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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

第14回シニアギターコンクール


  2019年9月28日(土)石岡市ギター文化館



昨日石岡市のギター文化館において第14回シニアギターコンクールが行われました。 結果は次の通りです。


シニア・エイジ部門(60歳以上)

第1位   黒田 公子    埼玉県   本選演奏曲 : 「小川の岸辺」による幻想曲(ソル)
第2位   高橋 通泰    大阪府   同 : プレリュードBWV998、フーガBWV1000(バッハ)
第3位   柏木 丈夫    東京都   同 : アルマンド、ブーレ、ジーグBWV996(バッハ)
第4位   近藤  勲     千葉県   同 : フーガBWV998(バッハ)
第5位   山下きみえ    東京都   同 : ロシータ(タレガ)、ワルツ第4番(バリオス)
第6位   永松 知雄    千葉県   同 : 椿姫幻想曲(アルカス)


ミドル・エイジ部門(25~59歳)

第1位  佐々木みこと   北海道   グランソロ(ソル)
第2位  直井 正敏    千葉県   セビージャ(アルベニス)
第3位  後藤 潤一    大阪府   セビリアーナ(トゥリーナ)
第4位  守 加津雄    埼玉県   カヴァティーナ組曲より(タンスマン)
第5位  増田 泰隆    石川県   ファンシー(ダウランド)
第6位  安原あゆみ   神奈川県  ロートレック讃歌(デ・ラ・マーサ)、パラグアイ舞曲第1番(バリオス)



 シニア・エイジ部門第1位の黒田さんはこれまで何度か入賞してきた実力者の一人ですが、今回は19世紀ギターを用いての出場です。 その楽器との相性も伴って、古典らしいたいへん素晴らしい演奏でした。



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 ミドル・エイジでは北海道の佐々木さんは、会場中に響くたいへん豊かな音量と圧倒的な迫力。 細部に至るまで完璧な演奏で堂々の1位となりました。



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対照的なソルの演奏

 たいへん素晴らしい演奏であることは誰しも感じたことと思いますが、ただ、、用いている版はソルのオリジナル版とは異なるもの(セゴヴィアのコピー版?)で、なお且つ演奏スタイルもソルの音楽とはかなり距離のあるものに感じられました。

 そういった意味では審査員の中でもいろいろな意見があったのではと思われます。

 それぞれソルの作品を演奏して1位になった黒田さんと佐々木さんの二人ですが、その内容はまさに対照的と言えるでしょう。




優勝経験者が多数

 予選にはシニア部門32人、ミドル部門16人で、なお且つ、このシニアギターコンクールでも、また他の地方のコンクールなどでも入賞、優勝歴のある人がたくさん出場し、まさにアマチュア・ギター界のトップを決めるコンクールとなりました。

 予選を通過するだけでもたいへん難しいコンクールとなっているは確かです。




難しい曲ではないはずだが

 課題曲はシニアが練習曲イ短調「ラルゲット」作品35-3(ソル)、 ミドルがワルツニ長調(タレガ) でした。

 こうした曲はこれらの出場者にとっては決して難しい曲ではないはずなのですが、ソルのラルゲットでは音、特に各声部の音が均等に、またクリヤーに出ていない人が多く、また付点音符もかなり曖昧なのが目立ちました。 

 また和声法の処理や、フレージングに難が見られた人も少なくありませんでした。



やはりダ・カーポはあったほうが

 ワルツの方でも、ワルツらしいリズムの刻みが感じられない人も多く聴かれました。 もしかしたらスタッカート奏法の技術に問題があるのかも知れません。

 またニ長調とト長調の各部分の性格の違いなども弾き分けたいところでした。

 また、原曲にはダ・カーポの指示がないのでト長調の部分で終わっていましたが、やはりこの曲はダ・カーポがないと不自然。




基本さえ出来ていれば

 確かに予選を通過するのは難しいことかも知れませんが、こうした基本的なことをしっかりと踏まえれば、特に飛びぬけた技量がなくとも不可能ではないのではと思いました。

 決して予選通過できなかったのは、緊張して上手く弾けなかったからだけではないでしょう。

 結局、音楽あるいは演奏の基本が出来ているか、いないかが通過の可否を決定するのでしょう。

 因みに、私は今回は審査ではなく、客席で聴きました。 同じ曲の演奏が続くと、確かに眠気が襲って来ますね、審査員でなくてよかった!

