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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

ギター独奏曲集

この7枚組のアルバムの中の1枚は、私たちには馴染みの深いギター独奏曲集になっています。曲目については皆さんもよくご存知と思いますので、詳しい説明は省きますが、ヴィラ・ロボスの全ギター独奏作品である以下の曲が収録されています。 


 5つの前奏曲    (1940年)
 ブラジル民謡組曲~5つのショーロ  (1912年~1923年)
 12の練習曲     (1929年)
 ショールス第1番  (1920年)


 最近発見され、話題となったもう一つの「ヴァルサ・ショーロ」は含まれていません。また「ショールス第1番」はショールス集のところにも、別のギタリスト(Favio Zenon)の演奏が収録されており、このアルバムの中には二人のギタリストによる演奏が収められています。


 演奏は、Anders Miolin と言うスウェーデンのギタリストですが、たいへん譜面をよく読みこみ、ヴィラ・ロボスの音楽を忠実に再現しているように感じました。例えば、有名な「前奏曲集第1番」では、セゴビアを始め、多くのギタリストがやるように伴奏部分のリズムを崩して演奏したりせず、イン・テンポを基調とし、楽譜の指示に従って必要な分だけルバートしています。


ヴィラ・ロボス 003

 

ヴィラ・ロボスの音楽を忠実に再現

 もちろん演奏の良し悪しなどと言うのは聴く人によって様々で、どういった演奏を高く評価し、また共感するかはかなり違うところだと思います。ただこれまで様々なヴィラ・ロボスのギター以外の作品を聴いた後でこの演奏を聴くと、このギターための作品と他のジャンルの作品とのギャップみたいなものはあまり感じません。つまりアルバム、すなわち「ヴィラ・ロボス作品集」としての一貫性が感じ取れます。

 この演奏ではルバートなどを控えめにしている他、全体にテンポはゆっくり目に取られています。特に練習曲などでは一般に自らの技術の高さをアピールすべく、必要以上に速く弾く傾向がありますが、ここではそうしたことは避けられ、その曲の要求するテンポに適切に従っているように感じます。おそらくこのギタリストはこれらの作品を演奏する時に、「ヴィラ・ロボスの音楽を忠実に再現する」ということを最優先に考えているのではないかと思います。
 


奇をてらったものではない

 私たちは、これまで、ヴィラ・ロボスのギター作品、特に練習曲集などは、斬新的で、シャープな響きの音楽、あるいはギターの演奏技術の新境地、などと考えて、何となく非日常的な音楽といったイメージを持ってきました。しかしこの演奏を聴いていると、何かもっと素朴でロマンティックな音楽、少なくとも”奇をてらう”音楽とか、ましてグロテスクな音楽ではありえないと思えてきます。

 そう考えるとこれまでよく聴かれたような、異常なスピードで演奏したり、不協和音をヒステリックに強調したり、あるいはその曲の内容よりも自らの技術のアピールの方に重点を置いた演奏というのは、ヴィラ・ロボスの音楽の本当の姿とは若干違ったものにも思えてきます。



ギタリストならば

 私自身はヴィラ・ロボスの独奏曲集は、7~8種類ほどCDを持っていますが、その中では、いろいろな意味でこの演奏が最も私自身のヴィラ・ロボスのイメージに近いと感じました。また他のジャンルのヴィラ・ロボスの作品との整合性も最もあるのではないかとも感じます。前述のとおり、どういった演奏を好むかはもちろんその人次第ですが、ヴィラ・ロボスの音楽に取り組んでいる人、あるいはこれから取り組もうとしている人には是非聴いてほしいと思う演奏です。

 このアルバムはCD7枚組で、ヴィラ・ロボスの二つの代表作、「ショールス集」と「ブラジル風バッハ」それぞれ全曲とギター独奏曲全曲、およびショールスの名の付いた作品数曲、さらに「ショールス第1番」は2種類の演奏 ・・・・といった内容で確か価格は5000円台。ギター愛好家ならぜひとも座右に置きたい一組!  ・・・・・また宣伝になってしまいました。

