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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

スズメバチの巣





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いつの間にか玄関の軒下に、かぼちゃ大のスズメバチの巣が出来ていた




上を向いて歩こう!

 なんと玄関先に大きなスズメバチの巣があるではないか! なんでこんなにわかりやすいところに、こんな大きなスズメバチの巣が出来ているのに、今まで気が付かなかったのか! 常に目線が下向いている証拠か! 下を向いて歩いてはいけない! 上を向いて歩こう!

 これまでスズメバチが飛び交っているのもあまり見かけなかったのですが、おそらくスズメバチは、常に屋根くらいの高さを飛んでいたらしいです。 駆除している間に、スズメバチが巣に帰るところを見ましたが、地上2~3メートルくらいの高さを飛んで、まっすぐ巣に帰っているようでした。




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防護服にはファンが付いている、確かにそうでないと暑くてたまらないだろう。 私は結構離れたところから写真を撮っている。





こんなのが玄関先にあったら

 一昨日の夕方頃発見(見つけないほうがおかしいが)して、とりあえず駆除業者に連絡。 昨日駆除してもらいましたが、スズメバチの個多数は100を超えるようです。 もちろん自分でなんとか出来るようなものではありません、こうなったら専門業者にお願いするしかないでしょう。



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駆除したスズメバチの巣




 テレビではこんな映像見たことありますが、こんなのがわが家の玄関先にあったかと思うと、ぞっとします。





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駆除後は全く跡形もなくきれいになった、さすが専門業者。






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戻ってくるハチのために巣の跡に粘着板をはって帰った




水戸市から補助金が出るらしいが

 最後は跡形もなく綺麗に駆除した後、まだすに戻るスズメバチがいるとうことで、巣の後に粘着板をはり、料金を支払って、業者の人が帰りました、時間にして2時間弱。 お代の方は全部まとめて 49、500円也。  少々お高いようですね、まあ、危険を伴う作業ですからね。 水戸市のほうで10000円の補助金が出るようです、若干面倒でも明日申請手続きに行ってきましょう。

 


さらにお高く

 隣のおばさんの話では最近、この近辺でハクビシンが出没しているらしいです。 この業者さんはハクビシンの駆除もやっているそうで、もし家に入り込まれたら、「ぜひご連絡を」 と言っていました。 ハクビシンとなると、さらにお代もお高くなるでしょうね。 いろいろな意味で、くわばら、くわばら。
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中村俊三ギター・リサイタル ~ギター文化館を応援しよう


 9月16日(金)14:00  石岡市ギター文化館




曲目解説 2



フェルナンド・ソル  「私が羊歯だったなら」による主題と変奏作品26



 イ短調の主題と4つの変奏、それに短い序奏が添えられた曲です。「魔笛」の主題による変奏曲などに比べると、幾分小規模ですが、主題も親しみやすく、各変奏の対比も際立ち、コンパクトによくまとまっています。

 ソルの中期の作品と思われますが、とてもソルらしい作品といえます。この曲が好きだという人も多く、ソルの作品の中では人気のある曲とも言るでしょう。



ソル羊歯
「私が羊歯だったなら」による主題と変奏作品26  現代ギター社版




あなたが座っている羊歯になりたい?

 譜面を見る限りではあまり難しそうな感じはせず、”とっつき” やすそうな曲ですが、実際に弾いてみると意外と弾きにくいところもあります。”厚め”に和声付けされたテーマを整然と弾くのもなかなか難しいですし、最後の第4変奏を淀みなく弾くのも技術が必要でしょう。

 「私が羊歯だったなら」と変わったタイトルですが、当時(19世紀初頭)パリではやった歌のようですね。「あなたが座っている、その羊歯の敷物になりたい」 といったような歌詞なんだそうですが、ちょっとこじれた愛情表現を感じますね。 第一、羊歯の敷物って何? 当時そういったものがあったのかも知れませんね。





フェルナンド・ソル  グラン・ソロ 作品14


 グラン・ソロは「魔笛」の主題と変奏に並ぶソルの代表曲として親しまれてきた曲です。 アンダンテの序奏とアレグロの主部からなる曲で、グラン・ソロは 「大独奏曲」 といった意味ですね。

