目で見るギターの音 1
~編集ソフトでギターの音を目で見るタイトル変更 前回の続きですが、前回の話の通り、タイトルを変えて 「目で見るギターの音」 ということで書いてゆきます。
編集ソフトでギターの音のグラフを見てみると、実際に聴いた感じを反映した部分もあれば、異なる点などもあります。
また、よく鳴る音とそうでない音はグラフで見るとどう違うのかなどを検証してゆきます。
前回は若干思いつきでやったので、あまり深く考慮しなかった点もあり、今回改めて2台のギターの音を録音し、そのグラフを画像にしてみました。
他の弦の共鳴を止めて0~19フレット 前回は1弦の1~12フレットだったのですが、今回は1弦の開放から19フレットまでと拡げてみました。 また前回他の弦の共鳴を止めたかどうかはっきりしなかったので、今回は1弦以外の弦を消音した状態で弾いたものと、他の弦(2~6弦)に触れず、全く消音をしていない状態のもと別に録音してみました。
1弦の開放から6フレットまで。 1弦以外の弦を消音して録音した。 上はヘルマン・ハウザーⅢ、 下はポール・ジェイコブソン
ヘルマン・ハウザーⅢ (表面松 裏横ローズ・ウッド 1983年ドイツ)
個々の音によって振幅などがかなり異なる それしても同じギターで弾いても各音によって振幅、つまり音量が全く違うのにあらためて驚かされます。 またグラフの波形が音によってそれぞれ違う、つまり減衰の仕方が音によってかなり異なっています。
ギターは弦の振動をボディで共鳴させて音を増幅させているので、そのボディの形や大きさなどで共鳴する振動数が変わるので、やむを得ない事ではあるでしょう。
そのボディの形や大きさはクラシック・ギターであればだいたい同じなのですが、これらのグラフを見てもわかる通り、楽器の違いによって共鳴する音、しない音はかなり異なってきます。

ポール・ジェイコブソン (表面杉 裏横ハカランダ アメリカ 1991年)
0~6フレットまではよく似た傾向 上のグラフのように0~6フレット辺りまではこの2本の楽器は似たような傾向を示しています。
弾いている感じからするとこの2本の楽器はやや同じ傾向にあり、それは 「ソ」 や 「ソ#」 (3、4フレット) が共によく共鳴することからも言えるでしょう。
この 「ソ」 と 「ソ#」 がよく鳴る楽器は多く、前回の記事のとおり、このあたりに 「ウルフ・トーン」 と呼ばれる音があると言われています。
聴いた感じでは「ソ」の方はどちらの楽器も比較的素直な音で、「ソ#」は鳴り過ぎてちょっと異質な音に聴こえます。おそらくこの「ソ#」がウルフトーンと呼ばれる音に相当するのかも知れません。
縦長と横長 個々の波形を見るとジェイコブソンのほうが全体的に音量があるので、振幅は大きくなっていますが、それだけに減衰も大きいので、したがってグラフが ”縦長” に、見えます。
それに比べてハウザーのほうはやや ”横長” となっていて、弾弦直後の音量は比較的小さいが、減衰は急でない、つまり音が ”伸びる” 傾向にあります。
1弦 7~13フレット 上ハウザー、 下ジェイコブソン7~13フレットではだいぶ差が出る この7~13フレットではだいぶ二つの楽器で違いが出てきましたね。 特に 「ド」 と 「レ」 (8、10フレット)が正反対になっています。
前回の記事のグラフでは 「シ」(7フレット) もだいぶ異なったのですが、今回の測定ではあまり差がありません。 常に同じように弾くのはなかなか難しいですね。
ジェイコブソンでは 「レ」 のグラフがたいへん小さく、それに対して「ド」の振幅が大きいですが、実際に弾いている感じではそれほどでのちがいは感じません。
確かに改めてそれにしても 「ド」 がよく鳴りますね、前回の測定でも振幅は大きく出ていました。 日頃はあまり気が付きませんでした。 「ド」の音は意外とギターではあまり重要なところで使われないせいかも知れません。
ハウザーの「ド」は困った音 その一方でハウザーの 「ド」 が鳴らないのはいつも困りものです。 この「ド」は音量がないだけでなく、音色もきれいに出ません。 音量がないので、自然と弾弦に力が入り、したがってノイズっぽい音になってしまうのかも知れません。
しかし、グラフを見ると、確かに振幅は小さいですが、余韻はある程度長続きしています。 あらためて聴いてみると、確かに余韻は比較的長持ちしています。
「レ」は ”美味しい音” だが 弾いている感じだとハウザーの「レ」はよく鳴り、余韻も美しく、またヴィヴラートもかかりやすいです。 演奏の際には、この10フレットの「レ」は ”美味しいところ” で、まさに聴かせどころです。
でもぐらふでは特にそういった感じはありませんね、特に振幅が大きい訳でもありません。 余韻も特に長い訳ではありませんが、やや変わったグラフにはなっていますね、その辺が関係あるのかも知れません。
ジェイコブソンのあのタコ形は また前回の記事で、ジェイコブソンの12フレットの「ミ」がタコみたいな音型だなんて書きましたが、どうもこれは他の弦、特に5弦または6弦に共鳴してあのような形になったようです。 この他の弦を消音せず共鳴させた場合については次回(あるいは次次回)検証してみます。
今回、他の弦の共鳴を押さえて弾いたら、比較的普通のグラフとなりました。 しかし弾弦直後の振幅が跳ね上がり、減衰が非常に速いのは同じです。
”細く、長く” か ”太く、短く” か もちろんそれは常に感じているところで、”鳴るけど困った音” と言えます。 本当に音が「プツッ」と消えるので、ミスをしたような感じにも聴こえてしまいます。
他に 「ド#」(9フレット) も「ミ」ほどではありませんが、余韻が短く感じます。 この 「ド#」 と 「ミ」 の余韻が短く感じるのはハウザーも同じでした。
もしかしたら、弾弦直後に振幅が跳ね上がると、そこでエネルギーを使い果たしてすぐに減衰してしまうのかもかも知れませんね、まさに ”細く、長く” か ”太く、短く” でしょうか。