fc2ブログ

中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

令和時代のギター上達法



アポヤンド奏法 1




CIMG2807トリ



右手の話は避けてきたが

 久々の上達法です。ギターを弾くには左手よりも右手がより重要と、これまで言って来ましたが、なだかんだと、右手の話をするのを避けてきました。右手については、弾くのも難しいのですが、やはり話をするのも難しいし、書き始めるとなかなかたいへんになりそうで、ついつい先延ばしにしてきました。

 しかしいつまでも避けていると ”やるやる詐欺” てなことになってしまうので、この辺で腹を括って始めることにしましょう。 もちろんですが、これは絶対に正しいとか、だれにでも言えることではありません。 私がこれまでに身に付けたことや、見聞きしたことについての記事と言うことになるでしょう。



歴史的に見たアポヤンド奏法

 まず、最初はアポヤンド奏法とアルアイレ奏法についてから始めましょう。 右手の弾き方は、大きくこの二つに分かれますが、ギタリストによっては、これらを区別しないと言う人もいるようです。しかし実際には弾いた後、次の弦に触れるか、触れないかとということで、やはりそのどちらかになるでしょう。

 これらの用い方は、その時代ごとに異なります。19世紀と20世紀で異なるだけでなく、この20年、30年くらいでも違ってきています。と言ったことから、まずその歴史的なことから話を始めましょう。



バロック時代ではリュートの演奏に準じたものと思われる

 17世紀ではギターは複弦で、どちらかと言えばラスゲアード奏法で、ジャラジャラと弾くほうが中心だったようです。しかしガスパル・サンスやロベルト・ド・ヴィゼーのようにリュート的な弾き方をしている人もいました。おそらくはリュートに準じた弾き方をしていたのではないかと思います。




リュート
この絵を見た限りでも、ima はアルアイレ奏法で、親指はアポヤンド奏法と考えられる




アルアイレ奏法が中心だが7、8コース以上の低い弦はアポヤンド奏法も

 リュートの場合、動画などで見る限りでは ima は間違いなくアルアイレ奏法で弾いています。 親指については弦によっても違うようですが、だいたい4,5コースくらいまではアルアイレ奏法で、そこから下の弦、特に7コース以下はほぼアポヤンド奏法のようです。 

 特に弦の数が多い場合は、親指がかなり上の方まで行くので、アルアイレ奏法はかえって難しくなるようです。それにアルアイレ奏法だと、次に弦を鳴らしてしまいがちですし、アポヤンド奏法で弾くことにより消音も出来ます。

 

theorboトリ
これはリュートではなくテオルボ。 14コースだったかな? ギターのように普通に持ったら、ネック(左側)が落ちてしまいますね。この写真ではちょっとわかりにくいですが、ストラップを使用しているようです。



アポヤンド奏法だと二つの音に聴こえてしまう?

 そうしたことからして、バロック・ギターではほとんどアルアイレ奏法を使用し、親指のみ場合によってはアポヤンド奏法を使うと言ったことではないかと思います。 因みに、私自身ではリュートを弾いたことがないのですが、リュートなどの複弦の楽器の2弦を im のアポヤンド奏法で弾くと(1弦は通常単弦なので)、ポロンとはっきりと二つの音に聴こえてしまうようです。アルアイレ奏法だとそれは目立ちません。



20171024084828d53.jpg
複弦のバロック・ギター




 バロック・ギター バロック・ギターはラスゲアード奏法でかき鳴らすほうが多かったようですが、この絵では通常の弾き方のようです。リュートの弾き方と近かったのではないかと思われますが、やはりその形状からして、手のフォームは若干リュートの場合とは異なるようです。



19世紀に前半ではほとんどアルアイレ奏法

 19世紀に入ってもギターの演奏法はほぼ同じだったのではないかと思われます。の両方を用い、人差し指、中指、薬指はアルアイレ奏法と思われます。少なくとも19世紀半ばくらいまでは ima のアポヤンド奏法はあまり使われなかったのでしょう。

親指については、アグアドの教本によれば、親指の第1関節(一番先端の関節)を曲げて弾く方法を取っているで、単音、重音に関わらずアルアイレ奏法で弾いていたと考えられます。他のギタリストもほぼ同様だったのではないかと思います。



