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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

令和時代のギター上達法 33


グリサンド奏法 2



後続の音を弾きなおすもの



グリサンド奏法4
小音符は後続音を弾きなすと言った意味で付けられており、実際に発音されるわけではない。




小音符は発音されない

 後続の音を弾き 直すものは上のように表記されます。小音符が付くのが特徴ですが、この小音符は実際に発音される訳ではありません。後続の音を弾きなおすということがわかるように付いているだけなので、上の場合では、「ファーララ」とらが2回聴こえるようには弾きません。



中間の音がグリサンドとして聴こえる

 このケースでは通常の音符(大きな音符)は通常通り発音され、その中間の音がグリサンドとして聴こえるというものです。 アコースティック・ギターの場合は、このようなものを「グリサンド」と言い、前回の 「スライド」 と区別しています。ただし言葉上ではそう言った意味合いはなく、便宜上アコースティック・ギターではそのように使分けていると考えていいでしょう。




あまりはっきり聴こえなくてもよい~出すつもりはなかったのだけど”出てしまった”

 このグリサンドの場合、グリサンドの音はそれほどはっきり出なくても構いません。仮に全く聞こえなかったとしても、ミスというほどではありません。どちらかと言えば、気持ちをこめてメロディを歌わせたら、出すつもりはなかったのだけれど、出てしまった。 そんな感じの方が良いでしょう。



左手の移動はゆっくり、柔軟に

 左手の移動も前回の後続音を弾かないものに比べるとゆっくり目のほうがよいでしょう。左腕は直線的に動くのではなく、ややスウィングするように動かすといいでしょう。 そのグリサンドにかかる時間は先行音の音価に含まれますので、多少早めに移動はじめても構いません(後続音を弾かない場合は正確なタイミングで移動)。



この表記はタレガ時代から

 なお、この表記の仕方はおそらくタレガの時代から始まっているようで、コストやメルツ、カルカッシなどの作品には書かれていません。タレガが始めたかどうかはわかりませんが、この表記が行われるようになったのはタレガ以降ですから、タレガによってこの表記が一般化したということは言えるかもしれません。



なかったわけではないと思うが

 グリサンドの歴史についてはまた後でまとめたいと思いますが、タレガ以前に、このような後続音を打ち直すタイプのグリサンドが使われなかったわけではないと思いますが、少なくとも表記はなかったということです。

 メロディを歌わせようと思えば、ある程度自然に付くのではないかと思いますが、こいったものを意識的に使うようになったのがタレガ以降ということなのでしょう。



リョベットやバリオスも踏襲

 この表記を多用したギタタリストとしてはミゲル・リョベットが挙げらえます。カタルーニャ民謡集にはたくさん登場します。リョベットの譜面の書き方はこのグリサンドや、その他の点も含め、タレガとほぼ同じようです。

 おそらくこの時代(1900年前後)のスペインのギター界ではこうした表記が標準だったのでしょう。 そうしたものは今現在のギターの譜面にも反映されています。

 タレガ、リョベットの他、アグスティン・バリオスもほぼ同じ表記の仕方をしますので、この3人の譜面を載せておきましょう。



タレガ前奏曲愛3番




アメリア
この曲はリョベット自身の録音があるので、ぜひ参考にしてほしい。


 

バリオス:クリスマスの歌




CCI_000198.jpg
ミゲル・リョベットのCD。SP盤の復刻なので音質はよくないが、19世紀末から20世紀初頭のギター演奏法を知るための貴重な情報が詰まっている。



リョベットの演奏を参考に

 これらの中で、「アメリアの遺言」 はリョベット自身の録音があるので、ぜひ参考にしてほしいと思います。 この種のグリサンドは技術的にはまった難しい点はありません。 大事なのはその表情のついてでしょう、まさに感性の世界といったところです。

 こうした感性は自然に出来るものではなく、当然のことですが、たくさんの演奏を聴くことにより生まれるものです。ギター以外に声楽やバイオリン。チェロなどの演奏も聴いてください。




たくさん聴いて感性を磨く

 グリサンドはメロディを歌わせる場合に、たいへん有効な方法ですが、その用い方で、結果が大きく変わってしまいます。 ギターをやる人は、名演奏をたくさん聞いて、ぜひこの感性を磨いてください。
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令和時代のギター上達法 32


グリサンド 1




ギターの大きな武器

 今回からグリサンド奏法の話をします。グリサンド奏法はギターにとって非常に大事な奏法です。ヴィヴラートと並んでギターの大変大きな武器と言えるでしょう。

 ピアノとギターと言うのは同じ方向性の楽器と言えます。どちらも和音や複旋律が演奏できるということで、独奏にも伴奏にも使われます。しかし近い関係だけにその差ははっきりしてしまいます。 音量、速さ、音域、同時に弾ける音の数とか、そう言った点でピアノとケンカしても、まず勝ち目はありません。

 いろいろな点でギターはピアノには勝てないのですが、ピアノに勝てるフィールドとしては、音色の変化の他、ヴィヴラートとグリサンドということになるでしょう。




ピアニストは可哀そう?

