中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

<バッハ:シャコンヌ再考 4  いろいろなシャコンヌ 2>



フランスのリュート音楽

 17世紀前半)には、フランス宮廷でリュートが盛んになり、王族や貴族たちはリュートを聴くだけでなく、自らも教師についてリュートを習ったそうです。 そのフランス宮廷で活躍したリューティストとしては、老ゴーティエと呼ばれるエヌモン・ゴーティエ(Ennemond Gaultier 1575~1651)、 ジャック・ガロー(Jacques Gallot 1600? ~1690?)、 シャルル・ムートン(1626~1699)、 エヌモンの従弟にあたるドニ・ゴーティエ(Denis Gaultier 1603~1672) などが挙げられます。

 この17世紀前半のフランスはリュート音楽の一つの絶頂期とされますが、弦の本数が増えた(20~24本)リュートの演奏は、チューニングだけでも非常に難しく、この世紀の半ばを過ぎると、それまでのリュートの役割は、より扱いや演奏の簡単なクラブサンへと、次第に取って代わられるようになります。



エヌモン・ゴーティエ(老ゴーティエ)のシャコンヌ

 上記のフランスのリューティストの作品は、現在、バッハやヴァイスなどに比べると、まだそれほど録音されていないようですが、写真のブリラント・レーヴェルから出ているMiguel Serdoura 演奏のCDにより、エヌモン・ゴーティエの「シャコンヌ ヘ長調」が聴くことが出来ます。


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Miguel Serdoura のCD。  タイトルはフランソワ・クープランの「神秘の障壁」となっていて、リュートのオリジナル曲の他に、クープランのクラブサン曲もリュートで演奏している。  この時代のクラブサン曲はリュート曲の影響を色濃く残していて、他のリュート・オリジナル曲との違和感は全くない。



イネガルでノリよく

 このエヌモン・ゴーティエの「シャコンヌ ヘ長調」は、約12分とかなり長いもので、バッハのシャコンヌとほぼ同じ長さになっています。 フランスにはロンド形式のシャコンヌもあるそうですが、この曲は7小節のテーマに基づく変奏曲です。

 ヘ長調という調性もあって、明るく、リラックスした感じで、またイネガル(音符を2対1などのように不均等な長さで弾くこと)で演奏しているので、かなり軽快な感じがします。 今風に言えば“ノリの良い“と言った感じでしょうか。




ベルギーのリューティスト、サン・ルク

 同じCDに、ベルギーのリューティスト、サン・ルク(Saint-Luc 1615-1708)のト長調のシャコンヌも収録されています。 ゴーティエのシャコンヌよりも若干後で作曲されたものと思われますが、フランス的なリュート作品と考えてよいでしょう。

 たいへん落ち着いたテーマで始まりますが、変奏によっては動きが細かく、また高音域も使用して、いわば“変奏曲らしい”感じです。  盛り上がる部分もあり、弾き映えのする曲ではないかと思います。 一つの変奏は8小節からなり、演奏時間は約5分です。




ケルナーのシャコンヌ

 さらにこのCDには、もう一曲、ドイツ出身で、その後スウェーデンに渡った、ダビット・ケルナー(David Kellner 1670-1748)のシャコンヌも収録されています (CDには「シャコンヌ」と表記されていますが、チャコーナかも)。

  ケルナーはリュートが本業ではないそうですが、ハンブルグでリュート曲集(16の最上のリュート特選小品集)を出版しています。 現在でもドイツのリュート作品としては、バッハ、ヴァイスに次いで演奏されているようです。

 ケルナーのシャコンヌはイ長調で、テーマはゆったりと歌う感じで、テーマ、およびそれぞれの変奏は、ゴーティエのもと同様、7小節からなり、演奏時間、約11分となっています。 ヴァイスとは出身地(ライプチヒの近く)も生存年代も近く、その作風は近い印象があります。

 *最後の方で、半音階的な不思議なパッセージが出てくるのですが、オリジナル通りなのでしょうか? なんとなくコユンババみたい・・・・・

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<バッハ:シャコンヌ再考 3  いろいろなシャコンヌ 1>



