最近聴いたCD ジュリアーニ:ギター協奏曲集 2
これまでこのジュリアーニのギター協奏曲第1番はほとんど弦楽合奏版で演奏されていたと言いましたが、その半数くらいは展開部(中間部)を大幅に省略していることも言いました。スコアを見ながら聴いていると、これがびっくりするくらいの、とんでもない省略なのです。音楽的には最も変化に富み、作曲する側からすれば力の見せ所と思われる展開部のほとんど全部を切り捨て、再現部の少し手前のほうで、ただ調性的に矛盾しないというだけでつないでしまっています。その結果3~4分ほどの時間短縮になるのですが、その意味はどれほどあったのでしょうか。このショート・カットを最初に行ったのはジュリアン・ブリーム(1960年代後半の録音)と思われますが、それをウィリアムス、ペペ・ロメロ、フェルナンデスなどが踏襲しているのはなぜなのでしょう。
もっともブリムームの”つぎはぎ”やショート・カットは一種の「お家芸」で、ジュリアーニの「ロッシニアーナ」やデアヴェリの「ソナタ」などでも行っていますし、大序曲にも若干省略があったように記憶しています。カッテイング編の「グリーン・スリーブス」もその一つでしょう。そう考えると、ドイツのギタリスト、ジークフリート・ベーレントがやはり1960年代にイ・ムジチ合奏団と録音したものは原曲どおりで好感が持てます。隅々まで原曲に忠実かどうかはわかりませんが、展開部をちゃんと演奏していたように思います。LPの再生装置をかたずけてしまったので確認は出来ません、CD化はされているのでしょうか? また山下和仁、ウイリアムスの再録なども省略なしで演奏しています。
というわけで、たいへん親しみやすく、内容的にも優れた曲であるわりには、これまでだいぶ邪険な扱いをされてきたジュリアーニのギター協奏曲第1番ですが、これからは正しく演奏され、正等な扱いをされてゆくことを期待します。
第1番の話だけになってしまいましたが、「第2番」、「第3番」となるとさらに演奏されたり、録音されたりすることは少なくなります。「第2番」、「第3番」は1970年代の半ばにペペ・ロメロが指揮者のネビル・マリナーと録音していて、おそらくそれが初録音だと思います。こちらはそれまで演奏されなかったことが幸いして、省略する習慣も簡略版のようなものもなく、最初から「原曲どおり」の演奏になっています(たぶん)。
「第2番」はギターと弦楽合奏の形になっていて、第1番と同じイ長調で書かれていますが、フォルテの和音と行進曲風のメロディで溌剌と始まる第1番と対照的に、弦の静かな調べで始まり、3曲の中では最も落ち着いた曲になっています。また一方では主要なメロディやギターのパッセージなどは第1番と類似した点もあります。弦のみオーケストラは柔らかい響きがしますが、1番と同様、明るく透明な響きがします。
なおこCDのソロは第1番と同じマッカリ、使用楽器も同じという事で、やはりちょと不明瞭です。ペペ・ロメロ盤では、モダン楽器(ベラスケス?)を用いたぺぺ・ロメロの音が華麗でクリヤーなのと、ソロ・ギターがやや大きめにも録音されていて、少なくともギター・ソロに関しては、たいへん聴きやすいCDになっています。多少リアルでない点もあるかも知れませんが。オーケストラもモダン・オーケストラで(ネヴィル・マリナー指揮、アカデミー・オブ・セント・マーチン・イン・ザ・フィールズ)、弦の数も、そう多くはないとしても、このCDのオーケストラ(アンサンブル・オットチェント)よりは多いでしょう。
「第3番」は通常のギターよりも短3度、つまり3フレット分高い「テルツ・ギター」で演奏するようになっています。 オーケストラは弦5部の他、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペット、ティンパニ、と「第1番」のフル・オーケストラ版よりさらにトランペットとティンパニーが加えられ、文字通りの「フル・オーケストラ」になっていて、ベートーヴェンの交響曲などの編成とほぼ同じになっています。弦のピッチカートとティンパニーの掛け合いで始まるところなど工夫がされており、オーケストラの扱いも第1番よりもずっと進歩がみられ、3曲中最もオーケストラ部の聴き応えがあります。このCDでもギターの音域が短3度高せいか、1、2番に比べるとギターの音は比較的よく聴こえます。なおこの曲は、プリエーゼが演奏し、Vite e Antonio Garganese 1880のテルツ・ギターを使用しています。ペペ・ロメロ盤ではさらにギターは華麗に聴こえます。
ちなみに、この曲の第2楽章はモーツァルトの「ピアノ・ソナタイ長調 K331」の第1楽章を引用しています。第1変奏も似ていることから、何となく似てしまったのではなく、明確に「引用」しているのでしょう。いずれにしてもこの第3番は第1番に勝るとも劣らない名曲だと思いますが、やはり演奏される機会は極めて少ないようです。この曲が、国内で原曲どおりフル・オーケストラ版で演奏された記録があるかどうか私にはわかりませんが、今後、どこかの冒険心のあるオーケストラがベートーヴェンの序曲や交響曲などと組み合わせてプログラムに載せたりすることはないのでしょうか。ギターには特に興味のない一般の音楽ファンにとっても、たいへん興味深いコンサートになるのではないかと思います。
このマッカリとプリエーゼには3枚組のCDに収めた「ジュリアーニ:二重奏曲全集」もあって、有名な「協奏的二重奏曲作品130」など他、珍しい曲などもたくさんあり、こちらもなかなか楽しめます。
