中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

ジュリアーニの曲が9枚

 この25枚のCDのうち9枚はマウロ・ジュリアーニの作品となっていて、このレーヴェルでは特にジュリアーニの作品には力を入れているようです。 ジュリアーニにはかなりの作品がありますが、これまでそれほどたくさんの曲が録音されてきたとは言えません。

 このコレクションには協奏曲や二重奏曲全集などの貴重なもの、また4曲のロッシニアーナとか「セミラーミデ」全曲ギター版など、ロッシーニに関係した曲も多数収録されています。
  


前にも書きましたが

 3曲のギター協奏曲については以前にもこのブログで紹介しましたが、特に有名な「第1番イ長調作品30」は、初版(1808年版)の2管編成のフル・オーケストラ版で演奏しています。 普通、この曲は弦楽合奏版で演奏されることが多く、なお且つジュリアン・ブリーム以来、多くのギタリストは展開部を大幅にショート・カットした形で演奏していました。

 この曲を「聴衆に飽きずに聴いてもらうための賢明で、現実的な処置」ということかも知れません。 しかし、こしたことはやはり悪しき習慣と言えるのではないでしょか、世の中、そんない気短な聴衆ばかりではないと思います。

 私の知る限りではこの曲をフル・オーケスラで演奏しているのはこのCDのみだと思いますので、そういった意味でも大変貴重な録音だと思います。 でも、弦楽合奏版は、フル・オーケストラ版に比べて引き締まった感じもあり、別な魅力も感じます。

 因みにギターのソロ・パートについてはどちらの版でも、全く同じになっています。



やはり「第3番」はいいが、多少「オマケ」も必要

 「第3番ヘ長調作品70」 は晩年(1822年)の作ですが、管弦楽法にもいっそう熟達し、第1番を凌ぐ曲と思います。 特に冒頭の部分などなかなか”おしゃれ”で、今後もっと演奏されてもよい曲だと思います。 

 この「第3番」はあまり演奏される機会がなかったせいか、逆に簡略化などされずに「無キズ」で今日に至っています。 3曲ともオリジナル楽器使用ということと、リアルな音量バランスということで、ギターの音はかなり聴き取りにくくなっています。 個人的にはCDなのだから多少は 「オマケ」 してもらってもいいのではと思います。




二重奏曲が3枚

 二重奏曲が3枚のCDに収められていますが、オペラの序曲の編曲、教育的な小品集、協奏的変奏曲などとなっています。 「協奏的変奏曲作品130」以外は、これまであまり演奏されることがなく、やはり貴重な録音だと思います。 またここでもロッシーニに関する曲が多くなっています。




友達? 親友? ただの知り合い?

 ジュリアーニは1806~1819年までウィーンに滞在しましたが、その地でベートーヴェンなど多くの音楽家たちと親交を深めたようです。 ベートーヴェンの「交響曲第7番」の初演にも加わったことはいろいろなところで書かれているので、皆さんもご存知かも知れません。

 ただ、実際に何の楽器を演奏したかは、はっきりしないようです。 ジュリアーニは若い頃チェロを弾いていたので、「チェロ・パートを弾いた」と書かれているものもありますが、「いや、テンパニーだ」とか、「名を連ねただけで、実際には演奏には加わらなかった」、と書かれているものもあります。

 要するに初演者のリストに名前が載っていたということ以外は不明なようです。 またこれも詳しく書いてあるものはありませんが、実際にはどの程度、ベートーヴェンと親しかったのでしょうか?  親友? 友達? ただの知り合い?

 ジュリアーニにとって、なにはともあれ、ベートーヴェンの「交響曲第7番」の初演に立ち会たことは自慢だったようです。 ジュリアーニが作曲した 「テルツ・ギターとギタのためのグラン・ポプリ作品67」 には、その「交響曲第7番」の第1楽章のテーマが登場します(大序曲も登場するが)。



ロッシーニは郷土が生んだ音楽的英雄

 ベートーヴェン以上にジュリアーニが大きく関った作曲家といえば、何回か触れたとおり、「セビーリャの理髪師」などで有名なロッシーニがいます。 ロッシーニは1810~1820年代にはイタリアやウィーンをはじめ、ヨーロッパ中に大センセーショナルを巻き起こしたと言われています。

 ジュリアーニにしてみれば、ロッシーニが超人気作曲家というだけでなく、郷土が生んだ音楽的英雄といった思いもあったのかもしれません、晩年にはロッシーニに因んだ作品を多数作曲しています。

 確かにジュリアーニの音楽はロッシーニと共通するものがあるように思います。 1820年代に作曲された「ロッシニアーナ」は現在でもジュリアーニの作品の中ではよく演奏され、特にオリジナルのオペラを知らなくても楽しめる作品だと思います。 

