中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

中村俊三  イサーク・アルベニス作品集




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   2017年9月発売   2000円+税



⑫ コルドバ



ギター・ソロでは1969年にウィリアムスが録音したのが最初か

 いよいよ最後の曲です。 この曲もアウトゥリアス、セビージャと並ぶ人気曲といえます。 1969年録音のジョン・ウィリアムスのLPに 「世界初録音(ギターでは)」 と書いてあったので、少なくともこの曲をギター・ソロで弾いたのはウィリアムスが最初のようです。 それまではプジョールの編曲でギター二重奏で演奏されていました。



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コルドバといえば、このローマ橋が有名。 スペインではたいへん歴史の古い都市として知られ、このようなローマ時代からの遺跡もいろいろあるようだ。



 

この曲もニ短調

 この曲も原曲がニ短調となっています。 たまたまかどうかわかりませんが、ギターで弾かれるアルベニスの作品、特に晩年のものにはニ短調が多いようです。 こうした曲はギターで演奏されることを意識していたのでしょうか?  ・・・・アルベニス自身に聴かないとわからない?




難しくなるも、ならないも編曲次第

 曲としては終始裏打ちとなる伴奏に乗せて、4分音符中心の比較的シンプルなメロディが歌われます。 そのメロディはオクターブ・ユニゾンを多用しているので、そうしたものをそのままギターで弾こうとすると結構難しいものになりますが、簡略化してしまえば、比較的易しくもなります。




ピアノ譜から始めた

 すべてアレンジ次第となりますが、私のアレンジはその両者の中間くらいになると思います。 最初(たぶん20代後半くらい)はギターの譜面が市販されていなかったので、ピアノ譜から自分で編曲してみましたが、難し過ぎて弾けませんでした。 何年かして、全音出版社から阿部保夫編が出ましたが、その方が弾き易く感じました。



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私の編曲譜  3段目のあたりまで、原曲では低音の「ファ」がずっと鳴っているが、阿部編ではそれを省略している。 私のバージョンではその低音も弾くようになっている。



 しかし前述のとおり、ピアノの原曲から始めたので、阿部編はやや省略が多すぎ、また逆に弾きにくいところもあったので、それを修正して弾いていました。 その後コンサートなどで弾く度にマイナー・チェンジを繰り返しながら、今回の録音に至るわけですが、今度の録音でも若干手直ししました。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



発売から20日ほどになるが


 以上で収録曲の紹介は終わりですが、今日(9月19日) で発売から約20日となります。 これまでに生徒さんなどを中心に40枚ほど買っていただきました。 通常のCDからすれば本当に、ごくわずかな数ですが、でも私の自主制作盤としては。おもったより多くの人に買っていただいたと思います。 何分 ”自主製作” ということで高価な録音機材を用いることも出来ませんでしたが、ちょっと聴いた感じでは、一般のCDとそれほど変わりなく出来たのではと思います。




やや柔らかめで、ノイズ等はほとんどない(と思う)

 音質としては、あまり高音などを増幅しなかったので、ギターのCDとしては。やや柔らかい音がするかなと思います。 また自然のもや、機械的なものなど、いろいろな意味でノイズ等はほとんどないように感じます(自分で聞えないだけ?)。




一応、最低限のことは

 演奏内容としては、最低限 ”自分で聴ける” ものとしましたが、少なくとも、今のところそれはクリヤー出来ているようです。 自分のリサイタルの録音を聴くのはたいへん重要なことなのですが、しかし若干の苦痛を伴うのも事実です。 そう言った点では、こCDを聴いていても、特に ”苦痛” は感じません。




でも、だんだん

 しかし、出来上がった当初は、 「まあ、だいたいいいんじゃないか」 と思っていても、何回か聴いているうちに 「ここちょっと違うな」 とか 「ここは録り直しだったな」 などと感じることがだんだん多くなってきて、”聴いていると苦痛を感じる” ようになるのも時間の問題かな? なんてところもあります。 




「タンゴ」、 「マラゲーニャ」、 「カタルーニャ奇想曲」 などは良い出来かな

 一応、12曲とも最低限のレヴェルにはなっていると思いますが、何回か聴いているうちに、優劣などもだんだん感じてきます。 12曲中、最も出来が良いと感じたのは、 組曲スペイン作品165の 「タンゴ」、 「マラゲーニャ」、 「カタルーニャ奇想曲」 の3曲でしょうか。

 「タンゴ」 は ”隠れた” 難曲で、それだけに何度も録り直し(編集し直し)をした結果、最後には比較的満足のゆくものになりました。 音色も比較的美しく録れていると思います。 「マラゲーニャ」 もすっきりと弾けているように思います。 また 「カタルーニャ奇想曲」 では、アルベニスの郷愁の念なども、多少描けたのではと思います。




まだまだ在庫あります

 当CDをご購入いただいた方々、本当にありがとうございました。 もちろんまだまだ在庫はあります、未だの方は、ぜひよろしくお願いいたします。
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中村俊三   イサーク・アルベニス作品集



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         2017年9月発売   2000円+税





<収録曲紹介>



⑩ サンブラ・グラナディーナ




「サンブラ」 はアラビア人の祭りなどの意味

 サンブラ(zambra)とは、ムーア人(スペインに住むアラビア人)の踊り、や祭りを表す言葉だそうですが、具体的にはよくわかりません。 曲は4分の2拍子で、譜面のとおりシンコペーションのリズムとなっています。 アルベニスには他にも 「サンブラ」 と名の付いた曲がありますが、同じリズムになっています。




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サンブラ・グラナディーナの私の編曲譜  原調(ニ短調)で弾けるので、編曲によって大きな差はないと思うが、私のアレンジはは比較的原曲に忠実で、弾き易いと思う(自分では)



アンドレス・セゴヴィアの名演で知られる

 組曲などには含まれなく単独の作品で、1891年頃の作曲です。 ギターではアンドレス・セゴヴィアの演奏が知られており、編曲譜なども多数出版されています。 アストゥリアスやグラナダほどではなくとも、比較的よくギターで演奏される曲といってよいでしょう。



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サンブラ・グラナディーナが収録されているアンドレス・セゴヴィアのLPジャケット。 1961年の録音で、かつてよく聴いたLPで、たいへん想い出深い。




移調なしでギターで演奏出来る

 原曲はニ短調(中間部ニ長調)で、ギターへのアレンジも比較的容易に出来ます。 したがって、現在出ている編曲譜も大同小異といったところでしょう。 私のアレンジも、一般的に演奏されているものとそれほど違いはありません。 




どちらかと言えば、”しみじみ” 系

 「アレグレット・ノントロッポ」 といった速度標語になっていますが、軽快というより、どちらかと言えば ”しみじみ” 系といえるでしょうか。 祭りの華やかな感じというより、特に美しいと言われる夕暮れ時のグラナダの風景が浮かんでくるような作品です。







<スペインの歌作品232より>


5曲からなる組曲

 この<スペインの歌作品232> は1896年頃、つまりアルベニスの晩年に作曲された曲で、「前奏曲」 「オリエンタル」 「やしの木陰で」 「コルドバ」 「セギディーリャ」 の5曲からなります。 当CDには、この 「スペインの歌」 から3曲収録しているのですが、「前奏曲」 は「アストゥリアス」としてスペイン組曲作品47の方に入れてしまったので、形と上では 「オリエンタル」 と 「コルドバ」 の2曲のみと言うことになりました。




カンバン曲を弾き抜かれた?

