中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

Q : 大学の時からクラシック・ギターをやっています。今は「大聖堂」、「ハンガリー幻想曲」、「タンゴ・アン・スカイ」などを弾いていますが、「練習曲をやらないと上手くならない」というのは本当でしょうか。
                
                       20代 男性


A : その3 


 ちっともかいつまんでない? 相変わらずだらだら、 話先に進んでいない?  ・・・・・・・反省、今回こそ単刀直入に・・・・・


カルカッシギター教則本から ~弾きやすいパターンで出来ている

 私たちがよく用いる19世紀前半の練習曲について具体的にコメントしておきましょう。まずは、お馴染みのカルカッシギター教本から。 

ブログ 106

 左手の方も一定のパターンになっていますが、特に右手が同形反復になっています。ギターを始めたばかりの場合、的確に弦を捉えるのは決して簡単なことではありません。そうした段階ではこのような練習曲は取り組みやすく、また自然と右手の感覚が身に付けられます。



カルリのワルツ ~反復練習の典型的な練習曲

ブログ 105

 上の曲よりも音の数は多いですが、それほど難しくなっていません。各部分にリピート記号が付き、さらにダ・カーポも付き、楽譜どおりに弾いただけでもそれなりの練習量になります。さらに変奏が3つ(画像の後にさらに2つ変奏がある)付いています。

 シンプルな音型の反復練習を目的とした曲で、ギター演奏の基本的な技術の習得に指導者にとっても、習う人にとってもたいへん便利な練習曲です。もちろん”質より量”にならないように、一音一音意識を集中して練習しなければなりません(まさに一音入魂!)。

 また、正しいテンポ、消音、レガート、スタッカートの使い分け、長調、短調の弾き分けなどにも気を配れたらさらによいでしょう。



アポヤンドによるメロディとリズムの練習?

ブログ 107


 上の画像は、当ブログでもよく登場するカルリの「アンダンテ イ短調」です。この譜面は、1960年代に出版されたと思われる、東京音楽書院の「学生のための古典ギター曲集7~スペインギター名曲集」です。今では絶版と思われますが、かつては楽器店などでよく見かけ、当時の愛好者はほとんど持っていた譜面だと思います。



どこをアポヤンドで弾くの? 

 ちょっと読みにくいかも知れませんが、タイトルには「アポヤンドによるメロディとリズムの練習」と書いてあります。若い愛好者の皆さんは 「え、この曲のどこをアポヤンドで弾くの?」 と思うでしょう。さらに 「どこがリズムの練習なの?」 とツッコムでしょね。

 「アポヤンドによるメロディ」と書いてある訳ですから、おそらく冒頭の「ラシドレ」や、1段目の終わりの「レドシラ」など単音のスケールをアポヤンド奏法で弾くという意味だと思われます。また3段目などの低音が付いたスケールについても同様なのでしょう。



私もびっくり

 さすがに重音(2音)のところはアポヤンド奏法では弾けないでしょうから、そこは必然的にアル・アイレ奏法となるでしょう。しかしそのように弾けば冒頭の部分と最後の部分がフレーズの中央部分に比べ、音量が大きくなりやすく、まさに逆転現象が起きてしまいます。また音質も変ってしまうでしょう。こうしたことは私だけでなく、多くのギタリストは”最もやってはいけないこと”と考えるでしょう。

 かつては「アポヤンド至上主義」みたいなものがあり、この本の最初のところにも「・・・・・この内、一番重要なことは、スケール(アポヤンドによる)でありましょう」と書いてあります。また他の曲のコメントにもアポヤンド奏法を強く勧めることが書いてあります。私もどちらかと言えば、そうした時代に育ったギタリストですが、その私もびっくりと言うところでしょうか。



面白いけど、これくらいにしましょう

 また、ほぼ全曲8分音符で書かれているこの曲のどこが「リズムの練習」なのかも不可解ですね。私たちにはむしろ”リズムなんてない曲”と思えるでしょう。多分、この曲を一定のテンポで弾くことをいっているのではないかと思われますが、やはり言葉の使い方としては不可解なものです。そう考えた場合、当時はこうした曲を一定のテンポで弾けない人が結構いたのでしょう。

 ・・・・・昔はこうしたこと、それほど不思議ではなかったかも知れませんね、面白いといえば面白いのですが、昔の譜面にツッコムのはこれくらいにしておきましょう・・・・・

 

悪名高き?

ブログ 108


 マティオ・カルカッシはカルリより20年ほど後にパリで活躍したギタリストですが、このカルカッシには中級から上級用といったところの「25の練習曲作品60」というものがあります。私がギタリストを目指していた頃(1970年代)には、プロになるためや、上級者をめざすなら必ずやらなければならない教材として、全国のギター教室で使われていました。

 この練習曲集は、すごく難しいと言うわけでもありませんが、25曲ともちゃんと弾くにはそれなりの練習量が必要です。ちょっと聴くとなかなか面白い曲もありますが、さすがに25曲練習するとなると、同じような曲も多くかなり忍耐力が必要となります。

 プロや上級者になるための第一の関門といったところですが、かつて、この練習曲集のために挫折をしたという愛好者も少なくはないでしょう。 ・・・・・・え、悪名高き「カルカッシ25の練習曲」、それはちょっと言いすぎかな・・・・



はっきりとした使用目的があれば有効

 最近ではかつてほどこの教材は用いられなくなったと思いますが、しかし何でも”使いよう”だと思います。はっきりとした使用目的があれば、たいへん有効な練習曲ではないかと思います。もちろん25曲すべてを練習する必要はなく、その人が必要とするものだけでよいと思います。

