fc2ブログ

中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

第52回水戸市芸術祭市民音楽会



 7月24日(土)~25日(日)  水戸芸術館



CCI_000108.jpg



かなり変則的な市民音楽会

 昨年は中止となった水戸市民音楽会が昨日および今日水戸芸術館において行われました。 今回はコロナ蔓延防止のため無観客で、さらに2~3団体ごとに出演団体を入れ替えて行われるという変則的な形となりました。

 また演奏直前に5分以内のチューニングを兼ねた音出しが可能なだけで、事前、当日のリハーサルもないといった条件でしたが、両日合わせて27団体が出演しました。



動画配信

 今回の市民音楽会は無観客の代わりに各団体の演奏を録画、編集したものが、後日ユーチューブで視聴出来ることになっています。

 進行のほうはいろいろな点で例年とは全く異なり、また突然の変更も多く戸惑うこともありましたが、入れ替えの時間も長めにとった結果、空き時間が多く、今回は特に何もない待ち時間が多くなりました。




本来は厳禁だが

 本来はホール内において、公演中の撮影は厳禁なのですが、”準備中” ということで、通常は撮影できないホール内の写真をアップしてみました。




DSC_0050.jpg
ステージ



 蔓延防止ということで譜面台はかなり間隔をあけて置かれています。 ギター関係も同じようになるはずだったのですが、当日になってからほぼ通常通りの間隔になっていました。




DSC_0047.jpg
客席


 客席はこんな感じになっています。中央部分に2~3団体が座り、他には実行委員などのスタッフが数名程度客席内にいるだけです。 1~2名の団体もあって、出演者が10名に満たない時もあります。 





DSC_0052.jpg
消毒作業



 1つの団体の演奏が終わるごとに消毒が行われます。




DSC_0049.jpg
私の仕事場




 今回の私の仕事は進行のタイム・キーパーと言うことで、自分の出番以外はずっと写真の手前の黒い服の女性の手前(イス一つあけて)に座り、各団体の演奏開始時刻などを記入していました。 




 DSC_0048.jpg
ATMホールの天井


 ちょっとヒマだったので、ATMホールの天井も撮影してみました。 照明はバスケット・ボール、壁はミキシング・レバーみたいになっています。




じっくり聴けた

 出演団体の方々はあまり他の団体の演奏が聴けなかったのですが、私の場合今回は仕事内容に従い座って全団体の演奏をじっくりと聴くことが出来ました。大変すばらしい演奏が多かったです。

 私たちの水戸ギター・アンサンブルはと言うと、   ・・・・・うーん、ちょっとバラついたかな?



 それにしても、このような状況の中、開催に向けて労を惜しまず準備をして下さった水戸市文化交流課の皆さま、本当にありがとうございました。
スポンサーサイト



シャコンヌ バッハ:パルティータ&組曲 Guitar 中村俊三 5


テンポ・ディ・ガボッタ ~パルティータ第6番ホ短調より


最後の1曲

 CDの収録曲目紹介、これまで4回やってきましたが、最後の1曲だけ残ってしました。 今回はその最後の「テンポ・ディ・ガボッタ」です。

 この曲は 「鍵盤のための6つのパルティータ第6番ホ短調」 の第5曲となっています。 「6つのパルティータ」は1726年から順次出版され、1731年には6曲まとめて、「クラヴィーア練習曲集第1巻」として出版されています。

 バッハの生前に出版された作品はそれほ多くないので、この曲が出版されているということは、それだけバッハとしては自身作としていたのでしょう、

 確かに「フランス組曲」、「イギリス組曲」など同種の作品に比べて内容も充実していて、また変化にも富んでいます。 鍵盤曲としては、「平均律クラヴィア曲集」、「ゴールドベルク変奏曲」などに並ぶ傑作と評価されています。



親しみやすく、心地よい曲

 私自身でもこのパルティータはよく聴いていて、充実した内容の作品であるにも関わらず、とても聴きやすく、気持ちが落ち着く感じがします。

 その中でもこの第6番の 「テンポ・ディ・ガボッタ」 は好みの曲で、短調ですがユーモラスな曲で、何か子供の歌のような感じもします。 また、リズムもスウィング系でとても心地よいものとなっています。




