Q : 独学で「アルハンブラの想い出」を練習しています。どのような練習をしたら村治佳織さんのようなトレモロが弾けるのでしょうか。やはり「アルハンブラの想い出」は教室で習わないと弾けるようにはならないんでしょうか? また習った場合、どれくらいで弾けるようになるんでしょうか?
40代男性
A : その4 「アランブラの想い出」の演奏のしかた
まず曲の把握
今回は運指や曲想などアランブラの想い出の弾き方についての話です。まず曲の出来方ですが、前回載せた二重奏の譜面を見ていただくとわかりますが、曲そのもはメロディとアルペジオの組み合わせで、意外とシンプルです。
最初からトレモロ奏法、あるいは左手の運指など、指の問題にばかりに気を取られないで、まずどういうメロディで、どういう伴奏か、どのような構成でこの曲が出来ているか、などを把握しておきたいところです。独奏の練習に入る前に前述の二重奏版などを練習しておくのは、たいへん有効です。
4小節ごとのフレーズで出来ている
構成としては前半イ短調、後半イ長調にコーダといった形になっています。フレーズはほぼ4小節からなり、前半は5、後半は4つのフレーズからなり、コーダははっきりとしたフレーズにはなっていませんが、8+13小節からなります。
前後半はそれぞれ4小節のはっきりとしたフレーズからなるので、演奏の際のフレージングには十分気をつけるべきでしょう。また強弱の付け方にも関係し、記憶の目印ともなります。一応参考のために譜面を載せましたが、この曲はどの譜面もほぼ同じなので、出来れば手持ちの譜面を参考にして下さい。

1、2段だけに強弱記号が付いているが、以下同様と考えられる。
この曲には強弱記号、速度指示、発想記号などはかなり少なく、付いているのは冒頭の2段にデクレシェンドとクレシェンド、2拍目、3拍目の低音にアクセント記号、そして終わりから5小節目にリタルダンド、4小節目にピアニッシモ、3小節目にピアニシッシモが付いているだけです。
アクセント記号は拍頭を明確にということか
3段目、つまり5小節目からは強弱記号が付いていませんが、それ以降も4小節までと同じようにすると考えるべきでしょう。2,3拍目に付けられたアクセント記号は、この音をはっきり弾いて、拍の表、つまり3拍子となっていることがよくわかるように弾くといった意味でしょう。
またこの音が不明瞭になりやすいので注意といったことかも知れません。決してスフォルツァンドではないので、極端に大きく弾く意味ではありません。
メロディの上下にあわせてクレシェンドとデクレシェンド
デクレシェンドとクレシェンドの組み合わせは、一般的なフレーズの強弱の付け方と逆の感じですが、おそらくメロディの上昇、下降にしたがって強弱を付けるといった意味なのでしょう。これは、以後の部分の強弱の付け方に大きく関係してきます。
呼吸感は必要だが、音楽が途切れてはいけない
フレーズについては、前述のとおり、前、後半ともに4小節ずつとなっていますが、4小節目のところ、つまり二つ目のフレーズは4小節目の3拍目からと考えてよいでしょう。
各小節の切れ目では呼吸感が必要ですが、間を空けるというより、力を抜く、つまり音圧を押さえて、気持ちスローダウンするくらいがよいでしょう。あくまでも、音楽の流れは自然でなければなりません。
9小節目はフォルテ
「上昇はクレシェンド、下降はデクレシェンド」ということからすると、5段目、つまり9小節目が最も音量が大きくするところだと思います。9小節目の冒頭からフォルテでもよいと思いますが、弦楽器のように冒頭はやや押さえ気味で、音が少し進んでから音量を最大にする方法もあります。
またこの部分は左手が難しいところで、上手く行かない場合は運指などの変更が必要でしょう。11小節目(一番下の段)の3連符のスラーも難しいところで、左右の指の動きを合わせなければなりません。
2ページ目

13小節目からはさらに左手が難しい、①弦で弾く方法も
13小節目(2ページ目の1段目)からの4小節は二短調に変りますが、ここは左手の特に難しいところです。押さえる場所を覚えるだけでは弾けないので、具体的に一本一本の指の動きを考えて練習しないといけないでしょう。どうしても上手く行かない時には、メロディを①弦にする方法もあります。
転調してからはおおらかに
21小節目(2ページの5段目)からはイ長調に変り、メロディが①弦になることもあって、前半よりは弾きやすくなります。明るく、おおらかな演奏が必要でしょう。25小節(2ページ最後の段)からはメロディが大きく飛躍して一つのクライマックスとなります。音量を上げるのはもちろんですが、美しさも失わないようにしたいものです。ややグリサンド気味に弾いてもよいでしょう。
3ページ目

