中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

クラシック・ギター名曲ランキング

<第7位> 大聖堂(アウグスティン・バリオス)



「森に夢見る」や「郷愁のショーロ」などもあるが

 クラシック・ギターでのバリオスの人気はたいへん大きく、今現在、人気度ではソルやタレガを凌ぐものがあります。バリオスには他に「森に夢見る」、「郷愁のショーロ」、「ワルツ第3番」、「ワルツ第4番」、「フリア・フロリダ」、「クリスマスの歌」などの人気曲がありますが、やはりここではバリオスの曲があまり演奏されていなかった頃から、ほぼ唯一演奏されていたこの「大聖堂」にしておきましょう。



バリオスの晩年に現在の3楽章の形になった

 この曲は1921年頃作曲され、1928年にはバリオス自身で録音しています。これは現在CDで聴くことが出来、バリオスの残した録音は、そのほとんどが劣悪な音質となっていますが、この「大聖堂」の録音はその中でも比較的状態の良いものです。

 当初は現在の第Ⅱ、第Ⅲ楽章のみの形だったのですが、バリオスの挽年に現在の第Ⅰ楽章にあたる「プレリュード」が付け加えられました。1928年のバリオスの録音も2楽章の形になっています。

 したがって、この曲には第Ⅱ、第Ⅲ楽章のみで演奏する方法と、全3楽章を演奏する方法があり、1970年代頃までは2楽章の形で演奏されることがほとんどだったのですが、現在では時間制限がない限り全3楽章の形で演奏されるのが普通です。


1960年代頃まではそれほど演奏されていなかった

 現在これだけ人気の曲ではありますが、少なくとも1960年代頃まではあまり演奏されることも少なく、この曲を弾く人はもちろん、知っているという人も結構”通”の人だったのではと思います。私自身でもこの曲を初めて聴いたのは1970年代の半ば頃、トゥリビオ・サントスのLPによってです。


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私が初めて大聖堂を聴いた1976年のトゥリビオ・サントスのLP。 当時この大聖堂のLPはまだ少なかった。このLPには他にブローウェルの「舞踏礼賛」なども収録されている。こちらもまだ現在のように誰でも(ギター・ファンなら)知っている曲にはなっていなかった。トゥリビオ・サントスはこの時代最先端的な曲を多数録音している。ヴィラ・ロボスの「12の練習曲」や「ブラジル民謡組曲」の全曲録音もこのサントスが最初だと思う。残念ながらそれらは今現在CDにはなっていないようだ。



セゴヴィアが演奏しなかったせい?

 それまでこの「大聖堂」をはじめ、バリオスの作品がギター・ファンの間に浸透しなかった最大の理由としては、何といってもアンドレス・セゴヴィアがバリオスの作品を演奏しなかったことにあるでしょう。一説によればセゴヴィアはバリオスの脅威のテクニックと音楽性に恐れをなし、バリオスの作品を手掛けなかったと言われています。

 その真意はわかりませんが、しかし1950年代頃までバリオスの作品を演奏していたヨーロッパのギタリストは極めて少なく、セゴヴィアが演奏しなかったとしても特に不思議ではありません。



濡れ衣と言えなくもないが

 やや濡れ衣といったところもあると思いますが、裏を返せばそれだけこの時代(1930~1960年代)においては、セゴヴィアの影響力があまりにも大きかったということでしょう。20世紀半ばではセゴヴィアの歩いた道を後からたどったギタリストが少なくなかったのは確かです。

 もちろん仮にセゴヴィアが早い段階でバリオスの作品を演奏したり、録音したとしたら、バリオスの作品は早い時期から多くのギター・ファンの心を掴んでいたでしょう。 



ジョン・ウィリアムスの2回の録音

 バリオスの作品のCDについては以前にも書きましたが、これも再度おさらいしておきましょう。まずは、何といってもジョン・ウィリアムスの新旧2回の録音で、何といってもその最初の1977年の録音は、その後のバリオス・ブームのきっかけとなるものです。

 この「大聖堂」に関しては2回とも多少違ったバージョンで演奏していて、特に2回目(1994年)の録音ではあまり聴くことのないバージョンになっています。また録音としては1回目の方はかなり抑えめのもの、2回目のほうはかなり華やかな録音となっています。1977年はフレタ、1994年はスモールマン使用ですが、個人的には1977年の演奏の方が愛着があります。



