<バッハ・シャコンヌ再考 24>
2拍目から始めたもう一つの理由
バッハがチャコーナのテーマを2拍目から始めた理由の一つとして、同じ和声のが2小節連続せず、なお且つ曲全体を4の累乗数にするため、あるいはテーマ、および各変奏を4小節するためではないか、ということを前回書きました。 しかしその”数合わせ” のためだけに、バッハはチャコーナをこのような始まりにしたわけではないでしょう。
バッハのチャコーナの冒頭は誰が聴いてもインパクトを感じる
バッハのチャコーナの出だしは、おそらく誰が聴いても緊張感に満ち、これから ”ただならぬ” 音楽が始まることを予感するのではないでしょうか。 そう感じる最も大きな原因としては、冒頭の不完全小節の後の第1小節目の和音(①)にあります。

和声法的には特に変わった和音ではないが、9度、減5度などの不協和音程を含む
①の和音は、ニ短調の下属和音の第2転回形に6度の音(ミ)を加えたもので、コード・ネームで書けば、 Gm6/D となるでしょうか。 Ⅳの和音、つまり下属和音には、しばしば6度の音が付加されるので、この和音は和声法的には、特に変わったものでも、またバッハ独自のものではありません。
しかし和音が転回され、バスが 「レ」 になっている関係で、上の譜例のようにバスとソプラノ間に ”長9度” 、 アルトとソプラノ間に ”減5度” という不協和音程を持ちます。 したがって、特に変わった和音ではないのもかかわらず、非常に緊張感に満ちた和音として聴こえるわけです。
5度跳躍して不協和音となる
また、その緊張間のもとになっているソプラノの 「ミ」 は、前小節の 「ラ」 から一気に5度跳躍すると言った点も、尋常でない感じに貢献しているでしょう。 言ってみれば、この和音の存在によって、私たちは強くこの音楽に弾きこまれて行くのでしょう。
バッハのチャコーナのテーマは、出だしにインパクトを与え、徐々にそれを解いてゆく ”出オチ” タイプ
この和音は次にⅤ⇒ⅠからⅥの和音(B♭メジャー)に進行します。 このⅥの和音は長和音でもあるので、冒頭の緊張感からすれば、ちょっとリラックスした感じがあります。 つまりチャコーナのテーマは非常に強い緊張感を冒頭に与えておいて、その後徐々にその緊張をほどいてゆくといった構図になっているのでしょう。
もしも・・・・・
しかし、もしこのバッハのチャコーナの冒頭が、下の譜例のように完全小節、つまり1拍目から始まるようになっていたとしたら、どうでしょうか。

やはりインパクトは弱まる
第1小節目の不協和音もそれほどインパクトを感じなくなりましたね、本来のチャコーナでは、いきなり不協和音が出てくる感じでしたが、この場合だろ、一応曲が始まってから不協和音が出てくる感じで、心の準備ができるせいか、インパクトの強い和音が出てきても、「まあ、そんなこともあるだろう」 と言った感じで、受け流してしまいそうです。
持ち上げた足をおろそうと思ったら
1拍目があるということは、それだけ安定した感じが出ますから、しっかりと両足を地面に付けた状態で、障害物に出会っても、それほど困らないわけですが、 1拍目がないということは、持ち上げた足を地面におろそうかと思ったら、足元には危険物があった・・・・ なんて感じかも知れません。
チャコーナのテーマを不完全小節の2拍目から始めたのは、不協和音のある第1小節目の1拍目により一層力点を加えるためと考えてよいのでしょう。

代表的なバロック建築のサンピエトロ寺院
動的でダイナミック、 バロック芸術そのもの
バロック芸術の特徴は、動的で、ダイナミックなもの、とされていますが、バッハのチャコーナのテーマは、まさにバロック芸術そのものといえるのかも知れません。
2拍目から始めたもう一つの理由
バッハがチャコーナのテーマを2拍目から始めた理由の一つとして、同じ和声のが2小節連続せず、なお且つ曲全体を4の累乗数にするため、あるいはテーマ、および各変奏を4小節するためではないか、ということを前回書きました。 しかしその”数合わせ” のためだけに、バッハはチャコーナをこのような始まりにしたわけではないでしょう。
バッハのチャコーナの冒頭は誰が聴いてもインパクトを感じる
バッハのチャコーナの出だしは、おそらく誰が聴いても緊張感に満ち、これから ”ただならぬ” 音楽が始まることを予感するのではないでしょうか。 そう感じる最も大きな原因としては、冒頭の不完全小節の後の第1小節目の和音(①)にあります。

和声法的には特に変わった和音ではないが、9度、減5度などの不協和音程を含む
①の和音は、ニ短調の下属和音の第2転回形に6度の音(ミ)を加えたもので、コード・ネームで書けば、 Gm6/D となるでしょうか。 Ⅳの和音、つまり下属和音には、しばしば6度の音が付加されるので、この和音は和声法的には、特に変わったものでも、またバッハ独自のものではありません。
しかし和音が転回され、バスが 「レ」 になっている関係で、上の譜例のようにバスとソプラノ間に ”長9度” 、 アルトとソプラノ間に ”減5度” という不協和音程を持ちます。 したがって、特に変わった和音ではないのもかかわらず、非常に緊張感に満ちた和音として聴こえるわけです。
5度跳躍して不協和音となる
また、その緊張間のもとになっているソプラノの 「ミ」 は、前小節の 「ラ」 から一気に5度跳躍すると言った点も、尋常でない感じに貢献しているでしょう。 言ってみれば、この和音の存在によって、私たちは強くこの音楽に弾きこまれて行くのでしょう。
バッハのチャコーナのテーマは、出だしにインパクトを与え、徐々にそれを解いてゆく ”出オチ” タイプ
この和音は次にⅤ⇒ⅠからⅥの和音(B♭メジャー)に進行します。 このⅥの和音は長和音でもあるので、冒頭の緊張感からすれば、ちょっとリラックスした感じがあります。 つまりチャコーナのテーマは非常に強い緊張感を冒頭に与えておいて、その後徐々にその緊張をほどいてゆくといった構図になっているのでしょう。
もしも・・・・・
しかし、もしこのバッハのチャコーナの冒頭が、下の譜例のように完全小節、つまり1拍目から始まるようになっていたとしたら、どうでしょうか。

やはりインパクトは弱まる
第1小節目の不協和音もそれほどインパクトを感じなくなりましたね、本来のチャコーナでは、いきなり不協和音が出てくる感じでしたが、この場合だろ、一応曲が始まってから不協和音が出てくる感じで、心の準備ができるせいか、インパクトの強い和音が出てきても、「まあ、そんなこともあるだろう」 と言った感じで、受け流してしまいそうです。
持ち上げた足をおろそうと思ったら
1拍目があるということは、それだけ安定した感じが出ますから、しっかりと両足を地面に付けた状態で、障害物に出会っても、それほど困らないわけですが、 1拍目がないということは、持ち上げた足を地面におろそうかと思ったら、足元には危険物があった・・・・ なんて感じかも知れません。
チャコーナのテーマを不完全小節の2拍目から始めたのは、不協和音のある第1小節目の1拍目により一層力点を加えるためと考えてよいのでしょう。

代表的なバロック建築のサンピエトロ寺院
動的でダイナミック、 バロック芸術そのもの
バロック芸術の特徴は、動的で、ダイナミックなもの、とされていますが、バッハのチャコーナのテーマは、まさにバロック芸術そのものといえるのかも知れません。
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