 単一楽章のソナタと言うべきですが、当時はこうしたものを 「序曲」 と呼んでいました。 ジュリアーニにもこれと似た形の「大序曲」というのもあります。この時代は 「大きいことはいいことだ」 ということで、曲名にも 「大」、つまり 「グラン」 という言葉が付くものがよくありました。 やはり音楽は ”盛大” でなければならいと言ったところなのでしょう。




3つの版がある

 ところで、このグラン・ソロには現在3つの版が存在します。 またそれらを基に若干変更を加えた2次的なバージョンも市場に出ています。



メソニエ~ユージェル版

 まず一つ目はソルの作品番号の中で、1~33番までを出版したメソニエ~ユージェル(Meissonnier e Heugel)による版で、1814年以降から1820年代くらいにかけてパリで出版されたと思われます。 曲自体はもっと早い時期に作曲されていたかもしれません。 なおHeugel のカタカナ表記としては 「ヒューゲル」 とされているものもありますが、ユージェルのほうがフランス語の発音に近いらしいです、詳しいことはわかりませんが。

 下の譜面は現代ギター社版ですが、編者の中野二郎氏によれば、ユージェル版を忠実に再現したもので、中野氏の所有している譜面は1920年頃出版されたものだが、かなりすり減っていて、おそらく初版(1820年前後)のもをそのまま使用したものと思われるそうです。




グランソロ現代




グランソロ2現代
メソニエ~ユージェル版を忠実に再現していると言われる中野二郎編、現代ギター社版






ジムロック版

 次にドイツのジムロック(Simrock)社から出版されたもの。 これは出版された場所からして改訂版と思われますが、一時期はこちらのほうが世界的に浸透していたようです。セゴヴィアもこの版で演奏しており、オールド・ファンにとっては最も親しんだバージョンと言えます。

 ネットなどでこのジムロック版を探してみたのですが、ジムロック版そのもは入手できませんでした。下の譜面はドレミ楽譜出版のギター名曲170選Cからですが、状況的にジムロック版にかなり近いものと思われるので、載せておきました。




グランソロ1・ドレミ




グランソロ2・ドレミ






アグアド編(ベニート・カンポ版)

 3つ目はアグアドによる編曲版で、出版はマドリッドのベニート・カンポとなっています。 譜面からするとメソニエ~ユージェル版を基に編曲したもののようです。原曲よりさらに華麗なものとなっています。譜面のほうは現代ギター社のアグアド・ギター作品集からです。



グランソロ1アグアード



グランソロ2・アグアード
ディオニシオ・アグアド編(ベニート・カンポ版)
中村俊三ギターリサイタル~ギター文化館を応援しよう




 9月16日(金) 14:00  石岡市ギター文化館  
 入場料 2000円 ~入場料はすべてギター文化館への支援金となります。
 問い合わせ 中村ギター教室 029-252-8296     ギター文化館 0299-46-2457





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演奏曲目

F.ソル  
   練習曲ホ長調 Op.31-23 「敬虔な祈りの章」 
   練習曲ホ長調 Op.31-24 「アレグレット・モデラート」
   「私が羊歯だったなら」による序奏と変奏 作品26
   グラン・ソロ(序奏とアレグロ) 作品14

F.メンデルスゾーン ~F.タレガ編曲
   ベニスの舟歌作品19-6 (無言歌集より)
   カンツォネッタ (弦楽四重奏曲ホ長調作品12)

F.タレガ
   グラン・ホタ

M.ラヴェル ~中村編
   亡き王女のためのパバーヌ

E.サティ ~中村編
   ジュ・トゥ・ヴ (あなたが欲しい)

C.ドビュッシー ~中村編
   亜麻色の髪の乙女 (前奏曲集第1巻より)

F.モンポウ
    プレリュード、カンション (コンポステラ組曲より)

F.モレーノ・トロバ
   マドローニョス

I.アルベニス ~中村編
   キューバ、セビージャ (スペイン組曲作品47より)




