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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

シルビウス・レオポルド・ヴァイス : ロンドン手稿譜全集(12枚組)

リュート・ソナタ第1~26番
組曲に含まれない作品
フルート・トラベルソ&リュートのための二重奏曲

バロック・リュート  :  ミハエル・カルダン

Brillant Classics  1990年代の録音



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バロック・リュートといえば

 バロック・リュートと言うと、本来はフランスが中心だったようですが、でも私たちは、やはりドイツの二人の巨匠、ヨハン・セバスティアン・バッハとシルビウス・レオポルド・ヴァイスを思い浮かべます。

 バッハもリュートのために優れた作品を書きましたが、それらは本当にリュートのための作品というより、”ほぼ”リュートのための作品といったところもあり、またその量も限られています。

 そういった意味で、私たちにとって、バロック・リュートを代表するリューティストと言えば、やはりこのシルビウス・レオポルド・ヴァイスをおいて他にはいないでしょう。



ギターで演奏される曲は限られているが

 ヴァイスの作品として普通私たちが知っている曲、あるいはギターでよく弾かれる曲としては、古くはセゴヴィアも演奏していた「ファンタジアハ短調」 ~ギターでは普通ホ短調、またはニ短調で演奏される、 「ロジー伯のトンボー」、 他パッサカリアニ長調、シャコンヌハ短調、 さらにいくつかの組曲でしょうか。



ヴァイス一族の作品は多数残されている

 しかしヴァイスのリュートのための作品は非常にたくさん現存していて、組曲などに含まれる個々の曲を1曲ずつ数えると、1500曲ほど残されているのだそうです。 もっともこの中にはシルビウス・レオポルド・ヴァイスの父のヨハン・ヤーコブ、 弟のヨハン・ジギスムント、 妹のユリアーナ・マリガレータ、 息子のアドルフ・ファウスティヌス、 甥のカール・フランツ・ヨーゼフなど、ヴァイス一族の作品も含まれるそうです。

 ヴァイス一族はバッハ一族同様、リュートを生業としており、それぞれ作風も似ているでしょうから、「ヴァイス」とだけ署名された作品については、誰の作品かを特定するのはたいへん難しいのでしょう。



ブリティッシュ図書館から発見されたタブラチュアをもとにした録音

 このCDアルバムは、それらのうち、ロンドンのブリティッシュ図書館から発見された237曲を録音したものとされています。 細かい内容としては26のソナタと35の組曲に含まれない個々の作品、および5つのフルート・トラベルソとリュートのための組曲となっています。



ナクソスからはロバート・バートの全曲録音が継続中

 ヴァイスのリュートの作品の録音と言えば、ナクソスからロバート・バートの録音が出ているのは皆さんもご存じかも知れません。 こちらは1996年から録音が始まって、現在は第11集(30のソナタ)まで出されています。 

 バート盤のほうはロンドン手稿譜の他、ドレスデン(ヴァイスが活動していた)の図書館に残されたタブラチュアも含め、約750曲を録音する予定だそうです。  750曲と言えば、一つのソナタに6曲含まれると考えると、125曲。 残り95のソナタで、このペースで録音してゆくと完成にはさらに60年以上かかってしまう?


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ハイドンの交響曲より多い

 実際のところS.L.ヴァイスの作品はどれくらい残されているのはよくわからないということですが、少なくとも100曲以上のソナタが残されているのは確実なようです。 ハイドンの交響曲よりは多いのは確かなようで、私の手元にも重複を除いて44曲のソナタがあります。

 ハイドンの交響曲同様にこれらを聴いてすぐに何番のソナタか判別するのはたいへん難しいですね(すぐに判別できる人もいるかも知れませんが)。  

 番号といえば、このアルバム(カルダンの)には独自の番号の他にWeissSW番号が付いていて、その番号はバート(ナクソス)盤に付けられた番号と同じになっています。 バート盤には 「ソナタのナンバリングはDas Erbe Deutscher Musik の援助のもとに出版された全集楽譜による」 となっています。

 





 
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<アントン・ディアベリ : ギター・ソナタ全集>

第1番ハ長調  Ⅰアレグロ  Ⅱアンダンテ・カンタービレ  Ⅲメヌエット・アレグロ  Ⅳロンド・アレグレット
第2番イ長調  Ⅱアレグロ・リソルート  Ⅱアダージョ  Ⅲメヌエット・アレグロ  Ⅳロンド・アレグレット
第3番ヘ長調  Ⅰアレグロ・モデラート  Ⅱアンダンテ・ソスネヌート  Ⅲファイナル:アダージョ ‐ プレスト




