令和時代のギター上達法 35
タレガのグリサンド
ギター文化館のフリー・コンサート
先日(24日、日曜日)はギター文化館でのフリー・コンサートのゲスト演奏と、演奏した方々へのコメントなど行いました。この日のフリー・コンサートでは17組のアンサンブル、および個人の方が演奏しましたが、それぞれの方の演奏意欲が、たいへんよく感じられるものでした。

今回はソルやカルカッシなどの練習曲を演奏する人が多く、基礎をしっかりと学ぼうという姿勢も感じられました。もちろん練習曲と名の付いた曲だけが練習曲というわけではなく、ギターの様々な名曲、およびポピュラー曲、あるいは歌謡曲、Jポップなども取り組み方次第では上達に繋がり、どんな曲も練習曲といえば練習曲なんでしょうね。
今回、無理な大曲や、明らかに技術レヴェルに合わない曲を弾く人はなく、それぞれの方がご自分に合った曲を選んでいたように思いました。 タイトルのとおり、自由なコンサートではありますが、それぞれ一定のレヴェルに達した内容であったことは、お伝えしてよろしいかなと思います。
出演者の中で、10弦ギターでファリャの「ドビュッシー賛」などを弾いた鈴木博之さんの演奏はたいへん素晴らしく、聴衆の方々からのアンケートでも最高でした。技術も高く、力強い演奏でしたが、特にギターの響きの点で、たいへん繊細な感性を持った人だと感じました。
なお個人的に印象に残った方、平和に因んだ曲を演奏した方、計4組の方に中村賞として賞状と私のCDを差し上げました(嬉しいかどうかはわかりませんが)。
また、ギター文化館では館存続のためのクラウド・ファンディングを行っている話は皆さんもご存じかも知れませんが、ぜひ皆さんもご協力いただければと思います。詳しくは文化館のホーム・ページをご覧ください。
マリーア(ガヴォット)
いろいろあって、「令和時代の上達法」も久々になってしまいましたが、タレガのグリサンドについて書く予定でしたね、「マリーア(ガヴォット)」を例に取って話を進めましょう。 短い曲ですが、タレガらしい曲です。
タレガ自身の録音がCDに?
因みに、この曲はタレガ自身の演奏として、エジソンの発明したワックス・シリンダー(蝋菅)への録音がCDとして発売されています。何といっても蝋菅なので、とぎれとぎれにやっと音が聴こえるような感じのものです。

セゴヴィアと同時代のギタリスト Vol.12 タレガの録音とされているものが収録されているが
それでも本当にタレガの録音であればたいへん貴重なものですが、タレガの伝記を書いたプジョールもそのことには全く触れていないので、信ぴょう性は定かではありません。 「フランシスコ・タレガのマリーア」とアナウンスされているのですが、曲名を言っていると思われ、タレガの演奏とは言っていません。
しかし、少なくとも誰かがこのタレガのマリーアを録音しているのは間違いないことで、蝋菅による録音であることからしても、1910年以降のものではないでしょう。 この頃からこの曲が広く演奏されていたことが窺われます。


譜面は現代ギター社版
小音符は軽く押さえる
冒頭は小音符からのグリサンドですが、このケースでは小音符を軽く押さえて素早くグリサンドを行うのがよいということを言いましたね、小音符を強く押さえると重たい感じになり、また後続の本来の音符が出なくなる原因にもなります。

8分音符の長さを保つ
また、2小節目の②弦の「ファ」から「ラ」にかけてのグリサンドは8分音符となっているので、先行音の「ファ」の長さをしっかり保ってからグリサンドをします。「ファ」の音自体は短くなってはいけませんが、グリサンドの動作としては速いほうがいいでしょう。「フレットにぶつける感じ」なんて言うことも前にいいましたね。
このように小音符から始まるグリサンドと通常の音符から始まるグリサンドは弾き方が違うので、区別して演奏するといいでしょう。
冒頭からリタルダンド?
ところで、グリサンドの話からは外れてしまうのですが、この曲には他にいくつか気になるところがあります。 まずこの現代ギター社版の冒頭に書かれた rit. ちょっと気になりますね。 まだ曲も始まっていないのにだんだんゆっくり?

現代ギター社版
1910年代にスペインで出版されたと思われる初版では rit. ではなく、 riten. と書かれています。

アリエール社の1910年代の出版譜
riten を rit と略した?
これだと意味は解りますね、冒頭の不完全小節の二つの8分音符をゆっくり弾くという意味になって、ほとんどのギタリストはそのように弾いています。 その下に書かれている「dolce. a tempo」 もちょっと意味不明ですが、a tempo のほうは次の小節に付くべきと考えるのでしょうね。
通常 rit. はリタルダンドの略で「だんだん遅く」、riten はリテヌートの略で「突然遅く」ですが、ここではその前がないので、「ここをゆっくり」といった意味になるのでしょう。
ヴィラ=ロボスの rit. は、リタルダンドではなく、リテヌート?
現代ギター社版では riten をリタルダンドと勘違いしたか、あるいはriten を rit. と省略してしまったのかも知れません。 そう言えば、ヴィラ=ロボスの譜面に書かれている rit. はリタルダンドとは解釈出来ず、リテヌートと考えるしかありません。確かにヴィラ=ロボスはリテヌートを rit. と書いているようだ。
でも紛らわしいので、リテヌートを rit. と書くのはやめてほしい!
タレガのグリサンド
ギター文化館のフリー・コンサート
先日(24日、日曜日)はギター文化館でのフリー・コンサートのゲスト演奏と、演奏した方々へのコメントなど行いました。この日のフリー・コンサートでは17組のアンサンブル、および個人の方が演奏しましたが、それぞれの方の演奏意欲が、たいへんよく感じられるものでした。

