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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

アンドレス・セゴヴィア メヒカーナ 1967年録音


ポンセ : ソナタ・メヒカーナ
ロマンサ : パガニーニ ~ポンセ編
トゥリーナ : セヴィリャーナ
ソル : メヌエット ホ長調作品32、 メヌエット ト長調、 メヌエット ホ長調作品11-10
ポンセ : ソナタ・クラシカ



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ポンセのソナタ2曲を録音

 セゴヴィアは1967年に録音したもう一つのLPは、マヌエル・ポンセの二つのソナタ、ソナタ・メヒカーナとソナタ・クラシカを中心としたものです。これでセゴヴィアはポンセの主要なソナタ全曲、およびその主要な作品はほとんど録音したことになります。

 セゴヴィアに初演が託された多くの作曲家の作品では、結局セゴヴィアの手によっては録音されなかった曲の多数ある中で(例えばヴィラ・ロボスの作品など)、ポンセの作品がこれだけ録音されたということは、ポンセの作品というのは、セゴヴィアの中では別格扱いだったのでしょう。



ポンセの4つのソナタをすべて録音

 ポンセの5つのソナタ(「南のソナチネ」を含む)は1920年代に作曲されたということなので、作曲から40年ほどしてこれらのソナタが全曲録音となったわけです。なお「ソナタ・メヒカーナ」の第4楽章が1958年に、「ソナタ・クラシカ」の第4楽章が1949年に録音されています。



いろいろな作風で作曲しているが

 バロック風とかシューベルト風(ソナタ・ロマンティカ)ソル風(ソナタ・クラシカ)とか様々な様式で作曲しているポンセですが、この「メキシコ風ソナタ(ソナタ・メヒカーナ)」というのは、いわば自分流のソナタということになるのでしょう。確かに、たまには自分流の作品を書かないと自分の作風を忘れてしまうかも知れませんね(そんなことあるはずないか)。

 このソナタは4つの楽章からなっていますが、それぞれに次のような副題がついています。

第1楽章 アレグロ・モデラート 「ショールのかわいい舞曲」
第2楽章 アンダンティーノ・アフェットゥオーゾ 「アウエウエテの夢」
第3楽章 イテルメッツォ・アレグレット・イン・テンポ・ディ・セレナータ 「タップダンスの間奏曲」
第4楽章 アレグレット・ウン・ポコ・ヴィヴァーチェ 「アステカのリズムと歌」



意外と録音は少ない

 セゴヴィアの演奏は軽快なリズムの部分と歌わせる部分とを巧みに弾き分けています。このソナタは「ソナタ第3番」や「南のソナチネ」などに比べると他のギタリストによって演奏されることは少なく、CDもあまり出ていなくて、私もこの演奏以外の録音を持っていません。

 「ソナタ・ロマンティカ」などは最近演奏されることが多くなってきましたが、最も「ポンセらしいソナタ」と言えるこの曲も、今後は演奏される機会も多くなってゆくのではと思います。



ポンセ編曲、パガニーニの「ロマンサ」

 パガニーニの「ロマンサ」は1952年に録音された「アンダンテ・ヴァリアート」と同じくパガニーニの大ソナタからポンセが編曲したもので、パガニーニの作品として聴くより、ポンセの作品として聴いた方がよいといった曲です。

 もともとシンプルな曲に副旋律などを追加した形ですが、「アンダンテ・ヴァリアート」よりは原曲との距離は近い感じがします。なかなか面白いといえば面白いのですが、私個人的にはパガニーニの音楽はパガニーニとして、ポンセはポンセとして聴いた方が好きかなと思います。



血が騒ぐ

 トゥリーナの「セヴィリャーナ」はトゥリーナの曲の中でもフラメンコ色が強く、ラスゲヤードが多用される曲です。こうした曲になると、セゴヴィアは幼少期に親しんでいたフラメンコの血が騒ぐといったところでしょうか、文字通り”水を得た魚”といった感じです。一方で歌わせるところはいつものようにたっぷりと歌わせています。



「メヌエット ホ長調作品32」は「アンダンティーノ」

 ソルの3つのメヌエットを収録していますが、「ホ長調作品32」は「6つの小品集」からのもので、普通「アンダンティーノ ホ長調」として親しまれています。ソルの譜面には「メヌエット」とは全く書かれていませんが、他の2曲がメヌエットなので、この曲もメヌエットとセゴヴィアはしたのでしょうね。確かに3拍子の曲ではありますが。なおこの小品集には有名な「ワルツホ長調」や「ギャロップ」などが含まれています。