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演奏者 Claudio Giuliani   使用楽器 Antonio Marin Montero 1993
録音 2012年  Brilliant



ディアベリはベートーヴェンの変奏曲で知られている

 アントン・ディアベリといえば、一般のクラシック音楽ファンなら、ベートーヴェンが作曲した「ディアベリの主題による変奏曲」を思い出すのではないかと思います。 その作品については 「ディアベリの作曲した取るに足らないテーマを用いてでも、ベートーヴェンは優れた作品を書いた」 などとベートヴェンの偉大さを表現するための比較対象にされてしまうこともあります。



ピアニスト、ギタリスト、作曲家、出版業者

 さらには出版業者としてシューベルトなど、当時のウィーンの音楽家の多数の作品を出版したことなどが知られています。 しかし本来は音楽家でピアニスト、及びギタリストであり、作曲家でもありました。 ミハエル、ヨーゼフ、の両ハイドン師事したと言われています。



少年期にはモーツァルトゆかりのザルツブルグでミハエル・ハイドンに師事した

 1781年の生まれだそうですが、少年時代にはザルツブルグで有名なヨーゼフ・ハイドンの弟のミハエル・ハイドンから音楽を学んだそうですが、ザルツブルグと言えばモーツァルトゆかりの地で、20歳代始めころまでいたところです。 この頃にはモーツアルトはウィーンに居を移し、1791年には亡くなってるので、直接会うことはなかったでしょう。 ヨーゼフ・ハイドンには成人してから師事したようです。



かなり本格的にギターをやっていた

 音楽家としてはイマイチ評価の上がらないディアベリですが、ギターの方は片手間にやっていたわけではなく、その作品からも本格的演奏技術を習得していたことが窺われます。

 そのギターの作品は独奏曲(練習曲的なもの、及び演奏会用作品)、ギター二重奏、 ピアノとのデュオなどかなりの作品数があるようです(何といっても自分で出版社をやっていたから)が、 その全貌はよくわかりません。 ギター界の方でも同時代のソルやジュリアーニなどに比べて不遇な扱いをされているのは否めないところでしょうか。



現在唯一の録音

 この「3つのソナタ」は独奏曲としては比較的 (あくまでも比較的ですが) 知られているものですが、3曲揃った録音としてはこれは初めてのものなのではと思います(正確にはわかりませんが)。 少なくとも今現在入手しやすいCDとしてはこれが唯一のものではないかと思います。



第1番は小ぶり

 上記のようにソナタ第1番は4つの楽章からなるハ長調のソナタで、他の2曲に比べると、どの楽章も短めになっています。 第2番はイ長調で書く楽章とも長めで、演奏時間も全体で20分以上になるでしょう。 第3楽章のメヌエットは単独でも演奏されることもあります。

 第3番ヘ長調は3楽章構成ですが、第3楽章には序奏がついており、4楽章的にもなっています。 つまりゆっくりした楽章が2つあるような感じになっています。 最後のプレストには 2分音符=128 というかなり速いテンポ指示があります。 内容的はこの第3番が最も充実しているように思えます。



ベートーヴェンの初期のピアノ・ソナタぽい

 音楽の傾向としては美しくメロディを歌わせるというタイプではなく、短い素材で音楽を組み立ててゆくといった感じです。 ちょっと聴いた感じではベートーヴェンの初期のピアノ・ソナタのような感じです。 おそらくディアベリがベートーヴェンから影響を受けたというより、ハイドン流の作曲法、つまりベートーヴェンとは兄弟弟子と言ったところなのでしょう。



ハイドンとベートヴェンの中間?

 第1番と第2番では第3楽章にベートヴェンのようにスケルツィオではなくハイドンのようにメヌエットを用いていますが、かなり速めのテンポ指示がされており、聴いた感じではスケルツィオ的です。 要するにハイドンとベートーヴェンの中間といったところでしょうか。




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ディアベリのソナタイ長調(第2.5番?)が収録されてあるブリームのLP(写真は復刻CDジャケット)


2番と3番を繋いでしまった?

 ところで、私がこのディアベリのソナタを最初に聴いたのはジュリアン・ブリームのLP(1969年録音)でした。 曲目表記は「ソナタイ長調」となっていて、当時は全くわからなかったのですが、その後聴き直してみると、なんと第3番の第1、2楽章に第2番の第3、4楽章を繋いであるではありませんか! 