 当初、アストゥリアスを アルベニスが名付けた通り、「前奏曲」 としておこうかとも考えたのですが、やはりそれでは多くの人が迷う(?)と思いますので、 通例どおり「アストゥリアス」として収録しました。 この 「スペインの歌」 としては看板曲を弾き抜かれてしまったことになりますね!  ・・・・・・・・来年には大谷選手も大リーグ行きだそうですが。
 





⑪ オリエンタル



東洋風と言う意味だが

 オリエンタルという言葉は直訳すれば 「東洋風の」 ということになると思います。 東洋といってもどちらかと言えば中近東あたりを意味し、あまり日本や中国のイメージではないようです。 さらにスペイン人が言うオリエンタルは、スペイン各地に残るアラビア的なものを意味するようです。 この曲もそのような 「アラビア的な曲」 と理解すればよいようです。




”じゃないほう” の

 オリエンタルといえば、グラナドスにも有名な曲(スペイン舞曲第2番)がありますので、それと間違えないようにして下さい。 因みに ”オリエンタル” としては ”あちら” つまりグラナドスのスペイン舞曲第2番の方が有名で、単純にオリエンタルと言えば、そちらを言うことが多いようです。



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有名 ”じゃないほう” のオリエンタル (アルベニスの「スペインの歌」 第2曲)  3段目の3個の音で動くところはなかなか難しい。 5~6段目は結構嫌な感じ。 最後の段はもっと厳しい!




 つまり ”こちら” は あまり有名 ”じゃないほう” のオリエンタルということです。 いずれはグラナドスの作品集も出したいと思っていますので、いずれは ”あちら” のオリエンタルも録音してみたいと思っています。   ・・・・・・ ”あちら” だの ”こちら” だの、”じゃないほう” だの、ややっこしい? 



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”有名なほう” のオリエンタル (グラナドス作曲のスペイン舞曲第2番)  二重奏曲として定番だったが、最近では独奏で弾かれるようになった。 いずれはこちらも録音したいと思っている。



セゴヴィア編があるらしいが


 曲はかつてエルネスト・ビテッティがLPに録音していて(1970年代の終り頃)、それをよく聴いていました。 そのLPには「セゴヴィア編曲」 と書いてありましたが、そのセゴヴィア編が出版されているのかどうかはわかりません。 またセゴヴィア自身では録音などは残していません。



華麗な曲ではないが、印象度は強い。 ・・・・でも難所があちこち。

 この曲も原調がニ短調で、ギターではそのニ長調で演奏するのが最も良いと思いますが、ギターでは弾きにくいところがたくさんあります。 特に3個の和音(6度と3度の)が16分音符で動くところや、3連符の連続などは厳しいところです。

 技術的に難しい割には華やかな曲とは言えませんが、印象度は強い作品ではないかと思います。 秘めた情熱などを感じる作品です。

中村俊三  イサーク・アルベニス作品集(CD)



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     2017年 9月発売  2000円+税



<収録曲紹介>


 ⑧ カタルーニャ奇想曲 




話があっちこっちだが

 当ブログは、基本的に今現在はバッハの平均律クラヴィア曲集の話となっているのですが、この9月にCDを出したことから、CDの紹介となっています。 さらに一昨日はマルコ。メローニのリサイタルに行ったので、そのレポートたなりました。 何か、あっちこっちに行ってしまい、収拾が付かなくなっていますが、とりあえず、CDの紹介に戻りましょう。 バッハの平均律の話は、今しばらくお待ち下さい。     ・・・・・誰も待っていない?



スペイン音楽というと、だいたいアンダルシア的、あるいはフラメンコ的な音楽を言うが

 この 「カタルーニャ奇想曲」 アルベニスが1890年ころ作曲した組曲「スペイン」作品165 に含まれます。 スペイン音楽というと、だいたいアンダルシア地方で盛んなフラメンコのイメージで、このCDに収録されたアルベニスの作品も、そうしたアンダルシア、あるいはフラメンコ的な曲が多くなっています。




カタルーニャ地方はスペインの他の地方と文化も音楽も違う

 しかし、この 「カタルーニャ奇想曲」 はその曲名通り、カタルーニャ的な音楽と言うことで、それらの曲とは、若干趣を異にしています。 また文化的にもカタルーニャ地方と、マドリードを中心としたスペイン中央部、あるいは南部スペインとでは、全く別のものといってもよいようです。

 カタルーニャ地方の人々は、自分たちがスペイン人であるよりも、カタルーニャ人であるといいう意識が強いといわれています。 そして、その音楽もまた、かなり違い、少なくともカタルーニャ地方ではフラメンコを踊ったりする習慣はないようです。




レアル・マドリッドとバルセロナFCが熾烈な争いを繰り広げるのも

 サッカーで (またサッカーの話になってしまうが)、 レアル・マドリッドとバルセロナFCの伝統の一戦、つまりクラシコが異常なほどの盛り上がりを見せるのも、この文化の違いに関係があるようです。




アルベニスはカタルーニャ人

 そう言えば、アルベニスもカタルーニャ地方(ピレネー山脈中の小さな町)の生まれです。 ということは、この曲はアルベニスの生まれ故郷を歌った曲ということになるのでしょう。

 一般にアルベニスの作品(特にギター曲では)は、アストゥリアスやセビージャなどのいかにもスペインといったフラメンコ的、あるいはアンダルシア的な音楽がイメージされますが、アンダルシア人からすれば、 ”よそ者” なのかもしれません。



無題
アルベニスが生まれたピレネー山脈中にあるカンプロドンの風景



落ち着いた、穏やかなリズムの曲


 この 「カタルーニャ奇想曲」 も、メロディが美しいのは相変わらずですが、この曲にはフラメンコ的な華やかさもアンダルシア的な情熱もなく、 どちらかと言えば落ち着いた、緩やかなリズムの、静寂の世界があります。 かといってまた、暗いとか悲劇てな感じは全くありません。