まずは、リュートのために 書かれたシャコンヌから

 今回から、バッハ以外の作曲者によって作曲されたシャコンヌについて、具体的に書いてゆきます。 シャコンヌと言えば、まずはリュートとなると思いますので、リュートのために書かれたシャコンヌの話から始めます。



バロック時代初期のイタリア

 最初は、16世紀後半から17世紀初頭にかけて活動したイタリアのリュート奏者、アレッサンドロ・ピッチニーニ(Alessandro Piccinini 1566~1638)の作品です。 時代的にはルネサンス時代からバロック時代への移行期となりますが、まさにシャコンヌがイタリアに渡った当初と言うことになるでしょう。



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ブリラント・レーヴェルの「クラシック・ギター・コレクション (25枚組)」。  ピッチニーニの主要な作品が、2枚のCDに収められている。 この中にチャコーナは2曲ある。



アレッサンドロ・ピッチニーニ

 ピッチニーニはリュートの名手として当時たいへん評価の高かった人ですが、その主な作品は2巻のリュート曲集として、生前、および没後に出版されました。 それらはブリラント・レーヴェルの25枚組のCDアルバム「クラシック・ギター・コレクション」で聴くことが出来ます。 演奏はLuciano Continiによるものです。



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キタローネ(テオルボ)  アーチリュートも見た目はよく似ている



アーチリュートとキタローネ(テオルボ

 バロック・リュートは、通常11、または13コース(1、2コースは単弦で、他は複弦)ですが、ピッチニーニは「アーチ・リュート」と呼ばれる14コースのリュートと、通奏低音用のリュートであるキタローネ(テオルボとも呼ばれる)を使用していました。

 このCDも、そのアーチ・リュートとキタローネによる演奏となっています。 このCDで聴くピッチニーニの作品は、同じバロック・リュートでも、フランスのリューティストや、ヴァイスなどとはかなり違い、またほぼ同時代のイギリスのダウランドなどとも異なる作風です。 



独特のニュアンス

 ピッチニーニの作品は、高い音域や、半音階なども使用し、独特のニュアンスが感じられ、今現在はダウランド、ヴァイスなどに比べればあまり演奏されていませんが、なかなか面白いものです。 曲としてはルネサンス時代のガリャルダやコレンタ、 バロック時代の音楽のトッカータ、チャコーナ、 両時代に共通するリチェルカーレと、 曲名を見るだけでも両時代の移行期と言うことがわかります



短調と長調のチャコーナ

 このアルバムにはピッチニーニの二つのチャコーナが収録されていますが、そのうちの1曲(Ciaccona Marionaリュートで演奏されている)は短調で出来ているようで、テンポもやや遅めに演奏されています。 低音主題は変奏ごとに変化していて、単純な繰り返しではありません。 もう1曲はキタローネで演奏されていて、こちらは明るく、テンポもやや速めで、前回書いた通りのチャコーナとなっています。 



ピッチニーニ同様に高く評価されたカプスベルガー

 同時代のイタリアで、ピッチニーニ同様高く評価されていたリューティストに、ジョバンニ・ジローラモ・カプスベルガー(Giovanni girolamo Kapsberger 1580~1651) がいます。 チャコーナは収録されていませんが、そのCDを紹介しておきましょう。


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17世紀初頭のイタリアで活動したリューティスト、カプスベルガーの作品を収めたCD。 演奏はブルガリア出身の Yavor Genow。



 このCDに収録されている曲は、すべてトッカータ、コレンタ、ガリャルダの3種類の曲となっていて、コレンタ、ガリャルダは確かにルネサンス風(ダウランドの作品のように)、トッカータはバロック風に聴こえます。 なお写真では通常のバロック・リュートを手にしていますが、このCDの演奏はアーチ・リュートとキタローネによるものとなっています。


アコラ・フレンズ ギター・コンサート
   6月21日 ひたちなか市アコラ 15:00~




昨日(21日)アコラ・フレンズ・ギター・コンサートを聴きました。 プログラムは以下のとおりです。



<第1部  独奏>

長塚 彰   あの日に帰りたい (松任谷由美)
         ラ・クンパルシータ (ロドリゲス)


熊坂勝行  カンタービレ (C.P.E.バッハ)  ~間にヴィラ・ロボスの練習曲第1番を挟む
        アリア第5番 (クレンジャンス)