 例えば上の譜面の「第2番」ですが、この曲はアルペジョと同音反復の曲で、右手の練習には最適と思われます。pimaの各指を完全にコントロールするための練習として用いると、たいへんよい練習曲となると思います。


なぜこのような強弱記号が付くのか

 また強弱記号が細かく付けられており、リタルダンドのどの速度変化の記号も付けられています。そうしたものが正確にコントロールできているか、またなぜそのような記号が付くのかなど考えてみるのもたいへん重要と言えます。強弱についてはフレーズの関係以外に、和声の関係で付く強弱も多くなっています。

 強弱記号などは道路標識のように、ただ従えばよいと言うものではなく、なぜそのような記号が付けられているのかということを考えるべきでしょう。また同じ記号でもニュアンスなどは状況で異なってくるので、そうしたものも感じ取れるとよいでしょう。 ・・・・・道路標識だってただ従えばよいというものではない? 確かに。
スポンサーサイト
Q : 大学の時からクラシック・ギターをやっています。今は「大聖堂」、「ハンガリー幻想曲」、「タンゴ・アン・スカイ」などを弾いていますが、「練習曲をやらないと上手くならない」というのは本当でしょうか。
                
                       20代 男性


Q :  その2
 


 前回の記事では質問の内容と関係ない話になってしまい、申し訳ありません。反省して今回は必要なことのみをかいつまんでお話しましょう・・・・


主な練習曲は19世紀前半に作られた

 ギターの練習曲と言って思い浮かぶ作曲者と言えば、ソル、カルリ、カルカッシ、ジュリアーニ、アグアード、コスト、レゴンディ、ヴィラ・ロボス、ブローウェルといったところでしょうか。この中でヴィラ・ロボスとブローウェルを除くと19世紀前半から半ばといった時期に集中しています。


この頃からギターを”習う”人が増えた

 練習曲がたくさん作曲された時期は、この19世紀前半に集中しているわけですが、これはピアノなどの場合と同じだと思います。この時期にいろいろな楽器の練習曲が作曲され、出版されるようになったというのは、この時期にヨーロッパにおいて音楽が一般市民に浸透し、楽器などを習う、アマチュアの愛好家が急増したことにあるのでしょう。

 それまでは楽器を演奏するのはどちらかと言えばプロの音楽家で、一般の市民などが趣味として音楽を習うということは、あまりなかったようです。19世紀に入り、ギターもそれまでの複弦から単6弦となり、扱いやすくもなったこともあり、特にパリなどでギターを習う人が急増したようです。


この時代までは練習曲などなかった

 そこで、これまでアマチュアの愛好家のための作品や、ギターの初心者用の練習曲と言うのはほとんどなかったわけですから、この時代にそうした作品が数多く生み出されたのは必然ということになるのでしょう。この時代のパリではフェルナンド・カルリ、 フェルナンド・ソルなどが活躍し、演奏用の作品と共にアマチュアの愛好家のための練習曲集などを出版しています。そしてマティオ・カルカッシ、さらにナポレオン・コストが続くことになります。

 これらのギタリスト中、カルリとカルカッシはイタリア出身、ソルはスペイン出身と、当時のパリのギター界は外国人ギタリストに支えられていたようです。この時代の他の地域、ウィーンではマウロ・ジュリアーニ、スペインではデシオド・アグアードが練習曲集や教本を書いています。

 

200年経ってもその重要性は変らない

 その後200年近く経ち、世の中も、また音楽もだいぶ変った訳ですが、これらの練習曲の重要さは一向に変ることなく、現在でも多くのギター愛好者によって学び、演奏されている訳です。この時代以前にはギターのための練習曲など存在しなかったわけですから(練習曲的な作品はあったにせよ)、先人たちの偉業に敬服します。



ギターを始めたばかりの人でも弾きやすく出来ている

 現在でも多くの指導者がこのような練習曲を使用する目的の一つは、まず何といってもギタを始めたばかりの人に基本的な技術を指導するのに適していることににあります。この場合、易しくアレンジした一般の曲でもよいのですが、そうした曲は一見易しいようでも、初心者には意外と弾きにくいところもあります。こうした曲は、元々指の動きに合わせて曲が出来ているわけではありませんからある意味当然のことかも知れません。



カルリやカルカッシの練習曲は練習のポイントがわかりやすくなっている

 その点、カルリやカルカッシなど、初心者用に作られた練習曲は、基本的な指の動きに合わせて曲が出来ているので、見た目よりは弾きやすく、また基本的な指の動きの反復練習となっています。したがって、それらの曲を弾いているうちに、自然と基本的な弾き方が出来るようになります。


難しい曲だけを練習していたのでは必要不可欠な基礎が身に付けられない

 最初から練習曲以外の曲や、難しい曲に取り組んだ場合、こうした基本的な演奏法が十分に身に付けられない場合があるでしょう。特に独学でこれを行なった場合は、ギター演奏の基礎的な事柄を習得するのは困難で、さらにそれを続けた場合は上達を期待するのは難しいくなることもあります。



適切な指導者につく必要がある

 しかし、練習曲と言えど、あるいは練習曲であるからこそ、独学で練習するのは限界があり、やはり適切な指導者に付く必要があります。正しい演奏法や、練習のポイントなど何もわからず、一応弾くだけではこれらの練習曲もあまり役には立たないでしょう。それなら確かに好きな曲を弾いていた方がかえってよいかも知れません。
 

カルリやカルカッシだけをやっていればよいと言うわけではない

 また逆にギターを始めた当初はカルリやカルカッシの練習曲だけをやっていればよいのかと言うと、決してそうではありません。19世紀初頭というのは、音楽史的には「古典派時代」と言い、たいへん重要な時代ではありますが、私たちがクラシック・ギターを弾く時、この時代の作品のみを弾くわけではなく、その前のルネサンス、バロック時代の作品、そして19世紀後半から20世紀、そして21世紀の音楽といろいろな作品を演奏します。


