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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

令和時代のギター上達法 21



調弦とピッチの話 9



440と442、どっちがいいの?



大きな違いはない

 これまで今現在ではギターを弾く場合にピッチを440にする人と、442にする人がいることを書いてきましたが、では結論として、どちらを選択すればよいのかという話になります。

 ここまで書いてきて何ですが、それはなとも言えない、というかどっちでもよいのではないかと思います。 強いて言えばピッチを高くすることでギターの音が華やかに聞えたり、また低くすることで落ち着いた音になるということはあるでしょう。

 しかし440と442の違いだとその差ははっきりと出るほどでもありません。 確かに世の中には非常に音感のいい人がいて、440と442の違いを即座に聞き分けて、全く違う感じに聞える人もいると思いますが、そうした人はごく少数で、私の周囲にもそのような人はあまりいません。   



しかし445以上になると

 もっとも、これが445以上とか430台とかになればその違いがわかる人も多くなってくるでしょう。 445以上になればやはり高めに感じで、よくいえば華やかに、逆に言えばキンキンした感じになります。また弦の張も若干強くなって弾いている感じも変わってきます。

 435以下になっても違和感を感じる人が多いでしょう。音がぼんやりとした感じになります。弦の ”肌触り” も変わってきます。

 あくまで個人的にですが、私自身でチューナーなどを使わないでチューニングした場合、だいたいこの範囲(435~445くらい)に収まります、というかこれくらいの誤差が出てしまいます。 ・・・・・・・いや、もっと狂う時もあるかな?

 プロのギタリストとしては若干誤差が多いですね、でも私自身からするとこの範囲であれば独奏を弾く時にあまり違和感はない訳です。



半音以上変えると音の鳴り方が変わる

 さらに半音以上上げたり下げたりするとどうなるかと言うことですが、当然誰が聴いても低く聞こえる訳ですが、それ以外にも、前にも当ブログで書いた通り、ギターは(他の楽器も?)音によってよく鳴る音と鳴らない音があり、そのさはかなり大きいものです。

 半音以上上げたり下げたりすると、「鳴る音」 と 「鳴らない音」 が入れ変わってしまい、違う楽器になったような感じになります。
 
 私のハウザーでは「シ」が鳴って「ド」が鳴らないのですが(特に1弦の場合)、半音低くチューニングすると、いつもは鳴らないはずの「ド」 が鳴りだして、いつもしっかりと鳴る「シ」が詰まり気味になってしまいます。

 ギター曲ではハ長調とへ長調とかの曲は少なく、通常 「ド」 はあまり重要とは言えません。 むしろ 「シ」 のほうが大事な音になることが多いので、これではかなり弾きにくくなってします。

 つまり一人で弾く場合では440でも442でもどちらでもいいが、それ以上高くしたり、低くしたりすると違和感が出ます。

 また、古楽器演奏の場合は半音下くする(前に数字を書き間違えましたが415くらい)チューニングもありますが、そういったものはまた別の話となるでしょう。 

 


合奏などの場合は

 少なくとも一人で弾く場合は440と442どちらでもよいのですが、合奏や二重奏の場合はそんなこと言っていられません。 二重奏などでそれぞれが440と442と異なるピッチで演奏し始めたりすると、かなり狂って聴こえます。

 いつも一緒に弾いている人だったら当然損なことあまりないと思いますが、初めての人などと合わせた場合、たまにそんなことも起きます。

 合奏の場合でも新しく加入した人など、440に合わせる人がいて(私の水戸ギター・アンサンブルでは442)、そんな時 「あれ、だれか ちょっと変な人がいるな」 みたいな感じになります。 しかし私ではなく、もっと音感の優れた指揮者だったら、「○○さん、ピッチが440になっていますよ」 と具体的に言うのでしょうね。   ・・・・・それが本当の指揮者!





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水戸ギター・アンサンブルは2000年より442のピッチにしている。 たまに440の人もいるが・・・・・





どちらかに決めなければならない

 と言ったわけで、複数の人でギターを弾く場合は440か442かは大きな問題になってします。 こうした場合では必ずどちらかに決めなければなりません。

 どうやって決めるかというと、結局のところは多数決的に決めるか、そのグループの指揮者やリーダーなど、影響力の強い人の判断で決まるのでしょうか。

 前にもいいましたとおり、ギター以外のクラシック音楽ではほぼ442に統一されています。我が国ではピアノの基本的なピッチが442と言う理由もあります。

 それに従い今現在の多くのクラシック・ギタリストは442こピッチを採用しているようです。海外の方も見てもCDなどからすればほぼ442のようです。



クラシック系は442、ポピュラー系は440

 しかしポピュラー系のギタリストは440が主流とされています。確かめてはいませんが、アコースティック・ギター関係のネット動画では 「ギターのチューニングを行う時には、まずピッチを440に合わせます」 と何のためらいもなく言っているので、それが普通なのでしょう。 

