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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

本日はありがとうございました


 本日ギター文化館で中村俊三ギター・コンサートを聴きに来ていただいた方々、本当にありがとうございました。同じ内容で、13日のアコラでもコンサートを行ったのでどれくらいの人に来ていただけるのか心配だったのですが。約50人ほどの方々に来ていただきました。

 この会場(ギター文化館)では著名なギタリストなどの本格的な内容のコンサートが多いと思いますが、時にはこのような親しみやすいコンサートもよいかなと思いました。気楽に楽しんでいただけたとすれば幸いです。

 今日はよいお天気でしたが、朝方など少し寒く、若干心配したのですが(寒さには弱いので)、会場内では特に寒くもなく、ギターを弾くにはなかなかよい環境でした。

 この会場ではいつもチューニングに苦労するのですが、まあなんとか大きく狂うこともはかったかなと思います(でも「トップ・オブ・ザ・ワールド」あたりはちょっとヤバかったかな)。よく反響するので確かにチューニングは難しいところかも知れません。



本日のアンコール曲は

二つのワルツ作品64(フランシス・クレンジャンス)
タンゴ・アン・スカイ(ローラン・ディアンス)
ルパンⅢ世のテーマ(大野雄二 ~南澤大介編) 

の3曲でした。フランス繋がりということで ・・・・相当むりやり?
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明日(26日)はギター文化館でコンサート


 13日のアコラに続き、明日11月26日石岡市ギター文化館でコンサートを行います。どれくらいの人にきてもらえるのかはわかりませんが、間違っても会場に入りきれなくなることはありません。当日券(2000円)でも入れますので、気の向いた方はぜひ覗いてみて下さい。


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 コンサートの内容はポピュラー&クラシックの親しみやすいものになっています。明日はお天気のほうは良さそうですが、少し寒くなりそうですね。


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 開場は13:30、開演は14:00です。終演は16:00頃の予定です。
1位 = 藤元高輝

 おそらく、もうすでにコンクールの結果は皆さんもご存知と思いますが、昨日は審査結果を聞かないでレポートしましたので、一応結果についても書いておきます。以下のとおりです。


第1位 藤元高輝
第2位 Florian Larousse
第3位 小暮浩史
第4位 Andrey Parfinovich
第5位 Oegmundur Ahor Johannesson



ラルース2位、でも評価は高い

 藤元君の1位は、昨日も書いたとおり順当かなと思います。フローリアン・ラルースについては大きなミスをしてしまったので、もっと下位になった可能性もありますが、その音楽的能力を買われての2位ということなのでしょう。会場ロビーでの会話や、ネットの書き込みなどでもラルースの評価はかなり高いようで、「審査員はどう思うかわからないが、オレはラルースが1番!」と言う人も結構いました。

 2位になったとは言え、ラルースが魅力的なギタリストであることには変りはなく、今回のコンクールでそれを確認出来たことは大きいと思います。また私以外のギター・ファンやギタリストたちのも評価もかなり高いということもよくわかりました。ただ、来年日本全国ツアーが実現されないのはちょっと残念です。



自らの音楽観を強固に持っている

 一方藤元君について言えば「表現力はラルースに比べるとイマイチ」といった意見もあるようですが、しかしラルースと藤元君は全く違った傾向のギタリストで比較は難しい。藤元君の演奏は実質上初めて聴いたわけですが、一度聴いただけでこのギタリストの特徴などがたいへんよくわかりました。ということは藤元君は自分の音楽観などをすでに強固に持っているとも言えるのではないかと思います。



小暮さん3位健闘

 3~5位の結果については私の中でもよくわからないくらいで、おそらくどのような結果もありえたのかなと思います。それでも小暮さんの3位はやはり順当かなと思います。小暮さんの場合、課題曲が特によかったと思います。またギター音としてはラルースに次ぐ美しい音だったのではと思います。

 4位の Parfinovich はアグアードとロドリーゴが評価されたのでしょう。5位の Johannesson も十分に3位もあり得た演奏だったと思いますが、全体に弱音傾向で、審査員にも聴衆にもアピール不足になってしまったのでしょう。でも武満はなかなかよかったと思います。


海外のコンクール同じように

 しばらくぶりに東京国際ギターコンクールを聴いた訳ですが、かつては本選自由曲は本当に「自由」で何を弾いてもよかったのですが、最近だは3つ時代の作品をそれぞれ弾かなければならなくなったようです。また時間も長くなりました。

