中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

 今日(5月27日)ひたちなか市アコラで大島直(なおき)さんのリサイタルを聴きました。プログラムは以下のとおりです。

F.タレガ : マズルカト長調、二人の姉妹
エドアルト・サインス・デ・ラ・マーサ : ギター賛歌
F.ソル : ソナタハ長調作品15-2
F.モレーノ・トロバ : レタヴァ、トゥレガノ、トリーハ、アルカサール・デ・セゴヴィア ~以上「スペインの城」より 
A.バリオス : パラグアイ舞曲第2番、ワルツ第3番、クリスマスの歌、パラグアイ舞曲第3番、郷愁のショーロ
M.M.ポンセ : 南のソナチネ

*アンコール曲フリア・フロリダ(バリオス)



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 大島さんのことは当ブログでも何度か紹介していますが、私がアコラでリサイタルを聴くのも3度目となります。以前はホセ・ルビオを使用していましたが、最近はドミニック・フィールドを使用していて、雰囲気はちょっと変りました。最近(2005年)の作だそうですが、低音は太く、なかなかシブイ音がします。

 そのフィールドから出される大島さんの音は、1音1音がしっかりとコントロールされた上で発音されており、美しいだけでなく、とても存在感のある音です。アマチュアの人でもギターが上手な人はたくさんいますが、こうした音を出せる人はあまり多くはないでしょう。いろいろと参考になる演奏ではないかと思います。

 プログラムの前半はスペイン音楽、後半は中南米音楽となっていますが、前半の中ではE.デ・ラ・マーサの作品を弾いているのが特徴的です。この「ギター賛歌」などは、ある程度知られた曲ではありますが、デ・ラ・マーサの曲をメインのリパートリーにしているギタリストはそれほど多くはないでしょう。

 大島さんはこの作曲家への共感度が高いようで、大島さんの演奏からは、この曲のよさがたいへん良く伝わってきます。エドアルト・サインス・デ・ラ・マーサとちょっと長い名前ですが、「サインス・デ・ラ・マーサ」が苗字で、「エドアルト」が名前ということになります。因みに兄のレヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサもギタリスト兼作曲家で、よく混同されます(私もよく混同してしまいます)。

 後半はバリオスとポンセという中南米の作曲家の作品ですが、誇張のないとても誠実な演奏で、それぞれの作品の”掛け値なし”の姿がよくわかる感じです。
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セゴヴィアのSP時代の録音


1928年5月15日

プレリュード(BWV999 バッハ)
アルマンド(リュート組曲第1番より バッハ)
フーガ(無伴奏Vnソナタ第1番 バッハ)
ファンダンギーリョ(カステーリャ組曲より モレーノ・トロバ)
プレリュード(モレーノ・トロバ




バッハのリュートのための曲を2曲録音

 セゴヴィアは初録音からちょうど1年後の1928年5月に上の5曲を録音しています。バッハのリュートのための曲が2曲録音されていますが、リュートのための作品はいつ頃からギターで演奏されるようになったのでしょうか。1900年頃完成された旧バッハ全集ではリュートのための作品は”認知”されず、現在バッハのリュートのための作品とされているものは”楽器不明の作品”として出版されていました。



今では当たり前だが、当時はどうだったのか?

 今日、これらのバッハのリュートのための作品をギターで弾くのは、ごく当たり前のことなのですが、この1920年代となると、だいぶ様子が違ってくるでしょう。おそらくこの時代では、これらの作品がギター用の譜面として市販されてはいなかったでしょう。セゴヴィアが演奏しているのは、セゴヴィア自身によるギターへの編曲ということですが、どのような譜面を基にして編曲したのでしょう。

 1921年に、ドイツのリュート研究者のハンス・D・ブルガーがバッハのリュートのための作品も楽譜を出版しています。これはリュート用の譜面なのですが、その譜面の前提となっているチューニングは、1弦から6弦まではギターと全く同じチューニングで、それに音階的に下る番外弦(開放弦として使用)が付いたもの、つまり”ギター的なチューニング”のリュートのための楽譜と言えます。



時代を先取りしていた

 セゴヴィアがこのブルガーの譜面を基にしたのか、あるいは旧バッハ全集の鍵盤譜をもとに編曲したのか、さらには別な譜面などが存在したのか・・・・・そうしたことはよくわかりませんが、少なくともこの時代にはこうしたバッハのリュートのための作品など知る人は決して多くはなかったのではないかと思われます。

 こうした点からもセゴヴィアが当時から深くて、広い音楽の知識を持っていたことを裏付けるものでしょう。セゴヴィアは常にアンテナを張り巡らし、最新の情報を追い求めていたのでしょう。今日ではギターでバッハの作品を弾く場合、これらのリュートのための作品が中心となっているわけですが、時代様式的にセゴヴィアのバッハの演奏には多少の問題があるとしても、時代を先取りしていたことは確かでしょう。

 

組曲全部を弾くことは念頭になかった

 「プレリュード」のほうはご存知のとおり原曲はハ短調で、セゴヴィアは「ニ短調」に移調して演奏しています
(例のごとく、回転数の関係によりそれより半音ほど高く聴こえる)。以後これが定着したのかも知れません。

 リュート組曲第1番の「アルマンド」のほうは、今日では原曲どおりホ短調で演奏されていますが、セゴヴィアはイ短調に上げて演奏しています。音域が高い分だけ華やかに聴こえますが、技術的にはやや難しくなります。

 1949年には同じ組曲の中から「サラバンド」と「ブーレ」を演奏していますが、こちらは原曲どおりホ短調となっています。この組曲を全曲続けて演奏するということはあまり念頭にはなかったのでしょう。

 「フーガ」の方は「リュート版」ではなく、無伴奏ヴァイオリン・ソナタの方からの編曲です。タレガのアレンジを参考にしているかも知れませんが、グリサンドなどは一切省いており、細部も異なります。



トロバの「プレリュード」って?