 最もそのようなことはジャケットの解説を読めばどこかに書いてあったでしょうが、何分このLPは自分で買ったものではなく、友人から借りてダビングして聴いていたものでした。 



ただ繋いだのではなく

 しかし繋ぐと言っても第3番はヘ長調、第2番はイ長調ですから、このままでは繋ぐことは出来ません(東日本の電気器具を西日本で使うようなもの?)。 ブリームの演奏を聴いてみるとヘ長調の第3番第1楽章、第2楽章を長3度上げてイ長調にしているようです。

 特に第1楽章では、音程を上げているだけでなく8分音符を16分音符にしたり、音域を変更しりなど、随所で華麗な効果が出るように変更されています。 第2楽章は移調しているだけで変更は少な目です。

 もともとイ長調の第3楽章「メヌエット」はほとんど原曲どおりですが、第4楽章の「ロンド・アレグレット」は移調こそしていませんが、かなり大胆に書き換えられています。



でも、これって、反則技?

 結果的にはかなり”地味目”なディアベリのソナタが、華麗な古典派ソナタにリニューアルされています。 さすがジュリアン・ブリーム・・・・・・  と言いたいところですが、 チョット、マテ これって反則技じゃないの?  クラシック音楽の演奏の基本って、楽譜をしっかりと読み、作曲者の意図を正確に再現することじゃなかったっけ?  

 まあ、その辺の議論はややこしいので、置いておくことにして、少なくともこれはブリームの”芸風”ととらえるしかないでしょう。 屁理屈さえこねなければ、原曲よりブリーム編の方が面白いのは確かです。



ブリーム・ファンの方々にも

 ただそのブリーム編がお好きな方にも、原曲に忠実に演奏した、このジュリアーニ(いや、あの19世紀のマウロ・ジュリアーニではなく、このCDを録音したクラウディオ・ジュリアーニ・・・・・ これもチョットややこしいな)の「ディアベリ:ギター・ソナタ全集」のCDは是非買って聴くべきでしょう。





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ブリーム編のディアベリのソナタを録音したパク・キュンヒさんのCD


 比較的最近パク・キュンヒさんはこのブリーム編曲のディアベリのソナタを録音しています。 キュンヒさんが21世紀のギタリストであるなら、出来ればクラシック音楽の土俵の上で戦ってほしかったかな?
 

 
ソル : ギター幻想曲全集(3枚組)

幻想曲第1~7番(作品7、4、10、12、16、21、30)
セレナード作品37
スコットランドの主題による幻想曲作品40
幻想曲「友情の想い出」作品46
静けさ作品50
村人の幻想曲作品52
モルセー・ディ・コンセール作品54
ベルリンの夜会作品56
幻想曲作品58
幻想曲ニ長調作品番号なし
悲歌風幻想曲作品59

 Guitar : Stefano Palamidessi     BRILLANT 録音2009年



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ブリラントのソル

 前回に引き続き、これもブリラント・レーヴェルのソルのCDの紹介です。 ブリラントの録音はギタリストよりも、作曲家、及びその作品に焦点を当た全集的なものが多く、その作曲家の作品の全貌を知るためにはたいへん貴重なものと言えるでしょう。 また価格が非常に安いというのも魅力です(組ものの場合、1枚あたり1000円以下が普通)。



幻想曲はソルの作品の中で最も充実した内容

 前回はフェルナンド:ソルの練習曲集でしたが、今回はソルの作品の中でも最も重要な作品とされている幻想曲集です。 ソルの作品は他に変奏曲、ソナタ、二重奏曲、小品集などがありますが、やはり内容的にもこの幻想曲集が最も優れているでしょう。

 この3枚組のCDアルバムは、”幻想曲” と名が付けられている作品の他、”幻想曲的” な作品にまで範囲を広げており、質、量ともにたいへん充実したものになっています。 したがって、この3枚組を一気に聴きとおすのは少々無理で、じっくりと時間をかけて1曲ずつ聴いてゆきたいものです。

 優れた曲揃いで、また数も多いので、どの曲に焦点を当てたらよいかわかりませんが、一般的に人気があるのは 「幻想曲第1番ハ短調作品7」 、 「同第7番ホ長調作品30」、 「悲歌風幻想曲作品59」 などでしょうか。



「断章」という曲名だが、完成した作品、しかも長い

 「Morceau de concert」は「演奏会用断章」と訳するのでしょうが、「断章」にしてはちゃんと完成していて、また演奏時間も約15分と大曲になっています。 演奏会などでは弾きごたえも、また聴きごたえもある作品だと思います。 作品番号なしの「幻想曲ニ長調」は始めて聴く曲ですが、なか良い曲です。


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演奏者の Stefano Palamidessi     



楽譜をよく読みこんだ演奏。 現代の楽器使用

 演奏者の Stefano Palamidessi はイタリアのギタリストで、生年などは書かれていませんが見た感じでは3~40代といったところでしょう。 譜面をしっかりと読み込んだレヴェルの高い演奏だと思います。 楽器は前回の練習曲と違って、現代の楽器(Antonino Scandurra)で、高音がよく鳴り、伸びる感じです。 写真からすると杉材の楽器のようですね。     



今すぐにでも購入を!