 「3つの時代から選ぶ」と言うのは海外のコンクールの影響と思いますが、このことにより審査する方としてはそれぞれのギタリストを多方面から見ることが出来、より正しい審査が出来るようになったのは間違いないと思います。しかし出場者からすれば、場合によってあまり得意でない曲を選んでしまうこともあり、選曲にはいっそう悩まされることになりそうですね。

 また海外のコンクールは1週間近くかけて行なうことが多く、その点この東京国際は2日間のみ(他の日本国内のほとんどのコンクールはまる1日で予選と本選を行なってしまう)。東京国際も3~4日くらいかけられるようなればよいのでしょうが、”予算関係上”ということなのでしょうね。
久々の東京国際、ラルースが出るというので

 今日(11月20日)、大手町(東京都中央区)日経ホールで行なわれた第54回東京国際ギター・コンクールを聴きに行きました。このところずっと、この東京国際をはじめ、東京で行なわれるコンクールには行っていませんでしたが、一週間ほど前、当ブログの「ナクソス新進演奏家シリーズ」で紹介し、なお且つ私が勝手にベスト1に選んだフランスの若手ギタリストのフローリアン・ラルースが出場するというので、急遽行くことにしました。

 予選通過者を確認しないで出かけてしまったので、ラルースが予選通過したかどうかは受付でプログラムを受け取るまでわからなかったのですが、3番目の得点で通過していました。無駄足にならなくてよかったです。



結果を聞かずに帰ってしまいまったが

 本選審査は課題曲の「エキノクス(武満徹)」の他、3つの時代(ルネサンス、バロック期の作品、 1750~1920年の作品、 1920年以降の作品)の作品を20~30分の範囲で演奏するといったもので、一人当たりの演奏時間は40分弱といったところです。最近は演奏時間も長くなったようですね、それを6人が演奏するわけですから、時間的に言えば通常のリサイタル3つ分くらいに当たります。

 審査結果を聞かずに帰ってしまったので、今現在、つまりこれを書いている時点ではどういった結果になったのかわかリません。もっともインターネットで調べればどこかに結果が出ているかも知れませんが、この際その結果を見ずにレポートしてしまいましょう。



Andrey Parfinovicch(Russia) ちょっと軽め? ロドリーゴを好演

 さて、最初の演奏者はAndrey Parfinovicch(Russia)で、バッハの「プレリュードとアレグロ BWV998」から始まりました。「プレリュード」はやや軽めだが、清楚な音で、バスの動きや和声にも十分気を配った演奏です。後半の一部分をかなりテンポを速めて弾いていましたが、ここは装飾的な部分と考えたのでしょうか。「アレグロ」は速めのテンポで演奏していて、ミスなどはあまりありませんが、音色のコントロールまでは気を配れていなかったようです。

 次にアグアードの「序奏とロンド作品2-3」を演奏しました。音の細さが若干気になりましたが、低音のメロディはよく歌っていました。全体に強弱の変化はかなりあり、音色の変化も多少あるのですが、全曲ほぼイン・テンポで、テンポやタイミングのコントロールで音楽を作ってゆくタイプではなさそうです。

 課題曲になっている武満徹の「エキノクス」は、武満独特の音楽世界、音響世界でいろいろな意味で難しい曲だと思います。Parfinovicchの演奏は一音一音はクリヤーに弾いているのですが、曲のイメージがイマイチ伝わりにくい演奏だったかなと思いました。Parfinovicchの「エキノクス」については他のギタリストの演奏聴いてからでないと判断出来ないかなと思いました。

 最後に演奏されたロドリーゴの「ソナタ・ジョコーサ」はそれまでの曲とだいぶ違った印象です。リズムにも柔軟性があり、また音色も変化に富んでいます。何といっても楽しそうに弾いています。今日演奏した中では最もこのギタリストと相性のよい曲だと思いました。



小暮浩史 ~エレガンスな演奏

 2番目は昨年のスペイン・ギター・コンクールでも1位をとっている小暮浩史さんです。「エキノクス」から演奏を始めましたが、前のParfinovicchに比べると”粘り気”のある音色で、若干不明瞭な音はあっても、音楽全体としてはむしろわかりやすい感じです。奥行きも感じられ、いっそう武満らしい音楽になっています。

 ムダラの「パヴァーヌとガリヤルド」はたいへんエレガンスな演奏で、カポタスト(2フレット)使用にもかかわらず柔らかく美しい音です。パガニーニの二つのソナタ(Op.3-1、3-6)では一転して明るく溌剌とした音で、またかなり速めのテンポ演奏していました。欲を言えば、パガニーニらしい”何か”が付け加わればさらによかったかなと思いました。

 次にブローウェルの「円柱の都市」が演奏されました。音色や音量の対比が際立つ、ブローウェルの作品らしい演奏でした。最後はピアソラの「チキリン・デ・バチン」でしっとりと演奏を終えました。



Oegmundur Thor Johannesson(Iceland) 余韻に酔いしれ?

