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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

ポピュラー&オリジナル・ギター・アルバム 3



このところコロナ情勢はますます悪化してきましたね、連日感染者が数百人となっています。  5月頃には新たな感染者もだいぶ減って、次第に収束に向かうのかなということで、秋にはぼちぼちコンサートなどの予定も出来つつあるところだったのですが、さらに悪化となれば、またわからなくなりますね。





2.第3の男




ずばり ”The Third Man”

 さて、気を取り直して、今度のアルバムの2曲目は映画 「第3の男」 の主題曲です。

 外国の映画のタイトルは私たちが知っているタイトル、つまり邦題と全然違うことがよくありますが、この映画に関しては原題も 「The Third Man」 ということで、ずばり直訳ですね。 日本の配給会社も特に変える必要はないと考えたのでしょう。

 1949年、つまり終戦直後のウィーンを舞台としたミステリー映画ということですが、ミステリーだけあってストーリーを一言で言うのは難しいです。



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映画のストーリーはなかなか難しい

 一応テレビでも見たこともありますし、今回ネットでもあらすじを読んだりしましたが、イマイチ内容は把握出来ません。 友人が殺されて、その犯人を追うはずだったのが、いつの間にか追いかけているのはその友人そのものだったりして・・・・・・

 ただ地下の下水道の中で追いかけっこをしているシーンは昔見た時から印象的で、そのシーンは何となく覚えています。 もちろん白黒映画です。





ビールのコマーシャルでお馴染みの


 音楽の方はアントン・カラスのツィター演奏で、ビールのコマーシャルになっていたり、JR駅の発車音になっていたりしてたいへん有名ですね。 音楽のほうは単純明快だと思います。



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オリジナル・バージョンをよく知らなかったので

 子供の頃からよく聴いていた曲ですが、オリジナルのカラスの演奏というより、ギターやオーケストラによるLP盤で聴いていました。 

 今回の録音を機に、あらためてネット動画でサントラ・バージョンを聴いてみたら、当時の記憶とは若干違っていました。

 そこでオリジナルに近い譜面を取り寄せ、カラスの演奏もよく聴いて、アレンジし直しました。




一度独奏で録音してみたのだが

 この曲は最初独奏で録音してみたのですが、伴奏とメロディのバランス、音色などかなり不満が残るものだったので、メロディと伴奏部を別に録音しました。

 別録音といっても、楽譜上は独奏で、そのメロディと伴奏を別々に録音して編集で合わせた訳です。




聴くと別録りバレるかな?

 出来上がったものとしては独奏のように聴こえるはずなのですが、しかしメロディがしっかりと伴奏から浮き上がっている感じとか、伴奏とのバランス、あるいは音色、リズムのキレなどは、やはり独奏ではなかなか出来ないことです。

 そうやって聞くとやはり別録りしていることがわかってしまうかな?

 ということは、日頃独奏の場合はかなり妥協して演奏していて、また聴く人にも 「この程度の事は独奏だからやむを得ない」 と温かい気持ちで聴いてもらっている、あるいはそれを期待して演奏しているのでしょうね。



反則といえば反則だが

 今度のような録リ方は、”生” では絶対に出来ないことなので、反則と言えば反則ですが、やはりギターは独奏より二重奏の方が理想的とも言えるのでしょう。

 二重奏と言っても前に言いましたとおり、各パートを別に録音して編集で合わせるのですが、これはなかなか時間のかかることです。 文字通り、1音、1音合わせてゆく感じになります。 

 そんな感じで独奏バージョンに続いて、二重奏録音も編集を含め、一度完成したのですが、何回も聴いているうちに問題点があれこれ出てきて、結局さらにもう一度録り直しをして、結果3回この曲の録音、編集作業を繰り返したことになります。



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ポピュラー&オリジナル・ギター・アルバム 2




再々々度、録音し直し

 このCDもだいたい出来上がって、あとは発注するだけ、なんてところだったのですが、出来上がったかなと思うと、いろいろ問題点見つかり、再度あるいは再々々度、録音し直し、なんていう曲も何曲かあって、なかなか上手くゆきませんね。

 どうも録音レヴェルが若干高すぎて、音割れがあるように感じるものもあり、こうした事は編集ではどうにもならないので録音からまたやり直しということになりました。

 ギターの音というのは音量が小さいようでも音を出した瞬間だけはレヴェルが上がるので、それほどレヴェルを上げなくても音割れとなってしまう場合もあるようです。



ウグイス待ち?