 この「ロッシニアーナ」は全部で6曲あるのですが、このCDではなぜか4曲のみになっています。 「ポプリ」の方を優先させたのでしょうか。



オペラをまるごとギター1台でなんて

 また当時大変人気を博したと言われるロッシーニの「セミラーミデ」の全曲ギター独奏編曲が2枚のCDに収められています。 私自身このオペラをよく知らないので、どの程度の「全曲」なのかはわかりませんが、一つのオペラを丸ごとギターで弾くなどということは、確かに他には聴いたことがありません。

 ただロッシーニにしても、ジュリアーニにしても、とても似た曲が多く、さすがにこちらは原曲を知らないと楽しみにくいかも知れません。
 


Duo Maccari-Pugliese 

 演奏者の紹介をしていませんでしたが、この9枚のジュリアーニのCDのうち、「セミラーミデ」の2枚を除いてはクラウディオ・マッカリとパオロ・プリエーゼというギタリストが演奏しています。 CD5、6の「4つのロッシニアーナと4つのポプリ」は基本的に独奏曲のはずですが、演奏は Duo Maccari-Pugliese となっていて、どちらが演奏しているかは書いてありません。

 さりとて二人で独奏曲を弾いたり、二重奏にアレンジして弾いている感じでもありません。 使用楽器(主に19世紀初頭の楽器)については細かく記されているのですが、なぜか演奏者は明記されていません。



大大序曲?

 ついでにジャケット裏の曲目データには、

  5 Grande Ouverture Op.6        17:53

となっていて、ジュリアーニに20分にも迫る、こんな長い 「大序曲」 があったのかなと思いましたが、もちろんこのこの曲は皆さんがご存知のあの「大序曲」です。 お気づきのとおり 「1」 が移動してしまい、正しくは、

   5 Grande Ouverture Op.61       7:53

です。 こんな間違いって意外とよくあります。




軽快な指さばきだが

 この二人の演奏スタイルは確かによく似ていて、軽快な音と軽快な「指さばき」が特徴だと思いますが、重要な音とそうでない音(伴奏の刻みのような)との音量の差が大きいのも特徴でしょう。 ただあまりにも弱音用いるので、細部が不明瞭に感じてしまいます。

 それは独奏でも二重奏でも、協奏曲でも同じようです。 協奏曲でギター・パートが不明瞭なのは録音や楽器の音量だけではないかも知れません。



Izhar Elias

 「セミラーミデ」を演奏している Izhar Elias については初めて聴くギタリストなので、詳細はわかりませんが、Maccari と同じ1812年のガダニーニを使用して演奏しているので、Maccari-Puglieseの二人と何らかの関係があるのかも知れません。

 音質的にはこのEliasの方が質感とか力感とかはあるように思います。 また細部もクリヤーに弾いています。 Maccari-Puglieseたちと同じく爪を使わない、いわゆる「指頭奏法」を用いているようです。
 
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天地天命に誓い

 このところ、当ブログを読んでCDを注文したと言う話を時々聞きます。なんだかHVM、あるいはBrillantの回し者みたいになってしまっていますが、もちろん天地天命に誓って、該当企業等からの金銭授受など、一切ございません! 
 しかし、生産者と消費者は表裏一体、よい「買い手」がいなければ、よい「売り手」は育たない。皆さんもしっかりと内容を吟味した上で、よいと思ったもの、あるいは気に入ったものはお金を出して買うべきでは、と思います。特にクラシック・ギターなどというマニアックな世界では。 ・・・・・・・やはり回し者かな?



アレッサンドロ・ピッチニーニ 

 さて、次の2枚のCDはルネサンス末期からバロック初期にかけてのリューテスト、アレッサンドロ・ピッチニーニ(1566~1638年)の作品で、「リュートとキタローネのためのタブラチュア、第1巻、第2巻」となっています。ピッチニーニは名前だけ聞いたことがありますが、その作品を聴くのは初めてです。因みに、ピッチーニ(ピッチンニ)という作曲家もいますが、この人は18世紀後半に活躍したオペラ作曲家で、このピッチニーニとは全くの別人です。



ダウランドにも、ヴァイスにも似ていない

 曲のほうは、結論から言えば今まであまり聴いたことのない感じで、なかなか興味深いものです。ルネサンス的な要素とバロック的な要素とを両方持っている感じで、 時代からすればジョン・ダウランドと同じくらいですが、もちろん印象はかなり違っています。ダウランドの曲はリュート・ソロの曲でもリュート伴奏の歌曲的な要素が強くありますが、このピッチニーニの作品は単旋律的ではなく、より多声部的な感じがあります。またフランスのバロック・リュ-トの作品やヴァイスの作品のような装飾を主とした作風でもないようです。

 ピッチニーニの作品は、曲にもよりますが、しっかりとした対位法で書かれ、また音域も広く使われているのが目立ちます。また、時には現代音楽を思わせる大胆さも感じられます。今まであまり演奏されることが少ないようですが(私が知らなかっただけ?)、ダウランドやヴァイスに比べても決して遜色のない作品群で、もちろんギターで弾いても面白いのではと思います。もしかしたら、当コレクション中、最も興味深いCDかも知れません。



