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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

クラシック・ギター名曲選


収録曲紹介



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10..アダージョ・カンタービレ ~ピアノソナタ「悲愴」第2楽章 (ベートーヴェン ~タレガ編)





ギターとベートヴェンの相性は最悪?

 先に言ってしまうと、ギターとベートヴェンとの相性はかなり悪いです。 

 ベートヴェンの音楽の特徴は、ダイナミックさ、構成美、論理性といったことになると思いますが、微妙なニュアンスが勝負のギターにとっては、どれも苦手なものです。

 おそらく音楽の方向性としては正反対と言ってもよいでしょう。




 「ギターは小さなオーケストラである」

 「ギターは小さなオーケストラである」 と言った言葉をベートーヴェンは残したとされています。

 いつ、どこで、どのようなシチエ―ションでこの言葉を言ったのか、あるいは書いたのかなどといったことはわかりませんが、ともかくそのように言われています。




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「ギターは小さなオーケストラだ」 と言ったとか、言わなかったとか。




ジュリアーニ? ディアベリ?

 ベートーヴェンが実際にこの言葉を、どこかで言ったとしたら、おそらく優れたギター演奏を聴いた時の感想と考えられます。

 ベートーヴェンが聴いた可能性のある優れたギタリストといえば、交響曲第7番の初演にも立ち会ったとされているマウロ・ジュリアーニが考えられますが、確かなことはわかりません。

 ベートヴェンの周辺では、他に出版業者として知られているアントン・ディアベリもギターを弾いていましたが、おそらくディアベリではないでしょう。



ギターに対する賛辞と受け止められているが

 この言葉は普通、ギターと言う楽器に対して、あるいはギタリストに対してのベートーヴェン流の賛辞と受け取られています。  ・・・・・少なくともギター界では。

 しかしちょっとひねくれた解釈をすれば、ベートヴェンにとっては、最良、または最大の音楽形態はオーケストラであることを言っている訳で、それに比べてギターは”小さい”ものであると言っているわけです。

 ギターが ”小さいオーケストラ” であるなら、 ピアノは ”大きなオーケストラ” となるのかも知れません。 



本当にお世辞を言うつもりだったら

ベートーヴェンが本当にギター、あるいはギタリストにお世辞を言うつもりだったら、 「ギターにはオーケストラには出せない音楽がある」 とか 「ギターは、オーケストラとは全く違う表現が出来る」 など、オーケストラとの質の違いを強調すべきだったのではと思います。 

 ギターとオーケストラを ”大” ”小” などの量的な言葉で表現すれば、当然のごとくその圧倒的な”量的な差”を表すことになります。



同じ土俵で相撲を取っても

 また量的な比較をするということは、その前提として、オーケストラとギターは質的に同じということを言っている訳です。 そりゃあ、オーケストラと同じ土俵で相撲とったら勝てる訳がない! 

 もっとも、こと言葉を言うきっかけとなったのが、仮にジュリアーニの演奏であったとすると、ベートーヴェンとしてもオーケストラとギターとの質的な差は感じなかったかも知れませんね。

 もし、これがタレガの演奏だったら、全く違った感想をいっていたかも知れません。    ・・・・・・時代的にはあり得ませんが。



お世辞は難しい

 お世辞って難しいですね、言い方を間違えると全くの逆効果になって、相手の機嫌を損なうこともある!  ・・・・・ベートーヴェンのこの言葉で、特に憤慨した人はいなそうですが。

 なにはともあれ、ベートーヴェンとギターとの接点は、全くないわけではないが、ベートヴェンとしては、特に関心があったわけではなさそうです。




タレガはベートヴェンの曲をたくさんアレンジしている

 話を編曲者のタレガの方に向けると、タレガはギターにはあまり相性が良くないと思われるベートーヴェンの曲をたくさん編曲しています。

 ピアノソナタからヴァイオリンソナタ(クロイツェル)、交響曲(第7番)など、それらの多くは技術的はかなり難しくなり、また演奏出来たとしても原曲の内容を越えることもなく、またギターの新たな魅力を引き出すというわけでもなく・・・・・



ベートーヴェンへの敬意の表れ

 しかしタレガとしては音楽にたずさわる以上、ベートーヴェンの音楽は避けて通れないと考えたのでしょう。

 タレガのこれらのベートーヴェンの作品の編曲は、楽聖ベートーヴェンへの敬意の表れではないかと思います。




「ピアノで弾いた方がいいんじゃない」って言われそうだが

 と言った訳で、このタレガ編曲の ベートーヴェン : 「ピアノソナタ第8番ハ短調作品13」 第2楽章 「アダージョ・カンタービレ」 は、一般にはたいへん有名な曲で、楽譜なども入手しやすいわりには、あまり演奏されません。 

 アマチュアにとってはたいへん弾きにくい曲で、プロにとっては苦労のわりには 「ピアノで弾いた方がいいんじゃない」 と言われかねない曲として敬遠しがちです。



なかなか? そこそこ? ぜんぜん?

