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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

クラシック・ギター名曲ランキング

<第12位>  前奏曲第1番(エイトール・ヴィラ=ロボス)




1960~70年代ではたいへん人気が高かった

 ヴィラ=ロボスのギター曲は、今現在でも人気のレパートリーで、その中でもこの「前奏曲第1番」は最も演奏されることが多いといってよいでしょう。しかし、1960~70年代では今以上に話題性も人気もあり、私が大学生の頃はみんなこの「前奏曲第1番」を弾いていました(例のごとく弾ける人も、弾けない人も)。この曲もその時代のランキングだったら、もっと上位となっていたのは間違いないでしょう。私自身も当時よく演奏していました。



多作家だが、ギター曲はそれほど多くない

 ブラジルの作曲家、エイトール・ヴィラ=ロボスについては、当ブログでも何度か書いていますが、かなりの多作家で、交響曲、協奏曲、ピアノ曲、各楽器の協奏曲などたくさんの作品を残しています。しかしギター曲としては「5つのショーロ(ブラジル民謡組曲)」、「5つの前奏曲」、「⒓の練習曲」、「ギター協奏曲」などといったところで、がんばれば1枚のCDに収まり、特に多いというほどでもありません。

 

低音弦を歌わせる曲だが、類似曲とは一味違う

 この「前奏曲第1番」は低音弦(⑤、④弦)のハイ・ポジションでメロディを歌わせる曲で、ギターの低音、あるいは低音弦の魅力を十分に引き出した曲といえます。これと類似した曲はいろいろありますが、この曲はただメロディを美しく歌わせるだけでなく、力強さとか、野性味も加わり、他の類似曲とは一線を画するところです。



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以前にも書いたが、ヴィラ=ロボスの譜面は弦の指定やハーモニックスの表記など独特なので、慣れないと分かりにくい。私の場合、初めて弾いた時(大学生の頃)には、LPを聴いて使用弦や、ハーモニックスを予測していた。



親しみやすさと新鮮さ

 特に前衛的な書法で書かれているわけではなく、作風からすればロマン派風といってもよいのですが、実際にこの曲を聴くと(あるいは弾くと)、たいへん新鮮な印象を受けます。

 作曲上の特徴と言えば、減7の和音、連続5度、8度の多様といったことが挙げられ、基本的には古典的な調性音楽なのですが、モード・ミュージック(教会旋法)的な感じもあります。

 つまり普通ぽいところもあるのだが、ちょっと普通じゃないところもあるといった”微妙”な音楽ですね。親しみやすさと新鮮さを同時に味わえる曲と言えるでしょうか。



最近では

 最近のリサイタルやCDなどでは単独で演奏されることよりも「5つの前奏曲」としてまとめて演奏されることがく、また同じヴィラ・ロボスの作品では、1960~70年代にはあまり知られていなかった「5つのショーロ(ブラジル民謡組曲)」の方に人気がややシフトしているようです。



個人的には

 録音は、おそらく1952年のセゴヴィアの録音が最初と思われます。以後文字通り数えきれないくらいのギタリストが録音していると思いますが、私個人的には1960年頃のイエペス野録音に愛着があります。まだ6弦時代(イエペスは1960年代後半からは10弦ギターを使用)の録音ですが、独特のヴィヴラートで、異次元の世界から聴こえて来るような深い響きがします。


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イエペスの1960年頃の録音で、何度も再発され、多くのギター愛好者に親しまれたもの。上は現在CDとして発売されているもの。写真では10弦ギターだが、中身の方はまだ6弦ギターを弾いていた頃のもの。日本国内の録音のようで、音質は年代からすればなかなかよい。他に「禁じられた遊び」「魔笛の主題による変奏曲」などが入っているが、その中でもこの「前奏曲第1番」は印象的で、50年以上経た今でも色あせない。


 最近では前述のとおり「5つの前奏曲」、あるいはヴィラロ=ボスのギター曲まとめての録音のほうが多く、それらのうち現在入手しやすいものでは、フレデリック・ジガンデ、 福田進一、 ノバート・クラフト、 ジュリアン・ブリームなどが挙げられるでしょう。
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 昨日(2月23日 日曜日) つくば市カピオ・ホールで「木村大/木村義輝 ~親子が奏でる、日本の歌 心の歌」と題されたギター・コンサートを聴きに行きました。曲目は以下の通りです

