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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

<中村ギター教室発表会  7月3日(日) 開演14:30  ギター文化館  入場無料>



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7月3日、石岡市ギター文化館で行う中村ギター教室発表会の演奏曲目などがだいたい決まりましたので、お知らせいたします。 次のとおりです。




ソル : 第一歩(二重奏曲)
ワルカー : 小さなロマンス
マッカートニー : レット・イット・ビー
河は呼んでいる
ルスティケリ : 鉄道員
アルバ : ハバネラ
シューマン : 楽しき農夫
ゴセック : ガヴォット
サルコリ : タランテラ
武井守成 : 軒訪るる秋雨
イギリス民謡 : グリーン・スリーブス
ルビラ : 禁じられた遊び
マルサグリア : 白鳥の歩み
ショパン : ノクターン
ジュリアーニ : ソナチネ
ソル : ギャロップ
モッツアーニ : ラリアーネ祭
ナルバエス : 「牛を見張れ」によるディファレンシャス
タレガ : ラグリマ
タレガ : アデリータ
タレガ : アランブラの想い出
バッハ : メヌエット
ラモー : メヌエット
フェレール : 水神の踊り
カルカッシ : カンション・イタリアーナ
ジュリアーニ : 春の日の花と輝く
横尾幸弘 : ブランテルの子守唄
バリオス : ワルツ第3番
グラナドス : スペイン舞曲第5番
ラウロ : ラ・ネグラ、 ガティーカ
ポンセ : エストレリータ




3曲ほど ”かぶって ”しまったが

 今のところは、以上のとおりです。 今回は昨年よりも出場者は若干多めです。 また特に今回、同じ曲を二人の人が弾く、”かぶり” が3曲(ラグリマ、小さなロマンス、アランブラの想い出)ほど出来てしまいましたが、レッスンで同じ教材を使用しているので、やむを得ないところと思います。



自分の曲が決まっていない

 まだ発表会までに1カ月ほどありますので、変更になったり、追加になったりすることはあると思います。 実は、私が弾く曲がまだ決まっていません。 リサイタルが終わったところで、このところ練習をさぼっていて、もう少ししたら決めようと思っています。

 自作を1曲弾くことは、決めているのですが、その曲がまだ出来ていません。 発表会までには2~3曲程度作って、その中から選びたいと思っています。

 入場無料ですので、聴きに来ていただければ幸いです。 なお、開演は 14:30 に変更いたします。
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11,000円、熊本地震義援金として日本赤十字社に送金しました。 ありがとうございました。


 昨日行った文化館での私のリサイタルで、同会場で中古CDの販売を行いましたが、その総売り上げ 11,000円を、今日午前中に水戸市石川郵便局より、熊本地震義援金として、日本赤十字社に送金いたしました。  ご協力いただいた方々、たいへんありがとうございました。



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ガスの販売店からすぐ電話があった

 先ほど茨城県でも地震がありました。 突然 ” ゴー  ドカン ” といった感じで揺れましたが、近いけど、それほどは強くはないかなと思いました。 でもガス(プロパン)が止まり、外に出て復帰ボタンを押したのですが、また止まり、そうしたらガスの販売店からすぐ連絡があり、復帰の仕方を教えてくれました。

 すごいですね、私の家のガスが止まったことも、復帰ボタンを押したことも、また止まったことも、販売店のほうですべてわかるのですね。   ・・・・・・確かに以前そのようなことを説明してくれたような。  
<中村俊三ギター・リサイタル ~19世紀のギター作品>

5月15日(日)   ギター文化館




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たいへんありがとうございました

 今日 「19世紀のギター作品」 と題したリサイタルを石岡市ギター文化館で行いました。 ご来場下さった方々、たいへんありがとうございました。 昨年のこの時期には 「ギター名曲コンサート」 をひたちなか市文化館で行い、曲目もポピュラー系、およびクラシック・ギターの代表的な曲など、誰にでも親しんでいただけるプログラムで演奏しました。

 今回のリサイタルは、昨年のコンサートとはだいぶ違い、19世紀前半と、ターゲットを絞った企画で、聴きなれない曲が多いと感じた人も多かっと思います。 それにもかかわらず、たくさんの方々に来ていただきました、本当にうれしく思っています、ありがとうございました。

 19世紀前半と言えば、音楽史的には古典派時代から初期ロマン派にかけてということで、クラシック・ギターの中でも、さらにクラシッカルな内容と言え、また本格的にギター音楽が花開いた時期とも言えます。 古い時代の音楽とは言え、これらの曲は基本的には馴染みやすい音楽ですので、こうした機会をきっかけに、さらに多くの人に親しんでいただければと思います。



自分でもあまり演奏してこなかった

 リサイタルの時 「この時代の作品は、少し前まではあまり演奏されなかった」 といったことを言いましたが、実は私もこれらの作品をこれまであまり積極的には演奏してなく、もちろんこうした19世紀の作品のみの企画も初めてです。

 初めての企画なので、ちょっと曲目も欲張り過ぎた感があり、いまこうしてキーボードを叩いていても、腕や、肩など、あちこち痛い感じです。 反省点など数々ありますが、また勉強しなおして、次回はさらに楽しめる内容のコンサートを行いたいと思います。

 今回は楽器もヘルマン・ハウザーと、高橋達男さんの楽器を使いました。高橋さんの楽器はヴィヴラートなどもよくかかり、特にソルのハ短調の 「ラルゴ・ノン・タント」 は曲の感じにたいへんよく合っていたように思いました。 演奏者自身が言うのも何ですが。音の消え去るところがとても美しかったように思います。



