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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

バッハ:平均律クラヴィア曲集 23


 第2巻





第18番嬰ト短調プレリュード


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短調だが軽快。 スカルラッティ風の感じも

 これもスカルラッティ風のプレリュードと言えるでしょう。 前後半共に繰り返し記号があるなどということもスカルラッティ風です。 16分音符の音階と、8分音符と装飾音を伴う4分音符の組み合わせで、短調の曲ですが、リズムは軽快で、なかなか面白い曲です。 特に装飾音が有効に使われています。








第20番イ短調プレリュード



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不思議な浮遊感

 この曲も短調ですが、リズムは軽快で、さらに半音階、および変化音(#などの)が多用されています。 ”ミス・マッチ” とも思える、この3つの要素により、独特な不思議な響きの世界が作られています。 

 バッハの音楽と言えば、文字通り ”地に足が付いた” ような曲が多いのですが、 この曲に関しては、なんとも魅力的な ”浮遊感” があり、ロマン派を飛び越えて、印象派的な感じさえします。









第22番変ロ短調プレリュード


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どこかで聴いたことがあるような

 何か、とても懐かしい感じのするこのメロディは、シューマンの音楽を彷彿させます。 まさに厳格な印象のバッハの晩年の肖像画には相応しくない(?)、優しさを感じさせる曲です。

 また、初めて聴いた人でもどこかで聴いたことのあるような、親しみを感じさせる曲です。  この平均律第2巻は、最後の方になるにしたがって、より魅力的な曲が多くなっています。









第24番ロ短調プレリュード


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最後のプレリュードは期待を裏切って軽快な曲

 第1巻では最後を締めくくる第24番ロ短調はプレリュード、フーガ共に重厚なものでしたが、この第2巻のおいては、その予想と期待(?)を裏切るかのように、軽快なプレリュードとなっています。




ともかく、バッハの曲は飽きない


 短調で軽快なリズムということでは、第20番イ短調と似ていますが、この曲では、浮遊感というよりは軽快なステップと言った感じです。 この曲集の最後の方では、魅力的な曲が多くなっていると同時に、軽快なリズムの曲が目立つのも、特徴の一つのようです。   ・・・・・・・・ともかく、飽きないですね、バッハの曲は。

 
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 斜交 ~昭和40年のクロスワード 事件調書

   脚本 古川健    演出 高橋正徳 

   出演 近藤芳正、 筑波竜一 他

  11月26日(日)14:00   水戸芸術館 ACM劇場



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昭和38年の吉展ちゃん誘拐事件

 今日、水戸芸術館ACM劇場で上記の演劇を見ました。 この劇は昭和38年(1963年)に起きた吉展ちゃん誘拐事件を題材としたもので、被疑者の小原保(劇中では木原守)と、土浦市出身の敏腕刑事、平塚八兵衛(劇中では三塚九兵衛)との取調室での内容が演じられています。

 よく考えてみると、生で演劇を見るなどと言うのはこれまでほとんど記憶がなく、もしかしたらら、事実上初めてかもしれません。 少なくともプロの俳優が演じる本格的なものとしては。




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俳優さんの声量にびっくりずるのはドシロウト?

 それにしても、俳優さんたちの声量には、まず驚かされます。 主演の近藤さんなどはテレビ・ドラマでもよく見かける俳優さんで、テレビでは特にわかりませんが、こうした ”生” のステージで、声を張ると、思わず耳を塞ぎたくなるような声量です。

 この劇場はあまり大きなものではありませんが、でも演劇用のホールなので、特に音が大きく聴こえる訳ではありません。 かつて創(息子の)がここでギターを演奏したことがありますが、ギターの音などはあまりよく聴こえませんでした。 おそらくあまり音が響くと、セリフが聴き取りにくくなるので、むしろあまり響かなように設計されているのでしょう。

 私など、ギターの演奏はお客さんにもまあまあ、聴こえるようですが、いつも話の方はよく聴こえないとお叱りを受けます。 仮に、私などがこのステージなにかしゃべったとしても、ほとんどの人には聴こえないのでしょう。 もちろん、こうした俳優さんたちは若い頃から特別な訓練を行うのでしょうが、それにしても人間の声が、人によってこれほど違うものなのかと驚きます。