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あと一ヶ月もないが

 9月のリサイタルも、あと一ヶ月弱となってしまいました。演奏会が近づくと 「なんでこんな大変なプログラムにしたんだろう、もうちょっと楽なものにすればよかった」 と、いつも後悔します。

 以前は演奏会の直前になると、練習のしすぎで腕などがガチガチに痛んだりするのですが、最近は比較的そうでもなくなりました。歳を重ねるごとに、開き直りが酷くなるのかも知れませんね。 でも最善の演奏ができるように最後まで頑張ります。




ソルの練習曲 作品31-23と31-24

 それではさっそく今回演奏する曲目の紹介を始めましょう。最初はソルの練習曲2曲です。 ソルは練習曲集として 「作品6(12曲)」、 「作品29(12曲)」、 「作品31(24曲)」、 「作品35(24曲)」、 「作品60(25曲)」 を書いています。



4つの練習曲集 ~レヴェルの高いものから順に作曲していった

 このうち 「作品6」 と 「作品29」 は一続きの作品とされ、出版時期が異なるので別の作品が与えられていますが、作品29のほうは1番からではなく、13番~24番までの番号が付けられています。 つまり ”ほぼ” 24曲からなる練習曲集を4つ作曲した訳ですね。

 この ”4つ” の練習曲集は番号の若いものほどレヴェルが高くなっています。 つまり最高レヴェルの練習曲から作曲をはじめ、段々に易しい練習j曲集を作っていたということになります。



祈るような曲と軽快な曲のセット

 ということは、今回演奏予定の2曲は作品31に属しますので、レヴェル的には ”中の上” と言ったところでしょうか。 23番、24番ということで、この作品31の練習曲集の最後の2曲を演奏しますが、両者とも同じ調で書かれ、しみじみと祈るような感じの曲と、軽快な曲といった対照的な感じで書かれているので、続けて演奏されることも想定しているのではとも思います。

 

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サブタイトルとして「敬虔な祈りの章」と書かれている。 しっとりとした美しい曲だが、2分の2拍子なので、めちゃゆっくりというほどでもない。



31-24
作品31-24「アレグレット・モデラート」。上の曲(作品31-23)と同じ調で書かれ、軽快で心地よい感じと、対照的にかかれているので、2曲続けて演奏されることも念頭に置いたのでは。




セゴヴィアの20の練習曲集には含まれないが

 どちらもセゴヴィアの20の練習曲集には含まれないので、どちらかと言えばそれほど演奏される曲ではありませんが、なかなかチャーミングな曲です。特にこのように2曲続けて演奏すると、いっそう印象も深まるように思います。




他にも練習曲集的な作品が多数ある

 ”練習曲集” とはしていませんが、ソルには他にも練習曲集的な作品が多数あります、それらを挙げると。

作品42 6つの小品
作品43 6つのバガテル 
作品44 24の斬進的な小品集 
作品45 やってみましょう ~6曲 
作品47 6つの小品 
作品48 これならよろしいか? ~6曲 
作品51 ついにやった、6つのワルツ



愛好者たちの要求にこたえて

 こうした作品はソルの活動の後期(1828年以降)に集中しているのが特徴です。ソルの作品は当時からその内容は高く評価されていたもの、一般の愛好家たちには難し過ぎたようです。

 ソルとしても初心者でも弾けるようなやさしい作品を書く努力はしたようですが、作曲、特に和声法の原理や基本を大事にするソルにはなかなか簡単な曲が書けなかったようです。 当時としてもやはり初、中級者にとってはソルよりフェルナンド・カルリの練習曲のほうが弾きやすかったようですね。



これならよろしいか?