通常の弾き方で

 「メヌエット ト長調」は「主題と変奏とメヌエット作品3」からで、「メヌエット ホ長調作品11-10」は「12のメヌエット作品11」からです。「作品11-10」は左手だけによる奏法や例の「エトーフェ」も出てきますが、セゴヴィアはどちらも通常の弾き方で弾いています。



ソル風の作品だが

 「ソナタ・クラシカ」は「フェルナンド・ソルを讃えて」と副題されており、第4楽章にはソルの「ソナタ ハ長調作品25」の一部分が使用されています。また第1楽章には低音弦の連打が多用されていますが、これも「グラン・ソロ」などのソルの作品からの借用と考えられます。

 確かにソル風に作られた曲と言えますが、ソルはあまり書かなかったイ短調という調性ということもあって、聴いた感じではそれほどソル風には聴こえません。ある意味ヴァイス作曲とした「組曲イ短調」的な雰囲気があります。


親しみやすいはずだが

 このソナタはポンセのソナタの中では比較的親しみやすい感じがすると思うのですが、「ソナタ・メヒカーナ」以上にあまり演奏されないようです。ポンセの「純正品」的ではない感じがするからでしょうか。

 

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初出のLPジャケット しっかりと最新録音とオビに書いてある。確かに他のLPに比べて音質がよかった。 

 ちなみに、私が持っているセゴヴィアのLPは、ほとんどが再発物なのですが、このLPだけは”初出”のものです。しっかりとオビに「セゴヴィア最新録音」とかいてあります。私がこのLPを買ったのは1971年頃で、中古レコード店でたまたま見かけてということですが、今では貴重な”初出物”と言うことになりました。

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アンドレス・セゴヴィア オン・ステージ 1967年5月録音


パーセル : 前奏曲、メヌエット、新しいアイルランドの歌、ジーグ、ロンド
スカルラッティ : ソナタイ長調L483
ヘンデル : ソナタ二短調、フゲッタ、メヌエット、エア、パスピエ
バッハ : サラバンド、ブーレとドゥーブル(無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第1番より)
デュアート : イギリス組曲
カサド : 序奏とサルダーナ




しばらくぶりですが、セゴヴィアのLPの紹介を再開します

 セゴヴィアのLPの紹介を中断してから2ヶ月以上経ってしまいましたね。昨年はほぼこのテーマで終始してしまいましたが、ここまで来た以上なんとか最後までがんばりましょう。



今回のLPは小品集

 前回(といっても昨年の11月上旬ですが)はタンスマンの「ポーランド組曲」とモンポウの「コンポステラ組曲」の録音、前々回はテデスコの「プラーテーロと私」とポンセの「ソナタ・ロマンティカ」と言うようにこの時代セゴヴィアは現在でも主要なギターのレパートリーとされている、まとまった内容の充実したLPを発表しています。そういった意味では今回のLPは久々の小品集といえます。



イギリスの音楽家に因んだ作品?

 曲目を見ると、このLPはバロック作品の編曲がほとんどで、それにデユアートのイギリス組曲とチェリストのガスパル・カサドの作品が収録されています。このLPはパーセルやヘンデル、そしてデュアートのイギリス組曲とイギリスに因んだプログラムということなのかも知れませんね、完全ではありませんが。



パーセルの「ロンド」は青少年管弦楽入門に使われた曲

 ヘンリー・パーセルはバロック時代のイギリスの作曲家で、チェンバロ曲などから小品をセゴヴィアが編曲して演奏しています。「ロンド」はブリテンの「青少年ための管弦楽入門」に用いられた曲で、ジュリアン・ブリームも独自に編曲しており、なかなかギターによく合う曲だと思います。

 スカルラッティのソナタイ長調L483(K322)は原調のままの演奏で、編曲は弟子にあたるジョン・ウィリアムスの編曲となっています。何度か話に出てきたホ短調(K11)とは対照的に明るく軽快な曲です。