 

藤井、大萩による「羽衣伝説」の競演

 そうそう、SOSIAでの打ち上げでは藤井、大萩のリレーによるたいへん素晴らしい「羽衣伝説」の競演がありました!
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バッハ:無伴奏チェロ組曲 22


調性とギターへの編曲 7


チェロ組曲第1番




1~8小節

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せっかく⑥弦にも「レ」があるので

1 (1~4小節)は、3拍目の低音を1オクターブ下げたものです。

 せっかく⑥弦の開放弦がレなので、それを使わない手はないでしょう。
 
 もちろん自由度のあるものなので、すべて➃弦とか、すべて⑥弦、あるいは上とは逆に1拍目が⑥弦で3拍目が➃弦もあります。

 私の編曲では、1拍目はわかりやすい方がよいので、➃弦にしてあり、重さを加えるために3拍目が⑥弦となっています。


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 (5小節目後半)は構成音を見ても、また次の小節への進行を考えても 「シ」 が置かれるべきでしょう。

 4分音にしてあるのは演奏の都合上です。 可能であれば2分音符の方がいいでしょう。




デュアート編では「ソ#」を低音としているが

 (6小節目)はそのまま 「ソ#」  を低音として使うことも出るでしょう。

 デュアート版などはそのようにしてあります。 しかし低音の5度進行を考えると、根音の「ミ」の方が適切と思われます。

 私も以前は 「ソ#」 で弾いていたのですが、 前後の小節も考慮すると、「ミ」ほうが自然に聴こえます。



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 (7小節目)は根音(ルート音)の追加ですが、これにはほぼ異論はないところでしょう。 







9~14小節

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 の「ラ」も異論のないところと思います。 とする、5 は 「ミ」 となるでしょう。




一見減7の和音のようだが

 はちょっと見たところ減7の和音のようです。 とするとその構成音の一つの「ラ」が譜面上最も下のあるので、「ラ」 が低音になるのかなと思いがちです。

 しかしバッハが減7の和音を使う場合はあくまで属9の和音の根音を省略したものと解釈しています。 この減7の和音の根音は何かというと、実は 「ソ#」、 「シ」、 「レ」、 「ファ」 の4通り考えられます。

 この場合、次の小節が何かと言うことが決め手となります。 12小節目はその構成音からしてEm、つまりニ長調のⅡの和音と考えられます。

 となれば11小節目はその属9の和音で 「B9」 と考え、追加の根音として 「シ」 を選択するのがベストでしょう。

 すると11小節の 「ラ」 は第7音となり限定進行し、2度下がって 「ソ」 に、 また 「ド」 は第9音でやはり限定進行して「シ」に収まります。

 この方法では、古典的な和声法にしっかりと従った形となります。




こんな編曲もあるが

 なお、市販の譜面の中には下のような編曲もありますが、これは全く古典的な和声法を満たしていないものとなるでしょう。

 あえて11小節の低音を 「ラ」 にしたければ、下の段のようなものになるかな。



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 意外といいかも知れませんが、やや奇策かな。
バッハ:無伴奏チェロ組曲 21