園城寺哲男  禁じられた遊び (ルビラ)

鈴木幸男  トリーハ (モレーノ・トロバ)
        アラビア風奇想曲 (タレガ)
        ショーロ「鐘の響き」 (ペルナンブコ) 


<第2部  四重奏>

主よ、われ汝を呼ぶ (J.S.バッハ)
マンドリン協奏曲ハ長調 (ヴィヴァルディ)
ミスター・ロンリー (ヴィントン)
ティコ・ティコ (アブレウ)

 *アンコール  川の流れのように





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アコラ・フレンズ
  左から園城寺、 熊坂、 長塚、 鈴木






 アコラ・フレンズのコンサートとしては久々ですが、会場は、ほぼ満員となっていました。 メンバーの4人とも各地のコンクールなどで優勝、あるいは入賞しており、実力者ぞろいの独奏と四重奏で、とても内容のあるコンサートでした。

 独奏は、それぞれの特徴を生かした素晴らしい演奏で、なおかつ、とても楽しめました。 熊坂さんのC.P.E.バッハの「カンタービレ」では、間にヴィラ・ロボスの「練習曲第1番」を挟んでいたのですが、その理由よくわかりませんでした(演奏前に説明していたような気はするのですが)。

 鈴木さんの「鐘の響き」は、自由に、楽しそうに弾いていて、なかなか面白いものでした。 

 四重奏ではコントラ・バス・ギターを使用する予定でしたが、楽器を家に忘れてしまい、やむを得ず通常のギターで演奏したとのことですが、 そう言ったことも感じさせず、大変しっかりとしたアンサンブルでした。 タイミングもバランスもたいへんよかったと思います。

 ヴィヴァルディの協奏曲ではそれぞれがソロを受け持つ形で演奏され、それぞれのメンバーの音色などが楽しめるものになっていました。  ラテン・ナンバーの「ティコ・ティコ」は、颯爽と速めのテンポで演奏され、とてもエキサイティングでした。

 コンサート後には園城寺さんの、ハーモニカや歌などを伴うバンジョーの演奏もありました。
 
シャコンヌってどんな曲?




17世紀初頭に新大陸から

 まずは 「シャコンヌ」とはどんな曲か? ということから始めましょう。 いろいろな資料などからすると、シャコンヌは17世紀の初頭に新大陸からスペインに渡った舞曲だそうで、その由来した地域がメキシコとも、ペルーとも言われています。



シャコンヌ禁止令?

 スペインでは「チャコーナ(chacona)」と呼ばれますが、スペインに渡った当初はギター伴奏による、歌を伴う踊りだったそうで、その歌詞も、庶民的なもの、時にはあまり上品ではないものだったようです。 そのためスペインでは一時期、シャコンヌを歌ったり、踊ったりすることが禁止になったこともあるそうです。



最後のリフレーン部分が

 チャコーナはスペインに渡るとすぐに、イタリア、及びフランスに伝わります。 イタリアでは「ciaccona」と綴られますが、イタリアではチャコーナは定まった低音旋律を持つ形となり、その後私たちが認識しているような 「シャコンヌ(チャコーナ) = 3拍子の舞曲で、低音旋律を主題とする変奏曲」 となって行きました。

 チャコーナが定まった低音を持つようになった由来としては、スペインでのチャコーナが、歌の最後のほうで、定まった和声進行(Ⅰ-Ⅴ-Ⅵ-Ⅴ)に乗せてリフレーンが行われ、そのリフレーン部分のみをイタリアのチャコーナが受け継いだからのようです。

 イタリアでのチャコーナはその由来からして、明るく軽快なものが多く、短調で作曲されることはあまりなかったそうです。



フランスでは

 チャコーナは時をほぼ同じくして、フランスへも伝わる訳ですが、この17世紀初頭というのは、まさにフランス・バロック・リュートの最盛期と言ったところで、シャコンヌ(フランスではシャコンヌ《chaconne》)はリュート音楽と密接な関係があります。

 シャコンヌはチャコーナと同じく定まった低音主題(バッソ・オスティナート)を持つ形のものもありますが、それとは全く違ったロンド形式のシャコンヌも存在するようになります。 またフランスではシャコンヌは軽快な音楽からゆっくりで、しっとりとしたものが多く、短調で作曲されることも少なくなかったようです。 