アンコールは 「アランブラ」 と自作の 「ショリーニョ」 

 アンコール曲としてはタレガの 「アランブラの想い出」 と私のオリジナル(第1作)の 「ショリーニョ」 を演奏しました。 ショリーニョはブラジルの音楽の 「ショーロ」 風に書いたものですが、”裏コード” や 「オルタード・ドミナント・スケール」などを使用し、最近のアコースティック・ギター的でもあります。 自分で作った割には弾くのが難しくなり、若干、弾ききれてないところがあったのが残念です。

 2曲目のアンコールが終わっても席を立つ人がいなくて、もう1曲弾きべきとは思いましたが、残念ながらその体力、集中力は残っていませんでした。



中古CD総売り上げ11000円、赤十字社に送金します  ご協力ありがとうございました

 中古CDの販売につきましては、30枚とも完売となりまして、総売り上げ11000円となりました。 明日(月曜日)にゆうちょ銀行より赤十字社に送金する予定です。 ご協力いただいた方々、本当にありがとうございました。


<中村俊三ギター・リサイタル ~19世紀のギター作品>

 5月15日(日) 14:00   石岡市ギター文化館



当日会場内で、中古CDチャリティ販売(300~500円)


 5月15日のリサイタルで、会場内で中古CDの販売を行い、その売上金をすべて熊本地震の義援金として寄付することにしました。 価格は一点につき、300円~500円 で2~3枚組のものは500とします(1点のみ200円)。 合計30枚ほどで、クラシック・ギター、および一般クラシック音楽のCD。 次のようなCDが販売対象です。


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<ギター関係>

ジュリアン・ブリーム  :  ギターラ(2枚組)  ムダーラ、サンス、ソル、アグアード、タレガ、、アルベニス、グラナドス、ロドリーゴ他
   同  :  ギター協奏曲(アランフェス、ヴィラ=ロボス) 5つの前奏曲(ヴィラ=ロボス)
   同  :  アルベニス、グラナドス
   同  :  バロック・ギター(2枚組)  バッハ、ヴァイス、ヴィゼー、スカルラッティ他
   同  :  ロマンテッィク・ギター  大ソナタ(パガニーニ~本日演奏曲)、メンデルスゾーン、シューベルト他
   
ブリーム&ウィリアムス  :  ギター・デュオ・ライブ  ソル、ブラームス、フォーレ、ドビュッシー他
   同  :  世紀のデュオ第2弾  カルリ、ジュリアーニ、アルベニス他

ウィリアムス  :  バロック・アルバム  シャコンヌ(バッハ)、テレマン、ヴァイス、スカルラッティ他
   同  :  スペイン・ギター名曲集  アランブラの想い出、アストゥリアス、セビージャ他

イエペス :  スペイン・ギター名曲集  禁じられた遊び、アランブラの想い出、朱色の塔他

    *他、ジュリアーニの作品など




<一般クラシック>

カラヤン  :  交響曲第5,6番(ベートヴェン) デジタル録音
  同    :  交響曲第4番(ブルックナー)
  同    :  交響曲第7番(ブルックナー)
  同    :  交響曲第82~87番(ハイドン)  2枚組

ワルター  :  交響曲第36番、39番(モーツァルト)
ベーム   :  交響曲第35、36、38番(モーツアlルト)
クレンペラー : 交響曲第25、38、39番(モーツアlルト)
バーンスタイン : 交響曲第5番(マーラー) ウィーン・フィル盤
グールド  :  6つのパルテータ(バッハ)他

 *他、(弦楽四重奏)ハイドン、 ピアノ協奏曲(チャイコフスキー、ラフマニノフ)などのCD



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お一人様2点まで、よろしくお願いします

  これらは、私が全集などを買った時に、以前にバラで買ったものが重複してしまったものです。 私個人的にはたいへんよく聴いたCDで、思い入れも強く、いずれも名盤です。 当初は、聴きに来ていただいた方に差し上げようかと思ったのですが、 熊本で大きな地震が起き、被害を受けた方々に、多少なりとも役立てていただこうかと、皆さんに寄付をお願いしようと思います。

 完売となれば、約1万円ほどになりますが、赤十字社などを通して義援金としたいと思います、よろしくお願いします。  なお、恐縮ですが、お一人様2点までとさせていただきます。

<中村俊三ギター・リサイタル ~19世紀のギター作品>


使用楽器


ヘルマン・ハウザーⅢ 1983年




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代々引き継がれて?

ヘルマン・ハウザーと言えば、何といってもアンドレス・セゴヴィアが長年使っていた楽器です。 もちろんセゴヴィアが使っていたのはハウザーⅠですが、セゴヴィアの高弟で、私の師でもある松田晃演先生も、一時期ハウザーⅡを使用していました。 そして私もこハウザーⅢを使い始めて30年近くになります。

 この流れからすると、私の生徒さんの誰かはハウザーⅣを使うことになるのかな? 今のところそんな生徒さんはいなそうですが。

 私の場合、特にハウザー党というわけではなかったのですが、一時期、楽器に迷ったことがあり、何だかんだと、この楽器にゆきついてからは、他の楽器に目移りもせず、ずっとこの楽器を使っています。 時にはもっと別の楽器がいいかなと思うことがあっても、結局のところ、やはりこの楽器の方が自分のイメージを最も忠実に反映してくれるように思い、買い替える気にはなりませんでした。

 几帳面で、若干性格の ”きつい” ところもあるが、私の気持ちなどは、他の誰よりもわかってくれる奥さん   ・・・・・・・なんてところでしょうか (現実の家内は、全くそう言うタイプではありません、因みに)。



やや硬めだが、遠くまで音が届く

 このハウザーは他のハウザーに比べ、高音が良くでるのですが、その分、音色がちょっと硬めで、しっとり感はあまりありません。 低音もよく出ますが、ちょっと軽めで、重厚とか、拡がる感じはありません。 