デビット・ラッセルの1994年の録音

 もう一つ1994年の録音(この年はバリオスの没後50年に当たる)で、デビット・ラッセルのものがお薦めできます。ウィリアムスの演奏は一気に弾ききっているといった感じのもので、細部よりも全体の構成に重点を置いた印象がありますが、こちらは細部の表情にもこだわっています。



フォルホースト、ポルケドゥ

 他にデビット・ラッセルの影響を受けたと思われる、エンノ・フォルホーストの2枚のバリオス作品集のCDもお薦めできます。

 またポルケドゥがブリラント社から6枚組のバリオス作品全集を出していて、この「大聖堂」以外にも、このCDでしか聴くことのできないバリオスの作品が多数収録されています。曲順がアルファベット順となっていて、辞書のような感じになっていますので、練習にはたいへん便利です。
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クラシック・ギター名曲ランキング

<第6位>  アストゥリアス(イサーク・アルベニス)




本来ギター曲ではないが

 この曲をこのランキングに入れるのは厳密には問題あるかも知れませんが、違和感を感じる人はそれほど多くはないでしょう。本来ギター曲でないにも関わらずギターの名曲として知られているのは周知のとおりです。

 この曲はピアノで演奏されよりもギターで演奏される方がずっと多いのは間違いありません。つまりピアノで演奏すれば「珍しい曲」で、ギターで演奏すれば「ごく当たり前の曲」と言えます。こうした事実を考えれば、ごちゃごちゃ言わず「ギターの名曲中の名曲」でいいでしょう(誰もごちゃごちゃ言っていないか)。



聴きなれていない人にもウケる

 この曲はフラメンコ風の無窮動のパッセージが繰り返される情熱的な曲で、この曲が弾ける人にも弾けない人にも、たいへん人気の高い曲です。人気の高さだけで言えばもう少し上のランキングもある得るでしょう。

 また、この曲は初めて聞く人にでも印象度が高く、あまりギター曲を聴きなれていない人を対象としたコンサートでも反応がなかなかよいものです。そうしたことから、私自身でもいろいろな場でこの曲を演奏していて、演奏頻度からすると「禁じられた遊び」、「アランブラの想い出」に並ぶものです。



当ブログでは何度も書いているが


 この曲については当ブログでも何度かにわたって書いていますが、一応おさらいしておきましょう。「アストゥリアス」はスペインの作曲家、イサーク・アルベニスによって1895年頃、5曲からなるピアノのための組曲「スペインの歌」の第1曲「前奏曲」として作曲され、作曲家の死後「スペイン組曲作品47」に第5曲「レーエンダ‐アストゥリアス」として組み入れられました。



曲名と内容が合っていない?

 現在はこの曲を「アストゥリアス」、または「レーエンダ(伝説)」と呼ばれているわけですが、この曲名は作曲者が付けたものではなく、出版社によって付けられたものと言えます。曲は文字通りフラメンコ的な曲ですが、曲名になったアストゥリアス地方というのはスペイン北部にあり、フラメンコとは全くと言ってよいほど縁のない地方だそうです。

 したがってこの曲名はおかしい言う声もありますが、このアストゥリアス地方というのは山と海に囲まれた厳しい環境の土地らしく、この曲の情熱的であると同時に緊張感のある雰囲気に、合わなくもないかも知れません。少なくとも私にはそう感じられます。



気になったことありませんか?

 この曲はピアノよりもギターで演奏されることがずっと多い曲だとしても、やはり基本的にピアノ曲ですから、そのままギターで演奏することは出来ません。当然編曲しなければならないということです。皆さん、特に多少なりともこの曲を弾いたことのある方、誰がギターに編曲したかって気になったことありませんか?

 ともかく有名な曲だけに譜面は以前からたくさん出ています。ギターやっている人なら何らかの形でこの曲の楽譜を持っているのではと思います。その楽譜に編曲者の名前はどう書かれていますか? おそらく何も書かれていないか、もしくはその曲集などを編集した人の名前が書かれているのではと思います。



編曲者名が違っていても似たり寄ったり

 細かいところ、特に中間部などでは多少違っていたとしても、大筋ではどの譜面もほぼ同じといってもよいと思います。本当にそれぞれのギタリストが別々にアレンジしたとしたら、もっと個々の譜面によって異なるはずです。場合によっては調も異なるかも知れません(現実的にはホ短調以外はかなり難しいが)。 