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演技だけでの場面転換

 私の場合、あまり演劇など見たことがないので、きっと変なことに驚いているのでしょうね。 また、実際には舞台転換などは行わず、出演者の演技だけで、そこが取調室だったり、店の中だったり、被疑者の墓の前と言ったことを表しています。 それらは観客の想像力にゆだねている訳です。




私が中学生になる年


 この <吉展ちゃん誘拐事件> というのは昭和38年3月31日に起きたようですが、私のことで言えばちょうど中学校に入学する年になります。 事件から2年ほどして被疑者の自供により遺体となって発見されたわけですが、当時テレビで毎日のように報道されていたので、そうしたことは記憶にあります。 ただ、犯人がどういった人物なのか、動機はなにかなどはあまり覚えていません(何分、そんな歳だったので)。



かつては貧しさが犯罪の最大の動機だった

 被疑者は戦前から戦後にかけて、たいへん貧しい家に生まれ、足に障害を持ち、辛い人生を歩み、結局、お金に困って犯行を犯す、と言ったことのようです。 劇中でも言っている通り、当時の犯罪のほとんどお金に困ってのことだったようですが、最近は違った理由によるものが多くなったようです。

 
バッハ:平均律クラヴィア曲集 22



今年は寒くなるのが早いようで

今年は寒くなるのがちょっと早いようですね、このところ当ブログで楽譜の画像ばかりなっているので、たまには花の画像でも。 生で見ると、なんてことはないのですが、写真だと結構きれいに見えますね。




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平均律クラヴィア曲集第2巻



第1番ハ長調プレリュード



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第1巻ほどシンプルではない

 第1巻の場合、第1番ハ長調は終始アルペジオで出来ていて、基本的でシンプルなものになっています。 ”小平均律”的な2声のインヴェンションも基本的な音階で出来ていて、同じようなコンセプトだと思います。

 それに比べ、第2巻、第1番のプレリュードはそれほどシンプルではなく、16分音符と32分音符からなり、優雅なアルマンド風の曲になっています。 例のごとく速度標語などはありませんが、多くの奏者は遅めのテンポで、ゆったりと演奏しています。 和声法的にもあまり単純ではなく、#や♭などの臨時記号が目立ちます。



曲の閉じ方も、属7→主和音 ではない

 特に曲の終りなどは、ちょっと凝っていて、通常、というかこの時代の作品では 属7 → 主和音 という形で終わるのですが、この曲はその形で終わっていません。 ちょっと難しい形で終わっていて、和声的なアナライズが私にはよく出来ませんが、 Ⅱ → Ⅰ と言った形で、さらに Ⅱの五度の音は半音下げられ(ラ♭)、さらに導音(シ)が付け加えられるといった感じです。

 

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曲の終わり方がかなり特徴的、通常の属7→主和音 ではない。



いわゆる”裏コード”に似ているが

 ポピュラー系の音楽でよく用いる ”裏コード” 的ですが、裏コードでもありません(レが♭になれば裏コード)。 バッハは時々かなり凝った終わり方をしますが、このような例はあまり記憶にはありません。 ただ、曲全体としては、とても自然で、穏やか、和む感じの曲です。







第4番嬰ハ短調プレリュード



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アルぺジオ風のメロディに、装飾音がたくさん付いた、憂いを帯びたプレリュード

 アルペジオ風のメロディのプレリュードで、多数の装飾音が書かれた曲ですが、 憂いを帯びたメロディはとても印象的です。 相変わらずバッハによって速度指定はありませんが、多くの奏者はゆっくり目のテンポをとり、じっくりと歌わせています。







第5番ニ長調プレリュード


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モーツァルトのような

 一転して軽快なプレリュードです。 主調(ニ長調)の音階とアルペジオで出来たモチーフhがシンプルですが、溌剌としていて、スカルラッティ、あるいはモーツァルトのソナタを彷彿させます。 次世代を感じさせる曲の一つです。







第14番嬰へ短調プレリュード


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音価の違う音符を有効に使った、美しいアリアのようなプレリュード

