バッハ:平均律クラヴィア曲集 12
第11番ヘ長調

第11番ヘ長調のプレリュード。 1拍が6個の16分音符からなり、そういう意味では速く弾くことになるのかなとは思いますが、曲の感じからすると遅く弾いてもいいんじゃないかな?
一般的には落ち付いた感じで、よく使われる調だが
ヘ長調はベートーヴェンの「田園」でも知られている通り、一般的にはのどかで、のんびりした感じで、いわゆる”癒し系”の調ということになります。 ギターの場合では、ヘ長調はセーハが多くなり、♭が1個のわりには、弾きにくい調となり、 したがってヘ長調の曲はギター曲ではあまりありません。
ヘ長調のギター名曲は、なくもないが
オリジナル、編曲を含め、ヘ長調のギター曲というのは、ほとんどありませんが(練習曲を除けば)、 フェルナンド・ソルにはヘ長調の幻想曲があり、演奏次第ではまるで室内楽のように聴こえ、隠れた(?)名曲とも言えます。 でもこれにはちょっと訳があって、ソルはこの曲の場合、⑥弦を「ファ」に上げて弾くようになっています。 確かにこうすれば主和音の低音が開放弦で弾けて、かなり楽になります。
またジュリアーニのギター協奏曲第3番はヘ長調で書かれていますが (この曲も名曲!)、これは通常のギターよりも短3度高い ”テルツ・ギター” を使用するようになっていて、確かにオーケストラ部はヘ長調で書かれているのですが、ギターのパート譜はニ長調で書かれています(つまり3フレットにカポタストを付けた状態になる)。
そんなに毛嫌いしなくても
つまりギターでヘ長調の曲を演奏しようとする場合は、いろいろ小細工が必要ということなのでしょう。 やはり ”まとも” なヘ長調のギターの名曲というのはほとんどないと言ってよいでしょう。 何もそんなにヘ長調を毛嫌いしなくてもいいんじゃないかとと思いますが、古今のギタリストたちはこのヘ長調を嫌っていたのは間違いありません。
ギターの場合、ヘ長調は弾きにくく、音も鳴りにくいのですが、その結果響きがやわらくなり、落ち着いた感じに聴こえ、結果的には一般的なヘ長調のイメージには合っていることになります。 前述のソルの幻想曲がギター曲らしく聴こえないで、室内楽のように聴こえるのは、このヘ長調という調に無関係ではないでしょう。
ギター曲でフラット1個はほとんどニ短調
もっともフラット1個のギター曲はたくさんありますが、それらはほぼ間違いなくヘ長調ではなく、ニ短調の方でしょう。 ニ短調の場合、⑥弦を「レ」にすれば、主要3和音の低音がすべて開放弦となり、非常に弾き易い調となります。 同じフラット」1個でもヘ長調とニ短調では、たいへんな差があります。
プレリュードもフーガ16分音符6個でひとまとまり
さて、この平均律曲集第1巻第11番ヘ長調のプレリュードは8分の12拍子で、8分音符3個×4、 または16分音符6個×4 で1小節となります。 ヘ長調だけあって、やはり緊張感などはあまりなく、落ち着いた感じの曲となっています。
フーガのほうは8分の3拍子ということで、こちらも8分音符3個、または16分音符6個がひとまとまりになってます。 フーガと言っても、あまり長くなく、ジーグ風の軽い感じの曲です。
どちらも8分音符3個、または16分音符6個が一まとまりになっていて、もちろん同じ調なので、たいへんよく似た印象です。 譜面上からすれば、プレリュードは1拍が16分音符6個で出来ていて、フーガのほうは16音符2個が一拍となるので、16分音符1個の速さはプレリュードのほうが速いと言うことになります。