 作品48には 「これならよろしいか?」 などという、ヤケ気味ともとれるタイトルが付いています。 その第6番は次のような曲ですが、これ、ソルの曲というより、カルリっぽいですね。 確かにヤケ気味に書いた感じがしますね、きっと 「カルリみたいな曲を書け」 と言われたので、カルリのパロディ風の曲を作ったのかも知れません。



ロンド




ソル先生の作品の内容の濃さは誰しも知るところではありますが・・・・・

 「ソル先生の作品はまことに優れ、極めて内容の濃いものと、私たちギター愛好者なら誰しも知るところです。 しかしながらソル先生の作品は初、中級の練習曲といえど、やはり難しゅうございます。 なんとか力のない私たちのために、もう少し易しいものを作っていただけませんでしょうか。 出来れば今巷ではやっているイタリア人のカルリ先生みたいな曲とか。 そのような作品を作曲していただければ私たち愛好者はみな喜び、ソル先生への尊敬の念を、これまで以上に、いっそう増すのではと存じます」

 なんてやり取りがあったとか・・・・  なかったとか・・・・   でも、このロンド、ソルのような、カルリのようなで、結構面白いです。   ・・・・今度のリサイタルでは弾きませんが。
令和時代のギター上達法 46




タレガ/レッキー ギター手稿譜




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タレガが弟子のレッキー氏のために書いた譜面

 今回は前回言いました通り、タレガがイギリス人で医師のウォルター・レッキー(Walter James Leckie)氏のレッスンのために書いた譜面を基に、グリッサンドをどのように表記し、また呼んでいたかを見てゆきましょう。

 この本はイギリスの AGS MUSIC という会社から出版されたもので、著者はブライアン・ホワイトハウスという人です(ホワイトハウスという苗字があるんですね)。 日本語版となっていいて(複数の言語で出版されているのかも)、限定版なので価格は高めです(2~3万円くらいだったかな?)。今現在では入手困難ではないにしても、しにくいかも知れませんね。



一人一人に丁寧に運指や奏法を書き入れていた

 タレガは自らの生徒さんへのレッスンの際には、一人一人に手書きで楽譜を書いていたようですね。また音符だけではなく運指や弦の指定、さらにはフレット番号、そしてスラー奏法やグリッサンド奏法なども丁寧に書き込んでいます。

 同じ曲でもすべてのお弟子さんに同じように書いたとは考えられませんから、同じ曲でも微妙に、あるいははっきり違った譜面が残されたことになります。今現在出版されている楽譜でも違いがいろいろあるのも、そうした事情も関係あります。

 こうしたものを、今日私たちが目にすることが出来るのも、レッキー氏が師の譜面を大切にし、またその遺族の方々も大事に保管しておいたからなのでしょう。「赤い本」、「青い本」 という2冊の形で残されているようです。



ショパンのワルツ

 次の譜面はショパンのワルツ作品64-2嬰ハ短調(この編曲ではホ短調)です。 ちょっと見にくいかも知れませんが、弦や指使いの他、フレットの番号、スラー奏法、グリッサンド奏法についても言葉が添えられています。 本当に丁寧ですね。


ショパン・ワルツ1



ゴルペとティロン

 タレガはこのように生徒さん一人ひとりにこのように丁寧に書き込んでいたようで、本当に頭が下がります。私も一応自分で教材を作って生徒さんに渡していますが、もちろん手書きではなく、楽譜制作ソフトを使っていて、一度書いた曲は印刷して複数の生徒さんのレッスンで使っているので、手間という意味では全く違います。

 1.は上行のスラー奏法、アコースティック・ギターで言うハンマリング・オンですね。ここにタレガは 「golpe」 と書き入れています。golpe(ゴルぺ)はフラメンコなどでギターを叩くこととして知られていますが、ハンマリングの意味もあるのですね、初めて知りました。

 2.は反対の下行スラー奏法、つまりプリング・オフです。 よく読めないのですが、「tire」 と記されているのでしょうか。スペイン語に 「tiron」(ティロン?) =引っ張る という単語があるので、おそらくこのことと思われます。 プリングとほぼ同じ意味なのでしょう。

 ある程度ギターをやっている人なら、スラー奏法の場合、「叩く」 か 「引っ張る」 かはあえて書かなくてもわかるはずですが、タレガは丁寧にほとんどのスラー奏法にこれらの言葉を入れています。 この本に載っている譜面の量からして、レッキー氏へのレッスンはかなり長い期間と思われますが、最後までこれらの言葉を書き入れています。タレガの性格が表れていますね。