 カンタータ、というよりオペラのアリアのような曲です。 たいへん美しいメロディの曲で、おそらくこの第2巻の中でもたいへん人気のある曲ではないかと思います。

 この曲の美しさの要因は、音程の動きだけでなく、8分音符、4分音符、16分音符、3連符、シンコペーションと、様々な音価の音符を極めて有効に使い、それが音程の動きとあいまって、私たちに大きな感動を与えるのでしょう。 バッハはリズムをたいへん有効に用いた作曲家であることは間違いないでしょう。

 



 
中村俊三ミニ・コンサート   ~アルベニス作品集発売記念 

  12月17日(日) 14:00~    石岡市ギター文化館


    入場料 800円(当日売りのみ)




 <曲目>

シューマン(タレガ編) : トロイメライ

カタルーニャ民謡(リョベット編) : 盗賊の歌

バルベルデ(リョベット編) : クラベリトス

カタルーニャ民謡(リョベット編) : エル・メストレ

アルベニス(中村編) : アストゥリアス、 グラナダ、 カディス、 キューバ、 セビージャ 





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ささやかではありますが


 ささやかではありますが、来月、12月17日(日)、 アルベニス作品集のCDの発売記念コンサートを行います。 ミニ・コンサートなので、通常のコンサートより時間は短めですが、CDに収録したアルベニスの作品のうち、「スペイン組曲作品47」に属する、アストゥリアス、グラナダ、カディス、キューバ、セビージャの5曲の他、来年録音する予定のリョベットの作品など、1時間弱ほど演奏します。




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 入場料は800円と、通常のコンサートよりはかなりリーズナブルで、チケットはなく、予約の必要もありません。 気楽にご来場下さい。 お待ちしています。





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バッハ:平均律クラヴィア曲集 22




バッハ:平均律クラヴィア曲集第2巻




第2巻は第1巻のように1冊の曲集としてまとめられたものではない


 第1巻の方は全部の曲について書きこみをしたので、第2巻については全体的に話をするだけにしましょう。 第1巻は1722年に完成されていますが、この第2巻は、その22年後の1744年に完成されたとされています。

 第1巻はバッハ自身の序文などもあり、文字通り完成された曲集なのですが、この第2巻の場合は1曲1曲が、それぞれ1枚の紙の裏表に書かれていて、1冊の形になった曲集ではありません。 




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バッハが晩年過した聖トーマス教会。 平均律クラヴィア曲集第2巻はバッハが世を去る6年前に完成されたとされている。




作曲年代は第1巻よりもさらに拡がる

 第1巻にしても、それぞれの曲の作曲年代はばらばらでしたが、この第2巻はさらにその作曲年代が拡がっているようです。 つまりここの作品の作風には、よりいっそう拡がりがあると言うことになります。

 一部には第1巻の成立年代よりも古いものもあり、もちろん晩年の作品もある訳です。 第1巻完成の際に ”没ネタ” になってしまったものも、この第2巻に組み込まれた、などというケースもあるかも知れません。




第1巻よりも動機がユルイ?

 第1巻はかなり意欲的に完成されたものと言ってよいと思いますが、この第2巻は 「いつの間にかプレリュードとフーガが溜まっちゃったから、とりあえず24曲にして、「第2巻」 としておこうか」 みたいなやや ”ユルイ” 動機が感じられなくも・・・・・・   いやいやバッハに限って、そんなことは!

 以前書きましたように、バッハは第1巻を弟子に複数回(確か3回)に渡って連続演奏して聴かせた話が残されています。 そのことにより、第1巻は連続して演奏することも視野に入れて作曲したことが窺われます。 曲の並びなどを見ても、そのことが推測されます。

 その点、この第2巻については、あくまで個々の曲の集合体ということで、連続演奏はそれほど意識しなかったように思えます。 つまり、この第2巻は全体のまとまりと言ったことはあまり考慮せず、いろいろ違った時期に作曲された曲が、第1巻と同様に調の関係で並んでいるということになるのでしょう。 もちろんハ長調から始まって、ロ短調まで24の調でプレリュードとフーガが書かれていると言ったことは全く同じです。 




どちらが内容が優れている?