3声のフーガといっても、かなり軽い感じで、複数の声部が絡み合うことも少ない。 なんとなくジーグ風で、速いテンポのほうが似合いそう。
理屈からするとプレリュードの方が速い感じになるのだが
多くのピアニストやチェンバリストは、このようにプレリュードのほうを速く、フーガの方をやや遅く弾いています。 でも何人かのピアニスト、チェンバリストはプレリュードもフーガも、ほぼ同じテンポで弾ています。
それならプレリュードをフーガに比べて遅めに弾いて、フーガを速いテンポで疾走するように弾くという手もあるのではと思いますが、実際にそう弾いている人はいなそうですね、やってみてもいいんじゃないかな?
第12番へ短調
結局全部の曲について書いているが
個々の曲については、抜粋してお話するといいながら、結局抜かさずやってしまっています。この際なので、第1巻についてはこのまま ”全曲” 書いてゆきましょう。 12番ということで、やっと第1巻前半の最後まで来ました。 全体では4分の1と言うところです。
ベートーヴェンは最初のピアノ・ソナタをへ短調で書いている
ヘ短調は♭4個なので、あまり使われることが少ない調ですが、ハイドンには、若干へ短調の弦が四重奏曲があり、ベートーヴェンもピアノ・ソナタ「熱情」や、弦楽四重奏曲第11番「セリオーソ」を、このヘ短調で書いています。 ベートヴェンの場合、何といっても第1番のピアノ・ソナタを、このあまり使われないヘ短調で書いているあたりも、注目のところでしょう。
この曲を”第1番”としたのはベートーヴェン自身の意志によるもので、その第1番をヘ短調としたのも、自らが”並みの”作曲家でないことを示すためではないかと思われます。

見た目ではあまり遅く弾く曲とも思えないが、ほとんどのピアニストやチェンバリストは遅めのテンポをとっている。 特にグレン・グールドはかなり遅い。
16分音符で出来ているプレリュードだが、遅めのテンポで弾く奏者が多い
第12番のプレリュードは16分音符を中心としたもので、相変わらずバッハ自身ではテンポの指定を行っていませんが、多くの奏者は遅めのテンポを取っています。 32分音符以下の細かい音符はなく、譜面を見ただけでは、速めのテンポで弾くことも十分に考えられる曲ですが、へ短調という調がそうさせているのかも知れません。
特にグールドはこのプレリュードを4分以上かけて演奏しています。 決して長い曲ではないので、多少遅く弾いても、普通は2分ちょっとくらいの曲でしょうか。

フーガのテーマを6小節と見るかどうかはわからないが、バッハはこの曲をこの6小節のテーマを基に作曲しているのは確か。 ベートーヴェンを先取りした主題労作と言えなくもない。
ベートーヴェンの主題労作を先取り?
フーガのテーマは3小節の4分音符の部分に3小節の16分音符の部分が付いています。 正式にはどこまでが主題なのかわかりませんが、このフーガ単独の主題に擁るフーガで、この6小節に含まれる部分をそれぞれに展開してゆく形になっています。
こうしたことは、ベートヴェンなどの音楽で言う ”主題労作 ”的な曲作りといえるでしょうか、これも時代の先取りと言ったところでしょう。 バッハの音楽は、当時時代遅れの古い音楽とされていましたが、これまで見てきたように、逆に時代を何十年も先取りしている部分が多数見られます。
4の倍数でフーガが長くなる?
この12番へ短調のフーガも他のフーガに比べて長いものになっていて、充実した内容のフーガの一つと言えます。 そう言えばこの平均律曲集で長くて充実したフーガは第4番、第8番、第12番となっています。 つまり4の倍数の番号でフーガが長くなっている訳です。 ・・・・・・かつて ”3の倍数で・・・・・・” でといったギャグがあったような。 バッハはギャグまで先取り?
バッハには短調の名曲が多い
バッハのことですから、意図的に4の倍数の番号でフーガを長くしたと言うことは、ありそうな感じもします。 ただ、この平均律曲集の並びからすると、2番、4番などの偶数はすべて短調となり、バッハは短調の場合に重厚なフーガを各傾向があったということも言えるので。たまたまそうなってしまったと言うことも十分あるでしょう。
確かに、バッハの名曲には 「マタイ受難(ホ短調)」 や 「ロ短調ミサ」 など短調のものが多いですね。 40数曲の交響曲、27曲のピアノ協奏曲で、それぞれ2曲ずつしか短調の曲を書かなかったモーツァルトとはだいぶ違います。
・・・・・ともかく、無事(?)4分の1が終わりましたね。
第11番ヘ長調