CCI_000107.jpg
クラビアのためのパルティータ第6番より 「テンポ・ディ・ガボッタ」  私の編曲で、ロ短調になっているが、原曲はホ短調。 付点音符を3連符で弾く指示は私が書いたもので、原曲にはない。





当CDの隠れた目玉

 譜面を見ても完全な2声となっていて、以前からギター二重奏に合うのではと思っていました。  録音は例のごとく ”リアルな” 二重奏ではなく、編集によるものですが、最終的な仕上げもなかなか上々で(自分で思うには)、当CDの隠れた ”目玉” となっています。



実際の二重奏で合わせるの結構難しい

  楽譜上では3連符と付点音符の組み合わせですが、この付点音符は4分の3の長さにとるものではなく、3分の2,つまり3連符に合わせて演奏するものと考えられます。

 しかし低声部で時折出てくる16分音符はどうするのかと言うと、上声部に関わりなく通常通り4分の1で弾くのか、3連符に合わせて、通常の16分音符よりも短く弾くのか、そのあたりははっきりしません。 このCDでは後者のほうを取っていますが、これをリアルな二重奏でやると、なかなか難しいところです。



どう演奏するかは

 様々なピアニスト、あるいはチェンバリストの演奏を聴いてみると、弾き方は奏者によって様々です。 例えば冒頭の部分を通常の16分音符で弾くと柔らかい感じになって、3連符的に16分音符を短かめに弾くと歯切れ良い感じになります。

 結局のところ、そうした点は演奏者に委ねられるということなのでしょう。 演奏者がこの曲をどう理解するかによって決まるのでしょうね。



なぜテンポ・ディ・ガボッタ?

 ところで、「テンポ・ディガボッタ」 とは 「ガボットのテンポで」 と言う意味ですが、 なぜストレートに 「ガボッタ」 もしくは「ガボット」と書かないでこのような回りくどい書き方をしているのでしょうか。



パルティータの場合はイタリア語表記?

 因みに「ガボッタ」と書いているのはこの曲がパルティータに属し、パルティータは基本的にはイタリア風(少なくともバッハはそう考えている)なので、それでイタリア風の表記となっているわけです。 前にも言いました通り、このCDに収録しているパルティータニ短調も
バッハ自身では5つの曲をそれぞれ「アレマンダ」、「コレンタ」、「サラバンダ」、「ジーガ」、「チャコーナ」とイタリア風に表記しています。

 しかし我が国ではこうした舞曲は基本的にフランス語的に呼ばれるので、このCDでは一般的になじみのあるフランス語的なカタカナとなっています。 有名なシャコンヌもやはり 「シャコンヌ」 として親しまれていて、「チャコーナ」 だとなんだかわからない人も多いでしょう。



それほど厳密に区別しているわけではない

 このようにバッハ自身はイタリア語とフランス語を使い分けているといわれていますが、しかし本当に厳密に区別しているいるわけでもなさそうです。 確かにこのパルティータ第6番はイタリア語で表記されていますが、第5番はラテン語でかかれた「Praeambulum」 以外はフランス語表記で、イタリア語、フランス語表記が混在している曲もあります。

 またイタリア風の「コレンタ」とフランス風の「クーラント」は内容の異なる曲なのですが、中身は明らかにイタリア風でも、表記はフランス風のクーラントとなっていたりするので、これらの区別はそれほど厳密なものではなさそうです。




バッハも人間?