 曲は4分の2拍子で、シンコペーションを伴うリズムに伴奏されて、メロディが表れます。 そのメロディは、前述のとおり、情熱的でもなく、またセクシーな感じでもなく、何か安らぎを感じるような、とても落ち着く感じのものです。




正しいテンポが要求される


 テンポは 「アレグレット」 の指示ですが、軽快というより、ごく自然なテンポが要求されるのでしょう。 速すぎてもいけないが、かと言って遅すぎてもいけない、その正しいテンポを見極めることは、演奏家として非常に重要なことで、また難しいことでもあるのでしょう。



5音音階に郷愁を感じるのは世界共通

 曲の最後に突如、5音音階が表れます。 5音音階といえば、日本の歌にも使われ、何か懐かしさを感じるものです。 この最後の5音音階は、何とも郷愁を誘うもので、おそらくアルベニスがこれをここに置いたのは、一種の ”謎解き” なのでは、と私は思います。  5音音階に郷愁を感じるのは、何も日本人だけとは限らないようですね。





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カタルーニャ奇想曲の最後の部分。 突如として5音音階が現れる。 終止形は通常の 属7⇒主和音 ではなく、下属和音を使った ”女性終止” と言われるもの。 しかも同主短調からの借用で、結果として非常に柔らかい終止となっている。





これ以上ないくらいに、優しく終わる

 さらに最後の最後は通常の 属7⇒主和音 で終わらず 下属和音⇒主和音 で終わり、さらにこの下属和音は短調のものが使われています。 この 下属和音⇒主和音 の終わり方は ”女性終止” とも呼ばれ、通常の終わり方よりも ”優しい” 終わり方と言われています。 この曲は、曲の閉じ方としてはこれ以上ないくらいに優しく終わっています。 




故郷への郷愁の念

 恐らくアルベニスはこの曲に、生まれ故郷の山々や川、小鳥たちの声、そしてなんといっても幼少時にいつも感じていた母のぬくもり    ・・・・・・・そう言ったことをすべて込めたのではと思います。 もしかしたらこの曲は、カタルーニャ人であるアルベニスが、本当に書きたかった曲、 あるいは人々に伝えたかったことなのかも知れません。



時代や国が違っても

 私自身も出来る限り、こうしたアルベニスの気持ちに沿った演奏となるように、細心の注意を払いました。 こうしたことはまさに技術以外のこと、いかにその想いを共感出来るかと言ったことに尽きるのでしょう。 時代や国が違うと言っても、アルベニスも私も同じ人間、必ず共通したイモーションはあるはず・・・・・・・・   そう思いながら演奏しました。






⑨ パヴァーナ・カプリッチョ



スペイン音楽に傾倒する以前の若い頃の作品

 この曲はアルベニスが若い頃作曲したもので、少なくとも1883年以前のもの、つまりアルベニスが23歳までに作曲した曲と言われています。 聴いた感じはこの曲もアルベニスの他の曲のようなスペインぽさはなく、どちらかと言えば、ショパンやシューマンなどの曲に近い、いわゆる ”ロマン派的” な曲といえます。



野辺に咲く一輪の花

 たいへんメロディの美しい曲で、間違いなく、アルベニスの初期の名作の一つで、まさに ”野辺に咲く一輪の花” といった美しさがあります。



DARrW6BUAAI6Fpf.jpg パヴァーナ・カプリッチョ はこんな感じだろうか?  (写真はあくまでイメージです)





原曲はギターとの相性もいいホ短調だが、かなり高い音域

 ギターではタレガの編曲がありますが(私は持っていないが)、 それほどギターで演奏される曲とは言えません。 原曲はホ短調で、ギターとは相性の良い調で出来ていますが、音域はかなり高い音域を使っています。 この曲の可憐な感じは、その高い音域と関係があります。




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パヴァーナ・カプリッチョの私の編曲譜



出来ればその音域をキープしたかったのだが

 私のアレンジは原曲どおりホ短調なのですが、メラディ・ラインについては少なくとも一オクターブ、 場所によっては2オクターブ下げざるを得ませんでした。 出来ればその高い音域をキープしたかったのですが、ギターと言う楽器を考えても、また私自身の器量を考えても、不可能でした。



ハーモニックスの使用にこだわった

 その可憐な感じを少しでも出したいということで、一部ハーモニックス奏法を用いて弾いています。 このホ短調という調を選択したのも、ハーモニックス奏法が使いやすいと言う理由もあります。




難しそうには聴こえないが、ギターで弾くのはなかなか難しい

 曲としてはそれほど複雑な曲でなく、ピアノで弾くのは特に難しくはないのではと思いますが(もちろん弾いたことはないが)、 ギターでは決して簡単な曲ではありません。 一見難しそうに感じるアストゥリアスやセージャなどと比べても、あまりやさしいとは言えません。 その点が、たいへん美しい曲にも関わらず、今現在はギターで弾く人が少ない原因なのでしょう。 

マルコ・メローニ バロック・ギター・リサイタル



   9月10日(日)石岡市ギター文化館  14:00



A.de.サンタクルス(1700年頃) : マニサパロス、 ハ長調のカナリオ、 ハカラス (J・イノホサによって復元された全集より)

アントニオ・ダ・コスタ(1600年代) : 序奏とカナリオ

J.S.バッハ : リュート組曲第4番

・・・・・・・・・・・・・・・・・

H.I.F.ビーバー(1644~1704) パッサカリア(「ロザリオの謎」より)

ガスパル・サンス : カナリオス

J.S.バッハ : シャコンヌBVW1004 

 

 *アンコール曲
 
ル・コック : スペインのフォリア
 
バッハ : 主よ、人の望みの喜びよ





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へえ~ 、ウウン、 なるほど、 凄い!


 今日ギター文化館で 「マルコ・メローニ バロック・ギター・リサイタル」 を聴きました。  お恥ずかしながら、このギタリストについてはあまりよく知らず、「バロック・ギターのリサイタルって、ちょっと珍しいかな」 と言った感じで聴きに行ったのですが、これが聴いて驚き! どう表現していいかよくわかりませんが、、へえ~ 、ウウン、 なるほど 凄い!   




バロック・ギターの曲って?