 カスティーリャ組曲の「ファンダンギーリョ」もおそらく作曲されて間もない頃なのでしょう。「プレリュード」のほうはなかなか良い曲なのですが、LP時代では録音されず、また楽譜もあまり出回らず(私が持っていないだけ?)、やや”埋もれた”曲となってしまっているようです(これも私が知らないだけ?)。単独の曲なのか、組曲などに属するのかもよくわかりません。





1930年 10月6~7日

 組曲イ短調 (発表時にはヴァイス作曲、実際にはマヌエル・ポンセの作曲) 
  プレリュード&アルマンド
  サラバンド
  ガヴォット
  ジーグ      

 セレナータ(マラッツ)
 夜想曲(モレーノ・トロバ)
 ソナタ第3番第1楽章(ポンセ)
 ポストリュード(ポンセ)
 スペインのフォリアによる変奏曲(ポンセ) 
 



獅子奮迅の活躍

 1929年には前述のとおり、来日しており、前回の録音の2年
後に以上の曲を録音しています。1929年は日本以外にも各地で積極的にコンサートを行ったのでしょう。この時代のセゴヴィアは、リサイタルにレコーディング、新しいレパートリーの開拓に、様々な曲の編曲と、まさにバイタリティ溢れる、獅子奮迅の活躍といった印象です。



ポンセの曲を中心に録音

 この年の録音の特徴と言えば、セゴビアにとって生涯の盟友というべきマヌエル・ポンセの作品の録音でしょう。ポンセの作品と言えばリョベットも録音していますから、その関係を師から受け継いだものなのでしょうか。



ポンセが作曲した「ヴァイス作曲『組曲イ短調』」

 まず「組曲イ短調」ですが、これもご存知のとおり、バロック時代のドイツのリューテスト、レオポルド・シリビウス・ヴァイスの作曲として発表されました。一般にはポンセ作品であることが知られるようになってからも、セゴヴィアは「ヴァイス作」としてプログラムに載せています。

 同様にポンセが「ヴァイス」の名で世に出した作品は、もう一つの組曲である「組曲二長調」の他、プレリュードホ長調、「バレー」などがあります。これらの作品は確かにバロック風ですが、ヴァイス風とは言えないでしょう。今現在なら怪しむ人もいるでしょうが、発表当時はヴァイスを知る人など、そう多くはなかったでしょう。



ヴァイスの名で演奏したポンセの作品は出版していない

 セゴヴィアはポンセのギターのための作品を多く出版していますが、これらの「ヴァイス作」とした作品は出版していません。またポンセはギターの作品の扱い(出版などの)はすべてセゴヴィアに任せていたようです。従って、今日出版されているこれらの作品はほとんどの場合セゴヴィアの演奏をもとにしていると思われます。


本物の偽者を組み合わせて

 セゴヴィアは一つの組曲やソナタを全曲通して演奏したり、録音したりすることは、少なくともこの時期ではあまりありませんが、この「イ短調組曲」は、この時期としては珍しく全曲録音しています。そうした意味でもセゴヴィアはこの組曲には思い入れが深いようです。ただしリサイタルなどでは全曲とおして演奏することはなく、主に「プレリュードホ長調」などの他の同様のポンセ作品や、時には”本物の”ヴァイスの作品などと組み合わせて演奏しています。


会社としては冒険?

 「スペインのフォリアによる変奏曲」(以前、ドキュメント・レーヴェルの10枚組には入っていないと言ってしまったかも知れませんが、ちゃんと入っています)は、完全な形で演奏すると20数分はかかる大曲ですが、セゴヴィアは変奏の数を半分ほどにして14:35で演奏しています。これでも当時のSP盤では裏表2枚は必要となるでしょう。

 新作でもあり、コアな内容の曲とも言え、レコード会社としては冒険だったと思いますが、セゴヴィアはこの時には、すでにどんな曲でも売れるギタリストになっていたのでしょう。あるいはセゴヴィアの強い意志があったのでしょうか。LP時代になってからのセゴヴィアによる再録はなく、貴重な録音といえるでしょう。因みに現在ではジョン・ウィリアムス、 オスカー・ギリア、 ティモ・コルホーネン、 山下和仁などのギタリストがこの曲の全曲録音をしています。


人気曲

 マラッツの「スペイン・セレナード」は、おそらく当時から、また現在でもクラシック・ギターの人気曲となっています。セゴヴィアも1950年代に再録もしていて、セゴヴィアの演奏の中でも特に人気の高い曲と言えます。私も学生時代によく聴きました。基本的にはタレガ編ですが、それを若干手直しして演奏しています。


 
そういえば

 そういえば、今年はまだ1回も演奏をしていなかったように思います。コンサートはもちろん、どこかで2.3曲弾くというのもありませんでしたね。比較的最近演奏したものと言えば、昨年の11月にアコラとギター文化館でのコンサートだったかなと思います。半年以上は演奏していませんね。


7年ぶりに

 来月からはまた少し演奏予定があり、6月には15日金曜日に茨城県立図書館視聴覚ホールでコンサートを行います。県立図書館といえば7~8年位前(2003~2004年)に「昼下がりのギター」ということで、図書館のエントランスで隔月、計6回にわたって演奏したことがあります。