 そんなわけで、同じギターでもクラシック音楽寄りの人、および団体では442を採用、ポピュラーの傾向の強い人や団体は440となることが多いようです。 またクラシック・ギターでも年齢が高い人は440、若い人は442と言ったところでしょうか。



音楽史的に将来を見据えると

 いずれにしても、自分の取り巻く環境を考え、都合のよい方を取ればよいのではと思います。まさに 「郷に入れば郷に従え」 といったことでしょうか。

 今現在、全国のギター教室や、ギター愛好会などでは442と440が、だいたい同数くらいなのではと思います(統計は取っていませんが、感覚的に)。 ただ何となく世界の情勢や音楽の歴史などか考えると次第に442の方向に進むのではと思っています。

 そんなわけで、私の中村ギター教室や水戸ギターアサンブルでも2000年よりピッチを442にしています。

 
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令和時代のギタ上達法 20



調弦とピッチの話20



315?

 毎度のことで恐縮ですが、前回の記事で誤りがありました。  「古楽器演奏の際にはピッチを315にすることが多い」 と書きましたが、いくら何でも315は低すぎますね、本当に315にすると、だいたい1オクターブの半分くらい、減5度くらい低くなってしまいます。 さすがにバロック時代でもこれはあり得ませんね。



415のつもりが

 頭の中では415と思っていても、実際に書いたのは315!  しかも5回!  ご指摘ありがとうございます。

 ご指摘いただいた方は名乗られませんでしたが、おそらく古楽器に精通した方ではないかと思います。 その方も、バロック時代では皆がこのピッチを採用していたわけではなく、今現在の演奏上の都合などでこのピッチ(もちろん415!)になっているといったことをおっしゃっていました。



励みになります

 確かにこんなミスはよくないのですが、しかしこんな機会に当ブログを真剣に読んでいただいている人方々がいらっしゃるということを感じ、たいへん励みになります、重ねてありがとうございます。 




当時の日本のギタリストはやはり440

 さて、前回の続きです。 前回は海外のギタリストは以前から442、あるいはそれ以上のピッチを取っていたといったことを言いました。 当時私たち、日本国内のギター愛好者は当然のごとく440のピッチを取っていたのですが、 当時我が国の第一線級のギタリストはどうだったかと言ったことも見て行きましょう。



渡辺紀彦さん、菊池真知子さん、松田晃演先生は440

 手元にあるCDなどで1960~70年代に活躍した我が国のトップ・ギタリストのピッチを調べてみると、パリ国際ギターコンクールで優勝し、現在は故人になってしまった渡辺範彦さん、ほぼ同年代の菊池真知子さん、それから私の師である松田晃演先生などはやはり440のピッチを取っていました。



渡辺範彦
渡辺紀彦さん



荘村清志さんは当時から442

 現在でも第一線で活躍している荘村清志さんの初期のLPは443くらいになっていましたが、後のデジタル録音では442になっているので、これは誤差の範囲で、基本的には442だったのだろうと思います。

 荘村さんのみ高いピッチを取っているのは、師のイエペスとか海外で勉強した影響なのでしょう。 しかしイエペスのような高いピッチは取っていません。



荘村清志
若き日の荘村清志さん


 あまり多くのギタリストを調べたわけではありませんが、やはり1970年代くらいまでは、わが国でのギター界では440のピッチが主流だったことが言えるでしょう。 またその年代であっても海外、特にヨーロッパのギタリストは442が多かったようです。




今現在は国内外を問わず442かな
 
 現在活躍中の国内外の何人かのギタリストの録音を調べた限りでは、ほぼ442と思われます。 といっても441くらいと思う人と、443くかなと言う人がいましたが、それらは誤差の範囲でしょう。 私の調べ方も、あまり精確なものとは言えませんから。

 また録音時に若干ピッチが上がってしまったり、下がってしまったりすることはあるでしょう。 さらに開放弦でなくフレットを押さえた場合では多少の誤差は避けられません。




松田先生の場合

 若干余談になりますが、松田先生の話が出たので、松田先生とチューニングの話もしておきましょう。 私は1年間弱ほど東京目黒の松田先生の教室に通いました、1972~73年、私が21~22歳の頃です。




