中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

<バッハ・シャコンヌ再考 14   バッハの無伴奏曲 3>



”じゃないほう” の武藤

 昨年ワールド・カップの後、サッカー日本代表で武藤嘉紀選手が華々しくデビューし、今年になってからドイツ・ブンデス・リーガーへと活躍の場を広げました。 その陰で ”じゃないほう” と言われた、同じFWの浦和レッズの武藤雄樹選手がJリーグで着実に得点をのばし、代表入りを果たし、代表初得点も記録しました。



短い出場時間で結果を出したが

 短い出場時間の中で結果を出したのはまさに”じゃないほう” の武藤選手らしいところですが、残念ながらその後あまり代表に呼ばれていません。 ぜひともまた代表戦で武藤雄樹選手 (ブンデス・マインツじゃないほう!) の活躍が見たいものです。



伴奏付きのほうが普通のはずだが

 さて音楽の話に戻りますが、バッハの「ヴァイオリン・ソナタ」というと、多くの音楽愛好者は「無伴奏ヴァイオリン・ソナタの」ほうを思い浮かべるでしょう。 前回もお話ししたとおり、バッハはチェンバロ ”伴奏付き” の「6つのバイオリン・ソナタ」を作曲していて、こちらのほうが伝統に基づいた形式と言え、”無伴奏” のほうがむしろ異色の音楽です。



特に私たちギタリストには

 しかし今現在では「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」のほうが圧倒的に人気があり、多くのヴァイオリニストが演奏し、CDなどの録音も非常にたくさんあります。 演奏される頻度からすればかなり差があるでしょう。 なんといっても私たちギターをやるものにとっては無伴奏ヴァイオリン・ソナタは非常に身近な曲ですが、”伴奏付き”のほうは、あまり聴かない(もちろん弾かない)というギタリスト、および愛好家が多いでしょう。



”じゃないほう” のヴァイオリン・ソナタ

 かく言う私自身も無伴奏のほうは10数種類 (ギターも含めればもっと多い) CDをもっていますが、”伴奏付き” のほうは4種類ほどしかありません。 ヴァイオリンをやっている人ならどうかわかりませんが、私たちギターをいやっているものにとっては、チェンバロ伴奏付きの 「6つのヴァイオリン・ソナタ」 はやはり ”じゃないほう” のソナタとなるでしょう。

  今回はその無伴奏 ”じゃないほう” のヴァイオリン・ソナタの話です。 こちらは伝統に則った音楽で、和声的な部分はチェンバロに任せて、ヴァイオリンはのびのびと旋律を歌わせるように出来ています。 チェンバロ伴奏のほうは左手で通奏低音、右手でもう一つの旋律を演奏し、ヴァイオリンの旋律と合わせ、通奏低音に二つの旋律という、バロック時代によく作曲された”トリオ・ソナタ” 形式になっています。


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ヴァイオリンとチェンバロのための6つのソナタ第1番ロ短調 第1楽章「アダージョ」



誰にでも楽しめる曲

 上の譜面は「6つのヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ」の第1番の第1曲目で、調はバッハが好きなロ短調となっています。 「トリオ・ソナタ風」と言いましたが、譜面のほうを見ると、4声になっていて、さらに先に進むと5声にもなります。 和声法的には、決してシンプルなものではありませんが、無伴奏の曲に比べれば、1小節が一つの和音になっている場合も多く、穏やかな感じがします。

 そのことは実際に聴いてみるとよくわかります。 聴く人に集中力と緊張感、さらには高い聴音能力や和声法的知識などを要求する無伴奏曲にたいして、こちらは何と言っても旋律が美しく、大変リラックスして聴け、誰にでも楽しめる曲となっています。 



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6つのヴァイオリンとチェンバロのためのソナタのCD  録音は古いが(1963年)、私が持っている4種類のCDの中では、このアルトュール・グリュミオーのものが最も好みに合う。 このヴァイオリニストの”無伴奏”のほうもすばらしい。