バッハはシャコンヌではなくチャコーナを作曲した

 ドイツには、イタリア風の「チャコーナ」が伝わるようになったようで、バッハも“chaconnne”ではなく “ciaccona” つまり「シャコンヌ」ではなく、「チャコーナ」と題しています。 ドイツの有名なリューティストのS.L,ヴァイスも同様に“ciaccona”と綴っています。

 以上のことからして、ドイツの音楽家はイタリア風のチャコーナ、つまり低音主題の変奏曲を作曲することになりますが、フランスの影響も受け、短調で、ゆっくりとしたチャコーナも作曲しています。 



似たものどうし

 ところで、シャコンヌと似た曲にパッサカリアという曲があります。パッサカリアも「3拍子のゆっくりとした舞曲で、低音に主題を持つ変奏曲」ということで、非常に区別がしにくいものです。

 その由来としては全く別物で、パッサカリアはヨーロッパ起源で、舞踏的な性格はあまりなかったそうです。しかし結果的にはシャコンヌの同様に低音主題の変奏曲となり、17世紀には当時の音楽理論家にもその明確な区別が付けられなくなってしまったようです。



当時の理論家でもその違いがよくわからなかった

 18世紀の音楽理論書を書いたマッテゾンや、クヴァンツもシャコンヌとパッサカリアは明確に区別出来ないと言い、他の資料にも、シャコンヌの方がやや速めに演奏されるとか、全く逆にパッサカリアの方が速いとか、全く逆の事が書かれてあり、またどちらが低音主題を厳格に守るか、なども様々な意見があるようです。

 最新の音楽乃友社の辞典では「パッサカリアの方が低音主題を持つ」と書いてありますが、これはあくまでバッハの作品について言えることと、考えた方がよさそうです。

 ただ、いろいろな作品を見たり、聴いたりした限りでは、パッサカリアの方が短調になる傾向が強く、シャコンヌのほうが長調になる傾向があるようです。



本当は明るかったシャコンヌ

 私たちは、シャコンヌというと、どうしてもバッハのシャコンヌを念頭に置いてしまいがちですから、暗く、重厚なイメージをしてしまうのですが、一般的には、明るく、リラックスした感じの曲が多いのは確かです。

 次回はそうしたバッハ以外のシャコンヌについて触れてゆきます
バッハ:シャコンヌ再考


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相変わらず読みにくいブログにもかかわらず

 このブログを始めてから8年ほどになりますが、その後、特にリニューアルもせず、相変わらず読みにくいブログだなと、自分でも思います。 多少なりともこんなブログを読んでいる人がいるかと思うと、本当に不思議です。

 さらには、最近の記事だけでなく、何年か前に書いた記事を読んでいる人も少なくないようで、その中でも特に多いのは私が大学生の頃授業についてゆけなかった記事(私のギター修行)は、すべての記事の中で最も多く拍手をいただいています。 次は、創(長男)がギターをリタイヤした時の話で、創のことを気にかけて下さった方々も多かったのでしょう。



頭が下がる思い


 3番目に、このバッハのシャコンヌについての記事となるわけですが、これは私が2008年にリサイタルで演奏するのを機に、2007年に7回にわたって書いたものです。 特に冒頭のテーマについて書いた記事はその中でも最も多く、今現在でも頻繁ではないにしろ、途切れることなく拍手をいただいていています。

 この記事を改めて読み返してみると、譜例などもなく、やたらと文章も長く、非常に読みにくい記事で、この記事をちゃんと読むには相当意欲と努力が必要と思われます。 しかし拍手をいただいているということは、それらの方々は、最後まで記事を読んだのでしょう。 ・・・・・本当に頭が下がります。



一般解説書にはないことが

 もちろん私の場合、音楽の研究者でも、特にバッハの音楽に精通している訳でもなく、文字通り“どの街にでもいそうな”ただのギター教師です。 こんなブログを読むなら、ちゃんとした解説書などを読んだ方が、ずっとよいとは思うのですが、それでもこの記事を読んでいる人がいるということは、一般的な解説書などには書かれていないことも、多少なりとも書かれているということなのでしょう(正しいか、正しくないかは別にして)。


