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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

ギター協奏曲ホ長調

ルイジ・ボッケリーニ ~カサド編曲 : ギター協奏曲ホ長調*
J.S.バッハ : チェロ組曲第3番

 *指揮エンリケ・ホルダ  シンフォニー・オブ・ザ・エア


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チェロつながりの一枚

 このLPはセゴヴィアがデッカに移籍してから2枚目の協奏曲の録音となりますが、A面がボッケリーニのチェロ
協奏曲からの編曲、B面はバッハの無伴奏チェロ組曲となっています。”チェロつながり”の一枚と言えるのでしょう。

 ボッケリーニの協奏曲はチェリストのガスパル・カサドの編曲ですが、ボッケリーニは自らの弦楽五重奏曲をギター五重奏に編曲していて、その延長としてチェロ協奏曲をギター協奏曲に編曲したのでしょう。
 

やや印象は弱い

 ボッケリーニのチェロ協奏曲は全部で13曲あるそうですが、この曲はその第6番二長調(ギター版ではホ長調)にあたりますが、残念ながら原曲を聴いたことがありません。この録音を聴いた感じでは協奏曲としては若干おとなしい感じで、前に録音したロドリーゴやポンセの協奏曲に比べると、やや印象の弱い感じは否めません。楽譜も出版されているそうですが、今のところ他のギタリストによって演奏されてはいないようです。



ファン待望の「無伴奏チェロ組曲第3番」全曲録音

 バッハのチェロ組曲第3番のほうがオリジナルのLPではB面ということになっていますが、このLPの購入者としてはこちらのほうが目当てだったのでしょう。セゴヴィアはこれまでもこの組曲の中からクーラントとブーレ(ルールの曲名でだが)を録音していて、ファン待望の無伴奏チェロ組曲の全曲録音といったところでしょう。なおセゴヴィアがバッハの組曲などを全曲録音(おそらく演奏も)しているのは、この曲のみです。


デュアート版使用だが、海賊版(耳コピー版?)が横行

 ギターへの編曲はイギリスの作曲家ジョン・デュアートで、原調ハ長調をイ長調にして編曲しています。1960~70年代にかけて、この編曲譜に近いものが国内で出版されていましたが、いわゆる海賊版的なものだったのでしょう、おそらくセゴヴィアの演奏をコピーしたもののようです。


でもこのイ長調版が世界標準

 いずれにしてもこの編曲は、正規のデュアート版を使用するにせよ(少数派だが)、海賊版を使用するにせよ(多くの場合それとは知らずに)、当時多くギター愛好家に親しまれたは確かで、ギターでこのチェロ組曲第3番を弾くということはイ長調のこのアレンジを使うのが常識となっていました。このアレンジは若干19世紀、あるいは20世紀的な響きも感じられますが、ポンセのアレンジ(チェロ組曲第1番のプレリュード)ほど音の追加は多くありません。


一応正規版を買った

 因みに私も海賊版使用派でしたが、若干の後ろめたさから最近になってデュアート版を”ちゃんと”買いました。ただし80年代の改訂版ということで、このLPのバージョンとは若干違っています。 


現在ではト長調版も

 純粋にチェロとギターの音域の違いを考えると、イ長調ではなく、1音低いト長調のほうがベストなのではと思いますが、確かに最近では福田進一氏のようにト長調で弾いているギタリストも出てきました。因みにバッハ自身では、楽器を変えてアレンジする場合、移調するのが常で、原調にこだわる必要は全くないと思います。


年輪を感じる落ち着いた演奏

 さて、セゴヴィアの演奏は、当然と言えば当然かも知れませんが、過去のバッハの演奏に比べ、かなり落ち着いたものになっています。テンポもゆっくり目で、これまで何度も録音してきたクーラントも3分21秒で、1944年の録音に比べると36秒ほど遅く弾いています。



