1950年代以降の録音 ~米デッカ専属契約
まさにセゴヴィアの最盛期
セゴヴィアは1950年代に入ると、米デッカと専属契約を結び、1972まで多くの録音を残すことになります。米デッカは文字通りメジャーなレーヴェルで、録音技術もセールスもこれまでとはかなり異なり、セゴヴィアの録音としてはまさに最盛期となってゆきます。私たち持っているセゴヴィアの演奏のイメージは、ほぼこの時代の演奏を基にしていると言っても過言ではないでしょう。
1950年代にはセゴヴィアは60代を迎えることになりますが、しかし演奏はまだまだ若々しく、活気溢れるものといってよいでしょう。1952年~1956年まではモノラル録音ですが、私個人的にはこのモノラル録音こそがセゴヴィアの演奏のイメージに最もぴったりくる感じがします。何といってもハウザーⅠ世の音が冴え渡る!
かつて17枚のCDに復刻されていたが
この1952~1972年のデッカへの録音は、1980年代に国内盤として17枚のCDに復刻されました。その際にはLPオリジナルの曲順ではなく、「バッハの作品」、「スペイン音楽」、「ポンセの作品」といったようにジャンルや作曲家ごとに組み合わせを変えて発売されました。この17枚のCDのうち、私が購入したのは輸入盤も含め15枚で、2枚ほど抜けてしまいました。

今現在ではこのシリーズのCDは廃盤となってしまい、ごくわずかのCDのみ在庫があるといった状況のようです。今現在この時代のセゴヴィアのCDを購入するとしたら、まず考えられるのは前述のナクソスのシリーズで1950年代の録音は8枚ほどのCDになっています(各CD単売)。
さらに人気曲だけをセレクションしたCDが多数あると思いますが、1950年代に録音した最初の6枚だけはオリジナルの縮小ジャケット入りで、オリジナルの曲順で発売されています。以前にも紹介しましたが、あとでまた詳しく述べます。
セゴヴィアの録音に関しては、今現在古いものほど入手しやすく、後の時代のものほど入手しにくくなっているようです。1970年代に録音した4枚のLPに関してはCDとして出ているかどうか、情報がありません。
LP録音年代順に紹介
それではちょっと手間のかかる作業になりそうですが、これらのオリジナルのLPを録音された年代順に紹介してゆきましょう。やはり私にとっても、また多くのギター愛好者にとっても想い出のあるLPだと思いますので。
<アンドレス・セゴヴィア・リサイタル> 1952年7月録音
ムダラ : ロマネスカ
ポンセ : 前奏曲、バレー、ジーグ (ヴァイス作曲として曲名表示)
バッハ : 前奏曲(チェロ組曲第1番より)、 ガヴォット(チェロ組曲第6番より)
ソル : アレグロ(ソナタ作品25より)
メンデルスゾーン : ベニスの舟歌
シューベルト : メヌエット
モレーノ・トロバ : ソナチネ(全3楽章)
アルベニス : アストゥリアス

上記のLPの縮小オリジナルジャケット入りのCD。曲順もオリジナルどおり。
もちろんのことですが、これ以降紹介するLPは最初からLPとして録音されたものです。その記念すべき最初のLPは、タイトルにもあるとおり、一つのリサイタルの形となっていますが、他のLPもこうした形をとっているものが大半です。このLPは写真のとおり、また前述したようにドイツ・グラモフォンからオリジナル縮小ジャケット入り(6枚組)のCDで入手できます。