 たまにピアニストが鍵盤を押しながらヴィヴラートをかけているのを見ることがあります。もちろんピアノでヴィヴラートがかかるはずはないのですが、ともかく気持ちだけでもかけたいのでしょうね。そんな時、ギタリストとしては 「可哀そうになあ」 とちょっと優越感に知れます。 そのヴィヴラートについてはまた別に書くことにして、まずはグリサンドの話から始めましょう。



グリサンドについて詳しく書かれたものはないが

 ギターのグリサンド奏法というのは細かく見えると様々なものがあります。しかしこうしたことについてこれまであまり総合的な議論とかはされていなかったのではないかと思います。ギターのテキストなどでも、わりと簡単にさっと書いてあるだけですね。今回は出るだけっそのへんを深く掘り下げて語って行きたいと思います。



ギターのグリサンドは多様

 まず、どんな種類のグリサンドがあるかということですが、大きく分ければ3種類で、2音間のグリサンドの場合、後続の音を右手で弾弦する場合、しない場合、それから前打音的なグリサンドとなるでしょうか。他に重音のグリサンド、グリサンドとハンマリングを組み合わせたもの、異なる弦でのグリサンド。 グリサンドではないが、グリサンド的ということで、運指上指をスライドさせるものなどがあります。

 またグリサンドは時代によって、またジャンルによっても異なります。あまり使われない時代もあったでしょう。そして記譜の仕方も時代や作曲家、ギタリストによってかなり異なります。 正しくギター演奏しようと思ったら、やはりこれらのことを整理しておかないといけませんね。 記譜の仕方は今現在でも統一されている訳ではありません。またクラシック・ギターとアコースティック・ギターで表記も異なります。 それでは、まず基本的なものから話を始めて、最後の方では特殊な例などについて書いてゆきます。






後続音を右手で弾弦しないもの


 これがもっともグリサンドらしいものですね、スラー奏法と近い関係にあります。つまりスラー奏法は異なる指で行うのですが、このグリサンドの場合は1本の指でのスラー奏法といった感じです。


グリサンド1




弧線と直線の両方が記される

 記譜の仕方としては直線と弧線(スラー記号)の両方を書くのが今現在の標準となっていて、このように書かれた場合は後続の音は弾弦しないと思っていいでしょう。

 しかし実際には直線だけとか、あるいは弧線だけといったものもあり、後続の音を弾くのか弾かないのか判別の難しいものもあります。そうした場合は種々の条件から判断するしかありませんが、どちらでもいいこともあります。こうした点についてはまた後で話をします。

 アコースティック・ギターの場合は、こうしたもの(後続音を弾き直さないもの)を 「スライド」 と言い、弧線にスライドの頭文字の 「S] を添えて記されます。



左指は速く移動

 この場合、スラー奏法と同様な効果を出したいので、中間の音はあまり出なくてもいいのですが、後続の音はなるべくはっきり出ないといけません。ということは左手を移動するスピードは必要となります。通常は指だけでなく左手全体も動かすので、移動中は親指の力を抜きます。


グリサンド2
    親指は後続の音の位置に合わせる



1フレットのグリサンドでは親指は固定(ただし親指の位置は後続音に合わせる)

 1フレットだけの移動の場合は親指を固定して、手首の回転のみでグリサンドを行うこともあります。ただし、この場合は親指の位置は先行音ではなく、後続の音に合わせます。




フレットを越える時に音が出る

 グリサンドの場合、実際には押さえている指がフレットを超えた時に音が出るので、そのフレットを超える時には少し力を加えます。その反対に先行音はなるべく軽く押さえます。強く押さえると指がスムーズに動かなくなります。