演奏も音質もマイルド

 またかつては特定の音に付けられた強いアクセントもあまり聴かれなくなり、また録音技術の向上により、音質も当然ながらかなり良くなり、これまでのバッハの録音に比べると、いろいろな意味でマイルドになっています。

 ブーレも1954年にタレガ編の”ルール”として演奏されたものに比べると音域が5度低く、さらにテンポもゆっくりになり、かなり落ち着いたものになっています。しかし落ち着いた反面、若干物足りなさを感じる人もいるかも知れません。


セゴヴィアにしてはかなりインテンポ

 さらによく聴くと全曲通じて、セゴヴィアの演奏にしてはかなりイン・テンポで演奏されています。特に初めての録音である「サラバンド」や「ジグ」などはほぼ完璧にイン・テンポといってよいでしょう。サラバンドでは付点音符や長い音符でもほぼ正確な長さで演奏されています。

 これまでのセゴヴィアの演奏、特にソルなどの演奏からすると考えられないところですが、セゴヴィアとしてはバッハの音楽を最大限に尊重したということなのでしょうか、あるいは時代の流れと言うことなのでしょうか。確かに1960年代のクラシック音楽界では”楽譜に忠実に”ということが盛んに言われていた時代です。


ガンコ親父が・・・・

 といった訳で、このバッハの録音はあまり”クセ”がなく、また音質もよく、たいへん聴きやすいものと言えなくもないのですが、その一方で何か物足りなさも感じてしまうのも確かです。頑固一徹のオヤジが、急に周囲の人たちの言うことを聴くようになってしまったような・・・・

 セゴヴィアには時代様式だの、楽譜に忠実だのとは言ってほしくない? ちゃぶだいをひっくりかえしてほしい?


 
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昨日(9月22日土曜日)つくば市カピオ・ホールで「木村義輝、木村大、親と子の情景~父子で奏でる美しき叙情歌」を聴きました。プログラムは以下のとおりです。



赤とんぼ(山田耕作)
ふるさと(岡野貞一)
悲しい酒(古賀政男)
叱られて(弘田竜太郎)
村祭り(作者不詳)
 
さくら(作者不詳) ~木村義輝独奏
愛のロマンス(作者不詳)
カヴァティーナ(マイヤーズ)
インスピレーション(ジプシー・キングス 木村大編曲) ~木村大独奏
上を向いて歩こう(中村八大)

  アンコール曲 マラゲーニャ(スペイン民謡)、 この道(山田耕作)



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14歳で東京国際優勝

 トークを交えての約2時間のコンサートで、ホールは満席状態でした。木村大君については、皆さんもご存知と思いますが、14歳で東京国際ギター・コンクールに優勝し、現在ではクラシック・ギターの枠を超えた演奏活動をしています。お父さんの義輝さんもギタリストで、現在美浦村で木村ギター音楽院を開いています。


ありそうでなかった

 今回のような親子での共演は、これまで”ありそうでなかった”企画で、今回が初めてとのことです。お父さん
の木村義輝さんとは古くからの友人で、お互い30代の頃は一緒にコンサートなども行っていました。そういえば木村さん(お父さんの方)の演奏を聴くのはしばらくぶりです。


日本の歌からロック、フラメンコまで

 タイトルにもあるとおり、”しっとりとした”日本の歌に加え、ロック風やフラメンコ風のエキサイティングな曲と、変化のある内容で、日本の歌のアレンジも義輝さんのもの(明記されていませんが)と思われますが、なかなか凝ったものです。また親子だから当然と言えば当然ですが、なかなか相性のよい二重奏で、やはり音質なども近いのでしょう。


今後の父子での活動を期待

 PAを使用していましたが、かなり自然なもので、聴衆にあまりそれを感じさせることもなかったのではないかと思います。ただしエレキ・ギター的なミキシングの曲もあり、その時だけPAの存在を感じたでしょう。

