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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

プログラムの作り方 ⒓

 <パヴェル・シュタイドル ギター・リサイタル>
     2008年 3月4日 水戸市佐川文庫




メルツ : 「吟遊詩人の調べ」より ロマンスホ短調他
パガニーニ : ギター独奏のための34のソナタより
ジュリアーニ : ロッシニアーナ第1番

・・・・・・・・・・・・

オブロフスカ : ゴシック・コラール讃歌
バッハ : シャコンヌ
アルベニス : カディス、セビージャ

 *第1部と2部の間に宮下祥子さんの独奏と、宮下、シュタイドルの二重奏あり





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見た目も何となく宇宙人ぽいパヴェル・シュタイドル。 だがその能力も圧倒的で、まさに人間離れしている



曲目をよく覚えていない

 プログラムの作り方についての記事なのですが、実はこの時シュタイドルが演奏した曲目がはっきりせず ”だいたい” のものになってしました。 その時の感想は当ブログでも書いているのですが、残念ながら曲目がきちんと書いていません。  ・・・・いまさら後悔しても遅い



曲目が詳しく書かれておらず、実際の演奏もプログラムどおりではない

 チラシのほうはあったのですが、当日配られたプログラムのほうは見当たりません。 なお且つ、配られたプログラム通りには演奏していなくて、 またパガニーニの曲などは具体的にどの曲かなどは書いてありませんでした。 確か、メルツの作品を演奏するなどということはプログラムには全く記されてなく、アナウンスなどもありませんでした。

 もしかしたらこの日に演奏された曲目を正確に把握していた人は演奏者本人を除くとほとんどいなかったかも知れません。 私自身も曲目がはっきりわからなかったので、記事に細かく書かなかったのかも知れません。

 

21世紀型プログラム

 さて、そんな頼りない記憶で恐縮、ですが、シュタイドルのプログラムはセゴヴィアのものとはだいぶ異なっています。 レパートリーもだいぶ違いますし、また作品の年代といったことも演奏順にはあまり関係がないようです。  セゴヴィアのプログラムを ”20世紀型” とすればこちらは ”21世紀型” となるでしょうか。



19世紀の音楽へのこだわりが強い

 シュタイドルは楽器も19世紀の楽器のレプリカを用いていて、19世紀、特にロマン派の音楽へのこだわりが強いようですgs、こうしたことも前世紀にはあまりなかったことです。 プログラム構成も、前半は、その19世紀の作品、 後半はその他の曲となっています。   ・・・・・バッハやアルベニスという、セゴヴィアの時代にはメインデッシュだった曲が ”その他” の括りとなっている



20世紀ではバロック音楽や古典音楽の演奏様式を重視した

 20世紀では、”演奏の時代様式” ということが良く言われるようになりました。 19世紀ではバッハなどを演奏する場合でもその時代、つまり19世紀的な演奏仕方で演奏していたわけですが、20世紀では、特に古典やバロック音楽などではその時代の演奏様式にしたがって演奏しなければならないと言ったことがよく言われました。



ロマン派の音楽もバロック音楽のように

 場合によっては、19世紀のロマン派の音楽の場合でも、まるで古典やバロック音楽のように演奏する人もあり、 ギターの場合でもタレガの作品はグリサンドやハイポジションの使用が多すぎると、ローポジションを多用し、装飾音、グリサンドなしで、 ”さっぱり” と演奏されることも多くなりました。

 20世紀では19世紀の音楽はあまりにも近かったために客観的に考えることをあまりしなかったのかも知れません。 逆に言えば20世紀ではまだまだ19世紀てきな音楽が体に浸み込んでいて、特に意識しなくても19世紀的な演奏出来たのでしょう。



19世紀の音楽は歴史となった

 しかし21世紀ともなれば、多くの人は常に一定のリズムを刻むポピュラー系の音楽に親しむようになり、日常的にロマン派の音楽を聴くことはかなり少なくなりました。 つまり19世紀の音楽は ”ちょっと前の音楽” ではなく、”音楽史上の一時代の音楽” となってきた訳です。



シュタイドルの演奏は19世紀の演奏様式を重く見たもの

 21世紀人にとっては19世紀の音楽はすでに ”体で感じる音楽” ではなく、客観的に演奏様式を学ばなければ演奏出来ない音楽であるのでしょう。 話がちょっと長くなりましたが、シュタイドルの演奏はそんな ”19世紀的演奏様式” に従った演奏といえるのはないかと思います。



何の曲だかわからない?