上行は出やすいが、下行は出にくい

 ギターのグリサンドは上行と下行で音の出方がかなり異なります。上行の場合はよく出ますが、下行の場合はあまりよく出ません。



グリサンド3



 下行の場合もやはりフレットを越えた時に音が出ますから、その瞬間に力を入れると比較的よく音が出ます。




カルカッシの練習曲

グリサンド:カルカッシ



正しい音価を守る

 この曲はカルカッシギター教則本の第3部の33番です、皆さん練習したことがあるのではないかと思います。上手く弾くと軽快で楽しい感じの曲になりますね。

 この場合のグリサンドは正確な音価を守ることに注意しないといけません。一般的に先行音を短くしてしまいがちなので、8分音符分正確に伸ばしてからグリサンドを行います。 またこの時の左手の移動はなるべく速く、時間をかけないで行うようにします。

 結果的には通常の弾き方をした場合、あるいはスラー奏法を使った場合と同じようにならないといけません。上手くタイミングがつかめない場合は、まず通常の弾き方で練習してからグリサンド奏法で弾くといいでしょう。
令和時代のギター上達法 31


スラー奏法 4 応用編2





タレガ:アデリータ

またタレガのアデリータです。このアデリータにはセーハのtころでも出てきましたね、いろいろ難しいところの多い曲です。



スラーアデリータ
冒頭のスラーで、 3―1 が抜けてしまったが、これが一番出やすいかも




4,3,1 を押さえておく

 冒頭のスラーから出にくいですね。 まず左指は4,3,1と3本の指を押さえてからスラー奏法を行います。人差し指も押さえておくのがポイントです。こうすることにより左手全体が安定します。

 後は何度も書きましたが、小指はネックと垂直方向にはじき、左方向に動かさないようにします。できるだけ小指のみが動くようにして、左手全体は動かないようにします。やはり自分の指をよく見て練習してください。



それでもよく出ない場合は

 それでも出ない場合は、2―1、 3―1、 4―2 などでスラー奏法を行うといいでしょう。 この中ですと、3―1 というのが最もよく音が出るとでしょう。1指をグリサンド気味に7フレットに移動すれば滑らかな感じも出るでしょう。



ちょっとずるい方法だが、ヴィヴラートもかけられる

 4小節目冒頭の 3―4―3 という装飾音のスラーも出にくいですね。 これもやはり1指をすでに5フレットに押さえておくようにしますが、それでもやはり出にくいです。

 実は私はここを 121 で弾いています。 343でも全く出ないわけではないのですが、なんか気持ちよく弾けません。それよりこの 121 のほうがずっとイメージにはまる音になるので、このようにしています。 これだとヴィヴラートもかけられますね。

 ただ、こうした場合、次の「ミ」は②弦では弾きにくいですから、次の「ミ」は③弦にして3指でおさえます。あとは書いてあるとおりの運指となります。ちっと”ずるい手”ですが、気持ちよく弾けると思います。






フェレールの「タンゴ第3番」

 アデリータの後半はスラーだけでなく、難しい点はいろいろあるので、今回は触れないでおき、その代わりにフェレールの「タンゴ第3番」の話をしましょう。



タンゴ第3番



強く押さえない

 この際なので、スラー奏法以外のことも含めて話をします。まず 1.ですが、これは出にくくはないのですが、ノイズが発生しやすいので、なるべく軽くはじきます。特に押さえる力を抜くとノイズが発生しにくくなります。



音価が保てない

 2.はスラー奏法自体は難しくないのですが、1拍の3分の1音価を保つのが難しいです。ほとんどの人はこの最初の「ソ」を短く弾いてしまいます。また3連符ということだけでここを音価を短くしてしまう人も多く、その両方でこの1拍目を短くしてしまう人が多いです。 ここの音価を保てる人の方がずっと少なく、そんな関係で、私のレッスンではここをスラー奏法を使わないようにしています。

 3.はスラー奏法自体も難しく、薬指を押さえた状態で4―1のスラー奏法を行うのはかなり難しいです。また2.以上に音価を保つのが難しいです。したがってここも生徒さんにはスラー奏法であんく通常の弾き方で弾いてもらっています。



じっと我慢

 4.もスラー奏法的には問題ないのですが、タイミングがまえに出てしまいがちです。じっと我慢してからパチッと弾く感じですね。でも我慢できない人は多いです。5.も同じです。



まずは装飾音を外して練習

 6.を正確な音価で弾くのは非常に難しいです。まずは装飾音(小音符)を外して3連符を正確な長さで弾く練習から入ってください。それだけでも人によっては難しいです。それが出来たら、小音符はなるべく速く弾くようにするとわかりやすいかも知れません。 しかし装飾音を入れるとどうしても音価がわからない場合は、最終的にも装飾音を省いて弾いていいと思います。