 最も特徴的なのは、中音、つまり1~3弦のロー・ポジションがよく出るところでしょうか。 他に私が使っているポール・ジェイコブスンなどに比べると、特に音量が大きいという訳ではありませんが、音が硬質な関係で、音が遠くにまで伝わりやすいようです。 ホールなどの後ろの方で聴くと、ジェイコブスンより、このハウザーの方がよく聴こえます。



実力さえあれば、たいへん美しい音が出る

 音色が固め、ということは音がクリヤーとも言え、解像度は高いのですが、柔らかく、美しい音を出すのはなかなか難しい楽器です。 しかし技術が高ければ、確かに美しい音が出ます。 この楽器は創(はじめ=長男)も、小学生の頃使っていたこともありましたが、その頃はなかなかよい音は出せませんでした。

 その後パリに留学し、一時帰国したとき、ちょろちょろと弾いたその指からは、これまで聴いたことのないような、透明感のある、とても美しい音が聴こえてきました。 その頃はリタイヤ直前で、意欲を全くなくしていた時でしたが、それでも、力のほうは順調に付いていたのかも知れません。

 また、私の生徒さんの、Tさんがこの楽器を弾くこともありますが、Tさんもこの楽器でたいへん美しい音を出します。 要するに本当に実力のある人だけが、この楽器から美しい音が出せるようです。  ・・・・・私の場合はどうかな?



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特にネックの裏側の塗装がかなり痛んでしまった、まさに歴戦の跡。


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表面版にもだいぶキズが付き、弦の穴も拡がってしまった。



酷使され、ボロボロになってきた

 私の考えでは、楽器を大事にするということは、ともかくなるべくたくさん弾くことだと思っています。 その結果、この楽器も約30年間にわたり酷使に酷使を重ね、塗装などボロボロになってきました。 フレットも1度打ち直したのですが、また相当すり減ってしまいました。

 そこで、このリサイタルが終わったら、これまでの労をねぎらう意味で、塗装などを中心にメンテナンスを行いたいと思っています。 そして ”栄光の傷跡” ということで、特に塗装が痛んだネックの裏側の写真を撮っておきました。 メンテナンス後はきれいになっていると思います。









高橋達男  2015年


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ソルとメルツの3曲演奏

 今回のプログラムのうち、ソルの「ラルゴ・ノンタント」、「ソナタハ長調」、 メルツの「愛の歌」 の3曲は県内のギター制作家、高橋達男さんの楽器を使用します。 この楽器はギター文化館所蔵のアントニオ・トーレスの採寸で作った楽器だそうですが、構造などは高橋さんのオリジナルだそうです。



19世紀楽器風で、押さえやすい

 モデルとなったトーレスが19世紀ギター風なので、この高橋さんの楽器も19世紀楽器風の音が出ます。 高音は軽めですが、低音などは逆に重量感があります。 こうした19世紀の音楽には向いているのではと思います。

 またたいへん押さえやすく、ソルのラルゴなど、ハウザーでは音を出すのに結構苦労するのですが、その点、この楽器で楽に出ます。 この楽器を使用するということを前提に、ラルゴをプログラムに入れたとも言えます。
<中村俊三ギター・リサイタル ~19世紀のギター作品>

 5月15日(日) 14:00   石岡市ギター文化館




ヨーゼフ・カスパル・メルツ : 愛の歌




ナポレオン・コストと比較される

 ヨーゼフ・カスパル・メルツ(1806~1856) は現在のチェコ出身のギタリストです。 ナポレオン・コスト(1805~1883)と並んで、かつては ”ギターの衰退期” といわれた19世紀の半ばに活躍しました。 生まれがほぼ同じなので、いろいろな面で、このナポレオン・コストと比較されます。

 この二人のギタリストは同じ時代を生きただけに、その作風は対照的でもあります。 ソルの後継者とも言われ、対位法や和声法にこだわり、内声部などを緻密に作曲したコストに比べ、メルツはより聴衆にアピール出来るように華やかでヴィルトーゾ的な作品を残しています。



ジュリアーニ派?

 コストはソルに直接師事し、ソルの影響がその作品に表れています。 一方、メルツは直接師事したわけではありませんが、強いて言えばジュリアーニの音楽に近いところもあり、コストがソルの継承者なら、メルツはジュリアーニの継承者といった感じもあります。

 ソルとジュリアーニの関係が、そのままコストとメルツの関係に引き継がれているとも言えます。 因みにメルツとコストは親交がありましたが、ソルとジュリアーニは、ほぼ同時代ながら、特に親交はなかったようです。



出版当時から人気があった

 この 「愛の歌」 は 「吟遊詩人の調べ作品13」 に含まれます。 この 「吟遊詩人の調べ作品13」 は出版(1846年)と同時にたいへん人気が出たらしく、後から曲が追加され、最終的には30曲となっています。 難しさなどが手頃で、プロ・ギタリストでも、アマチュアでも弾けると言った点が人気ポイントだったのでしょう。 もちろん今現在でもよく演奏されます。

 メルツの演奏会用の曲は低音弦を追加した10弦、あるいは11弦ギター用となっていますが、この吟遊詩人の調べに関しては、すべて通常の6弦ギターとなっています。 なるべく多くの愛好者を対象としたためでしょう。 「愛の歌」 はこれらの30曲の中で最も人気のある曲で、熱く愛を語る曲となっています。






ジュリオ・レゴンディ : 序奏とカプリッチョ作品23



8歳でデビューした天才ギタリスト

 ジュリオ・レゴディ(1822~1872)と言えば、画像のとおり、子供がギターを弾いている絵でお馴染みだと思います。 名前はイタリア人ぽいですが、スイスに生まれ、主にロンドンで活動しました。 8歳の頃から演奏活動を始めたという、まさにギター天才少年といったところです。