 
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ブラジル風バッハ第7番

 「第7番」オーケストラのための曲で、「プレリュード」、「ジーガ」、「トッカータ」、「フーガ」の4曲からなる比較的長い曲(約26分)です。

 「アリア」は「第5番」の「アリア」のメロディに似ていて、バッハの平均律曲集?の第22番変二長調のフーガにもちょっと似ています。

 「ジーガ」は慣習どおり3拍子系の速い曲で、対位法的にもなっていて、バロック時代のジーグ的な感じです。色彩的で、金管も活躍します。

 「トッカータ」は、マリンバとか引きつったような金管とか、前の二つの楽章よりいっそう多彩で、活動的な曲になっています。

 「フーガ」は第2楽章の「アリア」の旋律(バッハの平均律風の)の変形が主題になっているようです。曲は弦楽主体で厳かに進められ、終盤に金管や打楽器が加わり、最後は音量をさらに増大させて力強く曲が閉じられます。この曲は確かにバッハの作品の断片のようなものが使われ、バッハ風の感じがします。



ブラジル風バッハ第8番

 「第8番」はオーケストラのための曲で、「プレリュード」、「アリア」、「トッカータ」、「フーガ」の4楽章構成です。

 「プレリュード」は最初のテーマが各楽器群に模倣されてゆく対位法的な曲ですが、次第に動きを増し、後半ではリズム的要素も現れます。

 「アリア」は低音域で旋律が歌いだされ、次第に音量が増し、曲の半ばほどで突然活発な部分へと変ります。曲全体を通じて主旋律は主に低音域で歌われます。

 「トッカータ」は他のトッカータ同様にパーカッションが活躍し、久々にアマゾンの大自然を感じさせる曲になっています。中間部は対位法的です。

 「フーガ」の主題はかなり長めのものですが、それから派生したと思われる対旋律は若干ブラジル風です。




ブラジル風バッハ第9番

 「第9番」は弦楽合奏版と無伴奏の合唱版があり、「プレリュード」と「フーガ」から出来ている短い曲です。「プレリュード」は弦楽合奏版では、和音の一撃のあと、チェロが歌いだし、全合奏に引き継がれますが、フーガへの短い導入と言った感じの曲です。

 「フーガ」の主題はバッハ風と言えばバッハ風なのですが、シンコペーションがあるのでバッハの曲としてはありえない感じです。でも思わず口ずさみたくなるような親しみやすいメロディで、合唱版のほうが面白いかも知れません。

ブラジル風バッハ第4番

 この第4番はオーケストラ版とピアノ独奏版と2種類あるようです。このアルバムにはその両方とも入っており、「プレリュード」、「コラール」、「アリア」、「ダンサ」の4つの楽章から出来ています、ここではオーケストラ版についてのコメントを行います。

「プレリュード」は対位法的書法で書かれ、弦楽器群のみでゆっくりと演奏されます。確かに合奏協奏曲の緩叙楽章風です。

 「コラール」も同様に対位法的でゆっくり演奏されますが、管楽器も加わり、「プレリュード」よりは色彩的です。パーカッションが静かに一定のリズムを添えていますが、最後のほうではドラムなどの打楽器群がゆっくりとした歩幅で、力強く打ち叩かれます。

 「アリア」に出てくるメロディはギター曲の「練習曲11番」を思わせるものです。中間部ではテンポも速くなり、オーケストラも色彩的になりますが、同じメロディが使われています。

 「ダンサ」はもちろん舞曲的ですが、前の楽章のメロディが若干変形されながらも使われています。ヴィラ・ロボスの曲ではこのメロディと似たようなものはよく使われているようで、「ヴィラ・ロボス的」なメロディといえるのかも知れません。またこの曲は他の「ダンサ」のようにあまりシンコペーションを用いたブラジル的なリズムは使われておらず、どちらかと言えばバルトーク的な感じがします。



ブラジル風バッハ第5番

 この「第5番」は「アリア」と「ダンサ」からなりますが、ソプラノと、8本のチェロのための曲になっています。8本のチェロを用いたのは第1番同様で、このチェロの使用法はヴィラ・ロボスの代名詞といったところかも知れません。 