この道(山田耕作)、花(滝廉太郎)、 早春譜(中田章)、さくら(日本古謡)、涙そうそう(BIGIN)
八木節(栃木県民謡)

与作(七澤公典)、舟歌(浜圭介)、インスピレーション(ジプシー・キング)、悲しくてやりきれない(加藤和彦)、竹田の子守唄(京都民謡)
マラゲーニャ(スペイン民謡)

アンコール曲 : 浜辺の歌、見上げてごらん夜の星を


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 この企画は昨年に引き続いて2回目ですが、前回同様、二人のトークを交えてのコンサートでした。演奏は「さくら」、「与作」、「舟歌」は義輝さんの独奏、「インスピレーション」は大君の独奏、他は二重奏でした。アレンジについては明記してありませんが、お二人のものと考えられます。


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 ステージ後ろのスクリーンには大君の子供の頃や義輝さんの若い頃の写真なども映し出され、大君の子供頃や義輝さんにギターを習い始めた頃のことが語られていました。


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 このコンサートの趣旨、および曲目等の関係上、会場にはどちらかと言えば年齢の高い方が中心でしたが、ステージと会場の一体感もあり、多くの人の「心に残る」コンサートとなったのではと思います。 前回同様、アンプ使用のコンサートでしたが、ギターのコンサートに慣れていない人にもたいへん聴きやすいものだったと思います。
 
 もうオリンピックも終わってしまいますね。木曜日深夜はショート・プログラムの予想外の結果により浅田真央選手のフリー・スケーティングが比較的早い時間に行われ、リアル・タイムで見ることが出来ました。

 とても美しく、素晴らしいスケーティングでしたね。たいへん厳しい状況下にかかわらず、非常に強い意志力で滑りきったその姿には、テレビを見ていた多くの人が感動を覚えたのではないかと思います。

 それにしても、見事に言っちゃいましたね。あのおじさん、大事なときには必ず失言するんですよね。なんでなんだろうなと・・・・・・





クラシック・ギター名曲ランキング


<第11位>  11月のある日(レオ・ブローウェル)




 さて、当ランキングも10位オーバーとなり、クラシック・ギターにあまり興味ない人、あるいはギターを初めて間もない人、最近ギターに興味を持ち始めた人などにはあまりなじみのない曲が多くなってくるかも知れません。しかしその曲の内容が劣るわけではなく、ここから先が、むしろクラシック・ギターの神髄ともいえるでしょう。



ギター界の重鎮レオ・ブローウェルの作品

 この曲(11月のある日)もかなり最近人気が出た曲で、最近のアマチュアのコンサートなどではたいへんよく演奏されるようになった曲です。

 作曲者のレオ・ブローウェルはキューバの作曲家で、若い頃はギタリストとしても活動していました。何枚かLP録音もしていたのですが、今現在は入手が難しいようです。自らの作品の他にスカルラッティのソナタなども録音していました。 今現在ではブローウェルの作品は「舞踏礼賛」、「ソナタ」、「黒のデカメロン」など多数の作品が重要なクラシック・ギターの作品として多くのギタリストにより演奏されています。




映画音楽

 この「11月のある日」はもともとは映画のために作曲されたそうですが、上記の作品のように前衛的な作風ではなく、たいへんメロディックな曲です。楽譜の出版は2000年ですが、それ以前からも一部のギタリストにより演奏されていました。


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2000年の出版だが、それ以前から手書き譜の形で一部のギタリストの間では広まっていた




大萩康司さんのCDにより人気が急上昇した

 我が国では1999年に大萩康司さんのデビューアルバムのタイトル曲となり、大萩さんのギタリストとしての人気と相ともない、この曲の人気も急上昇しました。この曲の主部(前半部分)は美しいメロディで書かれていますが、技術的にはそれほど難しくなく、そう言った点でも愛好者に親しまれています。



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大萩さんのデビューアルバム。 この曲の人気と深くかかわりのあるCD。彼の演奏を初めて聴いた時には「こんなギタリストが日本にいたのか」と衝撃を覚えた



 中間部はやや難しいですが、それでも技術やギター歴のあまりない愛好者でも、音楽的なセンスさえあればうまく弾ける曲ではないかと思います(逆にテクニックはあっても、音楽的センスに欠けると様にならない?)。
クラシック・ギター名曲ランキング



