中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

クラシック・ギター名曲ランキング

<第17位>  "さくら"の主題による変奏曲(横尾幸弘)



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今まさに

 今まさに桜のシーズン、全国各地からさくらのたよりが聞こえてくる今日この頃です。水戸では昨日(29日)に開花宣言されました。よくわかないが、この時期はなんとなくウキウキしますね、日本人としてのDNAがそうさせるのでしょうか。それにしても極めてよいタイミングでのこの曲の登場ですね、まるで図ったかのよう・・・・・



「さくら」もいろいろあるが

 それにしても「さくら」という題名の曲、または歌、本当にたくさんありますね。「さくら」、「桜」、「SAKURA」と表記は違うとしても、森山直太朗、コブクロ、ケツメイシ、川口省吾、いきものががり・・・・ そういえばAKBにも「桜ナントカ」というのいくつかありましたね。そういった曲のほとんどは卒業ソングでもあるようですが。



もともとは琴の練習曲

 もちろん今回の「さくら」は最も伝統的な「さくら、さくら、やよいの空は」の日本古謡のほうです。日本人でなくとも知っているこの「さくら」ですが、もともとは歌ではなく、江戸時代のお琴の練習曲だったそうです。習い始めの子供のための曲だということで、ほぼメロディだけだったのではないかと思います。



琴では宮城道雄作 ~3台の琴のため

 古くから歌詞が付けられて歌われていたようですが、現在知られている歌詞は明治時代の中頃付けられたそうです。琴の方では「春の海」で名高い宮城道雄の「さくら変奏曲」が有名で、お正月などによく聞こえてくるのは、ほぼこの「さくら」です。全体で10分くらいの曲ですが、もちろん私たちが聴いているのは、この曲の最初の部分だけです。

 この「さくら変奏曲」は2台の琴(通常の13弦)と17弦の琴の三重奏の形になっていて、変化に富む聴きごたえのある曲です。たまには全曲通してじっくり聴くのもよいのではないかと思います。さらにピアノ伴奏の歌曲としては山田耕作の編曲もあり、声楽家などが歌うのは、このバージョンになっています。



かつてたくさんの「さくら変奏曲」があったが

 さて、ギターの方でも数々の「さくら変奏曲」があるわけですが、私も子供のころ国枝和枝編の「さくら変奏曲」を弾いていました。また私より上の年代のギタリストの多くは自分の「さくら変奏曲」を作曲して演奏していた人も多かったのではないかと思います。



1974年にウィリアムスが録音し話題になった

 この横尾幸弘作の「さくら変奏曲」(正式には「”さくら”の主題による変奏曲」だが)が一般に知られるようになったのは、1974年にジョン・ウィリアムスが録音がきっかけです。「あのウィリアムスが『さくら』を弾いた」ということで、たいへん話題になりました。


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「ウィリアムスがさくらを弾いた」と話題になったLPジャケット。今では世界中のギタリストがこの「さくら」を弾いている。1974年の録音で、他にポンセの「南のソナチネ」、バリオスの「パラグアイ舞曲」などが入っている。


「さくら変奏曲」といえば横尾編

 ウィリアムスの切れのよい演奏と「さくら」は意外なほど相性がよいもので、当時LPでよく聴きました。その後日本だけでなく、世界でも演奏される曲となり、イェラン・セルシェルやエドアルト・フェルナンデスなどのギタリトも録音しています。

 このウィリアムスの録音以来、ギター独奏で「さくら変奏」といえば、ほぼこの横尾幸弘作を言うようになり、現在のギター界では、たくさんある「さくら変奏曲」の筆頭の地位についています。



二つの版がある

 厳密には横尾作の「さくらの主題による変奏曲」には二つの版があり、これらを仮に「初稿」、「改訂版」としておきましょう。初稿は序奏、主題、3つの変奏、コーダですが、改訂版のほうは変奏が6つとなっています。

 初稿のほうは「さくら」の旋律をほぼトレースしたシンプルなものになっていますが、改定版のほうではより変化のあるものになっています。改訂版のほうが横尾氏のオリジナリティがより多く感じられますが、一般にわかりやすいのは初稿のほうでしょう。

 どちらの版も琴の演奏をイメージした曲になっていますが、特に特定のもの、例えば宮城編などをコピーしたものでなく、完全に横尾氏のオリジナリティで曲が出来ていると言ってよいでしょう。