 その第1回目の時には階段にまで人が溢れ、驚きました。聴きに来る人はせいぜい数十人くらいかなと思っていましたが、あまり広くないところに、約200人くらいの人が聴きに来てくれたようです。気楽なコンサートというつもりでいたのですが、想定外の観客数で結構緊張しました。

 今回は視聴覚ホールで行いますが、金曜日の14:00ということで、仕事のある方などは来にくいかも知れません。曲目のほうはスペイン・ギターの名曲と映画音楽などのポピュラー曲というように聴きやすいものにしました。


オーシャン・パル・ギターコンサート ~愛好者のコンサート

 また翌16日(土曜日)には東海駅前の「リコッティ」で行われる、「オーシャン・パル・ギターコンサート」にゲスト出演し、2~3曲ほど演奏します。このコンサートは日立市の代永さんが代表を務める、ギター愛好者10数名の人によるコンサートです。


12月にはオール・バッハのリサイタル

 また9月にはひたちなか市文化会館で水戸ギター・アンサンブルの演奏会。10月にはアコラ・ジヴェルニー・サロンでミニコンサート。12月にはギター文化館でオール・バッハのコンサートを行います。以下に整理して書いておきます。






<中村俊三ギターコンサートin Library>

 6月15日(金) 14:00~15:30  茨城県立図書館視聴覚ホール

 入場無料(誰でも入場出来ます)

 曲目 
エストゥーディオ~禁じられた遊びのテーマ(A.ルビーラ) 
スペイン舞曲第5番(E.グラナドス)  
アラビア風奇想曲、アランブラの想い出(F.タレガ)  
ひまわり(H.マンシーニ)  太陽がいっぱい(N.ロータ)  
夜霧のしのび逢い(V.ウェッター) オルフェの歌(L.ボンファ)
見上げてごらん夜の星を(いずみたく)  夜空のムコウ(川村結花)
アストゥリアス、タンゴ、セビージャ(I.アルベニス)

*休憩なしで演奏と話。誰にでもなじみやすいプログラムです。



<オーシャン・パル・ギター・コンサート>
 
6月16日(土) 13:50 

 東海村 リコッティ

 入場無料

*10数名のギター愛好者の演奏(ポピュラー系の曲が多い)、および私の演奏(アストゥリアス、セビージャ)




<水戸市民音楽会>
 
7月15日(日) 13・00

 水戸芸術館ATMホール

 入場無料

 *水戸ギター・アンサンブルが出演(モーツァルトの「セレナードト長調K525」から)。今回からはこの市民音楽会はコーラス部門が別になり、器楽団体中心の演奏となります。




<水戸ギター・アンサンブル演奏会>

 9月15日(土) 18:00~20:00

 ひたちなか市文化会館小ホール

 入場無料

 曲目 : セレナードト長調(全4楽章)、交響曲第40番第1楽章(以上モーツァルト)他
      モーツァルトの主題による変奏曲(ソル)
      二重奏曲ト長調作品34-2(カルリ) 他

*今回はモーツァルトを中心としたプログラム。モーツァルトの名曲「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」全4楽章、および「交響曲第40番」の第1楽章をギター合奏で演奏します。他に私の独奏、メンバーによる二重奏、今年のシニア・ギター・コンクールで優勝した熊坂勝行さんの独奏もあります。



<ジヴェルニー・サロン>
 
 10月27日(土) 10:00~12:30

 ひたちなか市アコラ

 入場料 1500円

 曲目 : ラモー、ヘンデル、スカルラッティ、バッハの作品

*愛好者のコンサートのあと、バロック時代の作品による、私のミニ・コンサートを行います(11:30~12:30)。




<中村俊三 バッハ・リサイタル>

 12月8日(土) 14:00~16:00

 石岡市ギター文化館

 前売り2000円(10月発売)  当日2500円

 曲目 : 無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第1番BWV1002(中村編)、 リュートのためのプレリュード、フーガ、アレグロBWV998、 リュート組曲第2番BWV997  他 

*バッハのリュートのための作品や、無伴奏ヴァイオリンのための作品などによるオール・バッハ・プログラム。私としては始めての試みです。
セゴヴィア初録音 ~1927年

 セゴヴィアがSP時代、つまり1927年~1939年の間に録音したものを、具体的にコメントしてゆきます。なお、復刻版のLPやCDでは録音年代順ではなく、作曲家や作品の年代などでまとめて曲が並べてありますが、LPジャケットに書かれたデータをもとに録音年代順に整理してみました。


1927年5月2日録音

 ガボット(無伴奏Vnパルティータ第3番~バッハ)
 クーラント(無伴奏チェロ組曲第3番~バッハ)
 モーツアルトの主題による変奏曲(ソル)

同 5月20日録音

 ファンダンギーリョ(トゥリーナ)
 アレグレット(ソナチネ第1楽章~モレーノ・トロバ)
 アランブラの想い出(タレガ)



なかなかよい音質

 LPジャケットのデータによれば、1927年5月に録音されたこの6曲がセゴヴィアの初めての録音となるようです。セゴヴィア34歳となるでしょうか。年代からすれば、アコーステッィック録音ではなく、「電気録音」と考えてよいでしょう。前に紹介したリョベットやバリオスの録音と年代的にはほとんど同じですが、それらに比べるとかなり良い音質です(SP録音という範囲内ですが)。元々の録音もよかったのかも知れませんが、盤の保存状態もよいようです。もしかしたら原版のようなものがあったのかも知れません。

 これらの録音は1940年代の録音(おそらく磁気テープによる録音)と比べても遜色ない感じで、曲によってはSP盤独特のノイズがありますが、かえって聞きやすい感じです。これらの録音よりも明らかに音質がよくなるのは、1950年代を待たなければなりません。


