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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

祝!! 日本代表アジア・カップ4冠

 ついに優勝しましたね、前回は「オーストラリア若干優勢だが、どちらがかつかはわからない」といったようなことを書きましたが、内心日本のほうが勝つのではと思っていました(こうした結果が出たからいえることかも知れませんが)。サッカーの大会ではこのように苦戦を続けてきた方が良い結果を出せる可能性が高い、Wカップのスペイン代表もその例ではないかと思います。サッカーの大会に限らず人生でもよくあることでは。


決勝のプレッシャーか

 それにしても何度も「やられた」と思うシーンがありましたね、特に試合開始当初の日本代表は固かったですね、ボール・コントロールやパスに小さなミスの連続で、連戦の疲れというよりは決勝のプレッシャーなのでしょうか。また足元だけでなく、判断も遅く、いつものワンタッチ・パスはほとんど見られませんでした。


ザッケローニの実力

 それでも長友のいる左サイドからは何度かチャンスが作れていたのですが、右サイドはまったく機能せず。普段はテレビを見ていても興奮したりすることのない私ですが、思わず「柏木入れて、岡崎右に戻せ!」と叫んでいました。

 ザッケローニは後半から岩政を入れて長友を前に出しましたが、ここからかなりよくなりましたね、相手のクロスに対しての守備が安定しましたし、長友の攻撃もより活発になってきました。これが決勝点を生み出した大きな要因だと思います。
 

川島がピンチを防ぐ度に

 それでもピンチの連続で、前述のように「優勝を逃した」と何度も思う場面が何度もありました。それらをことごとく川島が防ぎ、それを重ねる度に、逆に優勝に近づいていったのでしょう。


決める男

 でもやはりこ試合の最大の勝因は前田に代わって入った李が、最も大事なところで、最もすばらしいプレーをしたことでしょう、フリーとは言え、決して易しいシュートではありません。日本代表にとって、日本のサッカー・ファンにとって、また李選手自身にとって、極めて大きなボレー・ショートとなりました。


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昨日のコンサート

 後になってしまいましたが、前回告知したとおり、昨日は日立市の神峰公園にある吉田正記念館でコンサートがあり、私も出演しました。この記念館の5階の展望カフェでコンサートが行われましたが、会場は超満員で、立ち見の方もかなりいて、たいへん申し訳なかったように思います。百数十名の方に聴きに来ていただきました。

 当日はアンプ使用ということで、本来のギターの音を聴いてもらうことは出来ませんでしたが、会場の音響や聴衆の数などを考えるとやむを得なかったことでしょう。




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 Petrit Ceku ~旧ユーゴ出身、2007年ミハエル・ピッタルーガ国際ギター・コンクール優勝


 新進演奏家 007


J.S.バッハ : ソナタBWV1003(無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番)
ジュリオ・レゴンディ : 練習曲第6番、第4番
ヴィンセント・アスンシオ : ヴァレンシア組曲
ホアキン・ロドリーゴ : ギターのための牧歌


 さて、前置きがかなり長くなってしまいましたが、今回は2008年の2月に録音されたペトリット・チェクのCDの紹介です。チェクは現在セルビア共和国のコソボ地区にあるプレズレンという町で、1985年に生まれました。チェクの生まれた当時はユーゴスラビアということになるのでしょうか、録音時には23歳です。


作らない自然な音

 最初のバッハを聴き始めると、これまでのCDとちょっと違う感じがします、音色が違うのです。これまで紹介したCDで、は多少音質に違いはあってもほとんどのギタリストが磨きぬかれた美しい音を持っていました。その点このCDから聴こえてくるギターの音は決して汚いといったような音ではないのですが、いわゆる”美音”というか、ふっくらとした豊かな音とか、繊細で柔らかい音、あるいは明るくはじける音といったような音とは傾向が違うようです。若干細身で、練る上げたというよりは、作らない自然の音といったところかも知れません。


難解な曲のはずだが

 さらにもう一つ「おや?」と思ったことは、このバッハの「ソナタ第2番」の第1楽章「グラーヴェ」はバッハの曲の中でも難解な曲だったはずなのですが、不思議と聴きやすい曲に聴こえます。その理由は低音の追加にあり、曲全体を通じて8分音符で低音が追加され、それによって和音もわかりやすく、自然に聴こえ、また音楽も自然に先に進むように聴こえます。