 特に「アリア」の方は、ヴィラ・ロボス自身によるソプラノとギターのためのバージョンもあり、私たちギターをやるものにとってはたいへん親しみのある作品です。キャスリーン・バトル(ソプラノ)とクリストファー・パークニング(アメリカのギタリスト)がこのバージョンを録音しています。



ヴィラ・ロボス 002

ソプラノとギターバージョンの「アリア」が録音されているCD。グラナドスの「ゴヤの美女」も収録されている。



 この「アリア」の前半は歌詞のない歌(ボカリーズ)になっていて、特にこの部分が美しく、有名です。中間部は詞が入りますが、ふるさとの夕暮れの美しさを歌っているのでしょうか。「ダンサ」のほうにもソプラノが入りますが、チェロは無窮動的な音形を刻んでいます。




 ブラジル風バッハ第6番

 第6番はフルートとバスーンによる比較的短い曲で、「アリア」と「ファンタジア」の二つの楽章からなります。「アリア」はフルートの細かいパッセージのあと、二つの楽器による対位法的な部分になりますが、バッハ風とか、バロック風といった感じでなさそうです。

 「ファンタジア」は「アリア」よりも動きのある楽章になっていますが、ギターの練習曲集に出てくるようなパッセージなど、いろいろな音形が出てきます。対位法的というより、「掛け合い」といった感じです。ブラジル的的要素も少ないようです。


ブラジル風バッハ

 今回からは「ショールス集」と並ぶヴィラ・ロボスの代表作「ブラジル風バッハ集」の紹介です。この作品集は漠然と聴いた感じからするとあまりバッハ風には聴こえません。具体的にバッハの作品からの引用といったものはなさそうです。しかしそれぞれ曲は「プレリュード」とか「フーガ」とか「トッカータ」と言ったような曲名になっていて、バロック時代の組曲のようになっています。

 作曲年代は1930~1941年で、ちょうどショールス集が作曲し終わってから書かれていて、ショールス集の続編のようになっています。全部で9曲あり、編成が様々なのはショールス集と同じですが、曲の長さは8分~27分で、ショールス集よりばらつきは少なくなっています。またそれぞれが2~4曲の楽章を持ち、統一感もあります。ヴィラ・ロボスの円熟期に書かれた作品と言ってよいでしょう。



ブラジル風バッハ第1番

 この「第1番」は、「第5番」同様に8本のチェロのために書かれています(「第5番」の場合はソプラノが加わる)。「序曲」、「プレリュード」、「フーガ」の3曲からなりますが、なぜか「序曲」と「プレリュード」という似たような曲が両方入っています。

 「序曲」はリズムの刻みで始まりますが、ショールス集の場合と同様、シンコペーションを含む、ラテン系のリズムになっています。低音域から始まるメロディは若干悲壮感を漂わせるロマンティックなものです。確かにラテン系のリズムとロマンティックなメロディの組み合わせといった感じです。

 「プレリュード」はちょっとバロック時代の合奏協奏曲風の感じで始まります。チェロをかなり高い音域まで使っているので、聴いているだけでは普通の弦楽合奏の曲のようです。チェロでこれだけ高い音域で合奏するのは決して簡単ではないと思いますが、この演奏ではもちろん音程の不安定さなどは感じられません。演奏は「サンパウロ交響楽団」ということですが、かなり技術は高いのでしょう。

 「フーガ」の主題は、シンコペーションを使ったブラジル的なものです。同じフーガといってもバッハのフーガとはかなり違う感じはしますが、フーガとしての基本的な作曲法は同じなのでしょう。確かに「ブラジル風バッハ」といった感じです。
 


ブラジル風バッハ第2番

 「第2番」はオーケストラのための曲で、「プレリュード」、「アリア」、「ダンサ」、「トッカータ」の4曲からなります。

 「プレリュード」はロマンテッィクな感じの曲ですが、冒頭でメロディがサキソフォーンによって歌われるので、近代的な曲にも聴こえます。そのメロディはチェロへと受け継がれてゆきます。

 「アリア」も前の曲を受け継いだ雰囲気で始まりますが、メロディはまずチェロによって歌われます。フォーレとかサンサーンスとかいった感じでしょうか。しばらくするとブラジル風のリズムが現れ、サキソフォーンも登場します。全体に美しくメロディを歌わせる曲といった感じです(これまで聴いてきた曲の大半がそうですが)。

