バッハ : 平均律クラヴィア曲集 5
おいしいものは糖と脂肪
バッハは、まず最も根源的なもの、あるいはもっともシンプルなものからこの曲集を書き始めよう思ったのではないあkと思われますが、この第1巻第1番はプレリュードがアルペジオだったので、フーガのテーマのほうは ”音階” で出来ています。 「おいしいものは糖と脂肪」 などというCMがありますが、音楽は音階とアルペジオ(和音)で出来ているということですね。
かえるの歌?
このフーガのテーマは譜例のように、 ドーレーミーファーソーフーァミ と音階が 「ド」 から上がって下がるだけになっています。 次の譜例は2声のインヴェンションの第1番ですが、たいへんよく似ているのがわかります。違いといえば、平均律が 「ソ」 まで上がるのに対し。インヴェンションは 「ファ」 までで、また下がる時には ”折り返し” が付いています。

問題はそこから
その下は輪唱で有名な 「かえるの歌」 です(正しい曲名としては 「かえるの合唱」) 。 上の二つによく似ていますね、最初から4個目の音まで同じです。 もっとも音階が主音からただ上がっていっただけですから、これに近いメロディの曲は、数えきれないくらいたくさんあるので、バッハのフーガのテーマがかえるの歌に似ていたとしても、特に驚くには値しないでしょう。
もちろん、バッハは意識的にこの2曲、つまり平均律曲集とインヴェンションの最初のフーガのテーマに、このドレミファという、最もシンプルな素材を選んだのでしょう。
しかし問題はここからです。 このシンプルな素材を用いてどれだけ深い内容の音楽が作れるかということが、バッハにとっては最も重要なことなのでしょう。 バッハはこの素材を用いて4声のフーガを作曲します。

平均律クラヴィア曲集第1巻、第1番ハ長調のフーガ
テーマが簡単だからと言っても、フーガも簡単なわけではない
最初のテーマが5度上、4度下、1オクターブ下、1オクターブ上に現れます。 ただ現れるだけなら別に何てことなさそうですが、その4つのメロディが合わさっても、対位法や和声法的に矛盾を起こさないようにしなければなりません。
通常の対位法的な作品であれば、旋律そのものを対位法的に合致するようにすればよいのですが、フーガとなると旋律の原型を崩せない訳ですから8多少崩すこともある)、実際に作曲するとなると非常に難しいものがあります。
フーガを作曲するには優れた思考力が必要
私も何度かフーガを作ってみようと思ったのですが、2声のものでさえ非常に難しく、すべて途中でどうにもならなくなり、頓挫してしまいました。 作曲は、普通音感や基礎知識、それに音楽的センスが必要と言われますが、フーガに関しては、それに加え、非常にすぐれた思考力が絶対に必要となるようです。
凝縮されたフーガ
このハ長調のフーガは27小節と、他のフーガに比べると規模は小さく、どちらかと言えば ”軽い” 方になりますが、この少ない小節数においてもテーマの出現回数がたいへん多く、テーマとテーマが接近している部分が多くなっています。こういった部分を「ストレット」というのですが、全曲、ほぼストレットで出来ているといってもよいでしょう。