通奏低音付きのヴァイオリン・ソナタのよう

 元々はこの曲はたいへん細かい音符で書かれ、また和声的にも難しい曲だと思うのですが、このアレンジでは何か通奏低音付きのヴァイオリン・ソナタを聴いているようで、耳に馴染み易いものになっています。因みにアレンジは演奏者自身のものではなく、Walter Despaljと言う人のものだそうです。

 
知性的な演奏

 第2楽章の「フーガ」も若干の低音の追加と、多少ですが音域、音形の変更なども行っています。演奏者のチェクは、各声部の進行を的確に弾き分け、また対位法的な部分は明確に、16分音符などの装飾的なパッセージは軽めに弾いています。知性的な演奏と言えるでしょう。


旋律がオクターブ上 

 第3楽章の「アンダンテ」は、旋律(最上声部の)が1オクターブ高められています。しかし部分的にはポジションが高くなりすぎて演奏が困難になってしまいますので、そうした箇所はオクターブ上げずにオリジナルの音域のままにしてあり、また場合によっては旋律の形を若干変更しているところもあります。

 第4楽章の「アレグロ」も適度に低音が追加され、ごくわずかですが、音域や音形の変更もあります。前半の最後に加えられた接続的な低音はなかなか印象的です。テンポはアレグロにふさわしく、速すぎも、遅すぎもしない速度でしょう。



レゴンディ : 二つのエチュード

 1822年に生まれた、ジュリオ・レゴンディの作品はそれほど多く残されていませんが、このシリーズでフローリアン・ラルースが演奏していた「序奏とカプリッチョ」など最近ではよく演奏されています。練習曲は10曲余り残されていますが、概して難易度は高いものになっています。

 このCDでは「第6番二短調」と「第4番ホ長調」を演奏しています。どちらもテクニカルな曲というより文字通りロマン派風のメロディを歌わせる曲になっていますが、演奏は決して容易なものではありません。メロディは高音を中心に歌われ、チェクはヴィヴラートも使用して美しい音で弾いていますが、やはり細身の音には聴こえます。



アスンシオ : ヴァレンシア組曲

 この曲はスペインのヴァレンシア生まれの作曲家、ヴィンセント・アスンシオの作品で「プレリュード」、「カンツォネッタ」、「ダンサ」の3曲からなります。「スペインの光と影」などという言葉がありますが、その「影」をイメージさせる曲といえるでしょうか。「プレリュード」はアルペジオにのせてメロディを歌わせる曲。「カンツォネッタ」は歌うというよりは瞑想するような曲で、フリギア調によるものでしょうか。「ダンサ」はスペイン舞曲、つまりフラメンコ的な感じで、ロドリーゴ的な感じもします。



 ロドリーゴ : ギターのための牧歌

 「アレグロ」、「アンダンテ」、「アレグロ」の3曲からなる曲ですが、最初の「アレグロ」はロドリーゴ自身の「ファンダンゴ」や「小麦畑にて」、ファリャの「7つのスペイン民謡」などに似たようなパッセージが現れ、初めて聴いてもどこかで聴いたことのあるような曲です。「アンダンテ」はメランコリーな雰囲気の曲。最後の「アレグロ」は最初のものと雰囲気的には近いものですが、動きはより活発になり、ユーモラスな感じもします。

 チェクは音量や音色の変化を適切に付けながらそういった曲想をよく出していますが、音色の幅としてはこのシリーズの他のギタリストよりは若干狭いようです。
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明日決勝

 ついに日本代表、明日の決勝まで進みましたね、どの選手か言っていましたが、いつ負けてもおかしくない試合の連続で、本当によくここまできましたね。危なっかしさでは2004年以上かも。私自身も、このところほぼ連日の深夜のサッカー観戦で、ギターの練習にも身が入らない日が続いていますが、明日まではやむを得ないでしょうか。


2日前に120分戦ったはずなのに・・・・

 それにしても先日の韓国戦はすごかったですね、「韓国は前半からどんどん来るから後半20分くらいからが勝負、それまでに0-0か0-1くらいなら十分勝てる。韓国は延長戦を戦って、中2日だから後半必ず足に来る・・・・」なんてどこかで聴いたようなことを家内に言っていたら、とんでもなかったですね。足にきたのはむしろ日本の方、特に延長で1点失ってからの韓国は凄まじかったですね、日本の失点は時間の問題、やむを得ないところでしょう、こんなチーム世界広しと言えど他にはないのでは。


行って来い?