 確かにレヴェルの高い演奏ではあるのですが、何といってもソルの作品の中では最も優れた幻想曲集だけに、さらにファンタジーを膨らませてもらえれば、もっと良かったかな・・・・・       ちょっと欲張り過ぎ?   でも、もちろんこのセットは絶対のお買い得!  持っていない人は今すぐにでもご購入を!
CD紹介

< ソル : ギター練習曲全集  >

24の練習曲 作品31
同       作品35
同       作品44
同       作品60
同       作品6
同       作品29

 演奏 Enea Leone (1978~ イタリア)  録音2013年  ブリリアント・レーヴェル 3枚組 



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ソルの6つの練習曲集を収録

 前回に続きソルのCDですが、もちろんこちらはギターのCDで、ギターを習っている人にとってはお馴染みのソルの練習曲全集です。 ソルの練習曲と言えば、普通作品31、35、60、6、29 などがレッスンに用いられますが、この全集にはさらに作品44の「24 Short Progressive Piecces」 が収録されているのが特徴です。



作品44のことはあまり知らなかった

 実は不勉強ながら、この練習曲集の譜面は持っていたのですが、聴くのはこのCDが初めてで、自分で弾いたこともレッスンに使用したこともありませんでした。 



運指がきちんと付けられている

 この 「作品44」 はレヴェル的には 「作品60」 と同じくらいで、 初級から中級くらいと言ったところでしょう。 ソルが出版した作品にはあまり運指が付いていないものが多いですが、この練習曲集はソル自身によって比較的細かく運指が付けれています。 ソル自身も言っているとおり、これらはソルの他の作品を演奏する上でもたいへん参考になるでしょう。



教則本と同時期に出版された

 単旋律的な曲もあり、クリヤーな発音、譜読みなど基本的なトレーニングにも、また対旋律やフレージングといった基礎的な音楽表現にもたいへんよい教材ではないかと思います。 なお、この曲集はソルのギター教則本と前後して出版されたようです。

 因みに、上の曲目リストではすべて 「練習曲集」 としましたが、厳密にはそれぞれタイトルが異なり、「Studies」、つまり練習曲集としているのは 「作品6」 と 「作品29」 のみで、 「作品31」 と 「作品60」 は 「Progressive Lessons」、 「作品35」 は 「Exercises」 となっています。 それぞれ練習曲としての役割が違うのでしょう。



19世紀初頭のオリジナル楽器使用

 演奏者の Enea Leone は上記のとおり、イタリア出身のギタリストで、1978年生まれということなので、現在30代半ばといったところでしょう。 楽器は Francisco de Goya(1746~1828) というソルの時代の楽器を使用しているようです。

 この楽器は、古楽器らしく高音を華麗に響かせるというより、低音がしっかりと響くタイプのようで、 ソルの作品を演奏するには非常に適していいるのではと感じます。 



クリヤーですっきりとした演奏、フレージングもよい

 Leoneの演奏もこの時代の音楽に適した演奏スタイルで、たいへんクリヤーに、また音価も適切に取っており、とてもすっきりとした印象になっています。 さらにフレージグなども非常に適格に行っており、 ソルの音楽を学ぶ上でも、またギターの演奏技術を学ぶ上でもたいへん役に立ちそうです。



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演奏者のEnea Leone  楽器はおそらく別のもの



もちろんお買い得!

 ソルの練習曲集はナクソスからも出ていますが、こちらはセットになっていて、なお且つ価格も安いので(2000円前後)、とてもお買い得ではと思います。 もちろん勉強のためだけでなく、鑑賞用としてもお薦めです。
CD紹介

<フェルナンド・ソル  :  序曲、交響曲集>

バレエ音楽「ヘラクレスとオンファール」序曲(1826)
交響曲第1番ハ長調(1804年頃)
バレエ音楽「アルフォンスとレオノーレ」序曲(1836)
交響曲第2番変ホ長調(1804年頃)
メロドラマ「ポルトガルのエルヴィラ」序曲
交響曲第3番ヘ長調(1804年頃)
バレエ音楽「シンデレラ」序曲(1822)

  サー・ネヴィル・マリナー指揮   カダケス管弦楽団 (2007~8年録音)