 しかしあまり低すぎれば電器系統のノイズ等が発生してしまいます。 またマイクからの距離はある程度ある方がいいのですが、あまり離れると、今度は自然のノイズが入り込んでしまいます。

 特にこのj時期、我が家ではよくウグイスが鳴いていて、ウグイスが鳴いている時間は録音は出来ません。 ただ我が家の周辺はかなり静かなところなので、雨風の強い時や、ウグイスが鳴いている時以外は殆んど外からのノイズはなく、車の音などもほとんど入りません。

 

音によって鳴り方が大きく異なる

 また、ギターの音は個々の音でその大きさがかなり異なるようです。 人間の耳ではそれほど感じなくても、録音したものをグラフで見るともの凄くその差はたいへん大きいものです。 

 グラフを見た感じでは出る音と出ない音では数倍、場合によっては一桁くらいの差があります。



脳内レヴェル調整

 人間の耳というのは常に自分自身でレヴェル調整をしてしまうようですね、極端に差のある音でも聴いた感じではそれほどは差が感じられません。 

 ギターと言う楽器は弦の振動を木製の箱で増幅させている訳ですが、その箱の大きさ、形、素材などにより共鳴する音としない音とが出来てしまうのは必然なのかも知れません。

 レッスンの時でも、 「ギターは力を入れた分だけ音量が出る訳ではありませんから、よく聴いて音量を加減してください」 などとよく言っているのですが、その差は思ったより大きいようです。



個々の音により、音の出方がかなり異なる

  因みに、楽器によってその差の大きいものと、そうでないものとがありますが、音量の大きいギターは、音量のばらつきが大きくなる傾向があり、音量の小さい楽器は比較的ばらつきが小さいようです。 

 また、どの音が鳴るかによってその楽器の特徴も決まるでしょう。 音量のある楽器の場合は「ソ」、「ソ#」、「ラ」 などがよく鳴り、「ド」、「ファ」、「ファ#」 などがあまり鳴らないことが多いようです。

 「ソ」、「ソ#」、「ラ」 などがよく鳴る楽器は華やかな楽器といえ、逆に 「ド」、「ファ」、「ファ#」 などが鳴る楽器は個性的で ”シブイ” 楽器といえるでしょう。 こうした事も楽器を選ぶときに考慮する点でしょう。




ハウザーの場合は

 私の使っているハウザーⅢは「ソ」、「ソ#」、「レ」 が鳴り、「ラ」はそれほどなりません。特に⑤弦の開放はあまりりならず、「ミ」や「レ」の低音と差がはっきり出てしまいます(編集で調節することのある)。

 また「ド」や「ファ」もあまり鳴らず、メロディの場合など、そこに”凹み”が出来てしまい、極端な場合は編集で調整します。

 今年1月に松村さんの楽器を弾いたことがあり、その時に 「ファ#」 が鳴るので驚きました。ハウザーとは全く違う傾向の楽器ですね。



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私のハウザーⅢは 「ソ」、 「ソ#」、 「レ」 が鳴り、 「ラ」、 「ド」、 「ファ」 が鳴らない。  どちらかと言えば派手なタイプだが、一般にハウザーは”シブイ”方が多い。






スターダスト

 さて、今度のアルバムの1曲目の収録曲は、アメリカのジャズ・ミュージシャン、ホーギー・カーマイケルの「スターダスト」で、 いわゆるジャズのスタンダード・ナンバーとして多くのミュージシャンにより歌われ、また演奏されている曲です。

 クラシック・ギターでもよく演奏されていて、江部賢一さんの編曲も知られています。



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ホーギー・カーマイケル(本名はHoagland Howard Calmichael) 「スターダスト」は1927年に作曲された。



やはりシャボン玉ホリディ

 しかしこの曲といえば、何といっても1961年~72年にかけて放送されていた伝説のテレビ番組「シャボン玉ホリディ」で、姉妹デュオのザ・ピーナッツがエンディング歌っていて、それで知っている人も多いでしょう。