 この試合もPKが大きな鍵を握りましたが、2つのPKともやや微妙な判断、特に延長での日本が得たPKは、主審の当初判断はフリーキック、しかし線審の判断に従いPKとなったようです。その判断には前半での韓国に与えたPKが大きく影響して、なるべく両チームに平等にという気持ちが強く働いたのでしょう。審判は、基本的に”石ころ”扱い(ボールが当たったときなど)なのですが、やはり人の子。ヨルダン戦と似た状況でしたね。


審判が勝者を決めたわけではないが

 結局両チームに1本ずつのPKということで、審判が試合の結果を決めたことにはなりませんでしたが、少なくとも試合のシナリオは書いてしまったかなということでしょうか。本当に審判は難しいですね、でもかつてに比べればアジアの審判もレヴェルが上がっていると思います。高校のころ練習試合の線審とか、校内大会の主審とかやりましたが、どっちがボール出したとか、どっちがファウルをしたとかよくわからず、適当に笛を吹いていました。オフサイドなどとった記憶がありません。いずれにしても、存在感のない審判というのがベストなのでしょうね。


どっちが勝つの?

 さて、今晩が3位決定戦で、明日の晩が決勝ですが、日本とオーストラリアは実力的にはほぼ互角、これまでの対戦などではオーストラリアがやや有利といったところでしょう。これまでの流れ的には、オーストラリアはウズベキスタンに6-0で快勝、日本は苦戦をかろうじて凌ぎきった形、さらに主力の香川の負傷と、普通に見ればやはりオーストラリアの方が有利だが、トーナメントでは苦戦して勝ってきたチームの方が勝つことが多い、何とも言えないところですね。

 やってみなければわからないのがサッカーの試合、それが面白いところなのでしょう。大差で決着が付くことも十分ありえますが、試合終了までわからない試合になる可能性はたいへん高いでしょうね。



明日(1月29日 土曜日)、日立市吉田正記念館でコンサート

 サッカーの話ばかりになってしまいましたが、明日(1月29日)は日立市の吉田正記念館の展望カフェでコンサートがあります。基本的には愛好者の方々によるコンサートですが、私も演奏します。曲目は丹朋子さんとの二重奏で「ミスター・ロンリー」、「ワルツ風に(アサド)」、「火祭りの踊り(ファリャ)」、独奏で「さくら変奏曲(横尾幸弘)」です。時間は18:00~19:30です。

 こんなこと書いていないで練習しないといけませんね。近くの方、よければ聴いてみて下さい。
   新進演奏家 006


ホアキン・ロドリーゴ : フェネラリーフェのほとり
アレキサンドル・タンスマン : スクリャービンの主題による変奏曲
ニコラス・モウ : ミュージック・オブ・メモリー
マヌエル・ポンセ : ソナタ・ロマンティカ「シューベルトを讃えて」


Macin Dylla 1976年ポーランド生まれ

 今回のCDはポーランド出身のギタリスト、マルツィン・ディラのもので、2007年にGFAで優勝しています。1976年生まれと言う事で、今年で35歳になり、若手というよりは中堅ギタリストといったところでしょうか。


フェネラリーフェのほとり

 曲目は上記のとおりですが、ロドリーゴの曲で、「フェネラリーフェ」はグラナダのアランブラ宮殿に隣接した庭園だそうで、曲のほうは旋法的(フリギア調)な「レント・エ・カンタービレ」と、フラメンコ的なホ短調の舞曲からなっています。


