プログラムの作り方 4
<2008年 中村俊三ギター・リサイタル>
パガニーニ : カンタービレ、 ソナタホ短調
ジュリアーニ : 大序曲
バッハ : ガボット、 シャコンヌ
・・・・・・
アルベニス : アストゥリアス、 グラナダ、 カディス、 朱色の塔、 コルドバ、 セビージャ
<アンコール曲> リョベット : 盗賊の歌、 ホセ・ビーニャス : 独創的幻想曲 タレガ : アデリータ
「ガヴォット」の最も大きな役割は⑥弦のチューニングの安定
前半のバッハの2曲のうち、ガヴォット(チェロ組曲第6番)は、8つの分類のうち、④に当たる典型的な”つなぎ”の曲です。 その”つなぎ”の中でも、この曲の最も大きな役割はチューニングを安定させることとなります。
シャコンヌは⑥弦を「レ」に下げますが、⑥弦のチューニングを通常の「ミ」から「レ」に変えた時、どうしても不安定になり、少しずつ音程が上がってきたりします。
もちろんそれを見越して⑥弦を一旦半音から全音くらい下げてから(「ド」からド#)ゆっくりと戻すようにして「レ」にするわけですが、それでも演奏中に多少は音程が動いてしまいます。
比較的短い曲でしたらあまり問題はないのですが、シャコンヌは少なくとも13分はかかり、最後の音のオクターブ・ユニゾンまでピタリと言う訳にはなかなかゆきません。
チューニングの問題で演奏を台無しには出来ない
そこで、多くのギタリストは演奏中に曲を止めずにチューニングを修正したりします(解放弦などを弾いた時に)。 私がこれを初めて見たのは山下和仁さんのリサイタルでですが、まるで手品みたいなことをするので驚きました。 でも今は多くのギタリストが普通にやっています。
私もやむを得ない時にはこれをやりますが、上手く行かないこともあり、またそれに気を使うと演奏に集中出来なくなってしまったりします。
私が聴いた他のギタリストのリサイタルでもこれに失敗して、演奏がメチャクチャになってしまったり、結局演奏を中断してチューニングすることになったりした例もあります。
何といっても長期間かけて準備したリサイタルですので、そんなことで演奏が台無しになってしまっては元も子もありません。 そこでシャコンヌと同じく⑥弦を「レ」にするこのガヴォットを間に挟むことで、そうしたリスクをほとんど回避することが出来ます。
緩衝材的な役割もある
このガヴォットを組み入れたもう一つの理由としては、大序曲とシャコンヌという両大曲の緩衝材としての目的です。 極限の集中力を必要とされる曲を続けて弾くのは、演奏者として相当な負担ですし、また聴いている人も疲れてしまうかも知れません。 やはり弾く方にとっても、聴く方にとってもほっとする一曲が必要でしょう。
当日の演奏はというと、少なくとも前半のプログラム中、もしかしたら当日のリサイタル中、最も良い出来で、「この曲の演奏が最も良かった」と言ってくれた人が何人かいました。 また、なかなか軽快な曲で、バッハの曲では耳あたりも良い曲です。
バントのつもりが起死回生の一発?