カルリ、カルカッシは、やはり遠い時代の作品、同時に様々なジャンルの曲を弾く必要もある

 確かにカルリと同時代の愛好家であれば、これらの練習曲を学べばそれでよかったのですが、私たちからすれば、この時代の作品は遠い時代の作品で、クラシック・ギターのレパートリーの中のごく一部といえます。従ってカルリなどの練習曲を学ぶと同時に、他のジャンルの曲も出来る範囲で弾く必要があります。

 ギターを始めてそれほど経っていなければ、取り組める作品はある程度限られてくると思いますが、私の指導法の場合、生徒さんにとって身近な音楽、いわゆるポピュラー系の作品(日本や世界の名曲なども含め)を比較的やさしくアレンジしたものも教材として用いていいます。


初級の教材は離乳食のようなもの、消化がよく、栄養バランスが大事

 初級用の教材と言うのは、いわば離乳食のようなものです。第一に消化のよいものでなくてはなりません。消化の悪いものだと、栄養になるどころか、健康を害して発育不全に陥ってしまいます。また人間の体を作るために必要な栄養素をすべて含んだ、栄養バランスのよいものでなくてはなりません。
練習曲をやらないと上手くならない?

Q : 大学入学時からサークルでクラシック・ギターを始め、卒業後、先生について3年ほど習いました。今は仕事の関係で習っていません。自分で言うのは何ですが、ギターはそこそこ弾けます、大学の定演ではソロもやりました。

 今は習っていないこともあって、大聖堂、ハンガリー幻想曲、タンゴ・アン・スカイなど、好きな曲を中心に弾いています。でも前に習っていた先生から「練習曲、特にソルの練習曲をやらないと絶対ギターは上手くならない」とよく言われていました。

 本当にそうなんでしょうか、自分としてはそういった曲にはイマイチ気持ちが入りません。基本的にやさしい曲を弾くのは好みません。多少苦労しても高度なレヴェルの曲に取り組んだほうが、当然自分の演奏レヴェルも上がるものと思っています。

                                     20代 男性


A : 

 私が大学生の頃、「みんなが弾きたい曲」と言えば、「魔笛」、「アラビア風」、「アストゥリアス」といったところですが、今の若い人が弾きたいと思う曲はこんな感じかな。


練習曲をやらないで上手くなったギタリストはたくさんいる

 「練習曲をやらないと絶対ギターは上手くならない」かどうかということですが、世の中には練習曲をほとんど、あるいはあまり練習しないで上手くなったギタリストは結構いるのではいるのではと思いますし(ポピュラー系のギタリストはほとんどそうなのでは)、また練習曲に熱心に取り組んだけども、残念ながらあまり上手くならなかった人もたくさんいると思います。
 


根本的に違いがあるわけではない

 確かに「練習曲をやらないと絶対上手くならない」とは言い切れないところもはあるでしょう。また練習曲と他の曲とは、基本的に大きな違いがあるわけではありません。技術系の練習曲ではパターン化された曲が多いでしょうが、それでも一つの音楽にはなっているわけです。特に表現法などを重視した練習曲となれば、他の曲とさらに違いがなくなります。



「月光」も「禁じられた遊び」も、もとは練習曲だった

 クラシック・ギターの名曲の一つと言われているソルの「月光」も基本的には練習曲です。正確には「エチュード」ではなく「エグゼルシス」とされており(エクササイズの意味か)、基本の応用といったことを目的としているようです。

 またギターの名曲中の名曲である「アランブラの想い出」もタレガは「トレモロ練習曲」としても演奏していたのではないかと思います。この曲名で出版されたのは世を去る2年くらい前で、この曲名が一般化されたのは死後のようです。さらに「禁じられた遊び」も原曲はアントニオ・ルビラの「練習曲ホ短調」です。



便利グッズも名曲もネーミングしだい?

 確かにネーミングというのは、便利グッズに限らず、世の中に浸透するためにはたいへん大きい。「アランブラの想い出」がただの「トレモロ練習曲」だったらこんなに有名になったかどうか、クラシック・ギターの代表作になったかどうかわかりません。

 おそらくその当時はスペイン・ブームみたいなものがあり、アランブラ宮殿はスペインの観光名所になりつつあったのでしょう。もちろんこの曲はたいへん優れた曲ではありますが、この曲がクラシック・ギターの代名詞になるほど一般にも有名になったのは、このネーミングとのベストな関係があったのでしょう。



もし「アランブラの想い出」の名が他の曲に付いていたら

 タレガにはもう一曲トレモロの曲で「夢」という曲がありますが、仮にこちらに「アランブラの想い出」という曲名を付け、アランブラの方に「夢」と付けたらどうなったでしょうね、どちらが有名になっていたでしょうか。

 ・・・・この2曲を知らない人に、曲名を逆にして聴かせて、どちらがよかったかアンケートなど行なってみたいものですね。



低予算がギターの名曲を生んだ?

 「禁じられた遊び」は1950年頃の映画ですが、その当時のほとんどの映画主題曲(「第3の男」、「鉄道員」など)は、その映画のために作曲されています。「禁じられた遊び」のほうは予算の都合で当時無名の若いギタリスト、ナルシソ・イエペスのギター独奏にし(本当に音楽はギター一本のみで行なっている)、曲のほうも新たに作曲せず、過去の作品を使用しています。これも著作料など予算の関係かも知れません。

 ルネ・クレマン監督としては音楽にほとんどお金を使いたくなかった、あるいは使えなかったのでしょう。つまりこの映画の低予算が、永遠のギター名曲「禁じられた遊び」を生み出したのでしょう。  

 ・・・・ん? 今回の質問ってなんだっけ?
Q :  アコースティック、クラシック、どちらを習ったほうが?     