 観客を大いに楽しませ、湧かせた2時間のコンサートでしたが、この木村義輝、大父子での今後のいっそうの活動を期待する声も多くあがりました。  
なりを潜めていた

 このところいろいろあってこのセゴヴィアのCD(実質はLP)の紹介も滞ってしまいました。今年は9月に入っても暑い日が続き、2,3日前まで暑い、暑いと言っていたら、このところ急に涼しくなってきました。やはり季節は進むものですね(当たり前ですが)。

 涼しくなって快適になってきたと思ったら、この急な温度変化に、これまでなりを潜めていた鼻炎が復活し出してしまいました。私の鼻炎は花粉とか、埃とかよりも温度の変化とか、体調に深く関係があるようですね、困ったものです。


マエストロ 1961年8月録音

ルイス・ミラン : パヴァーナ第5,6番
ロベルト・ド・ヴィゼー : パッサカリア
作者不詳 : ジーガ・メランコリア
ヨーゼフ・ハイドン : ラルゴ・アッサイ、 メヌエット 
アルベニス : サンブラ・グラナディーナ
ガスパル・サンス : ガリャルダス、エスパニョレッタ
ドメニコ・スカルラッティ :ソナタL79
フェルナンド・ソル : アンダンテ・ラルゴ、ロンド
フェリックス・メンデルスゾーン : 無言歌作品30-3
モレーノ・トロバ : 松のロマンセ
 

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楽器をホセ・ラミレスⅢに変える

 このLP[マエストロ」は、1958年にセゴヴィアのデビュー50周年ということで3枚のLPを録音してから3年後の録音となります。その間の1959年に来日して日本のファンから絶賛を浴びることになります。また1960年よりセゴヴィアの使用楽器がヘルマン・ハウザーからホセ・ラミレスⅢ世に変ります。

 理由としてはこれまで長年使用してきたハウザーが故障により思うような音が出なくなったということですが、単なる故障なら、かなりの程度まで修理は可能だと思いますので、セゴヴィアの趣向の変化も理由の一つに含まれるのではないかと思います。


録音では大きな差は感じられないが、ラミレスのほうが肉厚で、高音が出る

 松材のハウザーと杉材のラミレスではかなり違う音質だとは思いますが、録音で聴く感じではそれほど違うようには聴こえません。私も含めて多くの人には、楽器の違いは言われてみないとわからない程度だと思います。どの楽器を使ってもセゴヴィアの音はセゴヴィアの音といったところでしょうか。

 強いて言えば、ラミレスのほうがふんわりと、肉厚で、高音がよく響き、ハウザーのほうはクリヤーな音で集中度の高い印象があります。ラミレスのほうが穏やかに聴こえますが、それはセゴヴィア自身の演奏の変化かも知れません。


落ち着いた録音

 また数年前に始まったステレオ録音も、この頃になるとかなり落ち着いてきて、前回のLPで感じたような違和感や、試行錯誤的なところはなくなり、とても自然な音になっています。またノイズもかなり少なくなっています(LPのほうでは多少あった記憶がありますが)。

 この1961年前後に録音された他のギタリストの録音と、このデッカ・レーヴェルによるセゴヴィアの録音を比較すると、やはりセゴヴィアの録音はかなり優れたものではないかと感じます。当時の最先端の技術と資金をかけた録音なのでしょう。そういった点でもセゴヴィアは別格の扱いだったのでしょう。 


「プレイズ」同様、大曲や有名な曲が少ない小品集。これも私の愛聴盤

 プログラムのほうは上記のように「小品集」的で、A面、B面(オリジナルのLPの)ともルネサンス、あるいはバロック時代の作品で始まり、近代の作品で終わるようになっています。そういった点でも1954年録音の「プレイズ」によく似ています。あまり有名な曲が入っていないところも同じです。