 バロック・ギターについては私自身では若干の知識しかなく、5コース複弦(第1コースのみ単弦で計9本)で、ラスゲアード奏法を多用し、作品を残した人としては ガスパル・サンス、 ロベルト・ド・ヴィゼー   ・・・・・他に誰かいたかな?   どちらにしても純粋なバロック・ギターのレパートリーはあまり広くないんだろうな、 などとリサイタル前に考えていました。



響きが美しく、リズムが面白い

 始まってみると前述のとおり驚きで、まず響きの美しさ。 美しいと言っても音一つ一つよりも ”響き” が美しいのです。 そしてリズムが面白い。 最初の曲は初めて聴く曲ではありますが、装飾を加えたり、リズムを変えたりなど、かなり自由に弾いているような感じがします。 



埃っぽいイメージを一蹴

 正直、これまでバロック・ギターというと、楽器博物館のガラス・ケースの中にあるイメージで、一部の愛好者や ”通” の人だけが楽しむものかなと思っていましたが、リサイタルが始まってみると、そんな思いは一蹴され、誰でも、特に若い人にでも楽しめる音楽だなと感じました。




いつの間にか

 2番目に演奏されたダ・コスタのカナリオなど、本当に楽しい感じで、特に楽しめました。 話としては、「この時代の音楽は楽譜通りに演奏されたわけではなく、演奏者の技量により装飾などを施して演奏するのが通例」 ということは知っているのですが、メローニの演奏を聴いていると、そのことの意味がよくわかるような気がします。

 おそらく当時の人も、現代の人も楽しい音楽は、やはり楽しく感じるのだろうなと思いました。  ・・・・・・おっと、いけない、今は21世紀で、目の前のステージで弾いているの私より少々若いイタリアのギタリストだっけ、いつの間にか自分がバロック時代のとある街の人だかりの中で、放浪のギタリストの演奏を聴いているような気になりました。

 このダ・コスタのカナリオはいずれは五線譜(メローニが使っているのは、おそらくタブラチュア) として出版される話もあるようです。



リュートの代用?

 これもリサタルが始まる前に 「バッハのリュート曲やるなら、リュートでいいんじゃないかな」 なんて言ってしまったのですが、バッハの曲が始まってみると、確かにこれはリュートの代用としてバロック・ギターを弾いているわけではなく、あくまでバロック・ギターでバッハを弾いていることがわかりました。 




言われなければわからない


 最後にはバッハのシャコンヌを演奏しました。 最後だったので、”素直に” シャコンヌを弾く訳ではないだろうと、ある程度予測は出来たのですが、そのとおり、特にテーマはプログラムに書いてあるのでバッハのシャコンヌだとわかりますが、そう言われなかったらほとんど何の曲かわからなくなるくらい装飾されていました。




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左から宮下祥子さん、 マルコ・メローニさん、 濱田滋郎先生、 私



装飾音も一体となった和音

 装飾音といっても、多くの場合、その場で消えてしまう訳ではなく、その和音の中に音が残るので、和音そのものが変わったようにも聴こえます。 違っていないのは低音だけで、低音は他の音よりもちょっと早めに発音されるので、低音を追ってゆくとシャコンヌだとわかる感じです(その後の変奏の方はそれほどは変わっていません)。 




ラスゲアードも洗練された音


 サンスのカナリオスは立った姿勢で演奏されました。 座って弾く場合は足台などは使わず、足を組んで右足に楽器を載せたり、左足に乗せたり、いろいろ姿勢を変えていました。どちらにしてもストラップを使用しています。 通常の弾き方以外にラスゲアード奏法も多用していますが、決して荒っぽい音ではなく、たいへん洗練された音です。




すべては研鑽と努力によるもの

 宮下祥子さんの話によれば、本人は 「非常にたくさんのタブラチュアを研究した」 と言ってたそうです。 今日のコンサートなど非常に即興性に富んだ楽しい演奏ですが、その裏には多くの研鑽と努力があったのでしょう。  いろいろあるけど、やはり音楽家というのは人を楽しませてナンボという商売なんでしょう (急に関西人にならなくてもよいが)。

 
 
中村俊三  イサーク・アルベニス作品集



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      2017年9月発売  2000円+税





<収録曲紹介>

 組曲「スペイン」作品165 より
     ⑥タンゴ    ⑦マラゲーニャ   ⑧カタルーニャ奇想曲




<組曲「スペイン」作品165> と <スペイン組曲作品47> は全く別の組曲

 ちょっと紛らわしいと思いますが、この <組曲 「スペイン」 作品165> は、これまで書いてきた <スペイン組曲作品47> とは全く別の組曲です。 原題では 「ESPANA, Seis hojas de album」 で、「SUITE ESPANOLA」 とはだいぶ違います。




「エスパーニャ ~6葉のアルバム」 のほうが良かったかな

 直訳すれば 「SUITE ESPANOLA」 はストレートに 「スペイン組曲」 で、 「ESPANA, Seis hojas de album」 の方は 「エスパーニャ ~6葉のアルバム」 となるでしょうか。 「Seis hojas de album」 を 「組曲」 としてしまったためにややこしくなってしまった訳です。

 この組曲は、原曲では以上の3曲に加え、「前奏曲」、「セレナード」、「ソルティコ」 の6曲からなります。 「前奏曲」も一応録音してみたのですが、曲数が多くなってしまったので、このCDからは外しました。





「タンゴ」は特別有名  「マラゲーニャ」 や 「カタルーニャ奇想曲」 も最近ではよく演奏される

 知名度や演奏頻度では 「スペイン組曲作品47」 に一歩譲るところはありますが、「タンゴ」はギター以外でも有名で、バイオリンなどでも演奏されます。 またタンゴ名曲の一つとしてポピュラー系のバンドでも演奏されたりもします。 「マラゲーニャ」 はイエペスの演奏で知られ、「カタルーニャ奇想曲」 は最近よく演奏されるようになっています。







⑥タンゴ



アルベニスらしい美しいメロディ。 セゴヴィアの編曲が知られている。

 前述の通り、ギター・ファン以外だと、アルベニスの曲としては、このタンゴが最もよく知られています。 アルベニスらしい、たいへん美しいメロディで、ギターへのアレンジとしてはアンドレス・セゴヴィアのものがよく知られています。 比較的早い時期から出版されているので、多くのギタリストがこのセゴヴィア編で演奏しています。



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アンドレス・セゴヴィア編曲のタンゴ。 ギターの魅力がより発揮されるアレンジだが、若干の誤植などもあるので、注意。 この版を使う場合は、やはり原曲を聴いたり、譜面を読んだりすることが必要。



原曲と同じ音域で演奏出来る

 原曲はニ長調で、セゴヴィアのアレンジもこのニ長調となっています。 通常、ピアノ曲をギターで原調で弾くといっても、ほとんどの場合1オクターブ下げるわけですが、このタンゴに関しては、原曲と全く同じ音域で演奏出来ます。  ・・・・・アルベニスがギターで演奏することを想定して作曲したと考えるのは、ちょっと考え過ぎかもしれませんが、ギターの音域にピタリと治まってしまいます。

 セゴヴィアは一部分をオクターブ下げてアレンジしていますが、低音弦に独特の魅力のあるギターにとっては、たいへん有効な方法でしょう。 ギターとの相性はたいへん良い曲と言えます。