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最近CDの紹介をしていなかったので

 最近、あまりCDの紹介を行っていなかったので、ぜひお薦めしたいCDが結構溜まってしまいました。 そこで最近買ったCDをいくつか紹介したいと思います。



ソルがオーケストラ曲も作曲したいたことは知っているが

 まずは上記のようにソルのオーケストラ曲のCDです。 ソルはギター曲だけでなく歌曲やオーケストラ曲なども作曲していたと言う話は皆さんもご存じと思いますが、 実際にそうした曲を聴くことはあまりないのではないかと思います。

 ちょっと前まではそうした曲を聴いてみたいと思ってもなかなか聴けなかったと思います。 CDなどが入手しにくいというより、CDやLPなどの録音そのものがほとんどなかったのではないかと思います。 



今はCDが第1の選択ではないが

 最近では以前に比べCDを買って聴く人が減少し、それに伴いCDショップ自体も街からだんだん消えてゆくようになりました。 確かに今現在では音楽を聴くのに、第1の選択はCDではなく、ユー・チューブ、またはオン・ラインでのダウン・ロードなのかも知れません。

 と言った訳で、CD販売の絶対数は明らかに減少していると思われますが、一方ではこのような以前には聴きたくてもなかなか聴けなかったようなコアなものも簡単に入手出来るようになりました。 不思議なものですね。 



やはりCDを買おう!

 今後はこうしたものもCDとは別の形で消費者のもとに届くようになるのでしょうね。 しかしどのような形であれ、聴きたいものがあれば、やはり”お金”を払って聴きべきでしょう。 もしそうでなかったら、このような貴重な録音は市場に出されることがなくなるでしょうから・・・・・

 ちょっと余計な話になったかも知れませんが、なにはともあれ、前から欲しいと思っていたものが入手出来ました(昨年ですが)。 ソルの作品を弾こうと思う人は”絶対に” 買わなければならない1枚でしょう。



全貌は明らかではないが

 さて、その内容の方ですが、「ソルはオペラやバレエ曲、交響曲などを作曲した」と言われていますが、そうしたギター曲以外の作品についてはあまり情報がないようです。

 当時パリではソルはバレエ音楽やオペラの作曲家として知られていたとされていますから、それなりの作品数はあったのではと思いますが、その全貌についてはまだあまりよく知られていないようです。

 残された譜面もそれほど多くないのかも知れませんが、今のところは、今後さらに研究が進んでそうした作品に触れることが出来るようになるのを期待するのみです。



交響曲の序曲もほとんど同じ

 このCDに収録された7曲はソルのオーケストラ作品のごく一部といったところでしょうが。これらの作品を実際の音で聴けることはとてもうれしいことです。

 3つの交響曲が収録されていますが、これらはハイドンやべートーヴェンの交響曲のように4楽章からなるものではなく、ゆっくりした序奏とそれに続くアレグロ楽章とで出来ている、単一楽章のものです。 つまり他のバレエの序曲などと全く同じ形のもので、時間もそれぞれ7分前後となっています。



キレがあって、なかなか面白い

 書かれている年代からすれば、「交響曲」とされているものは1804年のもので、ソルの作品としては初期のもの、 他の序曲は中期から後期のものとなります。 聴いた印象としては全体にキレのある、溌剌とした感じで、それぞれなかなか面白いものです。 少なくとも聴いていてダレル感じはありません。



短い素材を組み合わせて曲を作る

 特徴としては、長々と旋律を歌わせるというより、比較的短い素材を組み合わせて曲を作ると言った感じです。 また後期のものはより複旋律的になっているようです。 楽器編成としてはおそらく2管編成(フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペット各2本と弦楽)となっているようです。



強いて言えばハイドンに似ているかな

 古典派時代のオーケストラ曲なので、当然ハイドン、モーツアルト、ベートヴェンと言ったところに似た感じではあるのですが、強いて言えばハイドンの作品に一番似ているようです。 特に最初の「ヘラクレスとオンファール」序曲の出だしはハイドンの交響曲第104番「ロンドン」を思わせる感じがあります。



「魔笛の主題と変奏」の序奏にも似ている

 またこの「ヘラクレス・・・」の序奏部は「魔笛の主題と変奏」の序奏と似たところもあり、この曲を練習する際にはたいへん参考になるでしょう。 間違いなく「魔笛」の序奏部はオーケストラ的に出来ています。 そうしたこともこの序曲を聴くとよくわかるのではと思います。 さらにこの「ヘラクレス・・・」序曲の主部はカノン風に始まり、なかなか充実した曲だと思います。