 パガニーニやメルツなど曲目がよくわからない原因として、シュタイドルはそれらの曲を ”19世紀の演奏様式にしたがって” かなり自由に演奏していることもあります。 「吟遊詩人の調べ」も原曲とだいぶ違ってますが、パガニーニのソナタなどオリジナルとは全く違ったものになっています。

 パガニーニのギター・ソロのための曲は中級者程度のわりと平易に作られた曲が多いのですが、シュタイドルはこれらの曲を完全にヴィリトーゾ的な曲に作り替えています。



シュタイドルの能力の高さは群を抜いている

 後半の「ゴシックコラール讃歌」では特殊超絶技巧の連続にさらに重音唱法、つまり人間の声で同時に二つの音を出すと言うまさに”人間離れ”した技も見せました。 最近では優れた技術を持つギタリストは少なくありませんが、そうした中でも、このシュタイドルの能力の高さは群を抜いているような気がします。



見た目も、中身も地球人離れしている

 私の当時のブログでも 「このギタリスト何となく宇宙人ぽいかな」 などと書きましたが、まさに ”21世紀型ギタリスト”、あるいは ”未来型ギタリスト” といったところでしょう。

 ・・・・・・それまでの演奏が凄すぎて、その後に演奏した「シャコンヌ」や「セビージャ」などはあまり印象に残っていない・・・・
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ひたちなかギター合奏フェスティヴァル

 2015年 10月17日(土) 13:20   ひたちなか市文化会館小ホール



 
申し込み受付終了

 今年の10月に予定しています 「ひたちなかギター合奏フェスティヴァル」 の出演予定団体が決まりました。 出演申し込みを3月末日としていましたが、今現在出演申し込み団体が10団体となり、演奏時間、控室の収容人数等を考えると、これ以上の申し込み受付は難しいと思われますので、一応、これで申し込み受付終了とさせていただきます。 




<ひたちなかギター合奏フェスティヴァル出演予定団体>


あすなろ                   日立市    3名  代表 中野久美子
Guitar Ensemble SIT            桜川市    6名  代表 細谷寛子
アクアプレットロ・マンドリンアンサンブル 水戸市   6名  代表 岡野健太郎
ブリランテギタークラブ         ひたちなか市 10名  代表 佐藤麻利子
水戸ジュピター・マンドリンクラブ     水戸市   10名  代表 寺門悦夫
音和102                 ひたちなか市  10名  代表 金子孜
マルバ・ギター同好会           水戸市    14名  代表 軽部健二
アマービレ・マンドリン・クラブ      水戸市    20名  代表 高橋恵子
水戸ギター・アンサンブル        水戸市    23名  代表 中村俊三
ジュネス・マンドリン・クラブ     ひたちなか市  25名  代表 宮入睦彦

   *各団体の人数はおおよそのもで、最終的には6月に決定します。 団体名の表記等に誤りがある場合は、ご連絡下さい。





開演時間10分繰り上げ、 出演者総数120人超

 なお、開演時間は13:30を予定していましたが、出演団体が予想よりも多くなりましたので、10分ほど繰り上げまして、13:20~ にしたいと思います。 会場の関係で16:30までには閉演しないといけませんが、予定通りに進めば、その時間内に収まるのではと思います。


 また出演者数も120~130人くらいになりそうなので、控室などの手配も十分に考えないといけませんが、出演者の皆様がなるべく窮屈な思いをしないように心がけてゆきたいと思っています。 なお演奏順につきましては、各団体の人数の少ない順に下のように、前後半に振り分る予定です。




<演奏順 ~数字は人数の少ない方からの順番>

第1部
1. 3. 5. 7. 9.

第2部
2. 4. 6. 8. 10.





次回は 「ひたちなかギター、マンドリン合奏フェスティヴァル」

 今回 「ひたちなかギター合奏フェスティヴァル」 としましたが、上記の10団体中、マンドリン合奏は3団体で、出演者数からすると50~60名となりますので、 次回(再来年)以降は 「ひたちなかギター・マンドリン合奏フェスティヴァル」とすべきかなと思っています。

 また今回は出演募集要項に、対象団体として 「ギター、およびギターを含むマンドリン合奏」 としましたが、 シンプルに「ギター、及びマンドリン合奏」としようと思っています。 つまりギターの含まないマンドリン合奏も対象と言うことになります。