中にはアポヤンド奏法を用いていたギタリストも

 とは言え、絶対にアポヤンド奏法を使わなかったと断言するのは難しいでしょう。 19世紀半ば、あるは後半になってから突然アポヤンド奏法を使い始めると考える方が不自然で、主流ではなかったとしても、19世紀初頭からアポヤンド奏法で弾いていたギタリストがいたと考えるのが自然と思われます。

 

キュフ
キュフナーのアンダンテ  初級の比較的簡単な練習曲だが、部分的に重音となっているところがあり、単音でもアルアイレ奏法が用いられていたと思われる。


スポンサーサイト



マルタ・アルゲリッチ




5月13、14日に、水戸芸術館でラヴェルの協奏曲を弾く

 今年から二十数世帯ほどの町内会長などやっております。何分これまでずっと自由業なんてやっているので、事務手続きなどは経験なく、前会長などに指導してもらって、なんとかやっています。その会長の仕事の一つが水戸市報の配布、と言っても実際には班長さんがやるのですが。

 先日、と言っても1月頃ですが、その市報をめくっていたら、なんと、水戸芸術館での水戸室内管弦楽団の演奏会に、いまやピアノ界のレジェンド、マルタ・アルゲリッチが出演するではありませんか。チケット予約が2月25日、9時からからと言うことだったので、何としてでもネット予約しなければと、その前日も明日忘れずに予約しなければと思っていました。しかし、なんとその当日気が付いた時にはすでに夕方!  間違いなくもうチケットなくなっているでしょう、おそらく発売と同時に売り切れでしょうね。



貴重なワルトシュタインの録音

 仕方がないのでCDで我慢しようということで、最近あらたに発売されたアルゲリッチのCDないか、と検索してみたら、新たにいくつかライブ録音のCDが発売されていて、その中にベートーヴェンのピアノ・ソナタ「ワルトシュタイン」を含むCDがありました。2枚組で他にラヴェル、ベートヴェンなどの協奏曲、ショパンのソナタ第3番なども収録されています。
 
 アルゲリッチはあまりベートーヴェンのソナタは弾いていませんが、それでも若い頃は多少演奏していたようです。ワルトシュタインの演奏はたいへん珍しく、これまでCDにはなっていなくて、始めて聴きます。 



アルゲリッチは若い頃しかソロを弾いていない

 御存じかも知れませんが、マルタ・アルゲリッチは20~21世紀を代表する超天才ピアニストということで、並外れた能力のわりにはレパートリーは少なく、リサイタルなどでもほぼ決まった曲しか弾きません。またピアノ独奏はは若い頃を除いて、録音もリサイタルも行っていません。

 ただし室内楽とか協奏曲とか、誰かと共演する形では、ずっと演奏していて、年齢的に考えれば、むしろほかのピアニストよりも積極的に活動しています。本当に”変”なピアニストですね、要するに、一人でステージにたつのは嫌だが、だれか一人でも他にいれば、むしろ積極的に演奏する、と言うピアニストです。

 確かに日常生活でもたいへん寂しがり屋で有名で、どんな人でも自宅に呼び寄せ、様々な人が自宅を出入りしているそうです。 それをステージにまで持ち込む人なんですね、ステージでも寂しがりやと、寂しがり屋もそこまで行く人はそんなにいないでしょう。



1970年、初来日時のライブ録音

 そんなわけで、ピアノ独奏のCD(LP復刻を含め),特にスタジオ録音のものは非常に限られていて、おそらく8枚、最後に録音したのは1984年頃と思います。しかし最近では6~70年代のライブ録音などがCD化され聴けるようになっていて、聴くことの出来るアルゲリッチのピアノ・ソロはそれなりに増えています。 とはいえ、やはり演奏する曲は同じものになりがちです。

 このベートーヴェンのワルトシュタイン、ショパンのソナタ第3番、ドビュッシーの版画の3曲は、1970年、東京の厚生年金ホールで、アルゲリッチの初来日時のものだそうです。 リサイタルであればもっとほかにも弾いているはずで、この3曲だけしかCDになっていなのはどうしてなのでしょうか。 リサイタルまるごとCDにしてもらったほうがファンとしては喜ぶとは思うのですが。

 曲が重複していると言ったこともあるかも知れませんが、もしかしたらアルゲリッチ本人の許可がなかったということも考えられるかも知れませんね。





CCI_000238.jpg
1970年前後、アルゲリッチ30歳前後のいくつかの会場でのライブ録音を収録した2枚組のCD。1970年、初来日時の厚生年金ホールでもワルトシュタインなども含まれている。



ぶっ飛びのワルツシュタイン!