 小学校に入る前からピアノを習い始めたのですが、だんだん練習しなくなって4年生の時にやめてしまいました。今ではちゃんと続けておけばよかったなと、ちょっと後悔しています。でも最近になって、ギターっていいなと思い始めて、ギター教室に通おうかなと思っています。いくつかの教室のホーム・ページを見たりしてみたのですが、アコースティック・ギターとクラシック・ギター、どちらを習ったほうがよいか、よくわかりません。

                                        20代女性 ピアノ暦4年




A : (続き)

結局好みの問題だが

 前回の話で、私の教室の場合のアコースティック・ギター・コースとクラシック・ギター・コースの内容の違いなどを話をしました。ではこの質問者の場合はどちらがよいかということですが、前回の話などを参考に、ご自分の好みに合う方を選んでいただければと思います。

 もっとも好みがはっきりしていれば特に迷うこともないので、おそらくご自分の好みがはっきりしていないということもあるのでしょう。とりあえずは、どちらでもよいですから、始めてみるとよいでしょう。



それぞれ補完的なもの

 最終的にアコースティック、またはクラシックをやるにせよ、その反対の方のレッスンを経験してみるのはたいへん有意義のことと思います。

 クラシック・ギターの場合は音楽的な基本や、ギターの演奏法をじっくりレッスンしますので。ポピュラー系の音楽をやる場合でもたいへん役立ちます。またクラシック・ギターをやる場合でも、最近のクラシック・ギターのレパートリーはポピュラー系の音楽に影響を受けたものが多いですから、最近のポピュラー系の音楽をやっておくことは、むしろ不可欠かも知れません。

 

楽器としてはどう違う?

 どちらでもよいとはいっても、楽器としてはアコースティック・ギター(スチール弦使用の)とクラシック・ギター(ナイロン弦使用)ではかなり違いがあります。音色などに関しては、アコースティック・ギターの、特に1、2弦などの高音弦は当然金属的な音がし、クラシック・ギターの場合はソフトな音色です。



叩き系ならアコースティック

 低音弦についてはナイロン弦のほうが音の伸びがよく、クリヤーと言えますが、パーカッション的な奏法ではスチール弦のほうがキレのよい音が出ます。特に最近の”叩き系”ではやはりアコースティック・ギターのほうが似合うでしょう。



どちらが弾きやすい?

 弾きやすさといった点では、アコースティック・ギターのほうはネックの幅が狭く、セーハがやや楽になっています。クラシック・ギターのほうはネックの幅が広く6弦などを押さえる場合は、手首をやや出す感じになります。セーハの場合も指が短いと人差し指いっぱいになる感じですが、届かないということはありません。

 またクラシック・ギターの場合は弦どうしの距離があるので、押さえた時にとなりの弦に触れにくくなっています。弦の押さえ間違えもやや少ないかも知れません。



チョーキングはしやすいが

 エレキ・ギターなどでよく使われるチョーキング(弦のずり上げ)はアコースティック・ギターのほうがしやすく、クラシック・ギターでチョーキングで半音上げるのはなかなか大変です。

 アコースティック・ギターの場合、チョーキングがしやすいということは、普通弾く場合でも押さえる時に力を入れすぎたり、押さえ方がわるかったりすると、クラシック・ギターよりも音程が狂いやすく出来ています。Gのコードの6弦(ソの音)などは特に要注意です。

 

取り扱いなどは

 弦の交換はスチール弦のほうがやや簡単ですが、一度張った弦は張りなおしがききません。従って間違った弦を張ってしまった場合(1弦のところに2弦をはるなど)、別の弦の使うしかありません。ナイロン弦では何回でも張りなおせます(音程が合わない時や、キズが付いてしまったときなど張りなおすこのもある)。

 スチール弦、特に1、2弦の先端は尖っていて、うっかり触ると出血してしまったりします。従って弦の先端は安全な方向に曲げておくのですが、それでも弦の交換時などに指に刺してしまうことがあります。ナイロン弦のほうが指には優しいのでしょう。



参考になったかな?

 以上、参考になったでしょうか? 繰り返しになりますが、どちらで始めてもそれほど大きな違いはないと思いますので、直感的に決めていただいてよろしいのではないかと思います。 ・・・・・楽器の外見で決めていただいても結構。
Q :  アコースティック、クラシック、どちらを習ったほうが?     


 小学校に入る前からピアノを習い始めたのですが、だんだん練習しなくなって4年生の時にやめてしまいました。今ではちゃんと続けておけばよかったなと、ちょっと後悔しています。でも最近になって、ギターっていいなと思い始めて、ギター教室に通おうかなと思っています。いくつかの教室のホーム・ページを見たりしてみたのですが、アコースティック・ギターとクラシック・ギター、どちらを習ったほうがよいか、よくわかりません。

                                      20代女性 ピアノ暦4年



A :

 でもやめたい時にやめて、かえって良かったのでは。我慢してピアノを続けていたら、また音楽をやる気になんてならなかったでしょう。



教室によってかなり内容が違うが、私の教室の場合は

 ギター教室を決める場合、アコースティックかクラシックかということよりも、その教室や先生によってかなり内容が違いますので、その教室、あるいは先生がどんな教え方をしているのかを調べてみることが大事となりますが、その話はまた後にしましょう。

 他の教室のことはよくわからないので、一般論というよりも、あくまで私の教室のクラシック・ギター・コースとアコースティック・ギター・コースの違いということでお話します。