松田晃演
松田晃演先生   1972~73年頃に私は目黒の松田先生氏の教室に習いに行っていた



音叉に合わせるのではなく、先生にのピッチに合わせなければならない

 松田先生のレッスンを受ける際には、当然のことながら事前にチューニングをしておかないといけません。 チューニングすると言っても音叉に合わせるのではなく、先生のギターの音に合わせなければなりません。 

 当時松田先生の教室にはたくさんの生徒さんが習いに来ていて(皆若かったが!)、いつも自分のレッスンの前に7~8人くらいの人が順番待ちをしていました。

 レッスン室は二つの部屋が開放されてつながった形になっていましたが、片方の部屋で先生がレッスンをしていて、もう片方の部屋で約10名程度の生徒が順番待ちをしていたり、また自分のレッスンが終わっても、そのまま他の人のレッスンを聴いていたりしていました。



先生を待たせてチューニングするなど、もっての外

 チューニングをするといっても、先生の前に行って、先生を待たせてチューニングなど行えません。 そんなことをすれば松田先生の貴重な時間を奪うだけでなく、他の生徒さんにまで迷惑をかけてしまいます。 レッスンを受けるために先生の隣に座った時にはすでに完璧に先生のギターに合わせてチューニングしておかないといけません。

 ではどうやって事前に先生のギターの音に合わせてチューニングするか? と言うと、他の生徒さんがレッスンを受けている時、時々先生が模範演奏としてギターを弾きます。 その時、特に1弦などの開放弦を鳴らすのに合わせ、かすかな音で自分のギターを鳴らし、先生の音に合わせます。



皆当然の如く

 もちろん聴こえるような音で音を出したら、たいへんな事になります。 先生に注意される前に周りの生徒さんたちから睨まれてしまいます。

 そうしたことは先輩の生徒さんたちがやっていることを見よう見まねで行ったのですが、松田先生の生徒さんたちは誰もが当然の如くそれをやっていました。



先生のピッチはいつも440より低かった

 因みに松田先生はいつもやや低めに合わせていましたが、それは自然に下がってしまったものなのか、あえて低くしているのかは分かりませんでしたが、低めのピッチがやはり好みだったのではないかと思います。

 松田先生の音は肉厚で柔らかく、たいへん美しい音だったのはいうまでもありません。



15分のレッスンだけでは元が取れない

 松田先生の教室には多くの生徒さんが習いに来ていましたが、その関係上、一人当たりのレッスン時間は10~15分といったところでした。 水戸から東京までギターを担いで電車(特急ではなく普通列車で!)で行くわけですから、それだけでは割に合わない。 もちろんレッスン料も大学生だった当時の私からすればそれなりに高額でした。

 そこで自分のレッスンだけでなく、他の人のレッスンを、順番待ちの間は当然ですが、自分のレッスンが終わってもしばらくは他の人のレッスンを聴いていました。 合計で3時間くらいは他の人のレッスンを聴いていて、どちらかと言えば自分のレッスンよりも他の人のレッスンで覚えたことの方が多かったでしょう。

  ・・・・・・懐かしいですね、私もまだ髪の毛がちゃんとあった頃。  ・・・・・・暗い青年でしたね。

  
令和時代のギター上達法 19



調弦とピッチの話 7



よく間違って押してしまうボタン

 今回はチューナーのボタンの中で、主に 「calb」 と書かれているもの、つまりピッチの調整についての話です。 確かににチューナーの取り扱いで間違ってしまう最も可能性のあるものはこの 「ピッチの調整」 です。 これまでこの件については触れるのを避けてきましたが、今回あらためてお話します。



個人で弾くなら比較的影響は少ないが

 主に「calb」 と書いてあるピッチの調整ボタンは、誤って押してしまったとしても影響は他のボタンよりも少ないです。 一人でギターを弾く上では通常440、または442のところを439とか443とかになっても、特にそれほど問題ではないでしょう。

 ピッチが多少異なると(多少ですが)他の人と合わせたりする時になって初めて問題になります。 「1」 の違いだと微妙ですが、440と442のように 「2」 違うと、確かに狂って聴こえます。

 ところで、「通常440か442」 と言いましたが、これは基準となる「ラ」の音(ギターでいえば1弦5フレットの「ラ」)の周波数です。 そして今現在のギター界では440か、または442で合わせていて、他のピッチを取ることは比較的稀です。




国際的には440と決められているが

 中学校の教科書に 「ラの音は440サイクルと決められている」 と書いてありましたが、これは20世紀になってから国際的な機関によって決められたからです(詳しい経緯などはよくわかりませんが)。 しかし実際の演奏ではそうはっきり決まっているものでもありません。 