 レゴンディの幼少期、おそらく演奏会デビューした8歳前後の肖像画は何種類か、残されています。 しかしレゴンディは50歳まで生きていて、演奏活動も40代まで続けていたわけですから、当然青年期や熟年期のレゴンディも存在したわけで、それらの30代や40代の肖像画もあってよいはずですが、それらを見たことがありません。  


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レゴンディの肖像画はいくつかあるようだが、すべて幼少期のものとなっている。 40代くらいまでは演奏活動していたはずだが。




現在入手出来る作品はごくわずか

 レゴンディは演奏が主で (「コンサーティーナ」と言う楽器も演奏していたと言う)、 作曲はあまりしなかったと言われています。 しかしこの作品は ”作品23” となっっているわけですから、それなりに作品数もあったとは思いますが、今現在入手出来るのは作品19~23までの5曲と、 「10の練習曲」 のみです。



フレット上を駆け回る

 この「序奏とカプリッチョ」 はホ長調の序奏と、ホ短調のテーマをもつロンド形式のカプリッチョからなります。 曲全体に左手がローポジションからハイポジションまで激しく移動するのが特徴でしょう(多くの場合グリサンド奏法を伴う)。 この時代を反映した和声が用いられていますが、アルペジオが多用され、対位法的にはシンプルで、メルツの作風に近いと言えます。

 サンサーンスのヴァイオリン名曲 「ロンド・カプルチョーソ」 を彷彿させる感じがあり、ロマン派の音楽の香り高い曲で、聴きごたえ十分の曲となっています。  作曲年代などは不明ですが、状況からすれば、かなり幅を持った1850年前後、だいたいメルツの「愛の歌」と近い年代と考えられるでしょう。
<中村俊三ギター・リサイタル ~19世紀ギター作品>

5月15日(日)14:00~  石岡市ギター文化館




19世紀の作品は古典派とロマン派に分けられる

 今回のリサイタルは19世紀前半頃のギター作品ということで、5人のギタリストの作品を演奏する訳です。 時代もだいたい同じと言うことで、これらのギタリストの作品の内容は、近いところもあるのですが、 音楽史的に言うと、 「古典派音楽」 と 「ロマン派音楽」 に分けられます。

 この「古典派」 と 「ロマン派」 の違いは、「ルネサンス音楽」と「バロック音楽」、あるいは「バロック音楽」と古典派」のように、はっきりと音楽の構造が変わるわけではなく、「ロマン派音楽」は「古典派音楽の延長、あるいは発展形と言えます。



古典派とロマン派は基本的には同じ

 交響曲や協奏曲、ソナタなどの音楽形態、ソナタ形式などの楽式、和声法といったものは、基本的にほぼ同じで、表現する内容などが変化していったと言えます。 とは言っても初期のハイドンの交響曲と後期(末期)にあたるマーラーの交響曲ではだいぶ違います。



ベートーヴェンの没年をもって

 それだけに、その ”線” をどこに引くのかと言うことは難しく、早い説で1800年、遅いものではベートーヴェンの没する年である1827年などとなっています。 バッハが没した1750年をバロック時代の終焉の年とするのはほとんどの音楽学者の共通した考えで、これは1750年と区切りがよいのが大きな理由ですが、それ以上にバッハの功績を讃えてと言った意味もあると思います。

 ベートーヴェンの没年は1827年と、ちょっと区切りが悪いのですが、やはりベートーヴェンの功績を讃えて、1827年を古典派の終焉とする場合が多いようです。 どちらにしてもその境界は19世紀初頭にあり、少なくとも1830年以降の音楽は、ハイドン、モーツァルトの音楽とは一線を画しています。


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バッハの没年をもってバロックと古典派が分けられるように、ベートーヴェンの没年をもって古典派とロマン派が分けられる。 偉大な音楽家は音楽史を創る。



ジュリアーニは古典派で、パガニーニはロマン派?

 ギターの方でもその線引きは難しく、ソルやジュリアーニは間違いなく古典派のギタリストとされ、その流れからいって、ジュリアーニとは一つ違いのパガニーニの音楽も当然古典派とされるのですが、場合によってはパガニーニはロマン派に属するとされたりします。 これはその年代といより、作品の内容を考慮してのことでしょう。

 なお、その主な活動が1830年以降となるレゴンディとメルツについては、異論なくロマン派のギタリストとされています。 作風もソルやジュリアーニとはだいぶ違います。



プログラム前半は古典派、後半はロマン派

 そう言った訳で今回のリサイタルは私の意図としては、プログラムの前半は古典派の作品、後半にはロマン派の作品を配しました。 同じ19世紀の作品でも前半と後半ではテイストが少しちがうと思います。 ・・・・・以前の話 (当ブログ「プログラムの作り方」)的には、前半は魚料理、後半は肉料理といったところでしょう。






パガニーニ(1782~1840) : 大ソナタイ長調  Ⅰ.アレグロ・リゾルート  Ⅱ.ロマンス  Ⅲ.アンダンティーノ・バリヤート


パガニーニの話は何度か書いているが

 さて、後半の最初の曲は、パガニーニの 「大ソナタイ長調」 です。 前述のとおり、この曲が古典派に属するのか、ロマン派かということは、はっきりしませんが、旋律中心で、比較的自由な感じになっているので、古典派というより、ロマン派と言った方が似合うのではないかと思います。

 このパガニーニについては、私個人的にもたいへん興味のある音楽家で、当ブログでも何度か書いていますが、一応かいつまんで書いておきましょう。 パガニーニはギタリストというより、ヴァイオリニストとして一般には知られています。 有名な曲としては6つのヴァイオリン協奏曲や、ヴァイオリン・ソロの「24のカプリース」などがあります。 

 リストの有名なピアノ曲「カンパネラ」はパガニーニのヴァイオリン協奏曲第2番からで、タレガ他、多くの音楽家が変奏曲のテーマとして用いている「ベニスの謝肉祭」もパガニーニの作品です。