1991年にセゴヴィア編として出版されたが

 結論としては、それぞれのギタリストがピアノ譜から独自にギターにアレンジしているのではなく、一つの共通した編曲譜から再編曲、あるいは多くな影響を受けているということでしょう。つまりオリジナルの編曲譜があるということです。

 1991年にUnion Musical Edicionesからセゴヴィア編曲のアストゥリアスが出版されました。これぞ、そのオリジナルの編曲譜かなと思ったのですが、この譜面見覚えがある、かつて(1970年頃)よく見かけた譜面です。細かいところまで全く同じもので、あえて買う必要もなかったかなと思いました。

 それにしても、もしこの編曲譜が本当にセゴヴィア自身のものであれば、なぜセゴヴィアは生前にこの譜面を出版しなかったのだろうか、これだけ人気曲なのだから。

 一般にセゴヴィア編とされている曲の中にリョベットやタレガなどの編曲を若干手直ししたものがたくさんあります。中にはかなり変更していて確かに実質「セゴヴィア編」と言ってよいようなものもかなりあります。


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1991年にUMEから出版されたセゴヴィア編(と言われる)のアストゥリアス。中身は昔よく見た譜面だ。



セゴヴィアはそういったことにはきちんとしていた

 しかしセゴヴィアはそうした、他のギタリストが編曲したものに若干自らの手を入れたものをものを、決して自らの編曲として、演奏したり、まして出版する(自らの編曲として)ようなことは全くしていません。セゴヴィアが自らの編曲として出版したものは、すべて原曲から直接編曲したものに限られます。

 つまりアストゥリアスを生前出版しなかったは、セゴヴィア自身の編曲ではなく、他のギタリストの編曲で、セゴヴィアがそれに若干変更を加えて(和声法的には適切な変更)演奏していたといことを示すものです。

 1991年に「セゴヴィア編」として出版されたものは、むしろその基になったオリジナルの編曲譜そのものと言えるかも知れません。前述のとおり、セゴヴィアの演奏と若干異なっています。おそらくセゴヴィアの遺族などがその譜面をセゴヴィア編として出版したのでしょう(そういえば「禁じられた遊び」も遺族によって「イエペス作曲」とされている)。



現代ギター誌に本当の編曲者が書かれていたが

 この曲の本当の編曲者は確か現代ギター誌に書かれていたと思います。スペインのギタリストだったと思いますが、、名前の方は忘れてしまいました。2~3年くらい前の記事だったと思いますので気になる方はバック・ナンバーを当たってみてください。セゴヴィア自身でもそのギタリストのアレンジを若干変更して用いたと書いてあったと思います。


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おなじみの譜面だが、3段目から伴奏としてに②弦解放弦の「シ」が2個ずつ付いている。原曲ではオクターブの音を2個同時に弾いているのだが、この編曲では「ヨコ」に「シ」を2個重ねている。こうすることにより盛り上がりを減ずることなく、演奏を容易にしている。「タテ」のものを「ヨコ」にしたわけだが、なかなかの発想だ



その功績は讃えられるべき

 確かに今現在、このアストゥリアスのいろいろな編曲譜が出版されていますが、そのほとんどの譜面が、このオリジナルの編曲譜を継承していると言ってもよいでしょう。特に主部ではそれが顕著に出ています。とすればこの最初の編曲者はギター界における功労者となるわけですが、現在ほとんどその名前は知られていません。もっとこのギタリストの功績は讃えられるべきでしょう。

 ・・・・かく言う私も名前を忘れてしまっている、ゴメンナサイ。 ・・・・・・ちゃんと調べておこう。
 



クラシック・ギター名曲ランキング

<第5位>  モーツァルトの「魔笛」の主題による変奏曲作品9 フェルナンド・ソル


 

まさにクラシック・ギターを代表する曲

 一般的な知名度などを顧慮した結果、この順位になってしまいましたが、クラシック・ギターをやるものにとってはまさにクラシック・ギターを代表する曲といえます。古今東西、老若男女、プロ、アマ、初心者、上級者を問わず、クラシック・ギター興味のある多くの人に親しまれ、この曲を弾かない・クラシック・ギタリスト、あるいは、この曲を聴かないギター愛好者は稀ではないかと思います。

 この曲は古典派時代を代表するフェルナンド・ソルの名作でもあり、そういった意味でもクラシック・ギターを代表する曲と言えるでしょう。

 