ギター・ファンにはぜひ聴いてほしい

 バッハにはいくつかのフルートとチェンバロ、もしくは通奏低音のための曲が残されており、たいへん人気のある作品ですが、 このフルート・ソナタ同様、この伴奏付きの6つのソナタも、ほぼ同じ性格の音楽で、たいへんなじみやすい曲ではないかと思います。

 前述のとおり、バッハ好きを自称するギター・ファンの中にも、この”伴奏付き”のほうはあまり聴かないという人も多いですが、そうした方には、ぜひ聴いて欲しいと思う曲です。



おそらく対で作曲された

 無伴奏ヴァイオリンのための3つのソナタと3つのパルティータは、ケーテン時代の1720に、バッハ自身の手によって清書されたとされ、伴奏付きのソナタのほうは、はっきりしないようですが、おそらくその前後に作曲されたとされています。 

 おそらくバッハはこの両者を明確なコンセプトを持って作曲し分けたのではないかと思います。 つまり”伴奏付き”のほうは誰にでも楽しめ、また一応プロの演奏家なら誰にでも演奏出来、いろいろな場に対応できる、実用性を重視した曲。 一方”無伴奏”のほうは極めて能力の高いヴァイオリニストと最高級の鑑賞能力ある愛好家のために書いた曲といえるのでしょう。

 さらに”無伴奏”のほうはバッハ自身の手で丁寧に清書されているところからも、おそらく後世、つまり私たちに向けて書いた意味も含まれているのではないかと思います。



本来、逆では?

 そうした両者の性質上、本来であれば”伴奏付き”のほうが一般化し、”無伴奏”のほうは知る人ぞ知る秘曲となったはずなのですが、少なくとも今現在では全く逆の現象となっています。 後世の音楽学者や評論家などのジャーナリズムといったことも大きく影響していると思いますが、やはり計6曲の無伴奏ヴァイオリン曲は、大変インパクトのある作品だということなのでしょう。

 ・・・・・・・武藤雄樹選手も今後の活躍次第では ”じゃないほう” の称号を嘉紀選手に譲ることも・・・・・    でもちょっと難しいかな?
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<中村俊三ギターコンサート>

11月29日(日)15:30  ひたちなか市アコラ   

料金2000円  (要予約)



 このコンサートについては先日お知らせしましたが、若干曲目も変更になりましたので、改めてお知らせいたします。 曲目は以下のとおりです。


<独奏>

ヘンデル : ラルゴ~オンブラ・マイフ
ジュリアーニ : ヘンデルの主題による変奏曲
ソル : ソナタハ長調作品15-2
レゴンディ : 序奏とカプリッチョ


<二重奏 共演 高矢研治>

武満徹 : ヒロシマという名の少年
フォーレ : 子守歌~組曲「ドリー」より
ソル : アンクラージュマン





カルリがフォーレ、武満に

 二重奏の曲目がカルリの二重奏曲から武満とフォーレに変わりました、どちらも美しい曲です。 共演の高矢君については先日紹介したと思いますが、茨城大学クラシック・ギター部の後輩で、確か、私より2才か3才年下だったと思います。 入部した時からギターが上手だったのですが、なんといっても非常に優れた音感を持っていて、音楽的知識も豊富でした。



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1974年頃の高矢君



 その後ギター教師をしたり、黒沢楽器に勤めたりしまいしたが、現在は東京恵比寿で「ギター・ショップ・カリス」を開いています。 1974年、私が大学6年生で、高矢君が3年生の時に一緒にコンサートをやったことがありましたが、これが私の初めてのコンサートでした。



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1974年頃(23歳)の私。  当然のことかも知れないが、今現在とは右手のフォームがだいぶ違う