 休憩を挟んで、3番目はOegmundur Thor Johannesson(Iceland)です。「エキノクス」から演奏を始めました。今日3回目の武満ですが、こうして聴いてみると武満の音楽は独自性のたいへん強いものだと感じました。武満の音楽は”響き”と言うものに力点が置かれているように思いますが、その響きは西洋音楽の”和声”とは全く違ったものに感じられます。和声の場合は基本的に「旋律の重なり」で、一つのところに留まることはなく、常に流れてゆくものなのでしょう。つまり西洋音楽的には音楽の主体は旋律であって、和声はその副産物的に出現するものかも知れません。しかし武満の”響き”は、それそのものが音楽の主体で、進んでゆくことの方が副次的なものかも知れません。

 話がそれてしまいましたが”余韻の楽器”と言われるギターには、武満の音楽がたいへんよく合う気がします。Johannessonの武満の演奏も、そのギターの響きをたいへん重じた演奏で、確かに「幽玄の世界」といったものを感じさせる演奏でした。

 次のフランチェスコ・ダ・ミラノの二つのファンタジアは、かなりの弱音で始められました。こちらは基本的に「線的」な音楽だと思うのですが、むしろ響きの方を重要視した感じに聴こえます。ヴェルトミュラーの「ソナタ作品17より」はナクソス・シリーズで確かクリヴォカピックも演奏していた曲だと思いますが、Johannessonの演奏には、やはり弱音を好む傾向があるようです。明暗の対比などはよく出ています。

 ゲルハルトの「ファンタジア」は同じ現代物でも、こちらは力強く(アポヤンド奏法使用?)、また対比もくっきりと付けながら演奏していました。これまでの演奏傾向からして、このギタリストがダンジェロの「二つのリデイア調の歌」(ラルースの弾く)を演奏曲目に選ぶのは納得がゆきます。確かにこのギタリストは余韻をたいへん重んじる傾向がるのだと思います。たいへん美しい演奏ですが、何かもう一つ何かが足りない・・・・ やはり次のラルースの演奏を聴いてみないと何とも言えないでしょう。最後の和音を弾いた後立ち上がるまでかなりの間(10~20秒くらい)をとっていました。



Florian Larousse ~ちょっと譜忘れ? でも共感度は高い 日本ツアーを逃したかも

 さて、いよいよフローリアン・ラルースの登場です。金髪で、遠めに見る感じでは、車椅子の天才物理学者、スティーブン・ホーキング博士に似ている感じもします。ブリッジを取り巻くように楕円形の縁取り様なものがある珍しいボディのギターを手にしています。ダウランドの「ファーウェル」から演奏を始めましたが、やはりたいへん美しい音です。CDでは少し硬質な感じもありましたが、こうして生で聴いてみると柔らかくてたいへん美しい音です。そういえばこの会場(日経ホール)はわりとクセの少ないホールのようです。

 しばらく聴き入っていると、おや? 様子がおかしい、どうやら譜忘れをしてしまったようです。また最初に戻ってしまいました。その後は問題なく弾いていましたが、やはり動揺はあったでしょう。次はナクソスのCDのも入れている「二つのリディア調の歌」で、おそらく得意曲でしょう。やはり前のJohannessonの演奏とはイメージの膨らみも奥行きも違うように感じます。

 CDの紹介の時には「来世から聴こえてく音楽」と例えましたが、こうして目の前で聴くと、もっと人間臭いというか、「現世の音楽」といった感じがします。CDでは全体にクールな感じに聴こえるのですが、生ではもっと熱い演奏に聴こえます。よく聴くとヴィヴラートのかけ方が私自身のもとちょっと近い(私を引き合いに出してはいけませんが)感じがします。確かに私には共感度が高いはずです。