スクリャービンの主題による変奏曲 ~クリコヴァも弾いている

 タンスマンの「スクリャービンの主題による変奏曲」はイリーナ・クリコヴァも演奏していた曲。CDで聴き比べた感じでは、クリコヴァに比べるとこのディラの演奏は若干速め(全曲で約1分)で、、主旋律もそれ以外の音もよく通るクリヤーな音で演奏しています。強いて言えばクリコヴァの場合は歌うことに意識が強く働いて、ディラの場合は曲の構造がよくわかるように、といったところかも知れません。聴き馴染んでくると、この曲もなかなかよい曲に感じます。


ミュージック・オブ・メモリー ~メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲に因んだ曲

 ニコラス・モウ(Nicholas Maw)はイギリス生まれの作曲家で、この「ミュージック・オブ・メモリー」は1989年の作曲と記されています。4つの楽章からなる20分ほどの曲です。全体的には無調的ですが、第1楽章の途中で、」メンデルスゾーンの「弦楽四重奏曲第2番イ短調作品13」の第3楽章のインテルメッツォが、ほぼ原曲どおりに現れます。他の3つの楽章もこの「インテルメッツォ」をもとにして作曲されており、一種の変奏曲のようになっています。ロマン派の音楽と現代的な無調の音楽とが入り混じったような曲になっています。


ソナタ・ロマンティカ ~ポンセの大曲

最後はマヌエル・ポンセの「ソナタ・ロマンティカ」です。シューベルトへのオマージュとなっていますが、特にシューベルトの作品からの引用などはないようです(多分?)。4つの楽章からなり、第1楽章はショット社のセゴヴィア版では「アレグロ・モデラート」となっていますが、このCDではとなっていて、ポンセ自身の指定はこちらのようです。ディラの演奏は、まさに「Allegro non troppo,semplice」と言った感じのテンポで演奏していて、ロマン派の音楽の雰囲気が十分に醸し出されています。

 ギターという楽器はピアノなどと違い、同じ音でも弦やポジション、セーハなどの押さえ方などで音の出かたが変ってしまい、単純に同じ音量や音質で弾こうと思ってもなかなか出来ない楽器です。私などはいつもそのことで苦闘しているわけですが、このディラの演奏を聴いているとそうしたことが全く感じられず、当然のごとくそれぞれの音は必要な音量、音質で鳴っていて、あらためて技術の高さに驚かされます。


長調と短調の間をゆらゆらと揺れ動く

 第2楽章は「アンダンテ」=セゴヴィア版では「Andante espressivo」 でゆっくり歌う感じの曲ですが、長調と短調(曲全体はホ長調)が揺れ動くように交錯する感じです。それは他の楽章にも共通しますが、シューベルトの音楽からのインスピレーションなのでしょう。

 第3楽章は「モーメント・ミュージック:ヴィーヴォ」=セゴヴィア版では「Allegretto vivo」 となっていて、シューベルトの「楽興の時 作品94」に寄せた曲のようです。曲は2拍子の舞曲風に出来ていて、中間部はコラール風になっています。

 終楽章は4拍子で「アレグロ・ノン・トロッポ・エ・セリオーソ」=セゴヴィア版も同じ となっています。行進曲風に始まりますが、アルペジオのパターンが出てきたり、コラール風なったりして、難度の高い曲です。ディラは16分音符のパターンを音の響きを重ね、ピアノのペダルを使用したような感じを出しています。


指の都合など関係なく

 CD全体を聴き終えてみると、このギタリストの演奏技術が高いとか、音色が美しいなどというのは、あえて言うまでもありませんが、楽器や指の都合などに関係なく音楽的に必要な分だけ音が出ているといったように感じました。ギターではなくピアノを聴いているような感じといっても良いかもしれません。


大作曲家に因んだ、ギターのオリジナル作品

 またCD全体としてはメンデルスゾーン、シューベルト、スクリャービンといった直接ギターの作品は書いていない大作曲家に関係のある曲、しかしすべて編曲ではなくオリジナルのギター作品となっていて、そうしたコンセプトがこのCD製作の基本にあるようです。またロマン派の音楽と現代音楽の融合といったこともあるかも知れません。

新進演奏家 005


フェルナンド・ソル : 第5幻想曲 Op.16
ジャック・イベール : アリエッタ、フランセーズ
フランシス・プーランク : サラバンド
モーリス・オアナ : ティエント
ラウタヴァーラ : パルティータ
ヴィラ・ロボス : 練習曲第7番、第12番
フランスイスコ・タレガ : ベニスの謝肉祭