しかしピッチは半音ほど高い

 ただしリョベットやバリオスの場合と同じく、ほとんどの曲が、半音ほどピッチが高くなっています(少なくともブリラント・レーヴェルの10枚組では)。時代が古いほど高くなっているような気もします。これらのピッチを合わせることなど、現在の技術なら全く問題ないと思われますので、CD化の時にもう少し配慮して欲しいと思います。
 

意外?とイン・テンポ

 この6曲は、表裏1曲ずつ3枚のSP盤として発売されたのではないかと思いますが、どのような組み合わせだったのかはわかりません。バッハの「ガボット」の含まれる「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番」は「リュート組曲第4番」と同じ曲で、最近ではこの「ガボット」はそのリュート組曲の方の譜面で弾かれることが多いのですが、セゴヴィアが弾いているのは、自らヴァイオリンの譜面から編曲したものです。

 セゴヴィアの演奏と言うと常にテンポ・ルバートして演奏しているイメージがありますが、この「ガボット」は次の「クーラント」同様に、意外とイン・テンポに近くなっています。少なくともバリオスやリョベットに比べるとテンポの変化は少ないようです。


ファンにはたまらないものかも知れないが

 ただし特定の音、特にスラーの頭などに強いアクセント(アクセントと言うよりはスフォルツァンドに近い)があり、特に「クーラント」でそれがそれが目立ちます。これはセゴヴィアの演奏の大きな特徴とも言え、セゴヴィア・ファンを魅了した点でもあるのかも知れませんが、最近のギタリストの演奏に鳴れた耳には不自然に聴こえるのではと思います。



こちらはセゴヴィアらしい

 有名な「魔笛の主題による変奏曲」はSP盤に収める都合上、序奏を省略し、テーマや変奏の繰り返しも省いて、3分半ほどで演奏しています(楽譜どおりに演奏すると8~10分)。この「序奏省略」は1960年代くらいまで多くのギタリストが踏襲していました。

 こちらのほうは、ある意味「セゴヴィアらしい」といった感じで、ルバートというより、原曲の音価(音符の長さ)をあまり守らず弾いています。特に付点音符はほとんど守られていません。多くのファンに親しまれ、また多くのギタリストに影響を与えた演奏なのでしょうが、いろいろな点でソルの意図からは遠いように感じます。



最新作2曲

 ホアキン・トゥリーナの「ファンダンギーリョ」は3分55秒と、おそらくSP盤の収録可能の時間ぎれぎれなのではないかと思います。SP録音では収録時間が足りなそうな時、回転数を落として録音することもあったようですが、不思議とこの曲ではピッチがほとんで上がってなく、従って録音時の回転数は落としていないようです。

 この曲の作曲が1926年ということですから、作曲された次の年にセゴヴィアによって録音されたことになります。まさに「出来立てのホヤホヤ」というところでしょうか。

 この曲の演奏ではセゴヴィアは音色の変化を自在に使っていて、この録音からでもそれがたいへんよくわかります。「SP盤侮り難し」といったところでしょうか。セゴヴィアの演奏も、この曲の演奏の規範となる名演と言えるでしょう。

 次のモレーノ・トロバの「アレグレット」は「ソナチネ」の第1楽章で、セゴヴィアは「アレグレット」というより「アレグロ」といった感じの速めのテンポで演奏しています(このCDではピッチが上がっているので、実際はこれより少し遅め)。この曲も作曲されて間もない曲だと思いますが、たいへん活き活きと演奏されています。「ファンダンギーリョ」同様優れた演奏。



やや一本調子?

 「アランブラの想い出」はSP盤に収めるためにダ・カーポを省略(前後半2回ずつ)して録音しています。バッハの場合と同様に所々に強いアクセントが置かれていますが、この曲の場合は各フレーズの最初の低音が強く弾かれています。1950年代にも録音していますが、こちらは譜面どおりのリピートもダ・カーポもしています。歌わせ方などにはやはり後年のものが若干優れているように思います。それに比べるとこの1927年の録音はやや一本調子かな?



セゴヴィアのレパートリーの縮図

 この年(1927年)の録音はセゴヴィアにとって記念すべき初録音となり、セゴヴィア自身もおそらく選曲には熟慮したと思われます。セゴヴィアが終生演奏し続けたバッハの作品が2曲。クラシック・ギターを代表する二人のギタリスト、ソル、タレガの代表作を1曲ずつ。そして二人のスペイン人作曲家による新作を2曲とバランスよく収録しています。セゴヴィアの生涯のレパートリーの縮図とも言えます。
セゴヴィアの生い立ちの復習

 このところいろいろあってこのシリーズも中断が長くなってしまいました。前回は「セゴヴィアの生い立ち」についてでしたが、ここでちょっと復習しておきましょう。



セゴヴィアが育った環境

 手元にあるいくつかの資料によると、3歳頃から叔父夫婦に育てられるなど、セゴヴィアの幼少時代は少々”わけあり”といった感じです。その叔父夫婦の暮らしは、豊かではなかったにせよ、経済的には平均的だったようです。

 叔父夫婦はセゴヴィアがギターを弾くことには反対だったようですが、セゴヴィアがギタリストとして独り立ち出来るようになるまで、少なくとも経済的には援助していたのではないかと思います。若い頃のセゴヴィアがアルバイト的なことをしていたといったことは語っていません。



音楽家としては恵まれた環境とはいえない

 しかし芸術家の家に育ったリョベットなどに比べれば、音楽的な環境、あるいは芸術的な環境としては決して恵まれていたとは言えなかったようです。幼少時からギターを弾いていたといっても、物乞いなどから習ったフラメンコ・ギターで、10才くらいになるまではクラシック音楽、あるいはクラシック・ギターとは無縁だったようです。