<クラシック・ギター・コース>

こだわるようだが

 また言葉の問題から入ってしまいますが、「クラシック・ギター」というのは英語ではなく、あくまで「日本語」、いわゆるカタカナ語です。私がいうまでもないかも知れませんが、英語的には「Classical Guitar」で、この名詞+名詞という組み合わせは、英語が話せる人にとってはかなり違和感があるでしょう(典型的な日本人の私にはあまり違和感がありませんが)。

 しかし意味合いとしては、カタカナの「クラシック・ギター」と英語の「Classical Guitar」はあまり差はなく、私たちがクラシック・ギターと思っているものと英米人がClassical Guitarと思っているものとはだいたい同じと思ってよいようです。


ヨーロッパを中心とした16世紀以来の伝統的なギター音楽を意味する

 クラシック・ギターを直訳すれば「伝統的ギター」で、ヨーロッパを中心に16世紀から今日まで引き継がれてきた体系的なギター演奏法、あるいはその作品ということになるでしょうか。またさらに狭い意味では古典派時代、つまり18世紀末から19世紀初頭のギター音楽を意味することもあります。

 ギターで弾くクラシック音楽と考えてもよいですが、ただしモーツァルトやベートーヴェンなど、クラシック音楽としては主流の曲をギター弾くことはあまりありません。どちらかと言えば一般には有名でない作曲家のほうが多いかも知れません。

 クラシック・ギターのレパートリーとしては、ソル、タレガ、バリオス、ヴィラ・ロボスなどのギターのオリジナル作品にアルベニスやバッハの作品の編曲作品を加えたものと言え、私自身もそうした作品の演奏をライフ・ワークとし、リサイタルなどでもそうした作品を演奏しています。



レッスン内容はクラシック音楽に限定しない

 しかし私の教室にギターを習いに来る方の多くは、特にクラシック・ギターについて知識があったり、クラシック音楽が好きだったりというわけではなく、ただ「ギターを弾きたい」と思って習いに来ます。最初からクラシック・ギターのことについて詳しく知っていて、その上で習いに来る人はむしろ少数派と言えるでしょう。

 従ってクラシック・ギター・コースと言っても、特にクラシック・ギターのレパートリー、あるいはクラシック音楽に限定しないで、様々なポピュラー音楽のジャンルの曲も教材として用いています。最初の段階ではそうした身近な曲を練習することのほうが多いといえます。



年齢に関らずレッスンが出来るように教材はかなり易しく出来ている

 特にこのクラシック・ギター・コースについては、小さい子や高齢の方までレッスンしてゆけるようにかなり易しいものになっています。しかし易しいものではありますが、ギターを演奏する上で絶対に必要なことは確実に学んで貰うようにしています。

 普通、ギター教室にせよ、ギターのテキストにせよ、ある程度の音楽知識(小学校で習う程度の)は一応身に付いているということ前提にしていますが、実際にはほとんど忘れている人の方が多く、そういったことも改めて学んでもらっています。

 人によっては教材が易しすぎる場合もありますが、その場合はある程度省略してレッスンを進めますので、それほど困ることはありません。教材というのは易しすぎるくらいのほうがかえってよいようです(その逆の場合は結構たいへん)。




<アコースティック・ギター・コース>

アコースティック・ギター・コースの場合は10代後半~30代くらいが対象

 アコースティック・ギター・コースの場合は基本的に10代後半から30代くらいの方を対象としてレッスン・システムが出来ているので、小さい子や年齢の高い方には向きません。年齢が高くなるとリズムを刻むのがなかなか難しくなり、仮に弾き語りなどをやりたい場合でもクラシック・ギターのほうから入ったほうがスムーズにギターが学べるでしょう。小さい子の場合にも楽器的に無理があるので、やはりクラシック。ギターのほうがよいでしょう。



コードの弾き方や、単音(メロディ)の練習から始める

 アコースティック・ギターを習いたいという方の場合、コードによる弾き語りをしたいと言う人と、ソロを弾きたいという方がいると思いますが、習い始めて最初の頃はコードの弾き方(ストローク、アルペジオ)、および音階や簡単なメロディなどの単音の練習から始めます。



クラシック・コースの「カジュアル版」と言えなくもないが

 アコースティック・コースは確かにクラシック・コースの「カジュアル版」といった感じがあり、クラシック・コースよりもやや基本を省略した形にはなりますが、私のレッスンでは、楽譜の読み方(タブ譜ではなく五線紙)、リズムの取り方、音の出し方など、基本的なことには、かなり力を入れてレッスンしています。



コード・ストロークは思ったほど簡単ではない

 ギター、特に弾き語りなどでコードを刻む場合、左手でコードさえ押さえられれば弾けると考えられがちですが、右手のストロークでコードを正確に美しく鳴らしたり、特にリズムを正確に刻むのは決して簡単にできるものではありません。やはり正しい練習と持続した努力が必要でしょう。アルペジオについても同様です。



どちらかと言えばソロを弾いている人方が多い

 と言ったように当初はコードの弾き方から始めますが、アルペジオ奏法などが十分に出来るようになったらソロの練習に入ります。多少難しくなりますが、アルペジオがちゃんと弾ければ問題なく弾けるようになります。もちろん最初は簡単なものからとなります。

 ソロは何といっても一人でギターが楽しめるということが利点で、私のところである程度の期間習っている人では、どちらかと言えばソロを楽しんでいる人が多く、弾き語りや、バンドをやっている人方が少数派のようです。またソロが弾けるようであれば、コードを多少難しいパターでも弾くことが出来るようになるでしょう。
  
