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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

令和時代の新常識 8



3.アルペジオの練習も毎日練習したか?
4.ひきにくい曲をぬかしたりしなかったか?
5.よくひけないうちに次に進まなかったか?
 一回もミスなしでひくことはできなくても同じ場所いつもミスするようではいけない




アルペジオについては音階練習と同じだが

 阿部保夫編カルカッシ・ギター教本に書かれていた言葉についてですが、今回はこの3つをまとめて話しましょう。 3.のアルペジオの練習については音階練習とほぼ重複するので、簡単にまとめると、もちろんアルペジオ練習そのものはたいへん重要ですが、初級段階と上級では内容も異なるでしょう。少なくとも毎日行う必要はないと思いますし、また同じパターンの練習を長期にわたって行いうのはあまり良いことではないでしょう。



確かにちゃんと弾けてから終わりにした方がいいが

 4.と5.はほぼ同じ内容と思いますが、弾きにくい曲を抜かしたり、ちゃんと弾けないうちに次の曲に進んではいけないということですね。確かにこうしたことはあまり良いことではない、できれば練習した曲はちゃんと弾けてから終わりにしたい、それはあるでしょう。

 しかし現実、そうはうまくは行かない、どうしても弾けない曲とか出てきますし、なんかあまりやる気にならない曲なんて言いうのもあります。そんな時どうしたらよいかということですが、そこで忍耐力というかあ、根性を発揮して、出来ないなら出来るまでやるというのも一つの方法かも知れません。なんとなくこの阿部先生の言葉も、それを勧めているようにも思います。スポコン的に言えば、絶対にこれが正解ですよね。




弾けないには弾けないなりの理由がある

 でも、出来ないことには出来ない理由があり、それを出来るようにするには相当なエネルギーが必要となります。努力によって得られる結果とそれに費やすエネルギー量とが釣り合うかどうかも考えなければなりません。 ある程度の努力で結果が出るのであれば、確かに出来るようにすべきですが、こうしたケースではたくさん練習してもなかなか出来るようにならないことも多いです。

 また、これが一番大事なことですが、仮にいわゆる中級段階としましょうか、その段階で努力の結果一つの曲(例えばソルの月光とか)が弾けるようになったと言っても、それはあくまで中級段階ということで、当然のことながらプロや上級者の演奏と同じレヴェルとは言えないことが多いです。

 確かに中にはギターを始めて間もない人で、こうした曲を非常に美しく、上手に弾く人もいますが、現実にはかなりの少数派でしょう。逆にギター歴何十年というベテランでもこうした中級程度の曲をあまり上手に弾けない人はたくさんいます。





あの、お皿にギザギザの突起がある

 やはり練習と言うのは効率が非常に大事となって来るでしょう、誰しも持っている時間は有限なわけすから、上達するには効率の良い練習法が必要という訳です。私はレッスンの時よく ”レモン絞り” の話をします。あのギザギザの突起があるお皿みたいなやつにぎゅうぎゅうやる話ですね。



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レモンの汁も最初のうちはジュワーと出るが

 レモン絞りも最初のうちはちょっと押しただけで汁がたくさんでますね、もちろんちょっと押しただけではもったいないので、さらにぎゅうぎゅうやりますね、するとだんだんでなくななる。でもまだもう少し出るんじゃないかって、さらにぎゅうぎゅうとやりますが、最後の方になると力をたくさん入れても、ポトリ、ポトリを少しずつしか汁が出ません。

 もし、レモンがたくさんあって、そのカスも気にしないのであれば、ちょっとギュっとやったら次、ちょっとギュッとやったら次と、次々と新しいレモンをしぼれば 短い時間で、なおかつ労力もあまり使わず、効率的にレモン汁を得ることが出来ます。

 もちろんそれではレモン代もかかるし、カスもたくさん出る。日常生活ではそんなもったいないことしませんね、人にもよりますが、普通は汁が全く出なくなるまで絞るでしょう。



たくさんの曲を練習したからといって、残飯が出る訳ではない

 しかし、ギターの練習について言えば、たくさんの曲を練習したからお金がかるとかはそれほどないでしょう(多少楽譜代はかかるけど)。 また、たくさんの曲を練習して、”弾きかじり” の曲がたくさんとなってしまい、おかげて家がごみ屋敷なった、なんて聴いたことありませんね、練習では残飯は出ません。



よりたくさんの曲を練習することが重要

 であれば、練習は最も効率的なところ、つまりそれなりの完成度のころまで練習して、そこそこ弾けたら次の曲に移る方が良いということになります。テストなどでも50点の人が70点にするのは頑張れば不可能ではないでしょうけど、95点の人が100点になるのはたいへんな努力が必要とります。何事も完璧に行うのは大変なことです。