当ランキングは作品が優れているかどうかの順位ではない


 前回はタイトルだけで終わってしまいましたが、今回はちゃんとランキングの記事を書きましょう。今回の記事はクラシック・ギター名曲ランキングということですが(Q&Aはどこかに行ってしまった?)、このランキングは音楽的内容の優れている順位ではなく、あくまで知名度、および人気度の順位ということで、決してその作品が優れているかどうかということではありません。

 どちらの作品が優れてるかどうかなどということは、はっきりした基準などないでしょうし、まして私などには判断出来るものではありません。

 しかし長年ギターなど教えていると、どの曲が一般に知られ、またどの曲が人気があるかといったことは、ある程度わかってきます。このランキングはそうしたものと考えて下さい。したがって、皆さんが「これは絶対クラシック・ギターの名曲中の名曲」と思っている曲が、当ランキングには入ってこない可能性は十分にあります。






<第9位>  タンゴ・アン・スカイ(ローラン・ディアンス


 この曲は前回の「アラビア風奇想曲」の正反対とも言える曲で、作曲されてからまだ30年ほどしか経っていない曲ですが、ギター愛好者の人気度からすると、今や「アラビア風奇想曲」などと並ぶ、あるいは凌ぐものがあります。特に若い愛好者にはたいへん人気の高い曲です。



かつて村治佳織さんがテレビ・コマーシャルで弾いていた

 作曲家のローラン・ディアンス(1955~)はフランスのギタリストで、現在はパリ・コンセルバトワールの教授しています。時折来日してリサイタルやマスター・クラスを開いているのでその演奏を聴いた人も多いのではと思います。この曲の出版は1985年で、我が国では福田進一氏の録音(「21世紀のタンゴ」1987年)などで知られるようになりました。また2000年前後に村治佳織さんがテレビ・コマーシャルでこの曲を演奏して、さらに人気が上がりました。



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なぜか日本語でタイトルが付いている、日本向けの出版? 作曲家名は「ディアンヌス」と表記されている。




”空”のタンゴではない

 譜面のほうは、フランスの出版社(アンリ・ルモワンヌ社)のものですが、なぜか日本語のタイトルが付いています。日本用に印刷されたものなのでしょうか。そこには「なめし皮のタンゴ」と記されていて、「スカイ」は「空」ではなく、「皮」の意味だそうです。同じ皮でも本当の皮ではなく、「合成皮」の意味だそうで、要するに本当の「タンゴ」ではなく「模造品のタンゴ」と言った意味のようです。



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タンゴ・アン・スカイが我が国の愛好者に知られるきっかけとなった福田進一氏のCD(「21世紀のタンゴ」1987年)。その前にはドイツのギタリスト、トーマス・ミュラー・ペリュングなどが弾いていたような。


歯切れの良いリズムと息をのむスリリングさ

 この曲は短い曲ですが、タンゴらしい歯切れのよいリズムと息をのむスリリングさが魅力の曲です。もちろんそう聴こえるように弾くにはかなり技術が必要です。以前はコンクールなどでも演奏されることがありましたが、最近ではリサイタルのアンコール曲などとして演奏されることが多いようです。



タイムは正確に取らなければならない

 曲の性格上、ある程度自由な弾き方が可能ですが、しかしタイムは正確に刻まないといけないでしょう。かなり細かい音符が多いですが(最高で1拍12個)、それらを正確なタイミングで演奏することが要求されます。

 タンゴらしい軽いリズムを刻むのは重要ですが、同時にメロディもしっかり(やや粘り気味に!)歌わせなければなりません。確かに”ウケル”曲ではありますが、ウケル演奏をするためにはかなりの実力が必要でしょう。





<第10位>  サンバースト(アンドリュー・ヨーク)

 今日はもう1曲いってしまいましょう、この曲も上記の「タンゴ・アン・スカイ」と並ぶ最近の人気曲で、どちらがランキングの上位でもおかしくないでしょう。アンドリュー・ヨークはアメリカのギタリスト兼作曲家で、ロサンゼルス・ギター・カルテットの一員でもあります。この曲の出版は1986年で、同年にCD録音もしています。