 Rafael Aguirre Minarro 2007年タレガ国際ギター・コンクール(ベニシカム)優勝

 今回の紹介は2008年4月に録音された、スペインのギタリスト、ラファエル・アギーレ・ミニャーロのCDです。ミニャーロは1984年、マラガの生まれという、生粋のスペイン人のようです。2007年にタレガ国際ギター・コンクール優勝ということですが、この「タレガ国際ギター・コンクール」というのは複数あるようで、この新進演奏家シリーズでは、スペインのバレンシア地方のベニシカムという都市で行われる同コンクールの優勝者の演奏を録音しています。


世界の3大コンクール?

 このシリーズではイタリアで行われる ミハエル・ピッタルーガ国際ギター・コンクール、アメリカで行われる GHAギター・コンクール、そしてこのスペインのベニシカムで行われる タレガ国際ギター・コンクール の3つのコンクールでの優勝者が演奏者として採用されています。この3つのコンクールが現在の世界での3大コンクールなのでしょうか、すくなくともナクソスではそう考えているようです。とすれば最近これらのコンクールで日本人、あるいは日本でギターを勉強したギタリストが優勝していないのは若干残念なことかも。



スペインの香り漂う美しい音

 このCDはスペインのギタリストらしく、あるいはタレガ国際ギター・コンクールの優勝者にふさわしく、最初と最後にスペインが生んだの二人の偉大なギタリスト、フェルナンド・ソルとフランシスコ・タレガの作品を据えています。このギタリストの音質は明るく、美しいもので、確かにスペインな香りがします。

 最初のソルの作品では和音の変化に反応して、音色も変化させています。また決して濃厚にではありませが、メロディはよく歌わせ、繊細で、レヴェルの高いフレージングと言えます。難度の高い部分でも音色やバランスなどを失うことなく、美しく演奏しています。



イベール、プーランク、オアナ

 ジャック・イベールはフランスの作曲家で、ギター関係では「フルートとギターのための間奏曲」が知られています。他にあまり知られてはいませんが、上記のギター・ソロのための「アリエッタ」と「フランセーズ」があるとのことです。「アリエッタ」は曲名どおり、静かな歌ですが、「フランセーズ」のほうはどちらかと言えばスペイン的な感じがします。

 プーランクもフランスの作曲家で、この「サラバンド」は比較的よく知られ、短い曲ですがしっとりとした美しい曲です。ギターの6本の開放弦の音からインスピレーションを得た曲のようで、時折その開放弦の音が現れます。

 モーリス・オアナはスペインの作曲家で、「スペインのファオリア」を題材にした曲ですが、鋭い不協和音の目立つ曲です。この曲も現代的なギター曲としては比較的知られています。



フィンランドの作曲家、ラウタヴァーラ

 E.Rautavaaraは1928年生まれのフィンランドの作曲家で、この「パルテータ」は3つの短い曲からなり、合わせても3分余りの曲です。1曲目はアルペジオの曲、2曲目は歌、3曲目は変拍子による舞曲になっています。



ヴィラロボスの練習曲第7、12番

 ヴィラ・ロボスの「12の練習曲集」から特に華やかな「第7番」と「第12番」を弾いています。「第7番」はスケールを前述のように明るく、クリヤーな音で弾いており、中間部のアルペジオの部分では旋律をよく歌わせています。「第12番」はかなり速めのテンポで弾いていますが、「anime」の指示からすれば適切なテンポともいえるでしょう。速めのテンポで弾いていても、よくあるような響きの混濁などはなく、すっきりとした演奏になっています。



ホアキン・クレルチの作品

 ホアキン・クレルチはキューバ出身のギタリストで、80年代にパリ国際ギター・コンクールで優勝し、その時の録音をFM放送で聴いたことがあります。デ・ラ・マーサの「ギター賛歌」、自編のドビュッシーの「アラベスク」などを聴いた記憶があります。現在では演奏の他、作曲家としても知られているようで、ミニャーロの師でもあるようです。