 幼少時にソルフェージュを習ったことが書かれていますが、すぐにやめてしまったようです。少なくとも10才くらいまでは耳で聞いたり、目で見たりしてギターを覚えたのでしょう。その頃まで楽譜は読めなかった(読まなかった)ようで、10才頃タレガの「アラビア風奇想曲」の楽譜を読むのに苦労した話が語られています。

 セゴヴィアは10才の時に小学校に入学したという記述はありますが、卒業したという記述はありません。音楽学校等で音楽を学んでいないのは確かなようですが、ギターや音楽だけでなく、一般教養などに関しても、多くのことは学校でなく、独学で学んだようです。終生かなりの読書家だったようです。



その恵まれない環境が人一倍の向上心を生んだ

 これらの音楽家としてはあまり恵まれたとはいえない環境が、その後のセゴヴィアに大きな影響を与えているのは確かでしょう。セゴヴィアがギタリストとしてやってゆこうと思った時に、そうした基礎教育や音楽知識の不足を大いに感じたかも知れません。しかしそれらの、一種のコプレックスと言ったものが、逆に人一倍の勉学意欲や向上心を生んだのでしょう。



独学でも高度な音楽技術、知識を身に付けていた

 確かにギターの演奏技術だけなら、優れた素質があれば独学でもある程度は習得できるとは思いますが、和声法や、作曲法、音楽史などといった音楽理論に関しては難しい点もあると思います。しかしセゴヴィアの編曲作品や、オリジナル作品を見れば、そうした作曲法、和声法などを完璧に身に付けていたことがわかります。

 またセゴヴィアが編曲した作品の幅広さをみると、音楽一般に関してもたいへん広く、また深い知識をもっていたことが裏づけされます。



タレガとは違い

 タレガの場合は、海外に出て活躍したり、大きなコンサート会場で多くの聴衆を前にして演奏したりといったことはあまり好まず、自宅でタバコをくわえながら、弟子や友人といった身近な人たちの前で演奏することを好んだようです。名誉やお金よりも自らの周囲の人たちを大事にするといった性格のようでした。

 そういった点ではセゴヴィアは、最初から大きなコンサート・ホールで、大勢の聴衆を前で演奏することや、ギタリストとして世界的な名声を得ることを志向していたようにも思えます。若い頃のセゴヴィアには強い上昇志向同時に、強い自意識も感じ取れます。



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先輩ギタリストたちにも一歩も臆することなく

 前回も掲載したリョベット、プジョール、フォルティアと一緒に撮った写真ですが、この写真を見ると(セゴヴィアは左上の白っぽいジャケット。22才頃)、すでに名声を確立したタレガ派の先輩ギタリストたちに対しても、一歩も臆することなく、対等の立場を主張しているようにも見えます。さらにセゴヴィアはもっと先を見ていたかも知れません。

 いずれにしても若い頃のセゴヴィアはヴァイタリテー溢れる青年だったのでしょう(今どきの言葉で言えば肉食系?)。もっともそれは年齢を重ねても変らなかったようです。




やっとCDの話

 またまた前置きが長くなってしまいましたが、CDの話に進みましょう。セゴヴィアの残した録音を大別すると、以下の5種類に分かれると思います。


①1927年~1940年代半ばまでのSP録音

②1940年代末~1950年代までのLPモノラル録音

③1960年代のステレオ録音

④1970年代のステレオ録音

⑤ライブ録音




ドキュメンツの10枚組

 ①の「SP録音」に関してはいろいろなところからCDとして出されていますが、その一つとして以前「格安CD」で紹介した「ドキュメンツ」というレーヴェルから10枚組で出されているものがあります。

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ドキュメンツから出ている「10枚組シリーズ」のもの、ただしセゴヴィアに関しては「8枚組」。HMVでは1100円くらいで買えたが、今は在庫がないようだ。

 
 この「10枚」の内、5枚が①に属する1927年~1949年のSP録音もので、3枚が⑤に属する二つのコンサート・ライヴ(アスコーナ、ロカルノ)です。残り2枚はセゴヴィアとはあまり関係のないギター四重奏となっています(スペイン・アート・ギターカルテット、枚数あわせ?)。

 この10枚組は以前HMVで1100円ほどで買えたのですが、今現在は入手出来なくなっているようです。ただしGGショップでは3990円でリスト・アップされています。




EMIレコーディングス

 現在入手しやすいものでは、下の、「アンドレス・セゴヴィア EMIレコーディングス」として3枚組(HMV価格838円)のもがあります。

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「アンドレス・セゴヴィア EMIレコーディングス」 SP時代の録音 3枚組  

 3枚組で、SP録音(1927~1949年)のみですが、SP録音に関しては、曲数はこちらの方が若干多く、ポンセの「スペインのフォリアによる変奏曲」など上記の10枚組には収録されていないものも入っています。おそらくセゴヴィアのSP録音のほぼすべてが収録されていると思われます。比較的最近発売されたもので、今現在セゴヴィアのSP時代の録音の復刻CDとしてはお薦めでしょう。
大荒れの天気でしたが


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 <このブログでは花の写真などあまり似合わないかもしれませんが、今年は春が寒かったせいなのか、我が家のつつじも、いつもよりきれいに咲いています。このところ大荒れの天気とか、ギター・フェスティヴァルなどでちょっと落ち着かなかったところですが、気が付くと、ささやかな我が家の庭も、1年で最も環境のよい時期となっています。



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 基本的に植物には無関心なので、自分の家に咲いている花がよくわかりません。なかなかきれいですが、何の花でしょう?