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「悪魔に魂を売って超絶技巧を身に付けた」 などといったことが、まことしやかに語られた伝説のヴァイオリニスト、ニコロ・パガニーニ




ギターを含む作品を多数書いている

 一般には、パガニーニがギターも演奏し、多くのギター曲を作曲していたことはあまり知られていませんが、ギター独奏曲を始め、ギターとヴァイオリンの二重奏曲、ギター四重奏曲などギターを含む室内楽などかなり多数のギターを含む作品を残し、また出版しています。

 その中では、パガニーニがヴァイオリンもギターも弾いたということで、当然のなりゆきかも知れませんが、ヴァイオリンとギターのための作品が最も多く書かれ、また出版されています。 ヴァイオリン独奏と言えば、通常はピアノ伴奏となるのですが、パガニーニの場合、ほとんどがギター伴奏となっています。 こうしたヴァイオリニスト、あるいは作曲家は極めて稀なのではと思います。



ギターとヴァイオリンの役割が通常の逆

 この 「大ソナタイ長調」 もそれらの曲の一つですが、ただ他の曲と違っているのは、通常のケースとは逆にギターが主で、ヴァイオリンが伴奏となっている点です。 タイトルも 「ギターとヴァイオリンのためのソナタ」 ではなく、 「 ”ヴァイオリン助奏付き” のギターのための大ソナタ」 となっています。



パガニーニがギターの方を弾いたと言われる

 ギター・パートは、譜面のとおりこれだけでも十分に独奏曲となるくらい充実したものですが、ヴァイオリン・パートはかなり控えめになっています。 この地味なヴァイオリン・パートをパガニーニが弾いたとは考えられず、この曲に関しては、パガニーニはおそらくギターの方を弾いたのではないかと言われています。 ・・・・・実際の記録などはなく、推測でしかないが。



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大ソナタのギターのパート譜。 これだけでも演奏出来るが、私の場合、若干音を加えて演奏している。 ジュリアン・ブリームやジョン・ウィリアムスなども同様。




 一方、その ”地味” なヴァイオリンを弾いたのは、通常、ギターを担当しているギタリストの方と考えられます。 イタリアのギタリスト、ルイジ・レニャーニではないかという説もありますが、これも確証はありません。


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かなり地味なヴァイオリン・パート。 確かに誰でも弾けそうだが、逆にパガニーニがこれを弾くのは結構辛いだろう。



明快に、きびきびと 

 今回のリサイタルでは、基本的には、そのギター・パートを弾くのですが、このままだとやはり和声的に寂しいので、ヴァイオリン・パートを参考に若干音を付け加えています。 第1楽章は 「アレグロ・リゾルート」 となっていますが、このリゾルート(risoluto)は「果断な」 とか 「決断力のある」と言った意味のようです。 明快にきびきび弾くべき、といったことなのでしょう。

 作曲年代は、ほぼジュリアーニの曲と同じですが、ジュリアーニに比べ、かなりメロディックになっていて、確かに、古典派というよりは、ロマン派といった感じです。 なお、原曲にその指定はありませんが、後半部分(再現部の前)に私自身で作ったカデンツァを挿入して演奏します。 カデンツァとは終止形といった意味もありますが、ここでは協奏曲などの最後のほうで、ソリストが自由に演奏する部分を言います。



シチリアーナ風のロマンス

 第2楽章は「ロマンス」となっていて、シチリアーナ風の憂いを帯びたメロディの曲です。  そのメロディは②弦で弾くように指定されており、グリサンド奏法なども交え、たっぷりと歌わせるようにといった意味合いでしょう。 この曲には途中、カデンツァの指示があり、ここでも私が作ったカデンツァを演奏します。 

 このロマンスは中級程度の教材としても用いられますが、美しく、情感を込めて弾くのは決して易しくはありません。 それが出来れば、立派に ”上級者” といえるでしょう。



3楽章で20分以上かかる大曲

 第3楽章は「アンダンティーノ・バリヤート」 となっていて、アンダンティーノのテーマに6つの変奏が付いています。 アンダンティーノとはなっていますが、「アラ・ブレーヴェ」、つまり2分の2拍子なので、軽快な感じとなるでしょう。 最後は消えてゆくように終わります。 3の楽章で、合わせて20数分ほどかかる、ギター独奏曲としてはかなりの大曲に属するでしょう。

<第11回シニア・ギター・コンクール>

  5月4日 石岡市ギター文化館




本日ギター文化館で第11回シニア・ギター・コンクールが行われました。 その結果を報告します。



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シニアの部(55歳以上)

第1位 鈴木幸男(茨城県)
第2位 上原和男(千葉県)
第3位 黒田公子(埼玉県)


ミドルの部(35~54歳)

第1位 廣岡甲太郎(群馬県)
第2位 吉岡信夫(埼玉県)
第3位 松田利枝(滋賀県)





 シニアの部の鈴木さんはコストの 「オートゥイユの夜会」 をたいへん表現力豊かに演奏しました。 コストの音楽の魅力を十分に示したと思います。

 上原さんのアルベニスの「マジョルカ」は、中間部こそ若干の動揺が見られたものの、メロディをしっかりと歌わせるなど、アルベニスの音楽の魅力が十分に伝わってきました。 編曲もなかなか良かったと思います。

 黒田さんのダウランドのファンタジーもたいへんすぐれ、音も美しく、声部の弾き分けもよく出来ていました。 




 ミドル・エイジは、審査委員の判断で今回は予選通過が4名となりました。 1位の廣岡さんはアルベニスの「マジョルカ」とモンテスの「別れのプレリュード」を演奏しました。 ほぼ満票で1位となり、非常に実力の高い人と思いますが、マジョルカでは運指などにも若干の疑問が残り、編曲譜だけでなく、原曲についても十分に考慮していただきたかったと、個人的には思います。 