”ほぼ” セゴヴィア編

 私の演奏では、基本的にこのセゴヴィア編を用いているのですが、この譜面をそのまま弾くのは、私には難しく、技術的な問題から若干変更しています。 また誤植と考えられる箇所や、原曲からやや離れてしまった部分なども修正しています。

 しかし前述のオクターブ下げる箇所や、ハーモニックスを使用する箇所などは同じなので、聴いた感じは ”ほぼ” セゴヴィア編となっています。 セゴヴィア編はギターの魅力を最大限引き出した編曲といえるでしょう。




一見やさしそうに聴こえるが、かなり難しい曲   ・・・・最近ではこの程度のこと

 この曲は、聴いた感じではそう思えないかも知れませんが、ギターではかなり難しい曲と言えます。 個人的には華やかで、いかにも難しそうなアストゥリアスよりも、このタンゴの方がずっと難しく思えます。 この曲を何の困難さも見せず、美しく演奏出来るギタリストは、一流の証ではないかと思います。   ・・・・・もっとも、最近のギタリストは、その程度は当たり前のようですが。






⑦マラゲーニャ



ピアノ曲とすると、ちょっと物足りない感じだが、ギターにはちょうどよい

 原曲が、わりとシンプルで、ピアノ曲としては音が少なく、何となく物足りないようにも思えますが、ギターではちょうどよいくらいになっています。 したがって、ギターにアレンジする際にも、ほとんど音を省略せずに、ほぼ原曲通り弾くことが出来ます。 またまた同じことを言ってしまいそうですが、まさにギターで演奏することを前提としてピアノに書かれた曲のように感じられます。




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ピアノの譜面とすると、かなりシンプル。 ちょっと物足りないのではと余計な心配をしてしまう。 #1個で、見た目はホ短調に見えるが、「シ」を主音としたフリギア調。 無理やりホ短調だと思いこむと、主和音(Em)ではなく、属和音(B7)が中心になっているようになる。




ホ短調?

 原曲はホ短調ですが、ギターでは1オクターブと2度下げてニ短調で演奏されることが多いです・・・・・・  おっといけない、この曲長調や短調で出来ている曲ではありませんね、 もちろんこれはあくまで♭1個という調号上、つまり外見上でのことです。

 この曲は長音階や短音階ではなく、フリギア調という教会旋法で書かれています。 フリギア調というのは通常の長音階のうち、第3音、つまりハ長調の#などが付かない音階で言えば、「ミ」 を主音とした音階のことです。




短調よりもさらに暗い

 他に教会旋法で「レ」を主音としたドリア調という音階もありますが、ドリア調は明るさで言えば長調と短調の間くらいで、「明るくも暗くもない」 と言った感じですが、このフリギア調は短調よりもさらに暗い感じに聴こえます。 フラメンコの、あの独特の雰囲気は、このフリギア調という音階に大いに関係があるでしょう。




アルベニスがフリギア調を用いるのは1890年代以降

 スぺイン音楽、特にフラメンコではこのフリギア調というのがよく使われるわけですが、アルベニスの場合、スペイン的な曲といっても、ほとんどが通常の長調、または短調で書いています。 アルベニスがこのフリギア調で作品を書くようになるのは1890年代以降のようで、この組曲の中の「前奏曲」、 「旅の思い出」の中の 「入り江のざわめき」 などがこのフリギア調で書かれています。




3連符はスラー奏法? それとも実音で弾く?

 この曲をギターで演奏するのは、前述のとおり、特に難しくはありませんが、この曲に出てくる3連符をクリヤーに、またタイミングを崩さずに弾くのはそう簡単ではないかも知れません。 これをスラー奏法で弾くと、なかなか音がはっきりと出にくく、また右手で弾くと爪が引っかかったり、また空振りしたりと、なかなか安定して出てくれません。

 この3連符をスラー奏法で弾くか、通常の弾き方で弾くかは、演奏者次第だと思いますが、私の場合、伴奏形の3連符は右手、メロディの中の3連符はスラー奏法で弾いています。 



中間部はさらにシンプル。 弾きたい方には譜面差し上げます。

 中間部は単旋律とアルペジオの組み合わせで、技術的には全く問題のないところです。 その分だけメロディやアルぺジオを美しく弾くセンスや美しい音色が必要でしょう。 何はともあれ、ギターで弾くアルベニスの曲としては、数少ない弾き易い曲なので、アマチュアの方々にもオススメです。 ただし、譜面のほうはあまり出ていませんから、弾いてみたい方には譜面を差し上げます。



中村俊三  イサーク・アルベニス作品集

      

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       2017年9月発売  2000円+税





<収録曲紹介>

④ キューバ



キューバってスペイン?

 「キューバ」 は原曲のスペイン組曲の最後、8曲目で、当初からこの組曲の中の1曲として作曲された曲の一つです。 でもスペイン組曲に 「キューバ」 というのもちょっと変ですが、当時キューバはスペインの植民地で、キューバもスペインの一地方だったのでしょう。



リズムは典型的なスペインのもの

 曲の方は、今現在のキューバ音楽とはあまり関係がなさそうで、当時キューバの音楽といえば、ハバネラ (ハバナ風と言う意味)が有名ですが、ハバネラともあまり関係がなさそうです。

 8分の6拍子で書かれていますが、4分の3拍子と交錯するようになっていて、どちらかと言えば典型的なスペインのリズムと言えます。 明るく美しいメロディの曲ですが、この交錯するリズムが、その美しいメロディをとても引き立てています。




バルエコ以来ギターでも演奏されるようになった

 これまでは、あまりギターで演奏されませんでしたが、1980年代にマヌエル・バルエコがギターにアレンジして演奏して以来、ギターでもある程度弾かれるようになりました(頻度は多くないが)。 




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私のバージョンはニ長調

 原曲は変ホ長調(♭3個)で、バルエコは半音上げて(実際は11度下げているが)、ホ長調に移調しています。 それに従い、一般にはこのホ長調で演奏されることが多いようです。

 私も当初、このホ長調版d弾いてみたのですが、意外と上手くゆかず(技術が足りないだけ?)、 1音下げてニ長調にアレンジしてみました。 つまりバルエコ編は原調の半音上、私のアレンジは半音下という事のなります。

 私のバージョンは1音低い分だけやや渋く聴こえるかも知れませんが、中間部はト短調となって、よりいっそうしみじみした感じは出せると思います。 




クレーマー?