 その後も高矢君が日立市にいた頃は時々一緒にコンサートなど行っていましたが、今回のコンサートは、おそらく30年ぶりくらいになるのではと思います。



かつてキャスリーンバトルの歌で有名に

 独奏曲の「ラルゴ~オンブラ・マイフ」は、ヘンデルの有名なアリアで、かつてキャスリーン・バトルはテレビ・コマーシャルで歌って人気となりました。 たいへん美しい曲ですが、その美しさをギター・ソロで再現するのは非常に難しいところです。 しかしどれだけ歌に近づけるか、あるいは、いかにして歌っているように聴こえるか、といったことはギタリストとして大変やりがいのあることでもあります。


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キャスリーン・バトル


主題はピアノ名曲

 次にヘンデルつながりということで、イタリアのギタリスト、マウロ・ジュリアーニの「ヘンデルの主題による変奏曲」 です。 主題に用いたのは一般に「調子のよい鍛冶屋」としてピアノ名曲で知られている、チェンバロ組曲第5番の「アリアと変奏」から取られています。 第1変奏はやや似ていますが、他の変奏はオリジナルと全く別のもので、あくまでジュリアー二の作曲です。 大変親しみやすい曲でしょう。



若干地味なほうだが

 ソルの「ソナタハ長調作品15」は単一楽章のソナタで、グランソロなどに比べると、ちょっと”地味”な感じがしますが、とてもソルらしい味わいの作品です。 譜面を見た感じではあまり難しそうには見えないのですが、実際にちゃんと弾こうと思うと、なかなか難しいことがわかります。 細部まできちんと弾くにはそれなりの能力と練習が必要でしょう。 やはりソルの作品だけに”きりっと” 弾かないと恰好が付きませんね。



ロマン派風でヴィルトーゾ的

 レゴンディの曲については前回書来ましたが、グリサンド奏法を多用してメロディを歌わせるなど、ロマン派風のエッセンスたっぷりで、なおかつヴィルトーゾ的。 難曲と言えますが、たいへん弾き映え、聴き映えのする曲です。



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レゴンディは超天才ギタリストで、8歳から演奏活動していたと言われる



 なお、13:00から一般愛好者の演奏もあり、希望すれば演奏することも出来ます。 詳細はアコラ・ホームページで
バッハ・シャコンヌ再考 13   バッハの無伴奏曲 2



和声的、対位法的なな無伴奏ヴァイオリン曲を作曲したのはバッハだけではない

 前回は、バッハ以外のバロック時代の作曲家がどのような無伴奏ヴァイオリン曲を書いていたかと言うことを書きました。 しかし実際には楽譜などの情報が少なく、検証出来たのはテレマンの「12の幻想曲」のみとなってしまいました。

 そのテレマンの作品の場合でも、無伴奏のヴァイオリンのために、バス・ラインをしっかりと確定した和声的なものや、バッハの場合と規模や質が違うにせよ、フーガなどの対位法的な作品なども含まれていました。

 つまり、バス・ラインを伴うことや、フーガを書いたと言うこと自体が、バッハの無伴奏曲の最大の特徴ではなく、同時代の他の作曲家も、そうした曲を書いていたと考えられます。




「極めて高度な和声的、対位法的な作品」 とは具体的にどういうことか

 それでは、バッハの無伴奏ヴァイオリン曲の特徴とは何かと言うことになると、たいへん難しいことになります。 一般の解説書的に言えば、 「バッハは、通常単旋律楽器である、ソロ・ヴァイオリンのために、極めて高度な和声的、対位法的な作品を書いた」 ということになりますが、では、具体的にどういうことなのかと言うことを、これから考えてゆきましょう。 



バッハしかやらなかったこととは

 また、バッハと言う人は誰にでも出来ることにはあまり興味がなく、バッハ自身しか書けない曲を書くことが自分の仕事だと考えていたふしがあります。 とすればこの無伴奏ヴァイオリン曲の中で、絶対にバッハしかやらないことを探り出せれば、バッハの音楽というものが多少なりとも見えてくるのではと思います。

 


アダージョ(ソナタ第1番)

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無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番アダージョ(音楽の友社版)