グリセ

 3.は後続音に小さい音符の付いた、後続音を弾くタイプのグリッサンドですが、 「glice」 と書いてあるようです。 スペイン語辞典にこの単語は載っていませんが、フランス語に 「滑る」 という意味の 「glisser」(グリセ?) という単語があるので、そういった意味で使っているものと思われます。 

 あまりスペイン語のことは詳しく知らないのですが、同じスペインでもマドリッドと、タレガが当時住んでいたカタルーニャ地方では言葉も若干違っていると考えられますし、フランスに近いカタルーニャではフランスの影響も大きいのかも知れません。



フレットというのは英語だけ?

 4.の 「T5」(「T9に見えるが、音的にはT5?) 「T3」 はフレットの意味で、「tasto」 の頭文字と思われますが、なぜかスペイン語の辞典にはなく、イタリア語の辞典には載っています。

 ギター用語として(ヴァイオリンなどでも使う) 「sul tasto」(指盤の方で) というようにも使われるので、音楽用語としてヨーロッパ全体で使われる言葉なのでしょう。 ドイツ語にも 「taste」(鍵盤、指盤)といった言葉があります。 fret というのは英語だけのようですね。



ショパン・ワルツ2


ショパン・ワルツ3



ショパンワルツ4
このように一人ひとりに丁寧に楽譜を書いていたのも驚きだが、書き間違いがほとんどないのも驚き。 おそらく ”写して” いるのではなく、頭の中にある音楽を書きとっているのだろう。運指などの訂正、変更もレッスン時のものと思われる。



どちらもグリセ

 8.10.などは後続音を弾かないタイプのグリッサンドですが、タレガ書き込みは、後続音を弾く場合(小さい音を書き足した場合)と同じく 「glice」 と書いてあります。 タレガは後続音を弾く場合と弾かない場合ののグリッサンドを、小音符を書き足すことにより、はっきりと区別して記したのですが、呼び方は同じだったようですね。



よく考えればどちらも同じ

 しかし6.のような場合でもグリッサンドの後続音は小音符ですので、「その小音符は弾かないで、次の通常の音符を弾く」 と考えれば、弾き方としては全く同じということになるでしょう。 



タレガはアラストレやポルタメントなどの言葉は使っていなかった?

 といったわけで、結論としてはタレガは後続音を弾く場合も、弾かない場合もどちらも 「グリセ(glice)」 と呼んでいたように思われます。 アラストレ(arrastre)や、ポルタメント(portamento)という言葉は、この本を見る限りでは使っていません(これらの言葉を知っていたでしょうが)。

 おそらくタレガが口頭で説明する場合も、「このグリセでは、小音符は弾きませんが、後の通常の音符は弾いてくださいね」 とか、 「このグリセでは後ろの音を右指で弾き直す必要はありません、グリセのみで後続音を出します」 などと言っていたのではないかと思います。 



ソルもグリセーと呼んでいた

 また、前にお話しした通り、フェルナンド・ソルもフランス語で 「glisses(グリセー)」 と書いていて、奇しくも、このギター史における両巨匠はグリセと呼んでいます。 因みにソルは後続音を弾くタイプのグリッサンドは使っていません(楽譜に書かなかっただけ?)。

 結論としては、ソルやタレガはアラストレ、ポルタメントという言葉を使っていなかったようですし、少なくともその両者を後続音を弾く、弾かないで区別してということはなかったと言えます。



ちょっと面倒だが

 と言ったことから、私の教室ではこれまでどおり、 「小音符付いたものは後続音を弾くグリッサンド」 、 「棒だけのものは後続音を弾かないタイプのグリッサンド」 と呼んでゆきましょう。 多少面倒ですが、これが最も誤解を防ぐ呼び方だと思います。