 大ざっぱに聴いてしまうと、第1巻も第2巻も同じように聴こえてしますが、よく聴けば当然違いがあります。 専門家の評価も、「第1巻の方が意欲的でまとまりがあるが、第2巻は、やや2番煎じ的」 といった意見から、 「第2巻の方がより高い音楽性を持っている」 というように正反対の意見まであります。 もちろんそれは聴く人の主観ですから、自分なりにどちらのほうがより優れているか、などと考えながら聴くのも楽しみの一つでしょう。 




短調のフーガが大曲となる傾向はない

 その件(どちらが優れているかということ)はさておき、 とりあえず両者の違いを見てゆきましょう。 第1巻の特徴としては、「短調のフーガ、特に4の倍数番のフーガは、声楽的なテーマを持ち、長くなる傾向がある」 と言ったことでしたね。 どうやらその傾向は第2巻では全く見られないようです。




第2巻のほうが新しさを感じる

 基本的に声楽的なフーガを持つものがこの第2巻では少ない傾向にありますが、声楽的なテーマをもつ曲も、第1巻のように短調ではなく、長調になっていることが多いようです。

 また前回の記事で書いたとおり、第1巻では短調の曲(プレリュードもフーガも)は必ず最後は長調の和音で終わっていました。 しかしこの第2巻ではいくつかの短調のでは短調のまま終わっています。 そうした点からも新しさが感じられます。

 とは言っても、バロック時代後期では、短調の曲が短調で終わるのは、すでに一般的となっていて、バッハの作風の方が古く、第2巻では多少、時代に追いついたとも言えます。 もっとも、バッハもフーガ以外の曲では、特に舞曲的なものにおいては、短調の曲が短調で終わることが多くなっています。 フーガとは基本的に古風な様式なのでしょう。




意外性もある

 第2巻は1曲1曲が個性的で、「え、これバッハの曲? とか、バッハにもこんな曲があったんだ」 など意外性を感じる曲がかなりあります。  まるでスカルラッティのソナタのような曲とか、モーツァルトっぽい曲、中にはシューマンやドビュッシーを思わせるような曲もあります。

 確かに、この第2巻においては、全体のまとまり的なものは感じませんが、1曲1曲はなかなか面白い曲が並んでいます。 私自身でも、少なくとも最近では、この第2巻を聴く機会の方が多くなっています。 
バッハ:平均律クラヴィア曲集 21


 第24番ロ短調






ハ長調で始まったので


 この平均律クラヴィア曲集は、ドを主音としたハ長調とハ短調でプレリュードとフーガを書き始め、そして主音を半音ずつ上げながらすべての調でプレリュードとフーガを書くと言ったものです。 ハ長調で始まった訳ですから、最後はこの ”ロ短調” となります。

 ハ長調から書き始めた理由は、私たちにも何となく理解出来ます、やはりハ長調が一番基になるのは確かでしょう.、インベンションなども同じようにハ長調から始めています。 




ロ短調はバッハが最もこだわった調

 ハ長調で始めたので、最後はロ短調で終わる訳ですが、このロ短調というのは、バッハが最もこだわりを持つ調ともいわれています。 バッハには 「ミサ曲ロ短調」 「管弦楽組曲第2番」 などロ短調で書いた名作が残されています。 おそらくバッハにとってハ長調で始まることと、ロ短調で終わることは、どちらも重要で、必然的だったのでしょう。





「4の倍数の法則」なんてあったけ


 この曲集の ”シメ” となる訳ですから、この24番ロ短調は力の入った作品となるのは自然な流れでしょうか、確かにこの24番はプレリュードもフーガも長いものになってます。

 そうそう、忘れていましたが、この曲集では4の倍数番のフーガが大曲になるという法則がありましたね、そのとおり24番のフーガも長くなっています。




いろいろな点で他の曲の違っている

 さらに、他のいろいろな点でこのロ短調は他のものと違っています。 まずプレリュードとフーガにそれぞれ 「アンダンテ」、 「ラルゴ」 と速度標語が付けられていると言うこと。

 もっとも、全部の曲に速度標語、あるはメトロノーム数が書いていある譜面もありますが、これは前に言いました通り、後の出版社などで付けられたもので、バッハ自身が付けたものではありません。

 しかしこの24番のプレリュードとフーガ、それぞれに書き入れてある速度標語は、まぎれもなくバッハ自身のものです。

 