初稿に改訂版の第2変奏を加えている

 ウィリアムスはほぼ初稿で演奏していいますが、それに改訂版の第2変奏を付け加えてります(これをウィリアムス版としておきましょう)。この第2変奏はさくらのメロディからは遠いのですが、お琴の感じがよく出た変奏でウィリアムスも気に入ったのでしょう、確かになかなかよい変奏です。



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大萩康司君は改訂版(6つの変奏)で録音している。この版での録音は珍しい


ギター文化館に自筆譜が展示されている

 セルシェルや、フェルナンデスが弾いてるのも、このウィリアムス版です。改訂版のほうは大萩康司君が録音しています。ギター文化館(茨城県石岡市)には横尾氏の手書きの譜面が寄贈され、展示してありますが、内容はこのウィリアムス版となっています。横尾氏もこのウィリアムス版が決定稿と考えていたのでしょうか(横尾氏はすでに故人となっています)。



私も基本的にウィリアムス版

 私の場合も基本的にウィリアムス版ですが、ハーモニックスの変奏は省略しています。その理由としてはこの曲をアンコール曲として演奏することが多いので、なるべく時間が短い方がよいということが表向きの理由なのですが、一時期オクターブ・ハーモニックスが苦手なことがあって、その時期にこの曲を弾き始めたので、いまでもハーモニックス抜きで演奏しているというのが本当の理由?

 毎年のように、お正月からこの時期にかけてこの曲を弾くことが多いのですが、残念ながら(?)今年はこの時期にコンサートの予定がなく、演奏する機会がありません。来年は何とか弾こう! 



最初は耳コピーして演奏していた

 かつては改訂版のほうしか譜面が出てなかったので、私の場合、ウィリアムスのLPから耳コピーしてウィリアムス版を弾いていました。その後初稿の譜面が手に入ったのでそれで若干修正しました。今ではウィリアムス版も入手出来るのではないかと思います。なお改訂版のほうはドレミ出版の「ギター名曲170選-B」に収められています。

 
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<第16位> 大序曲(マウロ・ジュリアーニ)


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マウロ・ジュリアーニ(1781~1829)


満を持しての登場

 ソルと並ぶ古典派時代の大ギタリストと称されるのジュリアーニも、そろそろ登場しなければならないでしょう。やや遅くなってしまった感はありますが、その作品がギターのコンサートプログラムにのぼる頻度からすれば間違いなく10本の指には入るでしょう。



絶対的な名曲がない?

 出番が遅くなってしまった理由の一つとして、ジュリアーニの作品の中で、どの曲を選んだらよいかがはっきりしなかったということもあります。つまりソルの「魔笛による変奏曲」とかタレガの「アランブラの想い出」、ロドリーゴの「アランフェス」とかいったような、この作曲家ならこれといった絶対的な代表作がはっきりしないと言うことです。

 独奏曲に限定すれば、他に「ソナタハ長調作品15」、「ヘンデルの主題による変奏曲」、「英雄ソナタ」、6曲の「ロッシニアーナ」などが候補に考えられますが、 ジュリアーニらしい華麗さと言った点で、ほんの少しこの「大序曲」の人気が優っているように思います。



聴きたい曲というよりは弾きたい曲

 その華麗さに加えて、演奏者の技術、特に速弾きがアピール出来る点で、プロ、アマを問わずテクニックに自信のあるギタリストに好まれています。どちらかと言えば「聴きたい曲」というより「弾きたい曲」と言えるかも知れません。確かにこの曲を華麗に、またスピーディに弾ききったときの爽快感は格別かも知れません。

  一般的にこの曲はメトロームで110~140くらいで演奏されると思いますが、華麗さを出すには、ただ速いだけでなく、充実した音量、音質も必要です。また基本的に古典的な曲なので、曲の構成をしっかりと把握した演奏でなければならないでしょう。



大事なところでテンポが落ちてはいけない

 部分的なところでは、3連符のところをスピード、音量ともに落とさずに弾くのがたいへん難しく、ここにきて急にテンポが落ちたりすると、まさに「振り上げた拳」の収まりどころがなくなってしまいます。ここだけの話ですが、私の場合は、この部分を親指と中指をほぼ同時に弾いて、3連符ではなく、通常の16分音符のように弾いています ・・・・・他言無用(聴けばわかる?)。