 調性とギターへの編曲 6


チェロ組曲第1番ト長調




ギターではニ長調が一般的

 第1番はト長調で書かれています。 これまでの話では、チェロの曲をギターに編曲する場合は4度か、5度上げることが一般的ということでした。

 4度上げるとハ長調ですが、ギターではハ長調は開放弦を上手く使えず、あまり弾く安い調とは言えません。

 一方、5度上げてニ長調とすると、6弦を「レ」にした場合、たいへん効率よく開放弦を使え、たいへん弾き易くなります。

 結果、「第1番ト長調」 をギターに編曲する場合は、ニ長調(#2個)が第1の選択となります。 

 多くのギタリストによって演奏されてきたデュアート編も、このニ長調で、それぞれのギタリストが独自に編曲したものも、ほとんどこのニ長調です。



プレリュード

 調はニ長調を選択ということで、さらに実際にどのようにギターに編曲するかということを考えてみましょう 

 下の譜面は無伴奏チェロ組曲第1番の「プレリュード」の原曲(チェロ)の譜面です。

 といってもこの譜面は、いわゆる実用譜と言って、演奏記号などを後から付け加えたもので、本当の原典ではありません。

 この譜面はかなり前(1980年頃)買ったものですが、チェロの方でも以前はこうした譜面が使われていたようです。

 しかし現在チェリスト、及びチェロを学んでいる人たちは、はこうした書き込みのない、あるいは少ない、より原典に近いものを使用しているのではないかと思います。



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無伴奏チェロ組曲第1番のチェロの譜面 演奏記号などは後から付け加えたもので、バッハが書いたものではない。 最近ではより原典に近いものが使われているようだ。




とりあえずト音記号に直す

 ヘ音記号に慣れている人なら、このままギターでも弾けますが、やはりギターをやっている人にとってはヘ音記号はちょっと不慣れ(私も!)。

 そこで私たちが慣れているト音記号、と言ってもギターのためのト音記号なので、1オクターブ低いト音記号に直してみましょう(半分だけ)。



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ヘ音記号で書かれているものをギター用のト音記号(1オクターブ低い)に書き直したもの。



 これでかなり弾き易くなりましたね。原調(ト長調)にこだわるのであれば、このまま弾いても良い訳ですが、しかしギターには通常ない「ド=ナチュラル」まで出てきます。 

 ⑥弦を「ド」下げればその音のカヴァー出来ますが、それでは他のところが弾きにくくなるので、やはりこのト長調でギタ―で弾くのは無理があるでしょう。




5度上げてニ長調に移調

 そこで、前述の通り、5度上げてニ長調に移調してみましょう。

 因みにこうした移調は楽譜ソフトだと簡単に出来ます。 手書きの場合は結構たいへんなだけでなく、どうしてもミスも起きがちでした。



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原曲を5度上げてニ長調に移調したもの。 見にくい場合は画像をクリックしてください。



 これでだいぶ弾き易くなりましたが、しかしまだギターの楽譜らしくないですね。




低音を下向きの長い音符に書き替え

 例えば最初の「レ」は譜面では16分音符となっていますが、普通にギターで弾くと次の同じ音が出てくるまで、つまり2拍伸びるので、実質は2分音符となります。

 そこで当然伸びるべき低音は下向きに、実際に伸びる長さに書き替えてみます。

 

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低音を下向きに書き替えたもの




ここまではソフト任せで誰にでも出来る

 これでだいぶギターの譜面らしくなりましたね。 ほぼ編曲の出来上がりといったところですが、しかしまだ一切編曲はしていません。

 ただ原曲の譜面を書き直しただけで、実際の音には全く手直しはしていません。

 なお且つト音記号への書き替えや、移調はソフト任せということで、音楽ソフトの取り扱いさえ慣れていれば誰でも出来ることと言えます。




低音をオクターブ移動したり、低音のない小節に低音を補充する

 確かにこれだけでも(一切編曲なしで)ギターで演奏出来なくもないですが、でも7小節(4段目)のように低音がないところもあります。

 またギターでは同じ「レ」でも⑥弦を下げればオクターブ下の「レ」も使えます。 

 そのようにして低音などを補充したものが次の譜面です。




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カッコの付いた音符はオクターブ移動したり、新たに付け加えた音