 偶然ですが、私個人的には、この「マエストロ」も「プレイズ」同様昔からたいへんよく聴きこんだLPで、個人的にはたいへん愛着のあるものです。やはりこういったプログラミングに、セゴヴィアの魅力はより発揮されるように思います。


自作の「ジーガ・メランコリア」は3度目の録音 

 「ジーガ・メランコリア」はこれまで何度か登場してきた曲ですが、1939年にフローベルガー作、1944年にド・ヴィゼー作の「ジーグ」として演奏した曲と同じ曲です。3度目となるこの1961年にはタイトルを「ジーガ・メランコリア」と若干変え、作者不詳として録音されました。もちろん実際はセゴヴィア自身の作曲です。

 細かく見ると前の2回の録音より、今回のものは前半のところで1小節ほど追加されています(それ以外は変らない)。それにしてもセゴヴィアには他に「光のない練習曲」などオリジナル作品もあるのですが、それらの曲を差し置いてこの「ジーグ」にこだわりがあるようです、自信作なのでしょうか。


ハイドンの弦楽四重奏から2曲

 このLPにも2曲のハイドンの作品が収められていますが、やはりハイドンとセゴヴィアは相性がよいようです。この2曲ともなかなか優れた演奏だと思います。2曲とも弦楽四重奏曲からの編曲で、「ラルゴ・アッサイ」は「ト短調作品74-3」の第2楽章、「メヌエット」は「ト長調作品76-1」の第3楽章。前者はタレガ編、後者はセゴヴィア編と思われます。


アルベニスのサンブラ・グラナディーナ

 アルベニスの「サンブラ・グラナディーナ」は1969年録音の「マジョルカ」と同じくアルベニスの作品の中でもギターによく合う曲で、セゴヴィアはどちらも1回のみしか録音していないが名編曲、名演奏と言えるでしょう。


最後はしみじとした「松のロマンセ」

 メンデルスゾーンの「無言歌」は1952年に録音した「作品19-6」と同じく「ベニスの舟歌」というタイトルが付いているが、別の曲で、やはりタレガ編を使用していると思われます。最後はモレーノ・トロバの「スペインの城」から「松のロマンセ」で静かに閉じていますが、1970年の全曲演奏の先取りと言った感じです。
 
水戸ギター・アンサンブル演奏会に来ていただいた方々、ありがとうございました


 昨日(もうすぐ一昨日になってしまいますが)の水戸ギター・アンサンブル演奏会に来ていただいた方々、本当にありがとうございました。まだまだ蒸し暑い時期となってしまいましたが、約100名の方に来ていただきました。


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      リハーサル


  一般に、こうしたギター・アンサンブルの演奏会というのは、ポピュラーからクラシック、古いものから新しいものまで、いろいろバラエティに富む内容のものが多いのですが、今回の演奏会はモーツァルトと19世紀のギタリストの作品という、ややゾーンの狭い内容でコンサートを行ってみました。


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   熊坂さん(楽屋前で)

次回(2014年)はまた違ったコンセプトのプログラムに

 昨日聴いていただいた方々の中には、もっといろいろな種類の曲を聴きたかったという方も、もちろんいらっしゃるとは思いますが、この水戸ギター・アンサンブル演奏会に来ていただいている方の半数くらいは、これまでにも何度か足を運んでいただいている方のようです。

 となると、やはり毎回それぞれ違ったコンセプトでコンサートを行い、ギター合奏のいろいろな形を楽しんでいただくのが良いかなとも思います。次回コンサートはおそらく再来年(2014年)になると思いますが、それまで2年間のどかけて、また一つの個性あるプログラムを作ってゆきたいと思います。またぜひよろしくお願いいたします。

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  独奏リハーサル ・・・・ウーン、チューニングが決まらんなあ 


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  コンサートを終え、ほっとしている中川、佐藤さん
コスト :秋の木の葉作品41-9
メルツ : ギター独奏のためのコンチェルティーノ