 またまたバルエコ編にクレームを付けるようで、恐縮なのですが、このバルエコ編で弾く愛好家やギタリストが多いので、はやりコメントしておきましょう。 バルエコは、なぜが中間部の後半の繰り返しを省略しています。 8小節ほどなので、CD(あるいはLP)などの収録時間の関係とも思えません。

 中間部が冗長になることを避けるためかも知れませんが、それなら中間部の前半の方の繰り返しを省略すればよいのではと思います。 この中間部の前後半をA、Bとすると、原曲では A A B B  A となっています。 バルエコ編ではそれを A A B  A としている訳ですが、これではAが3回で、Bが1回と言うことになって、バランスが良くないのではと思います。

 基本的には繰り返しを省略すべきでないと思いますが、省略したとしてもバランスを考えるべきではと思います。 他にも気になる個所はあるのですが、ちょっとうるさくなるので、やめておきましょう。  ・・・・・・・もう、十分に ”五月蠅い” ?




原曲をよく知った上でなら

 バルエコ編というと、一般的には ”原曲に忠実” といったイメージがありますが、実際にはそうではないようです。 バルエコ編は、確かにタレガやリョベットなどのアレンジに比べて弾き易い点はあって、かなり実用的なアレンジなのですが、 バルエコ編を用いる時には、かならずオリジナルの譜面と比較する必要があると思います。

 原曲を知った上で、なお且つバルエコの方法に共感を感じるなら、もちろんバルエコ編に忠実に弾くことに何の問題もないでしょう。



かなり苦労はしたが、出来上がってみるとなかなかいい

 またまた話がそれてしまいましたね、このニ長調版でもやはり音の出しにくいところは多々ありますね、結構苦労しました。 確かにテンポなども少し速くすべきだったのですが、こうしてCDとして出来上がった感じでは、結構聴けるというか、「わりといいんじゃないかな」 といった感じもします。






⑤ セビージャ


セゴヴィアはリサイタルの最後にこの曲を演奏していた

 このセビージャはアルベニスの作品の中でもアストゥリアスと並ぶ人曲で、たいへん華やかで軽快な曲です。 同じ華やかさでも、アストゥリアスが ”陰” なら、セビージャのほうは ”陽” ということになるでしょう。 アンドレス・セゴヴィアの愛奏曲の一つで、アストゥリアスとともに、リサイタルの最後などに演奏していました。





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セビージャはアンドレス・セゴヴィアの愛奏曲の一つで、リサイタルの最後に演奏していた




変則チューニングで弾く代表的な曲

 ⑤弦=ソ ⑥弦=レ の変則チューニングの代表的な曲で、このチューニングに曲がピタリとはまります。 もともとがピアノ曲だということを考えると、偶然にしてははまり過ぎですね、まさかそこまで考えてアルベニスが作曲したわけではないと思いますが、このチューニング以外のアレンジは、まず考えられないでしょう。



最後に弾くのは、このチューニングにも関係がある

 この曲はリサイタルの最後に演奏される理由の一つに、この変則チューニングも関係しています。 もちろんプロのギタリストであれば、曲間にチューニングを変えることなど、なんでもないことですが、一度この変則チューニングを行った後、通常のチューニングに戻すと、演奏中にチューニングが不安定になりやすくなります。



CDの場合は関係はないけど

 もちろんそのことも考慮してチューニングを行うのですが、それでも余計な心配が増えることになります。 そうしたことを気にするギタリストもいれば、全く気にしないギタリストもいますが、私自身もこうした変則チューニングの曲は最後に弾きたいと考える方です。    ・・・・・・・・もちろんCDの場合は関係がないので、このCDでは5曲目となっている。





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セビージャで検索すると、どうしてもサッカー・チームが出てきてしまう。 セビージャには昨年清武選手が所属していた。





「セビーリャ」? それとも「セビージャ」?  はたまた「セヴィージャ」?

 このCDでは曲名を 「セビージャ」 としましたが、綴りは 「Sevilla 」 で、これをカタカナで 「セビーリャ」 とするか、 「セビージャ」 とするかは意見の分かれるところです。 おそらくスペイン現地では 「セビージャ」 、他のヨーロッパ諸国では 「セビーリャ」に近いのでしょう。

 どちらいいかということは、いろいろ調べてみてもなんとも言えないところのようですね、どっちでもよいというのが最も正しいのかも知れません。



結局、サッカー・チームが 「セビージャ」と書かれるので

 このCDで 「セビージャ」 の方を採用したのは、最近では、何となくこの表記のほうが多いのかなということと、何と言ってもサッカー・チームが 「セビージャ」 と呼ばれているところからです。 おそらく今では、このサッカー・チームの名でこのセビージャという都市の名前を知ったと言う人も多いでしょう。




「セヴィージャ」 とは表記しないらしい


 もっとも 「ビ」 には V が使われているので、 「セヴィージャ」 となるべきかも知れませんが、スペイン語では 「V」 と 「B」 の発音を区別しないので、 「セージャ」 と表記する方が正しいのだそうです。 確かに 「セヴィージャ」 という表記はあまり見かけませんね。

 

 

中村俊三   イサーク・アルベニス作品集(CD) 
    


           2017年9月発売   2000円+税



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収録曲紹介    スペイン組曲作品47より   アストゥリアス、 グラナダ、 カディス、 キューバ、 セビージャ




グラナダ  ~オリジナル4の1曲

 前回はアストゥリアスの紹介をしました。 今回は2曲目の「グラナダ」です。 この曲は1886年頃、当初からこのスペイン組曲の中の1曲として、また 「グラナダ~セレナータ」 という曲名もアルベニス自身によって付けられたものです。 つまりスペイン組曲の ”オリジナル4” の一つということになります。

 因みに ”オリジナル4” の他の3曲は 「カタルーニャ」、 「セビージャ」、 「キューバ」 です、「セビージャ」、 「キューバ」 はこのCDに収録しましたが、「カタルーニャ」 は収録していません。 当CDに収録している 「カタルーニャ奇想曲」 とは別の曲です。




スペイン的な曲を書くようになった頃の作品

 1886年頃といえば、アルベニスがスペイン的な音楽を書くようになった初期のものと考えられ、この曲も作曲技法的に見れば、特にスペイン音楽的な技法を用いていると言う訳ではなく、後期のロマン派の延長と言えるでしょう。 しかしメロディなど、その素材の一つ一つは、やはりスペインの香り高いもので、何と言ってもたいへん美しいものです。




何といってもメディが美しい

 中間部のメロディなど、アルベニスが書いたメロディの中でもひときわ美しいものではないかと思います。 アストゥリアスとはちょっと違った感じの曲ですが、ギターのレパートリーとして、たいへん人気のある曲となっているのはうなづけます。




タレガもリサイタルで弾いていた

 アルベニスとは若い頃から親交のあったタレガがギターへの編曲を残しており、またタレガのリサイタルのプログラムにもその曲名が見いだされ、比較的早い時期からギターでも演奏されていたようです。