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この3連符でテンポが落ちてはならない。なおかつクレシェンドして音量を上げるのはなかなか難しい。私の場合は親指と中指をほぼ同時に弾いている。またアルペジオの向きが変わるところ、つまり親指が2回続くところは譜面どおりの音価で弾くのは不可能。



独奏曲以外のほうが 

 しかし、私個人的にはジュリアーニの場合、独奏曲よりも協奏曲他の楽器などとの二重奏曲のほうが素晴らしいと思っています。まず何といっても3つの協奏曲で、テデスコやロドリーゴなどによってギター協奏曲が作曲される1930年頃までの、最も優れたギター協奏曲といってよいでしょう。



協奏曲に向いている

 弦楽のみのオーケストラで演奏される「第1番イ長調」は、本来堂々たる2管編成のオーケスラのために作曲されており、そのオーケストラ部分もたいへん充実したものになっています。ギターのソロ・パートも、ジュリアーニの場合元々装飾的なパッセージが多いので、構築性を必要とする独奏曲よりは、こした協奏曲に向いていると思います。
 


当時の一般的な協奏曲と比較しても

 当時のギター以外の協奏曲と比較しても、平均以上に優れた協奏曲といってもよいのではないかと思います。モーツアルトやべートーヴェンの協奏曲に並ぶとまではゆかないとしても、それほど遜色のない協奏曲ではないかと思います。



他の楽器との二重奏曲では

 他の楽器との二重奏曲としては、「ヴァイオリンのギターのためのソナタホ短調作品25」がたいへん素晴らしい曲だと思います。4楽章形式の堂々たるソナタで、この種の曲としては最大の規模と充実度を持っていると思います。華麗さに加えて、美しいメロディと聴く側の満足度もたいへん高いと思います(そうでなければ名曲だはないが)。

 「フルートとギターのためのソナタ作品85」も4楽章形式の規模の大きい作品で、こちらの方がやや演奏される機会が多くなっています。「作品25」のほうは短調ということもあって重厚な感じですが、こちらはイ長調で軽快な感じです。

 ギターどうしの二重奏では「協奏的変奏曲作品130」が人気があり、聴きごたえのある曲です。ジュリアーニのギター二重奏曲としては最も演奏される曲ですが、1stはかなり技巧的です。

 

ソルのギター曲は自己完結

 若干話が変わりますが、交響曲やオペラなども作曲、あらゆる分野の音楽に精通していたソルには協奏曲や室内楽などのアンサンブル系の作品は残されていません。ソルのギター曲はそれ自体で完結していて、あえて他の楽器と合わせる必要がなかったのかも知れません。

 それに対して、前述のとおり、ジュリアーニの音楽は装飾的な部分が多く(速いアルペジオやスケールが多い)、音楽の骨格的な部分は他の楽器(オーケストラや弦楽四重奏)にまかせて、ギターの方は思う存分華麗なパッセージを弾くと言ったスタイルが合っているのでしょう。



性格の違い?

 それに加えて性格的な部分も関係しているのではないかと思います。ジリアーニは当時ウィーンで活躍していたピアニストのフンメルなどとも室内楽のコンサートを定期的に行ったり、またベートーヴェンの交響曲第7番の初演にも加わっています。当然ベートーヴェンとも親交があったと考えられ、当時のウィーンの音楽界にそれなりの人脈をもっていたのでしょう。

 おそらくジュリアーニは社交的な人で、少なくともウィーンにいる間は多くの音楽家と交流があり、またそれを好んだのではないかと思います。それがジュリアーニの作品にも反映しているのでしょう。

 一方パリやロンドンなどで活躍したソルは、当時からギタリスト、および作曲家として高い評価を得て、多くの音楽家にその名は知られていたと思いますが、ギター以外のジャンルの音楽家との交流から生まれ作品などは残されていないようです。ソルの「ギタ―教則本」の文章などからしても、あまり社交的ではなさそうですね。



ウィーンという街が協奏曲を書かせた

 もっとも、ウィーンという音楽の都がジリアーニに協奏曲や室内楽を書かせたといってもよいのかも知れませんね、ジュリアーニにしてもこういった作品を書いたのは十数年間のウィーン滞在の期間だけだったようです。

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<第15位>  ハンガリー幻想曲(ヨハン・カスパル・メルツ)




谷間の世代?