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プラヴェート盤のようなCD

 その1986年の録音は「パーフェクト・スカイ」というCDですが、ブックレットなども付いてなく、いかにもプライヴェート盤といった感じです。このCDには、他に「日曜、朝、曇り」などのオリジナル曲と「星に願いを」などの編曲もの、さらにバッハの「アレグロ」(リュートのためのプレリュード、フーガ、アレグロより)なども収録されています。

 因みに、このCDでは「サンバースト」はスチール弦の楽器(いわゆるアコースティック・ギター)で演奏されています。


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ヨークのデビュー盤と思われるCD(パーフェクト・スカイ)。 プラヴェート盤みたいな感じだが、なかなか面白い



アンドリュー・ヨークは1980年代まで我が国ではほとんど知られていなかった

 一般にこの曲が知られるようになったのは1988年にジョン・ウィリアムスが録音によってですが、このCDが日本で発売された当時(1989年)、解説者の浜田慈郎氏もこのギタリストやこの曲について何の情報もなかったそうです。以後この曲の人気は急上昇して、今やランキング、トップ・テン入り!

 ヨークの作風はどちらかと言えばクラシックというよりポピュラー系で、最近の言葉では「アコースティック・ギタリスト」に近い感じがあります。そうした点も人気のポイントとなっているでしょう。


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このサンバーストが多くのファンに知られるようになったウィリアムスのCD(「スピリット・オブ・ザ・ギター」1988年)



①⑥弦を「レ」に下げる変則チューニングが面白い

 この曲は①弦と⑥弦をそれぞれ「レ」に下げるという変則チューニングで、それが面白い効果を出しています。中間部は16分音符の速いパッセージの上にメロディが乗るテクニカルな部分になっています。

 従来のクラシック・ギターの曲に馴染んだ人だと、ちょっと変則的な曲で、なかなか弾きにくいかもしれませんが(特に①弦が「レ」なので譜面を読む時に戸惑う)、ポピュラー系の音楽に親しんでいる人だと、意外と抵抗は少なく、すくなくとも「タンゴ・アン・スカイ」よりは弾きやすいでしょう。

 しかしやはりリズム系の曲で、正確なタイムをとることは絶対に必要となるでしょう。これは最近の曲のほとんどの曲について言えます。
この前の雪などかわいいもの


 昨日の雪に比べたら、火曜日(2月4日)の雪などかわいいもの。昨日から今日にかけて我が家にやってきたのは新聞配達の人と、猫が1匹のみ(足跡からすると)。わずかばかりの庭は、今現在でも美しい処女雪のままです。

 同じ関東地方でも30センチを超えたところもあるようですが、この水戸市では10センチとやや少ない方です。それでも数年ぶりの大雪で、こうなるとノスタルジーなどに浸っている場合ではないですね。



ちょうどよい場所にある

 いよいよオリンピックも始まりました。ソチはちょうどよい場所にあるようですね(経度的に)、決勝種目が夜の1時頃から始まるので、私にとってはちょうどよい時間です。日中とか、ゴールデン・タイムだとかえって見ることが出来ません。

 開幕前の話だと、日本選手の金メダル候補が何人もいて、長野を超えるなどいった言葉も聞かれますが、よく思い出してみると、長野の後の3つの大会(ソルトレイク、トリノ、バンクーバー)で、金メダルを獲ったのは荒川静香さんだけだったのでは(記憶違いかもしれないが)。

 過去の結果からすれば、今大会1つでも金メダルが取れれば大成果で、一つも取れないことは確率的にはかなり高いと言えます。そんない世の中甘くないというわけですね。

 しかし黙って見ればわかるとおり、我々とは全く違った超人たちの試合、仮にメダルに届かなくとも、決勝進出や8位以内入賞もたいへん素晴らしく、また名誉なこと。謙虚な気持ちを忘れず、しっかりと応援しましょう。



音楽界に激震?

