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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

 今日は日曜日、コンサート(アルベニスの)が終わって1週間と思いきや、すっかり2週間経ってしまいました。その間ギターの練習もほぼ休みですが、当ブログの書き込みも休みになってしまいました。格安CDの紹介とか、ギター上達法の再開とか、ブログに関してもいろいろ構想は考えているのですが、一向に書き始まりません。


 この前のコンサートの余韻というか、反省というか、そういったものはまだ頭の中を若干占めています。いつものことと言えばいつものことなのですが、自分の中でイメージしたものとか、練習したものとかのどれだけの部分が果たして音に出来たのだろうとか、そのイメージがどれだけ聴いている人に伝わったのだろうかとか、あるいはもうちょっとはましに弾けなかったのだろうか、とか・・・・・   そういった思いはまだまだ消え去りません。ただ「アルベニスの曲はよかった」とか「パヴァーナ・カプリッチョはいい曲だ」と言ってくれた人も多かったので、本当にそうだとすれば最低限の目的は果たせたかなと思います。


 アルベニスの曲は、いずれはプライヴェートな形で録音して、例のごとく非売品のCDにでもしようかと思っていますが、それはまたしばらく経ってからにしようと思います。それにしても昨年のリサイタルといい、今年のアルベニスのコンサートといい、本当にいろいろな方々の暖かい心使いに触れ、本当に感謝しています。


 確かにこのところギターの練習はしていないのですが(もっとも1月16日に鈴木さんとアンクラージュマンをやる予定なので、それだけ少し練習しています)、教材用の曲のアレンジとか、来年の水戸ギター・アンサンブルの演奏会の構想とか、そういったことで時間が過ぎています。昨日ネットで注文した”ICレコーダー”が届きました。本体の使い方ほうはなんとかわかりそうなのですが、編集ソフトを使いこなせるようになるにはちょっと時間が必要な感じです。これまでMDプレーヤーで録音していたのですが、もうそんな時代ではないのでしょうね、これから教材用のCDもこれで録音してゆくことになるでしょう。



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 ちょっと写りが悪いですが、ソニーのリニアPCMレコーダー ”PCM-M10” 人気機種だそうです。

 かつての録音機材、オープン・テープ・デッキから、カセット・テープ・デッキ、DAT、MDレコーダーなど、これまでのものから比べて、2万円台という安さで、なおかつ性能もずっとよくなっているようです。内蔵マイクもそんなに悪くなさそうです。 




 昨日(26日 土曜日)で今年のレッスンは終了で、今日から12日間のお正月休みということになりますが、相変わらずですが、各種楽譜作りと編集ソフトの使い方などでお正月が終わってしまいそうです。
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 本日コンサートにご来場下さった方々、本当にありがとうございました。今日のコンサートで、アルベニスの魅力がある程度出せたと思える曲、またそうではなかった曲などいろいろでしたが、今の時点では、私の頭の中では数々の反省点の方が多くを占めています。もっとも今回のコンサートの最大の目的は、いろいろなアルベニスの作品を聴いていただくということですので、拙い演奏ながら、多少なりともアルベニスの作品の面白さ、魅力などを感じていただけたら本当に幸いです。

 プログラム等にも書きましたが、これまでアルベニスの曲がギターで弾かれているといっても、実際はアルベニスの全作品の中のごく一部の曲のみで、まだまだアルベニスの作品の中にはギターに合う曲、あるいはギターで弾くとその魅力がいっそう引き立つ曲などいろいろあると思います。最近になってその人物像から、全作品にいたるまで、情報量は格段に増し、今後さまざまなギタリストによってアルベニスのいろいろな曲が演奏されてゆくものと思います。



 なおアンコール曲として以下の2曲を演奏しました。


エンリケ・グラナドス(アルベニスと同様にスペイン的な作品を書いた作曲家、アルベニスと親交もあり)
     : スペイン舞曲第5番「アンダルーサ」

マヌエル・ファリャ(アルベニスよりやや後のスペインの作曲家)
     : 粉屋の踊り~バレー音楽「三角帽子」より

今度の日曜日(12月13日 14:00 石岡市ギター文化館)に行われる、当コンサートの最終的なプログラムは、アルベニスと親交もあり、同年の1909年に亡くなったギタリスト、フランシスコ・タレガの曲を追加して、以下のようになります。          


フランシスコ・タレガ(1852~1909年)

   マズルカ ト長調    
   パヴァーナ
 
 
イサーク・アルベニス(1860~1909年)

   入江のざわめき    ~「旅の思い出」より(1887年)
   パヴァーナ・カプリチョ (1883年)
   

   前奏曲
   マラゲーニャ
   カタルーニャ奇想曲
   タンゴ         ~以上組曲「スペイン」より(1890年)
                      
  
   朱色の塔       ~「特性的小品集」より(1889年)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・    休       憩    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   前奏曲(アストゥリアス)
   オリエンタル
   コルドバ       ~以上「スペインの歌」より(1896年)


   グラナダ
   カディス
   セビーリャ      ~以上「スペイン組曲」作品47より(1886年)