 ヨハン・カスパル・メルツ(1806~1856)はナポレオン・コストと並ぶ、19世紀半ばを代表するギタリストですが、かつて、この19世紀半ば頃は”ギターの暗黒時代”などと呼ばれ、その活動や作品を評価されなかった時代もありました。ソルやジュリアーニが活躍した19世紀前半と、タレガの出現によってギターの復興期とされた19世紀末のはざまにあって、暗黒時代は言い過ぎにしても、”谷間の世代”といった印象は、一般的にあったと思います。

  この世代、つまり1830~1880年頃のギタリストとしては、メルツ、コストの他、アグアード、ブロカ、レゴンディ、フェレール、アルカスなどが挙げられます。



かつてはあまり演奏されなかった

 これらのギタリストの作品がコンサートのプログラムに頻繁にのぼるようになったのは、私の記憶では1980年代になってからだと思います。それまでもコストやメルツの作品は演奏されることはあったにせよ、そのほとんどが教育的作品、またはそれに近い作品で、コンサート用の大曲などはあまり演奏されることはありませんでした。

 もちろん、今現在ではメルツ、コスト、レゴンディなどの作品は、ギターのコンサートやCDに欠くことの出来ない重要なものとなっています。



ギタリストの作品の復権

 かつてこうした作品があまり演奏されなかった要因として、20世紀半ば頃は、ギタリストが作曲した作品よりも、”ギターを演奏しない作曲家”つまりトゥリーナ、ポンセ、テデスコ、ロドリーゴ、ヴィラ=ロボスなどの”専業作曲家”の作品の方が高く評価されていたということもあると思います(ヴィラ=ロボスは多少ギターを弾いたが)。

 そういった意味では、最近の傾向として、19世紀半ばのギター音楽の復権とともに、ギタリストの作品の復権もあるようです。確かに最近の新しい人気曲としてはブローウェル、ディアンス、ヨーク、クレンジャンス、のどギタリストの作品が多くなっています。再びギターらしさが求められる時代となったのでしょうか。



メルツの演奏会用作品は多弦ギター(7弦以上の)用に書かれている

 さて、この「ハンガリー幻想曲」はメルツの作品の中では超有名曲で、この曲のみは20世紀半ば頃から演奏されてきました。この曲の作曲年代や出版年代などはわかりませんが、10弦ギター、つまり通常の弦の他に、⑥弦の「ミ」から「レ」、「ド」、「シ」、「ラ」と1音ずつ下がるように低音が付いています。

 メルツは、入門的な作品、あるいは教育的な作品を除いては、ほとんどこの多弦ギターのために書かれているようで、コストの場合も同じようです。

 当時のフランスではこうした7弦以上のギターが普及していたようですが、スペインではこうしたギターはあまり浸透せず、その後タレガなどのスペインのギターが世界的に主流となったので、現在では”ギターの弦は6本”が常識となったわけです。



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メルツではなく、ナポレオン・コストの写真(メルツの写真がなかったので)。画像があまりクリアーでないので弦の本数が正確には数えられないが、通常の6弦の他に、8弦、11弦を使用していたようだ。おそらくメルツも同じだったと思われる。



残しておけば・・・・

 こうしたメルツの作品を通常の6弦ギターで聴いた場合と、オリジナルどおりの多弦ギターで聴いた場合とでは、やはりおりじなる通りの方が深い響きがします。私もかつて10弦ギターを2本所有していたので、こんな時には売却せずに残しておけばよかったなと思います。



もしメルツ、コスト流のギターが主流となっていたら

 もし20世紀において、タレガやソルではなく、コストやメルツ流のギターが主流となっていたら、”ギターの弦は10本”が主流になっていたかもしれませんね。 え? よかった、そうならなくて? もしそうなっていたら弦代が今の2倍かかる?  ・・・・ごもっとも。 ・・・・いや、10弦用の低音弦は結構高いので、2倍ではなく、3倍以上かかります。



チゴイネルワイゼンと同じ路線

 「ハンガリー幻想曲」の話に戻りますが、この曲は3つの部分に分かれ、マエストーソ(イ短調)、アダージョ・マエストーソ(イ長調-ヘ長調)、アレグロ・ヴィヴァーチェ(イ長調)となっています。ハンガリー風というよりはジプシー風で、ヴァイオリン曲として有名な「チゴイネルワイゼン」などと同じ系統の曲と考えられます。