グラナダはアランブラ宮殿もある有名な都市

 ところで、このグラナダはスペイン南部のアンダルシア地方のネバダ山脈の山あいにあり、なんといっても有名なアランブラ宮殿のある都市として知られています。

 クラシック・ギターなどやっていると、何となくスペインの地名や都市名を覚えてしまうのですが、このCDに収められている12曲中、8曲はスペインに関する地名などが曲名となっています。 



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曲名になっているグラナダの街 残念ながら、私はまだ行ったことがない




 私の場合、グラナダ、カディス、セビージャといった都市の ”名前” には日常的に接しているのですが、残念ながら、まだ行ったことがありません (マドリードとトレドにはほんのちょっと行ったことがあるが)。




ギターではホ長調で演奏されることが多い


 ギターへのアレンジは私自身のものなのですが、結果的には他のギタリストなどが弾いているアレンジと、あまり大きな差はないでしょう。 原曲はヘ長調で、タレガがこれをホ長調にアレンジして以来、ほとんどのギタリストがこのホ長調で演奏していて、私のアレンジもそれを踏襲しています。   ・・・・女流ギタリストのニコラ・ホールがイ長調で演奏していたが。




最初に戻るところで 「あれ?」 と思うところがあるかも知れないが

 他のギタリストの編曲と聴いた感じ、ちょっと違って聴こえる部分といえば、中間部で、最初に戻る直前とところでしょうか。 ここに原曲ではヘミオラ、つまり部分的に8分の3拍子ではなく、4分の3拍子となっているところがあるのですが (と私は思いますが)、タレガやバルエコはこのヘミオラを無視したアレンジをしています (と私には思えます)。

 ここを私のアレンジでは原曲どおりヘミオラになるようになっているので、一般的なギター・アレンジに馴染んでいる人にとっては、「あれ? ここちょっと変じゃない」 と聴こえるかも知れません。 その場合はピアノの原曲を聴いてみて下さい、一応私が弾いているように聴こえると思います。

 





③カディス 




1890年頃の作品

 このカディスは1890年頃 「セレナータ・エスパニョーラ 作品181」 として作曲された曲ですが、前述のr通りアルベニスの死後このスペイン組曲第4曲「カディス」 に ”中身だけ” 当てはめられました。 




こちらはクレームが付かない?

 こちらの方はアストゥリアスと違い、あまり中身と曲名が食い違わないせいか、あるいは元々の曲名ではあまり知られていなかったせいか、特にクレームはつかないようです。




現在ではイ長調版が主流


 この曲もタレガがギターにアレンジしていて、当時から演奏されていたようです。 タレガのアレンジはニ長調(原曲は変に長調)ですが、このニ長調版は音域が高く、なかなか演奏しにくいので、現在はイ長調で演奏する場合が多くなっています。
 
このイ長調版が一般的になったのはバルエコの影響が大きいと思いますが、20世紀の前半にもイ長調版が出版されていたようです。 私が若い頃、年配のギター愛好家の方に、たくさんのSP盤などとともに、その譜面を見せてもらった記憶があります。 頼りない記憶によれば、アスピアスの編曲だったと思います。

 でも、そのアスピアス版で演奏するギタリストはあまりいなかったようで、当時このカディスを弾く人は、ほとんどタレガのニ長調版を使っていました。 




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コロンブスもこの港から新大陸に向かって出航したというカディス港




バルエコ版は弾きやすいが

 今日バルエコによるイ長調版が広く用いられるようになったのは、その演奏のすばらしさと、また弾きやすさが理由と思われますが、バルエコ編には若干編曲ミスも散見されるので、この版を使う人は注意が必要でしょう。 因みに私のアレンジもイ長調で、バルエコ編の影響はありますが、基本的には私自身によるものです。





軽快なテンポで弾くのは難しい

 もっとも、どのアレンジを用いても、あまり簡単な曲とは言えず、伴奏の音型をきっちり、弾んだリズムで弾きながら、メロディを美しく柔軟に奏でるは、かなりの技術が必要でしょう。

 またアレグレットという軽快なテンポで弾くのも、なかなか難しく、私の演奏でも、あと少し速いテンポで弾きたかったところはありますが、私の力だとこのくらいが限度でしょう。   ・・・・だいたい4分音符=84くらいで弾いています。
 
CD発売しました



中村俊三 : イサーク・アルベニス作品集  

     アストゥーリアス、グラナダ、セビージャ 他

      
   


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 2017年9月発売   2000円 + 税






スペイン組曲作品47 より アストゥリアス、 グラナダ、 カディス、  キューバ、 セビージャ





この組曲はアルベニス自身が完成したものではない


 今度発売した「アルベニス作品集」に収録した曲目の紹介をします。 といっても、これらの曲は私自身何度も演奏していて、このブログでも何度か紹介していますが、 やはりここは ”宣伝” なので書いておきましょう。

 このスペイン組曲作品は47は上記の曲以外に カタルーニャ、アラゴン、カスティーリャの3曲が含まれ、計8曲の組曲です。 アルベニスが書いた組曲の中でも最も良く知られたものと言えます。




曲名だけはアルベニスが決めたようだが

 しかしこの組曲はアルベニス自身で完成したものでなく、アルベニスの死後、出版社によってまとめられたものです。 これらの8曲中、グラナダ、カタルーニャ、セビージャ、キューバの4曲は188年代の半ば頃に、この組曲を構成する曲として作曲されましたが、残りの4曲については、出版社によって他の組曲に属する作品などが、曲名を変えられ、この組曲に編入されたものです。

 因みにこの組曲の8曲の曲名は、すべてアルベニス自身によって決められたもののようです。 つまり、この組曲はアルベニスによって個々の曲名だけは決められていたが、 ”中身” のほうは4曲しか完成していなかったというこのようです。   




アストゥリアスは ”よそ者” 


 このCDの最初の曲の 「アストゥリアス」 については、当ブログを読んでいる方々には改めて紹介の必要はないと思いますが、この組曲の中では ”オリジナル4” のほうではなく、 ”よそ者” のほうです (こういったこともよくご存じかも知れませんが)。

 もともとは 「スペインの歌作品232」 の前奏曲として作曲されたもので、”オリジナル4” の約10年後、つまり1895年頃の作品です。 このアストゥリアスがこの組曲の他の作品よりもいっそうスペイン音楽らしいのは、この作曲年代の違いもあるのではないかと思います。




かなりフラメンコ的な曲だがスペイン北部の地名が付けられた

 この「前奏曲」が出版社によってこのスペイン組曲の5曲目として曲名だけ 「アストゥリアス~レーエンダ(伝説)」 と決められていたところに ”当てはめられた” わけです。

 そこで、この曲がこの 「アストゥリアス~レーエンダ(伝説)」 という曲名に ”はまっている” かどうかが問題となる訳ですが、 この 「前奏曲」 は、誰が聴いてもそれとわかるフラメンコ風の曲です。 フラメンコといえばスペイン南部のアンダルシア地方ということになります。




沖縄風の曲に ”函館音頭” ?