アンドレス・セゴヴィア没後25年記念CDコンサート  6月3日(日)14:00~ 中村ギター教室スタジオ

聴講者募集



 以前にもちょっと書きましたが、6月3日にセゴヴィアのCDコンサートを私の教室で行います。当ブログの「20世紀の巨匠たち」に関連してのイヴェントですが、6月2日はセゴヴィアの25回目の命日ということになり、セゴヴィア没後4半世紀の記念としても行ないます。

 前回同様、車の止められる台数からして10名までとさせていただきますが、出席希望の方はなるべく速めに連絡、あるいはお申し出下さい。部屋のほうにはもう少し入れますので、車以外で来られる方歓迎です。

 聴いていただく曲目などはこれから決めますが、1927年から1970年まで年代を追って聴いていただくつもりです。またセゴヴィアの弟子で、私の師でもある松田晃演先生のCDも聴いていただこうと思っています。
凄い天気でしたね

 今日(5月6日)はたいへんなお天気でしたね。そろそろ出かけようという頃に大粒のひょうが降り始め、どうしようかと思っていたら、ちょうど出かける時間(14:00)におさまったので出発しました。しかし水戸市を出たあたりで前が見にくくなるくらいの凄い雨となり、雷も鳴り出しました。

 再び大きな音をたてながら雹が車のフロント・ガラスをたたき出しまし、ガラスが割れないかなと不安でした。途中、停電で信号もつかなくなったりして、結構怖かったです。普通雷雨というのはそんなに長続きはしないものですが、今日の雷雨はしぶといですね。


 さてそんな感じで4日のシニア・ギター・コンクール、昨日の藤井さんのリサイタルと、3日続けてギター文化館ですが、今日(6日)は北口功さんのリサイタルです。こんな天気にも関らずかなり人が来ていました。ギター製作家の松村さんも関西から聞きに来ていました。プログラムは以下のとおりです。



J.S.バッハ   ロンド形式のガボット

F.ソル     グランド・ソナタ第2番Op.25

F.シューベルト  郵便馬車、 セレナーデ、 仮の宿、 影法師

  前半使用楽器 松村雅亘 2000年



M.デ・ファリャ  ドビュッシー賛歌

A.ホセ    ギターのためのソナタ

I.アルベニス  アストゥリアス、 カタルーニャ奇奏曲、 セビージャ 

  後半使用楽器 ドミンゴ・エシテソ 1923年  ギター文化館所蔵



 プログラムの前半ははるばる関西からこの会場のに来ていた松村さんの楽器を使用しての演奏です。この楽器は全体を包みこむような膨らむ低音が特徴ですが、アコラで聴いている感じより、この会場のほうが明るく聴こえます。よく響く会場だけに、かえって不明瞭になったりすることもありますが、かなりクリヤーに聴こえます。


 前半のプロの中心はやはりソルのソナタだと思いますが、この曲は北口さんが「一生の課題」として取り組んでいる曲だそうです。古典派のソナタとしてはちょっと変ったソナタで、ハ短調の第1楽章は次のアレグロ楽章のための序奏的なのですが、この「序奏」がかなり長くてしかもたいへん充実した曲となっています。もしかしたらこのソナタの4つの楽章の中で最も充実したものかも知れません。


 北口さんの演奏では各声部の音それぞれに留意が行き届き、まるで室内楽のように聴こえます。ソルの曲を優れた演奏で聴くと、ほとんどの場合、この「室内楽的」に聴こえるようです。もともとそのように作曲されているのでしょう。


 この後にこのソナタの中心楽章(少なくとも形の上ではそうなっていると思いますが)である第2楽章の「アレグロ・ノン・トロッポ」となっています。この曲も多声部的で、ソナタ形式の充実した曲です。この二つの楽章だけで相当な内容で、時間的にも15分以上にはなるでしょう、結構お腹いっぱいになります。


 この後まだ二つの楽章が続くわけですが、北口さんは第4楽章の「メヌエット」は第3楽章の「主題と変奏」のコーダとみなして、両方で一つの楽章としています。確かに重厚な冒頭の二つの楽章に対しては、束にならないと受けきれないでしょう。それでもやっぱり頭が重いですが。


 後半のファリャの「ドビュッシー賛歌」は譜面にかなり細かい書き込みがありますが、そういったものをたいへん深く読み込み、とても立体感のある演奏となっています。こういったことが「解釈」というものかも知れません。


 後半の中心は4つの楽章からなるホセの「ソナタ」と考えてよいと思います。この曲については当ブログでも何度か書きましたが、最近たいへん評価の上がっている曲です。かなり難しい曲なので比較的遅めのテンポで演奏する人が多いのですが、北口はかなり速めのテンポをとっていました。かなり”熱い”演奏といっても良いでしょう。


 北口さんは、日頃は穏やかな人柄ですが、ギターの演奏となるとそうしたものとは別な面が出るのでしょう。前回アコラのほうでは中の二つの楽章だけの演奏でしたが、こうして全曲聴いてみると北口さんの表現したいものが伝わってくるような気がします。それにしてもこの曲は不思議な魅力を持った曲ですね。


 アルベニスの3曲の演奏の後、アンコールとして、ガボット(チェロ組曲第6番~バッハ)、 祈り(バリオス)、 禁じられた遊び、 アランブラの想い出(タレガ)が演奏されました。

 

 昨日の藤井さんのコンサートとはいろいろな意味で対照的だと感じました。藤井さんについては「才」といった言葉がよく似合うと思いますが、北口さんの場合は何でしょうね、「気」かな? 「魂」かな? 「深」かな? ・・・・・・あまり漢字が得意でないので、残念ながら適切な文字が浮かんできませんが、表面的な言葉ではないでしょう。
 今日(5月5日)ギター・フェスティヴァルinやさとの一環の「ギター文化館所蔵銘器による藤井敬吾ギター・リサイタル」を聴きました。プログラムと使用楽器は以下のとおりです。