和声的な要素しかない曲

 バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番ト短調の「アダージョ」と、同第2番イ短調の「グラーベ」は曲の感じがよく似ています。 ギターでは第1番のほうもイ短調で演奏することもあり、そうなると途中の部分など、どっちがどっちだか、ますますわからなくなります。

 どちらも形としては次のフーガへの序奏的で、舞曲のように定まったリズムはなく、フーガなどのように複旋律的でもなく、言ってみれば和声法的な要素しかない曲と言えます。 




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和音と和音に挟まれる音階的なパッセージは、ほとんど拍の頭から始まらない。 また転回形(オン・コード)が非常に多いのも特徴。




ちょっと気になる3拍目の和音

 譜面はソナタ第1番ト短調の「アダージョ」のほうですが、譜面では♭が1個しかなくニ短調に見えますが、これは当時の習慣としてフラット系の短調の場合、♭を1個少なく書くからで、最初の和音を見れば分かる通り、まぎれもなく「ト短調」の曲です。


 ちょっと気になるところとしては、最初の小節の3拍目の和音(下からラ、ソ、ド)です。  普通の見ると、この「ラ、ソ、ド、」の和音は属和音の属和音、つまり 「Am7」 に見えます。 もちろん実際はそうではなく、内声部にある「ソ」は”係留音”で、この和音は係留音を含む属7の和音の転回形 ・・・・・コード・ネームで書けば  ”D7sus4/A” となるでしょう。 




一つの和声進行に二つの意味?

 そう考えると和声全体としては主和音から属7の和音に変わっただけで、ごく当たり前の和声進行となります。 でもそれにしてもだいぶ凝っていますよね、第一、この「ラ、ソ、ド」の和音、つまりD7sus4/Aは、何も低音を「ラ」にしなくても良いはず、転回形でない「レ、ソ、ド」でもよいのではないかと思います。

 もちろんそれをあえて「ラ」にしたのは、はっきりとした理由があるはず。 それはやはり最初に言った通り、この形にすると、一見”属和音の属和音 、いわゆる ”ドッペル・ドミナント” になるからでしょう。

 次の小節でははっきりと属和音、つまりD7になる訳ですが、その和音への5度進行的にも聴こえるからだろうと思います。 バッハは一つの和声進行が二つの意味を持たせたのかも知れません。 いずれにせよ、この「ラ、ソ、ド、」の和音はなにか緊迫感のようなものが感じられます。




なぜ音階は拍の頭から始まらない?

 バッハは合理性を重んじるので、仮に音価を自由にとって演奏してよい箇所でも、音符の長さは譜面上矛盾しないように書きます。  この最初の小節の下降音階の最後の2音が横棒1本多い ”64分音符” になっているのはそうしたことのためとも考えられますが、でもそれだったら音階の出だしを ”タイ” にするのではなく、そこから音階を始めてしまえば、すべて横棒3本の ”32分音符” で書けることになります。

 そう言えば他の小節でも音階部分は拍の頭からは始まらず、ほとんどの場合、音符1個分後から始まり、音階の最後の方はたいてい短い音符となっています。




和音の緊張感をいっそう高めるため

 なぜバッハは和音の間に入る音階をこのような形にしたのか、ということは皆さんもお分かりかも知れませんが、音階をリズム的に不安定なところに置くことにより、次の和音への圧迫感のようなものを作り出すことが出来るからでしょう。

 その行き着く先の和音は不協和音になっていることも多く、その和音の緊張感を、より一層高めているのでしょう。  この曲は漠然と聞いても、たいへん緊張感のある曲に聴こえますが、そうした緊張感はこのようなことから作られているのでしょう。




オン・コードが多い

 また、譜面にも書いたとおり、この曲では和音の転回形、つまりオン・コードが非常に多いということも目立ちます。 この「オン・コード」というのは結構 「クセモノ」 でポピュラー曲などのコードを耳コピーする時、このオン・コードが出てくるとよくわからなくなってしまいます(もちろん基本的には聴音力不足による)。

 結局どうにもわからなくなって楽器屋さんでコピー譜を立ち読みしたら、結局オン・コードだったなどということがよくありました。 もっとも、今はもう耳コピーなどはあきらめて、最初からコピー譜を買うか、ネットでダウンロードしてしまいます。




作曲上の制約を楽しんでいた?