キタローネ = テオルボよりもさらに長い竿

 「キタローネ」というのは長い竿の付いた低音用のリュートで、同種の楽器であるテオルボよりもさらに長い竿が付いています。主にオペラなどの伴奏に使われたようです。リュートは基本的に復弦(2本ずつ弦が張ってある)ですが、このキタローネは単弦だそうです。

 かつては音楽史の本の中でしか出会えなかったこうした作曲家の作品や、写真でしか見られなかった楽器の音が気軽に、しかも優れた演奏と録音で(さらに安価で!)聴けるのですから、確かに時代は変わりましたね。



スカルラッティの12のソナタ

 次の1枚(5枚目)はバロック時代(バッハと同時代)にイタリア、およびスペインで活躍した作曲家のドメニコ・スカルラッティの鍵盤用のソナタをギターで演奏したものです。スカルラッティのソナタもまたギターと相性のよいものです。スカルラッティのソナタは数百曲ありますが、ギターで演奏される曲となるとある程度限られ、K208、K209、K292、K213 などはギターでも比較的よく聴く曲です。K87はかつてジュリアン・ブリームが弾いていた曲でしょうか?

 演奏者の Luigi Attademo (ルイージ・アッタデモ)については詳細はわかりませんが、ドイツのギター製作家、オルテゲス氏の楽器(1994年)を使用しての演奏は、清楚で気品ある美しさ湛えたものです。とてもくつろいだ気分になれる1枚です。
 
 前回はリスト・アップだけで終わっていしまいましたが、今回からそれぞれのCDについてコメントしてゆきます。といってもやはりたくさんなので、何枚か印象に残ったものだけになると思います。


フォールホスト = バロック音楽のギター編曲

 1枚目のCD(前回のリスト参考)はバロック時代の作品ですが、サンスやヴィゼーなどのいわゆる「バロック・ギター」のジャンルからではなく、すべてバッハやヘンデルなどの鍵盤曲などからの編曲となっています。ギタリストはVoorhorst(フォールホルスト)と言う人で、オランダのギタリストのようです。1992年に瀬戸大橋国際ギター・コンクールに優勝したという経歴があるそうです。


教会的な響き

 このCDから聴こえてくる音は、たいへん重厚な音で、教会などの響きを意識してか、かなり残響のある録音です。編曲はすべて演奏者自身によるものと記されていますが、最初のバッハの「シャコンヌ」はオリジナルのヴァイオリン譜に、若干低音を加えたり、オクターヴ移動をしたもので、基本は「原曲に忠実に」といった感じです。装飾や、声部の追加などはあまりありません。



バロック建築を彷彿させる

 全体の印象としては、バロック建築を思わせるような重厚で壮麗な音楽作りで、とても共感を感じます。またスピード(演奏時間14:06)やアレンジなどにも、私自身のものとあまり変わらない感じがします(私のものと比較して恐縮ですが)。なんとなくデヴィット・ラッセルの演奏を思わせますが、何か影響があるのでしょうか、バッハのフルートの作品を編曲して演奏している点なども同じです(ラッセルはソナタ・ホ短調 BWV1034)。



ホセ・ラミレスⅢ 1963年

 それにしてもこのギターの音とても馴染みのあるものなのですが、ジャケットを見ると使用楽器が「ホセ・ラミレス 1963年」と書いてありました。確かに言われてみればそんな感じです、かつて私も10弦を含めて3本ほどラミレスを使いました。「1963年」ですからⅢ世ということになるのでしょうが、この時代はまさにホセ・ラミレスⅢの「盛期」、当時、セゴヴィアを始め、多くのギタリストが使用していました。よく杉の楽器は賞味期限が短いなどと言われますが、このCDを聴く限りでは、まだまだ瑞々しさは失っていないように思います。



機能美

 この楽器が出来た時、つまり1960年代に活躍したギタリストたちは、この楽器からたいへん美しい音を出していたわけですが、その美しさを、ヴィヴラートやポルタメントなどによる曲線的な美しさと例えるなら、このVoorhorstの出す音はもっと直線的な美しさで、言ってみれば「機能美」と言った美しさに感じます。同じ1960年代のラミレスでも演奏者が変われば、当然また違った音が出るのでしょう。



ギターの方が

 このCDには大バッハ(J.S.Bach)他に、バッハの息子のフリードリヒとエマヌエルの作品、さらに同時代のテレマンの作品も収められています。それぞれもともとは小品なのでしょうが、このVoorhorstの演奏ではそれぞれ重厚な曲に聴こえてきます。さらにフランソワ・クープランのクラブサン曲から「神秘の障壁」も演奏しています。この曲は何年か前に水戸芸術館でヒューイットのピアノでも聴いていますが、鍵盤曲にしてはたいへん音域の狭い曲で、ヒューイットが小さく身をかがめるようにして弾いていたのを記憶しています。この曲は現代のグランド・ピアノだと、もてあまし気味で、ギターの方がずっと「納まり」がよいように思います。リュートで演奏される場合もありますが、確かにリュート的な曲ですね。