19世紀的な表現法を身に付ける必要がある

 山場、つまり聴かせどころとしては最後のチャルダッシュという舞曲で書かれた「アレゴロ・ヴィヴァーチェ」なのでしょうが、しかし演奏の良し悪しはその前の部分でかなり決まると思います。この部分をいかに幻想的かつヴィルトーゾ的に弾けるかということが最も重要でしょう。そのためには19世紀的な表現法といったものも身に着ける必要があるでしょう。



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デビット・ラッセル(1986~7年)


デビット・ラッセル、 福田進一

 前述のとおり、メルツの作品の中でもこの曲は少なくとも1960年代からよく演奏されていましたので、LP時代から録音はあったと思いますが、私個人的には1986~7年に録音されたデビット・ラッセル、1994年の福田進一氏の録音に強い印象をもっています。


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福田進一(1994年)
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<第14位>

カタルーニャ民謡集~全13曲(ミゲル・リョベット)

1.アメリアの遺言
2.盗賊の歌
3.糸を紡ぐ娘
4.王子
5.うぐいす
6.哀歌
7.先生
8.あとつぎのリエラ
9.商人の娘
10.凍れる12月
11.レリダの囚人
12.羊飼いの娘
13.聖母の御子

 



反則

 「カタルーニャ民謡集」と一括りにしたのはちょっと反則気味かも知れませんが、「アメリアの遺言」、「盗賊の歌」など1曲ごとにランキングしたらたいへんなのと、1曲1曲は短いの、まとめてのランキングとしました。確かに最近ではこの13曲をひとまとめにして録音したり、演奏することも多くなりました。

 編曲者のミゲル・リョベットにつては当ブログで何度か紹介したのでプロフィールなどは省略します。これらの曲の最初の出版などに関してはあまり情報がありませんが、現在入手できる譜面は、細部にいたるまですべて同じなので、初版を基にしたものと考えられます。

 この13曲のうち、1~10までの10曲はまとめて出版されたらしく、1960年代にはその10曲まとめた譜面が国内でも発売されていました。現在では国内版でも海外版でも13曲とも入手できます。


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現代ギター社版リョベット作品集 「カルーニャ民謡集」13曲入っている



継母に夫を寝取られ、自らの命をも奪われる

 これらのうち最も有名なのは「アメリアの遺言」で、映画「禁じられた遊び」にも使われました(1度しか出てこないが)。リョベット自身でも録音していて、セゴヴィアも録音しています。リョベットもおそらくこれらの曲の代表と考えていたのでしょう。

 「アメリアの遺言」は、メロディとしては8+8×2=24小節の短いものですが、物語歌になっているので、歌詞が8番まである長い歌です。ギターのアレンジでは2番までとなっています(リョベット自身の録音では3回繰り返している)

 歌詞の内容は、若い継母に夫を寝取られ、さらに自らの命を奪われるアメリア姫の、最後の言葉という形になっています。死の床で、兄と父親へフランスの城を3つずつ遺すと言い、「私には何をくれるの」という継母の催促に対しては、「お母様には私の夫を差し上げますから、いつでもお好きな時にお抱き下さい」といった言葉で返しています。



フランスに城を7つ

 確かに悲劇のお姫様ではありますが、ただのか弱いお姫様ではなさそうです。それにしても相当な財産持ちですね、城を7つ持っているそうです。そのうち3つをお父さん、つまり王様にあげると言っているのですが、娘が父親に遺産を残すというのは、我々の感覚ではよく理解できませんね。



その美貌と色香で

 継母の方は、その美貌と色香で、王様のみならず、その娘婿まで手に入れ、さらに邪魔者のアメリア姫を消すという、かなりの悪女となっています。しかしよく考えてみると父親の王様にしろ、アメリア姫の夫にしろ、それらの男たちには、かなり問題があるようですね。



本当に責任があるのは

 アメリア姫の悲劇は、継母だけでなく、この二人の男たちによっても起きていると言えるでしょう。むしろアメリア姫を守るべき立場でもある分、この二人の男の方には、より責任があるのでは。 

 この歌にはこれらの男たちの姿はありませんが、大事な時にはいつも逃げてしまうのが男たちなのか・・・・・ でもアメリア姫はこれらの男たちには恨み言は言っていないようです、アメリア姫は男にはやさしいのでしょうか。



他の歌もこんな感じ

 他の曲も、だいたいこういったような物語になっていて、おそらく実際にあった話、あるいは噂話などを基に歌が出来ていると思われます。それぞれ面白い内容なのですが、それらに触れていると、きりがないので今回はやめておきましょう。