NHKテレビ・ギター教室のテーマ曲だと思っていた

 この曲を私が最初に聴いたのは、中学生の頃、NHKのテレビ番組「ギター教室」だったと思います。当時阿部保夫氏が講師を担当し、その番組のテーマ曲として演奏していました。もっともその当時の私はその曲を聞き覚えてはいたものの、正しい曲名などはわからず、ただNHKギター教室のテーマ曲としか思っていませんでした。


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1966年(昭和41年)のNHKギター教室のテキスト。この当時、講師の阿部保夫氏はこの「魔笛」の主題による変奏曲の主題部分を番組のテーマ曲として用いていた。このテキストは私の兄が買ったものと思われますが、ほとんど使用した跡などはなく比較的きれいです。


マテキ?

 大学のギター部に入って2、3日目頃、部室で一人の上級生がこの曲を弾きだし、「NHKのギター教室のテーマ曲だな」と思っていたら、知っている部分終わってもその先輩はさらに弾き続けて、なかなか終わらない。どうやらこの曲は相当長い曲らしいいということが初めてわかり、その先輩に曲名を訪ねると、「マテキ」という答えが返ってきました。なんか変な名前だと思いました。



「マテキ」が「魔笛」になるまでしばらくかかった

 私が「マテキ」=「魔笛」であることを理解するまでに、それからまだしばらくの日数が必要で、正式名称が「モーツァルトの『魔笛』の主題による変奏曲」ということ、モーツァルトに有名な「魔笛」というオペラから主題をとったこと、ソル(名前だけは知っていたかも)が古典は時代の作曲家だったこと、などといったことがわかるのも、もうちょっと先になってからです。



最初のLPも阿部保夫氏

 最初に買ったこの曲のLPも阿部保夫氏のものでした。その時点でもまだこの曲の正式な名称がわからず、とりあえず「マテキ」と言う曲が入っているのレコードを探してみたのですが、なかなか見つかりませんでした。

 そこで、その曲は置いておいて、とりあえず「アランブラの想い出」とか「アストゥリアス」など有名な曲がたくさん入っていそうな阿部保夫氏のLPを買いました。阿部氏はその当時私が知っている数少ないギタリストの一人でした。

 そのLPの中に当然のごとくこの曲も入っていましたが、そのLPには「モーツァルトの主題による変奏曲」と表記されていたので私にはわからなかったわけです。この時初めてこの曲の正式な名称や作曲者を知ることになりましたが、しかしその時点でもなぜその曲が「マテキ」と呼ばれているのかは、わかりませんでした。



癖のない演奏

 その阿部氏のLPは溝が擦り切れるくらい何度も聴いたものですが、今は手元になく聴き直すことは出来ません。記憶で語るしかありませんが、当時セゴヴィアをはじめ、多くのギタリストがオリジナルの音価を変更して演奏している中、阿部氏の演奏はオリジナルの音価を忠実に再現した癖のない端正なものだったと思います。



かつては序奏を省略していたが

 さて、この曲はホ短調の序奏とホ長調の主題と5つの変奏、コーダから出来ていて、楽譜通りに演奏するとだいたい7~10分くらいの曲です。かつては序奏を省いて演奏するのが普通でしたが、もちろん今では序奏を省くことはあまりありません。省くとしたら、コンクールや発表会など時間制限がある場合だけでしょう。



美しいが目立たない原曲のアリア

 テーマに用いられた曲は、第1幕でモノスタートス(英語的には「モンスター」かな)らが歌う「なんと素晴らしい鐘の音」という短いアリアで、確かに美しい曲ですがあっという間に終わってしまい、それほど目立たない曲です。CDの場合だと1枚目のトラック10、または15になっていることが多いと思いますが、最初から聴いているとほとんど気づかないような曲でしょう。



楽譜については以前の記事を参考に

 メロディは原曲通りではなく、ソル的に若干変更していますが、印象はそれほど変わらないでしょう。楽譜については以前とうブログでも書きましたが、現在いろいろな楽譜が出版されています。なるべくなら初版(1821年頃?)に基づいたものということになるのでしょうが、その初版も単純ミスと思われる部分や、あいまいな部分もたくさんあって、そのまま弾けばよいというものでもありません。その件については以前の記事などを参考にしていただければと思います。


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初版に近いと言われる現代ギター社版(中野編)。 しかし完全に初版と一致しているわけではなさそうだ。またその初版も明らかなミスや不明な点などいろいろある。「原典に忠実」といってもそれほど簡単でも単純でもない。