 今回この曲を私が録音したのは、そうしたことをふまえつつも、 ”怖いもの見たさ” というか、”たまにはいいんじゃない” といったところですが、他のタレガ編のベートヴェンの作品にくらべて、この曲は相対的にギターにおさまりやすいという点もあります。 

 内容的にも、この曲はベートーヴェンの曲としては穏やかで、結果的に 「ギターで聴いてもなかなか(そこそこ?)いいんじゃない」 と言った感じにはなっているかなと思います。



かなり原曲に忠実

  このタレガのアレンジはハーモニックス奏法の使用とか、技術的な点での省略、簡略化などはありますが、基本的にはかなり原曲に忠実なものです。

 グリサンド奏法などもかなり少な目で、タレガとしては最大限、原曲の持ち味を出そうとしているように思います。 



「月光」も一応弾いてみたが

 なお、タレガ編のピアノソナタ「月光」の第1楽章なども一応録音してみたのですが、さすがにこちらは本当に 「ピアノでいいんじゃない」 と言った感じてしまったので、アルバムに含めるのはやめました。  ・・・・もちろん技術的にも難しい。


 
 

 
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クラシック・ギター名曲選 6



収録曲紹介



ショパン~タレガ編 : 前奏曲第15番「雨だれ」



一般的には有名な曲だが

 有名なショパンのピアノ曲を有名なギタリストがアレンジしたものですから、たいへん良く演奏される曲ではと思われがちですが、意外とあまり演奏されません。

 確かに最近では編曲ものも含むタレガの作品全集も録音されるようになり、福田(進一)先生なども録音していますが、少し前までは全くと言っていいほど録音がありませんでした。

 その理由としては、何といってもそれまでセゴヴィアなどの大ギタリストが演奏しなかったことがあると思いますが、あまり弾き易くないということもあるでしょう。



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タレガ編の「雨だれ」前奏曲。 グリサンド奏法を多用しているのが特徴。




8分音符の刻みのあるところは音量バランスが難しい

 特に中間部では8分音符同じ音をで刻みながら、その上下に4分音符でメロディを入れます。 ピアノでは何でもない弾き方だと思いますが、ギターではこれが難しい、あるいは苦手な弾き方と言えます。




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3段目からの8分音符が続くところは、一見簡単そうだが、ギターで4分音符のメロディと8分音符で刻んでいる伴奏のバランスをとるのは極めて難しい。 この8分音符の刻みが ”雨だれ” ぽいので、この名前が付いたと思われる。



 何といっても、ギターでは複数の音を弾いた時に、その音量バランスをとるのがたいへん難しい訳です。 例えば、4つの音を弾く時に、最高音を弾く薬指だけ大きく弾く、あるいは低音も親指だけ強く弾く、などということはかなり難しいことです。

 まして内声部だけを強く弾くなど、かなり技術の高い人であっても、ほぼ不可能なことと言えると思います。




グリサンド奏法は品がない?

 また一時期、タレガ編のように、原曲にはないグリサンド奏法を多用するなど、原曲の内容を損なうもの、あるいは品がないなどとして敬遠する風潮もあったことも、このタレガ編があまり弾かれなかったことの理由に挙げられるでしょう。

 何はともあれ、最近ではこうした作品も演奏される機会が増えてきた訳ですが、その理由の一つとしては、タレガの場合、オリジナル作品のみでなく、編曲作品も重要視されるようになってきたことがあります。

 かつては「タレガ作品全集」といえば、オリジナル作品のみがその対象だったのですが、現在では編曲作品も含めるのが普通となっています。 タレガの編曲作品には、まだまだ未出版のものがたくさんあり、今後さらに演奏されるようになるのではと思われます。



ショパンはピアノでグリサンドしたがっていた?

 なお、先ほどのピアノの原曲にはない「グリサンド」の件ですが、私個人的には、ギターで演奏する以上、グリサンドやヴィヴラートなどは絶対に必要なものと思います。 

 もし仮にショパンがピアニストでなくギタリストであれば、間違いなく使用、あるいは多用していたでしょう。 実際にショパンはピアノで声楽のポルタメント、つまりグリサンドを模倣しようとしていたようです。 もしかしたらショパンはピアノでグリサンドが出せないことを嘆いていたかも知れません。




普通、ギターで ”雨だれ” と言うと

 因みに、ギターのほうで「雨だれ」と言えば、ギター教室の教材や、発表会用の曲として、ジョージ・リンゼーの曲が有名ですが、作曲者の George C.Lindsay についてはあまり知られてなく、ほとんど詳しいことはわかっていません。

 Wikipaedia によれば、1855~1945年、アメリカのギタタリスト兼作曲家で、「緑の木陰」(一般にはヘンツェ作の言われているが)の作曲者のオルコット・ビッグフォードの先生といったことが書かれています。 

 他にどのような作品があるかなどは書いてありませんでした。



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ギターで「雨だれ」といえば、このジョージ・リンゼーの曲が有名だが、作曲者のことはアメリカのギタリストと言うこと以外にはあまりようくわからない。



クラシックギター名曲選  

収録曲紹介 5



シューマン ~タレガ編 : トロイメライ



ギターではタレガ及び、バリオス、セゴヴィアなどがアレンジしている

 シューマンの「子供の情景」の第7曲 「トロイメライ」は、ピアノの名曲として知られていて、ホロヴィッツやアルゲリッチなど名演奏が知られています。

 また私個人的には、ルーマニア出身のピアニスト、ラドゥ・ルプーの演奏も好きです。 

 ギターにおいても、このタレガをはじめ、バリオス、セゴヴィアなどの編曲も残されています。

 原曲はヘ長調ですが、タレガは⑥弦を「レ」に下げてニ長調。 バリオスは⑥弦を「ド」、⑤弦を「ソ」 といった変則調弦でハ長調に編曲しています。

 