 その”ある程度弾けるまで” の練習をたくさん繰り返せばよいという訳ですが、音楽というのはたいへん幅広い知識や経験が必要です。そうしたものを身に付けるには、やはりなんと言ってもよりたくさんの練習するのがよいと思います。一曲一曲の完成度を上げるよりは、よりいっそう幅広い知識、経験を身に付けることが上達の近道です。




指のトレーニングにはなるが

 それに、同じ曲をたくさん練習する場合、確かに指の運動能力に関してはそれなりの効果が期待できます。しかしギターを上手に弾くためには指が動くだけでは弾けません。ギターを上手に弾くために必要なのは、第一に「耳」で、次に「頭」、最後が「指」となります。

 この”聴く力”(どこかの首相みたいだが)と”考える力”を身に付けるには、同じ曲を何回も繰返して練習するより、多少弾けなくてもたくさんの曲に取り組む方がいいのは間違いありません。またギターを弾くだけでなく、たくさんの音楽を聴いたり、音楽関連の本を読むのも大事でしょう、楽譜を”弾く”ではなく、ただ”読む”練習と言うのもあるでしょう。




いいんです! それで!

 では、”弾きかじる” だけでちゃんとその曲を完成させないでいいのか? そんないい加減な練習で上達するのか? と心配になる方々も多いのではないかと思います。特にクラシックギターに真剣に取り組む人はそう考えるのではないかと思います。しかし、私流の結論から言うと、 いいんです!  それで!  

 ちょっと言い過ぎたかも知れませんね、確かにあんまりいい加減でも上達はしません。特に以前お話してようなギター演奏の基礎は身に付けなければなりませんし、また全く弾けていないのに一回だけ弾いて終わり、なんていうのもよいはずはないので、やはりそれなりの”程度”はあるでしょう。

 その”程度”とは、例えば、この言葉が載っているカルカッシ教本の練習曲などであれば、練習期間は2~3週間といったところでしょう。その人のレヴェルがこの教材に合っているであれば、一日一時間前後の練習で十分に弾けるでしょう。 もしそれで弾けないとすれば、それは教材が合っていないということになります。



50歩100歩?

 しかし時には特定の曲だけ弾けないとか、特定の部分だけ弾けないといったこともあります。そうした場合、私はむしろ積極的にその曲やその部分を無視して先に進むように指導しています。中にはそうしたことを気にする人もいますが、あまり気にせず次の曲に進むように言っています。

 先ほども言いましたとおり、弾けた、弾けないと言っても、実際にはそれほ大きな違いはないことが多いです。一応間違えずに弾けたからと言って、本当に上手に弾けたとは言えないことが多いです。 本当にその曲が上手に弾けるようになるには、その後たくさんの経験を積んで、本当の意味で上達しないと上手く弾けるものではありません。




10年後に上手に弾ければよい

 そうした場合、十年後くらいにまたその曲を弾いてみればいいと思います、その人が 順調に上達しているのであれば、その時にはきっと上手に弾けるようになるでしょう。それが最も重要なことではないかと思います。



 

 

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令和時代の新常識 7




音階練習の仕方



最初は出来るだけ少ない音で

 前回は曲の中での音階は i,m の交互弾弦だけでなく、様々な弾き方がある話をしました。今回は実際に私の教室ではどのように音階練習をしているかについて話ししましょう。

  もちろん入学した当初は楽器の持ち方とか、右手での弾弦の仕方、基本的な楽譜の読み方などから始まるのですが、それはちょっと置いておいて、最初に行う音階練習としては、このようなものです。



音階例1




最小限の力でゆっくり押さえ、離す場合は力を抜くだけ

 1弦と2弦だけの5つの音からなります。当然のことながら、最初は出来るだけシンプルなものがよいと思います。1弦だけの3つの音でもいいでしょう。左手の件については以前にも書きましたが、繰り返しますと、各指は指先の中心部分で弦を捉え、ゆっくり、静かに、最小限度の力で押さえます。

 この時左指を叩きつけるように押さえたり、強く押さえ過ぎないと言ったことも書きました。正しい位置を最小限度の力で、ゆっくり押さえることはたいへん重要で、それが出来るかどうかで、ギターが上達するかどうかが決まってしまいます。

 また押さえた指を弦から離す動作もゆっくり、正確に言えば筋力で指を上に持ち上げるのではなく、押さえた指の力を抜くだけで指を弦から離します。押さえている力を抜きさえすれば、当然指は弦から離れるはずです。 少ない音である程度基本動作が出来たら、以下のように少しずつ音を増やしてゆきます。



音階例2




一応アポヤンド奏法から練習を始める

 右手については、まだ記事を書いていませんが、まずはやはりアポヤンド奏法で練習します。理由は前に説明した通りで、確かにアルアイレ奏法のほうが重要ですが、アルアイレ奏法のほうが難しく、その練習はアポヤンド奏法に馴染んでから行っています。



音階練習よりメロディの練習のほうが良いのでは?