次回詳しく説明

 これで編曲の出来上がりですが、これに関してはやはり説明が必要ですね。

 低音を付け加える場合、ただコードのルート音を入れるだけというわけにもゆきません。

 低音(バス音)の進行、及び和声全体の進行を考えて音を選択しなければなりません。

 古典的な和声法はもちろん、バロック音楽、あるいはバッハ的な手法も理解する必要があるでしょう。

 一応付け加えた音について説明をしておこうと思いますが、ちょっと長くなるので、次回と言うことにしましょう。




バッハ:無伴奏チェロ組曲 20


 調性とギターへの編曲 5





 さて、今回からギターへの編曲の話です。

 チェロのための譜面をギターに編曲する際に、最も重要なのは調の選択ということになります。 




かつてはかなり高めの調が選ばれた

 前にも触れましたが、20世紀の中頃までの編曲は、ギターがもっとも響く調、あるいはギターにとってもっとも都合の良い調を選択する傾向がありました。 

 タレガが無伴奏チェロ組曲第3番の「ブレー」を9度上げて編曲したなどその良い例です。

 チェロ組曲以外でも、その時代ではリュート組曲ホ短調BWV996(第1番とされるもの)を4度上げてイ短調。

 同ハ短調BWV997(第2番と呼ばれるもの)がニ短調と、今日演奏されているものより音域の高い調が選ばれていました。




一時期、原調で演奏することも行われた

 20世紀末になると原調を重んじる風潮が生まれ、なるべく原調で演奏することが好まれました。

 その際原曲の音を一切変更せず、チェロのオリジナルの譜面をそのままギターで演奏さるということが多くありました。

 こうした方法はギターとしてはかなり低い音域に音が集中し、また低音などの追加もないので、窮屈な感じ、あるいは禁欲的な感じは否めませんでした。




チェロとギターの音域の違いを考慮して

 今現在の考え方の主流としては、チェロとギターの音域の違いを考慮して調を選ぶと言った方法のようです。
 
 チェロの最高音弦は通常 「ラ」 となっています。 ギターで言えば3弦の2フレットです。 

 それに対してギターはご存じのとおり、「ミ」 となっており、最高音弦で見るとギターの方が5度高いということになります。

 またチェロの最低音弦は 「ド」 (ギターの5弦の「ド」のオクターブ下)で、ギターは 「ミ」 ですから、ギターのほうが長3度高いということになります。




長3度~完全5度上げるのが合理的

 つまりチェロとギターでは長3度から完全5度違うということになります。 

 したがって、チェロからギターに編曲する際は、この音程の範囲で移調するのが合理的と言えます。

 また♯系の曲と♭系の曲ではやはりそのイメージが違いますから、調号などはあまり変わらないほうがしっくりきます。

 チェロの原曲を5度上げると#が一つ増えることになります。 つまりト長調(#1個)を5度上げるとニ長調(#2個)という訳です。

 4度上げると#が1個減る、または♭が1個増えることになります。 ト長調だとハ長調(#なし)ですね。




近親調の関係

 また、これらの関係は近親調ということで、ト長調からするとニ長調は属調、ハ長調は下属調となり、文字通り近い関係にあります。

 したがって移調してもそれほどの違和感はない訳です。

 結局のところ、この関係でギターへの編曲の際に調が選ばれることが一般的なのですが、ただし、前にも言いました通り、バッハ曲の無伴奏チェロ組曲はすべて同じ調律で演奏されるわけではなく、変則的な調弦や、第6番のように5弦チェロもあるので、こうしたことには当てはまらないものもあります。

 では、それぞれの曲がどの調に移調したらよいかは、次回から順に書いてゆきましょう。
ギター文化館所蔵楽器によるコンサート

   2020年 1月12日(日)




