マルタ・アルゲリッチ 子供と魔法 オリビエ・ペラミー著 藤本優子訳 音楽之友社

今年の5月に出版された本
マルタ・アルゲリッチについてはクラシック音楽ファンならよくご存知のピアニストと思います。アルゲリッチは1941年生まれなので、今年70歳になりますが、今現在でも最も人気の高い女流ピアニストの一人と言えるでしょう。この本は今年の5月に出版されたもので、アルゲリッチのこれまでの生涯を書いたものです。アルゲリッチに関しての本は他にも出版されているとは思いますが、読みやすく、よくまとまっていて、また入手もしやすいものと思います。
人並みはずれた技術、記憶力、表現力
「天才」などという言葉を乱用してはいけませんが、このアルゲリッチに関しては他の言葉で表現するのは難しいでしょう。ピアノの演奏技術、記憶力、表現力などは、優れた演奏者たちの中でも、さらに人並みはずれたものがあるでしょう。
10代で受けたブゾーニ・コンクールにおいて、本選課題曲を予選通過が決まってからさらいだしたとか(それでも優勝!)・・・・ 隣の部屋で練習しているのを聴いているだけでその曲を覚えてしまったとか・・・・ 一度覚えたら絶対に忘れないとか・・・・ その天才ぶりを語る逸話は数知れません。
因みにアルゲリッチの記憶力は関しては、音楽だけに限定されたものではなく、人の話や、本の内容なども一度で正確に記憶してしまうそうです。もっとも、一般に優れた音楽家には、当然のごとく優れた記憶力が備わっているようです。私としてはちょっと耳の痛い話ですが、私の場合”優れた”音楽家ではないので、特に気にする必要はないかも。
恋多き
またアルゲリッチは私生活や、性格なども個性的で、数々の恋、及び三度の結婚(それらの結婚はあまり長続きすることはなかったようです)。アルゲリッチは人を好きになりやすい性格だったようですが、孤独がとても嫌いでもあったようです。アルゲリッチの自宅は、玄関の鍵はかけられることなく、絶えず様々な人が出入りしていて、誰でもがその著名人の家主と親しくなることができたようです。
キャンセル魔
アルゲリッチは私生活でも孤独が嫌いでしたが、ステージ上の孤独はもっと嫌いで、1980年半ば頃より独奏は行わなくなりました(録音もほとんどなくなる)。その後のアルゲリッチの演奏活動は、協奏曲や室内楽、ピアノ二重奏などに限定されています。
その人並みはずれたピアニストとしての能力とは裏腹に、ステージをとても怖がり、頻繁にコンサートのキャンセルすることでも知られていました。いつしか音楽関係者の間では、アルゲリッチは気まぐれで、気難し屋といったレッテルが貼られてしまいましたが、それは音楽にたいする厳しい態度の表れとも言われています。常に自分に最上級の演奏内容を課し、それが実現できないことを常に恐れていたようです。
一方でファンにとってはそのキャンセル癖も、アルゲリッチの一部として受け入れられていたようです。常にキャンセルの可能性があるからこそ、本当にアルゲリッチの演奏を聴くことが出来た時のファンの感激は、例えることが出来ないほど大きかったのでしょう。アルゲリッチのキャンセル癖は、アルゲリッチのカリスマ性を増大させることはあっても、その人気を減らすことにはならなかったようです。
日本びいき
そんなたいへん奔放なアルゲリッチですが、日本や日本人に関しては若干違った面があるようです。アルゲリッチの性格などからは正反対のように思われる、几帳面な日本人に対してたいへん好感を持ち、1998年より自ら総裁となり別府アルゲリッチ音楽祭を立ち上げています。
これは世界の著名な音楽家や地元の音楽家たちによる音楽祭ですが、発足以来毎年必ず行なわれ、ここでは「キャンセル魔」は完全に返上しています。また長時間にわたる「マラソン・コンサート」も行い、アルゲリッチはいろいろな人と共演するために頻繁にステージに登場しています。また地元の合唱団の伴奏なども行なっており、本来のアルゲリッチは、気さくで音楽好きであることが窺われます。
震災チャリティのCD
また今年の震災については、とても心を痛め、5月に東京の墨田トリフォニー・ホールで行なわれた協奏曲のコンサートのライブのCDを震災チャリティとして発売しています。曲はシューマンとショパンの第1番の協奏曲で、入手しやすいCDですので皆さんもぜひ取り寄せてみて下さい。私はまだ聴いていませんが、名演であることは間違いないでしょう。
のだめのモデル?
アルゲリッチの後の性格や演奏技術を形成することになる幼少時代のことについても、この本では詳しく書かれています。当ブログで以前「アルゲリッチは”のだめ”(『のだめカンタービレ』の)のモデルでは?」と書いたことがありますが、確かに幼少期のことや、コンクールの逸話などには若干の共通点があります。しかしこの本を読んでみると、現実のアルゲリッチに関しての方がずっと極端で、むしろ「のだめカンタービレ」のほうが控えめになっています。
コミックよりもリアリティがない?