 なにぶん当フェスティヴァルはこれからスタートする企画ですので、いろいろ試行錯誤的な部分も多いとは思いますが、ご意見等あれば、よろしくお願いいたします。 






<中村俊三ギター名曲コンサート>

   5月27日(水)14:30~  ひたちなか市文化会館小ホール
   前売り、予約 1500円    当日1800円



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☆クラシック・ギター究極の名曲
   禁じられた遊び (ルビラ)
   アランブラの想い出 (タレガ)
   魔笛の主題による変奏曲 (ソル)

アランブラspain0258



☆永遠のスクリーン・テーマ
   太陽がいっぱい (ロータ)
   第3の男 (カラス)

地中海1



☆よみがえる昭和の名歌
   悲しき口笛 (万城目正)
   君といつまでも(弾耕作)
   22歳の別れ(伊勢正三)

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☆タンゴの魅力
   奥様お手をどうぞ(エルヴィン)
   ラ・クンパルシータ(ロドリゲス)

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☆オーケストラ名曲をギターで
   「展覧会の絵」より (ムソルグスキー)

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☆情熱のスパニッシュ・ギター
  スペイン・セレナード (マラッツ)
  アストゥリアス (アルベニス)
  粉屋の踊り (ファリャ)

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平日(水曜日)の午後ですが

 上記のように5月27日(水)にひたちなか市文化会館でコンサートを行います。 平日の午後という、やや変則的な時間帯でのコンサートで、仕事や学校のある方にとっては都合の良い時間ではありませんが、 たまにはこうした時間のコンサートがあってもよいかなと思って企画しました。 中には平日のほうが都合がよいと言う方もいらっしゃるのではと思います。



いろいろなジャンルの名曲をそろえて

 コンサートの内容は上記のとおり、クラシック・ギターのレパートリーに限らず、いろいろなジャンルの名曲によるものです。 例えれば、和食からスペイン料理、イタリアンなどがテーブル上に並ぶ ”ビュッフェ・スタイル” といった感じでしょうか。 どなたにでも必ずお好みの曲があるのではと思います。



後日詳しく

 音楽好きやギターを愛好している人はもちろんですが、特にギターやクラシック音楽に興味のない方でも十分に楽しんでいただける内容だと思いますので、お時間のある方はぜひお出かけいただければと思います。

 チケットご入用の方は、予約といった形で承りますので、ぜひ電話、メール等でご連絡下さい。 またいつものとおり、日にちが近くなりましたら、演奏曲目の紹介を当ブログで行います。



♪ 6本の弦が奏でる美しき名曲の数々のひと時をどうぞ ♪


プログラムの作り方 11


<ジョン・ウィリアムスのリサイタル>


ヴァイス : 組曲第11番
バッハ : シャコンヌ
スカルラッティ : 4つのソナタ

・・・・・・・・・・・・・

トゥリーナ : ファンダンギーリョ
モレーノ・トロバ : ノットルノ、 マドローニョス
ドッジソン : ファンタジー、 ディヴィジョンズ
アルベニス : コルドバ、 セビーリャ

  1971年9月27日  東京虎の門ホール




突然のイメチェン

 ジョン・ウィリアムス、2回目(たぶん)の来日時のプログラムです。 ウィリアムスは1941年生まれですが、20代、つまり1960年代では見た目も銀行マンのようで、どちらかといえば、大人しく、清楚な演奏が売りだったのですが、70年代になってから突然ファッションも変わり、LPで聴く限りでは、演奏ぶりも力強く、華麗なものになりました。

 そんな”変身”時の時の来日で、いろいろな意味でセンセーショナルなものでした。 私は当時大学生でギター漬けの毎日を送っていましたが、まだあまりいろいろなギタリストのリサイタルは聴いていなかった頃で、このウィリアムスの演奏は、やはり衝撃的な印象でした。




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クラシック・ギタリストとは思えないファッションのウィリアムス(30歳前後)



たいへん美しい音

 まず、何といってもたいへん美しい音で、当時ウィリアムスはアグアードを使用していたと思いますが、透明感のあるとても美しい響きで、こんなに美しいギターの音は、それまで聴いたことのないものでした。 会場は決して小さなところではありませんでしたが、よく通る音で、全く不足は感じませんでした。

 
 
見た目はロック・ミュージシャンだが
 
  さて、プログラム構成の方ですが、上記のとおり前半はバロック、後半はスペイン音楽(ドッジソンはイギリス人)を中心としたもので、ロック・ミュージシャンかた見まごうファッションながら、プログラムの内容はセゴヴィアなどの伝統的なものを踏襲したものと言えます。 