第11番ヘ長調のプレリュード。 1拍が6個の16分音符からなり、そういう意味では速く弾くことになるのかなとは思いますが、曲の感じからすると遅く弾いてもいいんじゃないかな?
一般的には落ち付いた感じで、よく使われる調だが
ヘ長調はベートーヴェンの「田園」でも知られている通り、一般的にはのどかで、のんびりした感じで、いわゆる”癒し系”の調ということになります。 ギターの場合では、ヘ長調はセーハが多くなり、♭が1個のわりには、弾きにくい調となり、 したがってヘ長調の曲はギター曲ではあまりありません。
ヘ長調のギター名曲は、なくもないが
オリジナル、編曲を含め、ヘ長調のギター曲というのは、ほとんどありませんが(練習曲を除けば)、 フェルナンド・ソルにはヘ長調の幻想曲があり、演奏次第ではまるで室内楽のように聴こえ、隠れた(?)名曲とも言えます。 でもこれにはちょっと訳があって、ソルはこの曲の場合、⑥弦を「ファ」に上げて弾くようになっています。 確かにこうすれば主和音の低音が開放弦で弾けて、かなり楽になります。
またジュリアーニのギター協奏曲第3番はヘ長調で書かれていますが (この曲も名曲!)、これは通常のギターよりも短3度高い ”テルツ・ギター” を使用するようになっていて、確かにオーケストラ部はヘ長調で書かれているのですが、ギターのパート譜はニ長調で書かれています(つまり3フレットにカポタストを付けた状態になる)。
そんなに毛嫌いしなくても
つまりギターでヘ長調の曲を演奏しようとする場合は、いろいろ小細工が必要ということなのでしょう。 やはり ”まとも” なヘ長調のギターの名曲というのはほとんどないと言ってよいでしょう。 何もそんなにヘ長調を毛嫌いしなくてもいいんじゃないかとと思いますが、古今のギタリストたちはこのヘ長調を嫌っていたのは間違いありません。
ギターの場合、ヘ長調は弾きにくく、音も鳴りにくいのですが、その結果響きがやわらくなり、落ち着いた感じに聴こえ、結果的には一般的なヘ長調のイメージには合っていることになります。 前述のソルの幻想曲がギター曲らしく聴こえないで、室内楽のように聴こえるのは、このヘ長調という調に無関係ではないでしょう。
ギター曲でフラット1個はほとんどニ短調
もっともフラット1個のギター曲はたくさんありますが、それらはほぼ間違いなくヘ長調ではなく、ニ短調の方でしょう。 ニ短調の場合、⑥弦を「レ」にすれば、主要3和音の低音がすべて開放弦となり、非常に弾き易い調となります。 同じフラット」1個でもヘ長調とニ短調では、たいへんな差があります。
プレリュードもフーガ16分音符6個でひとまとまり
さて、この平均律曲集第1巻第11番ヘ長調のプレリュードは8分の12拍子で、8分音符3個×4、 または16分音符6個×4 で1小節となります。 ヘ長調だけあって、やはり緊張感などはあまりなく、落ち着いた感じの曲となっています。
フーガのほうは8分の3拍子ということで、こちらも8分音符3個、または16分音符6個がひとまとまりになってます。 フーガと言っても、あまり長くなく、ジーグ風の軽い感じの曲です。
どちらも8分音符3個、または16分音符6個が一まとまりになっていて、もちろん同じ調なので、たいへんよく似た印象です。 譜面上からすれば、プレリュードは1拍が16分音符6個で出来ていて、フーガのほうは16音符2個が一拍となるので、16分音符1個の速さはプレリュードのほうが速いと言うことになります。