大多数の人がそのように理解するのなら

 だからといって、阿部氏や京本氏が言っているようなポルタメントとアラストレの定義が間違っているという意味ではありません。仮に我が国だけのこととしても、わが国の大多数のギター関係者(この場合クラシック・ギター関係者)がそのように理解するのであれば、わが国においては、それは正しい言葉となるでしょう。 言葉というのはそのようなものかも知れません。



他にも書きたいことはあるが

 グリッサンドに関してはまだまだ他に書きたいことがたくさんあります。例えばこれまで後続音を弾くか、弾かないかは楽譜をみればすぐわかるような言い方をしてきましたが、実際にはどちらなのか、楽譜を見ただけではよくわからないものあります。 いや、そのほうがかえって多いかもしれません。

 また、どちらで構わないもの、あるいはグリッサンド記号はないが、状況的にグリッサンドとなるべきもの、逆にグリッサンドぽく書いてあるがグリッサンドではないもの、さらに重音や和音のグリッサンド、etc・・・・・・ 

 阿部氏や京本氏のグリッサンドに関する説明にも触れたい気もしますし、さらにグリッサンドには関係ないのですが、阿部編のカルカッシギター教本を見ていたら、ギターの上達のために 「次の事柄について反省し、復習してもらいたい。その方が上達が早い」 と阿部氏によって書かれていました。


1.音階はアポヤンド奏法で正確に毎日練習したか?
2.音階は i、m のほか m、a の交互も練習したか?
3.アルペジオの練習も毎日練習したか?
4.ひきにくい曲をぬかしたりしなかったか?
5.よくひけないうちに次に進まなかったか?
 一回もミスなしでひくことはできなくても同じ場所いつもミスするようではいけない
6.姿勢、特に手の型、弾弦その他が基本に述べたようになっているか?




常識は変わる

 私も50年前はこれらのことに何の疑問を持たなかったと思います、確かに昭和時代のギター上達のための常識でしょう。しかし今現在は平成時代を飛び超えて令和時代! やはり常識は変わってゆきます。



次回はリサイタルの曲目紹介

 これらのことにもコメントしてゆきたいとは思ったのですが、9月のリサイタル(9月16日「ギター文化館を応援しよう」)も近づいてきて、その演奏j曲目の紹介もしなければなりません。ということで、これらの話はまた別の機会として、次回からはリサイタルの曲目の話をすることにしましょう。
令和時代のギター上達法 45



アラストレ、ポルタメント、グリッサンド





理屈があっているかどうかより

 言葉というものは正しいかどうかということよりも、通じるか通じないか、あるいは大多数の人が使っているか、使っていないかということが重要になります。

 仮にどんな変な言葉の使い方でも、多くの人がそれを使えば、それはいつの間にか正しい言葉となってしまう。 もちろん 「そのような言葉遣いは語源上ありえない」 とか 「最近、日本語の乱れが甚だしい!」 と憤ったとしても、世の流れには勝てない。いずれはそのような言葉の使い方も辞書に載るようになり、堂々と正しい日本語となる・・・・・・



大丈夫って否定? 肯定?

 「荷物持ちましょうか」 と聞いた時、「大丈夫です」 と断る人、最近多いですね。 これは 「自分で持てますから、あえて持っていただかなくても大丈夫です」 といった意味だと、一応わかります。

 「今度いっしょにコンサートにゆきませんか?」 と誘われた時、 「大丈夫です」 と断る人もいます。 私たち、特に高齢者だと、一瞬イエスなのか、ノーなのか迷いますよね。

 「一緒にコンサートにゆくのに、特に都合の悪いことはありません、大丈夫です! 行きましょう! とても楽しみです」 なのか 「せっかくのお誘いですが、特に時間を持て余している訳でもないので、私は行かなくても大丈夫です。というか、あなたとは行きたくありません」 なのかよくわかりませんね。



今や100パーセント否定の言葉

 もちろん声のトーンでも否定か、肯定かはわかるのですが、最近では、特に若い女性の場合はほとんど後者のようですね。肯定の意味でこの言葉を使う人は、最近ではほとんどいないようです。女性が使う 「大丈夫です」 は100パーセント断りの意味と考えたほうがいいようですね。 