                
   使用楽器 Hermann Hauser Ⅲ 1983 (No.88)




*楽譜差し上げます

 今回演奏する曲のうち、プレリュード、カタルーニャ奇想曲(組曲スペイン)、パヴァーナ・カプリチョ、オリエンタル(スペインの歌)の4曲の私がアレンジした楽譜を、ご来場下さった方のうち、ご希望の方に差し上げます。よければお持ち帰り下さい。それぞれ一般には市販されていないもので、巧みなアレンジではないかも知れませんが、比較的原曲に忠実で、弾き易くは出来ていると思います。当日会場に10セットほど用意しておきます。


演奏時間は休憩時間を含め、約2時間となります。なお入場料は当日、前売り共2000円です。
 昨日(12月6日 日曜日)ひたちなか市アコラで松田弦ミニ・コンサートを聴きました。松田さんは2週間前の11月22日に東京文化会館で行われた第52回東京国際ギター・コンクールで優勝したばかりとのことです。東京国際ギター・コンクールは毎年海外から実力者がエントリーし、このところずっと日本人の優勝者が出ませんでした。村治奏一君が優勝したのはもう10年以上前のことで、今回の松田さんの優勝は奏一君以来ということになります。このコンクールに優勝した日本人のギタリストは、村治奏一君の他、木村大君、村治佳織さん、斉藤明子さん、鎌田慶昭さんなどそれぞれ現在の日本を代表するギタリストになっています。これを機に松田さんもいろいろ忙しくなるでしょうから、今回のコンサートでその演奏を間近で、なおかつ音響のよいところで聴けるということは、本当にラッキーなことだと思います。


 松田さんの演奏はとても清楚で美しいものです。世界でもレヴェルの高いコンクールの優勝者ですから、技術が高いのは当然のことですが、それに加えて音の美しさ、響きの美しさも強く印象に残りました。同じ美しさでもあまり癖のないとても自然な美しさです。古典から現代音楽、リズミカルなものからじっくり歌わせる曲まで、どういった音楽でも対応できる能力も持っていることが感じられました。前述の村治佳織さん、奏一君、木村大君、さらに大萩康司君などともまた違った才能の出現だと思います。


 また松田さんの演奏スタイルは、とても自然なフォームで、特に右手など完全に脱力出来ていて、余計な力も、余計な動きもない感じです。それと松田さんの出すしなやかな音、あるいは表情に富む音楽とは密接な関係があるのでしょう。彼自身の能力が優れているのはもちろんでしょうが、同時に、おそらく小さい時、あるいは若い時から優れた指導者に正しい指導を受けているのではないかと思います。松田さんのような優れたギタリストが育つ背景には、指導者の質の向上も確実にあるのではないかと思います。


 本日演奏された曲は以下のとおりです。



J.ボラック : プレリュード、ガリアルド、クーラント

長岡克己   : ザク

クリーガー  : リトマータ

吉松 隆   : 風色のベクトル


 * アンコール曲として  J.トゥリーナ : セビリア風幻想曲

スペイン組曲作品47より   グラナダ、カディス、セビーリャ


 このスペイン組曲作品47はアルベニスの作品としては「イベリア」と並ぶ代表作としてピアノでも比較的よく演奏される曲集で、グラナダ、カタルーニャ、セビーリャ、カディス、アストゥリアス、アラゴン、カスティーリャ、キューバの8曲からなります。もちろんギターでもグラナダ、セビーリャ、アストゥリアスなど馴染みの深い曲が並んでいて、マヌエル・バルエコなどこの組曲の全曲をギターで演奏しているギタリストもいます。しかしこれまでも何度か触れたとおり、私たちにはアルベニスの作品の中でも最も馴染みの深いこの組曲は、ちょっと「わけあり物件」といったところです。


 もともとは1886~7年頃に上記の8曲からなる組曲を完成させる予定だったようなのですが、実際にに作曲されたのはグラナダ、カタルーニャ、セビーリャ、キューバの4曲だけでアルベニスは世を去りました。残りの4曲は曲名のみ決まっているだけでした。アルベニスの死後出版社により、その曲名に合わせて他のアルベニスの作品から曲を当てはめて、前記の8曲からなる「スペイン組曲作品47」として世に出されました。「カディス」には1890年に作曲された「セレナータ・エスパニョーラ」を、「アストウリアス」には「スペインの歌」の「プレリュード」を、「アラゴン」には1889年出版の「ホタ・アラゴネーサ」を、「カステーリャ」には「スペインの歌」の「セギディーリャ」があてはめられました。


 そうした「わけあり組曲」であるにもかかわらずこの曲がアルベニスの代表作の一つになったのは、セビーリャやグラナダなどはアルベニス自身により生前からよく演奏されており、おそらく比較的早い時期からギターでも演奏されていたものと考えられます(タレガなどにより)。また後からこの組曲に加えられた曲も一般に受け入れられやすい曲が選ばれていることもあるかも知れません。そうした事情はありますが、やはりアルベニスの作品の中では親しみやすい曲が多く、オリジナルのピアノでも、またギターでも、どちらで聴いても楽しめる作品ではないかと思います。またこの組曲はオーケストラにアレンジされて演奏されることもあり、入手可能のCDもあると思いますので、興味ある人はぜひ聴いてみてください。