 さて、実際に聴いてみると、これが驚き! すごいテンポ! 音量の変化が半端ない! こんなワルトシュタイン聴いたことがない! ワルトシュタイン・ソナタはベートーヴェン中期の作品で、ベートヴェンらしくエネルギッシュな曲ですが、これまで私自身では激しい曲というより、軽快でさわやかな感じで、聴いて心地よい曲と言ったイメージだったのですが、そんな生易しいワルトシュタインではないです。 まさにぶっ飛びのワルツシュタイン!



高血圧の方はご遠慮ください!

 特に第1楽章は強烈で、頭に全身の血液が上ったり、下がったりと、血圧が心配な方にはかなり危険な演奏と言えるでしょう。 確かにアルゲリッチは情熱的な演奏と言われていますが、特にCDではスタジオ録音のこともあって、少なくとも常軌を逸したものではありません。 このような演奏は、まさにライブならではとも言えるでしょう。  



ツンデレ?

 第2楽章になると一転して耳元でささやくような演奏、途中で一旦音量を上げますが、静かに第3楽章に繋げます。第3楽章は通常第1楽章と同じく、テンポの速い、エネルギッシュなものですが、アルゲリッチはまさに忍び寄るようにして第3楽章を開始します。

 同じ曲なのにこの第3楽章は第1楽章とは全然違う弾き方で、荒れ狂う第1楽章にたいして、こちらは旋律が丸みを帯びるように弾いています。 第3楽章でも強音の部分もあり、そういった部分では確かに力強く弾いていますが、しかし第1楽章とは異なり、”やさしさ”が目立ちます。 テンポもそれなりに速いのでしょうが、第1楽章が早かったせいか、ほぼ普通に感じます。

 この演奏、最近の言葉で言うと ”ツンデレ” と言うやつでしょう。高圧的に厳しい言葉を浴びせたかと思うと、次は耳元で甘い声で囁くみたいな。 きっと会場に詰め掛けたおじさんたちはメロメロになったんじゃなかと思います。




すでに80歳を超えて

 5月13、14日に水戸芸術館で行われるコンサートはディエゴ・マテウス指揮の水戸室内管弦楽団で、アルゲリッチがソロを弾くラヴェルのピアノ協奏曲の他、プロコフィエフの交響曲第1番、ストラヴィンスキーのプラチネッラ他となっています。 

 アルゲリッチは1941年生まれですから、もう80才越えているんですね、若い頃よくリサイタルをキャンセルなんかして、演奏会嫌いで有名だったのですが、今ではかえって積極的に演奏していますね。もちろん独奏なしですが。




2017年にも水戸芸術館に来ている

 水戸芸術館で演奏するのは何回目かわかりませんが、2017年に小澤征爾さんと演奏したものがCDになっています。
 

CCI_000239.jpg
2017年の水戸室内管弦楽団演奏会のCD。 ベートヴェンの交響曲第1番、ピアノ協奏曲第1番が収録されている。
令和時代の新常識 9



6.姿勢、特に手の形、弾弦その他が基本に述べたようになっているか?



先生が変わると、全然違うことを言う?

 今回は阿部先生の言葉の最後と言うことになります、姿勢や、手の形と言うことですね。 もちろんこうしたことは注意しながら練習しないといけないのですが、こうしたこともそのギタリストによって考え方が異なります。 何らかの理由で今まで習っていた先生と違う先生に習うよになった方など、おそらく言っていることが全く違うのに驚いたでしょう。

 これが唯一の正しい方法とか、理想のフォームとか、そういったものは基本的にないと思った方がいいでしょう。 結局のところ、その人に合ったフォーム、あるいはその人の音楽に合ったものを選択すると言ったことになるのでしょう。



最近は様々なギター支持具が市販されている

 特に最近は足台ではなく、様々なギター支持具を使うようになりました。今現在本当にたくさんのものが市販されてるようです。 時には全く見たことのないものを持ってくる生徒さんもいて、私の方でその使い方を聴いたるすることもあります。 



ギターレスト
ギター・レスト  ギター支持具としては最初に市販されたもので、私も使っている


エルゴプレイ
エルゴ・プレイ  これも使っている人が多い


支持具2
これもエルゴ・プレイと言うのかな?