 「Sentimiento」は曲名どおり静かな曲ですが、「ソ-ラ-レ♭-ド、 ソ-ラ-レ♭-シ♭」の音列をもとに曲が出来ています。「Yemaya」はヨルバ族の神ということですが、ヨルバ族はナイジェリアなどに多い民族で、キューバにはこのヨルバ族を先祖に持つ人が多いそうです。曲は弦を擦る音やフレットのないところを押さえて弾く奏法などが用いられています。「Estudio escalas」はスケールの練習曲ですが、ヴィラ・ロボスの練習曲第7番を基にしています。もちろん前のヴィラ・ロボスのオリジナルとの一連の流れになっているのでしょう。



”しめ” はタレガのベニスの謝肉祭

 最後にタレガの「ベニスの謝肉祭」が演奏されています。テンポはやや速めで、イントロなどはルバートを積極的に行い、ソルの作品との違いを際立たせています。ヴィルトーゾ的な演奏と言えますが、乱暴な感じはなく、すっきりとまとまっています。
   新進演奏家 004


シューベルト(メルツ編) : 涙の賛美
メルツ : カプリッチョ、タランテラ(吟遊詩人の調べより)
      エリジー、 ハンガリー幻想曲
バッハ : 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番
コシュキン : ギターのためのソナタ


Gabriel Blanco フランス生まれ、2008年GFA優勝

 今回は2009年の1月に録音されたガブリエル・ビアンコのCDです。ビアンコは上記のとおり2008年にGFA(Guitar Foundaition of America)で優勝しています。15歳でコンサート活動を開始し、20歳でパリ・コンセルバトワールを卒業と書いてあります。生年などは書いていないので年齢などはわかりませんが、写真などからすれば20代でしょうか。

 メルツの作品で始まりますが、ビアンコの使用している楽器(グレッグ・スモールマン)は低高音ともよく響く美しい音です。確かにクリヤーによく鳴りますが、よく鳴る分だけ柔軟性、あるいは微妙なニュアンスが感じ取りにくい部分もあるかも知れません。



ルバートは音楽的要求に従って

 「エレジー」はアルペジオを奏しながら細かい音符で書かれたメロディを歌わせるという、かなり難しい曲です。そのメロディ音価を正しく弾き分けると言うことだけでも難しいのですが、メロディの音をアルペジオの中からひき立たせ、さらに歌わせるなどというこは思っている以上に難しいことです。このような曲を、指の都合とは無関係に、ただ音楽の要求する音質や音量で弾くということは、本当に高い技術を持ったギタリストしか出来ないことでしょう。

 この「エレジー」は、曲の性格上、テンポ・ルバートを多用しながら演奏していますが、細かい音符については逆に正確な音価を守って演奏しているようです。当然のことかも知れませんが、ルバートは音楽の要求に従って行っているということなのでしょう。

 「ハンガリー幻想曲」のチャルダッシュの部分は普通イン・テンポで演奏されるところですが、ここも柔軟なテンポで演奏しています。



無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番

 バッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番」は「アダージョ」、「フーガ」、「ラルゴ」、「アレグロ・アッサイ」の4つの楽章からなります。バッハの組曲などの中でも、最近のギタリストにはこれらの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」は人気が高いようです。

 この曲は原曲はハ長調で、ここでもそのハ長調で演奏しています。バッハのヴァイオリンの曲をギターで弾く場合は、一般に移調したり、低音などを付け加えたりしますが、この曲の場合は原曲にすでに和音がかなり付けられており、また調的にもギターで弾きやすいものになっているので、多くのギタリストは特に編曲などはせず、ヴァイオリンの譜面をそのまま演奏しています。このビアンコの演奏もそのように演奏しているようです。



広いエリアで勝負する

 最初の「アダージョ」は全曲ほとんど付点音符の反復によるもので、「アダージョ」の指定のわりには、やや速めのテンポで弾くギタリストが多い中、ビアンコは指示通りとも言える、遅めのテンポで演奏しています。部分、部分には特に表情などは付けていませんが、和声的な流れに従いピアニッシモからフォルテまでクレシェンドするなど、大きな流れで音楽を表現しています。