 レゴンディの「序奏とカプリース」もたいへんラルースに合う曲だと思います。やはり色気というかセクシーさ(同じ意味だが)が感じられます。カプリースの方はCDに比べるとかなり速く演奏していました。確かに指もよく動いていて、テクニックのあるところは見せているのですが、表現の方はCDに比べ、かえって狭められてしまっているようにも思えます。これも最初の”つまずき”のせいでしょうか。

 ラルースはキャリア的に見れば出場者の中でダントツなのですが、もしかしたら今回は1位を逃してしまったかなとも思えます。1位になれば来年日本でツアーを行なうことになるのですが、実現は難しいかも知れません。しかし改めて、私にとっては、ラルースが好みのギタリストであることを確認出来ました。今回の結果にかかわらず(前述のとおり結果はまだ知らないので)21世紀を代表するギタリストの一人であることには間違いないでしょう。


藤元高輝 ~意思の強そうなギタリスト、バッハを好演 1位かな?

 5番目に演奏予定だったAndres Campanario(spain)は欠場とのことで、最後の演奏者は藤元高輝さんです。藤元さんはまだ10代で、私も小学生の頃その演奏を聴いたことがあります。またテレビにも出演していました。「エキノクス」から演奏を始めましたが、しっかりした演奏ながら、音楽の奥行きとか武満らしさはあまり感じ取れません。

 しかし次のバッハの「アダージョとフーガ BWV1005」になると、”水を得た魚”というか、文字通り”地に足の付いた”演奏といった感じでバッハの音楽をしっかりと構築しています。どうやらこのギタリストは感性よりも知性で音楽に臨むタイプのようです。バッハの音楽のように対位法や和声法でしっかりと裏付けられた音楽には滅法強いようです。もちろん技術も完璧です。

 次にラルースも弾いた「序奏とカプリース」で、たいへん整った演奏です。色香のようなものをこのギタリストに臨むのは見当はずれで、このギタリストはマジシャンのように何もない箱から鳩や花を出すようなことはしないでしょう。

 最後はヘンツェの「王宮の音楽より」でしたが、こちらは音楽そのものにいろいろ変化や対比が付けられていて、武満の音楽よりはずっと弾きやすそうに弾いていました。パーカッションの部分もなかなか面白く聴こえてきました。

 それにしても藤元さんはたいへん意思の強そうなギタリストです。すべての曲でミスらしいミスもなく、自分の指もメンタルも完全にコントロールしているような感じです。しいて言えばマウリツィオ・ポリーニのような音楽家といえるでしょうか。いろいろな意味でラルースとは対極的なギタリストと言えるでしょう。1位は十分にあり得るかな?
 
ありがとうございました

 本日(11月13日ひたちなか市アコラ)私のコンサートに来てくださった方々、本当にありがとうございました。若干都合等でいらっしゃれなかった人もいましたが、関係者も含めて20数名の方に聴いていただき、会場の広さからすると丁度良い感じでしたでしょうか。

 今回のコンサートはポピュラー&クラシックということで、かなりバラエティに富んだ内容でした。その分まとまりを欠く部分もあったと思いますが、来場された方々に多少なりとも楽しめた曲や演奏内容があればよかったかなと思います。

 同じ内容で11月26日に石岡市のギター文化館でもコンサートを行なうわけですが、今回の反省点などを踏まえてさらに微調整して臨みたいと思います。よろしくお願いします。

 なお本日のコンサートとアンコール曲は、フランシス・クレンジャンスの「二つのワルツ作品64」、ローラン・ディアンスの「タンゴ・アン・スカイ」の2曲でした。ありがとうございました。
 私の場合、基本的にあまり楽器にこだわる方でも、また詳しい方でもありませんが、たまには私の使っているいる楽器の話でもしましょう。といってもこのブログを始めた時、「だいたい13」ということでこれまで私が使った楽器についての話をしましたので、2度目ということになります。でも今回はこの「ヘルマン・ハウザーⅢ」にしぼって、一応”写真付き”でやや詳しくお話しましょう。



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    ヘルマン・ハウザーⅢ(ドイツ) 1983年 NO.88



ハウザーⅠ世はセゴヴィアが長年使用した楽器 

 ヘルマン・ハウザーについてはよくご存知の方も多いかも知れませんが、ハウザーⅠ世はアンドレ・セゴヴィアが長く使っていた楽器です。その楽器は現在限られた本数しか残っていなくて、かなり高価な楽器となっています。私の使っている、このハウザーⅢ世はその孫にあたりますが、現在はⅣ世(女性)が活動中とのこと。