端正で好感度の高いセルシェルの録音

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 もちろんCDもたくさん発売されていて、いろいろなタイプの演奏がありますから、皆さんのお好きなギタリストの演奏を聴けばよいと思います。私の方で強いていくつか挙げるとすれば、まず1985年のイェラン・セルシェルの録音で、私が最初に出会ったこの曲の古典的な演奏と言えます。序奏がかなり速いのが特徴ですが、主題以下は非常に端正な演奏で、好感度の高い演奏です。





ピリオド楽器的なアプローチの福田


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 次に福田進一氏の1994年の録音で、ソルが用いた楽器と言われるラコートを使用し、文字通りピリオド楽器的な演奏です。全曲で7分台と速めのテンポで、福田氏らしくきびきびと演奏しています。現在廉価版が発売されていて入手しやすくなっています。




テンポの遅さをクリヤー出来れば

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 もうひとつ、1981年のジュリアン・ブリームの演奏で、全体でほぼ10分とかなり遅いテンポで弾いています。特にテーマが遅く、確かにモーツァルトの音楽でもソルの音楽でもないといった感じはありますが、聴き手がその点さえクリヤーできればたいへん素晴らしい演奏、とても楽しめる演奏です。まさにジュリアン・ブリームの音楽と言えるでしょう。また最近RCA録音全集として比較的安価で入手しやすくなっている点も嬉しいところ。
クラシック・ギタ名曲ランキング


<第4位>

アランフェス協奏曲   ホアキン・ロドリーゴ作曲




ギター協奏曲としては格段の知名度と人気

 一般のクラシック・音楽ファンにとっては、やはりこの曲が最も身近な曲でしょう。各レコード会社から出ている「クラシック名曲100選」といった企画には必ず含まれる曲です。ギター協奏曲としては他の曲に比べ、格段の知名度と人気を誇る曲で、他の楽器も含めた協奏曲の名曲でもあります。

 したがって、LPやCDなども非常にたくさん出ていて、私自身でも、特に集めているわけではありませんが、いつのまにか少なくとも10数種類の演奏がCD棚に収まっています。



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アランフェス協奏曲のCDいろいろ。私のコレクションの一部。順にウィリアムス、パークニング、村治佳織、セルシェル、ぺぺ・ロメロ。いつの間にかたくさんたまってしまった。中でもウィリアムス、イエペス、ブリームなどは3種類ずつある。たぶん⒑数種類以上はあると思う。




 しかし一方で、独奏曲ではなく、また愛好者が弾くには難しすぎるので、熱心に練習に励む一部のギター・ファンの中
には、あまり知らないとか、興味がないといった人も意外といます。
 


フィギャー・スケートにも登場

 かつてはジャズ奏者とかフラメンコ奏者なども演奏していましたが、最近ではあまり聴かなくなりましたが、最近ではフィギャー・スケートで時折この曲を聴くようになりました。選手は忘れましたが、この前のテレビ放映で誰が使っていましたね。

 最近ではフィギャー・スケートがきっかけでクラシック音楽に興味を持ち始める人も最近多くなったのではと思います。トリノ・オリンピックの時に荒川静香さん使用した「トゥランドット」などその一例ですね。フィギャー・スケートをやる人はきっと音楽にも詳しいのでしょうね。



当初はセゴヴィアに献呈する予定だったが

 この曲は1940年、つまり第2次世界大戦中にレヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサにより初演されています。当初はアンドレス・セゴヴィアを演奏者に予定していたのですが、セゴヴィアが戦禍を避けて南米にいたので、代わりにセゴヴィアと並んで当時著名なギタリストだったデ・ラ・マーサに依頼したようです。



結局セゴヴィアはこの曲を弾かなかった

 状況的にはやむを得なかったことと思われますが、セゴヴィアとしては当然自分が初演するはずだった曲が、ライバル関係にあったデ・ラ・マーサが演奏することになり、その後この曲を一度も弾いていません。ロドリーゴもそのことを気遣ってセゴヴィアに「ある貴紳のための幻想曲」を作曲しています。
 


メロディの美しい第二楽章が中心

 この曲が最も有名なギター協奏曲になったのは、何といってもたいへん美しい第2楽章によるものです。ふつう協奏曲というのは第1楽章が中心で、第2楽章は”箸休め”的な感じがあります。しかしこの曲に関しては明らかに第2楽章が中心となっています。



ロドリーゴにしては美しすぎる?