エイルズフォードの8つの小品より

 これも以前に(セゴヴィアのLPの紹介、および10月の私のコンサートなどで)紹介しましたが、ヘンデルの「エイルズフォードの8つの小品」の中から5曲ですが、以前にもメヌエットイ短調(アレグレット・グラッチオーソ)とガボットを録音しているので、全8曲中、サラバンドハ長調を除いて7曲録音したことになります。サラバンドハ長調は有名なサラバンド二短調に比べると若干聴き映えしないとかんじたのでしょうか。



大筋では変らないが、細かい部分はかなり楽譜と違う

 ソナタ二短調(これも私のコンサートのところでお話しましたが)は8曲中、最も充実した曲と思いますが、セゴヴィアの編曲譜を見ながら聴くと、このLPでの演奏は譜面とは細かい部分ではだいぶ異なるようです。と言ってもやや枝葉的な部分についてのみで、主旋律など曲の重要な部分では特に変りはないので、ざっと聴いた感じでは譜面どおりにには聴こえます。

 おそらくこの曲を弾きこんで行くうちに伴奏部分の扱いなどどんどん変っていったのpではないかと思います。他の曲についてもそれぞれ譜面と演奏では若干異なるのですが、このソナタ二短調が最も異なるようです。それだけこの曲はよく弾きこんだということでしょうか。



リョベットの録音から40年ほど経つが

 バッハの「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第1番ロ短調」からサラバンドとブーレ、ドゥーブルを録音していますが、サラバンドと言えば、このタイトルの最初の頃に紹介したリョベットの強烈な演奏が思い出されます。セゴヴィアの演奏には確かにそのリョベットから影響を受けた部分は感じ取れますが、そのリョベットの録音からすでに40年ほど経ち、その影響もかなり薄くなっています。

 テンポは中庸といったところで、イン・テンポに近いというのはチェロ組曲第3番の時と同様ですが、肉厚な豊かな音で演奏しています。

 サラバンドにはドゥーブルをつけていませんが、ブーレ(正確にはテンポ・ディ・ボレア)にはドゥーブルをつけていて、編曲譜も出版しています(ショット社)。ブーレはアラ・ブレーヴェ(2分の2拍子)となっていて、速めのテンポが想定されますが、セゴヴィアの演奏はややゆっくり目に演奏しています。その分ドゥーブルのほうはブーレよりも速いテンポで、いっそう軽快に弾いています。重い音と軽い音の対比などはなかなかの聴きものだと思います。



イギリスの民謡をもとに作曲したイギリス組曲

 「イギリス組曲」はイギリスの作曲家、デュアート(バッハのチェロ組曲の編曲でも有名)がイギリスの民謡をもとに作曲した曲で、親しみやすく現在でもよく演奏されます。セゴヴィアは全体にやや軽めの音で演奏していますが、第2楽章などはクレシェンド+アチュレランドを巧みに用い、強い表現をしています。

 ガスパル・カサドの曲は音源がないのでコメントできませんが、解説などによるとここに録音されている「サルダーナ」は55年に録音した曲とは別の曲だそうです。セゴヴィアの同郷の友人の曲ということになるのでしょう。
 昨日(1月19日)ひたちなか市アコラ、およびひたちなか市文化会館内「スイング」において2013年アコラ新年会が行われ、出席しました。

 新年会といっても、実質は愛好者によるコンサートといった形で、約20人くらいの人が二重奏、及び独奏を行ないました。いつものとおり、県外からの出席者も決して少なくなく、今年の”弾き初め”ということでそれぞれなかなか気合の入った演奏でした。

 楽器についても、それぞれ自慢の愛器での演奏でしたが、自作の楽器で演奏すると言う人もおり、楽器へのこだわりも並ではないようです。

 午前10時に始まったこの会ですが、終演したのは4時過ぎとなり、昼食を挟み6時間を越すコンサートとなりました。今年も熱気に包まれた新年会でした。 
雪になってしまいましたね

 昨日の天気予報では今日は雨で、夜一時雪ということだったのですが、水戸も午前中からすっかりと雪になってしまいました。予報でも今日一日雨で、降水量も多めということで、もし雪になった場合は相当つもるかなと言う予感もしたのですが、本当にそうなってしまいましたね。

 今日いっぱいは降るようなので、このままゆくと結構な積雪になってしまいそうですね。往来の多い道路ではそんなに積もってはいないでしょうが、私の家のまわりなど、あまり車が通らないのでかなり積もってしまいそうです。