 「盗賊の歌」、「糸を紡ぐ娘」、「商人の娘」、「あととりのリエラ」は5月25日のギター文化館でのコンサートで演奏しますので、これらの曲についてはその時にまたお話しましょう。



メロディはシンプルだが、編曲は難しい

 これらの曲はもともとシンプルなメロディで出来ていますが、それだけにリョベットのアレンジはかなり凝ったもの、かなりギター的なものになっています。曲が短いからと言ってなかなか侮れません。ちゃんと弾くにはかなりの技術が必要でしょう。

 リョベットのアレンジの特徴としては、後期ロマン派風の変化のある和声、自然、および人口ハーモニックスの多用、主旋律が高音域から中音、低音と移動し、特に低音弦のハイポジションの使用などが挙げられます。同じメロディの繰り返しには必ずと言ってよいほど和声が変わります(つまり押さえ方が変わる)。



聖母の御子、先生

 「聖母の御子」も人気曲の一つですが、リョベットのアレンジは前半、後半ともリピートする形のシンプルなものですが、セゴヴィアは多少手を加えて演奏していますが、そのセゴヴィア版をイエペスや荘村清志さんも演奏しています。確かにセゴヴィア版のほうが聴きごたえはあるでしょう。

 「先生」はこれらの中で最も長く(と言っても2ページで、3分ちょっとくらいだが)、充実した作品となっています。リョベット自身でも録音を残し、セゴヴィアの愛奏曲にもなっています。



リョベットの自演を聴くことが出来る

 CDとしては、何といってもリョベット自身の録音があり、これらの曲を練習する人は是非聴いておくべきでしょう。下のCDはSP盤からの復刻ですが、おそらく現在でも入手可能でしょう。また「セゴヴィアと同時代のギタリスト」シリーズでも聴くことが出来ます(Vol.12)。


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リョベットの残したSP盤の復刻CD

 セゴヴィアはこの民謡集のうち「アメリアの遺言」、「先生」、「聖母の御子」を録音しています。イエペスは「盗賊の歌」など5曲を録音し、現在でもCDで聴くことが出来ます。ジョン・ウィリアムスも1991年に9曲録音しています。


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1991年のジョン・ウィリアムスの録音 「カタルーニャ民謡詩集」9曲入っている

 ステファノ・グロンドーナは2000年代半ば頃にリョベット作品全集として他のリョベットのオリジナル作品や編曲作品の他に、この民謡集13曲全曲を録音しています。

ブログ 035
 グロンドーナのリョベット作品全集のCD(2枚組)

谷島崇徳、中村俊三 ギター・コンサート

  2014年 5月25日(日) 14:00~
  石岡市ギター文化館



曲目

<二重奏>
エリート・シンコペーション (S.ジョプリン)
三千院 (A.ヨーク)
天使のミロンガ (A.ピアソラ)
ロシアの想い出 (F.ソル)




<独奏 中村>

トリミング

アランブラの想い出 (F.タレガ)
盗賊の歌、糸を紡ぐ娘、商人の娘、あとつぎのリエラ (カタルーニャ民謡 ~M.リョベット)
詩的ワルツ集~全8曲 (E.グラナドス)




<独奏 谷島>

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ミロンガ(カルドーソ)
澄み切った空(シネーシ)




  前売り3000円(発売中)  当日3500円





親子共演?

 私と同じく水戸市内でギター教室をやっている谷島崇徳さんとの二重奏を中心としたコンサートです。谷島さんは私の息子とほぼ同じ歳で、年齢的には親子共演といったところです。谷島さんはポピュラー音楽にもクラシック音楽にも精通していて、学校では作曲法も学んだそうです。



ポピュラー系とクラシック

 二重奏の方は、前半はジョプリン、ヨーク、ピアソラといったポピュラー系の曲、後半は古典期のスペインの作曲家、フェルナンド・ソルの「ロシアの思い出」となっています。「ロシアの想い出」は所要時間15分以上で、「アンクラージュマン」、「二人の友」などに並ぶの大作です。



メロディの美しい曲

 私の独奏の曲目は上記のとおり、スペインのギタリスト、および作曲家の作品で、特にメロディの美しい曲を選びました。「詩的ワルツ集」は抜粋して演奏されることが多いのですが、今回は省略なしの全曲(8曲)演奏です(編曲は私自身のもの)。