 長さ的も第2楽章が10分ほどあるのに対して、両端楽章は5分となっていて、作曲者も第2楽章にウエイトを置いていたことがわかります。ある辛口の批評家によれば、この第2楽章の旋律は「ロドリーゴが作曲したにしては美しすぎる」のだそうですが、過去の教会音楽などからの引用しているとも言われています。

 この第二楽章「アダージョ」が有名過ぎるので、影が薄くなってしまった第1、第3楽章ですが、こちらもなかなかの素晴らしい曲で、リズムと華麗なオーケストレーション、決して第2楽章にひけは取らないのではと思います。



協奏曲のコンサートではアランフェスに集中しすぎ

 ただ、若干残念に思うのは、コンサートでギター協奏曲を演奏する場合、ほぼ100パーセント、このアランフェス協奏曲になってしまうことでしょうか。独奏のコンサート場合、いくら有名だからと言ってもいつも「禁じられた遊び」や「アランブラの想い出」を演奏するわけではありません。むしろそういった曲を避ける傾向さえあります。


興行的理由が優先

 協奏曲を演奏するには、当然オーケストラが必要となり、独奏とは比べ物にならないくらい費用がかかります。とすれば少しでも観客が入るプログラムということで、どうしてもこの名曲に頼ることに」なってしまうのでしょう。興行的に冒険は出来ないということでしょうか。それというのも、結局この曲が有名過ぎるということでしょう。



他にもよいギター協奏曲はたくさんあるのだけど

 アランフェス協奏曲以外にも優れた、美しい、あるいは面白いギター協奏曲はたくさんあり(ヴィラ・ロボス、ポンセ、テデスコ、ジュリアーニ、アーノルド、ブローウェルなど)、別の機会にでも、そういった曲を紹介したと思います。

クラシック・ギター名曲ランキング 

<第3位>  カヴァティーナ  スタンリー・マイヤーズ作曲(映画「ディア・ハンター」の主題曲」)




トップ・ツーは決まりだが

 クラシックギター名曲の知名度および人気度ランキングとしては、第1位と第2位は、その順番には違いあるにせよ、トップ・ツーは誰が考えても「禁じられた遊び」と「アランブラの想い出」に決まりですね。

 しかしそこから先、つまり第3位以下は特にギターには興味がないという一般の人にはほとんど知られず、知名度といってもある程度ギターに興味がある人か、ギターをやっている人が対象とするしかないでしょう。



生徒さんなどが弾きたいと思っている曲

 どの曲を第3位にするかということはたいへん難しのですが、私の教室の生徒さんや、愛好家の方々が弾きたいと思っている曲などをモニタリングすると、やはりこの「カヴァティーナ」ということになるでしょう。



ディア・ハンター
ロバート・デ・ニーロ主演 映画「ディア・ハンター」 ロシアン・ルーレットのシーンが印象的だが、ベトナム側から「そんな事実はない」とクレームが付いたらしい。真相は不明



1990年頃まではあまり知られていなかった

 この曲はご存じのとおり1978年の映画「ディア・ハンター」の主題曲で、ジョン・ウィリアムスが演奏していました。この主題曲は映画公開の直後から話題となり、演奏していた人もいましたが、多くのギター・ファン知られるようになったのは1990年代の半ば以降です。ちなみに1990年頃の生徒さんへのアンケートでは全く名前が挙がりませんでした。



今や代表的なギターで弾く映画音楽、もともとは二重奏曲

 我が国では村治佳織さんのCDなどで人気が出ましたが、世界的にも人気曲で海外のギタリストも録音したり、あるいはコンサートのアンコール曲としてよく演奏しています。かつて映画で有名なギター曲といえば「禁じられた遊び」でしたが、今現在、ギターで弾く映画音楽と言えば、この「カヴァティーナ」と言ってもよいでしょう。

 映画のサン・トラでは独奏ではなく、ウィリアムスによる一人二重奏で演奏され、さらに弦楽器の音が乗せられています。一般に演奏されているのはジョン・ウィリアムスの編曲による独奏版です。