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タレガ編のトロイメライ。 ⑥弦を「レ」にしたニ長調となっている。 常識的な調の選択といえるが、結構むずかしい。




セゴヴィアはなぜかバリオスと同じ方法を選んでいる

 常識的に考えれば、原曲のヘ長調ではギターではたいへん弾きにくいので、⑥弦をレに下げて、主音(レ)と属音(ラ)が開放弦となるようにしたニ長調に編曲する、タレガの方法が普通と思いますが、バリオスの方法はかなり大胆な発想といえるでしょう。

 バリオスがこの調弦を選んだ理由としては、高音のメロディをギターで弾き易い範囲に収めようということもあると思いますが、より深い低音の響きにこだわったのだろうと思います。

 もっとも原曲では特にそのようなことはなく、これはあくまでバリオスのこだわりのようです。

 また、ちょっと気になるのは、セゴヴィアが常識的なニ長調ではなく、バリオスと同様に「ド」、「ソ」調弦のハ長調で弾いているというjことです。 

 これを”偶然” と言うのは若干無理があり、やはりセゴヴィアはバリオスの影響でこのチューニングを採用したと考えるのが自然かも知れません。




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バリオス編のトロイメライ。 ⑥弦が「ド」、 ⑤弦が「ソ」に調弦する。  変則的な調弦を採用したアレンジだが、セゴヴィアもこの方式を採用している。 




セゴヴィアはバリオスの作品を1曲も演奏しなかったが

 もちろんセゴヴィアと言えど、他のギタリストの編曲や演奏などを参考にすることはあり得ないことではないのですが、 聴いた話によれば(読んだ話?)、セゴヴィアはバリオスを毛嫌いしていたようです。

 実際にセゴヴィアはバリオスの作品は1曲も演奏していません。  そのことにより、バリオスの作品が世界に知られるようになるのが遅れたともいわれています。

 その一方で、セゴヴィアはバリオスの作品や、演奏技術を高く評価していたとも言われています。 セゴヴィアが、この「トロイメライ」をタレガのアレンジでなく、バリオスのアレンジを参考にしたのは、こうした事の一つの表れかも知れません。



その透明感のある響きは、今でも私の耳に

 話が若干それてしまいましたが、私の録音ではタレガの編曲を採用しています。 大学のギター部時代に、先輩の演奏の美しさに感動して、自分でも弾いてみようと思ったのですが、とても難しく当時は全く弾けなかった記憶があります。

 その先輩のとても透明感のあるギターの響きは、今でも耳に残っています。


1年以上ギターは触っていないけど




半年ほど休暇

 2日ほど前、2年ぶりに創(長男)が帰省しました。 しばらくハードな仕事が続いたので、半年ほど療養のために休暇をとったそうです。 創はたまに帰省しても、ほとんどギターに触れることはなかったのですが、今回は珍しくレッスン・スタジオに入り、スタンドにあったジェイコブソンを手に取りました。

 「1年以上ギターに触っていない」と言いながら、音を出し始めましたが、相変わらず美しい音です。 「爪を手入れしていない」 と言いながら爪を磨き始めましたが、私にはほとんどノイズらしきものは聴こえませんでした。 でも本人には聴こえているようです。



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ギターをやめてから15年


 昔弾いた曲の断片などをちょこちょこと弾き始めましたが、なんだか以前と全く変わらない感じです。 創はギターをやめてから15年になり、その間、ほとんどギターを弾くことはなかったのですが、こうして聴いていると、コンクールの前などに、この部屋で創の演奏を聴いていた頃の記憶がよみがえってきます。




以前よりかえって美しいような

 特に右手の動きなどはほぼ理想的で、スピードもコントロールも明らかに私を上回っています。 また音色もずっときれいです。 久々に聴いたせいか、現役時代よりかえって美しいようにも聴こえました。



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久々にジェイコブソンを手に。 この楽器でクラシカルや、東京国際、アレッサンドロ国際ギターコンクールなどで入賞した。



 「いつでも復帰出来るね、会社クビになるの待っているよ」 という私の言葉には、特に返事なし。 約1時間弱くらいの時間でしたが、久々に創の演奏を聴きました。


 最近はオセロに凝っていて、「オセロのイヴェントがあるから」 と 今日の昼頃に大阪に向かいました。


第50回水戸市民音楽会  with木村大ギターコンサート


7月15日(日) 水戸芸術館ATMホール






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木村大さんをゲストに迎えて

 今年の水戸市民音楽会は第5回記念ということで、茨城県出身のギタリスト、木村大さんをゲストに迎えて行われました。 木村大さんのコンサートは、市民音楽会に先立って、12;00~12;40に行われました。



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満席

 会場は市民音楽会の出演者と一般応募の聴衆が計600余りで、ホールは満席状態となりました。こうしたことは、水戸市民音楽会としては異例のことです。



いつもの市民音楽会とは違う雰囲気

 大さんの演奏スタイルは、クラシック・ギターというよりアコーステック・ギターといったものですが、ギター用のアンプ使用とか、軽妙なトークとか、いつもの水戸市民音楽会の雰囲気とはちょっと違ったものです。