 もっとも、自分が正確な音価で弾けているかどうか判断出来るということが最も重要なことかも知れません。 仮に正確に弾けていなくても、自覚症状があれば改善の余地があると言えるでしょう。   ・・・・では自覚症状がない場合は? それは言うの止めておきましょう。



真ん中の「ド」を外す

 7.もスラーには関係ないのですが、ここを譜面通りに弾くと中級者などの場合、ちょっと止まってしまいます。また仮に譜面通りに弾けても、なんか重たい感じがします。 そこでレッスンの際には最初の和音、「ラ、ド、ラ」のうち、真ん中の「ド」を外してもらっています。「ド」を外すと、低音の「ラ」が5弦の開放で弾けるので、かなり簡単になります。なお且つ、このほうが響きもいいように思います。



叩いてはじく

 8.の装飾音はハンマリングとプリングの両方をしないといけません、ただ薬指を上下するだけでは音がでないので、まず薬指で5フレットをしっかり叩いてから、その指で①弦をはじきます。 この場合、ネックに垂直の方向にはじき、左方向にはじかないのは前に書いたとおりです。また左手全体が動かないようにも注意してください。 9.も同様です。



音の長さに注意

 10.のスラー奏法は音を出すのは問題ありませんが、2.3.と同じく音価が短くなりがちです。ともかくスラー奏法と3連符というのは音が短くなりやすいですね。ここもまずはスラー奏法を外して通常の弾き方で練習してみるといいでしょう。



付点音符でもおかしくないが

 11.の休符は別に消音すると言った意味ではありません。3連符となっていて、ここを正確な音価で弾くのは難しいですが、曲的には付点音符となってもあまりおかしくないところかなと思います。リズム感のある人は、ここを付点音符と区別して、正確な3連符で弾いてみるのもよいでしょう。



6弦の共鳴があるので

 12.のところの左手運指はややわかりにくいかも知れませんが、和音の「ミ」と「レ」をキープするためのものです。 しかし現実的には3個目の音の「ファ」の時、他の指が離れてても、あまり問題にはならないでしょう。6弦の共鳴もあるでしょうから。
令和時代のギター上達法 30



スラー奏法 3  応用編



カルカッシの練習曲

 今回はスラー奏法の応用編ということで、まずスラー奏法の練習で有名な(?)カルカッシギター教則本、第2部にあるイ長調の「アレグレット」です。上級者の方もおそらくかつて練習したことがある曲ではないかと思います。



スラーカルカッシ



親指に位置を正しく

 最初の音の2フレットの「ド#」を1指で押さる訳ですから、左手は第2ポジションとなりますね。まず左親指を正しい位置に置かなければなりません、スラー奏法の場合、親指の位置がよくないと音が出ません。

 もちろん特にスラ―奏法でなくても親指の位置は正しくなければなりません。常に親指の位置に注意しましょう。この場合、親指は少なくとも3フレットの裏側、出来れば4フレットの裏側くらいにおいてください。



4,3,1をすでに押さえておく

 第1小節目の5,6拍目に ラーソ、ファーミ とスラー奏法が出てきますが、まず、4,3,1 と指を並べてからスラー奏法を行って下さい。人差し指まで押さえることにより、左手が安定します。



左方向に動かさない

 まず小指で弾くわけですが(プリング・オフ)、この時左手全体を動かさないように、特に左方向に動かさないように気を付けます。必ずネックに対し垂直方向に弾きます。

 こう言ったことは理屈で分かっていても、ほとんどの人は左方向にはじいてしまいます。私自身でも無意識にやると左方向に弾いてしまいます。よく自分の指を観察しながら練習してください。



下行だがハンマリング

 1段目最後、2小節目最後の ミ―レ のスラーは下行スラーですが、実際は叩いて出す、つまりハンマリング・オンということになります。右手で弾いた弦と違う弦を叩くわけですから、確かにあまり音は出ません。したがって19世紀後半以降は、この方法はあまり使われなくなりますが、19世紀前半の楽器ではそれなりに出たのではないかと思います。



中指を斜めにして①弦を消音する

 「レ」を叩いたと同時にその前に弾いた①弦の「ミ」を消さないといけないので、叩く中指を少し斜めにして②弦を叩いたときに①弦にも触るようにします。



速い場合によく使われる

 いずれにしてもこのスラー奏法はあまり音が出ないので、ゆっくりした場合はあまり用いられず、速く弾く場合にのみ使うと考えていいでしょう。
 


3―2 のスラーは出にくいが

 3小節目の レ―ド のスラーは 3,2 となりますが、この 3,2 のスラーは非常に出にくいです。3指を上方に弾くのではなく、弾いた後②弦に止める、いわゆる”左指のアポヤンド”を用いるとよいかも知れません。 でもやはり出にくいですね、私の場合、実際の曲では 2―1 3―1 4―2 など別の指で弾くことが多いです。