エサ・ペッカ・サロネン(ロサンゼルス・フィルハーモニー 2006年) ~指揮者界の貴公子

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エサ・ペッカ・サロネン(別のCDだが) 

 フィンランド出身の指揮者、エサ・ペッカ・サロネンは作曲家でもありますが、最近は指揮者としての活動の方が目立つようです。サロネンは作曲家でもあるので、ブーレーズなどと近い分析的なアプローチに感じられますが、透明感があって、気品のようなものも感じられます。とても爽やかな演奏で、指揮者界の貴公子といったところでしょうか。



チョン・ミンフン(フランス国立交響楽団 2007年) ~春の祭典らしい春の祭典

 サロネンと同じCDに入っているチョン・ミンフンの演奏はサロネンとは正反対の方向性で、直接感情をぶつけるような演奏です。冒頭のファゴット・ソロからして、最初の音を引き伸ばして濃厚に表情付けしています。リズムの刻みも強烈で、各楽器を思いっきり鳴らしています。

 久々に野性味溢れる、春の祭典らしい、春の祭典です。理知的な演奏や、美しい演奏も良いけれど、やはり春の祭典はこうでなくちゃあ、と思わせる演奏です。バーバリズムの極値といった演奏です。



ピアノ二重奏もあるが

 このボックスには35種類のオーケストラの演奏と3種類のピアノ二重奏による演奏が収められています。ピアノの演奏もなかなか面白いのですが、ピアノの演奏を聴いているとやはり若干欲求不満になってオーケストラの演奏が聴きたくなります。当然と言えば当然ですが、やはりオーケストラでないとこの曲のスリリングさは味わえませんね。 




ユージン・オーマンディ(フィラデルフィア管弦楽団 1955年) ボックス外  ~おもちゃ箱をひっくりかえしたような

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フィラデルフィア・サウンドでその名を馳せたユージン・オーマンディ

 このボックスに入っている演奏以外のもので印象的なものとしては、まずユージン・オーマンディ(フィラデルフィア管弦楽団)のもがあります。個性的といえば、これはかなり個性的、一言でいえば”おもちゃ箱をひっくりかえしたような”といった演奏でしょう。

 テンポも私が持っている44種類中最も速く、2曲目の「乙女たちの踊り」の刻みもかなり速く、エネルギッショというより、何か別な感じ、例えがよくないですが、ワルノリ的な感じがしてしまいます。アニメの音楽に似合いそうですね、でもなかなか面白い。




スラヴィンスキー自演(1960年頃 オーケスラ不明) ボックス外  ~正解のはずだが、意外と普通?

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ストラヴィンスキーは1882年生まれで、春の祭典を書いた時には30才。1971年まで生存していたが、春の祭典を書いた後は保守的な作風となった。

 ストラヴィンスキー自身の演奏はたいへん重要な演奏だと思いますが、なぜかこのボックスには入っていません。レーヴェル等の関係で収録しにくかったのでしょう。この演奏はストラヴィンスキーの自演を集めたボックス(22枚組)に含まれるものです。

 この演奏は何といっても作曲者自身のものですから当然最も模範的な演奏、つまり”正解”ということになると思いますが、実際に聴いてみるとストラヴィンスキー自身の演奏は意外と普通! ・・・・表現がよくないかな?

 テンポはいくぶん速めで、結構あっさり、特に何かを強調するといった感じではありません。また鋭くリズムを刻むと言った感じも、管楽器や打楽器を派手に打ち鳴らすといった風でもないようです。

 ストラヴィンスキーにしてみれば必要なことはすべてスコアに書いてあるので、ただそのとおりに演奏すればよいということなのでしょう。ストラヴィンスキーは意外と破天荒な人ではないようです。でも正直ちょっともの足りない・・・・かな?