今週の土曜日(9月15日)に行われる水戸ギター・アンサンブル演奏会の紹介の続きです。ふと気が付いたのですが、今年の私のコンサートは、6月15日に県立図書館、7月15日に水戸市民音楽会、そして9月15日に第15回水戸ギター・アンサンブル演奏会と、 ・・・・・・あまり深い意味はありませんが。


今年シニア・ギター・コンクールで優勝した熊坂さんの演奏

 さて上記の曲目は、今年の5月、石岡市のギター文化館で行われたシニア・ギター・コンクール、シニアの部で1位になった熊坂勝行さんが演奏します。ご存知かも知れませんが、熊坂さんは、”上質の音楽を少人数で楽しむAcoustic Life”を主宰しています(本人は管理人と言っていますが)。

 そのアコラ(Acoustic Lifeの通称)では、これまでグロンドーナ、北口功、宮下祥子各氏をはじめとするさまざまなギタリストのコンサートを行い、また定期的に愛好者のコンサートなども行っています。私も何度か演奏させていただきました。

 熊坂さん自身は高校生の頃からギターを始めたそうですが、その後はしばらく中断していて、10年ほど前から再開し、北口功さん、宮下祥子さんなどに師事しています。最近では私のレッスンも時折受けてもらっています。


「秋の木の葉第9番」は村治佳織さんが高校生の時に録音

 演奏曲目のうち、コストの「秋の木の葉」は「12のワルツ作品41」の副題で、そのうちの第9番は、10数年ほど前に村治佳織さんがデビュー・CDに録音し(当時高校1年生だったかな?)、それ以来よく演奏されるようになりました。曲名どおりとても和む曲で、今回は中間部を省略して演奏します。


ヴィルトーゾ的な曲

 メルツの「コンチェルティ-ノ」は1856年にマカロフ主宰でブリュッセルで行われたギターの作曲コンクールで1位になった作品です。メルツはこの時すでに他界しており、この作品がメルツの最後の作品となりました。曲はたいへんヴィルトーゾ的、つまり高度な演奏技術が必要な曲で、腕自慢のギタリストを対象とした曲といるでしょう。因みにこのコンクールで2位になったのは、コストの「セレナーデ」です。

 この「コンチェルテーノ」は、本来は10弦ギターのために書かれていて、本来オクターブ下で鳴り響かなければならない低音が所々あります(今回は通常の6弦ギターで演奏)。曲は中断なく演奏されますが、3つの部分に分かれ、最初の部分のみイ短調で、後続の二つの部分はイ長調となっています。



カルリ : 対話的二重奏曲作品34-2

 演奏は当アンサンブルの女性メンバー、中川真理子さんと、佐藤智美さんです。中川さんにはもう16~7年くらい私のレッスンを受けてもらっているでしょうか、当演奏会ではほぼ毎回二重奏などを行っています。佐藤さんは当アンサンブルでも数少ない若いメンバーの一人ですが、いつのまにかギターを始めてから10年くらいになります。


カルリというと練習曲で有名だが

 曲の方は19世紀のパリで活躍したフェルナンド・カルリの作品です。カルリというと私たちクラシック・ギターをやるものにとっては、練習曲などでとてもなじみのある作曲家で、おそらくクラシック・ギター愛好者の中で、カルリの曲を弾いたことがないという人はいないのではないかと思います。

 それほど多くのギタリストに親しまれている作曲ですが、ギターのリサイタルでカルリの曲が演奏されることは極めて稀なことです。演奏会用の作品がなくはないのでしょうが、やはりカルリというと初、中級者用の練習曲といったイメージがぬぐえないのでしょう。


ブリームとウィリアムスのLPで知られるようになった

 確かにカルリの独奏曲はあまり演奏されることはないのですが、二重奏曲となるとステージでも比較的よく演奏されます。この「作品34-2」は1970年代に当時人気絶頂だった2人のギタリスト、ジュリアン・ブリームとジョン・ウィリアムスが録音し、以来一般にもよく演奏されるようになりました。「ラルゴ」と「ロンド」の二つの楽章からなります。