グラナダ

 ギターではよく演奏される曲の一つで、1886年に作曲されました。「セレナータ」という副題が付いていて、スペイン風というよりはアラビア風といったほうがよいのかも知れません。タレガの編曲譜も残され、当時からギターでも演奏されていたようです。原曲はへ長調ですが、タレガのギター譜ではホ長調に移調されており、現在ギターで演奏される場合、ほとんどこのホ長調になっています。確かにこのホ長調が一番弾きやすいのではないかと思いますが、このホ長調で中間部の和声を忠実にギターで再現するのはたいへん難しく、何らかの形で和声の変更は簡略化はやむを得ないことになります。このホ長調を採用した場合、主部(前後半)はそれほど違いはなく、まただいたい原曲に忠実にアレンジできるのですが、この中間部はアレンジによってかなり差が出るところです。


 私のアレンジは、私の力量の許す範囲で、和声構造をなるべく原曲に忠実に、ということなのですが、その中間部では結果的には響きが薄くなってしまったかも知れません。中間部の終わり近くにヘミオラの部分、つまり 3/8拍子=3/4拍子 になる箇所があり、ここはタルレガ以来、伝統的なアレンジでは無視した形になっていますが、私のアレンジではそれを尊重しています。因みに、この曲をホ長調ではなくイ長調に移調している編曲譜(ニコラ・ホールなど)もあり、これも選択肢の一つだと思いますが、中間部が難しいことには変わりないでしょう。 



カディス

 前述のとおり、もともとは1890年に「セレナータ・エスパニョール」として作曲されたもので、アルベニスの死後この組曲に組み入れた(この曲名に当てはめられた)ものです。原曲は変二長調(♭5個)ですが、もちろんこの調ではギターでは演奏が困難になってしまいますので、普通イ長調、または二長調などに移調されて演奏されます。タレガ(リョベット?)編は二長調になっていますが、この調は原曲より半音高い調ということで、ほぼ原曲どおりの音域となります。音域が高い分だけ華やかには聴こえるのですが、技術的には若干難しくなり、技術の高いギタリストや、華やかさを志向する人向きのアレンジといえるでしょう。イ長調のほうはバルエコやブリームなどが採用していて、最近ではこちらの方が多数派と言えるかも知れません。原曲より4度ほど低くなりますが、ギターとピアノの音域の違いを考えると、こちらの方がむしろ自然と思います。聴いた感じからしても音域的な偏りは感じられず、原曲に近いイメージもあります。


 伴奏の音形に乗せてメロディを歌わせるといったタイプの曲ですが、これがギターではなかなか難しく(特にタレガ編の場合は)、シンプルなメロディがシンプルに聴こえるようにするだけでもなかなかの技術が必要となります。今回私が弾くアレンジは基本的にはバルエコ編(イ長調)を使っていますが、技術的に困難な箇所や、単純ミスと思われる箇所(16小節目)などを若干修正しています。
  


セビーリャ

 グラナダと同様に1886年頃作曲された曲で、タイトルも途中から変えられたり、また他の組曲などから編入させられたりもせず、この組曲の中では、いわば「正規組」と言えます。また「セビーリャナス」という、この地名が付けられたフラメンコのリズムで出来ており、そういった点でも曲名に矛盾がありません。曲の華やかさといった点では他のアルベニスの曲に比べて抜きん出ており、よくコンサートの最後に演奏されたりします(今回もそうなのですが、これにはチューニングの関係もあります)。ただしピアノ譜にはメトロノームの数字が、4分音符=100とされていて、特に速く弾くようには指示されていません。しかし一般にギタリストは華やかさを強調するため、かなり速めのテンポをとることが多いようです、もちろんそれだけの技術があればということになりますが。


 原曲はト長調ですが、ギターでは普通 ⑤=ソ ⑥=レ にチューニングし、原調のままで演奏されます。これがとてもよくはまり、他の選択肢はないと考えられます。チューニングや技術的な問題だけでなく、曲の感じからして、主部=ト長調、中間部=ハ短調、は譲れないところでしょう。上記のように調の選択やチューニングに関してはどのアレンジも変わりありませんが、もちろん細かい部分についてはそれぞれ異なります。その中でもタレガ編は原曲から最も遠いのですが、このタレガ編を弾くときには単にアルベニスの作品を弾く、というよりタレガを通したアルベニス、つまりタレガとアルベニスの共作、くらいのつもりで取り組んだほうがよいかも知れません。


 因みに、グラナダはスペイン南部のネバダ山脈の谷間にある都市で、なんといってもアルハンブラ宮殿で有名、カディスはやはりスペイン南部のカディス湾に面した港町、セビーリャはガダルキビル川を河口から数十キロほど内陸に入った都市で、それぞれスペインのアンダルシア地方の都市名となっています。