いつかはこんなプログラムでリサイタルをやってみたい

 基本は伝統的なプログラムですが、内容はかなりすっきりとしたものになっていて、センスの良さが窺われます。 当時はまだギター・リサイタルのことなどよくわかりませんでしたが、 なんとなく 「かっこいいプログラムだな」 と感じました。

 当時の私は、まだまだこんなプログラムは演奏出来ませんでしたが、いずれはこんなプログラムでリサイタルをしたいなと思いました。 まさにあこがれのプログラムと言った感じです。 



最初から全開のギタリスト

 最初の「ヴァイスの組曲」はどんな曲だったかあまり覚えていません。 「組曲」とされていますが、実際は「ソナタ」と題されているようで、確か当時は20数曲ほどしか知られていなかったようです。 現在は5~60曲くらいあると言われていて、ナクソス・レーヴェルで、ロバート・バートが全曲録音を実行中です(現在Vol.11)。

 この曲は”指ならし”的に弾くにしては決して易しい曲ではありませんが、ウィリアムスはセゴヴィアのように徐々に調子を上げてゆくと言うより、最初から全開で弾けるギタリストのようです。  



透明で美しいシャコンヌ、とても幸せな気持ちになれた

 バッハの「シャコンヌ」は、厳粛で力強い曲ですが、とても透明感のある美しい演奏でした。 後半のスペインものにはさらに躍動感も加わり、聴いていて、とても幸せな気持ちになれたリサイタルでした。 その後の私にいろいろな意味で強い影響を与えたのはもちろんです。



1995年はアンプ使用

 1995年の24年ぶりに来日時の東京文化会館でのリサイタルも聴きに行きました。 ウィリアムスは1970年代からリサイタルでアンプを使用するようになりますが、この時もアンプ使用による演奏でした。

 アンコールの際、客席からの 「1曲でいいからアンプなしで演奏もらえませんか」 という声がありましたが(流暢な英語で)、「ギターの音は小さいから」と(たぶん)、 結局最後までアンプを通しての演奏となり、最後までウィリアムスの生音を聴くことはできませんでした。




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1990年代のウィリアムス。 この頃にはウィリアムスの生音はなかなか聴けなくなった。



まるでCDを聴いているよう

 この時のリサイタルは、前半がアルベニスなどのスペインもの、後半がバリオスといったものでした。 セゴヴィアの場合は、サイタルの最後で演奏されることの多かったアルベニスの「朱色の塔」を、リサイタルの冒頭に演奏し、しかも、技術的には全く完璧でした。 ウィリアムスにはステージで緊張するなどという感覚はないのでしょう。

 アンプ使用のおかげで音は大変良く聴こえ、また技術も完璧なので、コンサート会場にいながらまるでCDを聴いているよう・・・・・ 1995年のリサイタルの印象はそんな感じでした。 しかし実を言うとこの時のリサイタルは1971年のものほど記憶がありません。 ついついCDを聴いているようで、途中から若干集中力をなくしてしまったのかも知れません。



やはり生に限る?

 ウィリアムスは、元々微妙なニュアンスの変化や表現で演奏するといったタイプではないのですが、 アンプを通すとさらに音楽が硬直するようにも思えます。   やはりクラシック・ギターのリサイタルは”生”に限りますね  ・・・・・例えどんなに音が小さくても・・・・

 
プログラムの作り方 10

<セゴヴィアのプログラム 3>




         第Ⅰ部
ヴァイス : アダージョ、 アレグレット
フレスコヴァルディ : アリアと変奏
バッハ : プレリュード、 フーガ、 ガヴォット
スカルラッティ : ソナタイ長調
ハイドン : アンダンテ、 アレグレット


         第Ⅱ部
テデスコ : 「プラテーロと私」より
   プラテーロ
   メランコリア
   かえり道
   ロンサール
   子守唄
   春

         第Ⅲ部
ポンセ : 南のソナチネ
トゥリーナ : ファンダンギーリョ
アルベニス : グラナダ、 セビーリャ

   *1980年7月17日 新宿文化センター




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セゴヴィア87才の来日、 全盛期と変わらぬ充実したプロ

 セゴヴィアは1980年に3度目の来日をしていますが、この時、東京、大阪、、札幌、名古屋など5回のリサイタルを行っています。 私はそのうち東京の新宿文化センターでのリサイタルを聴きに行き、上はその時のプログラム(Aプロ)です。 残念ながらアンコール曲などは思い出せません(記録も見当たらない)。