バーチャルQ&A アコスティック・ギターって 2


Q : 60代男性 ギター暦約30年(長期中断あり) 1967年河野使用

 最近「アコースティック・ギター」と言う言葉をよく聴きます。かつてはギターは「クラシック・ギター」、「エレキ・ギター」、「フォーク・ギター」の3種類だったと思います。まあ、だいたいの意味はわかるのですが、「アコースティック・ギター」という言葉の正確な意味を教えてください。 




A :

 ・・・・・前回の続き

 前回の話をまとめると、「アコースティック・ギター」とはエレキ・ギターの反意語で、「アンプを使わないギター」、「生ギター」と言った意味になり、スチール弦を使用したもの、ナイロン弦のもの両方とも言葉上ではアコースティック・ギターとなります。確かにポピュラー系の音楽をやっている人は弦の種類に関らず、エレキ・ギターでないものはアコースティック・ギターと呼んでいます。



楽器としては、アコースティック・ギター = スチール弦使用の生ギター 

  しかしクラシック・ギター(ナイロン弦の)をやっている人は、アンプ使用という概念は基本的にないので、自らの楽器に「アコ-スティック」と形容詞を付ける習慣はありません。したがってクラシック・ギタリストは自らの楽器を”クラシック・ギター”、あるいは単に”ギター”と呼ぶのが一般的です。

 結果的に「アコースティック・ギター」とうのは「スチール弦使用の生ギター」つまりかつてのフォーク・ギターを継承したものとなります。しかしこれはあくまで楽器上の問題で、音楽ジャンルとしてはアコースティック・ギターとフォーク・ギターは別物と考えてよいでしょう。



アンプを使わないと言う意味ではない

 若干余談かも知れませんが、アコースティック・ギターとは「アンプを使わなくても音が出る楽器」ということですが、しかしアコスティック・ギタリストが「アンプを使わない」と言う意味ではありません。


 クラシック・ギタリストはコンサートの際、アンプを使うことは基本的になく、多少大きめのホールであってもアンプは使いませんが、アコースティック・ギタリストの方は仮に小さなライヴ・ハウスでもほとんどの場合アンプを使用しています。



アンプ使用=ポピュラー音楽  アンプ不使用=クラシック音楽

 歌の方に例えれば、オペラなどを歌う声楽家はマイクを使うことはありませんが、ポピュラー歌手はマイクなしで歌うことはないのと同じことかも知れません。クラシック音楽とポピュラー音楽はその内容の上でははっきりと線を引けないこともありますが、こうした点ではかなりはっきりしているようです。アンプ使用=ポピュラー音楽、アンプ不使用=クラシック音楽、といったことはかなりの度合いで言うことが出来ると思います。



アコースティック・ギターでどんなジャンル?

 ところで、クラシック。ギターと言えば、全体的にどういったもので、どういった曲があり(アランブラの想いでやアランフェス協奏曲とか)、どんなギタリスト(セゴヴィア、イエペスなど)がいるかなどということは、多少クラシック・ギターをやっていると、わかりかなと思います。ではアコースティック・ギターにはどんな有名な曲があり、どんなギタリストがいるか、ということですが、これにお答えするのはたいへん難しい。

 というのも「アコースティック・ギター」とは広い意味では音楽の中の一つのジャンル名ではなく、「アコースティック・ギタリスト」とはエレキ・ギターでないギターを弾く人すべての総称だからなのです。前述のとおりクラシック、ジャズ、ボサノバ、フラメンコ・・・・・ などあらゆるギタリストが含まれてしまいます。



狭い意味ではある程度絞れる

 しかしそうは言っても、今現在「アコースティック・ギタリスト」というと、狭い意味ではある程度絞れるでしょう。言ってみればクラシックとかジャズ、ボサノバといったはっきりとしたジャンルにくくれないギタリストということになるでしょうか。


最も知られているのは、押尾コータロー、中川イサト

 日本人のアコースティック・ギタリストとして最も有名な人といえば、まず押尾コータローさんが挙げられるでしょうか、押尾さんはテレビなどにも時折出演していて、ファンの方もたくさんいるでしょう。

 押尾さんの演奏はパーカッションとコードを華麗に刻みながら、メロディもしっかり弾くというもので、音だけ聴いていたらどう聴いてもソロではなくバンドの演奏にしか聴こえない感じです。映像を見ていると、弾いているというよりほとんど弦などを叩いているようにしか見えません。

 押尾さんのようなスタイルを最近では「叩き系」などと呼んでいるようですが、現在アコースティック・ギターの主流のようです。比較的若いアコースティック・ギタリストはほとんどこのスタイルです。



フィンガー・ピッカーという言葉もある

 中川イサトさんは、アコースティック・ギター界の重鎮といったところで、やはり多くのファンがいます。プレー・スタイルとしてはアルペジオに載せてメロディをじっくりと歌わせるタイプといったところです。また中川さんは若いギタリストたちに大きな影響を与え、優れたギタリストもたくさん育てているようです。

 他に岸辺真明、岡崎倫典、小川倫生さんなどが挙げられますが、これらのギタリストを「フィンガー・ピッカー」とも呼ぶこともあります。



ギターをキーボードのように?

 ギターは「左指でフレットを押さえて、右指で弦を弾く」楽器というのはあまりにも当然な常識のはずなのですが、これらのギタリストの演奏を聴いていると、そうした常識は通用しないようです。中にはギターをキーボードのように横に置いて左右の両方の手で鍵盤を叩くように指版を叩いて演奏している人もいます。



アコースティック・ギターの名曲ってある?