これまでこのジュリアーニのギター協奏曲第1番はほとんど弦楽合奏版で演奏されていたと言いましたが、その半数くらいは展開部(中間部)を大幅に省略していることも言いました。スコアを見ながら聴いていると、これがびっくりするくらいの、とんでもない省略なのです。音楽的には最も変化に富み、作曲する側からすれば力の見せ所と思われる展開部のほとんど全部を切り捨て、再現部の少し手前のほうで、ただ調性的に矛盾しないというだけでつないでしまっています。その結果3~4分ほどの時間短縮になるのですが、その意味はどれほどあったのでしょうか。このショート・カットを最初に行ったのはジュリアン・ブリーム(1960年代後半の録音)と思われますが、それをウィリアムス、ペペ・ロメロ、フェルナンデスなどが踏襲しているのはなぜなのでしょう。
もっともブリムームの”つぎはぎ”やショート・カットは一種の「お家芸」で、ジュリアーニの「ロッシニアーナ」やデアヴェリの「ソナタ」などでも行っていますし、大序曲にも若干省略があったように記憶しています。カッテイング編の「グリーン・スリーブス」もその一つでしょう。そう考えると、ドイツのギタリスト、ジークフリート・ベーレントがやはり1960年代にイ・ムジチ合奏団と録音したものは原曲どおりで好感が持てます。隅々まで原曲に忠実かどうかはわかりませんが、展開部をちゃんと演奏していたように思います。LPの再生装置をかたずけてしまったので確認は出来ません、CD化はされているのでしょうか? また山下和仁、ウイリアムスの再録なども省略なしで演奏しています。
というわけで、たいへん親しみやすく、内容的にも優れた曲であるわりには、これまでだいぶ邪険な扱いをされてきたジュリアーニのギター協奏曲第1番ですが、これからは正しく演奏され、正等な扱いをされてゆくことを期待します。
第1番の話だけになってしまいましたが、「第2番」、「第3番」となるとさらに演奏されたり、録音されたりすることは少なくなります。「第2番」、「第3番」は1970年代の半ばにペペ・ロメロが指揮者のネビル・マリナーと録音していて、おそらくそれが初録音だと思います。こちらはそれまで演奏されなかったことが幸いして、省略する習慣も簡略版のようなものもなく、最初から「原曲どおり」の演奏になっています(たぶん)。
「第2番」はギターと弦楽合奏の形になっていて、第1番と同じイ長調で書かれていますが、フォルテの和音と行進曲風のメロディで溌剌と始まる第1番と対照的に、弦の静かな調べで始まり、3曲の中では最も落ち着いた曲になっています。また一方では主要なメロディやギターのパッセージなどは第1番と類似した点もあります。弦のみオーケストラは柔らかい響きがしますが、1番と同様、明るく透明な響きがします。
なおこCDのソロは第1番と同じマッカリ、使用楽器も同じという事で、やはりちょと不明瞭です。ペペ・ロメロ盤では、モダン楽器(ベラスケス?)を用いたぺぺ・ロメロの音が華麗でクリヤーなのと、ソロ・ギターがやや大きめにも録音されていて、少なくともギター・ソロに関しては、たいへん聴きやすいCDになっています。多少リアルでない点もあるかも知れませんが。オーケストラもモダン・オーケストラで(ネヴィル・マリナー指揮、アカデミー・オブ・セント・マーチン・イン・ザ・フィールズ)、弦の数も、そう多くはないとしても、このCDのオーケストラ(アンサンブル・オットチェント)よりは多いでしょう。
「第3番」は通常のギターよりも短3度、つまり3フレット分高い「テルツ・ギター」で演奏するようになっています。 オーケストラは弦5部の他、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペット、ティンパニ、と「第1番」のフル・オーケストラ版よりさらにトランペットとティンパニーが加えられ、文字通りの「フル・オーケストラ」になっていて、ベートーヴェンの交響曲などの編成とほぼ同じになっています。弦のピッチカートとティンパニーの掛け合いで始まるところなど工夫がされており、オーケストラの扱いも第1番よりもずっと進歩がみられ、3曲中最もオーケストラ部の聴き応えがあります。このCDでもギターの音域が短3度高せいか、1、2番に比べるとギターの音は比較的よく聴こえます。なおこの曲は、プリエーゼが演奏し、Vite e Antonio Garganese 1880のテルツ・ギターを使用しています。ペペ・ロメロ盤ではさらにギターは華麗に聴こえます。
ちなみに、この曲の第2楽章はモーツァルトの「ピアノ・ソナタイ長調 K331」の第1楽章を引用しています。第1変奏も似ていることから、何となく似てしまったのではなく、明確に「引用」しているのでしょう。いずれにしてもこの第3番は第1番に勝るとも劣らない名曲だと思いますが、やはり演奏される機会は極めて少ないようです。この曲が、国内で原曲どおりフル・オーケストラ版で演奏された記録があるかどうか私にはわかりませんが、今後、どこかの冒険心のあるオーケストラがベートーヴェンの序曲や交響曲などと組み合わせてプログラムに載せたりすることはないのでしょうか。ギターには特に興味のない一般の音楽ファンにとっても、たいへん興味深いコンサートになるのではないかと思います。
このマッカリとプリエーゼには3枚組のCDに収めた「ジュリアーニ:二重奏曲全集」もあって、有名な「協奏的二重奏曲作品130」など他、珍しい曲などもたくさんあり、こちらもなかなか楽しめます。
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