 この440に決められたのはアメリカの音楽界の影響力が強いようで、アメリカでは、特にポピュラー関係の音楽においては、この440が主流となっています。



ヨーロッパのオーケストラは442以上が多い

  しかし、ヨーロッパのオーケストラなどではそれよりも高いピッチを取ることが多く、ウィーン・フィルやベルリン・フィルなど、主要なオーケストラでは442~445くらのピッチのようです。 オーケストラに関して言えば、アメリカにおいてもボストン交響楽団やシカゴ交響楽団では、442~443くらいのピッチを取っているようです。 





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ベルリンフィルのピッチはだいたい444~445くらい




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シカゴ交響楽団などアメリカのオーケストラは442~443くらいのようだ



ヤマハでは442のピッチを採用

 我が国では、ピアノ・メーカー最大手のヤマハが442を基準としていて、その結果様々な楽器がそのピッチに合わせることになり、各演奏会場備え付けのピアノから、各オーケストラ、ブラスバンドなどクラシック音楽に関しては実質上442に統一されている形になっています。




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ヤマハのピアノは基準のピッチを442にしているようだ



個性的なピッチをとるのは自由だが

 もちろんピアノの調律の際に、違うピッチにしてもらうことも出来ますが、他の楽器の伴奏などをするときには不都合が生じるでしょう。 また子供たちがそのピアノで練習すると、音感教育などに支障があるかも知れません。 そうした理由から家庭でのピアノの調律もほとんど442となっていると思います。

 しかしソロのピアニストであれば、多少ピッチを変えて演奏する事はあるのではないかと思います。  私もかつて440が一般的だった頃、リサイタルなどでは少しピッチを上げていました、少しピッチが高い方が高揚感が出るからです。 もっともステージの照明でいつのまにかピッチが上がっていたなんてこともよくあります。



古楽器では

 440のピッチが一般的になったのは20世紀になってからのようで、19世紀では現在よりも少し低く、18世紀や17世紀ではさらに低かったようです。 バロック時代と呼ばれる17~18世紀では今現在より半音ほど低い315前後くらいだったとされています。

 とは言っても、今現在でもピッチが完全に統一されている訳ではないので、当時としては、ヨーロッパ全体で統一されたピッチを採用していたと考えるは無理があるでしょう。

 バロック時代の315と言うのも、おおよその目安にすぎず、当時は今現在よりもピッチが低い傾向にあったとは言えますが、逆に今現在よりも高いピッチで演奏されていたこともあったようです。

 ギターやリュート、特にリュートに関しては弦や楽器の強度などの関係から他の楽器よりも低めのピッチにしていたと推測されています。 しかしオルガンは管楽器などでは、その楽器が残されていればピッチがわかりますが、リュートのような楽器では当時の楽器が残されていたとしても、ピッチを正確に推測することは難しいです。




315と言うピッチには現実的な理由も

 今現在の古楽器の演奏団体ではほぼ315のピッチを取っていますが、これは当時そのピッチが315に統一されていたというより、今現在のピッチよりちょうど半音低い方がいろいろと都合がよいと言った理由が主なようです。 ギターでも19世紀の楽器などを用いる場合は、このピッチをとることが多いです。

 


ギターは440が主流だったが

 ギターに関して言えば、以前はチューナーではなく音叉で合わせてました。 音叉にも442というのもあるようですが、一般に販売されていたのは440のもので、当時楽器店などの店頭にあったものはほとんど440のものでした。 

 音叉を用いてチューニングしていた頃、つまり1970年代頃までは、少なくとも我が国のギター界ではほとんどの人が440を採用していたのではないかと思います(もちろん私も)。

 当時から442を採用していたギタリストがいるとすれば、ヨーロッパの演奏家たちと交流が密だったり、またピアノやオーケストラなどとの共演の多い、ごく一部のギタリストのみだったのではと思います。 



海外のギタリストのピッチは

 我が国のギタリスト(アマチュアも含めて)たちが440のピッチを取っていた頃、セゴヴィアやイエペス、ウィリアムスなど、海外の一流ギタリストのLPでは440よりは皆高いピッチとなっていました。

 ただし若い人には信じられないことかも知れませんが、、LPの場合は再生の際にピッチが違ってしまうことがあります。 特にSP盤などでは半音以上、全音近くピッチが異なるものもありますので、再生されているピッチと実際に演奏しているピッチが同じという保証はない訳です。


442が多い

 デジタル録音の場合はそうしたことはありえないと思いますが、そうしたものでこれらのギタリストのピッチを調べてみると、ウィリアムス、ジュリアン・ブリームなどはほぼ442となっているようです。

 セゴヴィアの場合はSPをCD化したものは、前述のとおり半音~全音くらい高くなっているものもあり、また逆に440より低いものもあります、やはり古い録音ではピッチはわからないようです。 しかし1970年前後の比較的新しい録音だとやはり442となっているようです。



イエペスはやたらと高い!