アコースティック系だが、フラメンコぽいところも

 最近のアコースティック・ギタリストは、「叩き系」といった、パーカッション奏法を多用したスタイルが主流のようですが、大さんの演奏、それに加えて、アポヤンド奏法によるスケールも多く、若干フラメンコぽいところもあります。 自作もアンコールを含め、2曲演奏しました。

 また、直前に演奏したフレーズを一時的に録音し、即座に生音と重ねるといった方法も取られているようです(最初はどういうことかわからなかった)。 いろいろと普通のクラシック・ギターのコンサートでは聴けない内容でした。



しばらくぶりに

 個人的なことですが、大さんの演奏終了後、しばらくぶりに大さんと話をしました、何年ぶりでしょう。 演奏もさることながら、現在36歳ということで、当然のことながら、いろいろなことに対しての気配りも忘れず、ほんとうに 「大人になったなあ」 という感じがしました。   ・・・・・小さい頃はともかく元気いっぱいの子だったなあ、ギターを弾くのも速いが、足も速かった、本当はサッカー選手になりたかったようだ。



今回の出演団体は40

 市民音楽会のほうは、今回は出演団体が40と、ますます多くなり、またその種類もたいへん多彩となりました。 またギター関係の団体もかなり多く、合奏、独奏、ギターを含む重奏、合奏など、10団体以上ありました。



運営、進行に携わっていただいた方々、ありがとうございました

 またこうした多彩で、数多い出演団体にも関わらず、ほぼ予定どおりの時間で進行し、水戸芸術館や水戸市の皆さんには本当にいろいろ骨を折っていただきました。 ありがとうござます。



いつもより多くの方に残って聴いていただきました


 私たち水戸ギター・アンサンブルの演奏は40団体中、36番目ということで、7時近くになっていました。 さすがに長時間のコンサートなので、聴いている人もだいぶ少なくなりましたが、それでも例年よりは多くの人に残って聴いていただいたと思います。



出演団体がさらに増えると

 出演団体がますます多くなるということは、たいへん良い事なのですが、しかしこのまま増えると、音楽会を2日にするか、あるいは午前、午後の2部形式にするかなど、いろいろ考えないといけないようです。 

 音楽会終了後に行われた反省会が終わって家路に着いたのは、9時を過ぎでした。 9時過ぎにも関わらず、まだまだ日中の熱気は残ったままでした。
 

クラシック・ギター名曲選 4



収録曲紹介


6.アルベニス : 入江のざわめき



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「入江」とはカディス港のことかな?



「アルベニス作品集」に組み込む予定だったが

 アルベニスの曲は昨年「アルベニス作品集」として録音したのですが、その時録音した曲が全部1枚のCDに収まりきtらなかったので、 「入り江にざわめき」 と 「朱色の塔」 は今回の 「名曲選」の方に回ったという訳です。 

 細かく言えば、今回CDとなっているものは、昨年録音したものではなく、今年改めて録音し直したものです。 やはり1年経つと、ちょっと考えも変わってしまうのですね。



アストゥリアスに次ぐ人気曲は?

 ギターで弾くアルベニスの作品の中では、何といっても 「アストゥリアス」 が圧倒的に人気が高いのですが、今現在、その次に人気の高い曲、つまり ”ナンバー2” はどの曲でしょうか? 

 人気度と言っても、”弾く” 場合と ”聴く” 場合では違うと思いますが、”聴く” ほうで言えば、「セビージャ」の可能性が高いでしょうね。



聴く「セビージャ」、 弾く「グラナダ」

 セゴヴィアはよくこの曲をリサイタルの最後に演奏して盛り上げてりましたが、今現在でもその人気は衰えていません。 他の候補としては、「グラナダ」、「コルドバ」、「タンゴ」といったところでしょうか。


 しかし「セビージャ」や「コルドバ」、あるいは「タンゴ」といったところは、演奏はかなり難しいところなので、 現実的に”弾ける” 曲としたは、間違いなく 「グラナダ」 でしょう。

 ただ、「グラナダ」も左手は結構厳しいので、手が大きいか、柔軟性がないと、なかなか難しいところでしょう。



かつては間違いなく、この「入り江のざわめき」

 私がギターを始めた頃、つまり1970年前後だと、”ナンバー2” のアルベニスの曲としては、この 「入り江のざわめき」 がその地位にあってでしょう。

 当時は「セビージャ」とか「コルドバ」などはプロのギタリストでもあまり弾かなかったですし、「入り江のざわめき」はその点、アストゥリアスよりも技術的には少し易しく、私の周囲でも多くの愛好者やプロのギタリストが演奏していました。



イエペスの演奏で馴染んだ人も多い

 もちろん、その当時人気だったナルシソ・イエペスの愛奏曲で、私たちの世代では、皆、イエペスの演奏で、この「入り江のざわめき」に馴染んでいたと思います。

 ただ、当時は、なんとなく雰囲気で弾いていた感じもあって、また、よい編曲がなかったこともあってか、メロディもリズムも不明瞭な演奏が多かったように思います(私の演奏も?)。