 私たちの世代でも、「結構です」 と断割ること多いですね。電話セールスなどの場合、これを無理やり同意と受け取られ、いつの間にか契約させられるなんてこともあるようです。 私の場合も違った形ではありますが、意に反していつのまにか余計な回線サービスに加入させられてしまったことがあります。



うかつに「結構です」などと言うと

 でも、まあ、今現在では 「結構です」 は一応断りの言葉として認知されているようで、国語辞典では、 「相手の申し出を断る時にも使われる」 と添え書きしてあります。 因みに「大丈夫」のほうはまだ辞典に断りとしての意味は載っていないので、これを断りの言葉として使われるようになったのは、比較的最近のようですね。でもいずれは辞書に載るようになるでしょう。

 この、”断り言葉をなるべく曖昧にする” といったことは、ある意味日本人らしいところでしょう。なるべ相手の言葉を否定したくない、相手の気持ちを損じたくない、といったことが、こうした曖昧な断りの言葉となるのでしょう。 こうした気遣いは基本的に身近な人に対して使われるべきなのでしょうけど、私たち日本人は初めて会った人にでも使ってしまうわけです。



否定しなければならない言葉は、使ってはならない

 もっとも、相手の人がこちらの言葉を否定したくないと思っている以上、こちらとしても相手の人が否定しなければならないような言葉を使ってはならない、それが日本的な文化、気遣い文化なのかも。  ・・・・・空気を読む文化、あるいは忖度文化とも。

 以前に 「NOと言えない日本人」 なんて本がありましたが、NOと言えなのが私たち日本人の欠点ではありますが、また美徳でもあるのかも知れません。こうした曖昧な断りの言葉は、どちらかと言えば若い人がよく用いるという点も面白いところですね。今どきの若い人たちの方がより日本人ぽいのかも。



話を戻さないと!

 あれ? 何の話してたんだっけ? そうそう、アラストレ、ポルタメント、グリサンドの言葉の定義の話でしたね。ここまで書いてきて何ですが、結論としては私にはよくわからないということです。

 結局、語学的にどのように定義するのが正しいのか、ということよりも、大多数のギタリスト、ギター愛好家がどのようにその言葉を理解しているかということが最も大事なことなります。

 そこで、実際に多くのギタリスト、あるいは愛好家たちがこれらの言葉をどのように定義し、用いているかということになりますが、残念ながら私の場合、それほど多くのギタリストと交流があるわけでもないので 結論は出せません。

 おそらくはそれぞれのギタリストが自分なりの定義を持ち。言葉を使用しているのではと思います。ネットなどで検索した感じでは、そういったことが窺われます。



海外留学経験ある方、コメントください

 また、これも単なる推測ですが、アラストレとポルタメントを後続音を弾かないか、弾くかで区別しているのは、おそらく日本国内においてのみなのではと感じます。 その理由の一つとして、多くの国、特に欧米では音楽用語と言えど母国語を用いるのが普通で、このようにスペイン語とイタリア語の意味を使い分けるとは考えにくいからです。

 しかし私自身海外の事情は全く分からないので、海外留学経験のある方などで、このようなことについて詳しく知っている人がいましたら、コメントいただければとても嬉しいと思います。



タレガはどう呼んでいた?・・・・・

 後続音を弾くか、弾かないかを区別して楽譜に表記したのはフランシスコ・タレガ以降と考えられます。そうであれば、そのタレガがこれらのグリサンドをどのように呼んでいたかということが気になるところです。 次回は前にも紹介したレッキー氏への手書きの譜面を基に、そうしたことを考えてゆきましょう。

 







オマケ



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加藤明良さん(参議院議員茨城選挙区選出)初登院   お父さんの加藤浩一さんから写真を頂きました。初々しい感じですが、これまで議員秘書や地方議員など政治経験は豊富だそうです。最近では日本を取り巻く情勢も緊張度がいっそう増していますので、日本国民のためにも、あるいは世界全体の平和のためにも、ぜひ頑張ってほしいと思います。


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