 2位の吉岡さんはホセ・ビーニャスの「独創的幻想曲」を演奏しました。 和音のバランスもよく、不協和音程の解決なども自然でしたが、アルペジオ部分で普段通りでなくなってしまったのが(おそらく)、若干惜しまれます。

 3位の松田さんクレンジャンスの 「ラ・ミラレーゼ」 とメルツの 「愛の歌」 を演奏しましたが、「次は別の曲で出場したら」 という藤井審査委員の話もありました。




 今回はシニア・エイジが32名、 ミドル・エイジが10名と、その差はますます広がる感じで、来年からはcategoryに関して、大幅な変更となり、 70歳以上、 60~69歳、 25~59歳、 24歳以下 の4つカテゴリーとなります。  詳細についてはギター文化館のホーム・ページを見て下さい。






 余談ですが、毎年当コンクールの審査委員を務めていただいている宮下祥子さんが昨年11月のご結婚なされたそうです。 おめでとうございます。 



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昨年の11月にご結婚なされた宮下祥子さん(審査委員控室で)。 お相手の方は ”一般人男性” で、現在の本名は宮下ではありませんが、今後も活動は ”宮下祥子” でなさるとのこと。 とても幸せそうな笑顔ですね。 重ねて、おめでとうございます。

中村俊三ギター・リサイタル ~19世紀のギター作品

 5月15日(日) 14:00~   石岡市ギター文化館





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マウロ・ジュリアーニ (1781~1829)

 前回はギターの歴史を大ざっぱに書いておきましたが、今回はリサイタルで演奏する曲の作曲家と、その曲について書きます。 まず、マウロ・ジュリアーニですが、 協奏曲、ソナタ、変奏曲など演奏会用の作品の他、練習曲もたくさんあり、皆さんも弾いたことがあるかも知れません。



典型的な速弾きギタリスト

 その演奏会用作品はもとより、初級用の練習曲に至るまで、ほとんど16分音符で書いてあったり、アレグロなど速めのテンポの指示があったりなど、指定のテンポで弾くのはなかなか難しいものが多くなっています。 間違いなくジュリアーニは速弾きのギタリストだったのでしょう。


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初級用の教材と考えられるが、初級者にとっては16分音符的に弾くだけでも難しく、なおかつアレグロは不可能


 ジュリアーニは1781年にビシェーリというイタリア南部の小さい都市に生まれ、バレッタ、ボローニャなどでギター、および音楽を学んだようですが、イタリア時代のジュリアーニについては、あまりよく知られていません。



ウィーンで活躍、ベートーヴェンなどの知遇を得る

 1806年にウィーンに出、1808年に協奏曲(ギター協奏曲第1番イ長調)を発表し、ウィーンの音楽界で高い評価を受け、以後⒑数年間この地でギタリストとして活動します。

 ジュリアーニはどちらかと言えば、社交的な人だったらしく、ベートーヴェンやフンメルなどギタリスト以外の音楽家ともしたしくなったようです。 ベートーヴェンの第7交響曲の初演に加わった話はよく知られていますが、実際に何の楽器で加わったのかは不明なようです(もちろんこの交響曲にギター・パートはない)。



協奏曲や室内楽も

 そうした関係上、ジュリアーニのウィーン時代には3つの協奏曲を始め、室内楽やヴァイオリン、フルートなど、他の楽器との二重奏曲の作品が多数あります。 私個人的には、独奏曲よりもそうしたアンサンブル曲の方が優れているように思います。 協奏曲など、ぜひ弾いてみたいと思うのですが、残念ながらそうした機会を持つのは難しでしょう。



ロッシーニ関係の曲も多い

 1820年頃からイタリアに戻り、演奏、作曲活動を続けるわけですが、この1820年前後というのはヨーロッパ中にロッシーニ・フィーバーというか、ロッシーニの嵐が吹き荒れ、その影響で ”6つのロッシニアーナ” など、ロッシーニ関係の曲が多くなります。 おそらく一般の評判も良かったのでしょう。






ヘンデルの主題による変奏曲作品107

 テーマはヘンデルのチェンバロ組曲第5番ホ長調の第4曲「アリア」からとられていますが、この曲は「調子のよい鍛冶屋」としてピアノの名曲としても知られています。 どこかで聴いたことがあるという人も多いのではないかと思いますが、親しみやすく、本当に初めて聴いた人でも聴いたことがあるような気になるのではと思います。

 原曲はテーマ(アリア)と5つの変奏からなりますが、ジュリアーニの曲ではテーマと6つの変奏で出来ています。 テーマは原曲とほぼ同じですが、変奏の方は原曲とは関係なく、ジュリアーニの作曲となっています。 ジュリアーニの作品としては、比較的弾き易い曲と言えるでしょう。






大序曲作品61

 この時代、ソナタ形式で書かれた単一の楽章を ”序曲” と呼ぶ習慣がありました。 この曲も特に何かオペラや劇などの序曲という訳ではありませんが、こう名付けられています。 ”大(grande)” という言葉が添えられていますが、曲が特に長いと言う訳ではなく、華やかで、技巧的ということで付けられているのでしょう。  

 この曲は、確かにジュリアーニらしくスピーディーな指の動きと、盛り上げるための音量などが要求される曲といえるでしょう。 ジュリアーニの作品の中ではたいへん人気のある曲で、今日でもよく演奏されます。 またジュリアーニ自身も自分の代表作の一つと考えていたようです。


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大序曲の盛り上げどころ。 音量とスピードを両立させるのはたいへん難しい。