 このストラヴィンスキーの録音は1960年頃で、その後優れた演奏がたくさん出てきて、私たちの耳も贅沢になってきているのでしょうね。




まだまだ聴いていないCDがたくさんあるが

 まだまだちゃんと聴いてない演奏がたくさんなのですが、またしばらくしたら残りを聴いてみましょう。さらにこれからもいっそう優れた演奏や、注目すべき新録音が次々と発表されてくることでしょう。
春の特番ではありません

 「春の祭典」などというと、どこかのテレビ局の特番みたいですが、もちろんここではロシアの作曲家イーゴリー・ストラヴィンスキーの作品のことです。

 この曲は、有史以前の春を祭る儀式をバレー音楽にしたものですが、人類の始原的な生命力が活き活きと描かれています。「火の鳥」、「ペトルーシカ」と並んでストラヴィンスキーの3大バレー曲とされていますが、やはりこの「春の祭典」は他の2曲を凌駕する傑作といえるでしょう。

 不協和音による不規則で強烈なリズムの刻み、咆哮する金管、地響きのように打ち鳴らされる打楽器と、比較になる曲がないくらいエネルギッシュで強烈な音楽で、まさに20世紀最大の傑作の一つといってよいでしょう。さすがのスタヴィンスキーもこの曲に匹敵するような作品は他に書いていません。そういった意味でも奇跡的な名曲ともいえます。



新石器時代? それとも旧石器時代?

 もちろん実際にこのような儀式や踊りがあったわけではありませんが、私たちの先祖たちはこのように強い生命力をもっていたのではないかと思わせる音楽です。この「有史以前」というのが旧石器時代か新石器時代かとか、ホモ・サピエンスかネアンデルタールかとか、そんな野暮なことは考えないでおきましょう。

 ただ、この音楽からは、この儀式を行なっている人々は肉食系の人種、あるいは狩猟民族であろうということは誰しも想像するところでしょう。私たちの先祖のような漁労、採取民族ではなさそうですね。


・・・・・・・・・・・


ゲオルク・ショルティ ~マッチョなどと言われているが

 ゲオルク・ショルティ(シカゴ交響楽団1974年)は”体育会系”とか”筋肉質”とか言われて、マーラーやワーグナーなどに定評のある指揮者で、確かにマーラーなど、力強くオーケストラを鳴らしています。

 この春の祭典の演奏でも、特に速いテンポで演奏しているわけではないのですが(遅くもないが)、やや前ががりに力強く前進してゆく感じがします。特に2曲めの「春の兆しと乙女たちの踊り」ではリズムの刻みをやや強めに、かつアタックを強くして前進力を付けているように感じます。

 しっかりとオーケストラを鳴らしていますが、金管や打楽器よりも弦楽器のほうが表に出ているように聴こえるのは、やはりロマン派の音楽を得意としている関係でしょうか。

 

クラウディオ・アバド ~快適な春の祭典

 イタリア出身の指揮者クラウディオ・アバド(ロンドン交響楽団1975年)の演奏は、車の中で聴いたせいか、何となく楽しく、明るい感じがしました。この曲のもつ野生的な面や”おどろおどろしさ”的な部分はやや希薄に感じます。

 全体に軽快なテンポで曲を進めていますが、4曲目の「春のロンド」ではテンポを落とし、じっくりと歌う感じもあります。 聴きやすく、快適な春の祭典。正確の明るい春の祭典といったところでしょうか。



ピエール・ブーレーズ ~評論家などの評価の最も高い演奏

 ピエール・ブーレーズ(クリーブランド管弦楽団1991年)の演奏は知的で、音楽全体を見通した演奏ということで、音楽雑誌などでも特に評価の高いものです。確かにそのとおりで、非常にすっきりとした明快な演奏です。でも私には知的過ぎるのでしょうか、名演奏、あるいは模範的な演奏とは思いつつも、ほんのちょっと物足りなさも感じてしまいます。



リカルド・シャイイー ~同じクリーブランド管弦楽団

 そのブーレーズと同じCDに入っているシャイイー(1985年)は同じクリーブランド管弦楽団を指揮しているせいか、たいへんよく似た演奏。オーケストラの響きはもちろん、特にテンポの割り振りなどはかなり近いようです。強いて違いを言えば、各楽器のバランスを取るというより、主旋律的なパートをやや前面にだすような感じで、クレシェンド、デクレシェンドなどはややはっきりめ。ブーレーズに比べると多少ロマン派的というか、伝統的な解釈といった感じがします。




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発売当時(2000年)話題となったゲルギエフ盤

話題のゲルギエフ盤

 ロシアの指揮者、ワレリー・ゲルギエフ(マリンスキー歌劇場管弦楽団1999年)の演奏もたいへん話題となったもので、一般的な評価も高いものです。ゲルギエフの演奏は、最近よく聴かれる理知的で分析的な演奏とは一線を画したもので、たいへん肉厚で、重厚な響き。