 私もその一人で、当時はあまり音楽に興味がなく、どちらかと言えばクレージー・キャッツのコントが目当てでこの番組を見ていましたが、毎週最後のハナ肇さんもエンディング・トークにかぶせてこの曲をザ・ピーナッツが歌ってたので、この曲はよく覚えています。 ただ、当時その曲名を知っていたかどうかは怪しいです。



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 この曲を編曲する際にあらためて動画でザ・ピーナッツの歌を聴いてみましたが、今現在聴くと、その歌のうまさ、声の美しさに驚かされます。

 当時はそんなこと全くわかりませんでしたが、たいへんレヴェルの高いボーカル・デュオだったのだなと改めて認識しました。
 
 他の演奏もいろいろ聴いてみましたが、結局私にはこのザ・ピーナッツの歌が一番印象的で、この録音もザ・ピーナッツの歌に影響されているでしょう。



最初は独奏で録音したが

 当初は独奏でアレンジし、録音してみたのですが、独奏ではなかなかその歌いかたがコピー出来ず、結局後半からはコードは別録りにし、メロディを単音で弾く形にしました。

 やはり単音だと音色も自由にコントロール出来るし、またビブラートやグリサンドもかけやすくなるので、より歌の感じがだせると思います。 他にも同様な理由でコードとメロディを別録りした曲も何曲かあります。

 基本的に歌声とギターの音とでは全く性質が異なり、ギターの演奏を歌のように聞かせるのはたいへん難しいことです。 しかしそれをやらなければ音楽的表現とはならないでしょう。
ポピュラー&オリジナル ギター・アルバム(CD)の録音




常に自粛生活だが

 今年になってからコロナの件でイヴェントもなく、またレッスンも少ない、いわゆる自粛生活が続いています。 もっとも私の場合は普段からあまり外出することが少なく、常に自粛生活みたいなものです。




新たなCDの録音

 そうしたことから、結構時間があるので、しばらく前までは教材の手直しなどをやっていたのですが、このところは新たなCDの録音に取り組んでいて、その録音、編集作業もほぼ終わりました。

 これまで「アルベニス作品集」、「クラシカル・ギター名曲選」 、他にレッスン用のCD4枚をと発売してきましたが、今度はポピュラー曲、および自作によるCDとなっています。

 パッケージのデザイン(仮)と収録曲は以下の通りです。




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中村俊三 ポピュラー&オリジナル ギター・アルバム




 収録曲

1.スターダスト(ホーギー・カーマイケル)
2.第三の男(アントン・カラス)
3.サマータイム(ジョージ・ガーシュイン)
4.ラ・クンパルシータ(G.M.ロドリゲス)
5.ホワイト・ローズ(中村俊三)
6.ハナミズキ(マシコタツロウ)
7.レット・イット・ビー(ポール・マッカートニー)
8.見上げてごらん夜の星を(いずみたく)
9.7月の風(中村俊三)
10.ビビディ・バビディ・ブー(デビッド&ホフマン)
11.ひまわり(ヘンリー・マンシーニ)
12.Broken Cup(中村俊三)
13.花のワルツ(ペーター・チャイコフスキー)
14..枯葉(ジョゼフ・コズマ)





 
編集による二重奏が多い

 これらのうち、完全な独奏で録音したのは「ラ・クンパルシータ」、「ビビディ・バビディ・ブー」、「ひまわり」、「枯葉」の4曲のみで、他は各パートを別に録音して編集で合わせる、いわゆるオーバー・ダビングの形で録音しています。



音色や音量のコントロールが上手く出来なかったので

 「スターダスト」、 「第三の男」、 「サマータイム」、 「ハナミズキ」、 「レット・イット・ビー」 は、もともと独奏のアレンジで、これまでコンサートなどでも演奏してきたものです。

 最初は独奏で録音してみたのですが、音色、音量バランス、リズムのキレなど、なかなかイメージ通りには行かなので、メロディと伴奏部を別録りしてみました。

 編集作業など手間のかかることは多いのですが、結果はよりよいものになったと思います。



聞いた感じは独奏とあまり変わらない

 二重奏的に録音したのですが、楽譜は独奏の譜面をほぼそのまま用い、ただ伴奏部とメロディを別に録音しています。 したがってこれを普通に独奏で弾くことは十分に可能です(コンサートであれば当然独奏で弾く)。

 聴いた感じでは独奏とあまり変わらず、技術的に優れていれば、普通に独奏で録音してもこのように弾けるのでしょうね。



一青窈さんの歌い方を

 「ハナミズキ」ではどうしてもあの一青窈さんの歌い方をコピーするのが難しく、特に独奏で弾いた場合は、なかなかメロディを同じように歌わせることが出来ません。

 メロディのみでも決して易しくはありませんが、多少なりとも近づけたかなと思います。 また伴奏部も分けることにより変化も出せました。



バーチャル・エレキ?