実弾入りのロシアン・ルーレットを強要される ・・・・・・・そんな事実はないとクレーム

 ベトナム戦争末期、ベトナム解放戦線の捕虜になってロシアン・ルーレット(実弾での)を強要され、奇跡的に脱出するなど、たいへん過酷な内容の映画ですが、音楽はたいへん美しく和む音楽となっています。ちなみに、ベトナムの方からはそんな事実(捕虜にロシアン・ルーレットを強要するなど)はありえないといったクレームがあったようです。



とても美しく和む曲だが、意外と曲者

 そのような穏やかな曲なので、ちょっと聴くととても簡単そうに聴こえるのですが、実際に弾いてみるとこれがなかなかの”曲者”です。もともとが二重奏だったということもありますが、なと言っても和音の変化が多く、1小節ごとに違う和音が出てくるような曲です。

 当然左手は難しいのですが、右手も決して簡単ではなく、コードをしっかりと響かせながらメロディをクリヤーに、しっとりと歌わせるのは(アポヤンド使用でも、不使用でも)、基本がしっかりと出来ていないと不可能です。

 私の教室に入学の相談に来た人に、「『アランブラの想い出』とか、あまり難しい曲は弾けなくてもいいんですが、村地佳織さんが弾いている「カヴァテーナ」あたりが弾ければ・・・・・」と言われることがあります(最近ちょっと少なくなったが)。



簡単そうに弾く人は実力者

 そんな時「カヴァティーナ」は意外と難しく、ちゃんと弾けるようになるには少し時間がかかるといったことを説明するのですが、あまりピンよはこないようです。確かに村治さんの演奏を聴くと(あるいは見ると)、とても簡単そうに思えますね、トレモロの場合もそうでしたが。

 ギターの場合、何気なく、簡単そうに弾いている人はかなりの実力者と言え、逆にいかにも難しそうに弾いている人はイマイチと言えるかも知れません・・・・・・・ 私もそうならないようにしないと!

 
クラシック・ギター名曲ランキング 


<第2位>  アランブラの想い出 ~フランシスコ・タレガ




第2位はこの曲しかない

 第1位が「禁じられた遊び」ということになれば、第2位はこの「アランブラの想い出」以外にはない。”一般の人も含めた知名度”ということで第1位は譲ることになりましたが、対象をギターをやっている人に限定すれば、むしろこの曲の方がクラシック・ギター名曲ランキング第1位としてよいでしょう。



クラシック・ギターど真ん中

 このランキングは、基本的に曲の内容ではなく知名度および人気度によるものですが、この曲は何といってもクラシック・ギター史の中でも最も重要なギタリスト、フランシスコ・タレガの作品であること、クラシック・ギターの特徴的な奏法であるトレモロ奏法を用いた曲など、”クラシック・ギターど真ん中”の曲で、いろいろな意味でクラシック・ギターを代表する曲といってよいでしょう。生まれも育ちも言うことない!


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「アランブラ」とは「赤い城」という意味で、本来「アランブラ宮殿」という必要はない。水を効果的に用いた庭園が美しいそうだが、残念ながら私は行ったことがない。



名所と名曲の相乗作用

 さらにタイトルの”アランブラ宮殿”もスペインを代表する名所で、この曲の知名度アップにこのタイトルも大いに関係しているでしょう、まさにネーミングの妙と言えます。また逆にこの曲でアランブラ宮殿を知り、それがきっかけで実際にアランブラ宮殿を訪れた人も少なくないのではと思います。名所と名曲の相乗作用といえるでしょうか。


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アランブラはスペイン南部の都市、グラナダにある



1896年頃作曲

 この曲はリウス著の「フランシスコ・タレガ」によれば、1896年頃、現在残されているものとはやや違った形で作曲され、1899年には「即興曲~グラナダへ アラビア賛歌」としてコンチャ夫人に献呈されています。現在演奏される形、および「アランブラの想い出()」として出版されたのはタレガの晩年の1907~1909年頃のようです。



タレガのリサイタルのプログラムには載っていない

 ではこの曲がいつ頃からタレガの代表作、あるいはクラシック・ギターの代表的な名曲となったかということですが、少なくともタレガは「アランブラの想い出」として自らのリサイタルのプログラムには載せなかったようです。タレガのリサイタルは他の作曲家の作品の編曲が中心で、自らの作品は「グラン・ホタ」や「ベニスの謝肉祭」以外はほとんどプログラムには載せていません。