両巨匠のシャコンヌで挟む

 こCDの最後はヘンデルの「シャコンヌ」で、バロック時代の大作曲家二人の「シャコンヌ」でこのCDの前後を挟む凝ったプログラミングになっています。このようなところにも、この演奏者の性格や考えが現れているように思います。このヘンデルのほうのシャコンヌは、前にも触れた伝説のギター・デュオ、プレスティとラゴヤも演奏している曲です。シャコンヌはご存知のとおりバスの主題による変奏曲ですが、こちらのヘンデルの作品は、メロディックなテーマに装飾的な変奏が付くといった曲で、バッハの曲のように重厚で難解なところはありません。むしろ気軽に聴ける曲といってもよいかも知れません。



こちらの方が本当のシャコンヌ?

 私たちは「シャコンヌ」というと、どうしても「バッハのシャコンヌ」をイメージしてしまい、前述のとおり、重厚で難解な曲といった印象がありますが、もともとは「低音を主題とした装飾的な変奏曲」といったもので、むしろこのヘンデルの「シャコンヌ」方が「標準的」なシャコンヌに近いものだったのでしょう。バッハの曲の方が異例の作品で、第一、「低音を主題にした変奏曲」を、「低音のない楽器」のために作曲したこと自体が異例中の異例だったのではないかと思います。



バッハはシャコンヌが嫌い?

 意外と思われるかもしれませんが、バッハはあまりシャコンヌやパッサカリアなどといった変奏曲はあまり作曲していません。よく知られている曲としては、シャコンヌの他、オルガンのための「パッサカリアとフーガ」、鍵盤のための「ゴールドベルク変奏曲」で、計3曲しかありません。もちろんそれぞれバッハの作品を代表する、あるいはクラシック音楽を代表する名曲となっています。バッハは「標準的」な変奏曲を作曲するのはあまり好きではなかったようです。もっとも、即興的な変奏曲などは楽譜に書かなかっただけかも知れませんが。
 
 1枚目から長くなってしまいましたが、さすが1枚目に置くだけ、演奏も、コンセプトもしっかりしたCDで、とても満足感のあるCDです。

 
クラシカル・ギター・コレクション
      25枚組 8519円(HMV)


    Gコレクション


お買い得指数

 今回もまたとんでもない価格のものを紹介します。今回のCDは25枚で8519円(HMV)で、1枚あたり340円。前回の139円というセゴヴィアの10枚組には及びませんが、「お買い得指数」はむしろそれを上回るものではないかと思います。確かにセゴヴィアの演奏そのものはすばらしいものですが、この10枚組に収められた演奏は録音も古く、これまで何度もLPやCDとして発売されていたものです。おそらくセゴヴィア・ファンならほとんどのものはすでに持っているのではないかと思いますし、なお且つ無理やり10枚組にした感じもありました。



この会社、本当に儲ける気あんの?

 しかし今回のCDはほとんどのものが最新録音で、これまで録音されたことのない曲など、貴重なものばかりで、演奏も優れています。会社にしてみれば「売れ筋商品」のはずで、常識的にはこの価格は考えられません。本当にこの会社、儲ける気があるのかと疑いたくなる価格です。

 このブリラント(Brillant)というレーヴェルはオランダの会社のようですが、全集ものなどを低価格で発売しているレーヴェルで、私自身では以前にも触れた「ハイドン交響曲全集」などを購入しています。ギター関係にも力を入れているようで、下にリスト・アップしたようにジュリアーニの「協奏曲全集」、ジュリアーニ、およびソルの「二重奏曲全集」などといった全集ものを発売していて、たいへん資料的価値のあるものを市場に出しています。


ナクソスも真っ青

 資料的価値の高いCDを低価格で、と言えばこれまで「ナクソス」が筆頭に上がっていて、確かにこれまで貴重なもCDを数多く発売し、私のCD棚にもかなり収められています。しかしナクソス盤は最近価格もあがり、1枚あたり千数百円ほどになっており、また基本は単売で、仮に全集ものでも1枚ずつ発売してゆく形をとっており、本当に「全集」になるまでにはかなり年数もかかり、また価格もブリラントに比べればかなり高いものになってしまいます。今や資料的価値と価格ではブリラントに「向かうところ敵なし」といった状況でしょうか。

 ちょっと長くなりますが、今回は、このコレクションのCDをすべてリスト・アップしておきましょう。それぞれ話題性のある貴重な録音だと思います。


CD1
『シャコンヌ』
・J.S.バッハ:シャコンヌBWV.1004、ソナタBWV.1033、テレマン原曲による協奏曲BWV.985/J.C.F.バッハ:プレリュード/クープラン:神秘的な障壁/C.P.E.バッハ:アダージョ/ヘンデル:シャコンヌHWV.435
 エンノ・フォールホルスト(ギター)