 アコースティック・ギターにクラシック・ギターのような名曲が存在するのかどうかということですが、ほとんどのアコースティック・ギタリストはオリジナル作品を演奏して、基本的にクラシック的な意味での名曲はないようです。私が知らないだけかも知れませんが、少なくともアコースティック・ギターに詳しくない人でも知っているといった意味での”名曲”は存在しないのではと思います。



名曲をアコースティック・ギターで弾いている

 「ギターの調べ」シリーズで知られている南澤大介さんなどは一般の有名な曲をアレンジして演奏、あるいは出版しています。南澤さんのレパートリーは確かに名曲ですが、これはアコースティック・ギターの名曲というより、元々の名曲をアコースティイク・ギターで弾いているということです。

 押尾さんはじめ、多くのアコースティック・ギタリストは華麗でオリジナリティに富んだ演奏をしています。その譜面も出ていますが、これらを忠実コピーするのはたいへん難しい。何といっても他の人には出来ないことをしていることがこれらのギタリストの存在理由ですから。



あなた次第

 南澤さんは一般的によく知られた曲をのアコースティック・ギター的な奏法でアレンジしており、そのアレンジは決して超絶技巧的なものではなく(すごく易しいということでもないが)、アマチュアの人でもがんばれば弾けるものになっています。

 なんといっても誰かに聞かせた場合「あ、この曲知っている」となるでしょうから。もちろん「カッコいいわね!」となるかどうかはあなた次第です。


  
祝! 日本代表、ブラジル・ワールド・カップ出場決定

 6月1日の県立図書館でのギター・ワールド・カップは盛況(?)のうちに幕を閉じましたが、先日のオートストラリア戦は予言どおり(?)1-1の引き分け! ついに5度目のワールド・カップ出場が決まりました。苦しい試合になることは試合前から十分に予測されたこと。どういう形であれ、引き分けに持ち込めたのは選手たちの健闘と幸運の賜物。まずはめでたし! 

 

ギター愛好者のギモンに答える「ギター上達バーチャルQ&A] スタート

 当ブログでは先月、1年以上に亘った「20世紀の巨匠たち」が終わり、さらにギター・ワールド・カップも終了、日本代表ワールド・カップ出場決定ということで、また新たなテーマで更新してゆこうと思います。

 おそらくギターの愛好者の皆さんや、ギターを習っている方、ギターに興味を持ち始めた人などには、ギターに関して、いろいろな疑問があると思います。そこで、これまで私が生徒さんや、入学希望者から問い合わせの際、実際に受けた質問などを基に架空の質問を設定し、バーチャルなQ&A形式の記事を書いてゆこうと思います。



やらせ企画?

 上記のとおり私自身が質問を設定して、それを私自身が答えるという、いわゆる”自作自演”というか”やらせ”というか、そんな記事にはなってしまいますが、ゆくゆくは皆さんからの”リアル”な質問などもいただいて本当のQ&Aになればとも思っています。それでは「ギター上達バーチャルQ&A」スタートしましょう。






Q : 60代男性 ギター暦約30年(長期中断あり) 1967年河野使用

 最近「アコースティック・ギター」と言う言葉をよく聴きます。かつてはギターは「クラシック・ギター」、「エレキ・ギター」、「フォーク・ギター」の3種類だったと思います。まあ、だいたいの意味はわかるのですが、「アコースティック・ギター」という言葉の正確な意味を教えてください
 



A :

 いや、最近というより結構前からこの言葉は使われていると思いますが・・・・  それにしても1967年の河野とはシブイですね。確かに私たちの世代、over60だと「アコースティック・ギター」というのはあまりピンとこないかも知れませんね。

 また若い人でも、これからギターを始める場合、「アコースティック・ギターとクラシック・ギターはどう違うの?」、「どっちのギターを買ったほうがいい?」、などいろいろ迷うところだと思います。お任せ下さい。アコースティック・ギター、特にクラシック・ギターとの違いを責任を持ってご説明しましょう。


最近の英和辞書には「An acoustic guitar」と載っている

 英語の「Acoustic」を辞書で調べると、[①音の、音響の、聴覚の ②(楽器が)アコースティックの、An acoustic guitar=アコースティック・ギター](アドバンスト・フェイバリット) となっています。 

 ②ではかえって意味がわかりませんが、「An acoustic guitar」と言う言葉が英語辞典に載っているということはこの「アコースティック・ギター」というのが日本で作られたカタカナ英語ではなく、正しい英語、つまり英米でも使われている英語であるようです。因みに1960年代の英語辞典にはこの言葉は載っていませんから、比較的新しい英語のようです。



This hall is very acoustic

 20年くらい前にパリ国際ギター・コンクールで優勝したドイツの女流ギタリスト、ケルスティン・アイゼンバートさんのリサイタルを主催した時に、彼女がひたちなか市文化会館のことを「This hall is very acoustic」と言っていました。正確にこのように言ったかどうかは保証できませんが、彼女が「アコースティック」という言葉を用いたのは間違いありません。

 同席していた英語と音楽のわかる人が「このホールはとても響きが良いと言っています」と通訳してくれましたので、英語的には「アコースティック」という言葉は「響きのよい」といった意味に用いられていると言ってよいようです。そしてその言葉をほとんど英語のわからない私に向けて使ったわけなので、英語としてはごく一般的なものと考えてよいようです。

 因みに私たち東関東のギター愛好者にとっては馴染みの深い、ひたちなか市の「アコラ」の正式名称「Acousutic life」も、この「響きのよい」といった意味合いで使われているのでしょう。アコースティック・ギターの愛好会といった意味ではないと思いますし、まして「生の生活」といった意味ではないでしょう。



実際に使われている言葉の意味はそうではない

 といったように言葉上では「アコースティック・ギター」とは「響きの良いギター」といった意味になりますが、もちろん現在、少なくともこの日本で「アコースティック・ギター」として使われている言葉そのような意味では使っていないのは明らかです。