 バッハといえど常にしかめ面をしていたわけでもなく、常に几帳面っだたわけでもでも、全く矛盾したことをしなかったわけでもなさそうです。それはそうですね、バッハも人間ですから。



Bach_20210603002227df5.jpg
バッハと言えど、いつもこんな顔をしていたわけではない



外見上は普通のガボットだが

 話しがそれてしましたが、なぜこの曲が 「テンポ・ディ・ガボッタ」 となっているかとうことでしたね、ガボットとは 「4分音符2個分のアウフタクトを持つ、2分の2拍子で、中庸、あるいはやや速めの曲」 と言うことになります。もちろん条件をこの曲は満たしているので、曲の形からしたら普通に 「ガボット」 でよかったはずです。

 ”形” の問題でないとすると、あとは内容の問題。つまり曲の雰囲気の問題と考えていいのでしょう。 やはりこの曲にはガボットにふさわしくないところがあるということになります。

 これは以前「テンポ・ディ・ボレア」のところでも話しましたが、この曲ではブレーらしい軽快さというより、もっとシリアスで情感の動きの激しい曲ということでこのような表記になったのではと書きました。




その愛らしさがガボットらしくない?

 この「テンポ・ディガボッタ」もガボットにしてはメロディックで、ユーモラス、愛らしい感じがあります。 そうした点がガボットらしくないのかも知れません、確かにガボットらしいゴツゴツ感がありませんね。

 かってな想像なので本当のところはわかりませんが、こうした曲を聴くと(あるいは見ると)、バッハにとっての ”ガボットらしさ” といったものもわかることになります。
 
 


令和時代のギター上達法の再開

 といったところでCDの曲目解説は終わりです。 リサイタルも終わったところで、また 「令和時代のギター上達法」 の記事に戻りたいと思います。

 だいぶ間が空いてしまい、前回の記事の記憶も薄れつつありますが、セーハの話でしたね、その後和音の押さえ方の話をする、トいったところで中断でした。

 今回は特に体系的に話を進めるというより、気になったことから話をしてゆこうということなので、あまり左手のことに「こだわる必要もないのですが、とりあえず予告してあるので、その和音の話で再開することにしましょう。
サンデー・サロン in 茨城  7月10日(土)  カフェレストラン・スウィング

 


ヴァイオリンとギター

 もう3日経ってしまいましたが、先週の土曜日にひたちなか市文化会館内にあるカフェ。レストラン・スウィングで 「サンデー・サロン in 茨城」 を聴きました。

 愛好者の演奏の後、ゲスト演奏として 石田朋也(Vn)さんと高矢研二(G)さんの「デュオ・カリス」の演奏がありました。 曲目は「タイス瞑想曲(マスネ)」、「愛の小径(プーランク)」、「タンゴの歴史(ピアソラ)」の他、高矢さんの独奏でヴィラ=ロボスの練習曲と前奏曲などです。

 高矢さんは私の茨城大学ギター部時代の後輩と言った話は以前していますね、その後「カリス」というギター・ショップを開いています。



ピックでクラシック・ギター?

 高矢さんは最近右手の調子が悪いということで、この日はピアソラや前奏曲などをピックを使って弾いていました。 

 確かにクラシック・ギターでもピックで弾けないわけではありませんが、でも単旋律やコードのみだったらまだしも、和音や重音など込み入ったクラシック・ギターの独奏曲をピックで弾くなんてあまり考えられません。

 もっとも人差し指と親指でピックを持ち、残った中指と薬指でも弦を弾くといった、ピックと指の両方を使う弾き方もありますが、高矢さんの場合は完全にピックのみ(フラット・ピック)で弾いていました。




なんと、音が美しい!

 指が調子悪いと言いながらも、こんな弾き方出来る人はそうはいません、弾くだけでも大変なのですが(多分超絶技巧と言えるでしょう)、さらに驚くのはその音色の美しさです。 本人曰く 「ピックのほうがいい音で弾ける」 と言っていますが、音の美しい人はどうやっても美しいのでしょうか。



キレのあるピアソラ

 石田さんのヴァイオリンも素晴らしく、美しい音とピアソラらしいリズムのキレがあり、とても素晴らしい「タンゴの歴史」でした。 またアンコールで弾いたモンティの 「チャルダーシュ」 もエキサイティングな演奏で会場を湧かせました。