嬰ハ短調という遠い調に転調。表情込めて
29小節目(3ページの2段目)からは嬰ハ短調という、やや遠い調に転調し、曲の表情も一転します。たいへん印象的な部分なので、特に表情込めて歌いたいところです。またメロディの上下とポジションの上下が逆になり、記憶の混乱しやすい部分でもありますので(プロ・ギタリストでも混乱する時がある)、メロディとコードを分けて正確に記憶すべきでしょう。
コーダのメロディの動きは少ない ~クレシェンド、デクレシェンドをはっきり
コーダに入ってからは技術的に難しい部分はありません。ここは歌というよりはいわゆる後奏部分で曲に余韻を持たせるといった意味合いでしょう。メロディの動きが少ない分だけクレシェンド、デクレシェンドは、はっきりさせたほうがよいでしょう。4ページ2段目の2小節、および6段目の1小節目が山と考えられます。
4ページ目

山場で音量を上げておかないと効果が薄い
強弱記号が非常に少ないこの曲にあって、最後の部分だけリタルダンドとピアニッシモ、ピアニシッシモが記入され、消えてゆくように演奏することが示されています。最後を消えてゆくようにするためには、その前の山となる部分(6段目の1小節目)でしっかりと音量を上げておかないと効果が薄いでしょう。
なるべくオリジナルの運指は尊重したいところだが
なお、多くのギタリストは、何らかの形で記入された運指を変更して演奏していると思いますが、譜面に記入されている運指はおそらくタレガ自身のものと考えられ、特に弦の指定などはなるべく尊重すべきでしょう。ただし指の使い方などは直接音に関係するものではありませんから、結果がよければ変更に問題ありません。
しかしタレガの指定のポジションで上手く弾けない時には、次善の方法としてポジションや弦の指定を変更してみるのも可能でしょう。特に前半(短調部分)ではそれが言えると思います。
①弦で始めるとトレモロが弾きやすい
タレガは短調と長調の違いをはっきりさせるため、前半は②弦ではじめ、後半は①弦で弾くように指示しています。もちろんこれも出来る限り従いたいところですが、②弦でスタートすると、トレモロ奏法がなかなか上手く弾けない場合、①弦で始めるとトレモロも弾きやすいと思います。この方法をとるギタリストも少なくありません。
前述のとおり、13小節目からもメロディを①弦にすると、左手は少し易しくなり、3連符のスラーも出しやすくなります。
40代男性
A : その4 「アランブラの想い出」の演奏のしかた
まず曲の把握
今回は運指や曲想などアランブラの想い出の弾き方についての話です。まず曲の出来方ですが、前回載せた二重奏の譜面を見ていただくとわかりますが、曲そのもはメロディとアルペジオの組み合わせで、意外とシンプルです。
最初からトレモロ奏法、あるいは左手の運指など、指の問題にばかりに気を取られないで、まずどういうメロディで、どういう伴奏か、どのような構成でこの曲が出来ているか、などを把握しておきたいところです。独奏の練習に入る前に前述の二重奏版などを練習しておくのは、たいへん有効です。
4小節ごとのフレーズで出来ている
構成としては前半イ短調、後半イ長調にコーダといった形になっています。フレーズはほぼ4小節からなり、前半は5、後半は4つのフレーズからなり、コーダははっきりとしたフレーズにはなっていませんが、8+13小節からなります。
前後半はそれぞれ4小節のはっきりとしたフレーズからなるので、演奏の際のフレージングには十分気をつけるべきでしょう。また強弱の付け方にも関係し、記憶の目印ともなります。一応参考のために譜面を載せましたが、この曲はどの譜面もほぼ同じなので、出来れば手持ちの譜面を参考にして下さい。