 イエペスの場合はデジタル録音期のものでも445くらいになっていて、さらにもっと高いものもあります。 イエペスは他のギタリストより高めのピッチを取っていたのは確かでしょう。 あのイエペス独特の響きも、この高いピッチと関係があるのでしょうね。




令和時代のギター上達法 18


調弦とピッチの話 6



肌寒さを感じる今日この頃です

 なんだか随分と涼しくなりましたね、最近では9月などまだまだ真夏のうちで、30度を超えるのが普通、35度くらいあっても不思議ではなくなっていますが、今年は9月になった途端に気温が下がり、寒がりの私には若干肌寒くさえ感じる今日この頃です。 皆様の地域ではいかがでしょうか。



コロナは相変わらずで、菅首相辞任

 コロナのほうは相変わらずで、菅首相は辞任ようですね、直前までそんなことは言っていませんでしたが。 そういえば首相が辞める時って、いつもだいたいこんな感じですね、当然かなり前からやめることは決めていると思うのですが、きっと親しい人にもそういうことは言わないのでしょうね。 「今後よりいっそう政策に力を注いでまいります」 なんて言った翌日に辞任発表なんて、これまでにもよくありました。

 例えが悪いかも知れませんが、傾きかけた会社の社長が 「我が社の経営状態はたいへん良好な状態で、資金面においても全く不安はありません」 なんて言っていたら、翌日夜逃げ・・・・・なんて。

 でも、逆に言えば、「もう限界かな」 と思っても最後の最後まで頑張るんでしょうね、それくらいの粘りと根性がないと政治の世界はつとまらない、将棋のように早めの投了というのはないのかも。




クロマティック・モードであれば押さえた時の音程の狂いもチェックできる

 さて、前回はクロマティック・モードであれば開放弦だけでなく、どのフレットでも合わせられると言ったことを書きました。 ギターは開放弦が合っていても押さえたフレットが合っているとは限らず、特にハイポジションでは狂いがちになります。 そうしたことのチェックはクロマティック・モードでなければ出来ません。

 また弦によってもかなり異なり、特にナイロンの3弦は狂いやすいが、ナイロン製ではないアリアンス弦などのカーボン弦にはそうした性質はない、また温度が変化しても音程への影響は少ない、といったこともお話ししました。



押さえ方でも音程は変わる

 しかし仮に弦の品質が非常に良かったとしても、押さえ方が悪いと音程が狂ってしまいます。 ギターはフレットを押さえ間違いしなければ必ず正しい音程が得られる・・・・・・  わけではありません。

 ギターの音程、つまり弦の振動数は  ①弦の長さ  ②張力  ③弦の線密度  の3つで決まるといったことは物理の授業でやりましたね(そんなの忘れた?)、 押さえるフレットを変えると音が変わるのは弦の長さが変わるからですね。 同じ長さの弦でも①弦と⑥弦が違う音なのは弦の単位長さの重さが違うからですね(弦の太さではない!)、 チューニングするときに糸巻を回すと張力が変ります。

 因みに、管楽器などでは、気温が上がると、管内の音波の伝搬速度が変わり、音程が変わるそうですが、ギターのように基本的には空気ではなく弦が振動し、それが空気中に伝わってゆく場合には温度が変化しても振動数、つまり音程には影響しないそうです。    ・・・・・当方、化学だけでなく、物理学の知識もかなり怪しいので、詳しいことは皆さん自身でお調べください。



押さえると張力が増す

 左手でフレットを押さえると、多少にかかわらず弦の張力が変わります。 ハーモニックスのようなほんのちょっと触る程度なら張力は変わらないかも知れませんが、ちゃんと音が出る程度にフレットを押さえるとなると、多少なりとも音程に影響します。

 もちろんそうしたことはあらかじめ考慮したうえで楽器が作られていますし、音程が変わったとしても僅かであれば人間の耳には感じられません。

 しかし必要以上に強く押さえると認識出来るくらい音程が変わってしまいます。それでこの 「令和時代のギター上達法」 でも 「押弦」 のところでも、繰り返し、「強く押さえないように」 と言ってきた訳です。