 愛好者の演奏の最後に小暮浩史さんがガヴォット・ショーロ(ヴィラ=ロボス)を弾きましたが、柔軟で、表情の変化に富む演奏でした。








シャコンヌ バッハ:パルティータ&組曲 Guitar 中村俊三



CCI_000062.jpg





組曲ニ長調BWV1007 ~原曲チェロ組曲第1番ト長調



メヌエットⅠ、Ⅱ



組曲中最も親しみやすい

 バッハのCD解説の続きです。 このチェロ組曲第1番の中でも、このメヌエットは最も愛らしいというか、親しみやすい曲ではないかと思います。リズム的にも旋律的にもいいですね。また長調と短調の対比もいい。



メロディ(上声部)は2拍子的

 メヌエットは基本的に3拍子なのですが、第Ⅰメヌエットの冒頭は2拍子的になっています。 1,2小節はどう聴いても2拍子に聴こえますね、3小節目からはしっかりと3拍子ですが。

 そこで低音をどうつけるかですが、仮に主旋律が2拍子であったとしても低音はやはり3拍子で付けるのが正しいと思います。 でもわたしのCD,あるいは演奏では低音も上声部に合わせて2拍子になっています。 ・・・・・これきっと邪道ですね。

 

チェロ1メヌエット
このCD(私)のアレンジ。 メロディ(上声部)は明らかに2拍子だが、それに合わせて低音も2拍子になっている。ヘミオラ(複合拍子)を大胆に表したアレンジ。 「これではメヌエットではない」 とバッハ愛好家からクレームがつく恐れも




チェロ1メヌエットb
ここに低音を入れれば3拍子となり、上声部は2拍子で、低音部は3拍子、このほうが正統的かな。



確かに邪道だが

 しかし実際にこれで弾いてみると、結構弾きやすく、意外と自然な感じもあります。 低音が 「 レ ー ド# - シ 」 と順次進行になるのもいいですね。



例のあの箇所

 さらにこの曲で気になると言えば、”例の” あの箇所ですね。 あの箇所と言うのは第2メヌエットの7小節目の最後の「シ=ナチュラル」です。 ここの話は何度もしていますが、聴くたびにやはり気になります。 どう聴いても 「シ=♭」 のほうが自然ですよね?

 「いや、ここは絶対にシ=ナチュラルでないとおかしい、シ=♭などありえない」 と聞こえる人っているのかな? バッハ的な和声法によればここはシ=ナチュラルになるようなのですが、メロディ的に聴けば♭のほうが自然です。また19世紀以降の和声法で考えてもシ=♭でしょう。 おそらく増6の和音、いわゆる ”裏コード” でしょうね。



CCI_000102.jpg



違和感も味わってほしい

 あくまでも私の推測ですが、バッハここは一区切りになるところなので、”5度進行” にこだわったのでしょう。 つまりバッハにとっては和声進行の大原則は5度進行です。

 例えばバッハは減7のコードをよく用いますが、これは結果的に減7のコードになっているだけで、あくまでも ”属9の根音を抜いたもの” として用い、あくまでも5度進行の原則に従って用いています。

 もっとも、多くの演奏家はこのシ=ナチュラル(原曲ではミ=ナチュラル)をあまり目立たないように弾いていますが、私の演奏では比較的ハッキリ目に弾いています。 そんな ”違和感” も味わっていほしいと思ってます。







ジグ


なんといっても16分音符が出てこないのが

 このジグは個人的に好きなジグです。弾んだ感じも、流動感もあり、なんといっても16分音符があまり出てこないのがいい! クーラントに比べても弾きやすいです。

 ただ、かつてこの曲を弾こうと思った時、当時イギリスの音楽家、ジョン・デュアートの編曲しか楽譜をもっていなっかのですが、どうもそのデュアート編が弾きにくいし、また響きもなんかピンとこない。 それで自分で編曲してみようと思ったのですが、その時点ではどのように低音をいれていいかよくわかりませんでした。




ジグ(チェロ)
ジグはわりと弾き易い。 16分音符があまり出てこないのがいい!