  ちょっと話がそれてしまいましたが、転回形が多いということは、仮に基本のわせい進行は単純であっても、響きは複雑になります。 バッハの無伴奏ヴァイオリン曲に転回形が多いのは、1台のヴァイオリンという、演奏上の制約からでしょうが、その制約を逆手にとって、これまでにない音楽を作り出しているとも言えるでしょう。

 どうも、バッハはこうした作曲上の種々の制約を楽しんでいたふしもあるようです。 これと同様なことは、他のいろいろなケースで見られます。 これもバッハと言う音楽家の多くな特徴の一つと言えるのではないかと思います。




じゃない方のソナタ?

 バッハの 「ヴァイオリン・ソナタ」 というと、この無伴奏ヴァイオリン・ソナタの他に、チェンバロ伴奏の付いた ”無伴奏ではない” 6曲のソナタもあります。 こちらはバロック時代の典型的なヴァイオリン・ソナタ、つまり非常にオーソドックスなソナタで、たいへん美い曲です。 

 曲の内容からすれば、こちらの”正式な”ヴァイオリン・ソナタの方が人気があってもいいはずですが、しかし、多くのバッハ・ファンや音楽ファンは、耳にとってはあまり優しくない”異端児”の無伴奏ソナタを好んで聴いているようです。 この”伴奏付き”のソナタのほうも若干触れておきたいと思いますが、それはまた次回にしましょう。

 
<バッハ・シャコンヌ再考 12   バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ、パルティータ>

バロック時代の、バッハ以外の音楽家による無伴奏ヴァイオリン曲




「無伴奏ヴァイオリン曲」というと、バッハの作品しか思い浮かべられない

 言うまでもないことですが、この記事のタイトルとなっているバッハの「チャコーナ」は無伴奏ヴァイオリンのために書かれた曲です。 バロック時代の無伴奏ヴァイオリン曲というと、私たちはすぐに3曲ずつあるバッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータを思い浮かべます。 というよりほとんどそれ以外曲が浮かばないと言ってもよいでしょう。 



バロック時代に、バッハ以外にも無伴奏ヴァイオリン曲を作曲した人がいるはず

 もちろん、無伴奏のヴァイオリン曲はバッハしか作曲しなかったわけではなく、バッハが開拓したジャンルでもありません。  当然その先駆者がいたでしょうし、数は多くはなかったかも知れませんが、この時代に同種の作品もいくつか作曲されていたのは確かでしょう。

 そこで、シャコンヌの時と同じく、バッハの無伴奏ヴァイオリン曲の特徴を知るためには、同時代の作曲家による同種の曲を検証してゆく必要があるでしょう。

 いろいろ調べてみると、この時代のバッハ以外の無伴奏ヴァイオリン曲を作曲した音楽家としては、バッハの無伴奏ヴァイオリン曲に影響を与えたと言われる、ワイマール宮廷のヴァイオリニスト、パウル・フォン・ヴェストホフ(1656~1705)。  ウィーンで活躍したシュメルツァー(1623~1680)。  シュメルツァーの弟子とされ、「ロザリオ・ソナタ」で知られている、ビーバー(1644~1704)。  ヴァイスと同じくドレスデン宮廷に仕えた、ビゼンデル(1687~1755)などが挙げられます。