1段目では3小節間にテーマが5回も出てくる、典型的なストレット。
普通、特に長いフーガであれば、こうしたテーマを重ねる部分(呈示部)の他に、喜遊部といって、テーマにあまり関係ない部分も、つまり ”遊び” の部分もあるのですが、このフーガは短いこともあって、そうした喜遊部はなく、シンプルではあるが、たいへん凝縮したフーガと言えます。
ちょっと聴くと何気ない曲だが極めてレヴェルの高い曲
このハ長調のフーガは、テーマがシンプルなので、何気ない風にも聴こえますが、よく聴くと非常に密度の濃い作品となっています。 簡潔だが、極めて高いレヴェルの曲、やはりバッハにしか書けないフーガを第1曲目に置いたということになります。
おいしいものは糖と脂肪
バッハは、まず最も根源的なもの、あるいはもっともシンプルなものからこの曲集を書き始めよう思ったのではないあkと思われますが、この第1巻第1番はプレリュードがアルペジオだったので、フーガのテーマのほうは ”音階” で出来ています。 「おいしいものは糖と脂肪」 などというCMがありますが、音楽は音階とアルペジオ(和音)で出来ているということですね。
かえるの歌?
このフーガのテーマは譜例のように、 ドーレーミーファーソーフーァミ と音階が 「ド」 から上がって下がるだけになっています。 次の譜例は2声のインヴェンションの第1番ですが、たいへんよく似ているのがわかります。違いといえば、平均律が 「ソ」 まで上がるのに対し。インヴェンションは 「ファ」 までで、また下がる時には ”折り返し” が付いています。

問題はそこから
その下は輪唱で有名な 「かえるの歌」 です(正しい曲名としては 「かえるの合唱」) 。 上の二つによく似ていますね、最初から4個目の音まで同じです。 もっとも音階が主音からただ上がっていっただけですから、これに近いメロディの曲は、数えきれないくらいたくさんあるので、バッハのフーガのテーマがかえるの歌に似ていたとしても、特に驚くには値しないでしょう。
もちろん、バッハは意識的にこの2曲、つまり平均律曲集とインヴェンションの最初のフーガのテーマに、このドレミファという、最もシンプルな素材を選んだのでしょう。
しかし問題はここからです。 このシンプルな素材を用いてどれだけ深い内容の音楽が作れるかということが、バッハにとっては最も重要なことなのでしょう。 バッハはこの素材を用いて4声のフーガを作曲します。

平均律クラヴィア曲集第1巻、第1番ハ長調のフーガ
テーマが簡単だからと言っても、フーガも簡単なわけではない
最初のテーマが5度上、4度下、1オクターブ下、1オクターブ上に現れます。 ただ現れるだけなら別に何てことなさそうですが、その4つのメロディが合わさっても、対位法や和声法的に矛盾を起こさないようにしなければなりません。
通常の対位法的な作品であれば、旋律そのものを対位法的に合致するようにすればよいのですが、フーガとなると旋律の原型を崩せない訳ですから8多少崩すこともある)、実際に作曲するとなると非常に難しいものがあります。
フーガを作曲するには優れた思考力が必要
私も何度かフーガを作ってみようと思ったのですが、2声のものでさえ非常に難しく、すべて途中でどうにもならなくなり、頓挫してしまいました。 作曲は、普通音感や基礎知識、それに音楽的センスが必要と言われますが、フーガに関しては、それに加え、非常にすぐれた思考力が絶対に必要となるようです。
凝縮されたフーガ
このハ長調のフーガは27小節と、他のフーガに比べると規模は小さく、どちらかと言えば ”軽い” 方になりますが、この少ない小節数においてもテーマの出現回数がたいへん多く、テーマとテーマが接近している部分が多くなっています。こういった部分を「ストレット」というのですが、全曲、ほぼストレットで出来ているといってもよいでしょう。

1段目では3小節間にテーマが5回も出てくる、典型的なストレット。
普通、特に長いフーガであれば、こうしたテーマを重ねる部分(呈示部)の他に、喜遊部といって、テーマにあまり関係ない部分も、つまり ”遊び” の部分もあるのですが、このフーガは短いこともあって、そうした喜遊部はなく、シンプルではあるが、たいへん凝縮したフーガと言えます。
ちょっと聴くと何気ない曲だが極めてレヴェルの高い曲
このハ長調のフーガは、テーマがシンプルなので、何気ない風にも聴こえますが、よく聴くと非常に密度の濃い作品となっています。 簡潔だが、極めて高いレヴェルの曲、やはりバッハにしか書けないフーガを第1曲目に置いたということになります。
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