得意のレパートリー

 谷島さんの独奏はラテン系の曲で、谷島さんの得意のレパトリーでしょう。上記の2曲以外にも演奏すると思いますが、曲目はまだ決まっていないそうです。因みに、写真は奥様とのツー・ショットですが、演奏の方は崇徳さんの独奏です。

 このコンサートは前売り券、または当日券が必要で、前売り券のほうは私のところ、または谷島さんの教室、ギター文化館などで販売しています。よろしくお願いします。
第16回水戸ギター・アンサンブル演奏会  

2014年 11月30日(日) 18:00~

ひたちなか市文化会館小ホール  入場無料
 


演奏曲目 

<合奏>  J.S.バッハ : 管弦楽組曲第2番(全曲)
        I.アルベニス : カディス、アストゥリアス
        他


2013芸術館 144



今回はバッハの管弦楽組曲

 ほぼ隔年に行っている水戸ギター・アンサンブル演奏会ですが、今年で16回目となります。今回はバッハの管弦楽組曲第2番を中心にプログラムを構成しようと思っています。この「管弦楽組曲第2番」はギター合奏では定番的なもので、ギター・アンサンブル関係のコンサートではよく登場します。
 


「序曲」はギター合奏では演奏されないが

 ギター合奏としては比較的演奏しやすい曲と言えますが、ただ一般には最初の「序曲」を除いて、2曲目の「ロンド」~「バディネリ」の舞曲が演奏されます。「序曲」はかなり長く、また技術的にも難しいので、ギター合奏ではほとんどの場合敬遠されます。

 今回はその「序曲」にあえて挑戦するわけです。昨年の発表会でも演奏してみましたが、その時の感触では意外と速い部分(アレグロ)のほうは特に問題なかったのですが、前後のゆっくりした部分がかなり難しかった感じです。今度の演奏会までにはなんとか仕上げましょう。

 原曲はフルートと弦楽合奏のための曲で、フルート協奏曲的な感じになっています。曲そのものがしっかりと出来ているので、ギター合奏でも聴きやすいものではないかと思います(ちょっと微妙な表現ですね)。



アストゥリアスのギター合奏版

 アルベニスの方は一昨年つくばギター・フェスティヴァルでも演奏しましたが、ギター独奏で有名なアストゥリアスをギター合奏で演奏するのも、結構面白いのではないかと思います。

 他に独奏、二重奏なども演奏する予定ですが、詳細はまだ決まっていません。入場無料ですので、お近くの方は是非聴いてみて下さい。なお出演者は写真のとおり私を含めて9名の予定です。
広島に負けてしまったが

 Jリーグが開幕しましたね、ワールカップ得点王のフォルラン加入で話題のセレッソ大阪はJリーグ連覇中の広島に負けてしまいましたが、フォルラン、柿谷の協力ツー・トップに加え、山口、扇原、杉本、さらに期待の若手の南野と、戦力ではJリーグ・トップといえ、間違いなく優勝候補でしょう。

 しかしやはり強かったのは広島。派手な選手こそいないが佐藤寿人を中心にチームとしてのまとまりは、やはりJリーグ・トップ。3連覇し、”広島時代”といった伝説を作るのでしょうか。

 毎年充実した戦力補強を行い、常に優勝候補とされながらこのところあまり良い結果を出していない浦和は、今年こそ結果が出そうな感じもします。

 昨年掴みかけた優勝が最後の最後で手からこぼれ落ちた横浜Fマリノスは、このところ結果が出ていなくて苦戦気味です。今年はACLもあり、選手層の薄さから苦しみそうですね。

 中村憲剛ー大久保のホット・ラインも、だいぶつながりがよくなってきた川崎も今年は昨年以上の躍進を見せそうですね。ジュニーニョ、 チョン・テセ、 我那覇などがいた頃とはまた違った強さです。

 鹿島は開幕試合で4得点と幸先の良いスタートを切りました。昨年大迫を攻撃の中心とした形が出来かかったところ海外移籍となり、王座奪還も遠のいたかなといった感じがありましたが、昨日の試合では新しい選手の活躍が目立つようになりました。若手がベテランからレギュラーの座を奪うとなれば、常勝鹿島の復活の可能性も生まれてくるでしょう。