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かつてはイエペスのLPで親しまれていた




マラゲーニャのリズムをキープし、スペインらしい歌を聴かせなければならない


 マラゲーニャの形で書かれているので、当然マラゲーニャのリズムをはっきり出さなければならないし、また中間部など、かなり細かくテンポの変化の指示があるので、表現的には細心の注意が必要なところもあります。

 最近では、やや演奏頻度が落ちてきている感じがしないでもない、この「入り江のざわめき」ですが、たいへんスペイン的情緒に富み、なかなか気持ちよく弾ける曲です。 やはり他のアルベニスの曲より弾きやすさはあるでしょう。




6. アルベニス : 朱色の塔


リョベット他、多くのギタリストが弾いてきた曲


 この曲も前回の「アルベニス作品集」から漏れてしまった曲です。 この曲は12曲からなる「特性的小品集作品92」の終曲にあたるもので、リョベットのギター編曲もあり、セゴヴィア、イエペス、ウィリアムスなど多くのギタリストによって演奏されてきました。



「特性的小品集作品92」には、なかなか良い曲が含まれる

 この「特性的小品集作品92」は1988年の出版で、「サンブラ」や「ガヴォット」、「シルビアのメヌエット」など、なかなか良い曲が含まれます。 



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「特性的小品集作品92」が収録されている、ナクソス盤のアルベニス・ピアノ作品集第7巻



かつてトーマス・ミュラー・ペリュングが録音していた

 かつてドイツのギタリスト、トーマス・ミュラー・ペリュングが、この作品の中から8曲をギターにアレンジして演奏したCDが出せれていました。 現在は廃盤になっているようですが、なかなか貴重で、面白いCDなので、ぜひ復刻してほしいと思います。



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若い頃のペリュング(今ではドイツギター界の重鎮?)



二重奏でなら

 編曲譜の方も出版されていましたが、独奏だと、かなり難しいのは確かです。特にペリュングは手が大きそうなので、私にはそのアレンジでは無理な個所がいくつかあります。

 しかし二重奏ではそれほど難しくならないと思いますので、そうした形で、今後ギターでも演奏されるようになるかも知れません。



ギターで弾くと難曲になってしまうが

 「朱色の塔」も演奏のほうはなかなか難しい曲ですね。ともかく伴奏の速いアルペジオが厄介! おそらくピアノで弾けば特に難しい曲ではないと思いますが(他の曲の同じだが)、ギターで弾くとなかなか”シンプル”に聴こえず、音がバラバラと、あちこちに散らばってしまいがちになります。



逆に華やかさが

 本来はメロディを美しく弾くタイプの曲なのですが、ギターで弾くと結構 ”難曲” ぽくなってしまいますが、逆にそのことがギターで弾くと華やかさにつながっているのかも知れません。  ・・・・・ピアノの原曲だと、わりと地味な感じです。
 
クラシック・ギター名曲選



収録曲紹介



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アラビア風綺想曲(前回からの続き)




グリサンドとスラー奏法の合体

 ニ長調になってから、ページで言えば3ページ目の中頃に、②のド#から12フレットのシまでグリサンドとなっているところがあります(左側の赤丸)。 


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 グリサンドと言っても起点となるド#は1指で押さえて、終着点の12フレットは4指になっています。 出発と到着が違う指になっているわけですね。

 通常それではグリサンドにはなりませんが、方法としては、人差し指でだいたい9フレットくらいまでグリサンドしたら、小指で②弦の12フレットを叩く、つまりスラー奏法を行うわけです。 グリサンドとスラー奏法が合体したものとも言えますね。




グリサンドはぼやかした方が良い

 でも、本当に9フレットまで、はっきりと人差し指でグリサンドしてから、小指で12フレットをハンマリングすると、意外と不自然な感じになります。

 グリサンドの方は本当に9フレットまでは出さずに、グリサンドは2フレットから5.6フレットくらいまで出して、”尻尾” のほうは適当に ”ぼやかした” 方が自然に聴こえます。   ・・・・・お葬式の時のあいさつと、グリサンドはぼやかしたほうがいいのですね!



いろいろ便利

 このグリサンドとスラー奏法の合体は、いろいろな曲に出てくる、あるいは使うといろいろ良いことが起きるので、やり方を覚えておくと便利です。 応用範囲も広いですね。




本命はその小節の最後の方

 実は、問題の箇所はそこではなく、同じ小節の最後の方です(右の赤丸)。 ここは譜面上では④弦の7フレットから、②弦の10フレットのラまでスラー奏法となっています。

 弦をまたぐスラー奏法ですが、その前の④弦の7フレット、「ラ」 を弾いたら、左4指で②弦の10フレットの 「ラ」 を叩き、改めて主音符(大きな音符で書いてある音)を弾きます。

 楽譜に忠実に弾けば、このような弾き方となります。 結果的にはスラー奏法による前打音と言った感じになります。 




以前から気になっていた

 でも私個人的には、以前からこの箇所は気になっていて(スラー奏法がよく出ないということもあるが)、やや意味不明というか、こういった弾き方をして、「何かいいことがあるのかな?」 あるいは「こんな弾き方カッコいいのかな?」 と思っていました。




やはりグリサンドだった!