10数年前になってやっと編曲出来るようになった

 その後いろいろ勉強して、ようやく10数年前くらいになって、なんとか自分で聴いて納得できるように低音を入れることが出来るようになりました。 もちろん正解は何通りもあると思いますが、和声進行に矛盾なく、また自分の技量の範囲で、多少好みにも合わせて入れています。

 他にポイントとしては一時的に短調に転調する部分があって、そういったところがなかなか面白く、生演奏だとそうしたところで大胆にテンポを落としたりするのですが、どうもCDだとそういったところは控えめになってしまいますね、後から聞くともう少し思い切ってやっても良かったかなと感じます。



 
シャコンヌ バッハ:パルティータ&組曲  3





組曲ニ長調BWV1007 ~原曲チェロ組曲第1番ト長調



プレリュード



意外といい?

 チェロ組曲のほうは録音後に全然弾いていないせいか、改めてCDを聴きなおしてみても、特にイメージが違った感じもなく、 「意外とよく録音出来ているな」 といった印象を持ちました。

 テンポはイン・テンポに近いですが、フレーズの始まりや終わりはややテンポを落とし、また拍節感を出すために16分音符の1個目はやや長くしていることが多いです。

 特にチェロでは伸びないために低音を他の音よりも長く弾くことが多いですね、確かにギターでは低音を響かせたまま次の音を弾くことが出来るので、あえて低音を長くする必要はないのですが、チェロ組曲の場合、どうしてもそういったイメージがあるので、それを踏襲した形になってます。



2回目はそっと

 この曲では一つの小節で同じ和音によるアルペジオを2回弾くことが多いのですが、そのうち1回目のアルペジオの低音は長めに取り、2回目の方は普通に弾いていることが多いですが、2回やるとややしつこくなるので、2回目はサラっと弾いています。

 改めて聴いて気が付いたのですが、曲の最後のほうの半音階で上昇するところがあります。 そこでアチュレランドとリタルダンドをかけているのですが、それをかなり ”控えめ” に行っています。



葛藤

 「思い切って一気に盛り上げたいのだけれど、でもCDだからあまりやり過ぎると・・・・・・・」 なんていう雰囲気が感じられます。 その時(録音、編集している)ははっきりとは感じなかったのですが、後から聞くと我ながら、そんな葛藤が感じられます。 もちろん生演奏であれば、一気に行っちゃっているでしょうね。

 

チェロ1プレ最後
プレリュードの最後の部分 



アルマンド



飽きさせずに弾くのは

 たいへん優美なアルマンドですが、その一方で16分音符が綿々と続き、リズムやダイナミックスの変化はなく、この曲を美しく、なおかつ飽きさせずに弾くのはたいへん難しいです。 演奏次第では退屈な曲に聞こえる可能性もあります。

 こうした曲を弾く場合、まず基本的にレガートな演奏が絶対に必要です。 また ”しなやかさ” を出すためには完全なイン・テンポではなく、ある程度の ”ゆらぎ” も必要となるでしょう。 

 一見難しいところのなさそうな曲ですが、美しく魅力的な曲にするためにはやはり相応の技術、感性が必要ですね。

 

チェロ1アルマン





クーラント



この組曲の中で最も難しい

 たいていの場合、組曲の中で最も難しいのは最後のジグになることが多いのですが、この組曲の場合はこのクーラントが一番難しいです。逆に言えばこの組曲のジグは比較的弾きやすいと言えます。 

 このCDでは4分音符=100くらいで弾ていますが、聴いた感じでは遅くも速くもなく、適度なテンポと言った感じだと思います。 でも子のテンポで弾くにはだいぶ苦労しました。10数年前にもこの組曲を演奏したことがあり、このテンポより遅く弾いたと思いますが、それでもあまり上手く弾けなかった記憶があります。



チェロ1クーラン
簡単そうに見えるがこれを四分音符=100以上で弾くのはなかなかたいへん



快適に聴いていただければ

 本来であれば四分音符=110~120くらいで弾きたいところですが(チェロではだいたいそれくらい)、100くらいでも右手、左手ともなかなか大変です。 でも聴いている分にはそんなことあまり感じないと思うのですが、もし無理して弾いているような感じが出ていたとしたら、それは明らかに失敗と言うことになります。

 何気なく、快適に聴いていただけければ、いろいろ苦労した甲斐があったというものでしょう。 ”そこそこ”速く弾いている割には装飾音も適度に入っていて、まあ、いいんじゃないかと思います。