おそらく「のだめ」のほうでは、あまり話を極端にするとリアリティがなくなるので”そこそこ”に話をまとめたのだろうと思います。つまり現存のピアニスト、マルタ・アリゲリッチは、コミックの主人公「のだめ」よりずっとリアリティがないと言えるのでしょう。
次回以降アルゲリッチのCDを紹介
あまり適切にこの本の内容を紹介出来ませんでしたが、気になった方はぜひ読んでみてください。なかなか面白いと思います。なおこの機会に次回以降、アルゲリッチのいくつかのCDも紹介したいと思います。いずれも名盤中の名盤と言えるでしょう。

今年の5月に出版された本
マルタ・アルゲリッチについてはクラシック音楽ファンならよくご存知のピアニストと思います。アルゲリッチは1941年生まれなので、今年70歳になりますが、今現在でも最も人気の高い女流ピアニストの一人と言えるでしょう。この本は今年の5月に出版されたもので、アルゲリッチのこれまでの生涯を書いたものです。アルゲリッチに関しての本は他にも出版されているとは思いますが、読みやすく、よくまとまっていて、また入手もしやすいものと思います。
人並みはずれた技術、記憶力、表現力
「天才」などという言葉を乱用してはいけませんが、このアルゲリッチに関しては他の言葉で表現するのは難しいでしょう。ピアノの演奏技術、記憶力、表現力などは、優れた演奏者たちの中でも、さらに人並みはずれたものがあるでしょう。
10代で受けたブゾーニ・コンクールにおいて、本選課題曲を予選通過が決まってからさらいだしたとか(それでも優勝!)・・・・ 隣の部屋で練習しているのを聴いているだけでその曲を覚えてしまったとか・・・・ 一度覚えたら絶対に忘れないとか・・・・ その天才ぶりを語る逸話は数知れません。
因みにアルゲリッチの記憶力は関しては、音楽だけに限定されたものではなく、人の話や、本の内容なども一度で正確に記憶してしまうそうです。もっとも、一般に優れた音楽家には、当然のごとく優れた記憶力が備わっているようです。私としてはちょっと耳の痛い話ですが、私の場合”優れた”音楽家ではないので、特に気にする必要はないかも。
恋多き
またアルゲリッチは私生活や、性格なども個性的で、数々の恋、及び三度の結婚(それらの結婚はあまり長続きすることはなかったようです)。アルゲリッチは人を好きになりやすい性格だったようですが、孤独がとても嫌いでもあったようです。アルゲリッチの自宅は、玄関の鍵はかけられることなく、絶えず様々な人が出入りしていて、誰でもがその著名人の家主と親しくなることができたようです。
キャンセル魔
アルゲリッチは私生活でも孤独が嫌いでしたが、ステージ上の孤独はもっと嫌いで、1980年半ば頃より独奏は行わなくなりました(録音もほとんどなくなる)。その後のアルゲリッチの演奏活動は、協奏曲や室内楽、ピアノ二重奏などに限定されています。
その人並みはずれたピアニストとしての能力とは裏腹に、ステージをとても怖がり、頻繁にコンサートのキャンセルすることでも知られていました。いつしか音楽関係者の間では、アルゲリッチは気まぐれで、気難し屋といったレッテルが貼られてしまいましたが、それは音楽にたいする厳しい態度の表れとも言われています。常に自分に最上級の演奏内容を課し、それが実現できないことを常に恐れていたようです。
一方でファンにとってはそのキャンセル癖も、アルゲリッチの一部として受け入れられていたようです。常にキャンセルの可能性があるからこそ、本当にアルゲリッチの演奏を聴くことが出来た時のファンの感激は、例えることが出来ないほど大きかったのでしょう。アルゲリッチのキャンセル癖は、アルゲリッチのカリスマ性を増大させることはあっても、その人気を減らすことにはならなかったようです。
日本びいき
そんなたいへん奔放なアルゲリッチですが、日本や日本人に関しては若干違った面があるようです。アルゲリッチの性格などからは正反対のように思われる、几帳面な日本人に対してたいへん好感を持ち、1998年より自ら総裁となり別府アルゲリッチ音楽祭を立ち上げています。
これは世界の著名な音楽家や地元の音楽家たちによる音楽祭ですが、発足以来毎年必ず行なわれ、ここでは「キャンセル魔」は完全に返上しています。また長時間にわたる「マラソン・コンサート」も行い、アルゲリッチはいろいろな人と共演するために頻繁にステージに登場しています。また地元の合唱団の伴奏なども行なっており、本来のアルゲリッチは、気さくで音楽好きであることが窺われます。
震災チャリティのCD
また今年の震災については、とても心を痛め、5月に東京の墨田トリフォニー・ホールで行なわれた協奏曲のコンサートのライブのCDを震災チャリティとして発売しています。曲はシューマンとショパンの第1番の協奏曲で、入手しやすいCDですので皆さんもぜひ取り寄せてみて下さい。私はまだ聴いていませんが、名演であることは間違いないでしょう。
のだめのモデル?
アルゲリッチの後の性格や演奏技術を形成することになる幼少時代のことについても、この本では詳しく書かれています。当ブログで以前「アルゲリッチは”のだめ”(『のだめカンタービレ』の)のモデルでは?」と書いたことがありますが、確かに幼少期のことや、コンクールの逸話などには若干の共通点があります。しかしこの本を読んでみると、現実のアルゲリッチに関しての方がずっと極端で、むしろ「のだめカンタービレ」のほうが控えめになっています。
コミックよりもリアリティがない?
おそらく「のだめ」のほうでは、あまり話を極端にするとリアリティがなくなるので”そこそこ”に話をまとめたのだろうと思います。つまり現存のピアニスト、マルタ・アリゲリッチは、コミックの主人公「のだめ」よりずっとリアリティがないと言えるのでしょう。
次回以降アルゲリッチのCDを紹介
あまり適切にこの本の内容を紹介出来ませんでしたが、気になった方はぜひ読んでみてください。なかなか面白いと思います。なおこの機会に次回以降、アルゲリッチのいくつかのCDも紹介したいと思います。いずれも名盤中の名盤と言えるでしょう。
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