 ところで、なぜ音階練習をしなければならないかという基本的な疑問についてですが、単音の練習ということであれば、いろいろな曲のメロディを弾いた方が良いのではないかとも考えられます。

 確かにその通りで、ともすれば無機的なトレーニングに終始してしまいがちな音階練習よりは、譜面の読み方、歌わせ方、など総合的に練習でき、また何といっても情感を込める練習にもなるので、単純な音階より、様々なメロディを弾いた方が効果的とも言えます。 

 

いくつかのことを同時に練習するのは難しい

 もちろん私の教室でもそのようなメロディの練習は重点的に行っていますが、”弦を押さえて弾く” といった基本動作だけに絞った練習は、初期の段階では絶対に必要となります。

 特に習い始めの段階ではいくつかの項目を同時に練習して、なおかつ身に付けるということはたいへん難しいことです。当然のことながら、その都度ポイントを一つ一つの項目ごとに絞って練習しなければなりません。



ポジション移動は別物

 ある程度音階練習が進んだら、下のようにポジション移動を含む音階練習となります。ポジション移動は動作的にも押弦などとは別で、はっきり意識しないと上手く出来ません。親指の移動など、意外と難しいので、私の教室ではこのポジション移動の練習には比較的時間を割きます。



音階例3



音階例4




同じ内容の練習は2~3週間くらいまで

 前にも言いました通り、あまり同じ練習をたくさん、長期にわたって行うと、”指が覚えてしまう” といったようなことになり、自分の頭で考えない習慣が付きがちになります。いわゆる、”頭が固く” なってしまう訳ですね。

 そうしたことを避けるために、私の方では同じ音階練習はあまり長くやらずに、内容を変えながら練習して行きます。個人差はかなりありますが、平均的にいえば、一つの練習は2~3週間程度です。

 仮にどうしてもその練習を長くやらなければならない場合でも、ある程度やったら上手く出来なくても、一旦中断し、しばらくインターバルを置いてから、また行うようにしています。こうすることにより、新たに考えることが出来、また場合によってはその人の力が付き、前に出来なかったことが出来るようになっていることもあります。




相手の音を聞き取る練習

 私の教室では以下のような二重奏の練習もよく行います。曲はバッハの鍵盤曲で、それをギターの二重奏曲のアレンジしています。
バッハの場合、このように音階で出来ている曲は多いですね、これも音階練習と言えば、音階練習でしょうか。

 こうした二重奏曲では、自分が正確に弾けるかどうかということよりも、相手のパートの音が聴きとれるかどうかが重要となるでしょう。 自分で弾くのが精いっぱいで、相手の人がどこを弾いているか、さらには合っているのか、合っていないのか分からないようでは二重奏は成立しませんね。でも実際にレッスンしてみると、そう言った人は決して少なくありません。



バッハブレー
イギリス組曲第1番の第Ⅱブレー(J.S.バッハ)のギター二重奏版




上級者では総合的な練習のほうが重要

 次はカルカッシの25の練習曲第18番ですが、これも音階と言えば、音階ですね。ちょっと断片的で、低音も付いていたり、また一見似ているようで音階ではなく、アルペジオになってるものもあります。実際の曲はだいたいこんな感じでになっていますね。



カルカッシ18
カルカッシ25の練習曲第18番



 独奏曲では単音の音階というより、このように低音や和音が入る場合の方が多いです。ちょっと低音が入るだけで単音の音階とはだいぶ違ってしまいますね。またアルペジオは、弾き方上は音階とほぼ同じとしても、アルペジオとして聴こえるように弾かなければなりません。

 通常、音階練習というと基本的に単旋律で行います、阿部先生が言っている音階練習もおそらくそう言った練習でしょう(アポヤンド奏法と言っているところからしても)。しかし実際の独奏曲の中では単旋律の音階というのはそれほど多くはありません。また、この曲(カルカッシの練習曲第18番)にはありませんが、スラー奏法を伴う音階もたくさんあります。

 したがって、基礎的な事が習得出来て、よりレヴェルの高い練習ということであれば、単純なアポヤンド奏法による音階練習よりもいろいろなパターンに対応できるような総合的な練習のほうがより必要性があるでしょう。

 



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