テレマンの「12の幻想曲」しか手元にないが

 しかし残念ながらそれらの作曲家の楽譜やCDなどは入手できず、私の手元にあるもの(楽譜、CD)としては、テレマンの「12の幻想曲」のみです。 

  比較の対象がこの作品のみでは寂しい限りですが、全くないよりはましかなということで、バッハの作品と比較してみましょう。 テレマンはその時代にはバッハよりも有名で、人気のあった作曲とされています。 テレマンの作品は当時多くの人に支持されたもので、そういった意味でも、その時代標準としては相応しいと考えられるでしょう。



バス・ラインは確保されている

 このテレマンの「12の幻想曲」はそれぞれが3つの短い楽章からなり、それぞれが演奏時間が5分前後の曲となっています。 バッハの作品、あるいはこの時代の他の作品同様、単旋律的ではあっても、バス・ラインはしっかりと確保されています。 また、対位法的に作曲されている部分も少なくありません。




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「幻想曲第1番」 バッハの作品に比べればシンプルだが、バス・ラインはちゃんと確保されている



フーガもある

 曲によっては厳密にではないと思いますがフーガ的になっている曲もあります。 つまり無伴奏のヴァイオリンでフーガを演奏するのは決してバッハの専売特許ではなかったということでしょう。 ただし、同じフーガでも規模は全く違います。



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「幻想曲第5番」 プレストのところはフーガになっている



バロック時代に一般的だったソナタや組曲の形にはなっていない

 それぞれの曲の組み合わせとしては、ゆっくりした曲と速い曲を自由に組み合わせたと言った感じで、バロック時代特有の「協会ソナタ」や「室内ソナタ」のような形は全く取っていません。 そういった意味でもテレマンの音楽は”新しい音楽”だったのでしょう。



峻厳さよりもリラックス

 全体的に見ると、バッハの無伴奏曲と同じような作曲の仕方ということも出来ると思いますが、ただその”密度”はかなりちがうものでしょう。 そうしたことは漠然とCDを聴くだけでも感じられるでしょう。 バッハの無伴奏ヴァイオリン曲には、身が引き締まるような峻厳さのようなものが感じられますが、テレマンの曲はそうしたものは一切なく、リラックスした感じです。



バッハのフーガ(BWV1001)に似ている曲も

 「幻想曲第3番」の冒頭の部分はバッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番のフーガ」にちょっと似ています。 テンポがゆっくりなので感じはちょっと違いますが、時折 「あれ?」 と思うところも出てきます。

 バッハはこのフーガ(ソナタ第1番の)が気にいっていたらしく、オルガンにも編曲し、また、バッハ自身のものかどうかははっきりしませんが、リュート用のバージョンもあります。 つまりこの音型は当時の人にとってはよく聴くパターンで、耳に馴染みやすいものだったのかも知れません。



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「幻想曲第3番」 バッハのフーガ(BWV1001)にちょっとだけ似ている



お互いに影響は与えあっていない?

 このテレマンの「12の幻想曲」は1735年頃作曲されたそうで、バッハの無伴奏ヴァイオリン曲は1720年頃ですから、この12の幻想曲はバッハの無伴奏ヴァイオリン曲に特に影響は与えてはいません。 おそらくテレマンの方もバッハの作品からは影響は受けていないでしょう。
<ひたちなかギター・マンドリン合奏フェスティヴァル>

  ひたちなか市文化会館小ホール




たいへんありがとうございました

 今日 <ひたちなかギター・マンドリン合奏フェスティヴァル>を行いました。  出演者総数100名超ということで、はたして予定通りに進行出来るかどうかという心配もあったのですが、 出演者の方々の配慮とご協力のおかげなどで、特にトラブルなくコンサートを進めることができました。 たいへんありがとうございました。


 また会場にどれくらいの方々が来ていただけるのかといったことも不安だったのですが、約300名の方々に足を運んでいただき、とても嬉しく思っています。 ご来場くださった方々、本当にありがとうございました。




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水戸ギター・アンサンブル   写真はリハーサル中のもの




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     アクアプレットロ・マンドリン・アンサンブル




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   ギター・アンサンブル・SIT  (エス・アイ・ティー)