ソル : メヌエットホ長調作品11-10、 練習曲イ長調作品6-12、同6-6、モーツァルトの「魔笛」による主題と変奏

 フェルナンド・ソル(19世紀のスペインのギタリスト兼作曲家)の作品4曲は私が演奏します。メヌエットは「12のメヌエット作品11」からのもので、この12曲中では一般に5番(二長調)、6番(イ長調)などがよく演奏されます。今回演奏する「第10番」の冒頭の部分には”etouffez”の指示があり、ソル自身は「通常よりは力を抜き加減に、しかしハーモニックを出す時ほどは軽くせず押さえる」と説明しています。


あまり軽くすると・・・・

 意外とこれがどの程度力を入れて押さえればよいのか、結構難しいところです。あまり軽くするとただの雑音みたくなってしまいますし、かといって強く押さえ過ぎると”普通”の音になってしまうし・・・・ また「右手をつかわず、左手のみで演奏するように(=レガート奏法)」といった指定もあります。


落ち着いた曲と活発な曲

 二つの練習曲は共にイ長調で、どちらも「12の練習曲作品6」に含まれます。またセゴヴィア編の「ソル20の練習曲集」にも含まれ、それぞれ第14番、第12番となっています。「作品6-12」のほうはアンダンテで内声部の動きが充実した、美しく、落ち着いた感じの曲です。それに比べて「作品6-6」のほうは動きの活発な曲となっています。どちらも3度の和音が多用されていて、多少の関係はあるのかも知れません。



モーツァルトとギターとの接点?

 ところで、今回のプログラムはモーツァルトを中心にしたものなのですが、実際にはモーツァルトとギターとはほとんど接点がないようです。おそらくモーツァルトはギターを弾いたことはないでしょうし、知り合いのギタリストも多分いなかったのではないかと思います。要するにモーツァルトとギターに関する情報は全くありません。

 強いていえば、モーツァルトのオペラ「フィガロの結婚」で、ケルビーノのアリア「恋とはどんなものかしら」はギター伴奏で歌うという設定になっていますが、実際にはギターではなく弦楽器のピッチカートなっています。



歴史にタラレバはないが

 歴史に”たら”とか”れば”はありませんが、モーツァルトは結構お金に困っていた時期もあったようですから、その当時だれか若干の金額でソナタか協奏曲の2、3曲も注文したら、きっと二つ返事で引き受けたのではないかと思います。モーツァルトのことだったら、自分でギターなど弾いたことはなくともギターのための傑作を書いたのは間違いありません。

 本当にそんなことがあったらギター界のもの凄い財産になっていたでしょうね。もっともフルート協奏曲の時のように他の曲からの編曲になっていたかも知れませんが、それでも大きな財産なのは違いありません。 ・・・・・残念


モーツアルト本人は全く知らぬことだが

 これはモーツァルトのあずかり知らぬことではありますが、私たちギタリストがモーツァルトといえば、何と言ってもソル作曲の「モーツァルトの『魔笛』の主題による変奏曲」を思い浮かべます。この曲はクラシック・ギターの名曲中の名曲となっています。

 アマチュアからプロにいたるまで多くのギター愛好者、ギタリストの愛奏されている曲といえます。序奏と主題、5つの変奏、コーダとなっていて、比較的シンプルな変奏ですが”きちっと”弾くのはなかなか難しい曲でもあります。有名な曲だけに聴き手のハードルも自然に上がってしまうといった点もあるでしょう。


モーツァルトと19世紀のギターを繋ぐ

 因みに主題はモノスタートスと手下たちが歌う「なんと言うすばらしい鐘の音」という短いアリアから取られていますが、ソル自身よって多少手が加えられています。モーツアルトと19世紀のギターを繋ぐ曲として、今回プログラムに載せました。


