<バッハ・シャコンヌ再考 31>
ギターの編曲、演奏 2
イェラン・セルシェル

他のバッハの作品は11弦ギターで弾いているが、チャコーナはセゴヴィア編で6弦で弾いている
セルシェルはバッハを演奏する時に、自ら編曲して11弦ギターを餅て演奏するのが常なのですが、このチャコーナについては通常の6弦ギターを用い、セゴヴィア版で演奏しています。 おそらく若い頃(幼い頃?)からこのアレンジに親しんでいたのでしょう。
演奏スタイルが違うので、ちょっと聴いた感じではセゴヴィア版とは思えないのですが、よく聴くとほとんどセゴヴィア版に忠実に演奏しています。 もちろんセゴヴィアの演奏とは違って、音価も基本通りにとり、たいへんすっきりした演奏ですが、11弦の時とは違い、クールにというより、結構熱くなって演奏している感じはあります。 演奏時間も 12:17 とセゴヴィアの演奏よりも若干速めとなっています。
デビッド・ラッセル

付点4分音符は二重付点音符で演奏している
デビッド・ラッセルもパルティータ第2番を全曲編曲し、演奏しています。 ラッセルの演奏で特徴的なことと言えば、テーマの付点4分音符を二重付点音符で弾いていることでしょうか。 バロック時代にはまだ二重付点音符というものはなく、通常の付点音符として記してある音符でも、場合によっては二重付点音符として演奏する場合もあるということです。
↓ 冒頭の付点4分音符をラッセルなどは二重付点音符で弾いている

確かにバッハの管弦楽組曲第2番の冒頭のグラーヴェなどは、二重付点音符として演奏した方が良い付点音符が多く、現在の多くの演奏団体が通常の付点音符で記してある音符を二重付点音符として演奏しています。
私がやっているギター・アンサンブル(水戸ギター・アンサンブル)でも、以前ギター合奏でこの曲を演奏したことがありますが、確かに二重付点音符として演奏した方が、各パートごとの音の出が一致するので、合わせやすい感じでした。
このチャコーナでも、確かに冒頭のテーマでは、次の変奏が付点8分音符になっていることから、二重付点4分音符で弾く方が統一感で出るかも知れません。 またそうすることで、このテーマの緊張感も高まります。
第2部では通常の付点音符
しかしこれはこのチャコーナ全体に言えることではなく、冒頭および第1部の終わりと最後に出てくるテーマについてのみ言えるjことでしょう。 特に、長調になった第2部の付点4分音符も同様に弾くと、他の声部とのからみが複雑になってしまいますし、またのびやかな、リラックスした感じもなくなってしまいますから、第2部のニ長調では、記されているとおり、通常の付点4分音符で演奏されるべきでしょう。 ラッセルもそのように弾いています。
何でも中をとればよいものではないが
同じような弾き方をしているのは、ヴァイオリンではシギスヴァルト・クイケン、 ギターではフレデリック・ジガンデなどがいます。 また一方、前にお話したマヌエル・バルエコの場合は、かなり正確な長さで付点4分音符を付点4分音符として弾いています。
では、「どちらが良いのか?」 と言うことについてはたいへん難しいことですが、 理屈の方はともかくとして、個人的な感覚からすれば、バルエコのように完全に譜面通りの音価で弾くと、ちょっと間延び、緊張感が弱まる感じがします。 逆に、付点4分音符を正確に二重付点、つまり 7/4 拍とし、後の8分音符を16分音符、つまり 1/4 拍とすると、ちょっと窮屈に感じる。
そこで、私の場合、実際には両者の中間くらい、 つまり付点4分音符を ”だいたい” 5/3 拍、 8分音符を 1/3拍 くらいにしています。 なんでも ”中をとれば” よいものでもありませんが、 感覚的には最もしっくりきます。
これを行っているギタリストとしては、エンノ・フォルホースト、福田進一などがいます。 またこうした音符の長さを自由にとっているギタリストやヴァイオリニストも少なくありません。
エンノ・フォルホースト
無骨だが共感は持てる
北欧のギタリスト、 エンノ・フォルホースト はデビット・ラッセルに師事したとのことで、確かにラッセルに似たところもあります。 特に音質の重厚さなどは師譲りといったところも感じます。 冒頭のテーマの音価については、前述のとおり、通常のの付点音符と二重付点音符との中間くらいの長さで弾いています。
演奏時間は偶然にもラッセルと同じく 14:02 となっていますが、フォルホーストの場合は長い音符をより長く、短い音符をより短くと言った感じになっています。 またラッセルのように装飾音を加えるなど自由な演奏というより、”無骨” と言えるほど律義な感じで弾いています。 個人的にはたいへん共感を感じる演奏です。
福田進一

2000年録音のCD 写真は水戸芸術館でのリサイタル
大きな流れと幅で強弱を付けている
福田進一氏もチャコーナを2000年と2011年の2度録音しています。 自身の編曲と思われますが、適度に低音を追加していて、たいへん妥当性のあるものと感じます。 演奏の特徴としては大きな流れ、大きな幅で強弱を付けており、また音色の変化なども付けています。 大きな構成で曲を考えていると思われます。
2000年のものは 14:05 、 2011年のものは 12:54 と2回目の方が速く演奏しています。 特に冒頭のテーマの感じは両者でだいぶ異なります。 どちらも重厚さと軽快さを兼ね備えた演奏ですが、00年は重厚さ、11年は軽快さが優っているようです。
ギターの編曲、演奏 2
イェラン・セルシェル