迷走時代

 私がこの楽器を買ったのは1988年ですが、1980年代は私にとっては楽器の迷走時代で、ラミレス → ブッフシュタイナー → 10弦(今井博水、ラミレス) → ラミレス(6弦)と2~3年ごとに楽器が変わっていました。

 このハウザーを買う前にも、スペインの楽器(名前が出てこなくなってしまいましたが)を買うつもりで1ヶ月ほど弾いていました。しかしやはりフィットしなくて、そのことを楽器店の方に言うと、「では、ハウザーⅢなど、いかがでしょう」と言われ、予算的に難しいとは思いましたが、「一応、見るだけ」ということで2本ほど持ってきて貰いました。


第一印象はハウザーらしくないハウザー

 ハウザーはどちらかと言えば、やや地味な方(少なくとも当時はそう思っていました)なので、特に好きというわけでもなかったのですが、2本のハウザーのうち、こちらの方はそういったイメージとちょっと違う音。高音がよく鳴るのは、今まで弾いたハウザーとちょっと違う。特に②弦がよく出て、中音域はかなりクリヤー。低音の重厚さはあまりないが、軽くよく鳴る音 ・・・・・・・最初の印象はそんな感じでした。

 これまで見たハウザー(Ⅱ世、Ⅲ世を含め、それほど見たり、弾いたりしたことはないが)とちょっと違うイメージ、そのギャップに上手くはまってしまったのか、あまり迷うことなく購入を決めてしまいました(もちろんその後のことはあまり考えずに)。


当時はそれほど高くなかった

 ハウザーⅢ世といっても、当時はまだⅡ世からⅢ世に代わったばかりで、Ⅲ世の評価はあまり高くなく、またこの楽器はスプルースでなく、ローズウッド使用なので、価格も確か180万円位とされていたと思います(実際に買った価格はもう少し安い)。今はどれくらいするのでしょうか、詳しいことはわかりませんが(ほとんどの専門店で”ASK"となっているので)、400万円台の数字も目にします。少なくとも300万円以下で購入するのは難しいようです。


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ハカランダではなく、ローズウッド系の裏板だが、なかなか面白い木目。あまり見かけない



買った時は真っ白だったが

 1983年製作で1988年に買っていますから5年間ほど別のオーナーの手にあったものと思われますが、私が買った時はほとんど使用された後はなく、未使用品といった感じでした。色もかなり白かったのですが、ガラス戸のギター棚に入れておいたので、何年かすると色だけは”Ⅱ世”のようになりました。



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ちょっと見にくいが、製作が1983年で、シリアル・ナンバーが”88”。買った年が1988年で”縁起”がよさそう。そんなことも即断の後押しに。




解像度が高く、声部の聞き分けがしやすい

 この楽器の最大の特徴と言えば、まず何といっても、音がクリヤーで、解像度が高いと言った点です。特に中音部がクリヤーに出て、あまり音感の良くない私でも内声部が聴き取りやすくなっています。音量は”物凄く”ではないにしても、まあまあ”ある方”と言ってよいでしょう。

 合奏や二重奏などの時の単音も、クリヤーな音質なので遠くに行くほどよく聴こえる感じがします。低音は膨らむような感じとか、重量感はありませんが、明るく、クリヤーなので主旋律を弾く時などはよく音が通ります。


ノイズが出やすく、指向性が強い 

 欠点としては、弾き方にもよりますが、柔らかい音はかなり技術がないとなかなか出せません。音色の変化も若干難しいところもあります。またノイズも出やすく、爪の状態が多少でも悪いと気になって弾けません。

 またかなり指向性が強いようで、表面版が向いている方向には音がよく聴こえるのですが、それ以外の方向にはあまり音が行かないようです。二重奏の時など、どうしても客席に向かって斜めになってしまうので、席によってバランスが狂って聴こえてしまうようです。


相当頑固だが

 そんな気難しく、頑固なところもある楽器ですが、こちらがそれなりの姿勢で臨むと必要な音を、必要な分だけ出してくれる楽器でもあります。また”がんばれば”音色やニュアンスの変化も出せます。弾きこなすのはなかなか難しいではありますが、努力すれば演奏者の要求には応えてくれます。

  
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ドイツ、ライシェル社の糸巻き。 何の変哲もない糸巻きだが、23年間酷使したにもかかわらず、全く磨耗も狂いも生ぜず、今だに回した分だけきっちりと音程が変わる。年数が経てば経つほどその価値がわかる、まさにドイツらしい糸巻き。