 今年もガンバ大阪、ジュビロ磐田に引き続き、強豪チームのどこかが降格争いに巻き込まれるのでしょうか・・・・・

  





クラシック・ギター名曲ランキング

<第13位> スペイン舞曲第5番「アンダルーサ」 (エンリケ・グラナドス)




ギター以外でも有名

 この曲はギター名曲としては”老舗”に類し、ギター曲としてだけではなく、一般のクラシック名曲としても知られています。「アストゥリアス」同様、もともとはギター曲でなくピアノ曲で、「アストゥリアス」の方はギター以外ではあまり演奏されることが少ないのに対し、この「アンダルーサ」の方はヴァイオリンやチェロでもよく演奏されます。



アルベニスとよく似ている

 作曲者のエンリケ・グラナドスは「アストゥリアス」のアルベニス同様19世紀末から20世紀初頭にかけて活動したスペインのピアニスト兼作曲家で、作風もかなり近いところがあります。アルベニスが1860~1909、グラナドスが1867~1916で、アルベニスの方がやや先輩となりますが、親交はあり、お互いに影響しあったと思われます。

 二人ともスペインの民族音楽的なピアノのための作品を多く書き、ピアニストとしても活躍し、またその作品はギターでも演奏されるといったように、いろいろな意味でよく似た二人なので、ギター愛好者の中には、あまり区別がつかない人もいるのではないかと思います。

 確かにギターではこの二人の作品は一括りにして演奏されることがよくあります。演奏するほうもあまり区別がついていないかも知れません。



グラナドスのほうが”しみじみ”

 両者の作品を比べるとアルベニスのほうが華やかで明快、グラナドスのほうがしっとり、しみじみ、といった感じがあります。スペイン民族楽派の両巨匠ですが、そういった点で、アルベニスの方が一般にはやや親しまれているようです。ギター演奏される曲数などもアルベニスの方が若干上回っています。

 グラナドスの代表作としてはピアノのための組曲「ゴエスカス」があり、これはアルベニスの場合の「イベリア」に相当し、ピアノのほうでは最も高く評価されているようです。



「12のスペイン舞曲」がよく演奏される

 また私たちに最もなじみの深い作品としては「12のスペイン舞曲」があり、この「スペイン舞曲第5番アンダルーサ」もこれに含まれます。この12曲ともギターの独奏、または二重奏で演奏されますが、独奏の方では、この「第5番」以外に「第2番オリエンタル」、「第4番ヴィリャネスカ」、「第10番悲しき舞曲」などがよく演奏されます。



「ゴヤの美女」、「詩的ワルツ集」が美しい

 その他グラナドスの作品のうち、ギターでよく演奏される曲としては「ゴヤの美女」~昔風のスペイン歌曲集、「詩的ワルツ集」などがあります。どちらもグラナドスらしい、たいへん美しいメロディで書かれています。



ギターで演奏する場合はほぼリョベット編

 ギターへのアレンジとしてはリョベットのものがよく知られていて、現在この曲がギターで演奏される場合は、ほとんどこのリョベットの編曲を用いているといってよいでしょう。ギタリストによって多少変更箇所があるとしても、基本はほぼこのリョベット版といってよいでしょう。

 原曲もギターではたいへん弾きやすいホ短調(#1個)で、そういった意味でもたいへんよくギターに合う曲です。この調以外で編曲され、演奏されることは、まずないと言ってよいでしょう。



ピアノではラローチャの演奏が有名だが

 この曲を練習するにあたっては、ぜひとも原曲のピアノの演奏、特にアリシア・デ・ラローチャの演奏を聴いていただきたいところですが、さらにラローチャ以外のピアニストの演奏も聴いていただければよりよいでしょう。

 ピアノの演奏ではラローチャの演奏が有名過ぎて、かえって他のピアニストのCDなどが入手しにくくなっていますが、最近ではそうしたものもある程度入手出来るようになっています。 


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マヌエル・バルエコの1990年の録音。独奏、および二重奏で12のスペイン舞曲全曲を録音している。


 ギターの方ではほとんどのギタリストが弾いていて、セゴヴィア、ブリーム、ウィリアムス、バルエコ、デビット・ラッセル、アリリオ・ディアス、ペペ・ロメロなどお好きなギタリストのものを聴いていただければよいでしょう。なお、マヌエル・バルエコは「スペン舞曲集」12曲全曲を独奏、および二重奏で録音しています。