 しかしこの ”アストウリアス地方” というのはスペン北部で、フラメンコとは全く縁のないところのようです。 そこで、 「この曲をアストゥリアスとするのはけしからん!」 と憤る人もいるわけです。 そううですね、私たち感覚から言えば、沖縄風の音楽に 「函館音頭」 なんて曲名を付けるようなものかもしれません。

 まあ、何はともあれ、今となってはクレームを付けてもしょうがないですね、この曲も 「前奏曲」 という曲名より、「アストゥーリアス」の方が人気も出やすかったのは確かでしょう。 スペインの地図など拡げさえしなければ、アストゥリアスは結構ピッタリの曲名ですね。   ・・・・・少なくとも日本人には。




音量とスピードが上がるように


 なんか、曲名についてだけで話が長くなってしまいましたが、中身の方は多分皆さんよくご存じと思います。 私のアレンジは一般的に演奏されているものと結構違いますが、なるべく原曲に近く、またよりスピードと音量が上がるように工夫しています。 演奏時間も 6:10 と、一般的なギターの演奏よりも若干速くなっていて、意外と(?)じっくり聴くというより、勢いで聴いてもらう感じになっています。 




これまで最も多く演奏してきた曲

 私の場合、ギターに世界にう入り込むことになったのも、またアルベニスという作曲家に強い興味を持つようになったのも、このアストゥリアスが大いに関係し、またこの曲をこれまで40年以上に亘って演奏してきて、コンサートでも間違いなく最も多く演奏してきた曲です。 自分でいうのは何ですが、まさに私の ”十八番” と言ったところで、困った時(?)には、必ずこの曲を弾いてきました。




荘快感とスリル

 そう言ったことで、やはりこの曲を、私の最初のCDの、最初の曲とし、まず皆さんにこの曲から聴いてもらうのが、最も妥当なことかなと思いました。  荘快感と、それにちょっと、スリルも感じていただければ・・・・・・
イサーク・アルベニス作品集  
 
  ギター:中村俊三      税抜2000円   発売2017年 9月






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<収録曲目>
  
  スペイン組曲作品47より
① アストゥリアス
② グラナダ
③ カディス
④ キューバ
⑤ セビーリャ

  組曲「スペイン」作品165より
⑥ タンゴ
⑦ マラゲーニャ
⑧ カタルーニャ奇想曲

⑨ パヴァーナ・カプリチョ
⑩ サンブラ・グラナディーナ

 スペインの歌作品232より
⑪ オリエンタル
⑫ コルドバ 


録音 2017年 4~7月    使用楽器:ヘルマン・ハウザーⅢ 1983






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<中村俊三 : イサーク・アルベニス作品集> 発売しました

 アルベニス作品集のCD発売しました。 ポータブルな録音機器によるもので、本格的な録音機材を使ったものではありませんが、音質などはそんなに悪くない気がします。 パッケージのデザインは、ちょっと”地味” ですが、かえって真剣にアルベニスの音楽に取り組んだ感じは出ているように思います。

 教材用のCDなどはこれまで何枚か作りましたが、本格的なプログラムで、CD製作会社に発注して作ったCDとしては、これが ”第1段” となります。




私のCD第1段はアルベニスしかない!

 CD発売第1段としては、やはりこれまでいろいろなギターのレパートリーの中で、最も力を入れて取り組んだアルベニスの作品集となりました。 クラシック・ギターの有名な曲を集めた 「クラシック・ギター名曲集」 的なものにしようかと思ったのですが、それはまた後にして、やはり第1段としては、このアルベニスの作品集にしました。




トリミング





有名な曲も、そうでない曲も


 曲目は上記のような12曲で、ギターへの編曲も私自身のものです。 アストゥリアスやグラナダなど、ギターでもよく弾かれ、ギター愛好家にとってはたいへん馴染みの深いものと、パヴァーナ・カプリチョやオリエンタル(スペインの歌)、キューバ(スペイン組曲)など、それほどはギターで演奏されていないものもあります。 




アルベニス




実際は15曲録音したが

 ほとんどのものがこれまで私が演奏会などで弾いてきた曲ですが、キューバとサンブラ・グラナディーナは、今回の録音のために編曲したものです。 実は上記の曲目以外にも、「入り江のざわめき」、 「朱色の塔」、 「マジョルカ」 の3曲も録音したのですが、1枚のCDに収めるには長くなり過ぎて、来年製作する予定の別のCDに収めることにしました。




録音はリサイタルより気楽?

 録音のほうは今年の3月頃から始めたのですが、なかなか満足のゆくものにならず、曲によっては4回くらい録音⇒編集の作業を繰り返しました。

 何日も前からプレッシャーのかかり、前日などたいてい寝付かれなくなったりするリサイタルに比べれば、弾き直しや、編集も出来る録音は、確かに精神的には楽ですが、しかし1回限りのライブと違って、何度も繰り返して聴くことを前提としたCDでは、やはり妥協は許されないので、そうしたプレッシャーは逆にかかります。 




リサイタルはプレッシャーはかかるが、意外とアバウト、でも録音はそうは行かない

  また弾き直しや編集が出来る分だけ、どうしても些細なミスやノイズ、ごくわずかなタイミングの狂い、曲想の一貫性などが気になってしまいます。 逆にリサイタルの場合は、あまり細かいことに気を使ったり、また理想を追い求めたりすると、かえって弾けなくなります。 

 「とりあえず弾ければいいかな」 と思って臨むリサイタルと、自分の出来る最大限のことをしなければならない録音とは、また違ったプレッシャーといえるでしょう。 




一応、自分でも聴けるCDになった

 最終的に、自分で聴ける演奏、自分で聴いて楽しめる演奏と言うことを目標として録音を行ってきました。 時間や日数は思ったよりかかりましたが、なんとか最後には自分で聴いても 「結構聴けるな」 と思えるCDになったと思います。




残念ながら一般のCDショップでは買えない

 個々の曲については、また次回書きたいと思いますが、 発売といっても、残念ながら一般のCDショップなどには置いてなくて、とりあえず、中村ギター教室、ギター文化館、その他 ということになります。 またコンサート等のイヴェント会場などでも販売いたします。

 クラシック・ギターに興味ある人でしたら、それなりに楽しんでいただけるCDだと思いますので、ぜひ聴いてみて下さい。