創も小学生の頃使っていた

 創が小学生の頃、学生ギター・コンクールに出るために、このハウザーを使っていましたが、どうしても音が硬質になってしまい、当時はまだ良い音がでませんでした。それでも他の楽器より明るく、クリヤーな音が出て、音の”伸び”もよいので、この楽器を使わせていました(その結果小3~中2まで6連続2位)。



その音の美しさを聴くと

 その後創はポール・ジェイコブソン、ホセ・ロマニロスを使いましたが、パリ留学から一時帰国していた時、このハウザーⅢでちょっと弾いていました。その頃の創はリタイヤ直前で、もうあまりギターを弾かなくなっていた頃でしたが、その音は、これまで聴いたことのないようなとても美しい音でした。

 あらためて私と創の天性の違いを感じたと共に、この楽器のすばらしさも実感しました。「そろそろ創もやめ時だな」ということは当時の私も感じていたにせよ、こうした音を聴くそんな言葉はどこかに吹き飛んでしまいました。



多少は丸くなったかも

 この楽器も製作してから28年、私が使い始めてから23年経っています。楽器には経年変化というのがあって、年数が経つと、その音も変わってきます。しかしこれは比較するのが難しい(というか不可能!)ので、どう変ったかということはなかなか難しいことです。もしかしたら楽器の音そのものが変るのではなく、弾く人の印象が変るだけかも知れません。

 基本的にこの楽器の性格などは、最初からそれほどは変っていないのではないかと思いますが、ジェイコブソンとの比較で言えば、かつてより音量の差(ジェイコブソンのほうが音量はある)はなくなってきている感じがします。また音の拡がりも、買った当初よりはある感じがします。多少は丸くなったかも知れません。
アントニオ・ラウロ : マリア・カロリーナ、 アディオス・オクマレ、 ヴェネズエラ風ワルツ第3番

アントニオ・ラウロ(1917~1986)はヴェネズエラのギタリスト兼作曲家で、その作品のほとんどはヴェネズエラ風ワルツの形をとっています。軽快で親しみやすい曲が多いのですが、メロディは意外と悲しい感じのものが多くなっています。


晩年の作

 「マリア・カロリーナ」は”1983年”と楽譜に記されていますので、ラウロの晩年の作のようです。やはりヴェネズエラ風ワルツの形をとっていて、若干憂いを帯びたメロディとなっています。曲名は女性の名前からとっているものと思われますが、イ短調→イ長調→ハ長調と転調してゆき、ラウロの曲としてはやや長めの曲になっています。テンポの指定はありませんが、やはり軽快なテンポで弾く曲なのでしょう。


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マリア・カロリーナ 1983年作曲、1985年出版と記されている



ラウロの編曲

 「アディオス・オクマレ」は1984年に出版された「3つのヴェネズエラの小品」に含まれますが、ラウロのオリジナルではなく”編曲”となっています。原曲については全くわかりませんが、”オクマレ”という人物を追悼する曲かも知れません。「Andante 4分音符=92~100」と、ラウロの曲にしてはやや遅めのテンポの指定ですが、弾いている感じではやはりラウロの作品といった感じです。
 

ラウロの曲の中で最も有名。セゴヴィアも弾いている

 「ヴェネズエラ風ワルツ第3番」は1963年にアリリオ・ディアスにより出版された「4つのヴェネズエラ風ワルツ」に属します。ラウロの作品の中では最も人気が高く、セゴヴィア、ジョン・ウィリアムスなど多くのギタリストにより演奏されています。「Allegro ritomico」と記され、3/4拍子と6/8拍子が交錯するリズムをとっています。ホ短調の曲ですが、中間部はホ長調となりメロディックになります。

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アリリオ・ディアス編 「4つのヴェネズエラ風ワルツ」 1963年出版




アウグスティン・バリオス  : 人形の夢、 蜜蜂、 大聖堂 

 クラシック。ギター・ファンでしたら、このバリオスについては説明不要かも知れません。いわずと知れた20世紀の大ギタリストの一人で、その作品は多くのギタリストにより演奏され、現在だは欠くことの出来ないレパートリーとなっています。パラグアイの出身ですが、正統的に音楽を学び、その作風は基本的にロマン派の音楽と踏襲したものです。またその一方で南米各国の民族舞曲的な作品も多数作曲しています。