CD2、CD3
・ピッチニーニ:リュートとキタローネのためのタブラチュア集第1巻、第2巻
 ルチアーノ・コンティニ(キタローネ、リュート)

CD4
・D.スカルラッティ:ギターによる12のソナタ
 ルイジ・アッタデモ(ギター)

CD5、CD6
・ジュリアーニ:ロッシニアーナ第1番~第4番、ポプリ第1番~第4番、大序曲
 クラウディオ・マッカーリ、パオロ・プリエーゼ(ギター)

CD7
・ジュリアーニ編:ギターによるオペラ序曲集
・ロッシーニ:「泥棒かささぎ」「コリントの包囲」「英国女王エリザベス」「シンデレラ」/ベッリーニ:「海賊」/ス・ポンティーニ:「ヴェスタの巫女」/モーツァルト:「皇帝ティートの慈悲」
・ジュリアーニ:グラン・ポプリOp.67
 クラウディオ・マッカーリ、パオロ・プリエーゼ(ギター)

CD8
・ジュリアーニ:2台のギターのための16のオーストリアのレントラーOp.16a、2台のギターのための12のレントラーOp.55、Op.94、2台のギターのための12のレントラーとフィナーレOp.75、Op.80、2台のギターのための12の新しいレントラーとフィナーレOp.92、アポロ・ザールで人気のドイツ舞曲選集WoO.2G-3、3つのロンドOp.66、恋の冒険Op.116、ロッシーニの歌劇「セミラーミデ」から「入場の行進曲」WoO (posth).2G-5
 クラウディオ・マッカーリ、パオロ・プリエーゼ(ギター)

CD9
・ジュリアーニ:協奏的変奏曲Op.130、協奏的大変奏曲Op.35、3つの協奏的ポロネーズOp.137、夜の竪琴Op.69
 クラウディオ・マッカーリ、パオロ・プリエーゼ(ギター)

CD10、CD11
・ジュリアーニ:ギター協奏曲第1番~第3番、ギターと弦楽のための大五重奏曲Op.65、ジェネラーリの「ローマのバッカス祭」の主題による変奏曲Op.102
 クラウディオ・マッカーリ、パオロ・プリエーゼ(ギター)アンサンブル・オットチェント

CD12、CD13
・ソル:慰めOp.34、ディヴェルティメントOp.38、Op.62、
6つのワルツOp.39、Op.44bis、二人の友Op.41、軍隊風ディヴェルティメントOp.49、私のほうへ第一歩Op.53、幻想曲Op.54、二重奏曲Op.55、3つの小さなディヴェルティメントOp.61、ロシアの思い出Op.63
・コステ:グランド・デュオ、スケルツォとパストラーレOp.10、デュエット
 クラウディオ・マッカーリ、パオロ・プリエーゼ(ギター)

CD14
・ポンセ:ギター協奏曲
 アルフォンソ・モレノ(ギター)
 エンリケ・バティス指揮、メキシコ国立交響楽団

・カルッリ:ギター協奏曲/ヴィヴァルディ:ギター協奏曲ハ長調、ニ長調
 ヨゼフ・サプカ(ギター)
 ボブダン・ヴァルハル指揮、スロヴァキア室内管弦楽団

CD15
・カルッリ:二重奏曲ハ長調Op.11、ベートーヴェン(カルッリ編):モーツァルトの「魔笛」の「娘か女か」の主題による変奏曲Op.169、ノクターンOp.127、大二重奏曲Op.45
 アルフォンソ・モレーノ(ギター)マッシモ・パルンボ(pf)

CD16、CD17
・ロッシーニ:歌劇「セミラーミデ」(ジュリアーニ編曲ギター・ソロ版)
 イザー・エリアス(ギター)

CD18、CD19
・『ロマンティック・ギター』
シューベルト、メンデルスゾーン、シューマン、ショパン、チャイコフスキー、リスト、ロッチ、ファイファー、タレーガ、グラナドス、ソル、ヴィラ=ロボス、アルベニス、デ・ラ・マーサ、他の作曲家の作品によるギター版名曲集
 ダニエル・ベンケー、アリリオ・ディアス(ギター)

CD21
・バリオス:ギター曲集
 ワルツ第3番、第4番、フリア・フロリダ、前奏曲、森に夢見る、パラグアイ舞曲、神の愛のほどこし、他
 エンノ・フォールホルスト、ハイン・サンデリンク(ギター)

CD22
・マキシモ・ディエゴ・プホール:ギター二重奏曲全集
 ジョルジオ・ミルト、ビクトル・ビジャダンゴス(ギター)

CD23
・カステルヌーヴォ=テデスコ:ギター協奏曲全集
 2つのギターのための協奏曲Op.201、ギター協奏曲第1番、第2番、変奏曲によるサラバンド
 マッシモ・フェリチ、ロレンツォ・ミケーリ(ギター)マイケル・サマーズ指揮、アブルッツェーゼ交響楽団