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バッハの音楽の本質とは、まだまだ隔たりがあるが

 しかしやはり後から読み直してみると、正しくないことや、説明不足、まわりくどい文章など多数あり、また何といっても非常に読みにくい記事なので、この記事への拍手をいただく度に 「もう一度ちゃんと書き直さないと」 と、いつも思っていました。

 もう一度書き直すと言っても、まだまだバッハの音楽の本質とは隔たりのある議論となってしまいそうですが、これまで読んでいただいた方々のためにも、多少なりとも読みやすく、間違いの少ないものに改めるべきと考え、この「シャコンヌ再考」の記事を書いてゆくことにしました。  



以前の記事にも若干手を入れた

 前述のとおり改めて以前の記事(2007年)を読み直してみましたが、ともかく読みにくく、また誤字や変換間違いなどもあり、訂正、及び改行などを行い、譜例も付け加えました。 また今では正しくないと思われる部分もありましたが、しかし当時の考えはなるべくそのままにしておこうと思い、文章の内容については、なるべく変えずに、そのままにしておきました。

 それでは「バッハ:シャコンヌ再考」 始めます。 ・・・・・・・・と言っても次回からですが。
トリプル・フレット  ギター・トリオ


 今日(6月7日)、石岡市のギター・文化館で行われたフィリピンの女性ギター・トリオ、「トリプル・フレット」のコンサートに行きました。プログラムは以下のとおりです。



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メンデルスゾーン : 無言歌作品30-1「瞑想」

4つのフィリピンの歌

マイケル・ジャクソン : キング・オブ・・トップ・メドレー

アルベニス : アストゥリアス

トゥリーナ : 踊り ~東洋の庭より

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

宮城道雄 : 春の海

成田為三 : 浜辺の歌

ヴィヴァルディ : リュート協奏曲ニ長調

ベリナティ : ビー玉遊びのバイヨン

フィリピン民謡 : Pandangguhan





正確にアンサンブルを行いながらも、メロディを歌わせている

 フィリピンのギタリストの演奏は初めて聴きますが、たいへんレヴェルの高い演奏でした。 「無言歌」はアルペジオに乗せてメロディを歌わすタイプの曲ですが、正確にアンサンブルを行いながらもメロディやややルバート気味に歌わせ、まるでピアノ・ソロのような演奏でした。 基礎力の高さを窺わせます。





エンターティメント性に富んだ選曲、編曲


 「4つのフィリピンの歌」は原曲などについてはよくわかりませんが、一般的なポピュラー系の音楽といった感じで、親しみやすく、いわゆるエンターティーメント性に富んだ選曲、アレンジ、演奏といったところでしょう。 3曲目は演奏者の一人がイスの上にギターを立て、ベースのように演奏していました。 4曲目は「禁じられた遊び」を思い出させるメロディです。



アンクラージュマン?

 「浜辺の歌」はホ長調にアレンジされ、ソルの「アンクラージュマン」風になっています。 ちょっとした”遊び”でしょうか。 ヴィヴァルディの「協奏曲」はプログラムには「春」と書かれていましたが、実際に演奏されたのは上記のように「リュート協奏曲ニ長調」でした。 アンコールでは ”二人羽織” ならぬ ”3人羽織” で締めくくりました。 



誰もが楽しめる内容

 この「トリプル・フレット」のコンサートは、ギター・トリオということからして、じっくり腰を落ち着けて聴くというより、前述のとおりエンターティメント性の高い内容のコンサートで、多くの人が楽しめる内容のコンサートと言ってようでしょう。

 今現在では世界中でクラシック・ギターのレヴェルはあまり変わらなくなってきているのでしょう。 観客を楽しませながらも、メンバーのそれぞれが、しっかりと正しく音楽を身に付けていいることが感じとれるギター・トリオです。


 
アンケートの集計



 先日の名曲コンサートでご来場の方々から約50通のアンケートの回答をいただきましたので、その集計などをまとめます。

 まず、当日演奏した16曲(アンコール曲を含め)のうち、「今日の演奏曲の中からもう一度聴いてみたい曲は?」ということで曲名を上げていただきました。

 「良かったと思った曲」ではなく「もう一度聴きたい曲」として挙げていただき、また曲名に〇を付けるような形でなく、曲名を実際に書いていただくということにしたのは、書いていただく場合は、なるべく”強い意志”で書いていただきたいと思ったからです。