 ここまではあまりブラジル風というよりヨーロッパ風だったのですが、この「ダンサ」は文字通りブラジル的な踊りの曲になっています。ダンスの前後に歌われるのはトロンボーンでしょうか、軽快な曲です。

 「トッカータ」は「カイピラの小さな汽車」といった表題が付けられていますが、確かに汽車の走る様子などを音にした感じの曲で、汽車の音と一緒に流れてくるメロディも親しみやすいものです。この「第2番」はこの「ブラジル風バッハ集」の中でもよく演奏される曲だということだそうです。

 この4つの楽章を通じて、音楽がヨーロッパから南米へと移って行く感じなのでしょう。確かにヴィラ・ロボス的な部分がよく現れている曲だと思います。 



ブラジル風バッハ第3番

 「第3番」はピアノとオーケストラのための曲で、「プレリュード」、「ファンタジア」、「アリア」、「トッカータ」の4曲からなります。

 「プレリュード」はロマンティックですが、ちょっとジャズぽくも聴こえます、ラフマニノフ風といったところでしょうか。ゆったりとした弦の旋律にピアノが下行音形を繰り返します。以下オーケストラが旋律を奏で、ピアノが装飾的に加わるといった感じで曲が進みます。

 「ファンタジア」は、前の楽章より若干活発で、劇的な感じになっています(ロマン派風なのは同じ)。中間部では静かな歌となり、最後にまた活発な音楽となりますが、ポールモーリアなどの演奏で有名な「シバの女王」を思わせるようなパッセージが現れます。

 「アリア」は曲名どおり静かな歌ですが、ピアノが一定のリズムを刻みながら演奏されるところなどはちょっとピアソラぽくもあります。後半では付点音符(二重付点?)を多用した部分もあらわれ、なかなか聴き応えのある曲です。

 「トッカータ」は”Picapau”と題されています。この言葉どこかで聴いたことがあると思ったら、「ショールス第3番」にも付いていました。”きつつき”の意味だそうです。この楽章は前の3つの楽章から一転して、ロマン派風の音楽ではなく、不協和音的で複雑な響き、エネルギッシュなリズムとテンポ、といった感じで、近代的、あるいはストラヴィンスキー的な華麗な音楽になっています。「ショールス第3番」ほど直接”きつつき”を思わせる感じではありませんが、なかなか面白い曲です。
何でボールとれないの?

 やはりメッシはすごいですね、メッシからなかなかボールやとれない。見ている方としては何でボールがとれないんだという気になりますが、やっている選手たちはもっとそう思っているでしょうね。他の選手とは一段違った反射神経と体の動きなのでしょう。


 他の選手とのコンビネーションがいま一つだったのが(Wカップの時から)日本の勝利の一つの要因でしょうが、あのメッシについてゆくのは頭も、体もたいへんでしょう。それについてゆけるのはバルセロナの選手たちくらいか。


 後になりましたが、祝! アルゼンチン戦初勝利! アルゼンチンに初勝利というより、多分A代表としては、ブラジルやドイツ、フランスなどのワールド・カップ優勝国に初めて勝利したのでは? 日本のサッカー界にとっては新しい時代の幕開けといえるでしょう。

 
 南アフリカには行ったが結局試合には出ることのなかった香川、内田、森本選手などは活き活きとプレーしていたように思います。特に本番直前まで先発間違いないと思われていながら、結局ピッチに立つことがなかった内田選手は思うところがあったのでしょう、持ち前の能力の高さに加えて、プレーに積極性が感じられました。香川選手については、今後日本代表の核となるのは言うまでのないでしょう。


 それにしても、Wカップの時とメンバーはそれほど大きく変わっているわけではなく、戦術もそれほど大きく変ったようには思えませんが、日本代表の雰囲気は変りましたね。もちろん監督が変ったということもありますが、Wカップでの自身なのでしょうか。パラグアイ戦に勝ったのも大きいかな・・・・




    ヴィラ・ロボス 001

Heitor Villa-Robos (1887-1959) 多作家だったが多芸な人でもあり、チェロや、ギターをはじめ、いろいろな楽器を演奏することが出来たようだ。