バリオスの自演の録音がCDとなっている

 バリオスの演奏は、その一部がSP録音として残されており、現在でもCDとして入手出来ますが、残念ながらその音質はかなり劣るものとなっています。バリオスの生前には楽譜も出版されなかったようで、本格的な出版は1960~70年代くらいからのようです。わが国では1970年代に全音出版からメキシコのギタリスト、ヘスス・ベニーテスにより4冊にわたる作品集が出版され、以後多くのギタリストにより演奏されるようになりました。


バリオスの譜面は一つではない

 現在では国内外で多数のバリオス作品集が出版されていますが、生前には出版されなかったこともあって(少なくともまとまった形では)、異稿がたくさんあり、それの従い現在出版されている譜面もいろいろなものがあります。バリオスの作品を演奏する場合には、その楽譜を選ぶということもたいへん重要なことです。今回のコンサートの場合、「人形の夢」と「大聖堂」はベニーテス編、「蜜蜂」は現代ギター社の鈴木大介編を用いています。

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全音出版 ヘスス・ベニーテス編 バリオス作品集 全4巻
ベニーテスはメキシコのギタリスト。この作品集が出版されるちょっと前、私が20代の頃(1970年代)演奏を聴いたことがある。コンサート終了後のお酒の席にも同席



かわいらしくも、幻想的

 「人形の夢」はワルツ風に書かれた作品で、中間部はハーモニックス奏法を用い、美しく、かつ幻想的な雰囲気も醸しだしています。バリオスの曲の中では平易な曲と言えますが、オクターブ・ハーモニックス(右手のみのハーモニックス)の音をムラなく出すのはそれほど易しいとは言えません。


ギターとハチとの関係

 ギターではこのバリオスの「蜜蜂」をはじめ、プジョールの「熊蜂」とかサグレラスの「蜂雀」 ・・・・・・おっと「蜂雀」は”蜂”ではなく”鳥”だった・・・・ など蜂に関する曲がありますが、これらの曲に共通するのは、無窮動、つまり休むことなく細かい音符が続く作品になっていることでしょう。

 この「蜜蜂」も冒頭の2小節を除くと全曲3連8分音符で出来ています。3部形式で主部は音階的、中間部はアルペジョ的となっています。プジョールの「熊蜂」の方は短2度、つまり半音違いの音を多用し、それによって思わず身をよけたくなるようなブンブンという鋭い羽音を表現しています。

 その点こちらの「蜜蜂」の方は短調ですが、あまり不協和音程は使わず、”マイルド”な響きになっています。やはり「熊蜂」と「蜜蜂」の違い何のでしょうか。因みに「雀蜂」と言う曲は、今のところないようです(誰か作曲しているかも知れませんが)。


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現代ギター社出版 鈴木大介編 バリオス作品集
バリオスの演奏や、いろいろな譜面を参考にして譜面が出来ているようだ。いろいろな選択肢も用意されている。



大聖堂の大伽藍を彷彿させる曲

 「大聖堂」はバリオスの曲の中でも最も有名な曲で、比較的早い時期からいろいろなギタリストにより演奏されていたようです。もともとは2楽章形式の曲(現在の第2.第3楽章)でしたが、最終的に別に作曲された「プレリュード」が付け加えられ、現在のような3楽章形式になりました。

 バリオス自身録音では当初の2楽章の形になっていますが、幸いにもこの「大聖堂」はバリオスが残した録音の中では比較的音質が良く、聴きやすいものになっています(あくまでも比較的にですが)。
 

後から「プレリュード」が加わり、いっそう大きな”大聖堂”となった

 3つの楽章ともギターでは比較的珍しい”ロ短調”をとっていますが、第1楽章の「プレリュード」はカンパネラ奏法的なアルペジョに載せてメロディが歌われます。神秘的な雰囲気も秘め、この「プレリュード」が加わったことにより、いっそう充実した曲になったように思います。

 第2楽章は「Andante rerligioso(敬虔に)」 となっていて、付点音符を多用し、大聖堂への階段を一歩ずつ厳かに登ってゆくような感じがします。

 これまで、静かに、ゆっくりと進んできた曲は第3楽章で一転して動きのある曲となります。「Allegro rerligioso」と記された第3楽章は16分音符による無窮動の曲で、気持ちの高揚を表した曲と言えます。その高揚が頂点に達すると同時に、曲は閉じられます。