お待ちしています

 水戸ギター・アンサンブル演奏会、いよいよ明後日になりました。是非会場に足を運んでいただければと思います。


日時 : 9月15日(土曜日) 18:00~(開場17:30)

場所 : ひたちなか市文化会館小ホール

入場無料



  
 先日も言いましたとおり、今週の土曜日(9月15日)18:00~ ひたちなか市文化会館小ホールで第15回水戸ギター・アンサンブル演奏会を行います。演奏曲目、曲順は以下のとおりです。


セレナードト長調K525「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」(全4楽章)
   <水戸ギター・アンサンブル9名による合奏>

N.コスト : 秋の木の葉作品41-9
J.K.メルツ : ギター独奏のためのコンチェルティーノ 
   <独奏 熊坂勝行>

F.カルリ : 対話的二重奏曲ト長調作品34ー2
   <二重奏 中川真理子 佐藤智美>

F.ソル : メヌエットホ長調作品11-10、 練習曲イ長調作品6-12、 練習曲イ長調作品6-6、 モーツァルトの「魔笛」の主題による変奏曲作品9
   <独奏 中村俊三>

W.A.モーツァルト : モルトー・アレグロ(交響曲第40番ト短調第1楽章)
   <合奏 水戸ギター・アンサンブル




アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク(全4楽章)

 合奏のほうでは2曲のモーツァルトの曲を演奏します。最初に演奏する「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」は10年ほど前にも演奏しましたが、ギター合奏でも比較的演奏しやすく、よく演奏される曲といってよいでしょう。


ト長調→ハ長調で演奏、アルト・ギターは使用しない

 前回はアルト・ギターを用いて(二長調)演奏しましたが、今回は音色を考慮しプライム・ギター(通常のギター)とコントラバス・ギター(1オクターブ低い)で演奏します(ハ長調)。技術的には若干難しくなりますが、最高音が15フレットくらいなので、特には問題ありません。


弦楽器、あるいはモーツァルト独特のニュアンス

 ギター合奏に向いた曲とは言っても、第2楽章の「ロマンス」は、弦楽器独特、あるいはモーツァルト独特のニュアンスがたいへん重要なので、それを再現するのはなかなか簡単ではありません。アーティキュレーションの徹底や、「スラー奏法を使わないスラーの弾き方」などには結構苦労しました。


やはりギター合奏にはよく合っている

 第3楽章「メヌエット」のトリオの旋律などをレガートに演奏するのもなかなか難しいことですが、そういった
点を考慮しても、曲全体の明るく明快な感じは、ギター合奏にはよく合い、またこの9名という編成にもよく合っていると思います。



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交響曲第40番第1楽章

 「交響曲第40番」は、モーツァルトの作品中でも名曲中の名曲、場合によってはこの名曲を台無しにしてしまうこともあり、この曲をプログラムに入れることには躊躇がありました。結果的にはやってみたいと言う気持ちが上回って、今回の演奏会にプロに載せることになりました。


とても難しい曲だが

 確かにたいへんすばらしい曲ではありますが、決してギター合奏にむいた曲ではなく、また当アンサンブルの実力を考えても無理な点もあります。テンポだけをとっても指示された「モルトー・アレグロ」で演奏するのはかなり難しいものですし、またオーケストラの色彩感なども再現するのは至難の業と言えます。


聴くだけではわからなかったところが

 私自身ではCDなどで何度も何度も聴いている曲ですが(CDは20種類くらい持っている)、実際にこの曲を演奏してみると、これまで何度聴いても分からなかったようなことが理解出来た部分もあります。「なるほど、モーツァルトの音楽って、こんなふうに出来ているのか」というように。もちろんモーツァルトの音楽は、ただ心地よいというものだけではありません。