 アンダンテ・ソステヌートの序奏部と主部のアレグロからなる典型的なソナタ形式の曲と言えますが、アレグロの冒頭は主調(イ長調)からはだいぶ遠い和音(嬰へ短調の属和音)から入るなど、和声法的にはかなり工夫のある曲です。






フェルナンド・ソル (1778~1839)


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オペラや交響曲の作曲していたスペインのギタリスト

 フェルナンド・ソルは、ジュリアーニよりも3歳ほど年上で、この時代のギタリストとしては現在、最も高く評価されているスペイン出身のギタリストです。 ソナタや変奏曲、幻想曲などの演奏会用作品から、エチュード、メヌエット、小品集などの教育的作品にいたるまで、ソルの作品は今現在でもたいへんよく演奏されています。

 その経歴などはいろいろなところに書かれていますが、若干触れておきます。 ソルはバルセロナに生まれ、モンセラート修道院付属学校で音楽を学び、オペラや交響曲なども作曲しています。 1813年からはナポレオン戦争等の関係でパリに渡り、以後このパリを中心に活動することになりますが、ロンドン、およびモスクワで仕事をしていた時期もあります。



高く評価されていた一方、初心者からの評判はイマイチ

 ソルはギターの作曲家として、またギター演奏家として当時から評価は高かったようですが、作曲法、特に和声法には強くこだわるタイプだったらしく、例え初心者用の練習曲といえど、しっかりとした和声法で曲を書いていました。 それゆえ、それらは初心者にとってはあまり弾き易いものではなく、評判はイマイチだったようです。



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「これならよろしいか?」作品48  ソルとしては思い切って易しくしたつもりなのだろうが。 


 出版社からも再三、もっと易しく書くように要求されていたようですが、ソルはなかなかそれに上手く対応できなかったようです。 「これならよろしいか?」 といったタイトルの曲集なども出していますが、そうした出版社や愛好家への要求への答えのつもりだったのでしょう。 確かに音符の数は少ないのですが、カルリなどに比べると、あまり弾き易いとは言えないでしょう。



オーケストラ曲のCDも出ている

 最近ではソルのオペラの序曲や、交響曲などの管弦楽のCDなども入手できます。 かつては 「そういったものがある」 といった話しか知らなかったので、たいへん貴重なものだと思います。 これを聴いた感じでは、ソルの管弦楽曲は対位法的で、引き締まった、溌剌とした感じの曲です。 



誰に似ている?

 作風が誰に似ているかということはなかなか難しいところですが、モーツァルトやベートーヴェンにはあまり似ていないようです。 強いて言えばハイドンか、初期のシューベルトといったあたりかなと思います。 重厚でエネルギッシュとか、繊細で、内面的と言った感じではありません。

 また、同じギタリストのオーケストラ曲でも、あくまで流麗なジュリアーニの曲とはだいぶ違う感じですが、ソルの音楽を知る上ではたいへん重要なものと思いますので、ソルの曲を練習しようと思っている人はぜひとも聴いてみるべきでしょう。



お友達が少なかった?

 ギターのみでなく管弦楽曲なども作曲していたとすれば、当然ジュリアーニのようにギター協奏曲とかギターを含む室内楽、ギターと他の楽器の二重奏曲なども作曲しておかしくはないはずですが、 不思議と、そういった曲は残されていません。 その理由はよくわかりませんが、 もしかしたらジュリアーニとは違い、音楽家のお友達が少なかったのかも知れませんね。



自らのギター論を語っている

 ソルは「ギター教則本」を出版していますが、これは「カルカッシギター教則本」などのように練習曲を中心としたものではなく、 自らのギター論、あるいはギター演奏論を語っているものです。 現代ギター社から翻訳が出ているので、これを読むとソルの人柄などがよくわかります。 これもまたギター愛好家必読のものと言えます。






ラルゴ・ノン・タント (幻想曲ハ短調作品7より) ~ソナタハ長調作品15-2

 ギターでは比較的用いられることの少ないハ短調(♭3つ)で書かれ、独特の雰囲気を持った曲です。 原曲の幻想曲作品7では、この曲のあとにハ長調の主題と変奏が続き、その関係でこの曲は完全終止をせず、属和音で終わる半終止となっています。 


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本来の後続曲の主題と変奏の冒頭部分


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今回演奏するソナタ作品15-2の冒頭。 最初の2つの音、メロディだけで見れば3つの音が主題と変奏と同じ



♪ バッターは主題と変奏に変わりまして、代打 ソナタハ長調、 背番号15-2 ♪

 したがって、この曲のみでは1曲とはならないので、今回のリサイタルでは、「ソナタハ長調作品15-2」を続けて演奏します。 もちろん本来は原曲通りに 「ラルゴ・ノン・タント」 と 「主題と変奏」 を続けて演奏すべきなのですが、原曲通りに弾くと、ちょっと長くなってしまいます。 「ソナタ」 と 「主題と変奏」 では最初の2つの音が同じということで、ご容赦下さい。 まあピンチ・ヒッターということで・・・・・

 なお、ジュリアン・ブリームはメヌエットハ長調(作品25より)や、ロンドハ長調(作品22)などを後続の曲として用いています。 なお、「ラルゴ・ノン・タント」 とは 「幅広く、ゆったりと。 でもそれほど極端でなく」 といった意味です。 ソナタのほうは 「アレグロ・モデラート」、つまり 「中庸な快速さで」 としていされています。






モーツァルトの「魔笛」の主題による変奏曲作品9

 ソルの作品中では最も人気があり、たいへんよく演奏されている曲です。 かつて(1960年代)NHKのギター教室のテーマにもなっていました。

 テーマはモーツァルトの最後オペラ「魔笛」の中で、モノスタトスが歌う「なんと素晴らしい鐘の音」というたいへん短い歌からとられています。 この親しみやすいテーマと簡潔な5つの変奏とコーダ、そして短調による序奏が添えられています。 