 このように楽譜通りに弾いても、何か、あまりよい結果が出る気がしませんでした。 そこでロブレドの演奏を聴いてみると、かなりはっきりとグリサンドの音が聴こえます。 


 前回の最初のテーマの部分(ニ短調の)のグリサンドは 「何となくグリサンドらしき音が聞こえる」 と言った程度でしたが、こちらの方は非常に状態の良くない録音にもかかわらず、はっきりとグリサンドの音が聴こえます。 

 つまり 「出てしまった」 グリサンドの音ではなく、はっきりと 「出している」 グリサンドと言う訳です。

 


③弦の2フレットからグリサンドするしかない
 
 とはいっても④弦の7フレットから②弦の10フレットだと、グリサンドになりませんから、グリサンドをするなら、③弦の2フレットの「ラ「」からグリサンドするしかありません。 おそらくロブレドもそのように弾いているのではないかと思います。

 スラーの起点となっている「ラ」の音を③弦で弾くためには、その前の部分も若干運指を変更しなければなりませんが、特に難しいことではありません。



その前のグリサンドと対に

 このような弾き方、つまり③弦の2フレットから②弦の10フレットまで、前回話した”弦を跨ぐグリサンドを行うと、その小節の冒頭のところで出てきた ”グリサンドとスラー奏法の合体” とほぼ同じ感じになります。

 やはりここは小節の前の方のグリサンドと対になっていると考えるのが、最も妥当だと思います。 確かにこのように弾くと、 「タレガもこんな風に弾いていたんじゃないかな」 と言った感じになります。 何事も 「なんか変だな?」 と思うことは大事ですね。



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ロブレドなどの貴重な録音が収められている 「セゴヴィアと同時代のギタリストvol.12」 のCD。 ロブレドの演奏はかなり音質が悪いが、最ももタレガの演奏スタイルを継承しているのと考えられる。



ロブレドは「ラ」をもう1個弾いている

 因みにロブレドはグリサンドした後、さらにはっきりと②弦の「ラ」を弾き、そしてから次の小節の冒頭の音(「レ」と「ラ」)を弾いています。 つまり小音符で書かれた音も改めてはっきりと弾いています(しかも結構長い音で)。

 タレガもそう弾いていたのかも知れませんが、でも聴いた感じでは、これはちょっと変ですね、ラー、ラー、ラー と最初の「ラ」 が3つあるみたいで。

 もっとも、ロシータでも楽譜通りに弾くと、2拍子が急に3拍子になってしまうところもあり、タレガはこうした事は、あまり不自然だとは思わなかったのかも知れません。



未購入の方! ぜひご連絡を!

 それで、結局どんなふうに弾くのか? あるいは聴こえるかって?  もちろんそれは私のCDで聴いて下さい! 未購入の方、ぜひご連絡を!



 
クラシック・ギター名曲選 3



収録曲紹介



4. F、タレガ : タンゴ




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かつてはイエペスの演奏などで人気の曲だが、一時期偽作とされていた。現在では真作とされているが、作曲ではなく編曲作品。





ラスゲアードやタンボラートなども用いた、なかなか面白い曲

 タレガの作品としてはやや異色といったところもある曲です。 タンボラートやラスゲアードを駆使した、なかなか面白い曲で、憂いを帯びたメロディ(後半では長調に変わる)もたいへん魅力的な曲です。




一時期偽作とされていたが

 その個性が災いそてか、一時期偽作とされていた曲でもあります。 スペインのギタリスト、ガルシア・トルサの二重奏曲の1stパートが、このタレガのタンゴとほぼ同じだったことから、タレガがトルサの原曲を独奏曲に編曲したものではないかとされていた訳です。

 しかし最近では、種々の状況証拠から逆にトルサのほうがタレガのタンゴを基に二重奏曲「ハバネラ」を作曲、あるいは編曲したということらしいとされています。 まさに逆転無罪ですね。




オリジナル作品ではなく、編曲もの

 ただし、このメロディそのものは当時流行していた曲のものらしく、タレガのオリジナル曲というより、編曲作品にあたるようです。 

 タレガは現在でも有名なタンゴの名曲、「ラ・パロマ」 もギター独奏にアレンジしており、この曲もそうした作品と同種のものと言えます。




意外と弾き易い

 ラスゲアードやタンボラート、ハーモニックスなどの奏法を用いていますが、特に難しいといった曲でもなく、タレガの曲の中では弾き易い曲と言えるのではないかと思います。

 ただ、付点音符と3連符の組み合わせを、正確なタイミングで弾ける人は少ないかも知れません。    

 



5. タレガ : アラビア風綺想曲



この曲も紹介の必要はないが

 この曲もアランブラの想い出と並ぶタレガの名作で、このブログでも度々登場しています。 「クラシック・ギター名曲選」としてはやはり外すことの出来ない曲の一つでしょう。

 この曲についてもたいていのことはこのブログで書いていますので、今回はグリサンドの話でもしておきましょうか。 




グリサンド奏法はギター演奏に欠くことが出来ない

 グリサンド奏法はギターを弾くにあたっては欠くことの出来ない技法です。 一時期グリサンド奏法は、クラシックギターに関する限り不必要な奏法と言われたこともありますが、 グリサンドがなければギターではない。 まさに羽をもぎ取られた鳥のようなもので、グリサンドを制するもの、ギターを制す! と言えるのではないかと思います。 