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第24番ロ短調のプレリュード。  バッハの手により「Andante」と速度標語が書きこまれている。 曲は完全に3声となっていて、トリオ・ソナタか、協奏曲の緩叙楽章のようになっている。



プレリュードには「アンダンテ」と書かれ、前後半共にリピート記号が付いている

 プレリュードは前述のとおり、 「アンダンテ」 の速度標語が付けられ、前後半共にリピート記号が付けられています。 ゆっくり演奏し、かつ繰り返す訳ですから、確かに演奏時間は長くなりますね。 

 完全な3声で書かれてますが、バス声部は常に8分音符を刻み、トリオ・ソナタ、あるいは二重協奏曲の緩叙楽章の通奏低音のようになっています。




私が一番最初に聴いた曲。 弦楽合奏やオルガンでの演奏が似合う

 私がこの曲を知った、というよりバッハの平均律クラヴィア曲集の存在をしったのは、実はこの曲で、大学生の頃。この曲の弦楽合奏版がFM放送番組のテーマになっていて、何となく聴いていました。 確かに弦楽合奏がよく似合う曲です、もしかしたら、原曲はそうした曲だったのかも知れません。



係留音の魅力

 この曲の魅力は、何といっても係留音、つまり声部の動きに時差があるために、時々2度などの音の衝突、つまる不協和音程が現れます。 それはすぐにずれを解消して協和音程となるわけですが、その ”ずれ” と ”解消” が程よい刺激となって快感を感じるのだと思います。 そうしたことはチェンバロよりも弦楽合奏やオルガンなどのほうがよく味わえます。






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最初の方にかかれたスラー記号はバッハ自身によるもの。 テーマは複雑そうに聴こえる、あるいは見えるが、和声音に倚音が付いたもの。




バッハの手でスラー記号が書かれている

 フーガには冒頭のみですが、テーマにバッハの手によってスラー記号が書かれています。 こうした事も他の曲にはなかったことです(付いている場合は、出版社や校訂者などが後から書きこんだもの)。 




フーガのテーマにしては禁則的な跳躍が多い

 しかし、それにしても変わった感じのテーマです。 対位法的な音楽でなくとも、一般にメロディを作る時に不協和音程となる7度や増音程での跳躍は禁じられいています。 でもこの譜面では増4度だの、減7度などやたらと出てきます。 ちょっと聴いた感じでもかなり不思議な感じがします。




和声音と非和声音の区別がわかるように

 バッハがスラー記号を付けた理由としては、もちろんその箇所を滑らかに弾かなければならないということと、スラー記号付けた、前の方の音は ”倚音” であって、非和声音であること。 そしてスラーの後の方の音が和声音となることを示しているのでしょう。




テーマの中ですでに転調が始まっている

 その和声音を頼りに和声進行、と言ってもここではわかりやすいようにコード・ネームで書きますが、  Bm - F# - B - C#(7) - F#m - C#(7)  となります。  このコード進行からすると、テーマの中で、すでにロ短調から嬰へ短調への転調が始まっているようです。




似ているけど別人?

 最初にテーマが出てきた後、5度下でそのテーマが出てくるのですが、このテーマはよく見ると(聴くと)最初のテーマとちょっと違っています。 よく似ているのですが、音程関係は微妙に変えられています。 和声的な関係でそうなったのでしょう。 ちょっと見た目には同じ人だが、よく見ると別人だった、なんて感じでしょうか。



基本的には単一の主題

 前述のとおり長いフーガで、いくつかの対旋律が出てきますが、それらはテーマから派生した感じがあり、基本的には単一の主題のフーガと思われます。




第1巻の短調の曲はすべて最後は長和音で終わっている

 最後は他の多くの短調のフーガ同様、長和音となって終わります。 短調の曲でもルネサンス時代や、バロック時代初期では必ず長和音、もしくはオクターブや5度などを重ねた和音で終わり、短和音では終わらないことは、以前にお話ししました。

 バッハの短調の曲はそのまま短和音で終わる場合と、長和音になる場合とがありますが、この平均律曲集第1巻においては、12の短調のプレリュードとフーガ、計24曲とも、すべて長和音に変えられて終わっています。





第2巻は第1巻よりも近代的

 第2巻のほうでは、特にプレリュードのほうで短和音のまま終わっている曲がいくつかあります。 そういった意味では、やはり第2巻の方が、さらにフーガよりもプレリュードのほうが近代的になっているとも言えるでしょう。 確かに聴いた感じからもそうした印象は受けます。




1曲1曲を聴き直すきっかけにでもなれば

 以上で、平均律クラヴィア曲集第1巻のプレリュードとフーガ、全48曲について書き終えました。 意味のあることかどうかはわかりませんが、このバッハの名曲の一つ一つを、改めて聴き直すきっかけにでもなればと思います。




第2巻は本当に手短に!