 しかしどんなに最小限の力で理想的に押さえたとしても、弦の状態がベストとは限らないし、また楽器の種々の条件で正しい音程が出るとは限りません。



押さえ方で音程をコントロールする方法

 そこで状況に応じて押さえ方で音程をコントロールしなければならないということになります。今回はこういった話をしようと思います。

 力を入れて押さえた時、たいていの場合は音程が上がります。 ①弦方向、⑥弦方向、ヘッドの方向の、こ3方向に力を入れると弦を引っ張ることになり、張力が増して音程が上がります。



実際は押さえるフォームを変えることで音程を調節する

 しかし押さえ方で音程を下げることもできます。 ブリッジ方向、つまり右方向(左用のギターでは左!)に力を加えると、若干ですが弦が緩むようになり、張力が減ります。 そこで音程も下がるわけですね。

 こう言ったことで狂った音程を修正するのですが、しかし常に右や左に力を入れていたのでは演奏がたいへんです。実際には力を入れるというより、左手のフォームを変えることで、力を入れる方向を変えます。



音程の上げ方と下げ方

 その方法としては以下のとおりで、音程を上げたい場合は左の方に傾けます。 下げたい場合は逆に右に傾けます。



上げる
音程を上げる場合  左に傾ける





下げる
音程を下げる場合  右に傾ける



音程が正しいかどうか判断できなければならない

 特に力を入れなくてもこのようなフォームで押さえれば音程を調節出来る訳です、わりと簡単ですね。 もっとも音程を調節するためには合っているかどうか、低いのか、高いのか、その狂いはチューニングの狂いなのか、押さえた時の狂いなのか、などを判断しなければなりません、それが最も難しいことでしょう。



だから通常正しいフォームで押さなければならない

 しかし逆に特に音程が狂っているわけでもない弦をこのようなフォームで押さえたらどうなるかはもうおわかりですね、通常では(音程を調節するとき以外は)このような押さえ方はしてはいけないということです。



これがヴィヴラートの原理

 「押弦」のところで押さえ方について詳しく述べましたが、このような理由もあるわけです。 またこのようにフォームで音程が変わることを利用したのがヴィヴラートと言うことになります。最初の2つの写真のフォームを交互にとれば音程が高くなったり、弾くなったりしてヴィヴラートがかかるわけです。

 原理としてはそういうことなのですが、実際にはこれほど左右に大きく動かすわけではなく、軽く左右に指というより手首を動かす程度です。 このヴィヴラートはギターの演奏上非常に重要なことなので、いずれまた項目を改めてお話しすることになるでしょう。



太い弦は上がりやすく、細い弦は下がりやすい

 押さえた時の狂いは弦によって上がるか、下がるかの傾向は異なります。 太い弦、3弦、6弦などは上がりやすく、1弦、4弦などの細い弦は下がりやすくなります。 2弦と5弦はその中間で、そのどちらもあります。

 ナイロンの3弦は特に上がりやすい話をしましたが、かつて私もオーガスティンなどのナイロン弦を使っていた頃、3弦のハイポジションは常にこんな感じで押さえていました。



3弦下げる
ナイロン弦を使っていた頃は3弦の12フレットなどは常にこんなフォームで押さえていた。



ヴィラ・ロボスの前奏曲第1番

 こうしたも単音なら出来ますが、和音などになればなかなか難しくなります。 逆の例としては、ヴィラ=ロボスの前奏曲第1番などで、5弦の2フレットから7フレットまでグりサンドする場合、どうしても勢いで右の方に力が働いてしまいます。それで弦を押し下げる形になり、同時に弾いた6弦の音と音程がずれて不快な響きになりがちです。

 それを防ぐために、前述のように7フレットに指が行った時に左に傾けます。 実際にはヴィヴラートをかけながら音程を調節するのですが、音程の調節にヴィヴラートは大変有効です。 ルイゼ・ワルカーの 「小さなロマンス」 の冒頭も全く同じです。



前奏曲第1番




上げる
先ほどと同じ写真だが、前奏曲第1番の出だしはこのようなフォームで押さえている。 ルイゼ・ワルカーの「小さなロマンス」も同じ。



CCI_000112.jpg



狂ったらヴィヴラートかけなさい?