二つのソナタ(スカルラッティ) <使用楽器>ミゲル・ロドリゲス 
チェロ組曲第1番(J.S.バッハ)       サントス・エルナンデス
組曲ホ長調(ブレッシャネロ)        アントニオ・デ・トーレス
幻想曲「別れ」(ソル)           サントス・エルナンデス


中世組曲(藤井敬吾)            ミゲル・ロドリゲス
4つのマズルカ(タレガ)          アントニオ・デ・トーレス
アランブラの想い出(タレガ)        サントス・エルナンデス
3つの小品(A.ラウロ)          サントス・エルナンデス

 


 藤井敬吾さんは作曲家としても名が知られていますが、演奏技術も圧倒的なもので、まさに鬼才といえるでしょう。

 スカルラッティの1曲目のソナタは聴いたことがないので(聴いても忘れている?)。番号等はわかりません。2曲目のほうはピアノでもよく弾かれるホ長調K380(L23)ですが、1音下げてイ長調で演奏していました。装飾音なども加え、なおかつ速めのテンポで演奏しているので華やかに聴こえます。

 バッハの「チェロ組曲第1番」はどちらかと言えば、元々大人しい感じの曲ですが、対旋律や装飾を加え、さらに速めのテンポで弾くなど、スカルラッティ同様華麗でスリリングな曲になっています。プログラムには書かれていませんが、藤井さん自身のアレンジでしょう。こちらはギターでは一般的な二長調で弾いています。

 ”ブレッシャネロ”とは聞き期馴染みのない名前ですが、バッハよりも少し後の時代のイタリアの作曲家だそうで、ギターによく似た楽器の「コラシオーネ」と言う楽器のための作品だそうです。4つの楽章からなっていて、それぞれの曲名などは書かれていませんが、第1楽章は4拍子系、第2楽章は3拍子系、第4楽章は6/8拍子のシチリアーナ風、第4楽章は三連符の速い曲になっています。ヴァイスのリュート曲にもちょっと似た感じがありますが、主旋律はわかりやすく、親しみやすい感じもあります。

 ソルの幻想曲「別れ」は、藤井さんの師であるホセ・ルイス・ゴンザレスのレパートリーにもなっていましたが、ゴンザレスがこの曲を弾くようになったいきさつを話されていました。ゴンザレスはこの曲は藤井さんの薦めと、藤井さんのレッスンを通じて覚えたのだそうです。そう言えばゴンザレスはバリオスの曲なども生徒のレッスンで覚えたとか。

 「中世組曲」は藤井さんのオリジナルですが、もともと「サンタマリア頌歌」のイントロダクションや間奏として作曲したそうですが、なかなか面白い曲でした。

 「4つのマズルカ」は「マリエッタ」、「スェーニョ」、「アデリータ」、「マズルカト長調」の4曲でしたが、どの曲もやや速めのテンポで演奏していました。「アランブラの想い出」も速めのトレモロながらノイズなどはほとんどありません。

 ラウロの3つの小品は「ネグリート」、「ネグラ」ともう1曲の曲名は聞き取れませんでした。アンコール曲はバーデン・パウエルの「宇宙飛行士」とナポリ民謡「おおソレミオ」でしたが、「おおソレミオ」は伴奏付きのマンドリンをギター1台でやっていしまうという、藤井さんならではの演奏です。普通の人が真似したら指が”つる”くらいではすまないでしょう(その前に真似できない!)。
 昨日(5月4日)、石岡市ギター文化館で第7回シニア・ギター・コンクールが行われ、審査員を務めました。結果は以下のとおりです。

<シニアの部(55才以上) >  予選課題曲 アンダンティーノOp.31-5(ソル)
                     本選  10分以内 自由曲



第1位 熊坂勝行   森に夢見る(バリオス)
第2位 鈴木幸男   アンダンテOp.39(コスト)、エル・ビート(スペイン民謡)
第3位 小林弘之   前奏曲第1番(ヴィラ・ロボス)、ドビュッシー賛歌(ファリャ)
第4位 鹿野誠一   「もしも私が羊歯だったら」による変奏曲(ソル)
第5位 杉澤百樹   アストゥリアス(アルベニス)
第6位 荻島樹夫   愛の歌(メルツ)
第7位 成田恵理子  ワルツ二長調(コスト)、練習曲ホ長調Op.31-23
 

*本選審査員は 浜田滋郎 小原聖子 藤井敬吾 北口功 宮下祥子 角圭司 中村俊三 



 予選には事前にエントリーした20人の方が、誰も棄権することなく出場しました。予選課題曲は出場者にとってはそれほど難しくない曲だったと思いますが、それだけに曲の理解度が重要になるのではと思います。またテンポも「アンダンティーノ」ということで、速くもなく、遅くもないといったテンポが要求され、意外と難しいところだと思います。「アンダンティ-ノ」にしては速めのテンポをとる人が多かったように思います。




 本選の方ではバリオスの名曲を、たいへん美しく弾いた熊坂さんが1位となりました。冒頭の部分のメロディや和声も申し分なく、たいへん美しいトレモロで、また低音部も、もう一つのメロディとしてよく歌っていました。中間の速い部分では若干不明瞭なところもありましたが、この曲も持ち味を充分に出しきれたところが栄冠につながったのではと思います。