確かに難曲揃いの前半のプログラムの中で、この曲は唯一私が楽に、また完全に自信を持って弾ける曲で、他の演奏機会でもほとんどいつもイメージどおりの演奏が出来ていました。 私にとっては”鉄板”的な曲で ⑥の「確実に弾ける曲」の括りにも当たります。
当日の演奏もその期待通りの演奏で、リサイタルにMVPがあれば、間違いなくこの曲と言えますが、でもちょっと微妙ですね ・・・・バントで送らせるつもりが、失敗でやけになって振ったら起死回生の逆転3ラン・ホームラン! ・・・・・なんて感じかな。 やはり3、4番が打たないと試合には勝てない・・・・・・
すべてはシャコンヌに
さて、何といっても次のシャコンヌが前半のプロの中心、というよりこのリサイタルの中心の曲となります。 8つの分類ではもちろん①の 「ギタリストが弾きたい曲」 にあたります。 元々 「シャコンヌを中心としたリサイタルがやってみたい」 といった動機でこのリサイタルが計画されたわけです。
私が20代の頃コンサートでこの曲を演奏したことがありますが、もちろんあまり上手く弾けるはずもなく、「自分には弾けない曲」ということで、その後ずっと弾いていませんでした。
当ブログにも書いたが
そして50代になってからもう一度弾いてみたいということで練習を再開したわけですが、今回はただ弾くだけでなく、この曲が 「どのように作曲されているのか」 ということをちゃんと考えてみようと思い、その内容は当ブログの方にも書き込みました(名曲の薦め~シャコンヌ)。 この記事は今現在でも読んでくれている人がいるようです。
約5年間にわたり、この曲の練習、編曲、およびアナリーゼを行いこのリサイタルに臨んだわけです。 他の前半の曲目も、このシャコンヌを演奏する関係上、選ばれたと言ってもよいでしょう。 このシャコンヌは文字通りメイン・デッシュ、 堂々の4番打者!
あまり意気込み過ぎると
しかしそんなに意気込むと往々にしてあまり良い結果にならないことが多い、暗譜にはかなり時間をさき、リサイタル当日には一点の曇りもないほどにしたつもりだったのですが、当日は一部記憶があいまいになってしまった部分がありました(流れを止めたわけではないが)。
フェンスの前で失速?
言い訳がましいですが、それ以外の点については全体の構成、テンポや音量などのコトロールはほぼ予定通り出来、細部の不明瞭な部分も少なかったと思います。 私の30年前の演奏を聴いたことのある友人には 「昔とずいぶん変わったね」 と言われました。 心温かい気遣いを差し引いても、昔より多少はましになったようです。 ・・・・思いっきり強振したが、レフト側フェンスの前で失速! でも犠牲フライになって、とりあえず1点?
<2008年 中村俊三ギター・リサイタル>
パガニーニ : カンタービレ、 ソナタホ短調
ジュリアーニ : 大序曲
バッハ : ガボット、 シャコンヌ
・・・・・・
アルベニス : アストゥリアス、 グラナダ、 カディス、 朱色の塔、 コルドバ、 セビージャ
<アンコール曲> リョベット : 盗賊の歌、 ホセ・ビーニャス : 独創的幻想曲 タレガ : アデリータ
「ガヴォット」の最も大きな役割は⑥弦のチューニングの安定
前半のバッハの2曲のうち、ガヴォット(チェロ組曲第6番)は、8つの分類のうち、④に当たる典型的な”つなぎ”の曲です。 その”つなぎ”の中でも、この曲の最も大きな役割はチューニングを安定させることとなります。
シャコンヌは⑥弦を「レ」に下げますが、⑥弦のチューニングを通常の「ミ」から「レ」に変えた時、どうしても不安定になり、少しずつ音程が上がってきたりします。
もちろんそれを見越して⑥弦を一旦半音から全音くらい下げてから(「ド」からド#)ゆっくりと戻すようにして「レ」にするわけですが、それでも演奏中に多少は音程が動いてしまいます。
比較的短い曲でしたらあまり問題はないのですが、シャコンヌは少なくとも13分はかかり、最後の音のオクターブ・ユニゾンまでピタリと言う訳にはなかなかゆきません。
チューニングの問題で演奏を台無しには出来ない
そこで、多くのギタリストは演奏中に曲を止めずにチューニングを修正したりします(解放弦などを弾いた時に)。 私がこれを初めて見たのは山下和仁さんのリサイタルでですが、まるで手品みたいなことをするので驚きました。 でも今は多くのギタリストが普通にやっています。
私もやむを得ない時にはこれをやりますが、上手く行かないこともあり、またそれに気を使うと演奏に集中出来なくなってしまったりします。
私が聴いた他のギタリストのリサイタルでもこれに失敗して、演奏がメチャクチャになってしまったり、結局演奏を中断してチューニングすることになったりした例もあります。
何といっても長期間かけて準備したリサイタルですので、そんなことで演奏が台無しになってしまっては元も子もありません。 そこでシャコンヌと同じく⑥弦を「レ」にするこのガヴォットを間に挟むことで、そうしたリスクをほとんど回避することが出来ます。
緩衝材的な役割もある
このガヴォットを組み入れたもう一つの理由としては、大序曲とシャコンヌという両大曲の緩衝材としての目的です。 極限の集中力を必要とされる曲を続けて弾くのは、演奏者として相当な負担ですし、また聴いている人も疲れてしまうかも知れません。 やはり弾く方にとっても、聴く方にとってもほっとする一曲が必要でしょう。
当日の演奏はというと、少なくとも前半のプログラム中、もしかしたら当日のリサイタル中、最も良い出来で、「この曲の演奏が最も良かった」と言ってくれた人が何人かいました。 また、なかなか軽快な曲で、バッハの曲では耳あたりも良い曲です。
バントのつもりが起死回生の一発?