CD24
・ジラルディーノ:超絶技巧練習曲第1集
 クリスティアーノ・ポルケッドゥ(ギター)

CD25
・ブローウェル:ギター独奏曲集
 黒いデカメロン、シンプルな練習曲集、舞踏礼賛
 ジョヴァンニ・カルーソ(ギター)


 *本当に長くなってしまいました。内容のコメントはまた次回いたします。
アンドレス・セゴヴィア名演集 10枚組 1390円

CD-1 : J.S.バッハの作品 
CD-2 : ミラン、ヴィゼー、 ラモー、 サンスなどの作品 
CD-3 : タルレガ、グラナドス、アルベニスなどの作品
CD-4 : テデスコ:ギター協奏曲第1番ニ長調 他
CD-5 : ポンセ:組曲イ長調、ソナタ第3番ニ短調 他 以上1927年~1949年の録音
CD-6~8 : ルガーノ(1968年)、アスコーナ(1955年)、ボローニャ(1972年)のライブ録音
CD-9 : クラウス・フェルドマン&ライナー・フェルドマンのギター・デュオ(1993~2000年)
CD-10 : スパニッシュ・アート・ギター・カルテット (2001年)



   セゴヴィア



10枚 = 1390円 !!

 今回紹介するCDアルバムは、20世紀を代表する大ギタリスト、アンドレ・セゴヴィアのCDが、10枚で1390円という、まさに価格破壊的な値段のもの。Documentsというドイツのレーヴェルから出ているものですが、このレーヴェルからは他に「協奏曲集」やな「名指揮者集」、「大ピアニスト集」、など同様企画があり、内容はイタリアのルガーノなどのライヴ録音が中心となっています。

 このセゴヴィアのアルバムの内容は上記のとおりですが、まず1927年から1949年にかけてのいわゆる「SP録音」が5枚。アスコーナ、ルガーノ、ボローニャのイタリアで行われたリサイタルのライヴ録音が3枚。他に二重奏と四重奏のCDが各1枚となっています。この二、四重奏は名前などからすればドイツ人のようで、セゴヴィアとはあまり関係のないギタリストのように思います。おそらくこのアルバムを「10枚組」にするために組み入れられたのでしょう。そういえばセゴヴィアの演奏の方も1枚あたり40~50分とやや短く、最近の平均的な収録時間からすれば、8枚のところを6枚でも十分に収められる時間で、がんばれば5枚でも収まりそうです。無理やり”10枚組”にした感じは否めませんが、仮に「5枚組」だったとしても十分にお買い得品と言えるでしょう。



1927年~1949年のSP録音

 CD1~5の1927年~1949年のSP録音ですが、これらの音源はこれまでLPやCDとして何度も発売されてきたものなので、すでに持っている人も多いかも知れません。音質は元々がSP録音なので、相応の音ということになりますが、若干聴きにくいものから、SP録音にしてはかなりよいものまで様々です。特にノイズ・カットの仕方などが曲ごとに異なるようで、ノイズをカットするということはどうしても「本来の音」の一部もカットされてしまいます。したがってあまりノイズをカットしてしまうと音が詰まり気味になったり、貧弱になったりしてしまい、多少ノイズがあっても本体を削らない処理の仕方のほうがよい感じがします。SP盤独特の「サー」というノイズも慣れてしまえばそれほど気にならなくなるものです。



若い頃はテンポが速かった?

 演奏については、一般に出回っている1950年代以降のものと比べて、テンポが全体にやや速い傾向にあります。これはセゴヴィアの「若さ」によるものとも考えられますが、SPの収録時間を考慮したとも考えられます。ただ、ほとんどの曲は、回転数の関係などで音程が高くなっていて(曲によっては半音くらい高い)、実際はそれほど速くはなかったと考えられます。また当時の録音はいわゆる「一発録り」で、ライヴ的な感覚もあり、勢いとか緊迫感といったものは、後のLP録音よりあるのではないかと思います。一方音楽の構成や、全体像などを考えると、やはりLP録音のもののほうが上回っているように思います。また、同じ曲の「別テイク」、つまり違う時期に録音したものもかなり入っていて、ライヴ盤のほうも合わせるとアルベニスの「セヴィーリャ」や「朱色の塔」、トロバの「カスティーリャ組曲」など3種類も入っている曲もあります(「セヴィーリャ」は二重奏も含めれば4種)。


ライヴ録音

 次のCD6~8はイタリアの3つの都市におけるライヴ録音で、文字通り、セゴヴィアの”生”が聴けるということになります。録音時期も1950~1970年代のもので、上記のものより格段によくなっています。特に「アスコーナ」のライヴは、1955年と言う時期を考えても格段によい音質で、演奏もすばらしいものです。このアスコーナでのリサイタルからはヴィラ・ロボス、ポンセ、テデスコ、アルベニスなど7曲収められていますが、どの曲も演奏、録音とも秀逸。まさに若さと、成熟を両方とも兼ねた演奏といえるでしょう。セゴビアは1893年生まれで、この年には62歳になり、今の私よりも年長ということになりますが、演奏を聴いた感じでは壮年期真っ盛りといった感じです。