 「レット・イット・ビー」では間奏部をアコースティック・ギターで演奏し、それを編集の際に若干加工してエレキ・ギターのようにしてみました。 こんな遊びも録音編集だからできることでしょうね、ライブでは出来ないことです。



バーチャル・オケ

 「見上げてごらん夜の星」は前半はギター独奏ですが、後半からは音楽ソフトによる”バーチャル・オーケストラ” が付け加えられています。 

 バーチャルですから、全く本物のオーケストラと同じようにならない部分もありますが、結構面白いものになったと思います。 編成は弦楽合奏にフルートとホルン(各2本)を付け加えたものとなっています。



オリジナル3曲

 私のオリジナル曲も3曲収録しました。いずれも二重奏曲ですが、「ホワイト・ローズ」 と 「7月の風」 は当初は独奏曲でしたが、自分で作った割には演奏が難しく、あとから二重奏曲に直しました。やはり聴いた感じでは二重奏の方がいいですね。

 3曲とも気楽に聴ける曲と思いますが、 「7月の風」 は 「July Breeze」 として2017年のコンサートで演奏しましたが、もともと英語が不得意なのに3曲とも英語のタイトルばかりも何かなと思い、この曲のみ日本語タイトルにしました。

 「Broken Cup」 は未発表の曲で、これまで自分でも音楽ソフト上だけで聴いていたのですが、今回初めて自分でもギターの音で聴くことが出来ました。



一人ギター合奏?

 「花のワルツ」 は水戸ギタ―・アンサンブルでも何度か演奏しているものですが、今回は自分一人で録音した ”一人ギター合奏” といったものです。

 この曲も2017年のコンサートで独奏で演奏しているのですが、やはり独奏だと省略、簡略する部分が多くなり、この形の方が結果はいいですね。



まさに三角関係

 譜面上は三重奏ですが、それらを別個に録音し、編集で合わせていますが、この編集作業はなかなか大変!

 まさに三角関係といったところで、三つのパートを合わせるということは、予想以上に難しく、また時間のかかる作業でした。    ・・・・・・こっちとこっちの関係がよくなると、こっちとあっちとの関係が悪化する?



メトロノームに合わせたつもりでも

 各パートの録音は一応メトロノームを使って行うのですが、メトロノームに合っているからと言って(合っていると思っているだけ?)、本当に正確にテンポやタイミングで弾いているわけはありません。

 メトロームに合わせるということは、ちょっと速かったら遅く、遅かったら速くと微調整しながら弾いているんですね。つまり実際には若干長めの音符と短めの音符が交互になったりしています。

 結局は編集の際にほぼ1音ずつ伸ばしたり、縮めたりしてタイミングを合わせてゆくのですが、どちらのパートが狂っているか判断するのも難しいところです。。



コロナのおかげ?

 独奏の場合でもいろいろ試行錯誤しながら、時間をかけて録音しました。 一通り録音、編集作業まで終えたところで、結果イマイチで、また編曲の段階からやり直しといった曲も少なくありません。

 またこれを機に原曲、あるいはヒットした演奏などをじっくり聞いてみました。 やはりしっかり聴いてみないことには演奏は出来ません。

 こんなに手間のかかることが出来たのもコロナのおかげかな? 

 いずれにしても、これまであまりない個性的なCDになると思います。 前述のとおり録音、編集作業はほぼ終わりで、あとは微調整および詰めの作業となります。

 またパッケージのデザインなどを行い、業者に発注となりますが、この発注も結構たいへんで、前回は大分苦労しました。 業者の指定通りにデータを作るのはなかなか難しいです。



是非お買い上げください

 1~2か月後くらいには出来上がると思いますが、その際に皆さまにはぜひお買い上げいただき、是非とも聴いてみて下さい。今までにはない、なかなか面白いCDだと思います。

 それでは次回からそれぞれの曲目の解説、あるいは作曲のいきさつなどを書いてゆきます。