オリジナルジャケト入りの復刻CD6枚入りのコレクション(ドイツ・グラモフォアン)
このように復刻CDがオリジナルのLPと同様の形で聴けるのは嬉しいことです。やはりセゴヴィアの演奏はオリジナルのLPの曲順で聴きたいものです(CDにはA面、B面がないが)。
オリジナルのLPではルネサンス時代のアロンソ・ムダラの作品に引き続き、シルビウス・レオポルド・ヴァイスとJ.S.バッハというドイツバロックの二人の作曲家の作品。最後に古典派の巨匠フェルナンド・ソルの曲と、古典派以前の作品でA面が構成されています。
ご存知のとおり、この”ヴァイスの作品”とされた「前奏曲」、「バレー」、「ジーグ」はマヌエル・ポンセの作品ですが、セゴヴィアの演奏では前後の作品にしっかりと馴染み、むしろセゴヴィアの演奏にはこれらの作品のほうがかえって似合う感じです。
バッハの無伴奏チェロ組曲から2曲録音していますが、「プレリュード」はポンセ編曲で、低音のやや多めに付け加えられています。1935年、1973年にも録音していて、計3回録音していますが、やはりこの1952年のものがもっとも多く聴かれているでしょう。「ガヴォット」は、原調より一音上げられ、ホ長調で演奏しています(楽譜も出版されている)。1946年に続き2度目の録音です。
ソルの作品の真価を伝える
次にソルの作品25のソナタの第1楽章「アレグロ」を録音していますが、この当時はまだこうしたソルの大曲を録音、あるいは演奏することは稀だったのではと思いますが、全曲演奏ではないとしても、この曲のすばらしさや、内容の充実度を一般に知らしめた演奏といえるでしょう。
B面はロマン派以降の作品
オリジナルのLPではB面はロマン派以降の作品となっています。メンデルスゾーンとシューベルトの曲はどちらもタレガ編を用いていますが、いつものとおりセゴヴィアは若干手を加えて演奏しています。どちらも名演ですが、メンデルスゾーンの「ベニスの舟歌」は、DGのオリジナル・ジャケット入りのほうでは後半に”音飛び”のようなものがあります。私が持っているCDだけなのでしょうか? 国内盤CDのほうには特にトラブルはありません。
トロバの「ソナチネ」全曲演奏
トロバの「ソナチネ」は第1楽章のみ1927年に録音していますが、このLPでは晴れての全曲演奏となります。
モーリス・ラヴェルが絶賛したというこの曲の魅力が充分感じられる演奏といえるでしょう。
ギターで「アストゥリアス」が弾かれるようになったのは意外と遅かった?
最後にアルベニスの「レーエンダ(アストゥリアス)」が収録されています。もちろんこの曲はギターで弾くアルベニスの曲としては最も人気が高く、知名度も高い曲ですが、ギターで演奏されるようになるのは、意外と遅かったようです。
同じアルベニスの作品でも、グラナダやセビージャはアルベニスの生存中からタレガなどによって演奏されていましたが、この「アストゥリアス」発表がやや遅かったこともあってか(1895年)、少なくともタレガやリョベットは編曲していません。
いつ頃からこの曲がギターで演奏されるようになったのかはわかりませんが、おそらくセゴヴィアも戦前には演奏していなかったのではと思います。セゴヴィアにとってはこの1952年が初録音、および唯一の録音です。因みにセゴヴィアは他のギタリストの編曲を用いていますが(現代ギター誌に記事)、若干手直して演奏しています。
他のギタリストも踏襲
この「レーエンダ」は作曲年代からすれば「ソナチネ」の前にくるはずですが、このLPはリサイタルの形をとっており、そのリサイタルの最後を締めくくるのにふさわしいということで最後に置かれています。こうしたことも後のギタリストたちによって踏襲されます(私もそれを時々踏襲しています)。
まさにセゴヴィアの最盛期
セゴヴィアは1950年代に入ると、米デッカと専属契約を結び、1972まで多くの録音を残すことになります。米デッカは文字通りメジャーなレーヴェルで、録音技術もセールスもこれまでとはかなり異なり、セゴヴィアの録音としてはまさに最盛期となってゆきます。私たち持っているセゴヴィアの演奏のイメージは、ほぼこの時代の演奏を基にしていると言っても過言ではないでしょう。
1950年代にはセゴヴィアは60代を迎えることになりますが、しかし演奏はまだまだ若々しく、活気溢れるものといってよいでしょう。1952年~1956年まではモノラル録音ですが、私個人的にはこのモノラル録音こそがセゴヴィアの演奏のイメージに最もぴったりくる感じがします。何といってもハウザーⅠ世の音が冴え渡る!
かつて17枚のCDに復刻されていたが
この1952~1972年のデッカへの録音は、1980年代に国内盤として17枚のCDに復刻されました。その際にはLPオリジナルの曲順ではなく、「バッハの作品」、「スペイン音楽」、「ポンセの作品」といったようにジャンルや作曲家ごとに組み合わせを変えて発売されました。この17枚のCDのうち、私が購入したのは輸入盤も含め15枚で、2枚ほど抜けてしまいました。

今現在ではこのシリーズのCDは廃盤となってしまい、ごくわずかのCDのみ在庫があるといった状況のようです。今現在この時代のセゴヴィアのCDを購入するとしたら、まず考えられるのは前述のナクソスのシリーズで1950年代の録音は8枚ほどのCDになっています(各CD単売)。
さらに人気曲だけをセレクションしたCDが多数あると思いますが、1950年代に録音した最初の6枚だけはオリジナルの縮小ジャケット入りで、オリジナルの曲順で発売されています。以前にも紹介しましたが、あとでまた詳しく述べます。
セゴヴィアの録音に関しては、今現在古いものほど入手しやすく、後の時代のものほど入手しにくくなっているようです。1970年代に録音した4枚のLPに関してはCDとして出ているかどうか、情報がありません。
LP録音年代順に紹介
それではちょっと手間のかかる作業になりそうですが、これらのオリジナルのLPを録音された年代順に紹介してゆきましょう。やはり私にとっても、また多くのギター愛好者にとっても想い出のあるLPだと思いますので。
<アンドレス・セゴヴィア・リサイタル> 1952年7月録音
ムダラ : ロマネスカ
ポンセ : 前奏曲、バレー、ジーグ (ヴァイス作曲として曲名表示)
バッハ : 前奏曲(チェロ組曲第1番より)、 ガヴォット(チェロ組曲第6番より)
ソル : アレグロ(ソナタ作品25より)
メンデルスゾーン : ベニスの舟歌
シューベルト : メヌエット
モレーノ・トロバ : ソナチネ(全3楽章)
アルベニス : アストゥリアス