タレガは種々のグリサンド奏法を用いた


 タレガはいろいろな種類のグリサンド奏法を使用していました。それらは譜面上に書かれているものも、そうでないものもあり、このアラビア風綺想曲の譜面にも何種類かのグリサンドの表記があります。




タレガ自身の録音は残されていないが


 実際にタレガがこれらのグリサンドをどのように演奏したかは、タレガの録音が残っていないので、直接することは出来ません。しかしタレガの弟子と言われるミゲル・リョベットの録音は残されており、また直接の弟子ではありませんが、タレガの影響を受けたギタリストとして、アンドレス・セゴヴィアの録音は豊富にあります。 



ロブレドの演奏がタレガ自身の演奏最も近いのでは

 今現在としてはそうしたギタリストの録音からタレガの演奏の仕方を推測するしかありません。 それらのタレガの弟子の録音のうち、最も重要なものと言えるのが、タレガの晩年の愛弟子、ホセフィーナ・ロブレスの録音です。

 このホセフィーナ・ロブレドは幼い頃からタレガに師事し、タレガもたいへん熱心に指導したとプジョールの書に書かれています。 タレガの多くの弟子たちの中でも、その音楽を最も忠実に継承したギタリストと言われています。




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タレガの晩年の愛弟子、ホセフィーナ・ロブレドのデビュー時の写真。 確か12,3歳くらいだったかな?




 ロブレドの録音は1950年代に家庭用の磁気テープ・レコーダーに録音されたもので、残念ながらあまりよい音質ではありませんが、このアラビア風綺想曲をはじめ、数曲のタレガの作品の演奏が、現在CDとして入手できます。 



信頼性は高い譜面だが

 アラビア風綺想曲は、タレガの生存中から人気があったもので、出版も生存中にされています。 従って、譜面の信頼度も高いものですが、それでも多少不可解な点もあります。

 そうしたものは、このロブレドの演奏を参考にすることにより、タレガの意図をよりいっそう鮮明にすることが出来るのではと思います。




なぜ単音になっている?


 グリサンドに関して、このアラビア風綺想曲の中で、気になる個所が2か所あります。 まず、イントロの最後、テーマが出てくる直前の第14小節です。 


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 矢印を付けた「ラ」の音、ここは単音になっていますが、普通に考えれば、前の小節と同じく「ソ、レ、ド#」の和音でいいんじゃないかと思います。皆さんもそう考えますよね?



グリサンドの起点になっている

 ここ、ずっと気になっていたのですが、藤井敬吾さんから、「この音は次の音(テーマの最初の①弦の『ラ』)へのグリサンドの起点となる音だ」 ということを聴き、それをこのロブレドの演奏で確認したところ、確かにそのように弾いているようです。




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弦2本 ”またぐ” グリサンド

 上の譜面だと、ちょっと見にくいかも知れませんが、③の「ラ」を3指で押さえ、その音を弾いた後、だいたい7フレットくらいまでグリサンドしてから次の小節の音、つまり①の「ラ」と⑤弦の開放を弾きます。

 要するに、弦を ”またいだ” グリサンドと言う訳です。 でも凄いですね、となりの弦ではなく、弦を二つもまたぐわけですから!



その結果どう聴こえる?

 グリサンドの最後の音はあまりはっきり聞こえない方が良く (はっきり7フレットの音が聴こえると、かえっておかしい)、どちらかと言えば、7フレットを通り過ぎて、最後の音がぼやけるくらいの方がよいようです。

 結果的にどう聴こえるかって? それは当然、 私のCDを買って、聴いてください!      ・・・・なんちゃって。


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クラシック・ギター名曲選




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収録曲 : カヴァティーナ、アランブラの想い出、アラビア風綺想曲、

        トロイメライ、さくら変奏曲、禁じられた遊び他


価格 : 2000円

取り扱い  中村ギター教室、 ギター文化館






<曲目紹介>



1.S.マイヤーズ : カヴァティーナ




紹介する必要はない曲だが


 今やクラシック・ギターの代表曲として知られていて、あえて紹介する必要のない曲といえます。 もっとも、今回の収録曲はどれも有名で、紹介する必要のない曲がほとんどです。   ・・・・でも紹介しましょう。



ディア・ハンター





もともとは一人二重奏

 ベトナム戦争を題材とした1978年公開の映画「ディア・ハンター」のタイトルとなり、以後たいへん人気の曲となりました。 イギリスの作曲家、スタンリー・マイヤーズが作曲し、映画では彼の友人である世界的ギタリスト、ジョン・ウィリアムスが演奏しました。

 もともとはギター独奏曲ではなく、映画の中ではウィリアムスの一人二重奏(ダビングによる)とストリングスの形になっています。 その後、独奏曲(ウィリアムスによる編曲?)として楽譜が出され、現在では、どちらかと言えば、ギターの独奏曲として知られています。



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聴いた感じでは簡単そうだが

 静かでメロディの美しい曲なので、聴いた感じからするとそれほど難しい曲とは思えないのですが、実際に弾いてみると、禁じられた遊びなどとはかなり違い、想像以上に難しい曲でもあります。



この曲が美しく弾ければ一人前?