 学生の頃 「音程が狂ったらヴィヴラートをかけなさい」 と教わった記憶があります。 その時は 「それって、ただ音程が狂っているをただ誤魔化すだけじゃないの?」 と疑問に思ったこともありましたが、これは意外と有効な手段ですね。

 これ、ほとんどのプロギタリストが実行しているようで、まさに ”ウラワザ” ですね、今では私もちょいちょい使っています。

令和時代のギター上達法 17



調弦とピッチの話 5





チューナーの便利な使い方



クロマティック・モードは弦交換時や変調弦に威力を発揮する

 前回はギターのチューニングではギター・モードよりもクロマティック・モードの方が使いやすいことを話しました。 今回はさらにクロマティック・モードでなければ出来ない使い方の話をします。

 ギター・モードは開放弦のみが対象で、なお且つ通常のチューニングのみしかできないのですが、クロマティック・モードであればどの音でも合わせられるので、6弦を「レ」にするなどの変則的なチューニングでも可能なわけです。 



CIMG2791.jpg




クラシック・ギターでは⑥=レの曲は多い

 確かに初心者用の曲やアレンジではほとんど基本的なチューニングになっていますが、プロがコンサートで弾くようなギター曲となれば、⑥=レの曲は少なくとも3割以上あります。 リサイタルの時など半数以上がこのチューニングになることも時折あります。

 そうなれば当然ギター・モードでは対応できませんね、ギター・モードは初心者向けと言うことなのでしょうが、それでも弦の交換などの際には、ギター・モードではたいへん合わせにくいこともお話ししました。



クロマティック・モードは開放弦以外の音も合わせられる

 クロマティック・モードではその対象が開放弦に限らず、どの音、どのフレットでも合わせられるのが特徴です。 これは本当に便利ですね、ギターは、かりに開放弦が合っていたとしてもフレットを押さえた他の音が合っているとは限りません。 特に弦が不良品の場合は極端になることもあります。




ハイポジションのチェックに便利


 クロマティック・ポジションであればそうしたこともチェックできます。 最近の弦は比較的よくなり、昔ほど押さえた時の狂いは少なくなりましたが、でもある程度狂うのは仕方のないことでしょう。

 チューニングの際には開放弦だけでなくハイポジションを押さえて確かめるといいでしょう。押さえるフレットどのフレットでもいいのですが、7~12フレットあたりで狂いがなければ演奏に問題ないでしょう。



ハイポジションが合わない場合

 では、開放弦ではあっていても、ハイポジションで狂っていた時にはどうするかと言うことですが、軽度な場合であれば、開放弦の方とフレットを押さえた場合の中間蔵に合わせます。つまりどちらも多少狂っているが、どちらも許容範囲といったあたりに合わせます。

 場合によっては弦を反対に張りなおすと狂いが少なくなるケースもあります。一応試してもいいでしょう。

 しかし極端に狂う場合は、やはり弦を交換するしかありません。何度交換しても狂う場合はギターのフレットに問題がある場合もあります。



かつては不良弦が多かった

 最近の弦はあまりひどいものは少ないですが、かつてオーガスティンなどは高音弦の狂いが多く、ギタリストによっては100本中、2~3本くらいしか使わない人もいました。 ゴルゴ13みたいですね。

 私の場合、経済的にもそんな余裕はなかったですが、それでも買った弦の半数くらいしか使わなかったです。



カーボン弦(ポリフッ化ビリデン)はハイポジションの狂いが少ない

 最近のナイロン弦はそれほど極端ではないですが、それでもハイポジションが狂う傾向にあります。 最近はナイロンでない素材の弦、いわゆる 「カーボン弦」 も販売されていて、このカーボン弦であれば、ハイポジションの狂いはかなり小さくなります(全くないわけではないが)。  

 あまり化学には詳しくないのですが、ナイロンは窒素を含む有機物(ポリアミド合成樹脂と言うらしいが)ですが、カーボン弦と呼ばれているものはポリフッ化ビリデン(フロロカーボンとも言われる)といった素材で出来ているようです。

 この素材はナイロンより強度も強く、また比重もナイロンに比べると大きいものです。 ナイロンの場合は比重が軽いので、その分特に3弦などは太くしなければならず、それがハイポジションを押さえた時の音程の狂いに繋がっているのではと思います。



特に3弦は

 単なる想像ですが、ナイロンの3弦の場合、太く、なおかつ柔軟性に欠けるためにブリッジ付近の弦が振動せず、実質的に弦が短くなった状態になるので、フレットを押さえた際に音程が上がることになるのだと思います(あまりはっきりした根拠ではないが)。

  カーボン弦はナイロン弦に比べると比重が重いので、その分細く出来ます(音程は弦の太さではなく、比重で決まる!)。 さらに強度があっても柔軟性に富み、弦の端から端まで振動するので、音程の上りがないのだと思います。