 サッカーに例えれば、華麗な足技とかショート・パスを繋ぐサッカーではなく、ロング・パスによるサイド・チェンジでピッチを広く利用するサッカーといったところでしょうか・・・・  楽譜にないことはあまりしていないのですが、最後の属和音をトリルで装飾しているのはなかなか効果的、フーガへの期待感が強まります。



長大なフーガ

 フーガは354小節にわたる長大なもので、おそらくギターで演奏するバッハのフーガの中では最も長い曲だと思います。4つの対位法的な部分と3つの挿入句からなりますが、それぞれが充実したものです。3つ目の対位法的な部分では主題が反転されます。各声部の流れがクリヤーに聴こえるなどということは、このシリーズのギタリストたちには当たり前のことかも。



本当はギターの曲では?

 前述のとおりヴァイオリンの譜面をそのままギターで弾いている感じなのですが、その楽譜を見ながら聴いていると、この曲元々ギターのために書かれた曲なのではと思うほど自然です。これを基本的には単旋律の楽器であるヴァイオリンに弾かせるほうがずっと無理があるのではと感じます。特にこのフーガなど、鍵盤楽器では音が少な過ぎ、ヴァイオリンでは音が多すぎ、結局ギターしかないのでは。当時ならリュートということになるのでしょうが、でもやはりギターかな・・・・



全曲を通じて適正なテンポ

 「ラルゴ」はいわゆる「癒し系」の曲というところですが、テレビCMでも聴こえてくる曲です。こちらも各声部をクリヤーに美しく弾いていますが、欲をいえばもう少し柔軟性とか、”色気”があっても・・・・

 終曲の「アレグロ・アッサイ」は、指周りに自信のあるギタリストだったら、当然のごとくかなりのテンポで弾くところなのでしょうが、ここでは適正なテンポが守られていて、音楽を損なわれることはありません。適正なテンポというのは、このソナタ全体に言えることです。



アッシャー・ワルツで知られた

 最後はニキタ・コシュキンの「ギターのためのソナタ」ですが、コシュキンは「アッシャー・ワルツ」とか「王子のおもちゃ」などで知られるロシアの作曲家です。この曲は「ソナタ」となっているだけに「アッシャー・ワルツ」などよりはシリアスな曲ですが、現代音楽としては聴きやすい曲でしょう。

 第1楽章は「ファーファ#-ソ#ーソーシ♭」といった5つの音を主要なモチーフにしているようですが、後半には「シ」が連打され、この「シ」がこの楽章の中で重要な音になっているのでしょう。

 第2楽章は「アダージョ・モルトー」となっていますが、短い音符で書かれているのか、あまり遅い楽章と言った感じではなく、一定のスピードで進んでゆく感じです。この楽章の後半では、「シ」の変わりに「ラ」が連打されます。

 第3楽章は無窮動で舞曲的(2拍子?)ですが、中間部にはハーモニックスで美しく奏でる部分があります。後半では第1楽章のモチーフも再現されますが、連打する音も再び「シ」に戻っています。最後もそのモチーフで閉めています。

 楽器に関しては、前述のとおりメルツの曲では若干柔軟性を欠く向きも感じられましたが、この曲では輪郭のはっきりしたこの楽器がよく合うようです。

 
 
     新進演奏家 003


ポンセ : サナタ第3番
タンスマン : スクリャーヴィンの主題による変奏曲
ポンセ : 南のソナチネ
ブローウェル : ジャンゴ・ラインハルトの主題による変奏曲
ホセ : ソナタ



Irina Kulikova ~2008年ミハエル・ピッタルーガ・ギター・コンクール優勝

 新進演奏家シリーズの3回目は2009年の4月に録音された、イリーナ・クリコヴァのリサイタル盤です、イリーナ・クリコヴァは2008年、ミハエル・ピッタルーガ国際ギター・コンクール優勝しています。年齢や生まれた国などに関しては書かれていませんが、名前と、モスクワとザルツブルグで音楽を学んだということからすればロシア出身と思われます。また写真などからすれば、現在20代の女性でしょうか。