それは、コードが複雑で、なおかつ頻繁にチェンジすることにあり、その上に滑らかにメロディを歌い上げるのは、相当な実力が必要となります。 逆に言えば、この曲を美しく演奏することが出来るのなら、その人ギターの腕前はかなりのものであるとも言えます。

 もともとが二重奏曲なので、一般的にはそちらの方をオススメしたいところですが、二重奏のオリジナルの譜面は出ていないようですね。






F.タレガ : アランブラの想い出



メーキング裏話でも

 こちらはこのブログでま何度も書いているので、さらに、本当にコメントする必要がなさそうですね、今回は何を書きましょうか? 今回は若干、現場の声と言う感じで、録音の苦労話でもしましょうか。 ・・・・・・本当は言いたくないが

 この曲は、だいたい♩=80くらいのテンポで弾かれます。 もちろん速い人と、遅い人がいますが、速い方ではイエペスが100以上で、遅い人では60台くらいとなります。

 セゴヴィアはだいたいこの80くらいで(戦後の録音では)、私のこのCDもほぼ同じくらいです。 まあ、平均すればこのあたりでしょうか、もちろんプロのギタリストの場合です。




アランブラ




1個0.1秒くらいで弾く

 この曲は全曲ほぼ32分音符で出来ています。つまり1拍で8個の音を弾く訳です。それを1分間に80回繰り返す訳ですから、1分間に8×80で640個の音を弾きます。 1秒間では640÷60で、10~11個の音を弾くことになります。 1個の音を0.1秒くらいで弾く訳ですね。

 1秒間に10個弾くということ結構たいへんなことで、右手だけでも、ギターを始めたばかりの人だったら、せいぜい2~3個といったところとでしょう。



0.025秒で左手を移動?

 さらに、この曲は左手の押さえ方も結構昔く、その左手を0.1秒で移動しなくてはなりません。いや、移動に0.1秒かけてしまうと、最後の音が出ている時間が無くなってしまいますから、最低でもその半分の0.05秒以内、出来ればさらにその半分くらいの0.25秒くらいで移動したいところです。




和音が移り替わる前の音はちゃんと出ていない

 ですから、アランブラの想い出の演奏では、よく聴くとほとんどのギタリスト(プロ)の演奏で、和音が移る前の音はあまりはっきり出ていないか、あるいは3個のところが2個くらいなっていたりします。

 アマチュアの場合ですと、3個とも弾いていなかったり、あるいは次のポジションの音など、全然違う音になっていることもあります。 一般にトレモロ奏法を速く弾くのは、右手が難しいと思われていますが、実は左手はそれ以上に難しい訳です。



ノイズは出る方が当たり前?

 さらに振動している弦に爪のような硬いものが触れれば、当然 ”チチッ” といった感じのノイズが発生します。 それを回避するためには、まず指の皮膚の部分でまず弦に触れ、一度弦の振動を止めてから爪のほうに弦を移動させ、そこで爪で減を振動させ、また次の動作への準備に入ります。

 そうした一連のことを正確に2000~3000回くらい繰り返さないと、美しいトレモロになりません。 今回の録音でもこの爪から出るノイズに悩まされました。 残念ながら完璧にそれを取り除くことは出来ませんでしたが、最小限には留めました。 



まさに超人

 アランブラの想い出は、音楽的、つまり作曲上からすればややシンプルとも言える曲なのですが、”ちゃんと弾く” ことについてはかなりの難曲だということがおわかりいただけたかなと思います。

 しかし最近のギタリスト、例えばアナ・ヴィドヴィッチやパク・キュンヒさんなどは、こうした事を、何の苦労もなく、ごく当たり前に、かつ完璧に、また極めて美しく遂行しています。 彼女たちはちょっとだけギターが上手い訳ではありません。 私などからすればまさに超人です。




タレガ




マリーア(ガヴォット)



バッハのフーガのテーマを用いている

 イ短調のガボットで、曲名の「マリーア」はおそらく奥さんの名前にちなんだものと思われます。 この曲の冒頭の部分、何かによく似ていますね、そうです、バッハのフーガ(BWV100)のテーマと全く同じですね。 タレガにはこのフーガの編曲があって、おそらくタレガの愛奏曲の一つだったと思われます。

 恐らくタレガは、このお気に入りのバッハのテーマを用いてこの曲を作曲したのではと思われます。 もちろん結果としてはバッハ というより、完全にタレガ風です。



グリサンド奏法を多用

 この曲を始め、バッハの作品にはグリサンド奏法を用いた装飾音がたくさん使われますが、この曲などは特にそれが多い方と言えます。

 こうしたグリサンドが非常に多いので、かつてはそれらを省略して演奏したりもしていました。 理由としては、もちろん弾きにくいということと、グリサンドなどを過剰に付けると、音楽が不明瞭になるといったことが主だったと思います。



なるべく忠実に再現した

 しかし、やはりそうしたものを省略すると、タレガの音楽らしくなくなる。 タレガの作品を演奏する以上は、やはりそうしたものは忠実に再現すべきかなと思います。 確かにタレガの譜面どおりに再現するのは難しい点もありますが、このCDでは出来る限り譜面に忠実にグリサンドなどを行っています。 

 短い曲ですが、なかなかチャーミングな曲で、そんな感じは出ているかなと思います。