ショールス第9番


「ショールス第9番」は約24分のオーケストラ曲です。いきなりオーケストラの総奏から始まり、金管楽器がテーマを奏します。しばらくの間そのテーマのもとに曲が進み、一段落した後、各楽器を歌わせる部分や、定型的な音形を繰り返す部分などを挟み、曲の中ほどではパーカッシブな部分となります。シンプルだが力強いリズムで、先住民の踊りの場面なのでしょうか。

 また鳥の鳴き声のようなものも現れ、アマゾンの大自然をイメージしているのかも知れません。再び最初のテーマが現れ、最後はオーケストラの総奏による大音響で終わります。活発でエネルギッシュな曲といえるでしょう。



ショールス第10番

 「ショールス第10番」は約13分のオーケストラと混声合唱による曲です。”Pasga Coracao”と副題されていますが、「愛の破れ」といった意味のようです。題名どおりに不安な感じではじまり、やや前衛的です。下行する音形がよく出てきますが、これはこの曲全体を通じて現れます。「第9番」同様に鳥の鳴き声が聴こえてきますが(木管による)、こちらの方がよりリアルな感じです。

 7分過ぎくらいからパーカションによるリズムと先ほどの下行音形に伴われてコーラスが登場します。歌というより”掛け声”といった感じです。刻まれているリズムは南米的、あるいはアフリカ的といったところかも知れませんが、爪先立ちの軽快なリズムではなく、大地をしっかりと踏みしめたような力強いリズムです。

 12曲のショールスの中では、この曲が最も「アマゾン的」あるいは「ヴィラ・ロボス的」ともいえる、野性味とか、始原的なエネルギーといったものが感じられ、はっきりとした特徴を持った曲と言えるでしょう。



ショールス第11番

 この「11番」は、続けて演奏されますが、3楽章からなる、ピアノとオーケストラのための曲です。演奏時間約63分という、このショールス集のうちでも最大の長さになっています。普通のピアノ協奏曲の2倍の長さといったところでしょうか。

 第1楽章はリズムの刻みから始まりますが、シンコペーション的ではなく、付点音符を含むもので、ちょっと聴くとホルストの「惑星」に出てきそうな感じです。比較的すぐにピアノが入ってきますが、ピアノのパッセージはジャズ的な感じもします。幅広くゆったりとしたメロディに細かい音形を組み合わせるといったことは、この曲だけでなく、このショールス集全体によく出てきます。

 しばらくすると下行音形の繰り返しが出てきますが、ヴィラ・ロボスの曲ではよく聴かれるようです。またスペイン的というか、アルベニスの曲で出てきそうな部分もあります。この楽章の半ばほどには他のショールスのようにシンコペーション的なリズムが出てきますが、あまり長くは続きません。

 第2楽章は一転してロマンティックなピアノ・ソロで始まります。ラフマニノフの曲のようです。しばらく進むと、今度は最近のポピュラー音楽のような、シンコペーション的な軽やかなパッセージをピアノが奏でます。最後にまた冒頭のロマンティックな部分が出てきます。最初のモチーフと同じなのでしょうが、かなり変形されています。

 第3楽章は3拍子系で始まりますが、すぐに4拍子系に変わります。この部分どこかで聴いたことのある雰囲気がしますが、ストラヴィンスキーの「春の祭典」によく似ています。確かによく似ているのですが、ストラヴィンスキーのようにリズムは不規則で、複雑ではなく、また激しいというよりは軽快さが感じられます。

 しばらくするとポピュラー音楽のようなピアノ・ソロ、スペイン民謡のようなメロディなど出てきたり、「ショールス第10番」で出てきた下行音形が聴かれたり、この曲や、他のショールスで聴いたことのあるようなパッセージなどがいろいろ登場します。お祭りのパレードを見ているような曲です。

 この曲は1時間を越える長い曲なので、確かに全曲を通して聴くのは少したいへんですが、部分部分を聴くと耳に馴染みやすいパッセージがいろいろ出てきます。また「第9番」や「第10番」などようにアマゾン的というか、野生的でエネルギッシュなところはあまりなく、どちらかといえば穏やかな感じです。