 オリンピック開幕と大雪でやや下火にはなりましたが、音楽界では例の人気作曲家のゴースト・ライター事件で激震でしたね。音楽界というより音楽業界と言った方がよいかも知れませんが。

 私自身ではこの作曲家のことはあまり詳しくわからず、その作品も聴いたことがありません。フィギャー・スケートの高橋大輔さんがこの作曲家の曲を使用していたということですから、それで聴いたかも知れませんが、ほとんど覚えていません。



自分の耳で音楽を聴かない人

 今度の騒動は、新聞を読んだ程度なのですが、その新聞に音楽評論家の話として「こうした事件が起こる背景には、自分の耳で音楽を聴かない人が多いことがある」といったようなことが書いてありました。

 クラシックのCDなど1万枚売れれば大ヒットという中、この作曲家のCDは十数万枚(数十万だったかな?)売れたそうで、クラシック音楽界では空前の大ヒットだったそうです。確かに、世の中には「皆がいいというから」とか、「テレビで凄いと言っていたから」、「今売れているから」と言った理由でCDを買う人が多いのでしょう。もし音楽ファンのすべてが、自分の耳で判断する人だけだったら、今度の事件は起こり得なかったのかも知れません。



独創的な人だけでは

 何か、話題性につられてCDなどを買った人が良くないみたいな話になってしまいそうですが、しかし、よく考えてみると、音楽とか、芸術とか、あるいは人間の文化そのものも、ある意味こうした「みんながいいというから」といった人々に支えられている部分はかなりある、いやそうした人々によってその歴史が作られていると言った部分もあるのでは。

 もし世の中がすべて独創的で、他人の見解に従わず、すべて自分の考えや、感覚だけで生きてゆくような人ばかりだったら、逆に音楽様式だの古典主義だの、印象派だの、そういったものも確立しなかったのではと思います。どんなによい作品でも「オレの感覚と違う」でかたずけられてしまったでしょうね。



たいへん疲れる仕事に?

 世の中、やはり”持ちつ持たれつ”というか、それぞれの役割というか、そういったものはあるのでしょう。独創的な人とそれを理解する人、それを広める人、それを受け入れる人・・・・・ 

 私の教室の生徒さんが皆が独創的で、自分の感覚や考えしか信じない人ばかりだったら、相当疲れる仕事になりそうですね。  ・・・・・考えるだけでも恐ろしい。

 いろいろ考えさせられる事件ですね。  ・・・・などと言っているうちに時間がなくなってしまいました。本題のほうはまた次にします。悪しからず。
 
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 午前中非常に細かい雨がいつの間にか雪になり、午後になってからだんだんそれが大きくなって、夕方近くには綿のような雪になりました。雪が降ると、ついつい写真を撮ってしまうのは関東人の宿命なのでしょうか。

 雪国の人にとってはたいへん迷惑なもの、また私の方でも翌日は道路や庭に雪が残ったり、ぬかったりして結構たいへんなのですが、羽毛のように舞いながら落ちてくる雪には、眺めいってしまいます。わき目もふらずまっすぐに落ちてくる雨粒と、戯れるように道草を食いながら舞い落ちる雪では、同じ成分でもなんと違うことでしょう。


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別にモノ・カラーで撮ったわけではないが、こんな感じになってしまった。拡大すると雪の粒も見える



 雪の降るのを見ていると、なぜかノスタルジックな気分になってしまいます。祖父の記憶はあまりないのですが、私が3~4の頃でしょうか、祖父と雪を見ていた記憶があります。私は祖父に「なんで速く落ちる雪と、遅く落ちる雪があるの?」と聴きました。

 祖父は「それはね、しんちゃんの友達でも背の大きい人や、小さい人、足の速い人、遅い人、いろいろな人がいるだろ。だから雪にだっていろいろあるのさ。速く落ちる雪、遅い雪、まっすぐ落ちる雪、あちこち寄り道する雪とか・・・・・」と答えてくれました。

 因みに、私は本来「しゅんちゃん」と呼ばれるはずですが、当時は「しゅん」というのが言いにくいということで、子供のころはこう呼ばれていました。祖父の答えは年輪を重ねた人独特の粋な答えだったと思いますが、しかし、その時の私にはまったく納得のゆかない答えでした。


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この後まだまだ積もった



 私は、もっと科学的で、論理的な答えが欲しかったのだと思います。もちろん「粋」だとか「味」だちかは全く理解できない頃です。小さい頃はこのように親兄弟はじめ、周囲の大人たちに「何で?」を繰り返して嫌がられていた記憶があります。

 今の私が孫に同じことを聞かれたら(もし孫がいればだが)どう答えるのでしょうね、「雪の粒の落ちる速さが違うのは空気抵抗のため。空気抵抗は雪の粒の表面積の大きさに比例する。雪の粒が大きいものは相対的に表面積が小さくなるので速く落ち、小さい粒はその反対となる。つまり大きい粒は速く落ち、小さい粒は遅く落ちる。また結晶の出来方の違いによっても・・・・・・」