 また各楽器も十分に鳴らし、冒頭のファゴットも美しくよく歌っている。本来低音楽器であるファゴットにかなり高い音域を要求し、やや引きつったような効果を出しているのですが、あまりにも美しく吹いているので、そうして効果も逆に出ないのではないかと思うくらいです。

 前にコメントしたドラティとかメータ(若い頃の)のようなバーバリズムを強調した演奏といえなくもないのですが、なんと言ってもオーケストラの響きの豊かさの方が目立ち、ふっくらとして、都会的で洗練されたバーバリズムといった感じです(かなり矛盾した言葉ですが)。


 
 セゴヴィアのLPを最後の一枚まで紹介することになっているのですが、とりあえず今回は最近買った、ギター以外のCDの話をしましょう。


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ストラヴィンスキー:春の祭典初演100年記念ボックス

35種類のオーケストラによる演奏と3種類のピアノ二重奏、計38種類の「春の祭典」が収められたボックス。春の祭典が終わると、また春の祭典が始まる。



何と「春の祭典」が38種類!

 このボックスはなんと、ストラヴィンスキーの「春の祭典」のみを38種類収めたという、驚きの企画ものです。内訳としては、オーケストラ35種類、ピアノ二重奏3種類があり、一枚のCDに二つの演奏が収録されています。昨年は春の祭典初演100年ということで、それに因んだ企画のようです。

 音楽マニアの中には、特定の曲だけのCDやLPを収拾するという人もいるようですが、おそらくこの春の祭典だけを手に入る限り集めているマニアも結構いるのではないかと思います。


マニア泣かせの企画

 そういったマニアは長年にわたり、いろいろ苦労しながら収拾しているのではないかと思いますが、このボックスを買うだけで”春の祭典初心者”が一躍”春の祭典マニア”に昇格というたいへん便利なシロモノです。

 言い換えればマニア泣かせの企画ともいえるでしょう。こんなボックスが簡単にしかも安価で誰にでも入手可能ということになれば、今までの苦労は、いったい何だったのか・・・・・



差し支えないのでは

 私自身でもこれまで「春の祭典」は12種類ほど持っており、そのうち6種類がこのボックスと重複し、6種類が重複していません。結果的に私のCD棚には44種類の「春の祭典」が鎮座していることになります。私のことも”春の祭典マニア”と呼んでいただいて差し支えないのでは・・・・・

 その44種類を書き出したところですが、それだけでも大変なのでやめておきます。もちろん全部は聴いていませんが、一部分だけならひと通りプレーヤーにかけてみました(プレヤーにかけることと、聴くことは別だが)。



ベイヌム=コンセルトヘボウ1947年 ~LP最初期の録音

 印象的だったものだけ少しコメントしようかと思いますが、このボックスは録音年代の古い順に並んでいて、最初のCDは1947年録音のエドアルト・ベイヌム=コンセルトヘボウ、および1950年のアンセルメ=スイス・ロマンドが収められています。

 春の祭典の世界初録音ではないかも知れませんが、ベイヌムのものはモノラルLPとしては最初期のものと考えられます。この録音は確かにノイズなどはありますが、意外とよい録音で、録音の古さはそれほど気になりません。これも”意外と”などと言っては失礼なのでしょうが、なかなかよい演奏です。中庸なテンポで、各楽器のフレーズにも表情を感じます。部分的には混濁を感じるところもありますが、録音の問題でしょう。


アンセルメ ~フランス音楽の第一人者

 アンセルメは、この時代のフランス音楽の第一人者といったとこだと思いますが、ベイヌムの演奏よりや遅めで、かなり冷静、かつ客観的な演奏に感じます。ブーレーズの先取りといったところでしょうか。1950年の録音ですが、年代からすればかなりよい録音だと思います。



ドラティ ~ストラヴィンスキーのスペシャリスト

 アンタル・ドラティはストラヴィンスキーのスペシャリストと言われているらしく、このボックスには1953年、1959年、1981年と3種類の演奏が収められています。1981年盤は以前から聴いていましたが、他の二つは初めて聴きました。この二つの演奏はこのボックスの中では最もテンポが速く、聴いてもかなり前のめりに聴こえ、さらに録音の関係か”寸詰まり”にも聴こえます。