今回はソルやカルカッシなどの練習曲を演奏する人が多く、基礎をしっかりと学ぼうという姿勢も感じられました。もちろん練習曲と名の付いた曲だけが練習曲というわけではなく、ギターの様々な名曲、およびポピュラー曲、あるいは歌謡曲、Jポップなども取り組み方次第では上達に繋がり、どんな曲も練習曲といえば練習曲なんでしょうね。
今回、無理な大曲や、明らかに技術レヴェルに合わない曲を弾く人はなく、それぞれの方がご自分に合った曲を選んでいたように思いました。 タイトルのとおり、自由なコンサートではありますが、それぞれ一定のレヴェルに達した内容であったことは、お伝えしてよろしいかなと思います。
出演者の中で、10弦ギターでファリャの「ドビュッシー賛」などを弾いた鈴木博之さんの演奏はたいへん素晴らしく、聴衆の方々からのアンケートでも最高でした。技術も高く、力強い演奏でしたが、特にギターの響きの点で、たいへん繊細な感性を持った人だと感じました。
なお個人的に印象に残った方、平和に因んだ曲を演奏した方、計4組の方に中村賞として賞状と私のCDを差し上げました(嬉しいかどうかはわかりませんが)。
また、ギター文化館では館存続のためのクラウド・ファンディングを行っている話は皆さんもご存じかも知れませんが、ぜひ皆さんもご協力いただければと思います。詳しくは文化館のホーム・ページをご覧ください。
マリーア(ガヴォット)
いろいろあって、「令和時代の上達法」も久々になってしまいましたが、タレガのグリサンドについて書く予定でしたね、「マリーア(ガヴォット)」を例に取って話を進めましょう。 短い曲ですが、タレガらしい曲です。
タレガ自身の録音がCDに?
因みに、この曲はタレガ自身の演奏として、エジソンの発明したワックス・シリンダー(蝋菅)への録音がCDとして発売されています。何といっても蝋菅なので、とぎれとぎれにやっと音が聴こえるような感じのものです。

セゴヴィアと同時代のギタリスト Vol.12 タレガの録音とされているものが収録されているが
それでも本当にタレガの録音であればたいへん貴重なものですが、タレガの伝記を書いたプジョールもそのことには全く触れていないので、信ぴょう性は定かではありません。 「フランシスコ・タレガのマリーア」とアナウンスされているのですが、曲名を言っていると思われ、タレガの演奏とは言っていません。
しかし、少なくとも誰かがこのタレガのマリーアを録音しているのは間違いないことで、蝋菅による録音であることからしても、1910年以降のものではないでしょう。 この頃からこの曲が広く演奏されていたことが窺われます。


譜面は現代ギター社版
小音符は軽く押さえる
冒頭は小音符からのグリサンドですが、このケースでは小音符を軽く押さえて素早くグリサンドを行うのがよいということを言いましたね、小音符を強く押さえると重たい感じになり、また後続の本来の音符が出なくなる原因にもなります。

8分音符の長さを保つ
また、2小節目の②弦の「ファ」から「ラ」にかけてのグリサンドは8分音符となっているので、先行音の「ファ」の長さをしっかり保ってからグリサンドをします。「ファ」の音自体は短くなってはいけませんが、グリサンドの動作としては速いほうがいいでしょう。「フレットにぶつける感じ」なんて言うことも前にいいましたね。
このように小音符から始まるグリサンドと通常の音符から始まるグリサンドは弾き方が違うので、区別して演奏するといいでしょう。
冒頭からリタルダンド?
ところで、グリサンドの話からは外れてしまうのですが、この曲には他にいくつか気になるところがあります。 まずこの現代ギター社版の冒頭に書かれた rit. ちょっと気になりますね。 まだ曲も始まっていないのにだんだんゆっくり?

現代ギター社版
1910年代にスペインで出版されたと思われる初版では rit. ではなく、 riten. と書かれています。

アリエール社の1910年代の出版譜
riten を rit と略した?
これだと意味は解りますね、冒頭の不完全小節の二つの8分音符をゆっくり弾くという意味になって、ほとんどのギタリストはそのように弾いています。 その下に書かれている「dolce. a tempo」 もちょっと意味不明ですが、a tempo のほうは次の小節に付くべきと考えるのでしょうね。
通常 rit. はリタルダンドの略で「だんだん遅く」、riten はリテヌートの略で「突然遅く」ですが、ここではその前がないので、「ここをゆっくり」といった意味になるのでしょう。
ヴィラ=ロボスの rit. は、リタルダンドではなく、リテヌート?
現代ギター社版では riten をリタルダンドと勘違いしたか、あるいはriten を rit. と省略してしまったのかも知れません。 そう言えば、ヴィラ=ロボスの譜面に書かれている rit. はリタルダンドとは解釈出来ず、リテヌートと考えるしかありません。確かにヴィラ=ロボスはリテヌートを rit. と書いているようだ。
でも紛らわしいので、リテヌートを rit. と書くのはやめてほしい!
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