 そのようなわけで、カーボン弦はハイポジションでの狂いが少ないのですが、その一方で音が硬質になる傾向があります。 したがって柔らかい音が好みの人には敬遠されがちなのも確かです。

 しかし3弦については、もともと1弦や2弦に比べ、音色が鈍感な傾向があるので、私自身では特に気になりません。 逆にナイロン弦よりも音の伸びもよく(減衰が少ない)、かえって自然な音のように思います。





他の弦は


 では他の弦についてはというと、1弦まなどはもともと弦が細いので、特にハイポジションを押さえた時の音程の上りは、たとえナイロン弦でもあまりありません。 1弦にカーボン弦を使うと、さすがに硬質、あるいはノイズっぽさなどが顕著に出ます。
 
 2弦についてはその中間で、カーボン弦の場合、極端に硬質ではありませんが、やはり硬質で、ナイロン弦では多少ハイポジションが上がり気味になります。 

 そう言ったわけで、2弦については音色で選ぶか、音程、音量で選ぶかと言うことになりますが、私は音色の方を取り、ナイロン弦を使っています。

 御存じのとおり、ギターの④⑤⑥の低音弦は貴族の細い線を巻いてある、「巻き弦」 になっています。 その「芯」 にはナイロンまたはカーボンの細い糸を束ねたものとなっています。 弦の性質などはその芯の素材によるもと思われますが、芯の占める割合はそれほど大きくないので、ナイロン弦とカーボン弦の違いはあまりでないようです。



私の場合は

 私個人的には30年くらい前から3弦のみカーボン弦のサバレスのアリアンス弦を使用しています。 おそらくこの弦がカーボン弦の最初のもだと思います。 今現在では他にもカーボン弦が出ていますが、この弦で特に不満や問題はにので、ずっと使っています。

 他の弦は通常のナイロン弦ですが、これも長い期間ダダリオ・プロアルテ・ノーマルテンションを用いています。 一時期はいろいろな弦を試してみましたが、やはり特にこの弦で不満はないのでずっと使用しています。

 

弦の話になってしまったが

 今回はチューナーの使い方の話だったはずなのですが、いつの間にかに弦の話になってしまいました。 こうなったらついでなので、もうすこし弦の話をしてしまいましょう。



温度でチューニングが狂ってしまうが

 弦の狂いで気になるのはハイポジションを押さえた時以外に、温度の変化によるものがあります。 これは暖房や冷房を使った時、あるいはコンサートでステージと控室の温度が違う場合、ステージの照明がきついときなど、たいへんに困りますね、皆さんもそういった経験があると思います。



やはりナイロンの3弦の狂いが大きい

 これもやはりナイロン弦の3弦が最も狂います。2弦や1弦も繰りますが、やはりナイロンの3弦が最も狂う幅が大きいです。 一方、カーボン弦の方は部屋の温度が変わってもほとんど音程が変わりません。 この点だけでもカーボン弦おすすめです。

色々な意味でナイロンの3弦はは鬼門と言ったところですね。 



なぜ気温が上がると音が上がる?

 ではなぜ、ナイロンの、特に3弦が最も狂うのか? 例えば鉄製のレールは気温が上がると伸びます。弦も同じように伸びるのであれば、音程が下がることがあっても上がりことはありません。 しかしナイロン弦は温度が上がると音程があがり、下がると音程も下がります。



ナイロンの吸水性の関係と言われる

 温度が上がっての素材が伸びることにはあまり関係なさそうです。 聴いた話によれば、ナイロンと言うのは水分をかなり吸収するのだそうです。 そして気温が上がるとナイロン内の水分を放出し、気温が下がるとまた水分を吸収するのだそうです。

 水分を吸収すればナイロンの比重が重くなり、したがって音程が下がります。 また気温が上がれば水分を放出して軽くなり、音程が上がります。ナイロンが水分を吸収しやすい性質をもっているのは確かなようで、これは納得できる説のようです。

 またポリフッ化ビリデン(カーボン弦の素材の)にはそうした吸湿性はないそうで、したがって気温が変わっても音程が変わりません。


  

詳しいことごを存じの方がいらっしゃいましたら


 そうした説が有力なのですが、しかし実感としてはエアコンの風に当たった瞬間など、すぐに音程が変わるので、そのような速さで水分の出し入れが行われるのかどうか、また雨の日などの湿度の変化よりも、温度の変化の方が敏感に音程に影響する、若干疑問に思うこともあります。

 またまたですが、読者の方で、こうしたことについて詳しい方がいらっしゃいましたら、ご教示いただければ幸いです。