確かに難曲揃いの前半のプログラムの中で、この曲は唯一私が楽に、また完全に自信を持って弾ける曲で、他の演奏機会でもほとんどいつもイメージどおりの演奏が出来ていました。 私にとっては”鉄板”的な曲で ⑥の「確実に弾ける曲」の括りにも当たります。
当日の演奏もその期待通りの演奏で、リサイタルにMVPがあれば、間違いなくこの曲と言えますが、でもちょっと微妙ですね ・・・・バントで送らせるつもりが、失敗でやけになって振ったら起死回生の逆転3ラン・ホームラン! ・・・・・なんて感じかな。 やはり3、4番が打たないと試合には勝てない・・・・・・
すべてはシャコンヌに
さて、何といっても次のシャコンヌが前半のプロの中心、というよりこのリサイタルの中心の曲となります。 8つの分類ではもちろん①の 「ギタリストが弾きたい曲」 にあたります。 元々 「シャコンヌを中心としたリサイタルがやってみたい」 といった動機でこのリサイタルが計画されたわけです。
私が20代の頃コンサートでこの曲を演奏したことがありますが、もちろんあまり上手く弾けるはずもなく、「自分には弾けない曲」ということで、その後ずっと弾いていませんでした。
当ブログにも書いたが
そして50代になってからもう一度弾いてみたいということで練習を再開したわけですが、今回はただ弾くだけでなく、この曲が 「どのように作曲されているのか」 ということをちゃんと考えてみようと思い、その内容は当ブログの方にも書き込みました(名曲の薦め~シャコンヌ)。 この記事は今現在でも読んでくれている人がいるようです。
約5年間にわたり、この曲の練習、編曲、およびアナリーゼを行いこのリサイタルに臨んだわけです。 他の前半の曲目も、このシャコンヌを演奏する関係上、選ばれたと言ってもよいでしょう。 このシャコンヌは文字通りメイン・デッシュ、 堂々の4番打者!
あまり意気込み過ぎると
しかしそんなに意気込むと往々にしてあまり良い結果にならないことが多い、暗譜にはかなり時間をさき、リサイタル当日には一点の曇りもないほどにしたつもりだったのですが、当日は一部記憶があいまいになってしまった部分がありました(流れを止めたわけではないが)。
フェンスの前で失速?
言い訳がましいですが、それ以外の点については全体の構成、テンポや音量などのコトロールはほぼ予定通り出来、細部の不明瞭な部分も少なかったと思います。 私の30年前の演奏を聴いたことのある友人には 「昔とずいぶん変わったね」 と言われました。 心温かい気遣いを差し引いても、昔より多少はましになったようです。 ・・・・思いっきり強振したが、レフト側フェンスの前で失速! でも犠牲フライになって、とりあえず1点?
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