 基本的に国語の苦手な私が言うのもなんですが、言葉というのはどんどん変化してゆくものです。語源はともかくとして、やはりこの言葉が現在どのように用いられているかを検討してゆかなければならないでしょう。



<アコースティック・ギター> = <スティール弦を張ったギターで、エレキ・ギターでないもの>

 結論を先に言ってしまえば。現在多くの人が使っている言葉に意味としては、「アコースティック・ギター」 = 「スティール弦を張ったギターで、エレキ・ギターでないもの」、となるでしょう。語源や言葉上の意味合いとは別に、そのような意味で多くの人がこの言葉を用いているのは確かで、特にアコースティック・ギターを弾いている人がそのような認識をしているのも確かでしょう。


 想像ではありますが、20世紀中頃のポピュラー音楽界で、エレキ・ギターが主流となった時期に、単に「ギター」と言うとほとんどの人がエレキ・ギターを思い浮かべてしまうので、エレキ・ギターでない楽器のことを、「アンプを通さなくても”よく響く”ギター」、さらに短くなって「よく響くギター」、つまり「アコースティック・ギター」と呼ぶようになったのでしょう。


アコギフィンガー
現在アコースティック・ギターと呼ばれている楽器。スチール製の弦を使用する。フィンガー・ピッキング(指弾き)用。


言葉上ではクラシック・ギターもアコースティック・ギターだが

 エレキ・ギターでないギターと言えば、ナイロン弦を張るクラシック・ギターも言葉上ではアコースティック・ギターとなり、確かにそう呼ぶこともありますが。しかしクラシック・ギターをやる人にとってはアンプを通してギターを演奏することは基本的にないので、あえて「アンプを通さなくてもよく響くギター」、つまり「アコースティック・ギター」と呼ぶ必要がないわけです。したがって、エレキ・ギターと区別する必要もなく、単に「ギター」、あるいは「クラシック・ギター」と呼んでいます。

  逆にポピュラー系の音楽をやっている人たちにとっては、逆にナイロン弦を張ったギターを弾くことは少ないので(なくはないが)、アコースティイク・ギターというと、やはりスチール弦の楽器ということになります。ポピュラー系の人がナイロン弦の楽器を呼ぶときにはクラシック・ギター、あるいはガット・ギター(昔はガット弦(羊腸弦)を張っていた)と呼ぶようです。

 ガット・ギターという言葉もクラシック・ギターをやっている人たちにはあまり使われません。


クラシック・ギター縮
ナイロン弦を張ったクラシック・ギター。言葉上ではクラシック・ギターもアコースティック・ギターに含まれる。ガット・ギターとも呼ばれるが、クラシック・ギターをやっている人たちはそう呼ばない。



フォーク・ギターは死語?

 かつては下のようなスチール弦を張った楽器のことを「フォーク・ギター」と呼んでいました。しかし1980年代に入って、フォーク・ソングそのものがあまり歌われなくなり、フォーク・ギターと呼ぶのが不自然となって、その代わりに使われるようになったのがこの「アコースティック・ギター」という言葉と考えられます。私自身もアコースティック・ギターという言葉を聴くようになったのは1980年代になってからだと思います。


アコギフォーク
ピック・ガード(黒い部分)の付いたアコースティック・ギター。かつてはフォーク・ギターと呼ばれていた。このタイプの楽器は基本的にストラップを使用して立って弾くように出来ていて、座って弾く場合には安定しにくい。


 従って、アコースティック・ギターとはフォーク・ギターの呼び名が変わったものと解釈してもよいとは思いますが、言葉が変わると、やはり内容も変わってゆく。フォーク・ギターと呼ばれていた時代では、この楽器は主に弾き語りなどの伴奏、つまりコードを弾くための楽器として用いられ、あまりソロを弾く事はありませんでした。その際にはストロークにせよ、アルペジョにせよ、指で弾くよりはピックを使うことが主流でした。



最近は「叩き系」が主流

 今現在アコースティック・ギターというと、どちらかと言えば指弾きのソロが主流で、ピックはあまり使われません。ある意味クラシック・ギターと近くなっているともいえますが、いわゆる「叩き系」と呼ばれる、弦、ボディ、指版などを叩く奏法多用する傾向になっています。

               
          ・・・・・・・・・次回に続きます
 昨日水戸市三の丸茨城県立図書館視聴覚ホールで「ギター・ワールド・カップ ~中村俊三世界の名曲コンサート」を行ないました。

 日本を含めた世界8カ国のギター曲、あるいは名曲を演奏し、同時にギターとサッカーの関連性に迫るといった内容で、演奏曲は各国2曲ずつの16曲、アンコール曲も含めれば18曲と結構なボリュームのコンサートになりました。

 「あんなに弾いて疲れないですか」という言葉もありましたが、少なくともコンサートの最中はあまり感じません。やれと言われれば、もう何曲か弾くことができます。 ・・・・誰も、もっと弾いてほしいとは思わないだろうが。

  確かに前日には腕などに疲れを感じましたが、今回のコンサートは準備期間が短かったのでいつもほどではありませんでした。その分「発展途上」的な曲が多く、もっときちんと仕上げなければならないのは確かです。

 また、うっかりと予定の時間を越えてしまい(勘違いもしていたが)、図書館の方にはほんとうにご迷惑をおかけしました。

 いつものとおり100人を越える人に会場に来ていただきました。ありがとうございました。退屈しない時間を過ごせていただけていたら幸いです。今回ちょっと企画に懲りすぎていたのは若干反省しています。次回はも少し”普通”にコンサートを行いましょう。