 

ショールス第12番

 この「第12番」も「第11番」同様、野生的な部分は少なく、先住民のエネルギッシュな踊りといったものは出てきません。演奏時間約37分という、「第11番」に次ぐ長い曲で、楽章の切れ目がないのでかなり長く感じられます。はっきりとした切れ目はありませんが、曲そのもはいくつかの部分に分けられるのでしょう。

 あまり激しいとか、極めて特徴的といった感じはないのですが、シンコペーション的なリズムは頻繁に用いられていて、同時代のヨーロッパの作曲家の作品との違いは、もちろん感じ取れます。やはり途中では動物の鳴き声を模倣したパッセージなども現れます。

 曲の終わりの方ではリズムは軽快になり、ポピュラー音楽のような感じになっていて、前述のとおり全体としては野性味とか、エネルギッシュといった感じではあまりありません。

 今日(10月3日)ひたちなか市アコラで坪川真理子ミニ・コンサ-トを聴きました。坪川さんの演奏を初めて聴いたのは10数年前、クラシカル・ギターコンクールの時だったと思います。また3年ほど前にギター文化館でアルポリール・ギター・トリオのメンバーとして聴いていますが、ソロのコンサートをちゃんと聴く機会としては今回が初めてということになるでしょう。曲目は以下のとおりでした。


アンヘル・バリオス : トナディーリャ

アルベニス~坪川編 : 朱色の塔

マラッツ : スペインセレナード

R.S.デ・ラ・マーサ : カステーリャの歌と踊り、ロンディーニャ

アルカス : 椿姫幻想曲



 アンヘル・バリオスはスペインの作曲家で、「大聖堂」などで有名なアウグスティン・バリオスとは全くの別人です。「トナデーリャ」は文字通り小粋なスペイン風の曲で、明るい坪川さんのギターの音にはよくあっている感じです。 

 ギターではよく演奏される「朱色の塔」は坪川さん自身の編曲だそうで、調こそ一般的なもの(リョベート編を基にした)と同じニ短調ですが、原曲にかなり近いアレンジで、音の省略も少なく、相当難しそうなものになっています。私も自分自身のアレンジで弾いていますが、私の場合は確かに原曲に近く、ということもありますが、それ以上に”私でも弾けるアレンジ”ということが優先となっていて、坪川さんの場合とはかなり異なります。

 マラッツのセレナードは基本的にタレガ編ですが、若干変更しているようです(これもどちらかといえば難しい方に)。デ・ラ・マーサの曲は最近コンサートかCDで聴いたことがあるような気がしますが、ファリャの「7つのスペイン民謡」のメロディが使われているのでしょうか、耳に馴染みやすい曲です。


坪川

坪川さんの2枚目のソロ・アルバム 「ラテンの幻想」
黒いデカメロン、ギター五重奏曲(ブローウェル)、ソナチネ(ホルヘ・モレル)他
 ブローウェルの室内楽の録音はたいへん貴重なものでは。


 椿姫幻想曲はかつてタレガ作とされていたもので、人気の高い曲ですが、坪川さんは颯爽と演奏していました。アンコールには写真のCDに入っているカルドーソの「ミロンガ~独奏版」でした。

 昨日(10月2日)ひたちなか市文化会館で「イソリスティ・イバラキ第40回演奏会」を聴きました。今回のゲストはNHKのトップランナーでも紹介されたバンドネオン奏者の三浦一馬さん。

 三浦さんは一昨年、史上最年少の18歳でピアソラ国際コンクールで準優勝したとのこと、バンドネオンなど、かつてはごく少数のタンゴ・ファンにしか知られていない楽器と言った感じがありましたが、最近ではこうした若く、優れた奏者もあらわれ、いっそう多くの人に聴かれるようになってゆくのかも知れません。


イソリスティ



 テレビや新聞などでも紹介されたこともあってか、会場はほぼ満席。いつも私たちがコンサートを行う時には100~150人程度なので、見慣れているこの会場もいつもとはちょっと違う感じです。

 そのせいか、前の方の席で曲の合い間にしゃべりだす女性。曲が静かに閉じようとしている時に鳴り出す携帯音。演奏中に携帯の画面を見る人・・・・ やむを得ないとは言え、鳴り止まない咳の音など、ギターのコンサートではあまりないことも起きます。