1、2段だけに強弱記号が付いているが、以下同様と考えられる。
この曲には強弱記号、速度指示、発想記号などはかなり少なく、付いているのは冒頭の2段にデクレシェンドとクレシェンド、2拍目、3拍目の低音にアクセント記号、そして終わりから5小節目にリタルダンド、4小節目にピアニッシモ、3小節目にピアニシッシモが付いているだけです。
アクセント記号は拍頭を明確にということか
3段目、つまり5小節目からは強弱記号が付いていませんが、それ以降も4小節までと同じようにすると考えるべきでしょう。2,3拍目に付けられたアクセント記号は、この音をはっきり弾いて、拍の表、つまり3拍子となっていることがよくわかるように弾くといった意味でしょう。
またこの音が不明瞭になりやすいので注意といったことかも知れません。決してスフォルツァンドではないので、極端に大きく弾く意味ではありません。
メロディの上下にあわせてクレシェンドとデクレシェンド
デクレシェンドとクレシェンドの組み合わせは、一般的なフレーズの強弱の付け方と逆の感じですが、おそらくメロディの上昇、下降にしたがって強弱を付けるといった意味なのでしょう。これは、以後の部分の強弱の付け方に大きく関係してきます。
呼吸感は必要だが、音楽が途切れてはいけない
フレーズについては、前述のとおり、前、後半ともに4小節ずつとなっていますが、4小節目のところ、つまり二つ目のフレーズは4小節目の3拍目からと考えてよいでしょう。
各小節の切れ目では呼吸感が必要ですが、間を空けるというより、力を抜く、つまり音圧を押さえて、気持ちスローダウンするくらいがよいでしょう。あくまでも、音楽の流れは自然でなければなりません。
9小節目はフォルテ
「上昇はクレシェンド、下降はデクレシェンド」ということからすると、5段目、つまり9小節目が最も音量が大きくするところだと思います。9小節目の冒頭からフォルテでもよいと思いますが、弦楽器のように冒頭はやや押さえ気味で、音が少し進んでから音量を最大にする方法もあります。
またこの部分は左手が難しいところで、上手く行かない場合は運指などの変更が必要でしょう。11小節目(一番下の段)の3連符のスラーも難しいところで、左右の指の動きを合わせなければなりません。
2ページ目

13小節目からはさらに左手が難しい、①弦で弾く方法も
13小節目(2ページ目の1段目)からの4小節は二短調に変りますが、ここは左手の特に難しいところです。押さえる場所を覚えるだけでは弾けないので、具体的に一本一本の指の動きを考えて練習しないといけないでしょう。どうしても上手く行かない時には、メロディを①弦にする方法もあります。
転調してからはおおらかに
21小節目(2ページの5段目)からはイ長調に変り、メロディが①弦になることもあって、前半よりは弾きやすくなります。明るく、おおらかな演奏が必要でしょう。25小節(2ページ最後の段)からはメロディが大きく飛躍して一つのクライマックスとなります。音量を上げるのはもちろんですが、美しさも失わないようにしたいものです。ややグリサンド気味に弾いてもよいでしょう。
3ページ目

嬰ハ短調という遠い調に転調。表情込めて
29小節目(3ページの2段目)からは嬰ハ短調という、やや遠い調に転調し、曲の表情も一転します。たいへん印象的な部分なので、特に表情込めて歌いたいところです。またメロディの上下とポジションの上下が逆になり、記憶の混乱しやすい部分でもありますので(プロ・ギタリストでも混乱する時がある)、メロディとコードを分けて正確に記憶すべきでしょう。
コーダのメロディの動きは少ない ~クレシェンド、デクレシェンドをはっきり
コーダに入ってからは技術的に難しい部分はありません。ここは歌というよりはいわゆる後奏部分で曲に余韻を持たせるといった意味合いでしょう。メロディの動きが少ない分だけクレシェンド、デクレシェンドは、はっきりさせたほうがよいでしょう。4ページ2段目の2小節、および6段目の1小節目が山と考えられます。
4ページ目

山場で音量を上げておかないと効果が薄い
強弱記号が非常に少ないこの曲にあって、最後の部分だけリタルダンドとピアニッシモ、ピアニシッシモが記入され、消えてゆくように演奏することが示されています。最後を消えてゆくようにするためには、その前の山となる部分(6段目の1小節目)でしっかりと音量を上げておかないと効果が薄いでしょう。
なるべくオリジナルの運指は尊重したいところだが
なお、多くのギタリストは、何らかの形で記入された運指を変更して演奏していると思いますが、譜面に記入されている運指はおそらくタレガ自身のものと考えられ、特に弦の指定などはなるべく尊重すべきでしょう。ただし指の使い方などは直接音に関係するものではありませんから、結果がよければ変更に問題ありません。
しかしタレガの指定のポジションで上手く弾けない時には、次善の方法としてポジションや弦の指定を変更してみるのも可能でしょう。特に前半(短調部分)ではそれが言えると思います。
①弦で始めるとトレモロが弾きやすい
タレガは短調と長調の違いをはっきりさせるため、前半は②弦ではじめ、後半は①弦で弾くように指示しています。もちろんこれも出来る限り従いたいところですが、②弦でスタートすると、トレモロ奏法がなかなか上手く弾けない場合、①弦で始めるとトレモロも弾きやすいと思います。この方法をとるギタリストも少なくありません。
前述のとおり、13小節目からもメロディを①弦にすると、左手は少し易しくなり、3連符のスラーも出しやすくなります。
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