 セゴヴィア87才での来日、及びリサイタルですが、プログラムのほうは若い頃に比べ、質、量ともに減ずることなどなく、非常に充実したものであることがわかると思います。

 ちなみに、Bプロの方はド・ヴィゼー、メンデルゾーン、グリーグ、チャイコフスキー、ヴィラ・ロボス、タンスマン、タレガ、アセンシオ、エスプラ、グラナドス、アルベニスの作品で構成されていました。




詳しくは当日になってみないとわからない

  セゴヴィアの場合は事前に主催者などに詳しいプログラム内容を伝えないようで、例えば「ヴァイスのアダージョとアレグレット」と言っても具体的にどの曲かは当日になってみないとわからないことがよくあるようです。

 この日実際に演奏されたのは、「アダージョ」は 「ロジー伯のトンボー」で、「アレグレット」の方はポンセ作曲の「前奏曲ホ長調」でした。 このポンセの「前奏曲」はセゴヴィアが”ヴァイス”作曲として発表した曲です。 この時点(1980年)ではすでに一般にポンセの作品として浸透していましたが、セゴヴィアは終生この曲を”ヴァイス作曲”として演奏していました。

 バッハの 「プレリュード」はチェロ組曲第1番、 「フーガ」は無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第1番、 「ガヴォット」は無伴奏チェロ組曲第6番からでした。

 ハイドンの「アンダンテ」はタレガ編のニ短調のもの、 「アレグレット」は交響曲第96番「奇跡」のメヌエット(セゴヴィア編)でした。 また「南のソナチネ」の第2楽章は本来のものではなく、「ソナタ第3番」の第2楽章を演奏していました(セゴヴィアはよくこの形で演奏する)。




プログラム構成

 プログラム構成を見ると、おおまかには、前回の1955年のものとほぼ同じ構成で、ほぼ時代順に作品が並び、最後に スペインものとなっています。 ポンセの「南のソナチネ」は”スペインもの”扱いなのでしょう。 Bプロもほぼ同じような構成で、セゴヴィアのプログラム構成を図式化すると、このようになるでしょう。


  ルネサンス、バロック  ⇒  古典、ロマン派  ⇒  近、現代  ⇒  スペイン


 セゴヴィアはこうした形で50年以上にわたりリサイタルを行っていましたが、前述のとおりこれは多くのギタリストに影響を与えました。



拍手が凄かった

 このリサイタルを聴いた感想などは以前にも書きましたが、まず何といってもセゴヴィアがステージそでから現れた時の観衆の拍手が凄かった記憶があります。 もうセゴヴィアを生で聴くことはないだろうと多くの人が思っていたでしょうし、またギター史上の大ギタリストを目の前にしているといった興奮がその拍手に表れていたのでしょう。



もっと小さな会場で聴きたかった?

 若干 ”にわかギター・ファン” も含まれているとも思われますが、当然の満席状態で、ほとんど空席はみあたりませんでした。 会場のキャパが1000人以上といったこともありますが、拍手の音が非常に大きかった分、演奏を始めたセゴヴィアの音はかなり小さく聴こえました。

 出来れば数百人程度のホールで聴きたかったところですが、そういった会場でセゴヴィアを聴くのはあまりにもぜいたくなことなのかも知れません。



ハイドンの「メヌエット」が最も記憶に残っている

 セゴヴィアの演奏は、確かに細かい部分ではコントロールが完全でないところがあったとしても、もちろん大きく内容を損なうようなことは全くなく、特に主旋律などは美しく歌わせていたのが印象に残っています。 当然のことながら、ある意味勢いに任せて弾いていた若い頃とは全く違った音楽へのアプローチです。

 「セヴィーリャ」などでは、以前とアレンジが変わり、原曲に比較的忠実になっているのも印象に残っています。 曲目としてはハイドンの「メヌエット」が最も記憶に残っています。 相変わらずの音の美しさ、躍動感には感動しました。



メイン・デッシュにはあまり興味がなかった?

 テデスコの「プラテーロと私」からの6曲は、これのみで1ステージとなっているわけですから、これがこのプログラムの ”メイン・デッシュ” であるのは間違いありません。

 でも今となってはその演奏を聴いた印象が思い出せません。 以前に、「この 『プラテーロと私』がセゴヴィアの録音の中で最も素晴らしいもの」 と言っていた私ですが、この時点ではこの曲にあまり興味がなかったのでしょうか。