 以下、演奏順にしたがって、曲名を書いていただいた数を記します。



  <クラシック・ギター究極の名曲>
練習曲ホ短調(ルビラ) ~禁じられた遊び   8
アランブラの想い出(タレガ)            13
モーツァルトの「魔笛」の主題による変奏曲   9

  <永遠のスクリーン・テーマ>
太陽がいっぱい(ロータ)              4
第3の男(カラス)                   4

  <よみがえる昭和の歌>
悲しき口笛(万城目正)               4
君といつまでも(弾厚作)              4
22才の別れ(伊勢正三)               3

  <タンゴの名曲>
奥様お手をどうぞ(エルビン)           2
ラ・クンパルシータ(ロドリゲス)          16

  <オーケストラ曲をギターで>     
展覧会の絵より(ムソルグスキー)        8

  <情熱のスパニッシュ・ギター>       
スペイン・セレナード(マラッツ)          7
アストゥリアス(アルベニス)            23
粉屋の踊り(ファリャ)                9

  <アンコール曲>
カヴァティーナ(マイヤーズ)           3
ルパンⅢ世のテーマ                7





華やかな曲が

 最も多かったのが「アストゥリアス」で、23と言うのはアンケート総数の約半数に当たります。 やはりギター・ファンにも、またそうでない方にも人気のある曲なのでしょう。 第2位は「ラ・クパルシータ」ですが、私のアレンジはシンプルだが、スピーディで華やかな感じにしてあります。 1、2位とも華やかな曲が選ばれた結果となりました。

 3位はクラシック・ギターの曲としては知名度で「禁じられた遊び」と1、2位を争う「アランブラの想い出」となりました。 「禁じられた遊び」のほうは、自分でも弾けると言う人も多かったのかも知れません。



クラシック・ギターの名曲が上位

 「魔笛」と「粉屋の踊り」が同数の4位で、 「禁じられた遊び」、「展覧会の絵」が同数の6位となりました。 このようにしてみると、やはり上位はクラシック・ギターの名曲として定着した曲ということになりますね。

 今回のコンサートは特にクラシック・ギターに興味がない人でも楽しめる内容としたのですが、やはり日頃クラシック・ギターに接しているひとが多かったのかも知れません。



もう一度聴くなら別の曲?

 <昭和の歌>や<映画音楽>にあまり票が集まらなかったのはちょっと意外でしたが、興味がないと言う訳ではなく、「今度聴くなら別の曲」と言った意味なのかなと思います。 確かにそういったニュアンスの回答はいくつかありました。 またそうしたジャンルの曲は皆さんよく知っているので、ご自分の好みの曲などもはっきりしているのでしょう。

 


様々な曲が

 次のアンケート項目は、「今日演奏した曲以外で、当コンサートで聴いてみたい曲があれば書いて下さい」 と言ったものです。 これはさすがに幅広く、いろいろなものが書かれていました。 中には全く名前も聴いたことのないようなアーティスト名もあり、また、さすがにギター独奏ではどうかなと言ったものもありました。

 集計としては次のようになりました。



バッハの作品 (シャコンヌなど具体的に曲名も含む)   8
映画音楽 (具体的な曲名も含む)              7
古賀メロディ(同)                         5
バリオスの作品(同)                       4
ジプシーキングの曲                       4
日本の歌                              2
花は咲く                              2
ジャズ                                2
ビートルズ                             2






意外とバッハの曲が

 バッハの作品が最も多かったのは意外でしたね。 次がバリオスで、今はギター曲の中ではバッハとバリオスの人気が高いようです。 映画音楽が多かったのは予想通りとも言えますが、歌謡曲では古賀メロディに集中しています。 「ジプシー・キングの曲」というのはテレビ・ドラマの主題曲なんでしょうか。 最近のJポップ的なものも若干ありましたが、かなりばらけて同じアーチストのものはありませんでした。

 感想等については、心暖かい、気遣い溢れた内容のものを多数いただきましたが、少数ではありますが、「話が長い」、「音がよくない」 といった率直な感想もいただきました。