アントニオ・パフェス・ロペスと松村雅旦

 来年の1月12日にギター文化館の所蔵楽器を用いてのコンサートの話は、以前にしましたが、一昨日その楽器に馴染むために弾かせてもらいました。
 
 前回は画像がなかったので、今回は画像を用いて楽器の説明などしたいと思います。





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アントニオ・パフェス・ロペス( スペイン 1795年制作)   最初期の6単弦ギターと思われる。  他の19世紀ギターに比べても、ボディは細長い。 ボディの厚さも薄く、座って持つとかなり弾きにくい。 主に立奏したのかも知れない。 修理の跡はたくさんある。





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ギター文化館にもしばしば訪れていた松村雅旦(まさのぶ)氏の1997年の楽器。 松村さんには合うたびに親しく声をかけていただいていたが、2014年1月に亡くなられた。




存在を知らなかったが

 とはいっても、このアントニオ・パフェス・ロペスという18世紀のギター制作家については、私もこれまで全く知識がなく、今度の機会でその存在を初めて知ったわけです。

 一般に、19世紀ギターと呼ばれる、6単弦ギターは、その名のとおり19世紀になってからで、 18世紀まではバロックギターと呼ばれる5コース複弦と言われています。
 



最初期の6単弦ギター

 そうしたことからすれば、1795年制作となっているこの楽器は、6単弦ギターのはしり、つまりかなり初期の6単弦ギターということになります。





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ちょっと読みにくいが、ラヴェルにはしっかりと製作者の名前と ”1795年” という製作年が書いてある。 






弦巻きやブリッジは後で交換されたもの

  また、ちょっと見ただけでもヘッド(特に弦巻き)やブリッジは当時(18世紀から19世紀初頭)のもではなく、少なくとも19世紀末以降のものとわかります。





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明らかに ”今風” の弦巻き。 当時は木製のペグだった(これがなかなかチューニングしにくい!)





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こうしたブリッジも19世紀後半以降。 当時のものはアコースティック・ギターのようにピンで弦を止めるタイプ。





指板はネック側がかなり厚くなっている

 また、指板はネックのほうに行くにしたがって厚くなっています。 おそらくネックの反りに対処したものと思荒れます。 この指板も後の物と思われますが、ネック自体はオリジナルのものかも知れません。

 その結果、楽器の重心がネック側に偏り、そう言った点でも楽器を保持しにくくなっています。





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上の方に行くに従い、指板(黒檀)が厚くなっている。 ネックの反りに対処するためかも知れない。 その結果、ネック側が極端に重くなっている。






表面板にフレットを打ちこんだ跡が

よく見ると、表面板にはフレットが埋め込まれた跡があります。 19初期の楽器はフレットを表面板に直接埋め込むのが普通で、現在のようにサウンドホール近くでもフレットを指板上に埋め込む形になったのは19世紀半ば頃からと思われます。





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表面板にはもともとフレットが打ちこんであった形跡が





 もともと表面板上にフレットがあったものを、後に(19世紀半ば以降)現在の楽器のようにサウンドホールまで指板を付け、そこにフレットを打ち直したものと思われます。




表面板がオリジナルであることを示している

 となると、この表面板に関しては18世紀末から19世紀初頭のものと考えられ、オリジナルのもである可能性は極めて高いと言えます。
 



表面板、裏板、側板、ネックはオリジナルの可能性が高い

 この楽器のどの部分までがオリジナルで、どの部分が後に交換されたりしたものかを判断するのは、私には難しいところですが、おおよそのところでは、ボディ(表面、裏、側板)とネックはオリジナルで、 指板、ヘッド(糸巻きを含む)、ブリッジなどは後に交換されたものではないかと思われます。




何度も致命的な破損を

 他にひび割れなどのあとが各所に見られ、何度も修理された形跡があります。 恐らく致命的な破損を何度か経験しているのではと思われます。