正真正銘のセゴヴィア・トーン

 セゴビアの演奏は、特にポンセの作品がよく似合うと思いますが、この演奏(ソナタ第3番のⅡ、Ⅲ楽章)を聴くと、多彩な音色を駆使して奥行きのある音楽を作っています。軽い音、重たい音、明るい音、暗い音、普通の音・・・・ でもやはり特徴的なのはメロディを甘く歌わせる音。かつて「こんな音、生のギターで出せるはずがない、これはレコードにする時、機械的に作っているんだ」などい言われていましたが、もちろん多くの聴衆の前でギター1本で出しているのは間違いありません。



絶好調!

 「セビーリャ」なども一般に出回っている、同時期(1952年=デッカ)にスタジオ録音されたものより演奏、録音とも優れている感じがします。 それにしてもライヴ録音のはずなのに、咳などの雑音などがほとんど聞こえてきません。聴衆も極めて集中して聴いているのでしょう。ただし拍手は爆発的なので、ボリュームの上げ過ぎには要注意。



オマケ

 CD9、10は前述のとおり”枚数合わせ”のために入れられたものと思われますが、クラウス・フェルドマン&ライナー・フェルドマンというギタリストの二重奏と、他に二人加えたスペイン・ギター・カルテットの演奏です。スペインの名が付けられていますが、名前などからすればすべてドイツ人のギタリストのようです。曲目はおそらくすべてスペインの作曲家によるもので、グラナドス、アルベニス、ロドリーゴなどの編曲作品が主ですが、 Emilio Serrano とか Ruperto Chapi など初耳の作曲家の曲もあります。面白いところでは、ロドリーゴの「ソナタ・ジョコーサ」を二重奏で演奏しています。カルテットで演奏している「アルハンブラの想い出」のアレンジもなかなか面白くなっています。



大人の事情?

 確かにこれはこれでなかなか楽しめる演奏なのですが、ただし8枚目までのセゴヴィアの演奏とはまるで違う傾向なので続けて聴くとちょと違和感があります。数合わせとしても、もう少し相性のよいものとか、関連性のあるものはなかったかなと思いますが、その辺は会社の事情というところでしょうか。

パガニーニ:室内楽作品集

 パガニーニ四重奏団
 アドリアーノ・セバスチアーニ(ギター)他


パガニーニ 001



・弦楽とギターのための四重奏曲全集
 第1番 MS 28,第2番 MS 29,第3番 MS 30,第4番 MS 31,第5番 MS 32
 第6番 MS 33,第7番 MS 34,第8番 MS 35,第9番 MS 36,第10番 MS 37
 第11番 MS 38,第12番 MS 39,第13番 MS 40,第14番 MS 41,第15番 MS 42

・弦楽とギターのための三重奏曲集
 セレナータ ハ長調,協奏三重奏 ニ長調,三重奏曲 ニ長調
 三重奏曲 ニ短調,三重奏曲 ヘ長調

・弦楽四重奏曲全集
 第1番 MS 20,第2番MS 20,第3番MS 20

・2つのヴァイオリンとチェロのための「心にもう感じない」
・ヴァイオリンとチェロのための3つの二重奏曲
・2つのヴァイオリンとチェロのための謝肉祭のディヴェルティメント

・ヴァイオリンとファゴットのための3つの二重奏曲 MS 139
・ヴィオラとファゴットのための3つの二重奏曲

・弦楽四重奏による4つのノットゥルノ MS 15
・弦楽四重奏曲 MS 34(弦楽とギターのための四重奏曲第7番の弦楽四重奏版)

・マンドリンとギターのためのソナタ MS 14
・同 MS 16
・マンドリンのためのメヌエット MS 106


室内楽であって室内楽でない

 前回に続き、パガニーニの作品集で、価格は10枚組で前回の9枚組と同じ価格(4,697円=HMV)。お買い得といえばお買い得なのですが、お薦めかどうかは、ちょっと微妙なところ。室内楽といっても同時代のベートーヴェンやシューベルト、あるいは古典派のハイドンやモーツァルトなどの作品に比べると、パガニーニの室内楽は極論的には、室内楽であって室内楽ではないもの。5枚のCDにおさめられた15曲の弦楽とギターのための四重奏曲(ギター、ヴァイオリン、ビオラ、チェロ)は、ヴァイオリンとギターの二重奏曲の延長といった感じで、メロディを奏でるヴァイオリンを残りの3つの楽器が伴奏するといった形です。