上記のLPの縮小オリジナルジャケット入りのCD。曲順もオリジナルどおり。
もちろんのことですが、これ以降紹介するLPは最初からLPとして録音されたものです。その記念すべき最初のLPは、タイトルにもあるとおり、一つのリサイタルの形となっていますが、他のLPもこうした形をとっているものが大半です。このLPは写真のとおり、また前述したようにドイツ・グラモフォンからオリジナル縮小ジャケット入り(6枚組)のCDで入手できます。

オリジナルジャケト入りの復刻CD6枚入りのコレクション(ドイツ・グラモフォアン)
このように復刻CDがオリジナルのLPと同様の形で聴けるのは嬉しいことです。やはりセゴヴィアの演奏はオリジナルのLPの曲順で聴きたいものです(CDにはA面、B面がないが)。
オリジナルのLPではルネサンス時代のアロンソ・ムダラの作品に引き続き、シルビウス・レオポルド・ヴァイスとJ.S.バッハというドイツバロックの二人の作曲家の作品。最後に古典派の巨匠フェルナンド・ソルの曲と、古典派以前の作品でA面が構成されています。
ご存知のとおり、この”ヴァイスの作品”とされた「前奏曲」、「バレー」、「ジーグ」はマヌエル・ポンセの作品ですが、セゴヴィアの演奏では前後の作品にしっかりと馴染み、むしろセゴヴィアの演奏にはこれらの作品のほうがかえって似合う感じです。
バッハの無伴奏チェロ組曲から2曲録音していますが、「プレリュード」はポンセ編曲で、低音のやや多めに付け加えられています。1935年、1973年にも録音していて、計3回録音していますが、やはりこの1952年のものがもっとも多く聴かれているでしょう。「ガヴォット」は、原調より一音上げられ、ホ長調で演奏しています(楽譜も出版されている)。1946年に続き2度目の録音です。
ソルの作品の真価を伝える
次にソルの作品25のソナタの第1楽章「アレグロ」を録音していますが、この当時はまだこうしたソルの大曲を録音、あるいは演奏することは稀だったのではと思いますが、全曲演奏ではないとしても、この曲のすばらしさや、内容の充実度を一般に知らしめた演奏といえるでしょう。
B面はロマン派以降の作品
オリジナルのLPではB面はロマン派以降の作品となっています。メンデルスゾーンとシューベルトの曲はどちらもタレガ編を用いていますが、いつものとおりセゴヴィアは若干手を加えて演奏しています。どちらも名演ですが、メンデルスゾーンの「ベニスの舟歌」は、DGのオリジナル・ジャケット入りのほうでは後半に”音飛び”のようなものがあります。私が持っているCDだけなのでしょうか? 国内盤CDのほうには特にトラブルはありません。
トロバの「ソナチネ」全曲演奏
トロバの「ソナチネ」は第1楽章のみ1927年に録音していますが、このLPでは晴れての全曲演奏となります。
モーリス・ラヴェルが絶賛したというこの曲の魅力が充分感じられる演奏といえるでしょう。
ギターで「アストゥリアス」が弾かれるようになったのは意外と遅かった?
最後にアルベニスの「レーエンダ(アストゥリアス)」が収録されています。もちろんこの曲はギターで弾くアルベニスの曲としては最も人気が高く、知名度も高い曲ですが、ギターで演奏されるようになるのは、意外と遅かったようです。
同じアルベニスの作品でも、グラナダやセビージャはアルベニスの生存中からタレガなどによって演奏されていましたが、この「アストゥリアス」発表がやや遅かったこともあってか(1895年)、少なくともタレガやリョベットは編曲していません。
いつ頃からこの曲がギターで演奏されるようになったのかはわかりませんが、おそらくセゴヴィアも戦前には演奏していなかったのではと思います。セゴヴィアにとってはこの1952年が初録音、および唯一の録音です。因みにセゴヴィアは他のギタリストの編曲を用いていますが(現代ギター誌に記事)、若干手直して演奏しています。
他のギタリストも踏襲
この「レーエンダ」は作曲年代からすれば「ソナチネ」の前にくるはずですが、このLPはリサイタルの形をとっており、そのリサイタルの最後を締めくくるのにふさわしいということで最後に置かれています。こうしたことも後のギタリストたちによって踏襲されます(私もそれを時々踏襲しています)。
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