3声のフーガといっても、かなり軽い感じで、複数の声部が絡み合うことも少ない。 なんとなくジーグ風で、速いテンポのほうが似合いそう。
理屈からするとプレリュードの方が速い感じになるのだが
多くのピアニストやチェンバリストは、このようにプレリュードのほうを速く、フーガの方をやや遅く弾いています。 でも何人かのピアニスト、チェンバリストはプレリュードもフーガも、ほぼ同じテンポで弾ています。
それならプレリュードをフーガに比べて遅めに弾いて、フーガを速いテンポで疾走するように弾くという手もあるのではと思いますが、実際にそう弾いている人はいなそうですね、やってみてもいいんじゃないかな?
第12番へ短調
結局全部の曲について書いているが
個々の曲については、抜粋してお話するといいながら、結局抜かさずやってしまっています。この際なので、第1巻についてはこのまま ”全曲” 書いてゆきましょう。 12番ということで、やっと第1巻前半の最後まで来ました。 全体では4分の1と言うところです。
ベートーヴェンは最初のピアノ・ソナタをへ短調で書いている
ヘ短調は♭4個なので、あまり使われることが少ない調ですが、ハイドンには、若干へ短調の弦が四重奏曲があり、ベートーヴェンもピアノ・ソナタ「熱情」や、弦楽四重奏曲第11番「セリオーソ」を、このヘ短調で書いています。 ベートヴェンの場合、何といっても第1番のピアノ・ソナタを、このあまり使われないヘ短調で書いているあたりも、注目のところでしょう。
この曲を”第1番”としたのはベートーヴェン自身の意志によるもので、その第1番をヘ短調としたのも、自らが”並みの”作曲家でないことを示すためではないかと思われます。

見た目ではあまり遅く弾く曲とも思えないが、ほとんどのピアニストやチェンバリストは遅めのテンポをとっている。 特にグレン・グールドはかなり遅い。
16分音符で出来ているプレリュードだが、遅めのテンポで弾く奏者が多い
第12番のプレリュードは16分音符を中心としたもので、相変わらずバッハ自身ではテンポの指定を行っていませんが、多くの奏者は遅めのテンポを取っています。 32分音符以下の細かい音符はなく、譜面を見ただけでは、速めのテンポで弾くことも十分に考えられる曲ですが、へ短調という調がそうさせているのかも知れません。
特にグールドはこのプレリュードを4分以上かけて演奏しています。 決して長い曲ではないので、多少遅く弾いても、普通は2分ちょっとくらいの曲でしょうか。

フーガのテーマを6小節と見るかどうかはわからないが、バッハはこの曲をこの6小節のテーマを基に作曲しているのは確か。 ベートーヴェンを先取りした主題労作と言えなくもない。
ベートーヴェンの主題労作を先取り?
フーガのテーマは3小節の4分音符の部分に3小節の16分音符の部分が付いています。 正式にはどこまでが主題なのかわかりませんが、このフーガ単独の主題に擁るフーガで、この6小節に含まれる部分をそれぞれに展開してゆく形になっています。
こうしたことは、ベートヴェンなどの音楽で言う ”主題労作 ”的な曲作りといえるでしょうか、これも時代の先取りと言ったところでしょう。 バッハの音楽は、当時時代遅れの古い音楽とされていましたが、これまで見てきたように、逆に時代を何十年も先取りしている部分が多数見られます。
4の倍数でフーガが長くなる?
この12番へ短調のフーガも他のフーガに比べて長いものになっていて、充実した内容のフーガの一つと言えます。 そう言えばこの平均律曲集で長くて充実したフーガは第4番、第8番、第12番となっています。 つまり4の倍数の番号でフーガが長くなっている訳です。 ・・・・・・かつて ”3の倍数で・・・・・・” でといったギャグがあったような。 バッハはギャグまで先取り?
バッハには短調の名曲が多い
バッハのことですから、意図的に4の倍数の番号でフーガを長くしたと言うことは、ありそうな感じもします。 ただ、この平均律曲集の並びからすると、2番、4番などの偶数はすべて短調となり、バッハは短調の場合に重厚なフーガを各傾向があったということも言えるので。たまたまそうなってしまったと言うことも十分あるでしょう。
確かに、バッハの名曲には 「マタイ受難(ホ短調)」 や 「ロ短調ミサ」 など短調のものが多いですね。 40数曲の交響曲、27曲のピアノ協奏曲で、それぞれ2曲ずつしか短調の曲を書かなかったモーツァルトとはだいぶ違います。
・・・・・ともかく、無事(?)4分の1が終わりましたね。
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