 ・・・・・・まあ、あまり説明の必要ないか・・・・・・





中村俊三ギター・リサイタル ~19世紀のギター作品

  5月15日(日)14:00  茨城県石岡市ギター文化館




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 当ブログにはあまり花の写真は似合いませんが、今年もきれいに咲きました。 当家では今が最もよい季節です。


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 私の5月15日のリサイタルは「19世紀のギター作品」ということですが、まずはごく大雑把にギターの歴史についてひと通り触れておきましょう。




ギターの歴史(大雑把に)




イスラム圏からスペインに伝わった

 ”張った弦を、指ではじいて弾く” といった楽器、つまり撥弦楽器は、おそらく文明の発祥とともに存在したのではないかと思います。 スペインなどを中心に、現在のギターの形に近く、また、「キタラ」 とか「ギターラ」 と言ったようにギターぽい名前で呼ばれるようになった楽器の存在が認められるようになったのは、12~13世紀頃と言われています。 当初はムーア風ギターと呼ばれ、イスラム圏からの由来は確かのようです。




フランスを中心に広まった4コース複弦ギター

 ギターための作品として(リュートなどではなく)譜面(タブラチュア)が残されるようになったのは16世紀になってからです。 この時代までのギターは ”4コース・複弦” で、16世紀半ばのフランスでは、この4コース・ギターのための曲集や教本などが盛んに出版されていました。



スペインでは6コースのビウエラ

 本家のスペインでもアロンソ・ムダーラなどが4コース・ギターのための作品を出版していますが、 この時代は少なくとも4コースギターの限ってはフランスが最も盛んだったようです。 そのスペインでは、4コースギターよりも一回り大きく、形としては相似形の6コース複弦の 「ビウエラ」 と呼ばれる楽器がより好まれました。 

 ビウエラはチューニングなどはほぼリュートと同じで ”ギター型のリュート” といったところもあり、スペインではリュートはあまり好まれなかったようです。 ビウエラの作品を残した作曲家としては、前述のムダーラの他、ルイス・ミラン、 ルイス・デ・ナルバエス などが挙げられ、彼らの作品は現代でもギターで演奏されています。

 


5コース・バロック・ギター

 17世紀になるとギターは5コース複弦 (第1コースのみ単弦になることも) となり、現在では ”バロック・ギター” と呼ばれています。 スペインの ガスパル・サンス やフランスの ロベルト・ド・ヴィゼー のように当時のリュートやチェンバロなどと同じく対位法的で高度レヴェルの作品を残したギタリストもいましたが、 一般には歌や踊りの伴奏として和音をかき鳴らしていたほうが多かったようです。 



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華麗に装飾されたバロック・ギター



どちらかと言えば、記号でコードをかき鳴らしていた

 当時ギターで和音を弾く場合、五線譜やタブラチュアではなく、和音にアルファベットの記号を付け、今日のコード・ネームのようなもので弾いていたようです。 しかし同じアルファベットのコードネームでも、現在のコード・ネームとは全く違うシステムで、今日的な読み方では弾けません。




6単弦ギター ~ギターの黄金期

 18世紀末頃から現在のギターと同じく6単弦のギターが一般化されるようになり、これまでに比べて格段にギターが愛好されるようになります。
 
 複弦から単弦に変わったことにより、一般の愛好家でも手軽にギターに触れることが出来るようになり、また、フェルナンド・カルリ、 マウロ・ジュリアーニ、 フェルナンド・ソル、 ディオニシオ・アグアードなど、私たちが良く知るギタリストたちが表れ、多数の演奏会用作品とともに練習曲や教本が生まれることになります。



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6単弦ギター  ルネ・ラコートの作品


練習曲などは誰でも弾いている

 特にその練習曲や教本は今日のギター教室などでも盛んに用いられており、クラシック・ギターを習ったことのある人なら、必ずこれらの教材を使っているのではないかと思います。



卵が先? ニワトリが先? 

 もっとも、6単弦になって楽器が扱いやすくなったから愛好者が増えたのではなく、ヨーロッパ社会が変化し、趣味としてギターをやる人が増えたので、楽器も手軽に弾けるように単弦となったと考えるほうが合理的かも知れません。

 確かに、それまでの楽器(バロック・ギター)はきらびやかに装飾が施され、工芸品と言った感じだったのですが、6弦ギターのほうは機能本位で、飾り気はあまりありません。


  
ギターの衰退期?

 19世紀半ばから末にかけては、かつて ”ギターの衰退期” と言われ、タレガの出現まではギターと言う楽器は不遇の時代を過ごした、と言ったようなことが言われていました。 しかし、今回の演奏会でも演奏する、ジュリオ・レゴンディ、 ヨハン・メルツ、 さらにナポレオン・コスト、 アントニオ・カーノ、 ホセ・ブロカ、 ホセ・フェレール、 さらにタレガの師でもあるフリアン・アルカスなどすぐれたギタリストは多数存在し、間違いなく今日のギター音楽へと継続し、発展していっています。



19世紀ギターの復権

 確かに20世紀の半ば頃まで上記のギタリストの作品は、一部の教育的作品を除いてあまり演奏されませんでしたが、現在では再評価され、ギター・リサイタルなどでもたいへんよく演奏されるようになりました。 今回の私のリサイタルのように19世紀の作品をメインにした演奏会は、特に珍しいものではなくなりました。



一言では語れない多様化の時代

 20世紀以降については、あえてお話するまでのないかかもしれませんが、かつて(20世紀半ば)はクラシック・ギターは、すべてタレガ=セゴヴィアの延長戦上で語られていましたが、今現在では多数の系統が存在し、またポピュラー系の音楽の影響もたいへん強いものとなっています。 まさに多様化の時代といったところで、一言では語れないのが現在のギター界でしょう。