 今回のイソリスティ・イバラキは弦楽のみの編成となっていますが、メンバー表を見るとこれまでコンサート・マスターをしていた川又さんや飯塚さんが第2ヴァイオリンになって、コンサート・マスターには加藤直子さんとなっています。

 記憶違いでなければ加藤さんは、創が水戸芸術館のオーデションに初めて合格した時に、一緒に合格した人だったのではと思います。その時確かチャイコフスキーの協奏曲を弾いたと思いますが、朗々としたヴァイオリンの音が印象に残っています・・・・10年以上前の話ですが。



 プログラム前半は弦楽合奏で、フェラーリとロッシーニの弦楽のための曲。それぞれ作曲者が17才と12才の時の作品で、今日の若いゲストに合わせた選曲だそうです。

 後半はゲストの三浦一馬さんのバンドネオンとイソリスティの弦楽合奏によるピアソラの作品(オブリヴィオン、タンゴ・センセーション)です。演奏の前に指揮者の田口先生と三浦さんによるバンドネオンに関してのトークがあり、バンドネオンのソロでガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」が演奏されました。



 バンドネオンの演奏はたいへん難しいという話は前から聴いていましたが、ボタンの位置がばらばら並んでいる(音階順ではなく)だけでなく、蛇腹を開く時と閉じる時で、同じボタンを操作しても全く違う音が出て、左右も全然違うなど話を聴いているだけでも難しそうです。そうした高いハードルを乗り越えた人だけが、バンドネオン奏者となることが出来るのでしょう。

 バンドネオンの生演奏など事実上初めてですが、やはりすばらしい音、あるいは演奏でした。今日演奏されたピソラの曲はどちらかと言えばじっくりと歌わせる曲が中心でしたが、バンドネオンの高温域と低音域の音色の違いとかよくわかり、なんといってもリズムを刻むことにも、歌わせることにも、どちらも向いた楽器であることがよくわかりました。



 イソリスティ・イバラキの演奏も、その若いバンドネオン奏者をしっかりとサポートし、特にバイオリン、ヴィオラ、チェロとそれぞれソロで歌うところなど本当に美しく、とても楽しめました。アンコールとしてピアソラの「リベルタンゴ」が演奏されましたが、その後も拍手はなかなか鳴り止みませんでした。

11弦ギター


 今日根本秀則さんがレッスンに来ました。部屋に入ってくると、手にはちょっと変わった形のギター。おや、と見るとセルシェルなどで有名な11弦ギター。「最近、これ作って、弾いていたので、普通のギターが弾けなくなって・・・・」



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 そういえば前回のレッスンのときに、「今度11弦作ろうと思っているのだけど・・・・」と言っていましたが、まさか今日持ってくるとは思いませんでした、これから研究して作るのかなとくらいで。



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 古いギターの裏板とか、建具屋さん(賞に入るなど優れた方だそうですが)から貰ったスプルースなどあり合せの材料で作ったそうですが、なかなかよい音が出ます。これまで通常の6弦ギターを5本作り、これが通算6本目だそうで、もちろん11弦は初めてです。


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 どう見ても、また実際に弾いてみても、初めての11弦ギターには思えません。日曜大工もままならない(大工の息子でありながら)私にはとうてい信じられません。

 昔10弦ギターを弾いていたことはあったのですが、久々に弾いてみるとなかなか手元がおぼつかなく、6弦の位置がすぐにわからない。第11弦など手を目いっぱい拡げてやっと届く感じです。和音と一緒ににその低音弦を弾くとなるとさらにやっかい。


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 11弦といえば、先日、リュートや11弦ギターなどを弾いている”bestluteさんからコメントがあり、昔やっていた10弦ギターのことなどについて尋ねられました。また先日のギター・フェスティヴァルの時に、大野さんの10弦を聴いたり、また10弦ギターについて、いろいろ話をしたりしました。最近なぜか私の周辺では、10弦や11弦ギターが話題になっています。また10弦をやれということなのかな?


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  とても初めて作ったとは思えない11弦ギターを作った根本さん