支持具
上のものよく似ているが、名前はわからない


ギターパネル
始めて見た時は、どうやって使うものなのかわからなかった。 ギター・リフトと言うらしい。 他にもたくさん支持具があるようだが、私もよくわからない。



逆足も

 また様々な理由で通常の持ち方が出来なくて、例えば右足の方にギターを載せて弾く人もいます。 腰痛とか、股関節の関係でそうせざるを得ない、あるいはその方が弾きやすいということもあります。 アコースティック・ギターではこちらの方が主流ですね。

 実は私も練習の時などは右足にギターを載せることが多いです。というのも通常の持ち方(左足に乗せる)だと腰が痛くなって10~15分くらいしか続けて弾けません。 



たくさん弾く場合は左手が低い方がいい

 コンサートの際などはギターレストを使うのですが、これなら一時間くらいは弾いていられます。でもギターレストを使うと左手が上がり気味になるので、左手の疲労はやや早いです。コンサート当日の場合は特問題ありませんが、コンサートの前でたくさん練習しないといけない時には、左手が痛くなりやすいので、右足にギターを載せて弾く方が痛くなりにくいです。

 そういえばタレガの演奏写真を見ると、足台を低くして、かなり左手が下がったフォームをしています。見た目では弾きにくいいのではと思いますが、おそらくこれも長時間弾くためなのではないかと思います。タレガは毎日たくさんギターを弾いたのでしょうね。

 ちょっと話がそれましたが、この右足にギターを載せる方法は、ハイポジション、特に12フレット以上はたいへん押さえにくくなるので、コンサートでは弾けません。 ただ、弾き語りのように主にローポジションのコードを押さえるだけであれば、右足に乗せる方法でも問題ないでしょうね。




何でもいい訳ではない

 では、持ち方なんかなんでもいいのか、と言われると、もちろんそうではありません。どんな持ち方をしても、あるいはどんな道具を使ったとしても、基本的なところは押さえておかないといけません。



右肘の重みで支える

 先ず一つは 右肘でギターを支える と言うことですね、どんな形、どんな道具を使っても左手でギターを支えるようでは、ギターは弾けませんね、特にポジション移動したりすると、ギター7が落ちてしまったり(普通はそんなことないと思いますが)、動いてしまったりします。もちろん右手でギターを持つことも出来ませんね(小指でギターを支える人もいるが)。 

 結局、右肘のみでギターを支えるしかありません。詳しく言えば、右腿、左腿(ギター支持具)、胸、右肘 の4点でギターを支えることになります。 また右肘で支えると言っても、実際はギターの表面板の角に右肘を載せて、その重みで押さえるということになります。



やや上方に向ける

 次に、表面板は 垂直ではなく、やや上方に向けないといけません。もちろんやや上方であって、45度くらい傾けたりすれば当然押さえられなくなります。逆に、ほとんど垂直にギターを持つと、弦が見えなくなるだけでなく、体が前傾になってしまい、疲れやすくなったり、体が痛くなったりします。 また右手の薬指などが遠くなってしまって、空振りしやすくなるということもあるでしょう。



左前

 さらにネックはやや前方、30度くらい前方に向けます。 ギターを体の向きに対して真横、水平に待つと、左手を見る時、体をねじらないといけません。ギターを弾く場合、左手を見る機会は多いですから、真横だと頻繁にからだを捻ることになります。これもあまり体に良くないですね。 これについては、ギターの奏法理論で有名なカルレバーロもそのようなことを言っています。

 それにもう一点、楽譜を見ながら弾く場合、首を廻す角度が大きくなってしまいますね、そうすると当然楽譜を見失いやすくなります。ステージでの演奏の場合、これは致命傷になりますね、そうした経験のある方も多いのではないかと思います。そういった方はギターを持つ角度を考え直してみるといいでしょう。



弾きやすさと、疲れにくさ

 結論から言えば、ギターの持ち方は弾きやすさと疲れにくさで決まるということになりますね、今現在様々な支持具が市販されているもその関係です。では、どの支持具が一番いいのか、ということは私にもわかりません、いろいろなものを試して、自分に合ったものを選ぶしかないようですね、ちょっとお金がかかりますが。



形というより

 手のフォームに関しては、左手については以前書きましたが、右手については今後機会を改めて書くことにします。ただ、どちらかと言えば ”形” ではなく、どのように動かすかだと思います。さらには指先の感触、というか神経なのでしょう、いろいろ言っても ”目” で見て弾くわけではなく、指先で ”触った” 感触で弾く訳ですから。