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         音和102  (イチ・マル・ニ)




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      水戸・ジュピター・マンドリン・クラブ




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        ブリランテ・ギター・クラブ




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        アマービレ・マンドリン・クラブ




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          マルバ・ギター同好会 




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             ラ・ジュネス



 予定としましては、再来年、2017年の9~11月頃に第2回目を行いたいと思いますが、 この、ひたちなか市文化会館は大変人気のある会場で、毎月1日には多くの音楽関係者などが抽選会に詰めかけます。  実際に何月になるかは、抽選会次第となりますが、なんとか”第2回目”を実現させたいと思います。 

<ひたちなかギター・マンドリン合奏フェスティヴァル>

 10月17日(土) 13:30~  ひたちなか市文化会館小ホール
 入場無料


 出演団体

水戸ギタ―・アンサンブル
アクアプレットロ・マンドリン・アンサンブル
ギター・アンサンブルSIT
音和102
水戸ジュピター・マンドリン・クラブ
ブリランテ・ギタークラブ
アマービレ・マンドリン・クラブ
マルバ・ギター同好会
ラ・ジュネス




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いよいよ明日

 いよいよ明日ひたちなかギター・マンドリン合奏フェスティヴァルです。 出演団体9、出演者総数は100名超というコンサートで、何分今回初めての企画なので、文字通り、期待と不安と言ったところです。

 大きな混乱なくコンサートを進められるかどうかと言うことも気になりますが、やはりどれくらいの人に来ていただけるのか、ということが最も気になります。 




お待ちしています

 どうも明日は、あまり天気は良くなさそうです。雨量はそれほどでもなさそうですが、カサの袋を用意してお待ちしています。
<ホーム・ページ復旧しました>


 1週間ほど開けなくなっていたホーム・ページが、昨日復旧しました。  当初の話ではなかなかたいへんそうな感じで、しばらく日数もかかるのかなと思っていましたが、意外と早く復旧しました。 さすが創です。

 私のパソコンからは、ホームページそのものも、管理ページも全く開けなくなり、これまでの書き込みなどもすべて失われてしまい、またゼロから作り直さなければならないのかかなと思っていたのですが、 元のままで復元しています。  ・・・・・どうやってもとのデータを復元したのかな?

 復旧したホーム・ページは、開いた感じでは全く元のままなのですが、実際は今までとは別のサーバーを使ったとのことで、今度のものはセキュリティなど信頼度の高いものだそうです。 

 レッスン予定表はこれまでのものと全く同じで、空き時間表は別物に変わっていますが、見た感じはほぼ同じようになっています。
中村ギター教室ホーム・ページ故障中


 1週間ほど前から教室(中村ギター教室)のホーム・ページが開くなくなってしまいました。 何かトラブルがあっただそうです。 私にはどうしてよいかわからないのですが、創によれば、新たに作り直すしかないそうです。

 ともかく、こうした件については創頼りとなってしまいますが、再開までにはちょっと時間がかかりそうです。 空き時間や、レッスン予定は電話かメールでお願いします。
<中村俊三 ギター・コンサート>   11月29日(日)15:30  ひたちなか市アコラ

            ゲスト : 高矢研二 (恵比寿ギターショップ・カリス・オーナ)

            料金 2000円  要予約



演奏曲目 

<独奏>

ヘンデル : ラルゴ(オンブラ・マイフ ~中村編)

ジュリアーニ : ヘンデルの主題による変奏曲作品107

ソル : ソナタハ長調作品15-2

レゴンディ : 序奏とカプリッチョ作品23


<二重奏>  共演 高矢研二

カルリ : 二重奏曲ト長調作品34-2

ソル : アンクラージュマン作品34



  *同日13:00より愛好家の演奏もあります。 詳細はアコラ・ホームページで





まだフェスティヴァルも終わっていないが

 まだ 「ひたちなかギター・マンドリン合奏フェスティヴァル」 も終わっていないので、ちょっと早いかも知れませんが、11月の。私のコンサートの紹介をしておきます。

 ほぼ年に1度やらせていただいているアコラでのコンサートですが、昨年はアコラ10周年記念ということで、6月に宮下さん、谷島さんなどと出演し、その時はグラナドス、アルベニスを弾きました。 一昨年はパガニーニ・コンサート、  その前は何だったかな?  ・・・・自分で弾いた曲忘れる?