 めんどくさい答えですね、これはこれで孫から嫌われそうですね(孫がいればの話だが ・・・・わかっているって?)。そうこうしているうちに雪はやんだようです。今日の夜のレッスンは中止としました。ホントに明日たいへんそうです。

クラシック・名曲ランキング

<第8位>  アラビア風奇想曲(フランシスコ・タレガ)




タレガの生存中より知られ、自らの代表作と認めていた

 この「アラビア風奇想曲」は、言うまでもなく「アランブラの想い出」と並ぶタレガの名作です。確かに現在での知名度では「アランブラの想い出」に一歩譲っていますが、前の記事で書いたとおり「アランブラの想い出」が有名になったのはタレガの死後であるのにたいして、この曲はタレガの生存中よりギター愛好者の間で広く知られていた曲のようです。

 タレガの伝記を書いたエミリオ・プジョールや、タレガの愛弟子であったホセフィーナ・ロブレドは、タレガの門を叩いた時に、タレガの前でこの「アラビア風奇想曲」を演奏していて、1900年頃よりスペイン国内のギター愛好者の間で知られていたようです。 1905年のタレガ作品の最初の出版でもこの曲が選ばれ、タレガ自身も自らの代表作と考えていたことが窺われます。



ギター名曲の”しにせ中のしにせ”だが

 以上のように、この「アラビア風奇想曲」は古くから知られ、ギター名曲の”老舗中の老舗”と言えます。もちろん今現在でも人気の高い曲ではありますが、「アランブラの想い出」に比べると知名度などに若干差が出てしまっているようです。このランキングが半世紀ほど前であれば、もっと上位となっていたのは確かでしょう。オールド・ファンにとってはやや残念な順位かもしれません。ご容赦ください、これも時代の流れということで・・・・・



譜面の信頼性は高く、選択で迷うことはない

 譜面のほうは前述のとおり1905年にタレガ自身の手を経て出版されたもので、よく吟味された上でのものと思われます。確かに単純ミス的なものはほとんどなく、かなり信頼性の高い譜面と言えます。また現在出版されているものもほとんどその初版どおりになっていて、楽譜の選択等で迷うこともないでしょう。



単音になっているのはグリサンドをするため?

 細かい点で言えば、グリサンドなどは同じ譜面を用いても、演奏者によってかなり異なった弾き方をしています。そういった装飾的な部分についてはある程度の自由度はあると思います。

 下の譜面(現代ギター社版)の4段目の矢印のところで、普通に考えればこの音は前の小節のように和音になるはずだが、「ラ」の単音になっています。藤井敬吾さんの話によれば、この「ラ」が単音になっているのは、そこからグリサンドをするためだそうです。


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 要するに次の小節は、①弦の1フレットの「ファ」からグリサンドするのではなく、この③弦の「ラ」からグリサンドして①弦の「ラ」(5フレット)に至るわけです。確かに前述のロブレドの録音を聴いてみるとそのように演奏しているようです(あまりはっきりとはグリサンドの音は聴こえないが)。



こちらもグリサンド?

 ついでに、この弦のまたいでの(矢印)スラーもちょっと違和感があったのですが、ロブレドの演奏によるとグリサンドになっています(かなりはっきり)。おそらく③弦の「ラ」からのグリサンドと思われますが、確かにこの方が腑に落ちます。
 

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タレガへの敬愛を感じる演奏

 このホセフィーナ・ロブレドの録音については以前にも書きましたが、たいへん参考になるものです。プライヴェートな録音のようで、音質はかなり良くないのですが、タレガの愛弟子による、たいへん貴重な録音といえます。この録音はロブレドの晩年のもので、この当時はすでに長い間ステージから遠ざかっていたとのことですが、技術も(もちろん内容も)しっかりしていて、単純ミスや不明瞭な部分もほとんどなく、このギタリストの能力の高さが窺われます。


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以前紹介した「セゴヴィアと同時代のギタリストたち」Vol.12のCD。 ロブレド、プジョール、フォルテア、リョベットなどタレガの弟子の演奏の他、タレガ自身の演奏も入っている。