非公式には弾いていたかも

 タレガは曲目など前もって決めずに、気の向くまま自由に弾くのが好きだったようで、おそらくアンコール曲のような形で自らの作品を演奏していた可能性は十分にあり、そうした場でこの曲が演奏されていたことはありうるでしょう。また自宅で弟子や訪問客に聞かせていたことも考えられるでしょう。場合によっては曲名などを告げずに演奏していたことも考えられます。


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この曲名、およびこの譜面で出版されたのは1907~1909年頃。 この曲が有名になったのはこれ以降と考えられる



一般的に演奏されるようになったのは没後と考えられるが

 しかしこの曲が一般の愛好者に演奏されるなど、人気曲となるのは、やはりこの譜面の出版後、つまりタレガの没後ということになるのでしょう。もともとアランブラ宮殿のイメージで曲が書かれていることは間違いないことですが、「Recuerdos de Alhambra」とタイトルがすっきりしたこともこの曲の一般への浸透を助けたのでしょう。



1927年にセゴヴィアが録音

 この曲がタレガの代表作、およびクラシク・ギターの代表曲となるのにそれからあまり時間はかからなかったでしょう。1927年にセゴヴィアが録音していますが、それが世界初録音かどうかはわかりません。少なくともこの時には、この曲が押しも押されもしないクラシック・ギターの名曲中の名曲としての地位を得ていたでしょう。

明けましておめでとうございます。


久々に3人で迎えるお正月

 また新しい年になりましたね。私の方では今年は久々に3人で迎えるお正月となりました。3人で過ごすお正月は何年ぶりせしょうか、創がパリに行く前ですから、もう10年くらいになるでしょう。30日の夜水戸駅に着いたのですが、改めて水戸の冬の寒さを思い出したようです。1月3日には東京でのオセロの大会で出るのだそうで、最近は帰郷と東京でのオセロの大会がセットになっているようです。




いつのまにか電話番号が

 今回の帰郷では、パソコンの買い替えに伴い、ホーム・ページのリニューアルをしてもらうことも大きな理由です。ホーム・ページと言えば、私が、よくわからないながらも、いろいろと手直ししているうちに、なんと教室の電話番号が消えてしまい、またメール・アドレスも、あることはあるのですが、ただ書いてあるだけで、そこをクリックしてもメールが出来る状態になっていませんでした。

 それでも教室の入学に関する問い合わせはそれなりにあり、そういった方々は、いろいろお手数をかけ、電話番号などを調べていただいて連絡していただいていたのでしょうね。本当に恐れいります。近いうちにもっと見やすく、連絡しやすいホーム・ページになると思います。



今年の予定

 さて例年通り、年頭に当たり、当教室、および私の今年の予定を書いておこうと思います。といってもはっきりと決まっているコンサートなどはまだ2件しかありません。

 

 ◎5月25日(日) 石岡市ギター文化館   谷島崇徳、中村俊三デュオ・コンサート(タイトルは仮)

  正式なタイトルや曲目などはまだはっきりとは決まっていませんが、谷島崇徳さんとギター文化館でコンサートをやることにしました。二重奏の曲目としては、アサドの「ファーウェル」、ヨークの「三千院」、ソルの「ロシアの想い出」などが候補となっています。

 他に独奏も行う予定ですが、私の場合、グラナドスの曲などやろうかなと思っています。思っているだけで練習などはまだ行っていませんが、「詩的ワルツ集」とか「スペイン舞曲第2番」などを考えています。



 ◎7月下旬 水戸芸術館  水戸市民音楽会

 今年も水戸芸術館での市民音楽会に出演します。まだ正式に日にちは決まっていません。



◎11月30日  ひたちなか市文化会館   第16回水戸ギターアンサンブル演奏会

 今年はバッハの管弦楽組曲第2番(全曲)とアルベニスの「アストゥリアス」、「カディス」などを演奏します。管弦楽組曲はギター合奏では「ロンド」以下の舞曲をよく演奏しますが、今回はあえて長大な序曲を含めた全曲演奏に挑戦です。



その他

 その他今年も県立図書館でコンサートを行いたいと思いますが、日にちなどはこれからです。昨年は「ギター・ワールドカップ」などとちょっとひねった企画となりましたが、今回はもう少し普通の企画でやろうと思います。

 5月の連休には今年もギター文化館でシニア・ギター・コンクールが行われ、審査員を務めます。また出来れば秋頃にリサイタルとして、多少まとまった内容のコンサートを行えればと思っています。

 それでは今年も私、および中村俊三ブログをよろしく願いいたします。