大学時代からの友人、高矢研二君と

 今年は御覧の通り、古典もの、つまり19世紀音楽に焦点を合わせていますが、それに加えて、古くからの友人である高矢研二君と二重奏をやることにしました。

 高矢君とは茨城大学のギター部以来の付き合いで、彼が入学した時、つまり1年生の時に、私が4年という関係です。 彼は入部(入部は2年生から)した時から優れた音感、技術、知識を持っていて、私など足もとにも及ばぬ感じでした。



彼が選ぶ楽器に間違いはない

 私が1974年、つまり私が”大学6年生”で、彼が3年生の時に一緒にコンサートをやりました。 私としてはこれが最初のコンサートです。 1976年に最初のリサイタルをやっているので、言ってみれば ”プレ・デビュー・リサイタル” といったところでしょうか。 その時は、前半に私の独奏を行い、後半に高矢君ともう一人の後輩(小笠原君)で二重奏を行いました。

 高矢君はその後、ギター教師、黒沢楽器などを経て、現在、東京恵比寿で ギターショップ 「カリス」 を開いています。 楽器に関しても完璧な知識と、何といっても優れた ”耳” を持っていて、彼の選ぶ楽器に間違いはありません。 楽器を買うならぜひ 「カリス」 で! 



久々に二重奏をやってみた

 今年、久々に彼が私のところに来て、 「二重奏でもやろうか」 ということになって昔一緒に弾いた曲などを何曲かやってみました。 「最近ほとんどギターを弾いていない」 と言いつつも、相変わらずの腕前でした。

 それがきっかけで、今回のコンサートとなったわけですが、確か、1986年頃に、二人で二重奏のコンサートを行っていますから、約30年ぶりとなります。




レゴンディの「序奏とカプリッチョ」

 さて、私の独奏曲のほうですが、基本的に19世紀の音楽が好きな割には、これまで本格的に取り組んだことがありませんでした。 この時代の作品には大曲が多く、ちょっと敬遠していたところもあります。

 今回の曲の中で、特にレゴンディの 「序奏とカプリッチョ」 は前から弾いてみたいとは思っていた曲ですが、以前(と言っても20年くらい前)弾いてみた感じでは、相当難しく、すぐにあきらめてしまいました。

 創(はじめ)になら問題なく弾けるのではと思い、 「この曲やってみないか」 と薦めてみたことがあったのですが、創はあまり興味がそそられなかったようでした。



フローリアン・ラルースのCDを聴いて

 その後、この曲のことはほとんど脳裏から消えていましたが、再び注目するようになったのは、当ブログでも何回か紹介したフローリアン・ラルースのCDを聴いてからです。 

 確かにこの曲は、演奏するギタリストによっては、ただ長いだけであまり面白そうに感じられないのですが、私はこの曲は弾き方次第で素晴らしい曲になるのではと思っていました。 このラルースの演奏を聴いて、それが間違いないと、確信に変わりました。



意外と私に合っているのでは?

 今年になってからこの曲をちょこちょこ弾き初めてのですが、不思議と昔感じた ”難しい曲” と言った感じはあまりしませんでした。 弾いているうちにだんだんイメージも膨らんできて、今年ははバッハの曲を中心にやろうかと思っていてのを、レゴンディを中心とした19世紀ものでゆこうと計画を変更しました。

 確かに私にはちょっと難し過ぎる曲かも知れませんが、この曲を弾いていると、いろいろイメージも湧き、 意外と ”自分に合っているのでは” と勝手に思っている今日この頃です。