サラバンド


うっかり間違えて

 ゆったりとしたサラバンドです。パルティータのサラバンドはかなり緊張感のあるサラバンドでしたが、こちらはリラックスした感じのサラバンドですね。

 同じサラバンドでも対照的なものですが、実はは何回目かのテイクで、いつの間にかこのチェロ組曲のサラバンドをパルティータの方に組み込んでしまったことがありました。なおかつしばらくの間それに気が付かず、何回かプレーバックして聴いていました。

 全然違う感じの曲なのですが、これがなんか自然に聞えてしまいました。 パルティータの方は全体的に緊張感が高いのですが、その中にあって、このリラックスしたサラバンドは意外とよく合いました。 短調、長調は逆ですが、ニ短調とニ長調と言うことでもしっくりいってしまったんでしょうね。



チェロ1サラバンド
間違えてパルティータの方に入れてしまったことがある。そのままCDにしなくてよかった。



冗談では済まなかった

 何回か聞いているうちに、「あれ、なんでこんなにリラックスしているんだろう」 ということから、「しまった、違うサラバンド入れてしまった!」 なんて気が付いたわけですね、

 最終的なテイクではなかったのですが、もしパルティータのサラバンドと組曲のサラバンドを逆に組み込んでしまったまま発注したら本当に冗談では済まなくなりますね。
<CD発売> 2



シャコンヌ バッハ:パルティータ&組曲 Guitar 中村俊三



CCI_000062.jpg



ワクチン接種

昨日水戸市内原のイオン・モールでコロナ・ワクチンの接種をしてきました。 実際の注射はほんの数秒ですが、その前の手続きとか、接種後も15分座っていなければならないとか、そういったことに若干時間がかかりましたが、 全体で30分ほどでしょうか、思ったよりは時間がかかりませんでした。

 昨夜から今日にかけて注射したところがやや痛みましたが、特に強い痛みと言う訳ではありません。 私の場合熱などは出なかったようです。



財布がない!

 ワクチン接種のほうは特に問題なく終ったのですが、その後、3階の本屋さんで本を買おうと思ってレジにゆくと財布がありません。

 「あれ、財布ない! あれ、おかしいな。 バッグの中かな? ない! やっぱりない! ・・・・・あの、スミマセン、財布どこかに落としたみたいで、 あの、これ、キャンセルしておいて下さい。 おかしいな、どこに落としたかな・・・・・」

 上着を脱いだのは接種会場だけだったので、落としたとしたらそこしかない、接種会場に行くと、

 「ああ、インフォメーション・コーナーに届けてありますので、案内します。 一応場内アナウンスしたのですが、いらっしゃらくて」



とりあえず戻ってよかったが

 財布の中にはキャッシュ・カードやら保険証、スイカ、イバッピ、などなど身分がわかるものだらけだったので、すぐに私とわかったようです。 本屋さんから接種会場に戻る途中、    ・・・・・もしなかったらどうしよう、まずはカード会社に連絡かな、それから保険証の再発行の手続き、あとなんだろう・・・・  現金なんてかまっている場合ではないな、いろいろ手続き大変・・・・・

 注射ではなく、そっちの方で青ざめてしまいましたが、とりあえず戻ってよかった。 財布の中って、ホントに大事なものたくさん入っていますよね。 なくしたりするとホントにたいへん!

 ポケットのボタンを閉めないで脱いだ上着を持ち歩いたのが問題だが、それ以前にほとんどの人は半袖なのに私は長袖にジャケット!  そっちのほうがそもそもの問題かな?





