浜辺の歌」などの日本の歌や、「太陽がいっぱい」などの映画音楽の曲を弾いていました。
中学2年生くらいの時だったと思いますが、トレモロ奏法の入った「さくら変奏曲」を練習し始めました。
「さくら変奏曲」といっても最近よく演奏される「横尾幸弘編」ではなく、別の人の編曲(たぶん国枝和枝編?)です。
トレモロ奏法の右手の動きは「禁じられた遊び」のアルペジオの動きと同じなので、わりと自然に出来ました。
学校の行きかえり、自転車の片手運転をしながら右手をポケットの中に入れて、右手の練習をしていた記憶があります。
ラモーやコストの曲が入った 当時、家にイエペスの禁じられた遊びのレコード(いわゆるドーナツ盤)がありましたが、それには有名なテーマの間に「間奏」(ド・ヴィゼー、ラモー、コストなどの曲をメドレー式にしたもの)が入っているものでした。
当時の私にはそれがとてもギターっぽくというか、いかにもスペインぽく聴こえて(本当はフランスの曲ですが)、ぜひ弾いてみたいと思っていました。
最初のうちは楽譜が手元になく、中学3年生頃になってようやく楽譜が手に入り、練習し始めました。
これはそれまでの曲よりずっと難しく、かなり手こずった記憶がありますが、ある程度弾けるようになった時は、結構嬉しかった覚えがあります。
中学校卒業の時の謝恩会の時にはそれを弾きました、それが人前でギターを弾いた初めての経験です(本当にプライヴェートなものを別にすれば)。