なりきり交響楽団

 身勝手な理由になってしまいそうですが、そういったことを考えると、今回この曲をやってよかった、あるいはやれてよかったと思います。また私以外のメンバーも、練習の際には結構”その気になって”演奏しているように思います。 ・・・・強いていえば”なりきり”交響楽団でしょうか。
Duo Felice ミニ・コンサート 9月1日ひたちなか市アコラ

昨日ひたちなか市アコラでDuo Feliceミニ・コンサートを聴きました。プログラムは以下のとおりです。


佐藤弘和 : はかなき幻影、 Dream child
C.テデスコ : ファンタジア(ギターとピアノのための)
壺井一歩 : バラの組曲より第1、第2楽章
モシュレス : グラン・デュオ第1楽章 


 Duo Feliceは、谷島崇徳、あかねさん、ご夫婦のギターとピアノのデュオで、今回のプログラムはすべてギターとピアノのためのオリジナル作品ということだそうです。ギター協奏曲などをオーケストラの代わりにピアノで合わせるということはあっても、ギターとピアノのオリジナルの作品は意外と少ないそうです。

 佐藤弘和さんの2曲は、Duo Feliceのレパートリーということで、これまでも何度か聴ました。ギタリスト兼作曲家の佐藤弘和の奥様もピアニストだそうですが、ギターとピアノのための曲は、今のところこの2曲だけだそうです。じっくりと歌う曲と動きのある曲の組み合わせになっています。

 イタリアの作曲家、カステルヌォーヴォ・テデスコのギターとピアノのための「ファンタジア」は私自身楽譜は持っているのですが、実際には聴いたことがなかったので、ちょうどよい機会でした。幻想的な楽章と軽快な楽章の二の楽章からなっています。譜面を見た印象ではやや重く感じましたが、実際に聴いてみるとシリアスといった感じの曲ではなさそうです。



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    テデスコの「ファンタジア」


 壺井一歩氏の「バラの組曲」はこのDuo Feliceのために書かれた曲ということで、とても大事そうに演奏していました。

 ベートーヴェンと同時代の作曲モシュレスの曲はマウロ・ジュリアーニとの共作だそうですが、おそらく曲全体の構成などはモシュレスが行い、ギターのパッセージはジュリアーニが作曲したものと思われます。典型的なソナタ形式の曲のようですが、短調になる展開部などはなかなか印象的でした。

 このDuo Feliceのコンサートでは、ともかくあまり聴いたことがない曲が聴けるということが最大の特徴でしょうか、これからもいろいろな曲を聴けることを楽しみにしています。




今日は丸一日アンサンブル演奏会のための集中練習

 水戸ギター・アンサンブル演奏会も、あと2週間となりました。この演奏会のための練習としては昨年震災後の6月頃から始めましたが、そろそろ大詰めとなってきました。そこで今日(9月2日)は午前10:30から夕方まで、まる一日の集中練習を行いました。

 独奏の演奏会前でも5~6時間くらい練習することはもちろんありますが、でもこの合奏練習の疲れ方とはまた違うようです。確かに合奏では弾く音の数は少ないのですが、たくさんの音を聴かなければならないので、集中力などは独奏の練習に比べるとずっと疲れる感じです。

 今回の出演は水戸ギター・アンサンブルのメンバー9人(私を含めて)と、今年の5月のシニア・ギター・コンクールで優勝した熊坂さんの、計10名となります。皆今日はちょっと疲れたと思いますが、まあ、なんとか曲のほうも形が付いてきたような気がします。本当にお疲れ様(本番はまだだけど)。

 今回のプログラムは合奏によるモーツァルトの名曲に、ソル、カルリ、メルツ、コストといった19世紀のギターの作曲家の作品の独奏、二重奏となっています。ギターとモーツァルトは決して相性がよいとは言い切れませんが、こんなモーツァルトもあるのかなと、なんとか楽しんでもらえるのではと思います。

 曲目の紹介等はまた後日行いますが、ぜひ会場に足を運んでいただければと思います。