パルティータニ短調  サラバンド


サラバンドなどは装飾音を加えて演奏していたのが通例だったらしい

 重々しいというか、緊張感のあるサラバンドです。 もっともこのニ短調組曲の5曲はどの曲も緊張感が高いです。 他の舞曲と同じく(シャコンヌ以外の)前後半ともに繰返しの記号が付いています。 このサラバンドの後半は単純な繰り返しでなく、つなぎの部分やエンディングが別個に書かれています。

 特にサラバンドのようなゆっくりした曲では装飾を加えて演奏するのが、当時(バロック時代)の習慣となっています。 私の演奏でも1回目はほぼ原曲通り(低音や和声音などは若干追加しているが)で、2回目に装飾音を加えています。

 現在このように演奏している人は多いですが、おそらく当時から必ずこのようにしていたという訳ではないでしょう。1回目も2回目も同じように演奏したり、またそれぞれ異なる装飾の仕方をしたりと、当時は演奏者により様々だったのはないかと思います。

 私がこのように演奏しているのは、バッハが書いた音と、私が付け加えた装飾とがわかるようにといった意味もあります。 そのようにこのCDを聴いていただけたらと思います。 前述のアルマンドやクーラントも同じです。






ジグ



ほぼ無呼吸状態で

 メチャクチャ難しい曲ですね、テンポを抑えて弾けばそうでもないのですが、それなりのテンポでなければジグにはなりません。 また全曲ほぼ16分音符で休みどころがなく、ほぼ5分間無呼吸状態で弾き切らなければなりません。 そういったいみではシャコンヌよりずっと難しいです。

 CDのほうでは平均すると、付点四分音符=64、 つまり6個の16分音符を一分間に64回弾くくらいな速さになっています。 録音時にはこれでもかなり速いテンポに感じられたのですが、リサイタルが終わってから聞くと、少しゆっくりに聞えます。

 リサイタル前の練習では付点四分音符=70前後で弾いていましたが、録音してからリサイタルまでに約半年あったので、だんだんテンポが上がってきたのでしょう。

 

CCI_000090.jpg
全曲ほぼ16分音符 休みどころはない






シャコンヌ


突出して難しい部分はないが

 確かにシャコンヌは部分的に見れば際立って難しい部分はありません。 では易しいのか? なんて言われれば、もちろんそんなことはありません、こうした曲で最も重要なのは全体の構成で、それぞれの部分が弾ければいいわけではありません。

 前にも言いましたとおり、このシャコンヌは変奏曲の形をとっていても、各変奏が独立しているわけではなく、全体の構成に重きが置かれているからです。




フレーズ感とか、拍節感とか

 テンポにしても、大きく見ればイン・テンポですが、各フレーズ(この曲の場合変奏といってもよいかも)の区切り、つまり始まりと終わりはややゆっくりにならなければならないし、また拍節感とうことで、16分音符の部分であれば1拍で4つの16分音符のうち、1個目はやや強く、あるいはやや長めに取らないと拍節感が出ません。

 さらに32分音符の部分では勢いをつけるために他の部分よりも速めに弾かないといけません。 そうしたところでテンポを落としたりするとかなり気の抜けたようなものになってしまいます。




いろいろ考えすぎて

 そんなことをいろいろ考えながら録音、編集作業を行ったのですが、何度もやり直しているうちにだんだんイン・テンポに近づいてしまいましたね。 リサイタル後CDを聴きなおしてみると、冒頭の部分などちょっと速めに感じます。

 つまり速いところと、遅いところの違いがもっとあっても良かったかなと感じました。 特に編集作業を行う時にはどうしても極端なことを避ける傾向になってします。

 しかしリサイタルのように一回限りでなく、何度も聴きなおすとすれば(出来ればそうしていただきたいが)、これでよかったのかなとも思います。 やはりリサイタルのように特別な場所で一度限り聴くための演奏と、家でじっくり聴く演奏は違っていいのかな。




装飾は控えめに

 因みに、この曲にも装飾音を加えることは可能ですし、実際にやっているギタリストも少なくありません。 しかしあまり装飾音を入れると、散漫な感じになってしまうので、最小限度にしてあります。 もともと内容の凝縮した曲なので、脇道に逸れるのはあまり良いことではなさそうです。 とはいえ、リサイタルではCDよりは装飾音を気持ち多めに入れました。

 演奏時間としては14:30で、だいたい平均、あるいは平均よりややゆっくりと言ったところと思いますが、冒頭の部分などやや速めなので、いくらか速めに感じるかもしれません。