 1981年盤は私の愛聴盤の一つですが、やはり前の二つよりも円熟した感じで、録音の関係もあってか、音の拡がりもあります。音色も華麗で、クリヤー、リズムのキレもよくなかなか気持ちよく聴ける演奏です。



ズビン・メータ=ロス・フル ~最近はずいぶんと落ち着いてしまったが

 ズビン・メータ=ロサンゼルス・フィル1969年はLPの発売当時、4チャンネルのマルチ・システムという最新録音方式で話題となったものですが、その後あまり話題にはならなくなったものです。一般的にはあまり高い評価は与えられていないようですが、改めて聴くと、結構面白い。

 後のメータはどちらかと言えば穏やかな指揮者と言った感じになりますが、この演奏ではやや速めのテンポでオーケストラをこれでもかとばかりに鳴らす野生児といった感じです。おそらくLP制作側の意図もあってこのような演奏、あるいは録音になったと思われますが、こういった方向性も悪くはなかったのではと思います。文字通り力強く、華麗で、バーバリズムも十分に感じ取れます。



カラヤンの場合は

 カラヤン、バーンスタイン、ショルティなどどちらかと言えばロマン派の作品に重点を置いている指揮者の場合はこうした曲はやや不利かもしれませんが、カラヤンの場合は1963年と1975年と2種類の演奏がこのボックスに収められています。

 アクセントなどやや控えめに感じられるのは先入観のせいかも知れませんが、何となくしっくりとこない感じは否めません。よく聴くと、常にどこかのパート、あるいは楽器が表に出るようになっている感じです。複雑な音楽でも主従関係をはっきりさせようという意図があるのかも知れません。また各部分のテンポの違いなども際立たせているようです。

 ・・・・・・なかなか終わらないので2,3日後にまた続編を書きます。
明けましておめでとうございます。

 明けましておめでとうございます。昨年末はずいぶんと寒い日もありましたが、この1、2日は比較的暖かく穏やかなお正月となっています。皆さんはどのようなお正月を過ごしていらっしゃるでしょうか。

 私と言えば、お正月とはいえ、相変わらず教材やアンサンブルの楽譜書きでほぼ1日が終わってしまい、いつもとあまり変らない生活となっています。



今年の予定

 さて、例年どおり、今年の予定などの話をしようと思います。相変わらずあまりたくさんの予定はありません。まず1月19日(土)にアコラ主催の新年会に出席します。場所はアコラ、および、ひたちなか市文化会館内の喫茶室「スウィング」で、一般参加型の発表会的なイヴェントですので、ギターの好きな方は、アコラのホーム・ページをご覧の上、よければ参加してみてください。

 4月28日(日)には、つくば市カピオ・ホールでのつくばギター・フェスティヴァルに久々に水戸ギター・アンサンブルが出演します。アマチュア8団体の他、デュオの「いちむじん」がゲスト出演します。

 10月にはアコラでのジヴェルニー・サロンのゲスト出演ということになっていますが、日にちはまだ決まっていません。

 11月10日(日)には、ひたちなか市文化会館で中村ギター教室発表会を行ないます。一昨年も予定していたのですが、震災の影響で会場はギター文化館に変りました。今年はそのようなことは起きないと信じます。

 他にはっきりしない予定としては、例年通り、7月に水戸芸術館で水戸市民音楽会が行なわれると思います。また5~6月頃には、今年も茨城県立図書館でコンサートを行ないたいと思っています。



ブログのほうでは

 当ブログのほうでは、昨年はセゴヴィアのLPの紹介をしてきましたが、あと10数枚といったあたりで中断しています。せっかくやり始めたことなので、何とか最後の一枚まで紹介して行きたいと思います。またギター上達法のほうも今年も何かやってゆきたいと思います。皆さんの興味深い内容になればと思います。

 これも例年のことですが、県内で行なわれるギターのコンサートになるべく出かけ、そのレポートを書いてゆきたいと思います(毎年言っている割にはあまり出かけていない?)。



本年もよろしくお願いします

 では今年も中村俊三、および中村ギター教室、水戸ギター・アンサブル、そして当ブログをよろしくお願いします。