 さて、この調子で第2巻の方もやっていたら、さすがにたいへんなので、第2巻の方は本当に簡潔にまとめるようにしましょう(第1巻の時もそんなこと言っていたかな?)。 なるべく早めに、本題であるCDについての話に進みましょう! 

 
バッハ:平均律クラヴィア曲集 20





<いこいの村涸沼> で茨城大学クラシック・ギター部の同期会



 先週の土曜日(10月28日)は、ひたちなかギター・フェスティヴァルでしたが、その翌日の29日(日)から30日(月)にかけて、<いこいの村涸沼> で茨城大学クラシック・ギター部の同期会(1969年入学)がありました。

 これで3度目となりますが、前回は2011年、震災のあった年で、つくば山で行いました。 その会場に向かう途中、道がよくわからず、とても危険な山道に入ってしまった話をしました。

 今回の会場の<いこいの村涸沼は>家内の実家の近くと言うことで、私にも若干土地勘があるのと、カーナビやら、グーグル・マップといったものを活用し、水戸駅南口で待ち合わせた3人の仲間を、特に道に迷うことなく連れてゆくことが出来ました。




今回はまさに ”合宿”

 最初の同期会は10数年前で、その時は集まってお酒を飲むだけだったのですが、前回の2回目は少しだけギター合奏を行い、今回の3回目は、事前に楽譜を配るなど、結構本格的に合奏練習をしました。

 その結果、誰が言うともなく、今回の集まりを ”同期会” ではなく ”合宿” と呼び、私のことも ”幹事” ではなく ”合宿委員長” と呼ぶようになってしまいました。



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ギターに本格的に降れるのはほとんど40数年ぶりという仲間も
 



セピア色の世界

 気持ちはそれぞれ20歳の大学生になりきっているのですが、しかし残念ながら、このように写真を見ると60代後半の現実に引き戻されてしまいます。 それぞれの名誉(?)のために、本当に20歳とちょっとだったころの写真も載せておきます(よく見えないけど)。



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それぞれが21~22才だった頃の写真。 まさにセピア色の想い出。 今回の合宿(?)中は、皆40数年間の歳月を遡り、このセピア色に世界に戻っている。 写真が不鮮明で、顔などはわからないと思うがが、服装などはまさに1970年代。




来年はコンサートも

 来年はさらに本格的に合奏練習を行い、演奏会も考えています。




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バッハ:平均律クラヴィア曲集第1巻 第23番ロ長調



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 第23番ロ長調プレリュード。 かなりシンプルで短い




シンプルなプレリュード

 プレリュードはかなりシンプルなもので、上のように7個の16分音符による音型で、ほぼ出来ている感じです。 対旋律的なものも、この音型から派生した感じで、他には上行する音階などしかありません。 

 曲が短いので、速く弾くとすぐ終わってしまいますから、中庸なテンポが似合うと思いますが、このロ長調の次に最後を締めくくる重厚なロ短調が控えているために、若干 ”箸休め”的な役割なのかも知れません。






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フーガの後半は4声が絡み合い、弾くのは難しそう。 でも聴いた感じはわりとわかりやすい。





フーガは4声だが、ゴチャゴチャした感じはない

 フーガも同様に重厚なものではありませんが、何といっても4声のフーガで、特に後半は3声、4声で動いているところが多いので、譜面を見た限りでは、弾くのは結構たいへんそうに見えます。(弾いたことがないのでわからないが)。 でも聴いた感じは、わりとわかりやすく、ゴチャゴチャした感じはあまりありません。 

 やはり、次のフーガがいろいろたいへんなので、プレリュード同様箸休め的なのでしょう、比較的気楽に聴ける曲です。