ギターを含む室内楽

 ちょっと話がかわりますが、皆さんはギターを含む室内楽作品といったら、他にどんな曲を思い浮かべるでしょうか? おそらく真っ先に思い浮かべるのはボッケリーニの「ギター5重奏曲」でしょうか、これは有名な「ファンダンゴ」をはじめ、計7曲ほど残されています。ジュリアーニにも若干、ギターと弦楽四重奏のための作品があります。シューベルトには「ギター、フルート、ビオラ、チェロのための四重奏曲」というのもありますが、これはマティーカというギタリストの「ギター、フルート、ビオラのための三重奏曲」にシューベルトがチェロ・パートを加えたもの。テデスコがセゴビアのために作曲した「ギター五重奏曲」もあります。後はどんな曲があるでしょうか、もちろん他にもたくさんあるのでしょうが、すぐに浮かんでくる曲は少ないのではないでしょうか。



何の目的で

 と言うようにギターを含む室内楽、特にギターと弦楽のための室内楽に絞れば、このパガニーニの15曲のギターと弦楽のための四重奏曲は数的にはたいへん重要なものといえます。それにしてもこれほどの数の四重奏曲をどういった目的で作曲したのでしょうか。詳しいことは手元の資料ではわかりませんが、当時の習慣として何の目的もなしに作曲することはありえませんから、おそらくこうした曲を演奏する機会、あるいは必要とするイヴェントなどが頻繁にあったと考えられます(貴婦人の恋人のサロンという話もあります)。



埋もれてしまった秘曲

 この時期の室内楽というのはいろいろなジャンルの中でも重要なものと考えられ、さらに音楽史上でも重要な音楽家の作品ですから、普通に考えれば一般の音楽愛好家からも、またギター愛好家からもこれまでもっと注目されてもよかったはずなのですが、このブログでその存在を知ったとい人も結構いるのではないかと思います。かく言う私もこのアルバムでこれらの曲を初めて聴きました。これまであまり注目を浴びなかったのは、それなりの理由があるとは思いますが、やはり埋もれてしまった「秘曲」ということになるのでしょうか。


尾ひれが

 これまで伝えられているパガニーニと言えば、大きなステージでオーケストラをバックに、熱狂する聴衆を前にこれでもかとばかりに超絶技巧をふりまき、コンサートが終わればオーケストラのパート譜と大金を手に跡形もなくどこかに消えてしまう・・・・・ などという話ばかりですが、おそらくそれはパガニーニのごく一部分、あるいは限定された期間の話だったのかも知れません。こうした逸話には当然のごとく尾ひれが付いてしまうものです。



本当のパガニーニは

 もしかしたら本当のパガニーニはもっと地味で普通で、性格も「悪魔的」とは正反対で人柄もよかった、などというと、これまでのパガニーニのイメージが崩れてしまうかも知れませんが、その外見と、卓越した技術から人々が勝手に虚像を作ってしまった、ということも全くありえなくないかも知れません。これらの室内楽を聴いていると、おそらくパガニーニが弾いたと思われるヴァイオリンのパートは、確かに他の楽器に比べ目だってはいるのですが、特に超絶技巧といった感じでもなく、美しいメロディが中心で、とても耳になじみやすい感じがします。「悪魔的な」ヴァイオリニストのイメージからはだいぶ遠い感じがします。サロンなどで少人数の観客を前に、やさしく語りかけるように美しいメロディを奏でていたパガニーニというのも、もしかしたら存在していたのかも知れません。



こちらのほうが普通

 また収拾の付かない話になってしまいましたが、これらのパガニーニの室内楽は前述のとおりベートーヴェンなどの弦楽四重奏曲などとは全く異なり、対位法的な処理も、主題労作といったようなこともあまり見られず、ヴァイオリンに他の楽器が和音を添えているといったものです。時にはギターやチェロなどが表にでることもありますが、それぞれの楽器が複雑に絡み合うことはあまりなく、基本的に美しいメロディを聴く曲といった印象です。

 古典派からロマン派にかけての室内楽というと、ついつい、ベートーヴェンなどの弦楽四重奏などを連想してしまいますが、しかし考えてみればベートーヴェンの弦楽四重奏曲などというのは、当時でも特殊なもの。特殊だったからこそ今日でも音楽史上最高の作品として聴かれるのだと思います。当時「普通」の作曲家により作曲され、多くの人に親しまれた「普通の」室内楽のほとんどは現在ではむしろ聴かれなくなってしまい、考え方を変えればパガニーニのこれらの作品は当時の室内楽のひとつの標準形を示しているのかも知れません(メロディの美しさなどは決して「一般的」ではない)。



やはりパガニーニはミステリアス

 これまで書いたとおり、前回のヴァイオリンとギターのための作品集と、今回の室内楽作品集から感じたことは、これまで逸話として伝えられてきたパガニーニのイメージからはずいぶんと異質なものでした。「近寄りがたい神秘的な超絶技巧のパガニーニ」、「気さくで、やさしく美しいメロディを奏でるパガニーニ」、どちらが本物のパガニーニなのでしょうか。結論としては、いろいろな意味でパガニーニは私たちにとって「ミステリアス」な音楽家ということに落ち着きそうです。