 第2位になった鈴木さんの演奏もたいへんすばらしく、かなり難しい曲にもかかわらず、美しい音で細部までしっかりと弾きこなしていたと思います。聴衆の反応もたいへんよく、どちら(熊坂さんと)が1位になってもおかしくないところだったと思います(個人的にもたいへん迷いました)。曲の持ち味を出し切ったと言う点で、結果的に熊坂さんに一歩譲ることになったのでしょう。この曲の持つエレガンスさなど、さらに引き出せたらまた違った結果になったのでは。


 3位の小林さんはヴィラ・ロボスの「前奏曲」とファリャの「ドビュッシー賛歌」をほぼノー・ミスで弾きました。音もたいへんしっかりとしていたのですが、チューニングのせいか、あるいは押弦の関係か、音程が不安定だったのが少し残念でした。また「譜読み」をもっと深くすれば、さらによい演奏になるのではと思います。


 第4位の鹿野さんは、昨年、チューニングの狂いから1位を逃してしまった感がありましたが、今回は完璧なチューニングで演奏しました。音色や和音のバランスも良かったのですが、若干譜忘れ気味になってしまったのと、音がややこもり気味になってしまったのが惜しまれます。


 5位の杉澤さんは昨年に引き続いての「アストゥリアス」です。昨年からすると和音(無窮動の部分の)などはたいへんよく出ていたのですが、主旋律の低音が小さくなりすぎていたようにも思います。「無窮動」が本当に「無窮動」になればさらによくなるのでしょう。


 第6位の荻島さんはメルツの「愛の歌」を、美しい音で、また和音もバランスにも配慮が感じられましたが、やはりチューニングにほんの少し問題があったのが惜しまれます。メロディが「メロディ・ライン」として聴こえてくるようになればさらによいのではと思います。


 7位の成田さんはコストとソルの曲をたいへん丁寧に演奏していて、好感が持てますが、ソルのエチュードはかなり遅い印象を受けました。おそらく4分音符を1拍として数えているのではと思いますが、やはり楽譜に指示されているとおり2分音符を1拍として拍子をとるべきなのでしょう。


<ミドル・エイジ>  35才以上 予選課題曲 アメリアの遺言(カタルーニャ民謡~リョベット編)

第1位 佐々木みこと   モーツァルトの魔笛の主題による変奏曲(ソル)
第2位 山本 孔彦    「おお空よ静かに」による変奏曲Op.101(ジュリアーニ)
第3位 坂本  亮    スペイン・セレナーデ(マラッツ)、タンゴ(アルベニス)
第4位 三谷 光恵    スペイン舞曲第5番(グラナドス)
第5位 松田 利枝    水神の踊り(フェレール)
第6位 増田 康隆    サラバンド、ジグ(組曲イ短調より~ポンセ)



 予選には11名の方々が出場しました(これも予定通り)。課題曲はシニアの部に比べれば少し難しいですが、たいへん有名な曲で、多くの出場者の方も普段から弾いている曲ではないかと思います。なんと言っても「歌」ですから、その歌わせ方、さらに変化のある和音、ギターらしい音色、ハーモニックスなどが審査のポイントになるのでしょう。譜面に書かれている指示も重要でしょう。

 


 第1位となった佐々木さんは3年ほど前にも同じ曲を弾いたと思いますが(その時第2位)、今回は堂々とした、またたいへん充実した音で第1位を獲得しました。この曲への強い思い入れと、自分らしさを充分に出し切ったのが、この1位獲得につながったと思います。個人的にはフレーズ内での強弱関係(例えばフレーズの冒頭の部分だけが大きいなど)が少し気になりました。


 第2位の山本さんはジュリアーニの難曲を美しい音で、よく弾きこなしたと思います。和音のバランスなどもたいへんよく、美しく響いていたと思います。ジュリアーニらしい華やかさが加わればさらによかったかなと思います。佐々木さんとは僅差でした。


 第3位の坂本さんはマラッツの「スペイン・セレナーデ」を軽快なリズムで演奏し、好感をよびました。リズムも歌わせ方もなかなか良かったのですが、さらに上位になるには、何かもう少し強く訴えかけるものが必要なのかも知れません。意外と難しいアルベニスの「タンゴ」もたいへん美しく弾いたのですが、タンゴ(アンダンティーノ)にしてはちょっとゆっくりだったかな?


 第4位の三谷さんのグラナドスの「スペイン舞曲第5番」は、ギターらしい響きで、スペイン音楽らしい雰囲気も漂っていて、好感が持てました。舞曲らしいリズムをもっと意識すればさらに良かったのではと思います。


 第5位の松田さんの「水神の踊り」は強弱のコントラストがはっきり付いた演奏で、長調になってからの部分も「踊り」らしくたいへん軽快でした。さらに明暗のコントラストや、「妖精」らしいほんのりとした色気なども付けばと思います。


 第6位の増田さんはポンセのイ短調組曲の中から2曲を、たいへん美しい音と、バランスのとれた和音で弾き、本来はもっと上位、あるいは3位以内でもおかしくない演奏だったと思います。「サラバンド」ではスラー奏法による細かい音がもう少しクリヤーに出れば、また「ジグ」では、この曲の持つ躍動感といったものがもっと出せればよかったかなと思います。



 ・・・・・いつものことではありますが。この結果がそれぞれの出場者の実力を必ずしも反映したものではないことは言うまでもありません。ちょっとした条件が異なれば(その日の天気が変れば?)これらの順番など簡単に入れ替わってしまうものです。本来は音楽などというのに順位が付けられるものではありませんが、これも一つの「ゲーム」と思って楽しんでいただければよいのでしょう。  ・・・・・ギターの上達といった点でも、たいへん効果が高いと思います。