 セルジオ・アサドやデビット・ラッセル、マヌエル・バルエコなど名だたるギタリストに師事していますが、最初の音楽の手ほどきは、チェリストでもある母からとのことです。


ふくよかな音でよく歌う

 このCDの曲目は、上記のように3つのソナタと2つの変奏曲で、すべて20世紀の作品です。最初の「ソナタ第3番」を聴くと、とても”ふっくらとした”音。柔軟性のある、豊かで美しい音です。テンポは中庸でたいへんよく歌う感じです。漠然と聴くとイン・テンポのようですが、よく聴くとテンポや音量を微妙にコントロールして歌う感じをよく出しています。 

 また第3楽章の冒頭の付点音符も絶妙のタイミングで弾いていて、活き活きとしたリズムになっています。音色も多彩で、新進ギタリストというより、完成された”大人”の演奏といった感じがします。伝統的な音楽語法をしっかりと学び、身に付けたギタリストと言えるでしょう。


しみじみと耳を傾けられる

 「スクリャービンの主題による変奏曲」は神秘的な作品を書いたロシアの作曲家、スクリャービンのピアノのための前奏曲から主題をとったもので、1972年の作曲だそうですが、いわゆる現代音楽的ではなく、古典的、あるいはロマン派的な感じもあります。決して派手で目立つ感じの曲ではありませんが、クリコヴァは冒頭の単旋律なども美しく歌わせ、このギタリストにはよく合っている曲なのでしょう。しみじみと耳を傾けることの出きる曲でしょうか。


ホセのソナタもすばらしいが

 アントニオ・ホセのソナタも上述のとおり、巧みなテンポ・コントロールと、美しく多彩な音色で演奏していて、たいへんすばらしいものなのですが、前に聴いたラルースの演奏の印象が強烈だったので、若干損をしたかも。いずれにしもこのイリーナ・クリコヴァは第一線級のギタリストとして今後活躍してゆくことは間違いないでしょう。
あけましておめでとうございます。

 今年は2011年ということで、21世紀になってからもう10年が経つことになりますね。ちょっと前までは「21世紀」といってもあまりピンとこなかったのですが、多少実感が湧いてきたところでしょうか。

 私の子供の頃、特に小学生の頃は、21世紀なんて本当に遠い未来、果たしてそこまで自分が生きているんだろうかなどと思っていました。もし自分が21世紀を迎えることができるとしたら、世の中も自分もずいぶんと変っているんだろうな、などと考えていました。

 それから半世紀、確かにいろいろ変りましたが、今こうしてギター教師などをしている将来の自分はさすがに想像できませんでした。その時の自分に、今の私の様子を教えてあげたら、その時小学生だった私はどう思うのでしょうね。もしかしたらそんな将来などとんでもないと、必死になって勉強するかもしれませんね・・・・・



今年の予定

 さて最近では元日に今年の予定などを書くのが恒例になっていますが、今年も昨年に引き続き、あまり予定がありません。現在決まっている予定としては以下のとおりです。

 

1月29日(土)  日立市の吉田記念館でのコンサートに出演。  
     二重奏(共演 丹朋子) : ミスター・ロンリー、
                   ワルツ風に(アサド)
                   火祭りの踊り(ファリャ)
     独奏  :  さくら変奏曲(横尾)


4月上旬     アコラのジヴェルニー・サロンにゲスト出演。  
      メルツ : 「吟遊詩人の調べ」より4曲
      ハインリッヒ・アルベルト : 「ソナタ」
      ソル  : 「魔笛の主題による変奏曲」など


10月2日(日)  中村ギター教室発表会  ひたちなか市文化会館小ホール



 とりあえずこれだけなのですが、最近若干サボり気味なので、今年は他に2~3回程度コンサートをやろうと思っていますが、具体的にはまだ白紙です。他に5月の3~5日にギター文化館で行われるギター・フェスティヴァルでのシニア・ギター・コンクールの審査をする予定になっています。

 また当ブログでは昨年に引き続き、ナクソスの新進演奏シリーズの紹介をしてゆきます。本当に高いレヴェルのCDばかりです。相変わらずの出不精ですが、がんばってコンサートにも出かけ、そのレポートもしてゆきたいと思います。さらに「ギター上達法」のほうも忘れずにやってゆきます。

 
 それでは今年もよろしくお願いします。