他のバッハの作品は11弦ギターで弾いているが、チャコーナはセゴヴィア編で6弦で弾いている
セルシェルはバッハを演奏する時に、自ら編曲して11弦ギターを餅て演奏するのが常なのですが、このチャコーナについては通常の6弦ギターを用い、セゴヴィア版で演奏しています。 おそらく若い頃(幼い頃?)からこのアレンジに親しんでいたのでしょう。
演奏スタイルが違うので、ちょっと聴いた感じではセゴヴィア版とは思えないのですが、よく聴くとほとんどセゴヴィア版に忠実に演奏しています。 もちろんセゴヴィアの演奏とは違って、音価も基本通りにとり、たいへんすっきりした演奏ですが、11弦の時とは違い、クールにというより、結構熱くなって演奏している感じはあります。 演奏時間も 12:17 とセゴヴィアの演奏よりも若干速めとなっています。
デビッド・ラッセル

付点4分音符は二重付点音符で演奏している
デビッド・ラッセルもパルティータ第2番を全曲編曲し、演奏しています。 ラッセルの演奏で特徴的なことと言えば、テーマの付点4分音符を二重付点音符で弾いていることでしょうか。 バロック時代にはまだ二重付点音符というものはなく、通常の付点音符として記してある音符でも、場合によっては二重付点音符として演奏する場合もあるということです。
↓ 冒頭の付点4分音符をラッセルなどは二重付点音符で弾いている

確かにバッハの管弦楽組曲第2番の冒頭のグラーヴェなどは、二重付点音符として演奏した方が良い付点音符が多く、現在の多くの演奏団体が通常の付点音符で記してある音符を二重付点音符として演奏しています。
私がやっているギター・アンサンブル(水戸ギター・アンサンブル)でも、以前ギター合奏でこの曲を演奏したことがありますが、確かに二重付点音符として演奏した方が、各パートごとの音の出が一致するので、合わせやすい感じでした。
このチャコーナでも、確かに冒頭のテーマでは、次の変奏が付点8分音符になっていることから、二重付点4分音符で弾く方が統一感で出るかも知れません。 またそうすることで、このテーマの緊張感も高まります。
第2部では通常の付点音符
しかしこれはこのチャコーナ全体に言えることではなく、冒頭および第1部の終わりと最後に出てくるテーマについてのみ言えるjことでしょう。 特に、長調になった第2部の付点4分音符も同様に弾くと、他の声部とのからみが複雑になってしまいますし、またのびやかな、リラックスした感じもなくなってしまいますから、第2部のニ長調では、記されているとおり、通常の付点4分音符で演奏されるべきでしょう。 ラッセルもそのように弾いています。
何でも中をとればよいものではないが
同じような弾き方をしているのは、ヴァイオリンではシギスヴァルト・クイケン、 ギターではフレデリック・ジガンデなどがいます。 また一方、前にお話したマヌエル・バルエコの場合は、かなり正確な長さで付点4分音符を付点4分音符として弾いています。
では、「どちらが良いのか?」 と言うことについてはたいへん難しいことですが、 理屈の方はともかくとして、個人的な感覚からすれば、バルエコのように完全に譜面通りの音価で弾くと、ちょっと間延び、緊張感が弱まる感じがします。 逆に、付点4分音符を正確に二重付点、つまり 7/4 拍とし、後の8分音符を16分音符、つまり 1/4 拍とすると、ちょっと窮屈に感じる。
そこで、私の場合、実際には両者の中間くらい、 つまり付点4分音符を ”だいたい” 5/3 拍、 8分音符を 1/3拍 くらいにしています。 なんでも ”中をとれば” よいものでもありませんが、 感覚的には最もしっくりきます。
これを行っているギタリストとしては、エンノ・フォルホースト、福田進一などがいます。 またこうした音符の長さを自由にとっているギタリストやヴァイオリニストも少なくありません。
エンノ・フォルホースト
無骨だが共感は持てる
北欧のギタリスト、 エンノ・フォルホースト はデビット・ラッセルに師事したとのことで、確かにラッセルに似たところもあります。 特に音質の重厚さなどは師譲りといったところも感じます。 冒頭のテーマの音価については、前述のとおり、通常のの付点音符と二重付点音符との中間くらいの長さで弾いています。
演奏時間は偶然にもラッセルと同じく 14:02 となっていますが、フォルホーストの場合は長い音符をより長く、短い音符をより短くと言った感じになっています。 またラッセルのように装飾音を加えるなど自由な演奏というより、”無骨” と言えるほど律義な感じで弾いています。 個人的にはたいへん共感を感じる演奏です。
福田進一

2000年録音のCD 写真は水戸芸術館でのリサイタル
大きな流れと幅で強弱を付けている
福田進一氏もチャコーナを2000年と2011年の2度録音しています。 自身の編曲と思われますが、適度に低音を追加していて、たいへん妥当性のあるものと感じます。 演奏の特徴としては大きな流れ、大きな幅で強弱を付けており、また音色の変化なども付けています。 大きな構成で曲を考えていると思われます。
2000年のものは 14:05 、 2011年のものは 12:54 と2回目の方が速く演奏しています。 特に冒頭のテーマの感じは両者でだいぶ異なります。 どちらも重厚さと軽快さを兼ね備えた演奏ですが、00年は重厚さ、11年は軽快さが優っているようです。
スポンサーサイト