 

フレーズの切れ目なので消音

 スラー奏法には直接関係ありませんが、4小節目4拍目の音は4分音符になっていますが、ここははっきりしたフレーズの切れ目なので、8分音符にして、5拍目を休符にするといいでしょう。



短くしてしまう人もいるが

 中にはここを1拍にしてしまい、音を伸ばすことも、また休符を入れることもしないで、そのまま次のドレに言ってしまう人もいます。そんな人はここが切れ目になっているなんて全然思わないのでしょうね。 8小節目や12小節、最後の小節も同様です。



ポジション移動に注意

 この運指では15小節目にポジション移動があるので、親指を正しく移動しましょう。ポジション移動というのは、要するに親指の移動ということになります。
令和時代のギター上達法 29


スラー奏法 2  下行スラー(プリング)



久々ですが

 久々の上達法です。前回何を書いたか忘れ気味ですね、確かめてみると、上行のスラー奏法の話をしましたね、今回は下行のスラー奏法(プリング)です。



CCI_000150.jpg





左指で弾く

 敢えて説明するまでもないですが、下行のスラー奏法は、左指で弾くわけですね、これはあくまで「弾く」わけですので、上方に指を上げたのでは、音が出ません。ヴァイオリンのように弓で弾いている場合は指を上げるだけでいいのですが、ギターの場合は弦を弾かないといけません。



両方の指を押さえておく

 また①弦のソーファのように後の音が開放弦でない限り、弾く前に両方の指をあらかじめ押さえておかなければなりません。これは下行スラー奏法の常識なのですが、それをやっていない人もいますので、それをやっていない人は、必ずそれが出来るようにトレーニングしてください。




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1,3指とも押さえておく




ネックに対し、垂直方向に弾く

 また弾く方向はネックに垂直の方向です。左方向に弾いてしまう人も多いですが、それでは音がよく鳴りません。また手首を回転させる人もいますが、非効率的だと思います。出来るだけ指先の関節の動きで、ネックに垂直方向に弾くのが最もよく音が出ます。




CIMG3050.jpg
ネックに垂直方向に弾く




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このように左方向に弾いてはいけない





強く押さえ過ぎない

 もっとも、この下行スラーがなかなか出ない人と言うのは、ほとんどの場合強く弦を押さえ過ぎるようです。弦を強く押さえると、二つの理由でスラーの音が出なくなります。

 まず一つは、以前にも言いましたが、人間の指というは力を入れるとすべてのゆびが一緒に動いてしまいます。それは重たいものを持ったりする時に実感できると思います。重たいものを持つ時には必ずすべての指が同じように動くでしょう。薬指だけが動いたり、人差し指だけが動いたりすることはありません。譜例のソーファであれば、力いっぱい薬指で弦を弾こうとすると、人差し指も動いてしまいます。

 もう一つの理由としては、強く弦を押さえてしまうと、指先が弦に食い込んで弦から離れなくなる、つまり弾けなくなるからなのです。弦を強く押さえれば押さえるほど、弦を弾く抵抗も強くなってしまいますね。




音が出ないから力を入れる → さらに音が出なくなる

 そんな時、ちょっと力を抜けば簡単に音がでるのですが、こうした傾向のある人は、全く逆のことをやってしまいます。つまり音が出ないからと言って、より一層力を入れる訳ですね。 そうすると益々音が出なくなります。音が出なくなるからさらに力を入れます・・・・・・

 なんて、こんなことが起きる訳ですね。読者の皆さんは、「そんなバカな」 と思うかもしれませんが、このような人は決して少なくありません。





正しい押弦が出来ていれば問題ない

 こうしたことは最初の「押弦」のところでも書いたのですが、つまり通常の押弦が正しく出来ていれば、スラー奏法も出るということになります。




上行よりも下行の方が音がよく出る

 また、下行の場合でもスラーの先行音が短くなりやすいので、やはり先行音を長めにするように弾くといいでしょう。下行スラーは上行に比べて、音がはっきり出やすいです。確かに弦は「叩く」よりは「弾いた」ほうがよく出ますね。ですから、スケールでも上行の場合はスラー奏法を使わないで、下行の場合だけ使うということもよくあります。